JP3821017B2 - 発泡樹脂シート加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、肉や刺身、お弁当や果物を包装する容器となる発泡樹脂シートを加熱する発泡樹脂シート加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、肉や刺身、お弁当や果物を包装する容器は、発泡ポリスチレンシートや発泡ポリプロピレンシートなどの発泡樹脂シートからなり、これらの発泡樹脂シートはセラミッスク系ヒータから放射される赤外線で加熱し、真空成形や圧空成形などの熱形成をして所定の形状の容器にするものである。
【0003】
また、発泡樹脂シートは、加熱によってシート内部に空孔が発生し、この空孔によって断熱効果が出てしかもシート自体の厚みを出すことができるとともに、柔軟性を有するようになり、容器内部に収納された食品を運搬中の衝撃や陳列時の衝撃から守ることができるものである。
【0004】
しかしながら、セラミックス系ヒータから放射される赤外線は、ピーク波長の値が2.5μm以上の赤外線である。
【0005】
このような赤外線を発泡樹脂シートに照射する場合、発泡樹脂シートを形成している高分子化合物は、その構成分子の伸縮振動や変角振動数の吸収帯が約2.5μm以上の波長領域に存在しているものが多く、この結果、この吸収帯近辺にピーク波長を有する赤外線を照射した場合、照射エネルギーがシートの極表面で熱になってしまい、内部には主に伝導によって熱が伝わっていくことになる。
しかしながら、加熱された部分の発泡樹脂シートは加熱中に発泡して空孔が生じるので、この空孔によってさらに内部への熱の伝わりが阻害される結果、発泡樹脂シートを内部まで十分に発泡させることができなかった。
【0006】
このような問題を解消するために、最近では、ピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線を利用して、発泡樹脂シートを内部まで加熱して、内部も十分な発泡を起こさせる技術が知られている。
【0007】
しかし、ピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線を利用して、発泡樹脂シートを内部まで加熱する方式においても、発泡樹脂シートを片面からのみ加熱すると、赤外線が照射される面の温度と、赤外線が照射されない面での温度差が大きくなり、発泡樹脂シートの表面と裏面では発泡程度が異なり、このような状態のまま形成すると、発泡シートが所定の形状に変形せず、厚みにもバラツキが生じるという問題があった。
【0008】
従って、発泡樹脂シートは、その両面にピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線を照射して加熱することにより、発泡樹脂シートの内部を十分に発泡させ、しかも、発泡樹脂シートの両面の発泡程度を等しくするようにしていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一方、容器の観点から見ると、最近では刺身の容器に代表されるように、刺身が乗る容器の表面に美麗性を醸しだす目的で、波の絵柄や菊の絵柄や金箔色など、さまざまな絵柄やさまざまな色で装飾されたものも開発されている。
【0010】
このような、刺身容器を形成する基となる発泡樹脂シートは、一方の面のみに絵柄や色が施されたものであり、他方の面は、何も絵柄や色が施されていないものである。これは、容器の背面は、観察者の死角になり、背面まで装飾を施す必要がないからである。
【0011】
前述したように、発泡樹脂シートは、両面からピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線を照射して加熱する方式が最も良いと考えられていたが、刺身容器のような一方の面のみに絵柄や色が施され、他方の面は何も絵柄や色が施されていない発泡樹脂シートを加熱成形する場合、以下のような問題が発生することがわかった。
【0012】
