JP3822925B2 - 2’−3’−ジ−o−アシルatpの製造法 - Google Patents
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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、2’−3’−ジ−O−アシルアデノンシン−5’−トリフォスフェート(以下、2’−3’−ジ−O−アシルATPと略称する)又はその塩の新規な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2’−3’−ジ−O−アシルATPは、プリナージックATPレセプターの拮抗薬等として医薬の分野で有用である。
従来、2’−3’−ジ−O−アシルATPの製造法としては、例えば1,1’−カルボニルジイミダゾールを縮合剤として用い、ATPのナトリウム塩とカルボン酸を水溶液中、室温下で1ないし2日反応させる方法[Am.J.Physiol.,257(6)2834(1982)]、2−フルオロ−1−メチルピリジニウムパラトルエンスルホネートを縮合剤として用い、ATPのトリブチルアンモニウム塩とカルボン酸をジクロロメタン、室温下で1ないし2日反応させる方法[New J.Chem.,17,325(1993)]などが知られている。
しかしながら、これらの方法はいずれも収率が30%以下でかつ、2’−又は3’−モノアシル化合物との混合物として得られたので、工業的に適用することができず、収率の良い製造法の開発が望まれていた。
また、これらのアシル化反応は反応性も低く、多くのアシル化剤に適用できる一般的な方法として好ましいものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、2’−3’−ジ−O−アシルATPを高収率で製造できる工業的に有用な方法を提供すると共に、2’−3’−ジ−O−アシルATPを製造する汎用の方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、公知方法に比べて極めて高収率でかつ、一般性のある2’−3’−ジ−O−アシルATPを製造できる方法を見出し、本発明を完成した。
本発明は、ATP又はその塩をアシル化して2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩を製造する方法において、当該反応を次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体の存在下に行うことを特徴とする2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩の製造方法に関する。また、本発明は、縮合剤として次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体を用い、ATP又はその塩とアシル化剤を反応させて2’−3’−ジ−O−アシルATPを製造する方法を提供するものである。
本発明の方法は、好ましくはさらに塩基の存在下に行うことができる。すなわち、本発明はATP又はその塩をアシル化して2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩を製造する方法において、当該反応を次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体及び塩基の存在下に行うことを特徴とする2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩の製造方法に関する。
【0005】
本発明の方法で用いられるアシル化剤としては、飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸、飽和又は不飽和の環式脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、芳香脂肪族カルボン酸、複素環式カルボン酸などのカルボン酸又はそれらの反応性誘導体を用いることができる。また、これらのカルボン酸は本発明の方法の反応を阻害しない置換基で置換されたものであってもよい。これらのカルボン酸としては、例えば(1)分子中にアジド基、ニトロ基、シアノ基、アセチルアミノ基、O−シリル基などの官能基を有するカルボン酸又は通常、容易に酸クロライドに変換できない不安定な官能基を有するカルボン酸、(2)一般的に反応性が劣る長鎖カルボン酸、(3)立体的に嵩高いカルボン酸、(4)難溶性のカルボン酸、(5)従来のエステル化方法、例えば酸無水物法(ショッテン法)、WSC法(含水系縮合剤を用いる方法)、CDI法(非水系縮合剤を用いる方法)、向山法(縮合剤として2−フロロ−1−メチルピリジウム p−トルエンスルホン酸を用いる非水系の方法)、DCC法(非水系縮合剤を用いる方法)では反応しないカルボン酸、などを挙げることができる。
【0006】
本発明の方法で使用される好ましいアシル化剤としては、置換基を有してもよい炭素数1から30、より好ましくは炭素数1から20のアルカン酸又はアルケン酸、置換基を有してもよい炭素数7から15、より好ましくは炭素数7から10の芳香族カルボン酸、置換基を有してもよい炭素数8から16、より好ましくは炭素数8から10のアリールアルカンカルボン酸又はアリールアルケンカルボン酸、置換記を有してもよい1個以上の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を異種原子として含有する4から7員の複素環式カルボン酸などを挙げることができる。
