JP3820136B2 - 電力増幅器の並列運転システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディジタル地上波テレビジョン放送局、各種移動体通信用無線基地局等にて使用される電力増幅器に関し、特に複数台の電力増幅器を並列運転する並列運転システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
複数台の電力増幅器を並列運転するという手法は、個々の電力増幅器の出力を下げることができ回路コスト低減につながる手法である。即ち、図1に示すように単一の電力増幅器10により構成されたシステムと、図2に示すように複数の電力増幅器10−iを並列運転するシステムとを比べると、図1に示す電力増幅器10に比べ、図2に示す各電力増幅器10−i(i=1,2,…,N、N:2以上の自然数)は、より低出力(低利得)でよく、従って小型でありかつ低コストでの調達・実現が容易である。図中、12は入力電力を各電力増幅器10−iに分配する分配器、14は各電力増幅器10−iの増幅出力を合成する合成器であり、各種の受動素子や分布定数線路により実現できる。特に、無線周波数増幅用のシステムにあっては、インピーダンス変換やインピーダンスマッチング等を綿密に考慮して分配器12や合成器14を設計する。
【0003】
複数台の電力増幅器を並列運転するという手法は、また、各電力増幅器の故障・不調への対処に至便な手法でもある。まず、図1に示すシステムでは、電力増幅器10が故障したために増幅出力が得られなくなることがあり得る。これに対し、図2に示すシステムでは、複数の電力増幅器10−iのうち一部例えば1個が故障しても、残りのN−1個の電力増幅器10−iが正常に動作している限り、高々合成出力が低下するだけですみ、合成出力が全く得られなくなることはない。従って、放送、通信等、連続的・継続的な運用が必要なシステムにおいては、図2に示す並列運転システムを利用する方が望ましい。このように、複数台の電力増幅器を並列運転する手法は、実現コスト等の点で優れているだけでなく、故障・不調等に関連する信頼性・冗長性の確保という点でも優れている。
【0004】
また、電力増幅器10−iに故障・不調等が生じたときには、その電力増幅器10−iを修理・点検する必要がある。そのため、システム運用中(例えば放送中)であっても電力増幅器10−iを交換できるようにシステムを構成するのが望ましい。図3に、その種のシステム構成例を示す。この図に示すシステムにおいては、電力増幅器10−iと分配器12との間にスイッチSWiaを、また電力増幅器10−iと合成器14との間にスイッチSWibを、それぞれ設けている。但し、システム仕様によっては低電力側のスイッチSWiaを省略することもできる。
【0005】
このようにスイッチを各電力増幅器10−iの前段(SWia)や後段(SWib)に設けておけば、必要に応じ、そのスイッチを開放して任意の電力増幅器10−iを分配器12や合成器14から切り離すことも、逆にスイッチを閉じて任意の電力増幅器10−iを追加することもできる。その際に、他の電力増幅器10−iの運転を停止させる必要はない。即ち、放送等を中断することなく、故障・不調等が生じた電力増幅器10−iを取り外し新たなものに交換することが可能である。なお、いずれかの電力増幅器10−iに故障・不調等が生じたことについては、システム全体での増幅利得を監視制御回路20にて監視及び判定することにより検出できる。例えば、方向性結合器DC1を分配器12の入力側に設けて入力電力を検出し、合成器14の出力側に方向性結合器DC2を設けて合成出力電力を検出し、前者に対する後者の比即ちシステム全体での増幅利得を求め、この増幅利得に有意な低下が現れたときに、いずれかの電力増幅器10−iにて故障・不調等が発生したと判定してシステムの運用者に対して警報する。また、監視制御回路20は、スイッチSWia及びSWibを開閉させるための制御信号を運用者からの指令に応じ又は所定の条件が成立したときに出力する。何れのスイッチSWia及びSWibを開閉させるか(即ち何れの電力増幅器10−iを脱着するか)については、警報に応じて運用者が決めて監視制御回路20に指令するか、あるいは増幅利得の変化量や分配器12/合成器14の種別(アイソレーションタイプか非アイソレーションタイプか)等に基づき監視制御回路20が自動決定する。
【0006】