具体的に説明すると、発泡樹脂シートに施された絵柄や色によって、ピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線を吸収する程度が異なり、ピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線を最もよく吸収する色が施されている発泡樹脂シートの一部の領域は温度が上がり、ピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線をあまり吸収しない色が施されている発泡樹脂シートの一部の領域は温度が上がらず、絵柄や色が施された面の発泡樹脂シートをピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線で加熱する場合、シートの温度上昇にムラが発生し、発泡樹脂シートを十分最適な状態に発泡させることができなかった。
【0013】
これは、ピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線は、色によって吸収される程度が異なる性質を有している結果から生じるものである。
なお、色とは表色系の値で定義することができ、表色系としては次のような種々のものがあり、国際照明委員会(CIE)が規定したL*a*b*表色系(CIELAB系とも称する)、L*C*h表色系、ハンターLab表色系、XYZ(Yxy)表色系、色相(H)、明度(V)、彩度(C)からなるマンセル表色系があり、どの表色系を用いてもよいが、表色系の値が異なれば色が異なることになる。
【0014】
つまり、発泡樹脂シートの表色系の値が不均一になっている面をピーク波長の値が2.5μm未満の赤外線で加熱すると、シートの温度上昇にムラが発生し、発泡樹脂シートを均一に発泡させることができないという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、一方の面が絵柄や色が施され表色系の値が不均一であり、他方の面が絵柄や色が施されておらず表色系の値が均一である発泡樹脂シートであっても、発泡樹脂シート全体を内部まで十分最適な状態に発泡させることができる発泡樹脂シート加熱装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発泡樹脂シート加熱装置は、一方の面が表色系の値が不均一であり、他方の面が表色系の値が均一である発泡樹脂シートを赤外線で加熱する発泡樹脂シート加熱装置であって、発泡樹脂シートを挟んで、表色系の値が不均一である一方の面と対向する位置に赤外線を放射する第1ヒータが配置され、表色系の値が均一である他の面と対向する位置に赤外線を放射する第2ヒータが配置されており、前記第1ヒータから放射される赤外線のピーク波長の値が2.5μm以上であって、前記第2ヒータから放射される赤外線のピーク波長の値が1〜1.5μmであることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発泡樹脂シート加熱装置は、請求項1に記載の発泡樹脂シート加熱装置であって、特に、前記第1ヒータが、セラミックス系ヒータ、もしくは、透明バルブの表面に赤外線放射膜が形成された白熱ランプであって、前記第2ヒータが、透明バルブの白熱ランプであることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、発泡樹脂シートの説明図であり、発泡樹脂シート1は、発泡ポリスチレンシートであって、一方の面Aに装飾を施すために、絵柄として市松模様状に着色が施されており、図中10が着色部分、11が着色がなく発泡ポリスチレンシートの表面がそのまま露出している無着色部分である。そして、発泡ポリスチレンシートの他方の面Bは、発泡ポリスチレンシートの表面が全体にそのまま露出している。
このような発泡樹脂シート1は、一方の面Aは表色系の値が不均一であり、他の面Bは表色系の値が均一なものである。
【0020】
図1では、発泡樹脂シート1は、ロール状に巻かれているが、平面状にして加熱エリアに送り込まれ、後述する発泡樹脂シート加熱装置によって、一方の面Aと他方の面Bの両方に、同時に赤外線が照射されて加熱されるものである。
【0021】
図2は、本発明の発泡樹脂シート加熱装置の説明図である。
発泡樹脂シート加熱装置は、発泡樹脂シート1を挟んで、発泡樹脂シート1の一方の面Aと対向する位置に第1ヒータ2が配置され、他方の面Bと対向する位置に第2ヒータ3が配置されている。
【0022】