これらのカルボン酸の置換基としては、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5の低級アルキル基、水酸基、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5の低級アルコキシ基、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5の低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、アジド基などを挙げることができる。
【0007】
本発明の方法で使用する次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体の置換基R1の低級アルキル基としては、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5の低級アルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。また、置換基R1の置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基としては、炭素数6から12、好ましくは炭素数6から10のアリール基又はアラルキル基、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ベンジル基などが挙げられる。これらの置換基としては、反応を阻害しないものであればとくに制限はないが、炭素数1から5の低級アルキル基などを挙げることができる。
置換基R2としては、シアノ基(−CN)又はアジド基(−N3)などが好ましい。
本発明のホスホン酸エステル誘導体の具体例としては、例えば、ジメチルホスホロシアニデート[(MeO)2P(O)CN]、ジエチルホスホロシアニデート[(EtO)2P(O)CN]、ジイソプロピルホスホロシアニデート[(i−PrO)2P(O)CN]、ジフェニルホスホロシアニデート[(PhO)2P(O)CN]、ジフェニルホスホロアジド[(PhO)2P(O)N3]などが挙げられる。さらに好ましい例としては、ジエチルホスホロシアニデート[(EtO)2P(O)CN]を挙げることができる。
本発明で使用するホスホン酸エステル誘導体は、公知の方法又はその方法に準じて製造することができる。例えば、ジエチルホスホロシアニデートは、塩入らの方法[J.Am.Chem.Soc.,94,603(1975)]に従って製造することができる。
【0008】
本発明の方法で用いるATPは、その塩として使用することが好ましい。ATPの塩としては種々のものを使用することができるが、そのアンモニウム塩が好ましい。
ATPのアンモニウム塩としては、ATPと一般的なアミン、より好ましくは3級アミンとで通常の方法で製造できるアンモニウム塩を用いることができる。3級アミンとしては、同一又は異なる炭素数1から10、より好ましくは炭素数1から6のアルキル基からなるトリアルキルアミン、5から7員の脂環式基を有するアミン、ピリジン、ピコリンなどの置換基を有してもよい複素環式アミンなどを挙げることができる。より具体的には、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−n−アミルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン等の炭素数1〜6のアルキル基からなるトリ低級アルキルアミン、ピリジンなどが挙げられる。
本発明のATPのアンモニウム塩は、例えばATP、好ましくはATPの有機塩、例えばピリジン塩、と3級アミンとを溶媒中で反応させることによって製造することができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、などが用いられる。反応は0〜50℃、好ましくは室温付近で、瞬時に進行する。この方法で得られるアムモニウム塩は通常の方法で精製できるが、精製せずにそのまま次の反応に用いることができる。
【0009】
本発明のATP又はその塩とカルボン酸などのアシル化剤との反応は、両者とジ低級アルキルホスホロシアニデートを無水溶媒中で、より好ましくは塩基の存在下に反応させると、目的の2’−3’−ジ−O−アシルATPが得られる。
溶媒としては例えば、無水のジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルムなどを用いることができる。
塩基としては例えば、先に例示したトリ低級アルキルアミンの他、水素化ナトリウム、DBU(1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−5)、炭酸カリウム、水酸化ナトリウムなどを用いることができる。
反応は0〜50℃、好ましくは室温付近で、数時間〜数日で進行する。目的物の分離・精製は通常の方法、例えば、溶媒抽出法、塩交換法、クロマトグラフィー法、再結晶法、凍結乾燥法などを単独又は適宜組み合わせて行うことができる。
目的化合物は塩の形で単離することもできる。本反応を塩基として3級アミンの存在下で行った場合は通常、対応するアミンの塩が得られるが、他の塩を望む場合は、通常の塩交換法によって新たな塩とすることができる。
【0010】
本発明方法によって製造される2’−3’−ジ−O−アシルATPの具体例として、以下のものを挙げることができる。
2’−3’−ジ−O−アセチルーATP、
2’−3’−ジ−O−プロピオニル−ATP、
2’−3’−ジ−O−n−ブチリル−ATP、