また、周知の如く分配器及び合成器は互いに同一の構成にて実現できる。原理的には、コモンポートから見てN個の個別ポートが互いに並列になるよう形成された1:N分岐を有する信号伝送路を設け、使用時にコモンポートを入力に用い各個別ポートを出力に用いれば分配器となり、各個別ポートを入力に用いコモンポートを出力に用いれば合成器となる。他方、図3に示したシステムでは、分配器12とスイッチSWiaが単一のユニットたる分配器ユニット16を構成しており、同様に、合成器14とスイッチSWibが単一のユニットたる合成器ユニット18を構成している。N=3の場合を例とすると、これら分配器ユニット16及び合成器ユニット18は、何れも図4に示す如き構成とすることができる。同図に示したユニットの詳細動作・仕様や同種製品ファミリーについては、例えば、KMW社の頒布資料"RF & Microwave Components and Subsystem 1998-1999"、特にSwitchable Power Combiners/Dividersに関するTechnical Notesを参照されたい。
【0007】
図4に示したユニットは、基本的には、平衡型のT分岐回路(並列分配合成器)であり、コモンポートCOM、N個(ここでは3個)の個別ポートPORTi、コモンポートCOM・個別ポートPORTi間を接続する分布定数型のインダクタLi、並びに個別ポートPORTi同士を接続する抵抗Ri及び1/2波長線路(図中、λ:信号波長)を備えている。更に、スイッチSWi1がコモンポートCOM・個別ポートPORTi間に、スイッチSWi2が個別ポートPORTi同士の間に、それぞれ設けられている。図4に示したユニットを分配器ユニット16として用いる際には、スイッチSW11及びSW12がスイッチSW1aとして、スイッチSW21及びSW22がスイッチSW2aとして、スイッチSW31及びSW32がスイッチSW3aとして、それぞれ動作する。図4に示したユニットを合成器ユニット18として用いる際には、スイッチSW11及びSW12がスイッチSW1bとして、スイッチSW21及びSW22がスイッチSW2bとして、スイッチSW31及びSW32がスイッチSW3bとして、それぞれ動作する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、各電力増幅器の前後のうち少なくとも一方にスイッチを設けておけば、合成出力を停止させないで、故障したと見られる電力増幅器を随時交換できる。また、そのためのスイッチを内蔵する分配器ユニット及び合成器ユニットを用いれば、外付スイッチを用いたシステム(図2に示したシステムに単純にスイッチを付加した構成)に比べ、システムを構成するユニットの個数を低減でき、また設置スペースを節約できる。
【0009】
しかしながら、スイッチを内蔵する分配器ユニット及び合成器ユニットを用いると、ユニット内のスイッチが故障した場合にそのユニットごと交換等する必要がある。分配器ユニット或いは合成器ユニットを取り外す際には、システムの運転を停止させねばならず、従って合成出力の停止による放送停止等を余儀なくされる。特に、合成器側のスイッチは、増幅後の信号即ち大電力の信号が加わることや、雷サージを受けやすいことから、その損耗や故障が生じる頻度が比較的高い。そのため、故障時における対処措置を放送停止等なしに実施できるようにすることが望まれている。
【0010】
また、分配器及び合成器それ自体は受動素子や分布定数線路により実現可能なデバイスであり、本来、接点、制御回路、電源回路等を必要としない。しかし、スイッチ内蔵型の分配器ユニット又は合成器ユニットには、スイッチを構成する接点を内蔵する必要があり、またそれを駆動するための制御・電源回路を内蔵させ又はそれらを付設する必要がある。更に、図5に示すように、コモンポートCOMとなるコネクタ(例えばN)及び個別ポートPORTiとなるN個のコネクタ(例えばSMA)だけでなく、スイッチを制御するための制御信号入力用コネクタ(例えばRS232Cポート)22を、筐体24の外表面に設ける必要がある。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、電力増幅器が故障した場合でもまたスイッチが故障した場合でも、システムの合成出力を停止させることなく当該故障等に対処できるようにすることを、その目的の一つとしている。