JP3823418B2 - リアクトル用ギャップ付鉄心 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リアクトル用ギャップ付鉄心に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
図１は、分路リアクトルに代表されるギャップ付の鉄心式リアクトルの鉄心構体の一例の概略正面図で、１は脚鉄心、４は上部ヨーク鉄心、５は下部ヨーク鉄心、６及び７は締付金具、８は締付スタッドである。脚鉄心１は、方向性ケイ素鋼板を積層して構成されるブロック鉄心２と、各ブロック鉄心２の間に挿入されるギャップ用の非磁性絶縁体３とを交互に積み重ねて柱状に構成される。
【０００３】
そして、鉄心構体は、脚鉄心１を、上部ヨーク鉄心４の上面及び下部ヨーク鉄心５の下面に、締付金具６、７をあてがい、両締付金具６、７にまたがってその両端部に締付スタッド８を挿通し、これにナット９を締め付けることにより、上下締付金具６、７間に締付力を発生させ、これを上下ヨーク鉄心４、５を介して脚鉄心１に伝達させている。
【０００４】
このように構成された鉄心構体では、ギャップ３があるためブロック鉄心２間に、Ｆ＝Ｂｍ２×１０−４／２×μ０×９．８（Ｋｇ／ｃｍ２）の磁気吸引力Ｆ、例えば磁束密度Ｂｍを１．５Ｔ（テスラ）とすると、１．５２×１０−４／２×４π×１０−７×９．８＝９．１（Ｋｇ／ｃｍ２）の磁気吸引力Ｆが働く。そのためこの磁気吸引力で脚鉄心１が緩まないように、この力以上のいわゆる軸方向鉄心締付力と称される力で脚鉄心１は上下ヨーク鉄心４、５により締め付けられている。
【０００５】
すなわち、鉄心は磁束の流れから磁気抵抗の少ない方向性ケイ素鋼板のロール方向（圧延方向）をその軸方向とされているので、この軸方向鉄心締付力は、ケイ素鋼板のロール方向の圧縮力として加えられることになる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ギャップ付の鉄心式リアクトルは騒音が比較的に大きいと云う問題があり、この騒音を低減することが望まれている。この騒音の発生要因の１つにケイ素鋼板の磁歪現象がある。磁歪とはケイ素鋼板に磁束を流すとケイ素鋼板がが伸縮する現象で、この磁歪と方向性ケイ素鋼板に加えられる力との間には、図２に示すような関係、すなわち方向性ケイ素鋼板に張力が加えられていると磁歪が小さく、また張力の増大に対して磁歪の変化も小さいが、張力が１５Ｋｇ／ｃｍ２以下になると磁歪が増大し、方向性ケイ素鋼板に加えられる力の向きが変わり圧縮力の領域になると磁歪が急増するという関係がある。そのため、リアクトルの騒音が大きいのは軸方向鉄心締付力によって磁歪が増加していることが要因の１つと考えられる。
【０００７】
本発明は、このような実情に鑑みなされたもので、軸方向鉄心締付力によって発生する磁歪の増加を抑制し、これにより騒音の低減の図れるリアクトル用ギャップ付鉄心を提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、方向性ケイ素鋼板が積層され、磁路中にギャップを有するリアクトル用ギャップ付鉄心において、前記方向性ケイ素鋼板としてギャップにより発生する磁気吸引力に１５Ｋｇ／ｃｍ２を加算した張力以上の内部張力を備えてなる方向性ケイ素鋼板を用いてなることを特徴とすることによって達成される。
【０００９】
本発明の特徴によれば、鉄心構体に組まれたときに発生する磁気吸引力に１５Ｋｇ／ｃｍ２を加算した張力以上の内部張力を持たせて形成された方向性ケイ素鋼板が用いられるので、磁気吸引力で緩まないように締め付けても、方向性ケイ素鋼板はほぼ１５Ｋｇ／ｃｍ２の張力が維持されて磁歪は小さく、この磁歪により発生する騒音は低減される。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明に係るリアクトル用ギャップ付鉄心の実施の形態について説明する。なお、リアクトル用ギャップ付鉄心の鉄心構体は図１に示して説明した鉄心構体と同様に構成されるのでその説明は省略する。この実施の形態に係る鉄心は、厚さ０．２３ｍｍの方向性ケイ素鋼板の表面にセラミックコーティングを施し、このセラミックコーティングにより鉄心構体に組まれたときに発生する磁気吸引力に１５Ｋｇ／ｃｍ２を加算した張力以上の内部張力を持たせて形成された方向性ケイ素鋼板を積層して構成されている。
【００１１】
このように構成された鉄心で、鉄心重量４５Ｋｇのモデルリアクトルを従来と同様の鉄心の軸方向締付け力で締め付けて製作し、５０Ｈｚ、１．９Ｔ（テスラ）で騒音試験を行った。その時の騒音測定結果は４４．１ｄｂである。同様に従来の鉄心重量４５Ｋｇのリアクトルを、５０Ｈｚ、１．９Ｔ（テスラ）で騒音試験を行った。その時の騒音測定結果は５０．０ｄｂであった。