第1ヒータ2は、赤外線を放射する熱源として、セラミックス系ヒータ20であって、セラミックス系ヒータ20は発泡樹脂シート1に沿って8個並べられている。
このセラミックス系ヒータ20は、赤外線を放射するセラミックス製の放射部21を有し、この放射部21内にニクロム線等の発熱線がモールドされており、発熱線が発熱することにより、放射部21が加熱され、放射部21から赤外線が放射される。
放射部21から放射される赤外線は、セラミックスの特性により、ピーク波長の値が2.5μmより大きい4〜5μmの赤外線を放射するものである。
なお、ピーク波長とは、分光放射輝度の最大値を示す波長のことである。
【0023】
第2ヒータ3は、赤外線を放射する熱源として、透明バルブ31内にフィラメントが配置された白熱ランプ30であって、白熱ランプ30は発泡樹脂シート1に沿って8個並べられている。
この白熱ランプ30は、バルブ31が透明であるのでフィラメントから放射された光がバルブ31を透過するものあり、ピーク波長の値が2.5μmより小さい1〜1.5μmの赤外線を良好に放射するものである。
なお、図2は、白熱ランプ30の背後に反射ミラーMが配置されているが、必要に応じて設けられているものである。
つまり、第1ヒータ2から放射される赤外線のピーク波長の値が、第2ヒータ3から放射される赤外線のピーク波長の値より、大きいものである。
【0024】
このように、発泡樹脂シート1は、表色系の値が不均一である一方の面Aが第1ヒータ2から放射されるピーク波長の値が4〜5μmの赤外線で加熱されるものであり、表色系の値が均一である他方の面Bが第2ヒータ3から放射されるピーク波長の値が1〜1.5μmの赤外線で加熱される。
【0025】
表色系の値が不均一である発泡樹脂シート1の一方の面Aをピーク波長の値が2.5μm以上である赤外線で加熱する理由を説明すると、ピーク波長の値が2.5μm以上である赤外線は色の違い、つまり、表色系の値が違っていても、それぞれの色に吸収される程度と昇温速度がほぼ同じになる。図1で説明すると、表色系の値が異なる着色部分10と無着色部分11とでは、ピーク波長の値が2.5μm以上である赤外線の吸収程度がほぼ同じになる。その結果、着色部分10と無着色部分11の温度が上昇する昇温速度もほぼ同じになり、一方の面A全体のピーク波長の値が2.5μm以上である赤外線の吸収程度にムラが無く、また、昇温速度にもムラが発生しない。
【0026】
また、発泡樹脂シート1の一方の面Bは、表色系の値が均一であり、発泡樹脂シート1の内部まで十分に加熱する必要があるので、ピーク波長の値が2.5μm未満である赤外線を用いて加熱する。
【0027】
つまり、本発明の発泡樹脂シート加熱装置を用いれば、発泡樹脂シート1は、ピーク波長が異なる赤外線で、それぞれの面を同時に加熱することができるので、発泡樹脂シート1全体を内部まで十分に最適状態に加熱できる。よって、加熱後の発泡樹脂シート1を成形して所定の形状の容器に成形しても、厚みにもバラツキが生じるという問題がない。
【0028】
図3は、発明の他の発泡樹脂シート加熱装置の説明図である。
図2で示す発泡樹脂シート加熱装置との違いは、第1ヒータの構造が異なる。図3では、第1ヒータ4は、透明バルブ41内にフィラメントが配置されており、この透明バルブ41の表面に遠赤外線放射膜42が形成された白熱ランプ40を熱源とするものである。そして、第1ヒータ4は、発泡樹脂シート1の表色系の値が不均一である一方の面Aに対向する位置に配置されており、白熱ランプ40は発泡樹脂シート1に沿って8個並べられている。
なお、図2は、白熱ランプ40の背後に反射ミラーMが配置されているが、必要に応じて設けられているものである。
【0029】
遠赤外線放射膜42は、主に、SiO2よりなるものであり、フィラメントから放射された光により、遠赤外線放射膜42が熱せられ、ピーク波長の値が約3μmの赤外線を放射するものである。
第2ヒータ3は、図1に示す第2ヒータ3と同じであるので、構造の説明は省略するが、発泡樹脂シート1の表色系の値が均一である他の面Bと対向する位置に配置されている。そして、ピーク波長の値が2.5μmより小さい1〜1.5μmの赤外線を良好に放射するものである。
つまり、第1ヒータ4から放射される赤外線のピーク波長の値が、第2ヒータ3から放射される赤外線のピーク波長の値より、大きいものである。