また、本発明は、分配器又は合成器の本来の構成要素とは異質な構成要素を分配器及び合成器に付加することにより生じていた問題点、例えば分配器ユニット及び合成器ユニットの構成の複雑さや制御信号入力用のコネクタの必須設置等の問題点を解消することを、その目的の一つとしている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明に係る並列運転システムは、(1)それぞれ電力増幅器及び当該電力増幅器の信号入力若しくは出力経路上に設けられたスイッチを収納する複数のPAユニットと、(2)各PAユニットに対し各電力増幅器により増幅させるべく信号を分配する分配器と、(3)各PAユニットから各電力増幅器により増幅された信号を受け取り合成する合成器と、を備え、(4)各電力増幅器を分配器又は合成器から切り離すための上記スイッチを当該電力増幅器と同じPAユニット内に設けたことを特徴とする。望ましくは、各スイッチを駆動するための回路をそのスイッチと同じPAユニット内に設ける。更に望ましくは、上記スイッチとして、PINダイオード等の半導体スイッチング素子を含む電子的スイッチを用いる。
【0013】
このように、本発明においては、電力増幅器を分配器や合成器から切り離すために使用できるスイッチを、その電力増幅器と同じユニット(PAユニット)内に設けることとしている。従って、スイッチが故障した場合はそのスイッチを内蔵しているPAユニットを取り外せばよく、他のPAユニットの動作や、分配器及び合成器による電力分配/合成、ひいては合成出力による放送等を停止させる必要がない。また、電力増幅器が故障した場合も、PAユニットを取り外せばよい。更に、スイッチがPAユニットに内蔵されているため、分配器や合成器に、スイッチ及びその駆動用の回路を内蔵又は付加する必要がなく、またスイッチ制御信号入力用のコネクタを設ける必要もない。
【0014】
本発明におけるスイッチとしてPINダイオード等の半導体スイッチング素子を含む電子的スイッチを用いる場合、好ましくは、各スイッチを構成する半導体スイッチング素子をバイアスするための電源として、順バイアス電源、中バイアス電源及び逆バイアス電源を用いるのが望ましい。順バイアス電源及び逆バイアス電源は、それぞれ、半導体スイッチング素子を順又は逆バイアスするためのバイアス電源である。中バイアス電源は、順バイアス電源及び逆バイアス電源のうちいずれかと同極性でかつそれより電圧値が低いバイアス電源である。本発明の好ましい実施形態では、PAユニットに内蔵されたトランジスタ等の素子又は回路により、順バイアス電源、中バイアス電源及び逆バイアス電源のうちいずれかを、選択的にかつ制御信号に応じ半導体スイッチング素子に接続する。より詳細には、順バイアス電源から逆バイアス電源へ又は逆バイアス電源から順バイアス電源へと、半導体スイッチング素子に接続するバイアス電源を切り替える途中で、切換元のバイアス電源を切り離した後切換先のバイアス電源を接続する前に、当該半導体スイッチング素子に中バイアス電源を接続する。順及び逆バイアス電源のうち中バイアス電源と同極性の電源と、中バイアス電源とを比べると、その出力電圧値が低い中バイアス電源の方が一般に低インピーダンスであるため、上記の如き“中バイアス”状態を途中に組み込むことにより、半導体スイッチング素子のバイアス状態の順逆バイアス状態切換を高速化できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態に関し図面に基づき説明する。なお、図1乃至図5に示した従来技術と同様の又は対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図6に、本発明の一実施形態に係る並列運転システムの構成を示す。この図に示すシステムでは、分配器12からN個のPAユニット26−iに対して信号が分配されており、各PAユニット26−iの出力が合成器14にて合成されている。分配器12及び合成器14は、例えば、抵抗やインダクタにより構成されている。分配器12及び合成器14には、スイッチは組み込まれていない。
【0017】
PAユニット26−iは、電力増幅器10−iに加え、スイッチSWias及びSWibs等を内蔵している。分配器12から分配される信号は、分配器12とPAユニット26−iとを結ぶ1/2波長線路を介して、各PAユニット26−iに供給される。PAユニット26−iに供給された信号は、1/2波長線路32又は1/4波長線路34(後述)を有する電子的なスイッチSW1asを介してリミッタ28−iに入力され、電力増幅器10−iへの過入力による破損や信号の歪を防ぐためのレベル制限を受ける。リミッタ28−iの出力は、電力増幅器10−iに入力され増幅される。増幅された信号は、1/2波長線路32又は1/4波長線路34を有する電子的なスイッチSW1bsを介してPAユニット26−iの外部に出力される。出力された信号は、PAユニット26−iと合成器14とを結ぶ1/2波長線路を介して、合成器14に入力される。合成器14は、N個のPAユニット26−iのうち現在スイッチSWias及びSWibsが閉じておりその電力増幅器10−iが増幅動作を行っているものから、その増幅出力を入力及び合成して出力する。
