JP3822847B2 - 多層段ボールの折り目構造及び該構造を備えた多層段ボール容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層段ボールを折り曲げ易くするための多層段ボールの折り目構造及び該構造を備えた多層段ボール容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
旧来、流体や粉体等の流動性のあるものを保管、輸送するための容器には、スチール製のドラム缶が用いられていたが、近年では、リサイクル性、コスト、軽量性、保管性等を向上するために、段ボール容器が用いられるようになってきている。
従来、この種の段ボール容器には、例えば、図5に示す多層段ボール容器100のように、多層段ボールを裁断することによって、矩形状の胴部本体111と、該胴部本体111の下端から延設された複数の折曲げ片部112とからなる段ボール基材110を形成し(図5(a)参照)、該段ボール基材110を折り曲げてなるものがある。
この多層段ボール容器100は、前記段ボール基材110の胴部本体111を図5(a)における左右方向に二つ折りにし、その二つ折りにされた段ボール基材110を、専用機械(グルアーまたはステッチャー等)にセットした後、該専用機械によって左端の糊代部113を胴部本体111の右端に止着している。
そして、使用される際には、現場での手作業により、胴部本体111が四角形筒状に折り曲げられ、更に各折曲げ片部112が折り目部110aに沿って内方へ折り曲げられる(図5(b)参照)。
【0003】
しかしながら、上記図示例の多層段ボール容器100によれば、高強度な多層段ボールから形成されているため、上記折曲げ片部112を折り曲げるのが困難であった。
そこで、上記折り目部110aを周知の技術的手段である断面V字状の溝に形成することで、折曲げ片部112の折り曲げを容易にする場合があるが、その場合には、特殊な加工機械を用いるために加工コストがかかる上、段ボール基材110を折り曲げる前の状態(図5(a)の状態)や、上記のように二つ折りにされ糊代部113が止着された状態(四角形筒状に折り曲げられる前の状態)で保管した際に、折り目部110aがへたって、折曲げ片部112が折れ曲がってしまうという問題があった。
また、糊代部113を胴部本体111右端に止着するために上記専用機械(グルアーまたはステッチャー)にセットした際には、二つ折りにされた胴部本体111が上記専用機械によって上下方向(図5(a)における上下方向)から挟まれるため、折り目部110aがへたって、折曲げ片部112が折れ曲がってしまうという問題もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、折曲げ片部の折り曲げを容易にするとともに、折り目部のへたりを防止することで、組立て前の保管性及び組立て性を向上した多層段ボールの折り目構造及び該構造を備えた多層段ボール容器を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第一の発明では、段ボール基材の端部に形成された折曲げ片部を折り目部に沿って折り曲げ可能にしている多層段ボールの折り目構造であって、前記折り目部は、折込み側の面に、所定深さの切込みを連続させてなる連続切込み部と、該連続切込み部に沿って断面凹状に押潰された押潰し凹部とを形成し、更に、折込み側の面の裏面に、前記連続切込み部に沿うようにして、所定深さの切込みを断続的に配設してなる断続切込み部を形成していることを特徴とする。
【0006】
上記技術的手段によれば、折曲げ片部が折り曲げられていない状態で、折り目部に若干の曲げ力が加わった際には、連続切込み部における切断端面同士が当接することで、曲げ力に対する反力が生じるため、折り目部がへたって折れ曲がってしまうようなことがない。
したがって、折曲げ片部が折り曲げられる前の保管状態や、専用機械(グルアーまたはステッチャー)等によって折曲げ片部の先端に若干の押圧力が加わった状態等においては、折り目部のへたりを生じない。
そして、折曲げ片部を所定力以上の曲げ力で折り曲げる際には、連続切込み部における切断面が押潰し凹部内側へ撓むとともに、折込み側の面の裏面においては断続切込み部により張力が逃がされるため、容易に折り曲げられることになる。
【0007】
更に、第二の発明では、上記折曲げ片部は、段ボール基材の端部に延設されているショートフラップ部であることを特徴とする。
【0008】
更に、第三の発明は、上記折曲げ片部及び上記折り目部を有する一枚の段ボール基材を折り曲げることで、略直立する角筒状の胴部を形成し、該胴部内に底部を挿入してなる多層段ボール容器であって、前記段ボール基材は、角筒状に折り曲げ可能な略矩形状の本体部と、該本体部の下端から延設された複数の上記折曲げ片部と、各折曲げ片部を内方へ折り曲げ可能にする上記折り目部とからなり、前記底部は、前記胴部の内周面に沿う多角形板状に形成されて、折り曲げられた前記複数の折曲げ片部上に載置されることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)(b)は、本発明に係わる多層段ボールの折り目構造の一例を示す。
この折り目構造Aは、段ボール基材10の端部に形成された折曲げ片部11を折り目部12に沿って折り曲げ可能にしている。