【００１２】
両者のリアクトルの騒音測定結果から明らかなように、この実施の形態のリアクトルでは、従来のリアクトルよりも５．９ｄｂ低い騒音となっている。なお、５．９ｄｂ差は磁歪に換算すると０．２６倍（１０−０．５９＝０．２６倍）であり、約４分の１に減少している。
【００１３】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、鉄心を締め付けたとしても磁歪の急増はなく、したがって低騒音のリアクトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】ギャップ付の鉄心式リアクトルの鉄心構体の一例の概略正面図である。
【図２】方向性ケイ素鋼板の力と磁歪の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
１ 脚鉄心
２ ブロック鉄心
３ ギャップ用の非磁性絶縁体
４ 上部ヨーク鉄心
５ 下部ヨーク鉄心
６、７ 締付金具
８ 締付スタッド
９ ナット
【発明の属する技術分野】
本発明は、リアクトル用ギャップ付鉄心に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
図１は、分路リアクトルに代表されるギャップ付の鉄心式リアクトルの鉄心構体の一例の概略正面図で、１は脚鉄心、４は上部ヨーク鉄心、５は下部ヨーク鉄心、６及び７は締付金具、８は締付スタッドである。脚鉄心１は、方向性ケイ素鋼板を積層して構成されるブロック鉄心２と、各ブロック鉄心２の間に挿入されるギャップ用の非磁性絶縁体３とを交互に積み重ねて柱状に構成される。
【０００３】
そして、鉄心構体は、脚鉄心１を、上部ヨーク鉄心４の上面及び下部ヨーク鉄心５の下面に、締付金具６、７をあてがい、両締付金具６、７にまたがってその両端部に締付スタッド８を挿通し、これにナット９を締め付けることにより、上下締付金具６、７間に締付力を発生させ、これを上下ヨーク鉄心４、５を介して脚鉄心１に伝達させている。
【０００４】
このように構成された鉄心構体では、ギャップ３があるためブロック鉄心２間に、Ｆ＝Ｂｍ２×１０−４／２×μ０×９．８（Ｋｇ／ｃｍ２）の磁気吸引力Ｆ、例えば磁束密度Ｂｍを１．５Ｔ（テスラ）とすると、１．５２×１０−４／２×４π×１０−７×９．８＝９．１（Ｋｇ／ｃｍ２）の磁気吸引力Ｆが働く。そのためこの磁気吸引力で脚鉄心１が緩まないように、この力以上のいわゆる軸方向鉄心締付力と称される力で脚鉄心１は上下ヨーク鉄心４、５により締め付けられている。
【０００５】
すなわち、鉄心は磁束の流れから磁気抵抗の少ない方向性ケイ素鋼板のロール方向（圧延方向）をその軸方向とされているので、この軸方向鉄心締付力は、ケイ素鋼板のロール方向の圧縮力として加えられることになる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ギャップ付の鉄心式リアクトルは騒音が比較的に大きいと云う問題があり、この騒音を低減することが望まれている。この騒音の発生要因の１つにケイ素鋼板の磁歪現象がある。磁歪とはケイ素鋼板に磁束を流すとケイ素鋼板がが伸縮する現象で、この磁歪と方向性ケイ素鋼板に加えられる力との間には、図２に示すような関係、すなわち方向性ケイ素鋼板に張力が加えられていると磁歪が小さく、また張力の増大に対して磁歪の変化も小さいが、張力が１５Ｋｇ／ｃｍ２以下になると磁歪が増大し、方向性ケイ素鋼板に加えられる力の向きが変わり圧縮力の領域になると磁歪が急増するという関係がある。そのため、リアクトルの騒音が大きいのは軸方向鉄心締付力によって磁歪が増加していることが要因の１つと考えられる。
【０００７】
本発明は、このような実情に鑑みなされたもので、軸方向鉄心締付力によって発生する磁歪の増加を抑制し、これにより騒音の低減の図れるリアクトル用ギャップ付鉄心を提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、方向性ケイ素鋼板が積層され、磁路中にギャップを有するリアクトル用ギャップ付鉄心において、前記方向性ケイ素鋼板としてギャップにより発生する磁気吸引力に１５Ｋｇ／ｃｍ２を加算した張力以上の内部張力を備えてなる方向性ケイ素鋼板を用いてなることを特徴とすることによって達成される。
【０００９】