2’−3’−ジ−O−イソブリチル−ATP、
2’−3’−ジ−O−n−バレリル−ATP、
2’−3’−ジ−O−イソバレリル−ATP、
2’−3’−ジ−O−カプリロイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−エナンシル−ATP、
2’−3’−ジ−O−カプリリル−ATP、
2’−3’−ジ−O−ペラルゴニル−ATP、
2’−3’−ジ−O−パルミトイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−ステアロイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−オレオイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−ベンゾイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−p−トルオイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−(4−t−ブチルベンゾイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−(2−アミノベンゾイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−(4−アミノベンゾイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−(3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−サルチロイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−シンナモイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−ナフトイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−(5−アジドナフトイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−ニコチノイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−イソニコチノイル−ATP、
及びこれらの塩。
【0011】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
実施例1
2’−3’−ジ−O−イソニコチノイル−ATPの製造:
(a)ATPのジナトリウム塩(3水和物)1.0gを水20mlに溶解し、4℃以下で陽イオン交換樹脂、ダウエックス50W×8(200−400mesh.ピリジニウム型:ダウコーニング社製)10mlに対し、水150mlで溶出した。この溶出液を凍結乾燥して、ATPのピリジニウム塩の粉末1.07gを得た。
(b)ATPのピリジニウム塩20mg(0.03mmol)をメタノール1mlとトリ−(n−ブチル)アミン22mg(0.06mmol)の混液に溶解した。次いで、減圧下に溶媒を留去して得られる無色のカラメルをジメチルホルムアミド0.5mlに溶解した。この溶液にトリ−(n−ブチル)アミン55mg(0.3ml)を加え、続いてイソニコチン酸110mg(0.9mmol)及びジエチルホスホロシアニデート147mg(0.9mmol)を加えて室温で攪拌した。この反応液にトリエチルアミン91mg(0.9mmol)を徐々に滴下し、室温で72時間攪拌した。
反応終了後、浴温40℃以下で溶媒を減圧下に留去し、残渣に水10mlを加えて逆抽出し、酢酸エチルで洗浄した。水層を分取し、40℃以下で溶媒を減圧下に留去して淡黄色油物状324mgを得た。
この油物状をエタノール1mlに溶解し、セファデックスLH−20に付し、エタノールで溶出した。目的物を含む分画より溶媒を減圧下に留去して、目的物化合物の2・トリ−n−ブチルアミン塩27mg(収率:90%)を得た。
【0013】
IR値
cm−1(KBr):1741
1H−NMR値
δ(D2O)ppm:
4.42−4.52(2H,m,C5’−H×2)
5.0−5.1(1H,brs.C4’−H)
6.2−6.3(1H,m,C3’−H)
6.3−6.4(1H,m,C2’−H)
6.88(1H,d,C1’−H)
8.22(1H,m,Aden−H)
8.42(3H,d,Py−H)
8.52(2H,d,Py−H)
8.75(1H,s,Aden−H)
8.9 (2H,m,Py−H)
9.05(2H,d,Py−H)
【0014】
実施例2−14
各種カルボン酸を用いて、実施例1と同様に処理し、次の表1〜3に示される化合物を得た。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【発明の効果】
本発明は、ATP又はその塩から2’−3’−ジ−O−アシルATPを高収率で製造できる工業的に有用な方法を提供すると共に、2’−3’−ジ−O−アシルATPを製造する汎用の方法を提供することができる。
【産業上の利用分野】
本発明は、2’−3’−ジ−O−アシルアデノンシン−5’−トリフォスフェート(以下、2’−3’−ジ−O−アシルATPと略称する)又はその塩の新規な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2’−3’−ジ−O−アシルATPは、プリナージックATPレセプターの拮抗薬等として医薬の分野で有用である。
