JP3821027B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射装置に関し、特に変位を圧力変換するアクチュエータを備え、このアクチュエータを用いて弁部材を駆動する燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料噴射装置としては、例えばディーゼル機関用燃料噴射システムとしてのコモンレール式燃料噴射装置において、ピエゾアクチュエータ等を用いてピストン部材を変位させることによって、弁部の開閉を行なう弁部材としてのノズルニードルを駆動させ、噴孔から燃料をエンジン100へ噴射供給するものが知られている。
【0003】
この種の燃料噴射装置は、例えば3方弁を用い、ピストン部材の変位を、ピストン部材の下部側に設けられ、ピストン部材と3方弁の作動ピストンとで区画された変位拡大室(以下、ポンプ室と呼ぶ)の圧力を増減するようにするものがある。このポンプ室の圧力を増減させることで、3方弁の作動ピストンを変位させ、3方弁を駆動させる。この3方弁は、高圧燃料通路とドレーン通路との連通を切替えるもので、この切替えによって、作動ピストンの下流側に設けたノズルニードルの背圧室を制御することで、ノズルニードルのリフトを制御している。
【0004】
なお、ピエゾアクチュエータの収縮時には、作動ピストンは、ピストン部材側の所定の上方位置にあって、3方弁が高圧燃料通路と連通する背圧室へ高圧燃料を導入することで、ノズルニードルは閉弁側へ押圧され、従って閉弁している。一方、ピエゾアクチュエータの伸長時には、ピストン部材の下方移動(ピエゾアクチュエータの微小変位による微小移動)により、ポンプ室の圧力が上昇する。このとき、ピストン部材より小径の作動ピストンが所定量(上記変位が拡大された所定作動量)下降することで、高圧燃料通路との連通が閉鎖され、ドレーン通路との連通に切替えられる。よって、ノズルニードルがリフトして燃料噴射が行なわれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の構成では、エンジン100の運転中、燃料噴射が繰返し行なわれる際、ピエゾアクチュエータの伸縮が繰返されるが、作動ピストンの移動、およびポンプ室内の圧力変化がこの伸縮に追従しないおそれがある。特に、燃料噴射終了の際、通電停止することでピエゾアクチュエータが収縮するとき、高応答性のピエゾアクチュエータの収縮に対して、ポンプ室に所定容積を確保するため設けたピストン部材と作動ピストンとで区画される軸方向離間距離へオーバーシュートしてしまう等により、次の噴射開始つまり、ピエゾアクチュエータの伸長が行なわれるまでの期間に、作動ピストンが正規の収縮時停止位置へ戻らない場合がある。
【0006】
この対策として、高応答性のピエゾアクチュエータの移動速度と、作動ピストンの移動速度との中間速度となる部材を挿入することで緩和する方法が考えられる。例えば、軽量のチェックプレートと、このチェックプレートと作動ピストンとの間に付勢スプリングを配置する構成である。
【0007】
しかしながら、ピエゾアクチュエータは、運転状態に対応、すなわち低速から高速域にわたる使用範囲に対応してその伸縮速度が変わるため、物理量(質量、付勢力等)で決まってしまう上記構成では場合によって、ポンプ室にエア等が生じ、駆動エネルギーが過大となるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、したがってその目的は、変位を圧力変換するアクチュエータと、その圧力に応じて制御される切替弁を備えたものにおいて、その切替弁の圧力室に、エア発生なく、燃料充填可能な燃料噴射装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1によれば、通電により伸縮する駆動部材と、駆動部材の伸縮に伴ってシリンダ内を摺動するピストン部材と、このピストン部材の一端側に設けられ、ピストン部材とともにポンプ室を区画する作動ピストンを有する切替弁と、駆動部材の伸縮による変位量を制御する制御手段とを備え、この制御手段によって駆動された駆動部材の変位をポンプ室の圧力変化に変換することで燃料噴射を行なう燃料噴射装置において、制御手段は、燃料噴射を終了させるために、駆動部材を収縮させた後に、次回燃料噴射の開始までの間、噴射を行なわない程度に駆動部材の伸縮を繰返させる。
【0010】
