以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置(以下、適宜「CTスキャナ」という)を示す図である。同図(a)は正面図、同図(b)は側面図を示す。同図のCTスキャナは、コーン状にX線ビーム3を発生させるX線管1と、被検体4を乗せる回転テーブル5と、回転テーブル5に回転軸72を中心として回転運動を与える回転機構19と、回転テーブル5を上下に移動させて被検体4の所望の目的断層面をデータ収集される撮影断層面73(理想的にはX線焦点を通り回転軸と直交する面)に合わせる断層面送り機構20と、この撮影断層面73に沿って可視光線29を照射する投光器28と、焦点Fからの回転軸72までの距離(FCD)を変更して撮影倍率を調整する焦点距離変更機構21と、これら各機構の制御を行う機構制御部6と、被検体4を透過してきたX線を2次元的に検出して可視像に変換するX線蛍光増倍管(X線イメージインテンシファイア、以下「X線I.I.」という)2と、この可視像をデジタル信号に変換するテレビカメラ7と、テレビカメラ7から送られてきたデジタル信号に対して以下に示す種々の処理をおこない画像再構成の計算をするデータ処理部8と、再構成画像およびその他の処理結果および処理前の透過像を表示する表示器9とを有する構成である。X線I.I.2は検出素子を有するものではないが、X線を検出する面をマトリクス化した行列(以下「検出チャネル行列」という)に対応させることによりデジタル信号が得られる。データ処理部8は、通常の計算機であり、図示していない演算処理装置、必要なプログラム等を記憶している記憶装置、メモリ、インタフェース、キーボード等を有し、撮影断層面73が検出チャネル行列に交差する線(以下、適宜「スライス線」という)上における補間値を抽出する処理を行うスライス抽出部11と、空気を撮影したデータを用いて検出チャネルごとの利得の差異を補正する空気補正部12と、検出されたデータ(以下、適宜「透過データ」という)を用いてX線の吸収係数の線積分に相当する投影データを計算するLOG変換部13と、検出位置のずれに起因する歪みを補正する歪み補正部14と、画像再構成を行う再構成部15と、スライス線の位置を設定するスライス線設定部(図示せず)と、被検体の透過像に重ねてスライス線等を表示器9に表示させるスライス線表示部(図示せず)と、断層画像の倍率から再構成に用いるFCD値を修正するFCD校正部(図示せず)とを有する構成である。操作者はデータ処理部8を用いてパラメータの設定、メニューの選択、スキャンの起動、処理状態の監視、断層画像の表示、解析などを行う。
このようなCTスキャナにおいて、操作者は、被検体4を回転テーブル5上に載置し、焦点距離変更機構21で倍率を設定し、断層面送り機構20で被検体の目的断層面の位置を撮影断層面73に合わせる。続いて、X線を照射して撮影を開始すると、回転テーブル5は一定の角度づつ又は連続的に360°回転し、X線I.I.2は回転の各位置で透過データを収集し、テレビカメラ7がこれをデジタルデータに変換してデータ処理部8へ送る。データ処理部8では、まず、スライス抽出部11においてスライス線上における透過データd(i)が補間により求められるが、この処理の詳細については後述する。
次に、空気補正部12で、被検体が無い状態であらかじめ収集してある透過データ(空気データ)d
aとの比を取ることで利得補正が行われる。検出チャネル の番号をi(iは自然数)とすると、透過データd(i)の空気補正は、
で表される。ここでd
off(i)はX線を照射しない状態でX線I.I.2に検出されるデータである。次に、LOG変換部13で対数変換され吸収係数の線積分に相当する投影データP(i)に変換される。LOG変換は、
で表される。次に、歪み補正部14で検出位置のずれに起因する断層画像の歪みが補正され、再構成部15で上記各処理の施された360°分の投影データを用いて画像再構成の計算を行う。
検出位置のずれに起因する断層画像の歪みとは、X線I.I.2の光電面10が球面状であるため(また内部の電子レンズの歪みにより)生じるものである。すなわち、X線が光電面10に入射する位置が光電面10の外側へいく程広がっていくため、X線I.I.2により検出された投影データP(i)を用いて画像再構成をすると、画像上には外側へいくほど歪みが生じることとなるのである。そこで、検出すべき位置における検出チャネルに対応した投影データを補間により求めることが必要となる。
図2は、実際の検出位置における検出チャネルNo.iと検出すべき位置におけるチャネルNo.n(nは自然数)との位置関係から求められる歪みの補正曲線を示す図である。補正曲線は、後述するように所定のファントムを用いて予め求めておく。この補正曲線により、チャネルnに対応した検出チャネルの位置i(n)を求めることができ、このi(n)における投影データP(i(n))(以下、「P'(n)」と表す)を補間により求める方法について以下説明する。