従来、2’−3’−ジ−O−アシルATPの製造法としては、例えば1,1’−カルボニルジイミダゾールを縮合剤として用い、ATPのナトリウム塩とカルボン酸を水溶液中、室温下で1ないし2日反応させる方法[Am.J.Physiol.,257(6)2834(1982)]、2−フルオロ−1−メチルピリジニウムパラトルエンスルホネートを縮合剤として用い、ATPのトリブチルアンモニウム塩とカルボン酸をジクロロメタン、室温下で1ないし2日反応させる方法[New J.Chem.,17,325(1993)]などが知られている。
しかしながら、これらの方法はいずれも収率が30%以下でかつ、2’−又は3’−モノアシル化合物との混合物として得られたので、工業的に適用することができず、収率の良い製造法の開発が望まれていた。
また、これらのアシル化反応は反応性も低く、多くのアシル化剤に適用できる一般的な方法として好ましいものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、2’−3’−ジ−O−アシルATPを高収率で製造できる工業的に有用な方法を提供すると共に、2’−3’−ジ−O−アシルATPを製造する汎用の方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、公知方法に比べて極めて高収率でかつ、一般性のある2’−3’−ジ−O−アシルATPを製造できる方法を見出し、本発明を完成した。
本発明は、ATP又はその塩をアシル化して2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩を製造する方法において、当該反応を次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体の存在下に行うことを特徴とする2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩の製造方法に関する。また、本発明は、縮合剤として次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体を用い、ATP又はその塩とアシル化剤を反応させて2’−3’−ジ−O−アシルATPを製造する方法を提供するものである。
本発明の方法は、好ましくはさらに塩基の存在下に行うことができる。すなわち、本発明はATP又はその塩をアシル化して2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩を製造する方法において、当該反応を次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体及び塩基の存在下に行うことを特徴とする2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩の製造方法に関する。
【0005】
本発明の方法で用いられるアシル化剤としては、飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸、飽和又は不飽和の環式脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、芳香脂肪族カルボン酸、複素環式カルボン酸などのカルボン酸又はそれらの反応性誘導体を用いることができる。また、これらのカルボン酸は本発明の方法の反応を阻害しない置換基で置換されたものであってもよい。これらのカルボン酸としては、例えば(1)分子中にアジド基、ニトロ基、シアノ基、アセチルアミノ基、O−シリル基などの官能基を有するカルボン酸又は通常、容易に酸クロライドに変換できない不安定な官能基を有するカルボン酸、(2)一般的に反応性が劣る長鎖カルボン酸、(3)立体的に嵩高いカルボン酸、(4)難溶性のカルボン酸、(5)従来のエステル化方法、例えば酸無水物法(ショッテン法)、WSC法(含水系縮合剤を用いる方法)、CDI法(非水系縮合剤を用いる方法)、向山法(縮合剤として2−フロロ−1−メチルピリジウム p−トルエンスルホン酸を用いる非水系の方法)、DCC法(非水系縮合剤を用いる方法)では反応しないカルボン酸、などを挙げることができる。
【0006】
本発明の方法で使用される好ましいアシル化剤としては、置換基を有してもよい炭素数1から30、より好ましくは炭素数1から20のアルカン酸又はアルケン酸、置換基を有してもよい炭素数7から15、より好ましくは炭素数7から10の芳香族カルボン酸、置換基を有してもよい炭素数8から16、より好ましくは炭素数8から10のアリールアルカンカルボン酸又はアリールアルケンカルボン酸、置換記を有してもよい1個以上の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を異種原子として含有する4から7員の複素環式カルボン酸などを挙げることができる。
これらのカルボン酸の置換基としては、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5の低級アルキル基、水酸基、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5の低級アルコキシ基、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5の低級アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、アジド基などを挙げることができる。
【0007】