駆動部材の伸縮速度に対して、駆動部材に係合もしくは当接によって移動速度が伝えられるものではなく、駆動部材の伸縮による変位を一旦圧力変換した上でその圧力に応じて移動する作動ピストンの移動速度は、一般に遅くなる傾向があり、追従性が劣る。特に、燃料噴射終了の際、駆動部材を収縮させるとき、作動ピストンのオーバーシュート現象等により正規停止位置に戻るのが遅れる場合がある。
【0011】
これに対して、本発明の燃料噴射装置では、駆動部材の伸縮による変位量を制御する制御手段を用いて、次回燃料噴射の開始までの間、噴射を行なわない程度に駆動部材の伸縮を行なわせるので、オーバーシュート等により正規停止位置からずれてしまった作動ピストンを正規停止位置へ移動させることが可能である。
【0012】
さらに、その正規停止位置への作動ピストンの移動を、複数回に分けて駆動部材の伸縮を繰返すので、燃料噴射を生じてしまうような作動ピストンの移動量、つまり切替弁の作動状態となってしまうことを防止できる。
【0013】
本発明の請求項2によれば、ポンプ室を形成するピストン部材と作動ピストンとの間には、チェックプレートが設けられている。
【0014】
これにより、作動ピストンを正規停止位置に戻すのに、チェックプレートと、チェックプレートと作動ピストンとの間に設けた付勢スプリングとによる構成による付勢スプリングによる付勢力を用いる必要がないので、付勢スプリングを無くすことで、ポンプ室内の無駄容積の低減が図れるので、ポンプ室の容積を小さくすることができ、変位に対する圧力上昇、つまり圧力変換効率の向上が図れる。
【0015】
本発明の請求項3によれば、チェックプレートは、ピストン部材から離間している間、チェックプレートと作動ピストンとで区画される側のポンプ室部分へ流体が流入可能な逆止弁を備えている。
【0016】
これにより、ピストン部材とチェックプレートとの間で区画される容積に滞留する流体、すなわち燃料を、ピストン部材から離間している間、チェックプレートと作動ピストンとで区画される側のポンプ室部分へ移動させることが可能である。したがって、ポンプ室への燃料充填を確実に行なうことが可能である。
【0017】
さらに、上記比較構成のチェックプレート等の質量と付勢スプリングの付勢力という物理量で決まるチェックプレートの移動速度では、運転状態の変化に対応する駆動部材の伸縮速度の変化に対して対応できず、ポンプ室にエア等を生じる場合がある。これに対して、本発明の燃料噴射装置では、制御手段によって、噴射と噴射の間、つまり運転状態に応じて次回噴射を開始するまでの期間に、駆動部材の伸縮を繰返し行なうので、ポンプ室にエア等が発生することを防止可能である。
【0018】
上記駆動部材は、本発明の請求項4に記載のように、電気信号により伸縮する変位発生部材としての圧電素子からなる。すなわち、変位を圧力変換するアクチュエータとして、高応答性を有する圧電素子からなるものに好適である。
【0019】
本発明の請求項5によれば、切替弁は、ポンプ室の圧力変化に応じて摺動自在に移動可能な作動ピストンと、作動ピストンの移動位置に応じて、低圧燃料通路または高圧燃料通路と、弁部材に加わる背圧を制御する制御室とを選択的に導通させる弁本体とを備え、弁部材は、制御室内の圧力が増減されることで噴孔を開閉する。すなわち、切替弁が、作動ピストンと弁本体とからなり、ポンプ室の圧力変化に応じて摺動自在に移動可能な作動ピストンを有するものに好適である。例えば弁本体に設けられた開弁圧より小さいポンプ室内の圧力であれば、切替弁の作動、切替え状態となることはなく、従って、開弁圧より小さいポンプ室内の圧力の範囲で、上記制御手段による噴射と噴射の間における駆動部材の伸縮の繰返しが容易に行なうことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の蓄圧燃料噴射装置を、ディーゼル機関に搭載されるコモンレール式燃料噴射装置に適用して、具体化した実施形態を図面に従って説明する。図1は、本発明の実施形態の燃料噴射装置を、コモンレール式燃料噴射装置のシステムに適用して、具体化したシステム全体の概略構成を表す構成図である。図2は、図1中の制御系を表わす概略構成図である。図3は、図1中の本発明の実施形態の燃料噴射装置としてのインジェクタの構成を示す部分断面図である。図4は、図3に示す本発明の要部であるピストン部材と作動ピストンの周りを表す断面図である。図5は、図1中のECUにて実行される噴射と噴射との間での駆動部材駆動制御を示すフローチャートである。なお、図6は、本発明の一実施例の駆動部材駆動制御による燃料噴射装置の作動を説明するタイムチャートである。