図3は、歪み補正における補間関数の一例を示す図である。従来の線形補間では補間関数は点線に示すような三角形の形状を有する関数が用いられていたが、このような補間関数を用いた場合は次のような問題がある。すなわち、光電面10の中心部においては、X線が入射する検出チャネルの位置iと本来検出すべきチャネルの位置nとが一致するのでP(i)がそのままP'(n)となるが 、光電面10の外側においては、iとnとが一致せずi(n)におけるデータがi(n)に隣接する2点の投影データから線形補間により求められるので、この2点におけるノイズがキャンセルされる場合がある。すなわち、P'(n)は、 ノイズがそのまま残っているチャネルとノイズがキャンセルされたチャネルとが混在することとなるためノイズが不均質となり、また回転の各位置においても同様であるので、再構成画像にリング状の偽像が生じることがある。
そこで、本実施の形態に係る補間関数f
I(Δi)は、
で表されるものとする。これは、離散的なデータ間隔の3倍に相当する周期を有し、振幅が2/3で、−π〜πの範囲にある余弦の関数を縦軸の正方向に1/3移動させた関数である。
により、投影データP'(n)に変換される。
このような補間関数を用いれば、i(n)の位置に最も近接する3点の投影データの値を用いて変換することができ、全体としてノイズの増減を均質化することができる。
これは次のように証明される。補間フェーズをx(−1/2〜1/2)、補間前のデータのノイズをσとすると補間後のノイズσ'は、ウエイト付3点平均となり、
で表されるが、fIに具体的に式(3)を代入して変形すると、右辺はxによらず、σ/21/2で一定になり、ノイズの増減ファクタは1/21/2で一定である。
証明終わり。
したがって、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の歪み補正によれば、データ間の所定の位置における補間値を、この位置に最も近接する3点のデータの値に基づいて求めるようにしたことで、ノイズの増減を均質化することができ、リング状の偽像が少ない断層画像を得ることができる。
なお、上記の補間関数は、厳密に余弦の関数を用いなくとも、正弦の関数若しくはこれに類似する関数であっても同様の効果を得ることができる。また、歪み補正に適用するだけではなく、等間隔で得られたデータ列を等角度間隔のデータ列へ変換する場合の補間や、断層画像の拡大率を変更するためにデータの間隔を変更する場合の補間にも適用することができる。
次に、スライス抽出部11における処理について説明する。図4は、検出された透過データをそのまま透過像として表示したときの表示器9の画面を示す図である。横軸をi、縦軸をjとする画素No.(i,j)は、検出チャネル行列の 位置に相当するものであり、透過データをd(i,j)で表すこととする。
検出チャネル行列に撮影断層面73が交差するスライス線をjcとすると、高品質な画像を得るためにはスライス線jcに対し、検出チャネルを縦軸方向に結ぶ線が交差する位置における透過データd(i,jc(i))(以下、適宜「スライスデータd'(i)」という)を得る必要がある。しかし、同図に示すよう にスライス線jcが検出チャネル行列に対して傾斜している場合には、スライス線jc上における透過データを検出することができず、画質劣化の要因となる。
そこで、以下に示すように透過データd(i,j)を補間することにより、スライスデータd'(i)を求める。
補間は、スライス線jcを中心とする一定の幅SWj(以下、適宜「スライス幅」という)の中の透過データd(i,j)を用いて行う。SWj は、補間に用いる透過データd(i,j)の縦軸方向のサンプル数を定めるものであり、予め設定しておくものとする。
図5は、補間関数の一例を示す図であり、点線の補間関数1と実線の補間関数2を示す。補間関数1は台形の形状を有する関数であり、傾斜部の幅は1、高さは1/SWj、半値幅はSWjである。補間関数1、g
I(Δj)は、
で表される。ここで、SWj を小さくしていき、w1=−w1=0のときSWj=1であるので、SWjの下限は1とする。
実線で示す補間関数2、g
I(Δj)は、補間関数1の傾斜部を幅が1.5となるように余弦の曲線で置き換えたものであり、
で表される。ここで、w1'=−w1'=0のときSWj=1.5であるので、SWjの下限は1.5とする。また、このときは、図3記載の補間関数fI(Δi)に一致する。
透過データd(i,j)は、上記補間関数g
I(Δj)を用いて次式、
により、スライスデータd'(i)に変換される。
補間関数1を用いた場合、計算速度が早い利点がある一方、SWjを下限値1に設定した場合には、関数の形状が三角形となり図3記載の従来の補間関数について説明したようにノイズの増減が不均質となる問題がある。
これに対し補間関数2を用いた場合は、スライス幅SWj を1.5+n(nは 0,1,2,3…)と選べばノイズの増減が均質化される。
これは次のように証明される。補間フェーズをx(−1/2〜1/2)、補間前のデータのノイズをσとすると補間後のノイズσ'は、
で表されるが、gIに具体的に式(7)を代入して変形すると、SWj が1.5+nの時、右辺の係数すなわちノイズの増減ファクタはxによらず一定になる。
証明終わり。