本発明の特徴によれば、鉄心構体に組まれたときに発生する磁気吸引力に１５Ｋｇ／ｃｍ２を加算した張力以上の内部張力を持たせて形成された方向性ケイ素鋼板が用いられるので、磁気吸引力で緩まないように締め付けても、方向性ケイ素鋼板はほぼ１５Ｋｇ／ｃｍ２の張力が維持されて磁歪は小さく、この磁歪により発生する騒音は低減される。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明に係るリアクトル用ギャップ付鉄心の実施の形態について説明する。なお、リアクトル用ギャップ付鉄心の鉄心構体は図１に示して説明した鉄心構体と同様に構成されるのでその説明は省略する。この実施の形態に係る鉄心は、厚さ０．２３ｍｍの方向性ケイ素鋼板の表面にセラミックコーティングを施し、このセラミックコーティングにより鉄心構体に組まれたときに発生する磁気吸引力に１５Ｋｇ／ｃｍ２を加算した張力以上の内部張力を持たせて形成された方向性ケイ素鋼板を積層して構成されている。
【００１１】
このように構成された鉄心で、鉄心重量４５Ｋｇのモデルリアクトルを従来と同様の鉄心の軸方向締付け力で締め付けて製作し、５０Ｈｚ、１．９Ｔ（テスラ）で騒音試験を行った。その時の騒音測定結果は４４．１ｄｂである。同様に従来の鉄心重量４５Ｋｇのリアクトルを、５０Ｈｚ、１．９Ｔ（テスラ）で騒音試験を行った。その時の騒音測定結果は５０．０ｄｂであった。
【００１２】
両者のリアクトルの騒音測定結果から明らかなように、この実施の形態のリアクトルでは、従来のリアクトルよりも５．９ｄｂ低い騒音となっている。なお、５．９ｄｂ差は磁歪に換算すると０．２６倍（１０−０．５９＝０．２６倍）であり、約４分の１に減少している。
【００１３】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、鉄心を締め付けたとしても磁歪の急増はなく、したがって低騒音のリアクトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】ギャップ付の鉄心式リアクトルの鉄心構体の一例の概略正面図である。
【図２】方向性ケイ素鋼板の力と磁歪の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
１ 脚鉄心
２ ブロック鉄心
３ ギャップ用の非磁性絶縁体
４ 上部ヨーク鉄心
５ 下部ヨーク鉄心
６、７ 締付金具
８ 締付スタッド
９ ナット
Claims (1)
- 方向性ケイ素鋼板が積層され、磁路中にギャップを有するリアクトル用ギャップ付鉄心において、前記方向性ケイ素鋼板としてギャップにより発生する磁気吸引力に１５Ｋｇ／ｃｍ２を加算した張力以上の内部張力を備えてなる方向性ケイ素鋼板を用いてなることを特徴とするリアクトル用ギャップ付鉄心。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP04136197A JP3823418B2 (ja) | 1997-01-20 | 1997-01-20 | リアクトル用ギャップ付鉄心 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP04136197A JP3823418B2 (ja) | 1997-01-20 | 1997-01-20 | リアクトル用ギャップ付鉄心 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH10208947A JPH10208947A (ja) | 1998-08-07 |
| JP3823418B2 true JP3823418B2 (ja) | 2006-09-20 |
Family
ID=12606347
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP04136197A Expired - Fee Related JP3823418B2 (ja) | 1997-01-20 | 1997-01-20 | リアクトル用ギャップ付鉄心 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3823418B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN105118623B (zh) * | 2015-08-21 | 2017-03-01 | 昆山市特种变压器制造有限公司 | 一种内拉板夹紧结构的铁心电抗器 |
-
1997
- 1997-01-20 JP JP04136197A patent/JP3823418B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH10208947A (ja) | 1998-08-07 |
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