【0021】
(コモンレール式燃料噴射装置に適用する本実施形態の概略構成)
図1に示すように、コモンレール式燃料噴射装置は、燃料タンク104から燃料を汲み上げる高圧ポンプ107と、高圧ポンプ107から吐出された高圧燃料を蓄圧するサージタンクの一種であるコモンレール105と、多気筒(図1では4気筒)ディーゼル機関(以下、エンジンと呼ぶ)100の各気筒毎に設けられ、コモンレール105に蓄圧された高圧燃料をその気筒の燃焼室に噴射供給する燃料噴射弁(以下、インジェクタと呼ぶ)1a〜1dと、エンジン100の運転状態を検出する運転状態検出手段170と、運転状態検出手段170で検出された運転状態に応じてインジェクタ1a〜1dからエンジン100へ噴射供給される燃料噴射を制御する制御手段80とを備えている。なお、この制御手段80は、エンジン100を制御する制御装置であって、複数のインジェクタ1(1a〜1d)の制御に限らず、高圧ポンプ107等を電子制御する電子式コントロールユニット(以下、ECUと呼ぶ)である。
【0022】
ここで、エンジン100は、バッテリーの電力で回転する図示しないスタータ(エンジン始動用モータ)によってエンジン100のフライホイール(図示せず)が、エンジン100を始動するのに必要な最低回転速度以上で回されることで始動する。スタータは、車両乗員がイグニッションスイッチをOFF位置からST位置に回すことで、ECU80により通電が開始される(スタータON信号がONされる)。
【0023】
複数個(本実施形態では4個)のインジェクタ1は、エンジン100の各気筒(シリンダー)の燃焼室に取り付けられて、エンジン100の各燃焼室内に高圧燃料を噴射供給する。そして、各インジェクタ1からエンジン100への燃料噴射量および燃料噴射時期等は、アクチュエータとしての、通電により伸縮する駆動部材(以下、ピエゾアクチュエータと呼ぶ)(噴射期間可変手段)6a〜6dへの通電および通電停止を、ECU80で電子制御することにより決定される。
【0024】
なお、このインジェクタ1は、本発明の実施形態に係わる燃料噴射装置であって、このインジェクタ1の詳細説明、および本発明の特徴である変位を圧力変換するアクチュエータと、その圧力に応じて制御される切替弁を備えたものにおいて、その切替弁の圧力室に、エア発生なく、燃料充填可能な構成については、後述する。
【0025】
コモンレール105は、比較的に高い(大気圧の100倍から1000倍以上の範囲)圧力(以下、コモンレール圧力と呼ぶ)の高圧燃料を蓄える一種のサージタンクで、高圧パイプ108を介して各インジェクタ1に接続されている。なお、各インジェクタ1、コモンレール105および高圧ポンプ107から燃料タンク104への燃料のリターン配管109は、コモンレール105内のコモンレール圧力が、限界蓄圧圧力を超えることがないようにプレッシャリミッタ115からも圧力を逃がせるように構成されている。
【0026】
高圧ポンプ107は、エンジン100のクランク軸(図示せず)の回転に伴って回転することで、燃料タンク104内の燃料を燃料フィルター116を介在した燃料配管117を経て汲み上げるフィードポンプ(図示せず)を内蔵し、このフィードポンプにより吸い出された燃料を加圧して高圧燃料を圧送するサプライポンプよりなる。この高圧ポンプ107には、吐出量調整用電磁弁としての流量制御電磁弁119が取り付けられている。その流量制御電磁弁(以下、噴射圧力制御用電磁弁と呼ぶ)119は、ECU80からの制御信号により電子制御され、高圧ポンプ107から燃料配管118を経てコモンレール105への高圧燃料の圧送量を調整することで、各インジェクタ1からエンジン100の燃焼室内に燃料噴射する噴射圧力を変更等をする噴射圧力可変手段である。
【0027】
ECU80は、制御処理、演算処理を行うCPU、各種の制御プログラムおよびデータを保存するROM、入力データを保存するRAM、入力回路、出力回路、電源回路およびインジェクタ駆動回路(以下、EDUと呼ぶ)90等より構成されている。このECU80は、後述の運転状態検出手段170で検出したエンジン100の運転状態等に応じて高圧ポンプ107の噴射圧力制御用電磁弁119およびインジェクタ1のピエゾアクチュエータ6(6a〜6d)を制御する。なお、EDU90は、ECU80より出力される制御信号(例えば制御パルス信号)を受けて、ECU80で算出された燃料噴射時期(開弁時期)、燃料噴射量(=噴射期間)に応じて開弁、閉弁させるように、図示しないバッテリーのバッテリ電圧を昇圧させ、各インジェクタ1のピエゾアクチュエータ6へ供給(通電)または供給停止(通電停止)を制御する。