【0018】
PAユニット26−i内の故障検知制御回路30−iは、同じPAユニット26−i内に収納されている電力増幅器10−iやスイッチSWias及びSWibsの故障を検知し、その結果を監視制御回路20Aを通じて運用者に警報する。故障検知の方法としては、例えば方向性結合器DCi1及びDCi2(図ではDC11及びDC12)を用いて電力増幅器10−iの入出力電力を監視する等の方法があり得る。故障検知制御回路30−iは、監視制御回路20Aから供給される信号に応じて、又は上記監視の結果に応じて自動的に、スイッチSWias及びSWibsのオン/オフや電力増幅器10−iに対する電力供給を制御する。例えば、PAユニット26−iの取り外しに先立ち、故障検知制御回路30−iは、スイッチSWias及びSWibsをオフさせかつ電力増幅器26−iへの電源供給を断つ。
【0019】
なお、図6では、PA26−1についてその内部構成を示し、他のPAユニット26−iについてはその内部構成の図示を省略している。また、本願では、その電気長がλ/2のn倍(n:自然数)の線路を全て「1/2波長線路」と呼ぶ。同様に、その電気長がλ/4の奇数倍の線路を全て「1/4波長線路」と呼ぶ。
【0020】
図7に、本実施形態にてスイッチSWias又はSWibsとして使用しうる電子的なスイッチの例を6通り示す。図中、PAは直接又はリミッタ28−iを介して電力増幅器10−i側に接続される端子であり、C/DはPAユニット26−iの入出力端から1/2波長線路を介して分配器12又は合成器14に接続される端子であり、CTLはPAユニット26−i内の故障検知制御回路30−iに接続される端子である。従って、図示した回路をスイッチSWiasとして用いる場合には、分配器12とPAユニット26−iとを結ぶ1/2波長線路を介して分配器/合成器接続端子C/Dから信号が印加され、電力増幅器接続端子PAを介して信号がリミッタ28−iに出力される。逆に、図示した回路をスイッチSWibsとして用いる場合には、電力増幅器10−iにより増幅された信号が電力増幅器接続端子PAに印加され、分配器/合成器接続端子C/DからPAユニット26−iと合成器14とを結ぶ1/2波長線路を介して信号が合成器14に供給される。
【0021】
また、図7(a)に示した回路では、スイッチング素子たるPINダイオードDが、端子PAから端子C/Dに向かう方向に対し順方向接続となるよう、主信号経路上にシリーズ配置されている。PINダイオードDは、そのカソードが高周波コイル(RFC)L5により接地されており、他方で、そのアノードには、高周波コイルL4及びバイパスコンデンサC2からなるバイアス印加回路並びに端子CTLを介して、故障検知制御回路30−i(より詳細にはその内部のバイアス電源)から制御信号たるバイアス電圧が印加されている。また、このバイアス電圧による直流成分を阻止するため端子PAとPINダイオードDのアノードとの間には結合コンデンサC1が設けられている。更に、端子C/D側とのアイソレーションを確保するため、主信号経路上、PINダイオードDのカソードと端子C/Dとの間には1/2波長線路32が設けられている。従って、正のバイアス電圧を端子CTLに印加すると図7(a)中のPINダイオードDがオンするため、端子PAから端子C/Dに至る主信号経路が形成される。逆に、負のバイアス電圧を端子CTLに印加するとPINダイオードDがオフするため、主信号経路は遮断される。
【0022】
このような構成の電子的スイッチを例えばスイッチSWiasとして用いることにより、機械的接点を有するスイッチを用いた場合に比べ、長寿命で信頼性が高くまた高速スイッチングが可能で小型かつ安価なスイッチSWiasを得ることができる。更に、バイアス電圧を徐々に立ち上げる(又は立ち下げる)スロースタート(又はストップ)制御も実施可能である。そのようにすれば、スイッチ制御に伴う合成出力変動が急激にではなく徐々に現れることとなるため、図6に示したシステムからの合成出力を受け取る側の装置(図示したシステムを送信機にて使用している場合には受信機)にて同期はずれ等の現象が生じにくくなる。また、図7(a)中のPINダイオードDの向きを逆転させてもよい(但し、バイアス電圧の正負に対するオン/オフの関係が逆転する)。その際、図7(b)に示すようにバイアス印加回路の位置を変え、バイアス電圧の正負に対するオン/オフの関係を保ってもよい。