本発明の方法で使用する次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体の置換基R1の低級アルキル基としては、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5の低級アルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。また、置換基R1の置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基としては、炭素数6から12、好ましくは炭素数6から10のアリール基又はアラルキル基、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ベンジル基などが挙げられる。これらの置換基としては、反応を阻害しないものであればとくに制限はないが、炭素数1から5の低級アルキル基などを挙げることができる。
置換基R2としては、シアノ基(−CN)又はアジド基(−N3)などが好ましい。
本発明のホスホン酸エステル誘導体の具体例としては、例えば、ジメチルホスホロシアニデート[(MeO)2P(O)CN]、ジエチルホスホロシアニデート[(EtO)2P(O)CN]、ジイソプロピルホスホロシアニデート[(i−PrO)2P(O)CN]、ジフェニルホスホロシアニデート[(PhO)2P(O)CN]、ジフェニルホスホロアジド[(PhO)2P(O)N3]などが挙げられる。さらに好ましい例としては、ジエチルホスホロシアニデート[(EtO)2P(O)CN]を挙げることができる。
本発明で使用するホスホン酸エステル誘導体は、公知の方法又はその方法に準じて製造することができる。例えば、ジエチルホスホロシアニデートは、塩入らの方法[J.Am.Chem.Soc.,94,603(1975)]に従って製造することができる。
【0008】
本発明の方法で用いるATPは、その塩として使用することが好ましい。ATPの塩としては種々のものを使用することができるが、そのアンモニウム塩が好ましい。
ATPのアンモニウム塩としては、ATPと一般的なアミン、より好ましくは3級アミンとで通常の方法で製造できるアンモニウム塩を用いることができる。3級アミンとしては、同一又は異なる炭素数1から10、より好ましくは炭素数1から6のアルキル基からなるトリアルキルアミン、5から7員の脂環式基を有するアミン、ピリジン、ピコリンなどの置換基を有してもよい複素環式アミンなどを挙げることができる。より具体的には、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−n−アミルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン等の炭素数1〜6のアルキル基からなるトリ低級アルキルアミン、ピリジンなどが挙げられる。
本発明のATPのアンモニウム塩は、例えばATP、好ましくはATPの有機塩、例えばピリジン塩、と3級アミンとを溶媒中で反応させることによって製造することができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、などが用いられる。反応は0〜50℃、好ましくは室温付近で、瞬時に進行する。この方法で得られるアムモニウム塩は通常の方法で精製できるが、精製せずにそのまま次の反応に用いることができる。
【0009】
本発明のATP又はその塩とカルボン酸などのアシル化剤との反応は、両者とジ低級アルキルホスホロシアニデートを無水溶媒中で、より好ましくは塩基の存在下に反応させると、目的の2’−3’−ジ−O−アシルATPが得られる。
溶媒としては例えば、無水のジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルムなどを用いることができる。
塩基としては例えば、先に例示したトリ低級アルキルアミンの他、水素化ナトリウム、DBU(1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−5)、炭酸カリウム、水酸化ナトリウムなどを用いることができる。
反応は0〜50℃、好ましくは室温付近で、数時間〜数日で進行する。目的物の分離・精製は通常の方法、例えば、溶媒抽出法、塩交換法、クロマトグラフィー法、再結晶法、凍結乾燥法などを単独又は適宜組み合わせて行うことができる。
目的化合物は塩の形で単離することもできる。本反応を塩基として3級アミンの存在下で行った場合は通常、対応するアミンの塩が得られるが、他の塩を望む場合は、通常の塩交換法によって新たな塩とすることができる。
【0010】
本発明方法によって製造される2’−3’−ジ−O−アシルATPの具体例として、以下のものを挙げることができる。
2’−3’−ジ−O−アセチルーATP、
2’−3’−ジ−O−プロピオニル−ATP、
2’−3’−ジ−O−n−ブチリル−ATP、
2’−3’−ジ−O−イソブリチル−ATP、
2’−3’−ジ−O−n−バレリル−ATP、
2’−3’−ジ−O−イソバレリル−ATP、
2’−3’−ジ−O−カプリロイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−エナンシル−ATP、
2’−3’−ジ−O−カプリリル−ATP、
2’−3’−ジ−O−ペラルゴニル−ATP、