【0030】
このように、遠赤外線放射膜42はピーク波長の値が約3μmの赤外線を放射するものであるので、表色系の値が不均一である発泡樹脂シート1の一方の面A全体に赤外線がムラ無く吸収され、昇温速度を面A全体で等しくできる。
【0031】
このように、図3に示す発泡樹脂シート用加熱装置によれば、発泡樹脂シート1は、表色系の値が不均一である一方の面Aが第1ヒータ4から放射されるピーク波長の値が約3μmの赤外線で加熱されるものであり、表色系の値が均一である他方の面Bが第2ヒータ3から放射されるピーク波長の値が1〜1.5μmの赤外線で加熱される。
【0032】
従って、発泡樹脂シート1は、ピーク波長の値が異なる赤外線で、それぞれの面を同時に加熱することができるので、発泡樹脂シート1全体を内部まで十分に最適状態に加熱できる。よって、加熱後の発泡樹脂シート1を成形して所定の形状の容器に成形しても、厚みにもバラツキが生じるという問題がない。
【0033】
図2、図3に示すように、本発明の発泡樹脂シート加熱装置では、表色系の値が不均一である発泡樹脂シートの一方の面を加熱する第1ヒータは、ピーク波長の値が第2ヒータのピーク波長の値より大きいものであり、特に、その値が2.5μm以上である赤外線を放射するものであることが好ましい。
理由は、赤外線の放射波長が2.5μm未満になると、それぞれの色に吸収される赤外線の程度が異なることになり、発泡樹脂シートの表色系の値が不均一である面を加熱する場合に、発泡樹脂シートの昇温速度にムラが生じ、発泡樹脂シート全体を内部まで十分に最適な状態に発泡させることができなくなるからである。
【0034】
また、表色系の値が均一である発泡樹脂シートの他方の面を加熱する第2ヒータは、ピーク波長の値が第1ヒータのピーク波長の値より小さいものであり、特に、その値が1〜1.5μmである赤外線を放射するものであることが好ましい。理由は、赤外線の放射波長が2.5μm以上になると、発泡樹脂シートの内部まで赤外線が到達せず、発泡樹脂シートの内部まで十分に最適な状態に発泡させることができなくなるからである。
【0035】
【発明の効果】
本発明の発泡樹脂シート加熱装置によれば、発泡樹脂シートの表色系の値が不均一である一方の面が第1ヒータから放射される赤外線で加熱されるものであり、表色系の値が均一である他方の面が第2ヒータから放射される赤外線で加熱され、第1ヒータから放射される赤外線のピーク波長の値が2.5μm以上であって、第2ヒータから放射される赤外線のピーク波長の値が1〜1.5μmであるので、発泡樹脂シートの内部まで加熱でき、しかも、シート全体を内部まで十分に最適な状態に発泡させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発泡樹脂シートの説明図である。
【図2】本発明の発泡樹脂シート加熱装置の説明図である。
【図3】本発明の他の発泡樹脂シート加熱装置の説明図である。
【符号の説明】
1 発泡樹脂シート
10 着色部分
11 無着色部分
2 第1ヒータ
20 セラミックス系ヒータ
21 放射部
3 第2ヒータ
30 白熱ランプ
31 透明バルブ
4 第1ヒータ
40 白熱ランプ
41 透明バルブ
42 遠赤外線放射膜
Claims (2)
- 一方の面が表色系の値が不均一であり、他方の面が表色系の値が均一である発泡樹脂シートを赤外線で加熱する発泡樹脂シート加熱装置であって、
発泡樹脂シートを挟んで、表色系の値が不均一である一方の面と対向する位置に赤外線を放射する第1ヒータが配置され、表色系の値が均一である他の面と対向する位置に赤外線を放射する第2ヒータが配置されており、
前記第1ヒータから放射される赤外線のピーク波長の値が2.5μm以上であって、
前記第2ヒータから放射される赤外線のピーク波長の値が1〜1.5μmである、
ことを特徴とする発泡樹脂シート加熱装置。 - 前記第1ヒータが、セラミックス系ヒータ、もしくは、透明バルブの表面に赤外線放射膜が形成された白熱ランプであって、前記第2ヒータが、透明バルブの白熱ランプであることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂シート加熱装置。
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