【0023】
更に、PINダイオードDを主信号経路外において(即ちシャント回路にして)バイアス印加回路と縦続接続し、1/2波長線路32に代えて1/4波長線路34を用いるようにしてもよい。1/4波長線路ではインピーダンス変換が行われるので、オン/オフの関係が1/2波長線路とは逆になる(図7(d)及び(e))。従って、主信号経路は、正のバイアス電圧が端子CTLに印加されているときオフし、負のバイアス電圧が印加されているときオンする。ここに、PINダイオードDの故障モードが通常はオープンモードであることから、雷サージ等によってPINダイオードDが故障した場合でも、図7(d)又は(e)に示すスイッチを例えばスイッチSWibsとして用いていれば、増幅出力の提供(例えば放送、送信)を継続することができる。なお、図7(d)では、PINダイオードDのアノード即ちバイアス電圧印加個所が主信号経路上にあるため、結合コンデンサを端子PA側及びC/D側に合計2個(C1a及びC1b)設ける必要があるのに対し、図7(e)では、PINダイオードDのカソードが主信号経路上にあり更に高周波コイルL5により接地に接続しているため、結合コンデンサは必要でない。
【0024】
更に、図7(a)又は(d)と図7(b)又は(e)とを組合せることにより、2個のPINダイオードDa又はDcとDb又はDdとの対向接続を含む図7(c)又は(f)に示す電子的スイッチを得ることができる。このようにすれば、負のバイアス電圧を端子CTLに印加するのに代えて、端子CTLを開放(=ハイインピーダンスにする)ことによって、同様のスイッチングを実現できる。
【0025】
図8(a)及び(b)に、それぞれ、故障検知制御回路30−iの内部に設ける回路の一部に関し、例を示す。これらの図に示したのは、故障検知制御回路30−i内に設けられた図示しない回路から供給される制御信号に応じて、抵抗Rを介し端子CTLにバイアス電源を接続するためのトランジスタ回路である。端子CTLは図7中の同名の端子にバイアス電圧を印加するための端子であり、順バイアス電源と端子CTLとの間に設けられているトランジスタQ1がオンすると端子CTLには正電圧が現れ、逆バイアス電源と端子CTLとの間に設けられているトランジスタQ2がオンすると端子CTLには負電圧が現れる。なお、ここでは、順バイアス電源としては+5[V]の電源を用い逆バイアス電源としては−200[V]のバイアス電源を用いている。PINダイオードDを用いるに当たっては、このように充分に高い負電圧を出力できる逆バイアス電源を用いないと、歪(スプリアス)の発生を初めとするいくつかの問題が生じる。
【0026】
図8(a)に示した回路と図8(b)に示した回路の相違点は、後者において、−100[V]の中バイアス電源を用いていること、中バイアス電源と端子CTLとの間に前述の抵抗R及び保護・逆流阻止用のダイオードD0に加えトランジスタQ3を設けていることである。トランジスタQ3がオンすると端子CTLには逆バイアス電源接続時と同極性だがより低い電圧が現れる。バイアス状態を順から逆へ或いはその逆へと切り替えるに当たっては、その途中、切換元のバイアス電源に対応するトランジスタ例えばQ1をオフさせた後切換先のバイアス電源に対応するトランジスタ例えばQ2をオンさせる前に、一時的に、故障検知制御回路30−i内に設けられた図示しない回路から制御信号を供給してトランジスタQ3をオンさせる(Q2=オンの期間とQ3=オンの期間は若干重複)。
【0027】
ここに、高圧電源は一般に高周波で高インピーダンスであるため、図8(a)に示した回路では切換速度の向上について逆バイアス電源に依る限界がある。これに対し、図8(b)に示した回路では、中バイアス電源がバイアス電圧を供給する状態、即ち逆バイアス電源による逆バイアスより弱い逆バイアスを切換途中で一時的・中間的に行っているため、電源インピーダンスによる制約が緩和される。その結果、図8(a)に示した回路に比べ高速での切換を実現できるようになる。切換が高速であれば、切換途中におけるPINダイオードD等の高周波抵抗値の変化の影響、特にPINダイオードD等における高周波電力消費による温度上昇破損を抑えることができ、従ってPINダイオードD等の破損を抑えることができる。