【0010】
段ボール基材10は、所謂三層段ボール板を裁断したものであり、四枚のライナ10a1,10a2,10a3,10a4の間に、それぞれ縦断面波形状に形成された中しん10b1,10b2,10b3を挟んで貼り合わせて一体とした三層状に構成されている。
尚、この段ボール基材10の層数は、図示例に限定されるものではないが、少なくとも2層以上であることが好ましい。
【0011】
折曲げ片部11は、段ボール基材10の端部側に配置され、段ボール容器等を構成する際に曲げられる部位である。
この折曲げ片部11は、その延設方向(図1における上下方向)の長さが特に限定されるものでなく、その長さが比較的短い所謂ショートフラップであっても構わない。
【0012】
折り目部12は、折込み側の面11aに、所定深さの切込みを連続させてなる連続切込み部12aと、該連続切込み部12aに沿って断面凹曲面状に押潰された押潰し凹部12bとを形成し、更に、折込み側の面の裏面11bに前記連続切込み部12aに沿うようにして、所定深さの切込み12c1を断続的に配設してなる断続切込み部12cを形成している。
【0013】
連続切込み部12aは、本実施の形態の好ましい一例によれば、折込み側の面11aから二層目までを、すなわち、ライナ10a1,10a2及び中しん10b1,10b2を切断した切込みである。
【0014】
押潰し凹部12bは、連続切込み部12aに所定形状の金型を押し付けることで形成され、本実施の形態の好ましい一例によれば、おおよそ折込み側の面11aから二層目までを、すなわち、ライナ10a1,10a2及び中しん10b1,10b2を押し潰してなる。
【0015】
尚、上記連続切込み部12a及び上記押潰し凹部12bの深さは、上記一例に限定されるものでなく、折曲げ片部11の曲げ易さを調整するようにして適宜設定される。例えば、折曲げ片部11を曲げ易くするためには、連続切込み部12a及び押潰し凹部12bの深さを比較的深くすればよく、また、折曲げ片部11を曲げ難くするためには、連続切込み部12a及び押潰し凹部12bの深さを比較的浅くすればよい。
【0016】
断続切込み部12cは、折込み側の面の裏面11bから一層目まで、すなわちライナ10a4及び中しん10b3を切断する深さの切込み12c1を、上記連続切込み部12aに沿って断続的に配設してなる。
前記切込み12c1の長さ及び配置間隔は、折曲げ片部11の曲げ易さを調整するようにして適宜設定される。例えば、折曲げ片部11を曲げ易くするためには、前記切込み12c1の長さを広くするとともにその配置間隔を狭くすればよく、また、折曲げ片部11を曲げ難くするためには、前記切込み12c1の長さを狭くするとともにその配置間隔を長くすればよい。
【0017】
而して、上記構成の折り目構造Aによれば、折曲げ片部11が折り曲げられていない状態(図5(a)の状態)で、折込み側の面11aが内側になる方向の曲げ力が加わった際に、連続切込み部12aにおける対向する切断端面同士が当接、すなわちライナ10a1,10a2及び中しん10b1,10b2における連続切込み部12aよりも上側の部位と下側の部位とが当接することで、前記曲げ力に対する反力が生じる。したがって、前記曲げ力が比較的小さい場合には、前記反力により、折曲げ片部11が折れ曲がっていない状態(図5(a)の状態)が維持される。
【0018】
そして、上記曲げ力が所定力以上となった場合には、連続切込み部12aにおける切断端面の近傍、すなわちライナ10a1,10a2及び中しん10b1,10b2における連続切込み部12a近傍が、押潰し凹部12b内側へ撓む(図5(b)参照)とともに、折込み側の面の裏面11bにおいては各断続切込み部12cが広がることで張力が逃がされるため、容易に折曲げ片部11が折り曲げられることになる。
【0019】
次に、上記構成の折り目構造Aを備えた多層段ボール容器20について詳細に説明する。
この多層段ボール容器20は、一枚の段ボール基材20'を折り曲げることで、略直立する八角形筒状の胴部21を形成し、該胴部21内に底部22を挿入してなり(図2参照)、前記段ボール基材20'に、上記構成の折曲げ片部11及び折り目部12を具備している。
【0020】
前記段ボール基材20'は、三層段ボールを所定形状に裁断してなり、略矩形状の本体部21aと、該本体部21aの下端から延設された複数の折曲げ片部11と、各折曲げ片部11を内方へ折り曲げ可能にする折り目部12とを具備している(図3参照)。
【0021】
本体部21aは、複数並設された上下方向の折り目部21a1に沿って、略八角形筒状に折り曲げ可能な略横長矩形状を呈し、図示における左端側の糊代部21a2が該本体部21aの右端部に重ね合わせられ止着されるようになっている。尚、前記折り目部21a1は、手作業によって折り曲げられる部位であり、その曲げ作業を容易にするために、該折り目部21a1に沿って押し潰された凹部が形成されている。
【0022】
また、この多層段ボール容器20には、上述した折り目構造Aにおける構成を有する折り目部12が形成されている。この折り目部12は、延設方向(図3における上下方向)の長さが比較的短い所謂ショートフラップとなっており、その長さは、少なくとも胴部21における対向する側面21d,21d(図2参照)間の距離の1/2よりも短く設定されている。
【0023】