【0028】
ECU80にエンジン100の運転状態を示す信号を入力する運転状態検出手段170としては、図2に示すように、エンジン100の回転速度を検出する回転速度センサ171、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ172、エンジン100が吸入する吸入空気の温度を検出する吸気温センサ173、エンジン100の冷却水温を検出する冷却水温センサ175、エンジン100のクランク軸の回転角度およびエンジン回転速度を検出するクランク角センサ177等がある。さらに、ECU80に入力する基本センサとしては、コモンレール105内に蓄圧された高圧燃料の燃料圧力(噴射圧力、コモンレール圧力)を検出する燃料圧センサ(燃料圧力検出手段)181、およびリターン配管109内の燃料の温度を検出する燃料温センサ(燃料温度検出手段)182等がある。
【0029】
ここで、ECU80は、例えばエンジン100の定常運転の運転状態においては、クランク角センサ177からの例えばクランク軸回転パルス、カム軸回転パルスの信号などの信号を基準にして、インジェクタ1の燃料噴射時期(開弁時期)や、高圧ポンプ107の吐出量(燃料圧送期間)を算出することで、コモンレール圧力を最適な噴射圧力(=目標圧力)に保持するように高圧ポンプ107の噴射圧力制御用電磁弁119への通電タイミングを制御する。
【0030】
そして、回転速度センサ171とアクセル開度センサ172や、冷却水温センサ175または燃料温センサ182で測定した値から燃料噴射量を算出し、この算出した燃料噴射量を達成するために、運転状態毎にコモンレール105内の燃料圧力から算出されたインジェクタ通電時間指令(値)で各インジェクタ1のピエゾアクチュエータ6をそれぞれ駆動することで、エンジン100が運転される。
【0031】
(本実施形態の要部およびその詳細説明)
以下、本実施形態に係わるインジェクタ1について、図3および図4に従って説明する。図3は、図1中の本発明の実施形態の燃料噴射装置としてのインジェクタの構成を示す部分断面図である。図4は、図3に示す本発明の要部であるピストン部材と作動ピストンの周りを表す断面図である。
【0032】
図3に示すように、インジェクタ1は、駆動部であるピエゾアクチュエータ6が収容されている上部ハウジング(以下、ホルダと呼ぶ)2と、その下端側に固定され、切替弁としての3方弁5と噴射ノズル部4とを形成する下部ハウジング3とを備えている。
【0033】
ホルダ2は、略円柱状で、中心軸に対して偏心する縦穴21内に、ピエゾアクチュエータ6が挿入固定されている。この縦穴21の側方には、高圧燃料通路22が略平行に設けられており、高圧燃料通路22の上端側は、ホルダ2の側部に突出している燃料導入管23内を経て、外部のコモンレール105に高圧パイプ108を介して連通している(図1参照)。また、ホルダ2の側部には、低圧燃料通路(以下、ドレーン通路と呼ぶ)24に連通する燃料導出管25が突設されており、この燃料導出管25から流出する燃料は、リターン配管109を介して燃料タンク106へ戻される(図1参照)。なお、このドレーン通路24は、縦穴21とピエゾアクチュエータ6との隙間50を経由し、さらに、この隙間50からホルダ2および下部ハウジング3内を下方に延びる図示しない通路によって3方弁5に連通している。
【0034】
噴射ノズル部4は、ノズルボディ31内を上下方向に摺動するノズルニードル41と、ノズルニードル41の上下移動によって開閉され、高圧燃料通路22(詳しくは、その下流に設けられた燃料溜まり42)から供給される高圧燃料をエンジン100の各気筒に噴射する噴孔43とを備えている。なお、この燃料溜まり42は、ノズルニードル41の中間部周りに設けられ高圧燃料通路22の下端部が接続され、開口している。ノズルニードル41は、燃料溜まり42から開弁方向の燃料圧を受けるとともに、ノズルニードル41の上端面に面して設けた背圧室(以下、制御室と呼ぶ)44内の燃料圧が降下すると、ノズルニードル41がリフトして噴孔43が開放され、燃料噴射がなされる。
【0035】