【0028】
なお、図8に示した各回路では、トランジスタQ1としてPNP型のバイポーラトランジスタを、トランジスタQ2(及びQ3)としてNPN型のバイポーラトランジスタを、それぞれ用いている。PNPに代えNPNを用いフローティング回路により構成してもよい。バイポーラに代えFET等を用いてもよい。各トランジスタの耐圧不足が懸念される場合はフローティング回路により直列多段接続してもよい。中バイアス電源は1種類に限られない。
【0029】
このように、本実施形態によれば、スイッチSWias及びSWibsをPAユニット10−iに内蔵する構成としたため、電力増幅器10−iに故障が生じた場合だけでなく、スイッチSWias及びSWibsが故障した場合でも、合成出力(放送機用電力増幅の場合には放送波)を停止させることなく、故障したと見られる部材を内蔵するPAユニット26−iの交換等を以て対処できる。特に、電力増幅器10−iから見て合成器14側にあるスイッチSWibsについては比較的故障が発生しやすいことから、合成出力停止を伴わない保守交換が可能になるメリットは大きい(逆に言えば、比較的故障が発生しにくい分配器側スイッチについては従来通り分配器ユニット16に内蔵させても構わない)。故障への対処だけでなく、保守、清掃等に当たっても、かかる構成は有用である。
【0030】
また、分配器12及び合成器14の構成は図3における分配器ユニット16及び合成器ユニット18に比べ簡素であり、スイッチや制御信号入力用のコネクタ22や電源回路等を分配器12及び合成器14に設ける必要がない。他方で、スイッチSWias及びSWibsの駆動に必要な電力が電力増幅器10−iの駆動に必要な電力に比べ小さいこと等からすれば、スイッチSWias及びSWibsをPAユニット26−iに内蔵させたことによるPAユニット26−iの肥大化、特に故障検知制御回路30−iの一部たる電源回路の肥大化・消費電力増大は、無視しうる程度のものにとどまる。全体として、システムを構成する機器それぞれの小型簡素化と、機器間の接続の簡素化とにより、システムコスト低減が可能になる。
【0031】
更に、電子的スイッチを用いているため、前述の通り、スイッチ長寿命化、高信頼化、高速化、小型化、低コスト化その他の面で従来より改良されたシステムが得られる。振動や衝撃が加わっても合成出力は概ね瞬断しないし、スイッチSWias又はSWibsのオン/オフ時のチャタリングも生じにくい。図6に示した如く、故障検知制御回路30−i、特に各部材の故障を検知しそれに応じた制御を実行する回路をPAユニット26−iに収納することによって、電力増幅器やそれに関連するスイッチだけでなく当該制御用の回路に関しても冗長化することができ、信頼性が高まる。
【0032】
また、分配器12及び合成器14として、個別ポート間がインピーダンス的に分離されていない(即ち任意の個別ポートから電力増幅器10−iを切り離すとその電力増幅器10−iにより担われていた電力が反射により他の電力増幅器10−iにより案分される)非アイソレーションタイプを用いた場合、電子的なスイッチSWias及びSWibsの操作前後でのレベル変動はほとんどない。より詳細には、例えばスイッチSW1as及びSW1bsとを同時にオフすると、それまで電力増幅器10−1が負担していた送出電力を他の電力増幅器が分担して受け持つこととなるので、合成器14の出力電力はほとんど変化しない。但し、当該他の電力増幅器に増加分の電力を送出できる能力(余力)があることが前提である。従って、本実施形態に係るシステムを例えばディジタル地上波テレビジョン放送局の送信装置にて使用した場合、伝送エラーを発生させないで高速切り替えを行えるシステムが得られる。
【0033】
更に、分配器12として非アイソレーションタイプを使用している場合、スイッチSWias及びSWibs内のPINダイオードに対するバイアス電圧の漸減制御をふまえず誤って“活きている”PAユニット26−iを取り外すと、そのPAユニット26−i内の電力増幅器10−iにより担われていた電力が対応する個別ポートにて全反射し、他の電力増幅器10−iに入力される。本実施形態では、リミッタ28−iを電力増幅器10−iに前置しているため、このような場合における各電力増幅器10−iの過入力による破損や歪み発生を防ぐことができる。
【0034】