したがって、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置のスライス抽出によれば、撮影断層面が検出チャネル行列に交差するスライス線上における補間値を抽出するようにしたことで、検出チャネル行列が撮影断層面に対し傾斜している場合でも高品質な断層画像を得ることができる。
なお、補間関数2は傾斜部に余弦の曲線を用いることとしたが、厳密に余弦の曲線でなくとも、正弦の曲線もしくはこれに類似する曲線を用いるようにしても同様の効果を得ることができる。
また、スライス線jcに平行な複数の線を設けてそれぞれの線についてスライス抽出を行うこともできる。これにより1回の撮影で複数枚の断層画像を作ることができる。ただし、スライス線jcから離れるほど画質が低下するので限度はある。
次に、回転機構19で回転テーブル5を一定角度だけ回転させるとともに、断層面送り機構20で回転テーブル5を回転軸72の方向に上へ向かって一定間隔だけ直線移動させて透過データを収集し、これを繰り返し行う螺旋走査におけるスライス抽出部11での処理について説明する。
図6は、螺旋走査における検出された透過像を表示したときの表示器9の画面を示す図である。検出チャネル行列に撮影断層面73が交差するスライス線jcを±180°の回転角に対応させて上下に平行に移動させたときの2本の線で囲まれた360°の回転角に対応する範囲を抽出範囲とし、この抽出範囲内においてスライス線に平行であって被検体の目的断層面の移動に追従していく線を追従スライス線24とする。
図7は、螺旋走査におけるスライス抽出を示す図である。目的断層面[1]〜[5]の画像を得る場合について以下説明する。まず、回転角が進むにつれて上方向に移動していく目的断層面[1]が前記の抽出範囲内に入ってきたときに(便宜上、このときの回転角を0°とする)、目的断層面[1]に対応する追従スライス線を設定し、この追従スライス線上における透過データ(以下、「追従スライスデータ」という)を、各回転角の位置で前述したスライスデータの抽出と同様の処理により求めていく。
ここで、目的断層面間の距離(以下、「断面ピッチ」という)Spを、一回転中の直線動作により被検体4が上方向に移動する距離(以下、「螺旋ピッチ」という)Zpの1/2に設定したとすると、回転角が180°となったところで、目的断面[2]が抽出範囲内に入ってくるので、新たな追従スライス線を設け、目的断層面[2]についての追従スライスデータの抽出も始める。回転角が360°となったときには、目的断層面[1]について360°分のスライスデータが得られているのでこれを空気補正部12等を介して再構成部15へ送り画像再構成を行う。
目的断層面[3]〜[5]についても同様に追従スライス線を設けて追従スライスデータの抽出を行う。
したがって、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の螺旋走査におけるスライス抽出によれば、複数の目的断層面のそれぞれについて、スライス線を中心とする±180°の回転角に対応した抽出範囲内において、スライス線に平行な線上における360°分の追従スライスデータを補間して求めるようにしたことで、各目的断層面について高品質な断層画像を得ることができる。
なお、断面ピッチSpは螺旋ピッチZpの1/2には限定されるものではなく、さらに細かい断面ピッチとした場合には、抽出範囲内にそれに対応した複数の追従スライス線を設けることで、上記と同様の処理により複数の追従スライスデータを抽出することができる。
また、抽出範囲は360°の範囲ではなく、180°+ファン角(X線ビーム3の扇状の角度)で定まる範囲としてもよい。この場合、公知であるハーフスキャンの再構成を行なう。より狭い抽出範囲でデータを収集することができるので、相対的に螺旋ピッチを大きくすることができ、撮影の効率を向上させることができる。
以上の螺旋走査におけるスライス抽出を応用して、スキャノグラム像を撮影することができる。スキャノグラム像は透過像の一種であるが回転軸方向については平行なビームによる透過像である。この場合、回転は行わず断層面送りのみ行なって各追従スライス線について抽出範囲内で追従スライスデータの抽出を行ない、これを各追従スライス線ごとにそれぞれ平均して、目的断層面の順にならべることでスキャノグラム像を得る。
スキャノグラム像は正確に目的断層面に沿った方向の透過画像になるので、表示器9に表示されたこのスキャノグラム像上で撮影する目的断層面位置を複数枚指定しておき自動的にその断面を撮影する、いわゆる計画スキャンをするときに位置指定が正確にできる。データ処理部8はスキャノグラム像を撮影するとき、各目的断層面が撮影断層面に一致するときの断層面送り位置を記憶しておくので、指定された目的断層面を正確に撮影することができる。撮影は各送り位置で固定して1枚ずつ撮影するが、密に指定されている場合は螺旋走査を用いることもできる。
なお、スキャノグラム像の撮影の場合は、目的断層面の距離、Spは透過像の1画素に相当する長さに設定すると、作成したスキャノグラム像の縦横の倍率を合わせることができ、好ましい。また、抽出範囲の選択は自由であり、広くとると画像のノイズが減らせるが、広くしすぎると回転軸方向の分解能が低下する。