2’−3’−ジ−O−パルミトイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−ステアロイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−オレオイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−ベンゾイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−p−トルオイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−(4−t−ブチルベンゾイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−(2−アミノベンゾイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−(4−アミノベンゾイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−(3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−サルチロイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−シンナモイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−ナフトイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−(5−アジドナフトイル)−ATP、
2’−3’−ジ−O−ニコチノイル−ATP、
2’−3’−ジ−O−イソニコチノイル−ATP、
及びこれらの塩。
【0011】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
実施例1
2’−3’−ジ−O−イソニコチノイル−ATPの製造:
(a)ATPのジナトリウム塩(3水和物)1.0gを水20mlに溶解し、4℃以下で陽イオン交換樹脂、ダウエックス50W×8(200−400mesh.ピリジニウム型:ダウコーニング社製)10mlに対し、水150mlで溶出した。この溶出液を凍結乾燥して、ATPのピリジニウム塩の粉末1.07gを得た。
(b)ATPのピリジニウム塩20mg(0.03mmol)をメタノール1mlとトリ−(n−ブチル)アミン22mg(0.06mmol)の混液に溶解した。次いで、減圧下に溶媒を留去して得られる無色のカラメルをジメチルホルムアミド0.5mlに溶解した。この溶液にトリ−(n−ブチル)アミン55mg(0.3ml)を加え、続いてイソニコチン酸110mg(0.9mmol)及びジエチルホスホロシアニデート147mg(0.9mmol)を加えて室温で攪拌した。この反応液にトリエチルアミン91mg(0.9mmol)を徐々に滴下し、室温で72時間攪拌した。
反応終了後、浴温40℃以下で溶媒を減圧下に留去し、残渣に水10mlを加えて逆抽出し、酢酸エチルで洗浄した。水層を分取し、40℃以下で溶媒を減圧下に留去して淡黄色油物状324mgを得た。
この油物状をエタノール1mlに溶解し、セファデックスLH−20に付し、エタノールで溶出した。目的物を含む分画より溶媒を減圧下に留去して、目的物化合物の2・トリ−n−ブチルアミン塩27mg(収率:90%)を得た。
【0013】
IR値
cm−1(KBr):1741
1H−NMR値
δ(D2O)ppm:
4.42−4.52(2H,m,C5’−H×2)
5.0−5.1(1H,brs.C4’−H)
6.2−6.3(1H,m,C3’−H)
6.3−6.4(1H,m,C2’−H)
6.88(1H,d,C1’−H)
8.22(1H,m,Aden−H)
8.42(3H,d,Py−H)
8.52(2H,d,Py−H)
8.75(1H,s,Aden−H)
8.9 (2H,m,Py−H)
9.05(2H,d,Py−H)
【0014】
実施例2−14
各種カルボン酸を用いて、実施例1と同様に処理し、次の表1〜3に示される化合物を得た。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【発明の効果】
本発明は、ATP又はその塩から2’−3’−ジ−O−アシルATPを高収率で製造できる工業的に有用な方法を提供すると共に、2’−3’−ジ−O−アシルATPを製造する汎用の方法を提供することができる。
Claims (6)
- ATP又はその塩をアシル化して2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩を製造する方法において、当該反応を次式、
(R1O)2P(O)R2
(式中、R1は低級アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基若しくはアラルキル基を、R2はシアノ基又はアジド基を示す。)
で示されるホスホン酸エステル誘導体の存在下に行うことを特徴とする2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩の製造方法。 - 請求項1に記載の方法を、さらに塩基の存在下に行うことを特徴とする2’−3’−ジ−O−アシルATP又はその塩の製造方法。
- ATPの塩がアンモニウム塩である請求項1又は2に記載の製造方法。
- ATPの塩がピリジニウム塩である請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 塩基がトリ低級アルキルアミンである請求項2から4のいずれか1項に記載の製造方法。
- アシル化剤が脂肪族カルボン酸若しくは芳香族カルボン酸又はこれらの反応性誘導体である請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
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