また、分配器12として個別ポート間がインピーダンス的に分離している(即ち任意の個別ポートから電力増幅器10−iを切り離しても他の個別ポートに接続されている他の電力増幅器10−iが担う電力が変化しない)アイソレーションタイプを用いた場合、任意のPAユニット26−iをそのスイッチSWias及びSWibsの制御によって電気的に切り離し又は接続したときの合成出力電力変動を抑えるためには、何らかの電力調整回路が必要である。この電力調整回路を故障検知制御ユニット30−iの一部として即ちPAユニット26−iの内部に設け、監視制御回路20Aからの信号に応じて動作させることにより、制御信号伝送用のケーブルの本数を抑えながら合成出力電力変動を防ぐことが可能になる。無論、当該電力調整回路を監視制御回路20Aの一部として即ちPAユニット26−iの外部に設けてもよい。
【0035】
以上の説明は、N個の電力増幅器10−iを同時に全て稼働させるいわゆる全数動作方式の実施に当たっていかに故障等に対処するか、という側面からの説明であった。しかしながら、本実施形態に係る回路は、現用の電力増幅器に加え予備の電力増幅器を設ける方式、例えば(N+1)方式においても、使用することができる。その種の用途では、故障発生時に現用から予備へ、予備から現用への自動的切換が行われるよう、監視制御回路20Aの動作プロトコル等を設計する。さらに、予備の電力増幅器の定期的試験のため、当該切換を行う。或いは、複数の電力増幅器を巡回的に使用しまた休止させるローテーション方式の実施のため、当該切換を行うシステムが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電力増幅器の単独運転システムの構成を示すブロック図である。
【図2】 電力増幅器の並列運転システムの基本構成を示すブロック図である。
【図3】 スイッチ内蔵型分配器及び合成器を用いた並列運転システムの構成を示すブロック図である。
【図4】 スイッチ内蔵型分配器及び合成器として用いうる装置の回路構成を示す回路図である。
【図5】 図4に示した装置の外観、特にコネクタの種類及び個数を示す図である。
【図6】 本発明の一実施形態に係る並列運転システムの構成を示すブロック図である。
【図7】 本実施形態にて使用可能な電子的スイッチの例を(a)〜(f)にて示す回路図である。
【図8】 本実施形態にて故障検知制御回路の一部として使用可能なバイアス回路の例を(a)及び(b)にて示す回路図である。
【符号の説明】
10−1,10−2,…10−N 電力増幅器、12 分配器、14 合成器、26−1,26−2,…26−N PAユニット、30−1 故障検知制御回路、D,Da〜Dd PINダイオード、Q1〜Q3 トランジスタ、SW1as,SWibs スイッチ。
Claims (2)
- それぞれ電力増幅器及び当該電力増幅器の信号入力若しくは出力経路上に設けられたスイッチを収納する複数のPAユニットと、
各PAユニットに対し各電力増幅器により増幅させるべく信号を分配する分配器と、
各PAユニットから各電力増幅器により増幅された信号を受け取り合成する合成器と、
を備え、
各電力増幅器を分配器又は合成器から切り離すための上記スイッチを当該電力増幅器と同じPAユニット内に設け、
上記スイッチが半導体スイッチング素子を含む電子的スイッチであり、
各スイッチを駆動するための回路が、そのスイッチを構成する上記半導体スイッチング素子を順バイアスするための順バイアス電源、当該半導体スイッチング素子を逆バイアスするための逆バイアス電源、並びに順バイアス電源及び逆バイアス電源のうちいずれかと同極性でかつそれより電圧値が低い中バイアス電源のうち、いずれかを、選択的にかつ制御信号に応じて、当該半導体スイッチング素子に接続する手段を備えることを特徴とする並列運転システム。 - PINダイオード等の半導体スイッチング素子のバイアス状態を順逆切換する切換方法であって、
バイアス電源として、上記半導体スイッチング素子を順バイアスするための順バイアス電源、当該半導体スイッチング素子を逆バイアスするための逆バイアス電源、並びに順バイアス電源及び逆バイアス電源のうちいずれかと同極性でかつそれより電圧値が低い中バイアス電源を、準備しておき、
順バイアス電源から逆バイアス電源へ又は逆バイアス電源から順バイアス電源へと、上記半導体スイッチング素子に接続するバイアス電源を切り替える途中で、切換元のバイアス電源を切り離した後切換先のバイアス電源を接続する前に、当該半導体スイッチング素子に中バイアス電源を接続することを特徴とする切換方法。
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