この制御室44の圧力は、切替弁としての3方弁5の作動によって増減される。なお、この3方弁5は、高圧燃料通路22またはドレーン通路24と、制御室44とを選択的に連通させるものであればよくいずれ切替弁でもよい。
【0036】
なお、この切替弁の詳細については後述する。
【0037】
ピエゾアクチュエータ6は、電気信号により伸縮する変位発生部材であって、図3に示すように、薄肉の金属管よりなる筒状容器部材(以下、容器部材と呼ぶ)11の上半部内には、電圧の印加または解除により伸縮するいわゆる積層型圧電体素子(ピエゾスタック)61を、下半部内には、積層型圧電体素子61の下端面に当接して容器部材11内を摺動する駆動ピストン62を収容している。この積層型圧電体素子61は、両面に電極を形成した円板状の圧電体を積層してなり、各圧電体の正電極および負電極は、それぞれ積層体の側面に塗布成形した側面電極(図示せず)を介して、外部接続部としてのコネクタ部7のリード線72a、72bに接続している。なお、積層型圧電体素子61の外周には絶縁部材63が配設されて、容器部材11との間の絶縁を確保している。
【0038】
ピエゾアクチュエータ6を駆動するために外部から外部信号を受ける外部接続部としてのコネクタ部7は、容器部材11の上端開口内に溶接固定される円柱状のコネクタボディ71を有している。なお、リード線72a、72bは、コネクタボディ71内に設けた挿入穴を通じて、コネクタボディ71に一体に設けたコネクタ73に接続される。このとき、コネクタボディ71にリード線72a、72bが気密に封止されることによりシール性と絶縁性が確保される。なお、このコネクタボディ71の外周には、ホルダ2に組付けるための固定部材としてのリテーニングナット74とフランジ部75が設けられている。
【0039】
駆動ピストン62は、下端面より下方に突出する小径のロッド64を有し、このロッド64周りに配設したバネ部材としての予荷重スプリング65を、容器部材11の下端開口内に配した筒状のシート部材12との間で圧縮することにより、積層型圧電体素子61に所定の予荷重を加える構成を有する。なお、ロッド64の下端部は、シート部材12の筒内に摺動自在に挿通され、先端はシート部材12を貫通して、ダイヤフラム66に当接している。シート部材12は、上面が予荷重スプリング65を支持するスプリングシートとして機能し、外周面は容器部材22の内周面に溶接固定されている。ダイヤフラム66は、薄肉の金属板を略皿バネ状に形成してなり、外周縁部はシート部材12の下面外周部に設けた環状凸部に溶接固定される。これにより、容器部材11の下端開口部のシールが確保される。また、ダイヤフラム66は、中央部がロッド64に常時当接し、その変位に追従して変位するように構成されている。すなわち、積層型圧電体素子61の駆動によるストロークを、駆動ピストン62およびダイヤフラム66を介して、下方のピストン部材52に伝達することができる。駆動ピストン62およびダイヤフラム66は、変位発生部材である積層型圧電体素子61に対し、変位伝達部材として機能する。
【0040】
切替弁としての3方弁5は、ポンプ室53の圧力変化に応じて摺動自在に移動可能な作動ピストン54と、作動ピストン54の移動位置に応じて、高圧燃料通路22またはドレーン通路24と、制御室44とを選択的に連通させる弁本体51とを有している。この弁本体51は、図3に示すように、高圧燃料通路22またはドレーン通路24へ連通するポートを開閉するボール状の弁体(以下、ボール弁と呼ぶ)51aを有している。
【0041】
なお、積層型圧電体素子61の変位に応じて圧力変化するポンプ室(以下、変位拡大室と呼ぶ)53は、作動ピストン(以下、小径ピストンと呼ぶ)54の径より大きいピストン部材(以下、大径ピストンと呼ぶ)52と作動ピストン54とで区画された圧力室として構成する。すなわち、図3に示すように、大径ピストン52は、ホルダ2内に縦穴21と同軸に形成されたシリンダ内に摺動自在に保持される。大径ピストン52の変位は、ホルダ2と下部ハウジング3内に設けたノズルボディ31の衝合部に形成される変位拡大室53によって油圧変換され、さらにノズルボディ31の上端部中央、すなわち、燃料噴射装置の略中心軸上に設けたシリンダ32内に摺動自在に保持される小径ピストン54に伝達される。このとき、これらピストン52、54の径差によって駆動ストロークが増幅される。積層型圧電体素子61の変位量は、一般に、積層する圧電体の数を増やせば増加できるが高価となる。これに対して、ピストン52、54の径差を変えることで駆動ストロークを増幅することが可能であるので、ピエゾアクチュエータ6で発生する変位が微小であっても、切替弁5の作動ピストンの駆動ストロークを効果的に増幅させて安価に提供可能となる。