底部22は、上記段ボール基材20’と同様の三層段ボールを裁断することで、前記胴部21の内周面に沿う多角形板状に形成され、胴部21内において折り曲げられた前記複数の折曲げ片部11上に載置される。
【0024】
次に、上記構成の多層段ボール容器20について、その組立て手順を詳細に説明すれる。
先ず、段ボール基材20’の本体部21aが、手作業によって左右方向(図3における左右方向)の略中央の折り目部21a1(図3中符号pで示す折り目部)に沿って二つ折りにされ、その後に、本体部21aの左端側の糊代部21a2と本体部21aの右端部とが、専用機械(グルアーまたはステッチャー)によって止着される。
その際、段ボール基材20’は、前記糊代部21a2を本体部21aの右端部に精度よく止着するために、二つ折りにされて前記専用機械にセットされた後に、同専用機械によって上下端部が揃えられたり、同専用機械によって搬送されたりする。それらの作業の際、段ボール基材20’は、前記専用機械によって上下方向(図3における上下方向)から挟まれることで、各折り目部12に曲げ力を受けるが、上述したように、折り目部12を構成する連続切込み部12aの切断端面同士の当接により前記曲げ力に対する反力が生じるので、折曲げ片部11が折り目部12に沿って曲がってしまうことはない。
【0025】
その後、段ボール基材20’は、糊代部21a2が本体部21aの右端部に止着された二つ折りの状態で、縦置きにされて保管されるが、その保管の際においても、連続切込み部12aの切断端面同士の当接による曲げ力に対する反力によって、折曲げ片部11の折れ曲がりが防止される。
【0026】
上記二つ折り状態の段ボール基材20’が現場等において組み立てられる際には、先ず、二つ折り状態の本体部21aが開かれるようにして、略八角形筒状の胴部21が形成される。そして、各折曲げ片部11が所定の曲げ力により折り目部12に沿って内方へ折り曲げられる。尚、これらの曲げ加工は、通常手作業により行われるが、専用機械を用いて行っても構わない。
次に、略八角形筒状の胴部21内に底部22が挿入される。該底部22は、胴部21内において折り曲げられた複数の折曲げ片部11上に載置され、接着やテーピング等の周知の固定手段により固定される(図4参照)。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
本発明によれば、所定力以上の曲げ力により折曲げ片部を折り曲げ可能であり、特に折曲げ片部が比較的短い所謂ショートフラップ部であった場合にも、容易に折り曲げることができる。
その上、折曲げ片部が折り曲げられる前の状態における保管の際や、折曲げ片部の先端へ専用機械(グルアーまたはステッチャー)等によって若干の押圧力が加わった際等には、連続切込み部が切断端面同士を当接させて曲げ力に対する反力を生ずるため、折り目部がへたってしまうようなことがない。
したがって、折曲げ片部の折り曲げを容易にするとともに、折り目部のへたりを防止することで、組立て前の保管性及び組立て性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる多層段ボールの折り目構造の一例を示す要部斜視図であり、(a)は多層段ボールが折り曲げられる前の状態、(b)は多層段ボールが折り曲げられた後の状態を示す。
【図2】 同多層段ボールの折り目構造を備えた多層段ボール容器の分解斜視図である。
【図3】 同多層段ボール容器の胴部を構成する段ボール基材の平面図である。
【図4】 同多層段ボール容器の要部断面図である。
【図5】 従来の段ボール容器の一例を示し、(a)は展開図であり、(b)は要部断面図である。
【符号の説明】
10:段ボール基材
11:折曲げ片部
12:折り目部
12a:連続切込み部
12b:押潰し凹部
12c:断続切込み部
20:多層段ボール容器
20’:段ボール基材
21:胴部
22:底部
A:折り目構造
Claims (3)
- 段ボール基材の端部に形成された折曲げ片部を折り目部に沿って折り曲げ可能にしている多層段ボールの折り目構造であって、
前記折り目部は、折込み側の面に、所定深さの切込みを連続させてなる連続切込み部と、該連続切込み部に沿って断面凹状に押潰された押潰し凹部とを形成し、更に、折込み側の面の裏面に、前記連続切込み部に沿うようにして、所定深さの切込みを断続的に配設してなる断続切込み部を形成していることを特徴とする多層段ボールの折り目構造。 - 上記折曲げ片部は、段ボール基材の端部に延設されているショートフラップ部であることを特徴とする請求項1記載の多層段ボールの折り目構造。
- 上記折曲げ片部及び上記折り目部を有する一枚の段ボール基材を折り曲げることで、略直立する角筒状の胴部を形成し、該胴部内に底部を挿入してなる多層段ボール容器であって、
前記段ボール基材は、角筒状に折り曲げ可能な略矩形状の本体部と、該本体部の下端から延設された複数の上記折曲げ片部と、各折曲げ片部を内方へ折り曲げ可能にする上記折り目部とからなり、
前記底部は、前記胴部の内周面に沿う多角形板状に形成されて、折り曲げられた前記複数の折曲げ片部上に載置されることを特徴とする請求項1又は2記載の多層段ボールの折り目構造を備えた多層段ボール容器。
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