次に、スライス線の設定について説明する。回転軸に直交する撮影断層面に被検体の目的断層面の位置を合わせるためには、予め撮影断層面に対応するスライス線の位置を把握しておくことが必要である。
この点に関し、従来、特開平5−332953号公報では、平坦状の角棒の透過像を撮影し、角棒を回転軸の方向に上下に直線移動させ、検出器に対して手前と奥に平行に位置する角棒の上表面の2つの辺が一致して見える位置を見つけることで、撮影断層面の位置を把握しようとする。しかし、角棒の2つの辺の一致を目視するものであるため、撮影断層面を正確には決めにくい問題がある。
図8は、スライス線設定用のスライスファントム26を示す図であり、図9は、スライスファントム26を透過してきた透過データを表示器9に表示させたときの透過像を示す図である。スライスファントム26は、円柱の部材26が底面に平行な平面状のギャップ26cを有し上部aと下部bとがX線透過性のよいスペーサ27を介して接着されている。スライスファントム26は、スペーサ27が回転軸72に垂直となるように回転テーブル5の上に設置される。
図9(a)は、スペーサ27の平面がX線焦点Fに合っていない状態を示したものである。断層面送り機構20によりスライスファントム26を上下方向に移動させると、スペーサ27の平面がX線焦点Fに合った状態では同図(b)のようにギャップ像が最も明瞭となり、このギャップ像の中心に位置する線は、回転軸に垂直な理想的な撮影断層面が検出チャネル行列に交差する線(スライス線)に一致するものであり、スライス線設定部では、このスライス線の座標位置を求めて記憶する。これによりスライス抽出する撮影断層面は正確に理想的な撮影断層面に一致する。記憶しておいたスライス線は、被検体を検査する際にスライス線表示部により同図(c)に示すように被検体の透過像、スライス幅、スケール表示とともに表示器9に表示され、操作者は、被検体の目的断層面がこのスライス線に合うように被検体の位置の調整を断層面送り機構20で行う。
また、平面状の可視光線29がギャップ26cと平行でかつスライス線に一致するように投光器28を調整しておけば、被検体の目的断層面の位置を可視光線29が被検体に交差する線に一致するように調整することもできる。この際、スペーサ27にアクリル樹脂等の可視光線を透過しやすい材料を用いれば、ギャップ26cを可視光線が通りぬけるように投光器28を調整することで、調整を簡単かつ精度よく行うことができる。
したがって、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置におけるスライス線設定によれば、撮影断層面に対応するスライス線の位置を正確に把握することができるとともに、スライス抽出する撮影断層面をX線焦点Fを通って回転軸72に正確に垂直となるようにすることができ、高品質な断層画像を得ることができる。
なお、スペーサ27には、部材26a、26bよりもX線透過性の低い物質を用いることとして、ギャップ像の濃淡を逆にしてもよい。
また、スペーサ27は、ギャップ26c全体を埋めている必要は無く、部分的に数箇所挟むだけにしてもよい。
さらに、スライス線の表示は、点灯・消灯を切り替えられるようにしてもよく、点滅若しくは表示色を変えて表示するようにしてもよい。
なお、スライスファントムの形状が円柱である必要はなく、例えば、角柱や円錐の形状であってもよいことはいうまでもない。
次に、計算上の焦点Fと回転軸72との距離の校正について説明する。
焦点Fと回転軸72との距離(以下「FCD」という)が、画像再構成の計算上で設定されている距離(以下「FCDC」という)に対応しない場合は、再構成画像の寸法にずれが生じる問題がある。例えば、図10に示すようにFCDCの方がFCDよりも長い場合は、被検体の断層画像の大きさがそれに比例して拡大されてしまう。この点に関し、従来はFCDの固定位置を数箇所設け、それぞれの位置で予め寸法既知の物体を撮影し、各位置における断層画像の1画素当たりの寸法を得るようにしていたが、固定位置以外では寸法精度の良い断層画像を得ることは困難である。
まず、操作者は、焦点距離変更機構21で任意のFCDを設定し、物指などで測定した概略FCD値をFCDC値としてデータ処理部8に入力する。つぎに寸法既知の被検体の断層画像を撮影する。データ処理部8におけるFCD校正部では、被検体の寸法と断層画像上の寸法を比較し、FCDに対するFCDCの倍率kを求めて、FCDCの値を1/k倍した値におきかえる。以後、このFCDC値で再構成が行われる。FCDを変更するたびに以上の校正を行なえば、いつも寸法精度のよい画像が得られる。
また、物指を用いるかわりに、図11に示すようにFCD測定部30を設けることもできる。FCD測定部30は、焦点距離変更機構21の固定部に目盛板31を付し、断層面送り機構20に回転軸72の位置を示す指標32を付した構成である。