【0042】
上記で説明した構成を有する燃料噴射装置1の作動を説明する。ピエゾアクチュエータ6の積層型圧電体素子61にコネクタ部7を通じて電圧を印加すると、積層型圧電体素子61が伸長し、駆動ピストン62、ダイヤフラム66とともに大径ピストン52が下降してポンプ室53の容積が縮小し圧力上昇する。これに伴い小径ピストンである作動ピストン54が下降して、3方弁5の弁本体51のボール弁51aを押し下げると、制御室44内の燃料が3方弁を介してドレーン通路24に排出される。これにより、制御室44つまりノズルニードル41に加わる背圧が低下するので、ノズルニードル41をリフトさせ、燃料が噴射される。一方、噴射を停止させる際には、積層型圧電体素子61の印加電圧を低下させてこれを収縮させる。すると、駆動ピストンがスプリング65の付勢力によって上昇し、これに追従してダイヤフラム66と大径ピストン52が上昇する。これに伴うポンプ室53内の圧力の低下により小径ピストン54が上昇し、ピエゾアクチュエータ6の積層型圧電体素子61から3方弁5のボール弁51aを経て再び制御室44に高圧燃料22が流入して、ノズルニードル44が噴孔43を閉鎖する。
【0043】
これにより、電圧を印加、解除することで伸縮するピエゾアクチュエータ6の積層型圧電体素子61の変位に応じてポンプ室53の圧力変化に変換され、制御室44をドレーン通路24または高圧燃料通路22に選択的に連通させ、それぞれ制御室44の圧力の排出、回復を行なうことで、燃料の噴射、噴射停止が可能である。
【0044】
しかしながら、エンジン100の運転中、燃料噴射が繰返し行なわれる際、高応答性の積層型圧電体素子61の変位に対して、ポンプ室53の圧力変換を介して移動する作動ピストン54の動作が追従しないおそれがある。例えばポンプ室53は、ピエゾアクチュエータ6の伸縮による変位を確実に圧力変換させるため、その容積は零では成立せず、ポンプ室53の容積は少なくとも噴射停止時において、所定の最小容積、すなわちピストン部材52と作動ピストン54との最小離間距離が必要となる(図4参照)。このため、高応答性の、ピエゾアクチュエータ6の収縮に対して、作動ピストン54がその最小離間距離を越えてオーバーシュートしてしまい、場合によっては次の噴射開始までに作動ピストン54が収縮時の正規停止位置へ戻らない場合がある。
【0045】
そこで、本発明の実施形態では、以下の特徴を有する構成を具備するようにする。
【0046】
まず、ポンプ室53を形成するピストン部材52と作動ピストン54との間に、図4に示すように、チェックプレート55を設ける。このチェックプレート55は、ピストン部材52から離間している間、チェックプレート55と作動ピストン54とで区画される側のポンプ室53部分へ流体すなわち燃料が流入可能な逆止弁55aを備えている。なお、この逆止弁55aの弁リフト量は所定量として小さくする方がその弁の応答性向上が図れるので望ましい。
【0047】
これにより、作動ピストンの質量に比べて軽量なチェックプレート55を配置することで、高応答性のピエゾアクチュエータ6の収縮速度と、作動ピストン54の移動速度との中間移動速度となる部材として、チェックプレート55を配置することができるので、移動速度差の緩和が可能で、オーバーシュートによる影響の低下が可能である。
【0048】
さらに、噴射と噴射の間、すなわち噴射停止がなされている間において、ピエゾアクチュエータ6を所定の噴射がおこなわれない程度の伸縮を繰返す駆動制御を行なう(図5および図6参照)。なお、図5は、図1中のECUにて実行される噴射と噴射との間での駆動部材駆動制御を示すフローチャートである。図6は、本発明の一実施例の駆動部材駆動制御による燃料噴射装置の作動を説明するタイムチャートであって、図6(a)〜図6(g)は、それぞれ、積層型圧電体素子61の変位すなわちピエゾアクチュエータ6の変位、ピストン部材(大径ピストン)の変位、チェックプレート55の変位、ポンプ室(変位拡大室)の圧力、作動ピストン(小径ピストン)の変位、制御室44の圧力、ノズルニードル41のリフト量の特性を表すグラフである。
【0049】