この場合は、寸法既知の被検体を撮影して得た1/k倍されたFCDC値が指示値になるように指標32あるいは目盛板31をずらしてFCD測定部30を校正する。以後、FCDを変更してもFCD測定部30により正しいFCD値が読み取れるので、この値をFCDC値としてデータ処理部8に入力してやるだけで寸法精度のよい画像が得られる。
したがって、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置におけるFCDの校正によれば、FCDを任意に変更させた場合であっても、寸法精度の高い断層画像を容易に得ることができる。
なお、FCDの測定は、操作者による読み取りではなく、直接FCDの値がデータ処理部8へ送られるようにしてもよい。
また、一次元の検出チャネルを有する検出器を用いる場合にも適用できることはいうまでもない。
したがって、本発明の第1の実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置によれば、検出位置のずれに起因する歪みを補正するためにデータを補間する歪み補正、撮影断層面が検出チャネル行列に傾斜して交差している場合のスライス線上のデータを補間するスライス抽出、螺旋走査およびスキャノ像撮影におけるデータの補間を行うスライス抽出、スライス線の位置の設定、FCDCの校正、を総合的に行うようにしたことで、高品質な断層画像を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、X線I.I.とテレビカメラを用いて検出を行うこととしたが、スライス抽出については、2次元のチャネル行列を有する他の検出器を用いてもよい。
また、上記実施の形態においては、スライス抽出、空気補正、LOG変換、歪み補正の順で処理を行うこととしたが、これらの順番は必要に応じて変更することもできる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
従来のCTスキャナにおいては、検出位置のずれに起因する歪みの校正用のファントムの設置、撮影断層面が検出器の検出面に交差する位置の校正、断層面送りや焦点距離の変更を行ったときにずれた回転軸の設置の角度の校正、焦点と回転軸との距離(FCD)の校正、をそれぞれ手動により各機構を調整することにより行っていたが、これらは大変手間のかかることである。
図12は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、その特徴としては、スライス線の位置および回転軸の位置を求めるためのスライスファントム105を回転テーブル5として設置し、焦点距離変更機構21が被検体を移動させた量を測定してデータ処理部78へ送信する距離測定部101と、データ処理部78の中にあって各種の校正の処理を行う校正部100とを設けるとともに、図13に示すように歪み校正用ファントム113をグリッド駆動部114によりX線I.I.2の前面に設置・離脱ができるようにして、歪み校正用ファントムの設置と歪みの校正、焦点Fを通り回転軸72に直交する撮影断層面が検出チャネル行列に交差する線の位置を求めるスライス線の設定、放射線源の焦点を出発し回転軸72を通る経路が入射する検出チャネル列上の位置を求める回転中心の求出、放射線源1と回転軸72の計算上の距離の校正、が自動的に高精度で行われるようにしたことにある。
なお、図1と同一物には同一の符号を付す。
歪み校正用ファントム113は、X線の吸収性の低い板状の物質に吸収性の高い円柱状の線材を等間隔で埋め込んだもの(グリッド)である。
図18は、スライスファントム105を示す図である。図19は、スライスファントム105の断面図を示す図であり、ピン駆動部109によりピン108を上部に突き出した状態を示している。ピン駆動部109は、その中にピン108を完全に収納することができ、スライスファントム105は、上部105aと下部105bとの間のスペーサ104が回転軸72に垂直となるように設置されている。
このようなCTスキャナにおいて、各校正は、操作者がデータ処理部78のメニューを選択することにより行われていく。
まず、歪みの校正から説明する。図14は、歪み校正用ファントム113を用いて透過データを収集したときのグリッドの透過画像を示す図であり、図15は、グリッドの歪み補正曲線を示す図である。校正部100では、縦線状の透過像がスライス線116と交差する点ikを求め、図15に示すように横軸を検出チ ャネルNo.i、縦軸を検出すべき位置のチャネルNo.nとする座標上に測定点(ik、nk)をプロットし、最小二乗法等を用いて歪み補正曲線を近似的に求めて記憶しておき、この歪み補正曲線を適宜歪み補正部14での補間処理に提供する。
次に、スライス線の設定について説明する。断層面送り機構20によりスライスファントム105を上下方向に移動させ、校正部100では、透過像の濃度分布の中でスペーサ104に対応する直線状の像が最も明確となるときに、その像の中心に位置する線をスライス線として記憶する。