これにより、アンダーシュート等により正規停止位置からずれてしまった作動ピストン54を正規停止位置へ移動させることが可能である。さらに、その正規停止位置への作動ピストン54の移動を、複数回に分けてピエゾアクチュエータ6の駆動制御を行なうので、燃料噴射が生じてしまうような作動ピストン54の移動を起こしてしまう危険を低減でき、従って切替弁5が燃料噴射させる状態への切替わってしまうことを防止できる。
【0050】
詳しくは、上記駆動制御の一実施例として、図5に示すように、S501(Sはステップを表す)では、運転状態検出手段170によって検出した検出信号からECU80が、エンジン100の運転状態を検知する。詳しくは、回転速度センサ171とアクセル開度センサ172や冷却水温センサ175等で測定した値からエンジン負荷としての燃料噴射量(要求燃料噴射量)をECU80が算出する。
【0051】
S502では、S501で求めた運転状態としてのエンジン負荷(要求噴射量)とエンジン回転数から、その運転状態に適した目標噴射期間(詳しくは、目標噴射開始時期および終了時期)を、例えば要求噴射量とエンジン回転数の2次元マップから演算によって求める。
【0052】
S503では、S502で求めた目標噴射期間(詳しくは、目標噴射開始時期および終了時期)の範囲で、ピエゾアクチュエータ6に電圧を印加、解除する操作を、複数回(本実施例では、3回)、噴射が生じない程度の伸縮を繰返えす(図6(a)参照)。
【0053】
これにより、図6ように、ピエゾアクチュエータ6に電圧を印加、解除する操作を、噴射が生じない程度の伸縮の範囲で、3回繰返すことで、ポンプ室53への燃料充填が、電圧の印加、解除する操作のごとに、行なうことが可能である(図6(c)参照)。よって、繰返し回数に応じて燃料充填向上が図れる。
【0054】
また、ピエゾアクチュエータ6に電圧の印加、解除の繰返し操作において、印加時には、例え噴射が生じない程度の伸長であっても、ポンプ室53内に確実に正圧を加えることが可能である(図6(d)参照)。したがって、作動ピストン54の自重だけ、あるいは作動ピストン54に付勢スプリング54aを設けて付勢力で戻す構成(図7に示す比較例を参照)に比べて、正規停止位置へ戻す時間の短縮化が図れる(図6(e)参照)。なお、ここで、図6において、破線で示す特性は本実施形態の特性、実線で示す特性は図7の比較例の特性、一点鎖線示す特性は従来の構成での特性を示すものである。
【0055】
なお、上記チェックプレート55に設けた逆止弁55aの作用によって、ピストン部材52とチェックプレート55とが離れている間、チェックプレート55と作動ピストン54とで区画される側のポンプ室53部分へ燃料を移動させることが可能である。したがって、ポンプ室53への燃料充填を確実に行なうことが可能である。
【0056】
さらにまた、作動ピストン54を正規停止位置に戻すのに、チェックプレート55と、チェックプレートと作動ピストンとの間に設けた付勢スプリング54aとによる構成(図7参照)のように、付勢スプリング54aによる付勢力を用いる必要がないので、付勢スプリング54aを無くすことで、ポンプ室内の無駄容積の低減が図れるので、ポンプ室の容積を小さくすることができ、変位に対する圧力上昇、つまり圧力変換効率の向上が図れる。さらにまた、図7に示す比較例のように、付勢スプリング54aを有する構成で無駄容積を減らすため設けたスプリングガイド(詳しくは、付勢スプリング54aの内周部に立設するガイド部)54bを設ける必要がないので、製造コストの低減が図れる。
【0057】
さらにまた、比較例(図7参照)の構成ではチェックプレート55等の質量と付勢スプリング54aの付勢力という物理量で決まるチェックプレート55の移動速度では、運転状態の変化に対応するピエゾアクチュエータ6の伸縮速度の変化に対して対応できず、ポンプ室53にエア等を生じる場合がある。これに対して、本発明の燃料噴射装置1では、ECU80によって、噴射と噴射の間、つまり運転状態に応じて次回噴射を開始するまでの期間に、ピエゾアクチュエータ6の伸縮を繰返し行なうので、ポンプ室53にエア等が発生することを防止可能である。
【0058】