次に、回転中心の求出について説明する。スライスファントム105のピン108が上面に突き出され、ピン108について180°異なる2箇所の回転位置で透過データを収集し、校正部100ではスライス線上のピンの中心の位置を平均して回転軸72を通るX線が入射する検出チャネル(以下「中心チャネル」という)の位置を求めて記憶する。被検体を検査するときには、記憶しておいた中心チャネルの位置が計算上の回転の中心となるように透過データをシフトさせて再構成部15で計算を行う。なお、透過データの収集は、180°対向する検出位置を一組とする複数の組について行うようにしてもよい。
次に、FCDの校正について説明する。校正部100では、任意のFCD位置でスライスファントム105を撮影し、距離測定部101で測定したFCDをFCDC値として断層画像を再構成する。次に、スライスファントム105の寸法と、断層画像上の寸法を比較して真のFCDに対するFCDCの倍率kを求めてFCDCの値を1/k倍し、真のFCD値を決定しこのFCD値とFCDCとの差分を求め記憶する。以後、FCDを変更したときには、距離測定部101でFCDを測定し、校正部100でこのFCDに記憶した差分を加算して、FCDCの値を求めて再構成に用いる。
したがって、本実施の形態によれば、歪み校正用ファントムの設置・離脱と歪みの校正、スライス線の設定、回転中心の求出、FCDの校正が自動的に行われるようにしたことで、手動により検出位置のずれに起因する歪み校正用のファントムの設置、撮影断層面が検出面に交差する位置の校正、回転軸の設置の角度の校正、FCDの校正、を各機構を調整して行ったのと同様の効果を得ることができ、もって高品質な断層画像を容易に得ることができる。
なお、歪み校正用ファントムは、図16(a)に示すようにX線の吸収性の高い物質を同心円状とした同心円ファントム118、同図(b)に示すように小円柱を等間隔で直線上に並べたグリッド119を有するグリッドファントム120、同図(c)に示すように一本のピン121を中心から離れた位置に有するサイドピンファントム122のいずれかを用いて、図17(a)に示すように回転テーブル5の上に固定して透過像を撮影するようにしてもよい。ただし、サイドピンファントム122では、回転位置を変えた複数の透過像を用いて補正曲線を求めるようにする。また、図17(b)に示すようにこれらのファントムを回転機構19の下側に設置するようにしてもよい。
また、スライスファントムは、図20に示すようにピン111をファントムの中に埋め込むようにして構成してもよい。ただし、ギャップの幅が狭すぎるとピン111の透過データを得にくくなり中心校正の精度が落ちてしまうので断層面校正用とは別に幅の広いギャップを設けてもよい。また、設置位置は図21に示すように回転機構19の下側としてもよく、図22に示すように回転機構19の下側にピンを設けるようにしてもよい。
なお、上記実施の形態においては、X線I.I.2とテレビカメラ7を用いて検出を行うこととしたが、2次元の検出チャネル行列を有する他の検出器を用いてもよく、歪みの校正、回転中心の求出、FCDの校正については、1次元の検出チャネル列を有する検出器を用いても同様の効果を奏することができる。
また、スライスファントムは円柱形である必要はなく、例えば、角柱や円錐の形状であってもよいことはいうまでもない。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
上述した、放射線源の焦点を出発し回転軸を通る経路が入射する検出チャネル列上の位置を求める回転中心の求出は、被検体の撮影前に所定のファントムを用いて行うものであるが、所定のファントムを用いることなく回転中心を求めることができればさらに便宜である。この点に関し、特開平8−114558号公報では被検体の撮影中に透過像の輪郭を抽出し、回転中心を求めている。しかし、この方法では輪郭のはっきりしない被検体では誤差が大きくなるという問題がある。
図23は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、X線管51と、コリメータ52と、X線ビーム53と、被検体54と、回転テーブル55と、機構制御部56と、データ収集部57と、検出器60と、表示器59と、データ処理部58の中に空気補正部62と、LOG変換部63と、回転中心求出部66と、再構成部65とを有する構成である。その特徴としては、データ処理部58に回転中心求出部66を設けて、被検体の撮影中に検出された360°分の投影データを用いて回転中心に対応する中心チャネルの位置を求めるようにしたことにある。
以下、回転中心求出部66における処理について説明する。図24は、回転中心の求出を示す図である。横軸を検出チャネルNo.n、縦軸を回転角φとして 360°分の投影データPを並べたサイノグラム上で各チャネルnについて360°分のデータを平均して平均投影データPmを求める。Pmは後述するように左右対称となり、その中心の位置ncを求めて中心チャネルの位置とする。中心ncは重心求出法を用いれば、次式、
で求められる。ここで、Pmが大きい値と小さい値を含めて計算すると重心求出の精度が下がるので、これらの部分については重み付けを下げてもよい。例えば、上限値L2より大きい値を一定値に、下限値L1より小さい値を0に置き換えてから重心を求めるようにする。
また、中心ncは、必ずしも平均データPmを求めなくとも得ることができる。例えば、次式、
により、ncを求めても式(10)と同じ結果となる。
ここで、中心ncが中心チャネルに一致する原理について説明する。図25は、回転中心の求出の原理を示す図である。同図(a)のように中心Cを通る焦点Fからの経路が入射する中心チャネルに対して対称位置にある検出チャネル、nLとnRは、同図(b)のようにそれぞれ中心Cから一定の距離を通る360°にわたる同一の経路集合についてデータを収集するので、360°分加算した投影データは両者について同一の値となる。すなわち、同図(c)のようにこれを平均した投影データPmは左右対称となり、この中心に位置するncは中心チャネルに一致するのである。
この原理を利用して中心ncを求める方法は、上記の重心求出法に限られるものではない。図26は回転中心の求出の他の例を示す図である。同図(a)のように、複数のレベルLiを選び、各レベルについてLiがPmを横切る左右対称の位置にある2点di、uiを一組としてこの位置を平均したniを求め、平均niを全レベルLiについてさらに平均することでncを求めることができる。
レベルLiがPmを横切る位置が複数組できる場合は、いずれの組を選んでもよく、全ての組を用いてもよい。また、レベルLiを誤差の少ない中間レベルに高頻度に設定することでncの算出の精度を向上させることができる。
また、同図(b)のように、仮の中心n0(設計値等)を設定し、このn0を中心としてPmを折り返したPm'を求め、Pmの値とPm'の値との差分の絶対値を全てのnについて加算した結果を求めた後、n0を変更して同様に加算結果を求めていき、加算結果が最小となるときのn0をncとすることもできる。ここでは、n0を実数値で変化させるため、P'mのデータ点がnの整数位置から ずれているので一次補間を用いて差分をとる。また、加算はn0の左右どちらかでのみ行うようにしてもよい。
さらに、同図(c)では、後述するCTスキャナのように被検体の半分が撮影領域の外にある場合に、同図(b)の回転中心求出を応用する例を示す。この場合、Pmは撮影領域内になかった部分が欠落してしまうので、Pmを仮の中心n0で折り返してPm'としたときにPmとPm'とで重なる範囲が限定される。そこで、Pmの値とPm'の値との差分の絶対値をこの重なり範囲内にあるnにつ いてのみ加算し、この加算結果が最小となるn0を求めてncとする。ここで、同様に加算はn0の左右どちらかでのみ行なうようにしてもよい。
したがって、本実施の形態によれば、あらゆる被検体について撮影中に回転中心の位置を求めることができ、所定のファントムを用いることや、回転軸がずれないように機構を調整することを不要とすることができ、もって高品質な断層画像を容易に得ることができる。
なお、本実施の形態においては、回転中心の求出をLOG変換の後に行うこととしたが、LOG変換前に行うこともできる。
また、最初の撮影時のみ回転中心の求出を行なってncを求め、2回目以降はこのncを用いることで、処理時間を短縮することもできる。
さらに、回転中心の求出を螺旋走査のCTスキャナに適応した場合、最初の目的断層面についてのみ回転中心を求め、後の断層面についてはこれを利用することで、処理時間を短縮することができる。ただし、これは断層面送りにより各断層面について回転軸がずれない場合にのみ適用することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
従来、焦点を微少に調整することのできる電子ビーム収束用コイルあるいは電極を有するマイクロフォーカスX線管、あるいは電子ビーム収束用コイルあるいは電極を有するX線蛍光増倍管と光学レンズを有するテレビカメラを用いたCTスキャナにおいては、分解能チャートやピンホールを被検体とする透過像を目視して焦点の調整をするため、その調整が調整者の技能に依存したり、手間がかかるため調整頻度が減り不適切な状態で撮影して画質が劣化する場合があった。
図27は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、フィラメント136から出力される電子線137を収束コイル138で収束させ、陽極ターゲット139に電子線137を衝突させてX線を発生させるマイクロフォーカスX線管146と、収束コイル138の電流を調整して陽極ターゲット139上の焦点Fの大きさを調整するX線フォーカス調整部133と、検出されたX線がX線・電子線変換膜140により変換されてなる電子線141を収束電極142によりI.I.出力面143に収束させるX線I.I.147と、収束電極142の電圧を調整してI.I.出力面143に投影される透過像の焦点を調整するI.I.フォーカス調整部134と、X線I.I.147に接触させた状態で設置されI.I.出力面143上の透過像を光学レンズ144を介してCCDセンサ145へ投影するテレビカメラ148と、I.I.出力面143からの光学レンズ144とCCDセンサ145の距離を調整するカメラフォーカス調整部135と、テレビカメラ148から送られてくる透過像の信号からシグナル値とコントラスト値を求めてMTF(Modulation Transfer Function)曲線を算出するフォーカス評価部130を有するデータ処理部128と、MTF曲線等の演算結果を表示する表示器9と、焦点評価用のファントム131とを有する構成である。焦点評価ファントム131は、図28(a)に示すように板状の物質にX線を透過しにくい鉛等をその幅と間隔を一定として繰り返し並べた矩形パターンを何種類か設けたものである。