なお、本実施形態で説明した3方弁の切替弁5に限らず、切替弁5が、作動ピストン54と弁本体51とからなり、ポンプ室53の圧力変化に応じて摺動自在に移動可能な作動ピストン54を有するものであれば、いずれの弁であってもよい。例えば弁本体51に設けられた開弁圧より小さいポンプ室53内の圧力であれば、切替弁5の作動、切替え状態となることはなく、従って、開弁圧より小さいポンプ室53内の圧力の範囲で、ECU80による噴射と噴射の間における駆動制御、すなわち噴射と噴射の間でのピエゾアクチュエータ6の伸縮の繰返しが容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の燃料噴射装置を、コモンレール式燃料噴射装置のシステムに適用して、具体化したシステム全体の概略構成を表す構成図である。
【図2】図1中の制御系を表わす概略構成図である。
【図3】図1中の本発明の実施形態の燃料噴射装置としてのインジェクタの構成を示す部分断面図である。
【図4】図3に示す本発明の要部であるピストン部材と作動ピストンの周りを表す断面図である。
【図5】図1中のECUにて実行される噴射と噴射との間での駆動部材駆動制御を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例の駆動部材駆動制御による燃料噴射装置の作動を説明するタイムチャートである。
【図7】比較例の燃料装置のうち、ピストン部材と作動ピストンの周りを表す断面図である。
【符号の説明】
1(1a〜1d) インジェクタ(燃料噴射弁)
2 上部ハウジング(ホルダ)
21 縦穴
22 高圧燃料通路
24 ドレーン通路(低圧燃料通路9
3 下部ハウジング
31 ノズルボディ
4 噴射ノズル部
41 ノズルニードル
42 燃料溜まり
43 噴孔
44 制御室(背圧室)
5 切替弁(3方弁)
51 弁本体
51a ボール弁(弁体)
52 ピストン部材(大径ピストン)
53 ポンプ室(変位拡大室)
54 作動ピストン(小径ピストン)
55 チェックプレート
55a 逆止弁
6(6a〜6d) ピエゾアクチュエータ(駆動部材、噴射期間可変手段)
61 積層型圧体素子
62 駆動ピストン
63 絶縁部材
64 ロッド
65 予荷重スプリング
66 ダイヤフラム
7 コネクタ部
80 ECU(制御手段、制御装置)
100 エンジン
104 燃料タンク
105 コモンレール
6(6a〜6d) ピエゾアクチュエータ(噴射期間可変手段)
107 高圧ポンプ
119 噴射圧力制御用電磁弁(噴射圧可変手段、流量制御弁)
170 運転状態検出手段

Claims (5)

  1. 通電により伸縮する駆動部材と、
    前記駆動部材の伸縮に伴ってシリンダ内を摺動するピストン部材と、
    前記ピストン部材の一端側に設けられ、前記ピストン部材とともにポンプ室を区画する作動ピストンを有する切替弁と、
    前記駆動部材の伸縮による変位量を制御する制御手段とを備え、前記制御手段によって駆動された前記駆動部材の変位を前記ポンプ室の圧力変化に変換することで燃料噴射を行なう燃料噴射装置において、
    前記制御手段は、燃料噴射を終了させるために、前記駆動部材を収縮させた後に、次回燃料噴射の開始までの間、噴射を行なわない程度に前記駆動部材の伸縮を繰返させることを特徴とする燃料噴射装置。
  2. 前記ポンプ室を形成する前記ピストン部材と前記作動ピストンとの間には、チェックプレートが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
  3. 前記チェックプレートは、前記ピストン部材から離間している間、前記チェックプレートと前記作動ピストンとで区画される側の前記ポンプ室部分へ流体が流入可能な逆止弁を備えていることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射装置。
  4. 前記駆動部材は、電気信号により伸縮する圧電素子からなることを特徴とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の蓄圧式燃料噴射装置。
  5. 前記切替弁は、前記ポンプ室の圧力変化に応じて摺動自在に移動可能な前記作動ピストンと、前記作動ピストンの移動位置に応じて、低圧燃料通路または高圧燃料通路と、弁部材に加わる背圧を制御する制御室とを選択的に導通させる弁本体とを備え、
    前記弁部材は、前記制御室内の圧力が増減されることで噴孔を開閉することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
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