なお、その他図1と同一物には同一の符号を付す。
操作者は、焦点評価ファントム131を図27のA位置に設置し、一つの方向から透過データを収集する。透過データはデータ処理部128に送られ、フォーカス評価部130で、図28(b)に示すように強度分布の繰り返しパターンからコントラスト値Cとシグナル値Sとの比(以下、「C/S値」という)を求めて、C/S値を縦軸に、空間周波数f(1/mm)を横軸としてMTF曲線を算出し、表示器9にこのMTF曲線及びC/S値を表示させる。操作者は、MTF曲線のC/S値が最大となるようにX線I.I.147の焦点をI.I.フォーカス調整部134を用いて調整する。MTF曲線はリアルタイムで随時変化していくので 簡単に焦点を調整することができる。つぎに、テレビカメラ148の焦点をカメラフォーカス調整部135を用いて同様に調整する。これを交互に繰り返すことでX線I.I.147の焦点とテレビカメラ148の焦点の両方を正確に合わせることができる。続いて、焦点評価ファントムを図27のB位置に焦点距離変更機構(図示せず)を用いて設置し、同様にしてMTF曲線のC/S値が最大となるようにX線管146の焦点の調整をする。
したがって、本実施の形態によれば、操作者の技能に依存せずにX線管、X線蛍光増倍管、テレビカメラの各焦点の調整を正確に行なうことができ、高品質な断層画像を容易に得ることができる。また、MTF曲線を記録しておくことで、CTスキャナの経年変化を知ることもできる。
なお、本実施の形態において、テレビカメラはCCDセンサのかわりに撮像管を用いることもできる。また、X線I.I.は蛍光板と(レンズと)光I.I.で置き換えることができる。また、検出器全体を蛍光板とカメラとするか、撮像管の入力面にX線・電子線変換膜をつけたX線撮像管とすることもできる。いずれの場合も同様に焦点調整を正確に行なうことができる。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
従来、被検体のX線吸収性の高い部分を通る経路においては、検出されるX線量が減少するため相対的にノイズが増加し、画質が劣化する問題があった。
図29は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、その特徴としては、空気補正部62の後に定数加算部91を設け、透過データに対して略一定値を加算するようにしたことにある。ここで、走査機構64は、被検体61をTRあるいはRR走査させる機構である。なお、その他図23と同一物には、同一の符号を付す。
図30は、定数加算を行う処理の流れを示す図である。これは円柱の被検体61を撮影した場合を例とするものであるが、データ収集部57で収集された透過データd(n)は、X線が吸収される量が多い被検体の中心部では検出される量が減少し相対的にノイズが増加する。このため、同図(従来)に示すように、LOG変換後の投影データの中心部のノイズが増幅されることとなる。
そこで、本実施の形態においては、空気補正部62で式(1)により利得補正のされた透過データh(n)に対し、定数加算部86で、次式、
により定数h0を加算する。例えば、h0=0.05とすると、同図に示すように、h'(n)をLOG変換部63で対数変換して得られた投影データP'(n)における中心部のノイズが圧縮され、h0の値を大きくするとさらに圧縮がかかるようになる。h0は、信号ノイズ比が1となる信号レベルをhNEPとしたとき に4・hNEP〜20・hNEPの範囲に設定するとノイズ低減の効果が大きい。
したがって、本実施の形態によれば、対数変換する前に透過データに一定値を加算することで、検出されるX線量が少ない程ノイズを大きく圧縮することができ、空間分解能を低下させることなくノイズの低減された断層画像を得ることができる。
なお、本実施の形態において、定数加算部91で一定値h0を加算することとしたが、厳密には一定値でなくてもよく、各チャネルnでh0を急激に変化する値としなければ同様の効果を得ることができる。
また、定数の加算は空気補正の前で行ってもよく、検出器60あるいはデータ収集部57で透過データを略一定値増加させるようにしても同様な効果を得ることができる。
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。
図31は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、その特徴としては、LOG変換部63の後にノイズ圧縮部92を設け、ノイズを圧縮する関数を作用させるようにしたことにある。なお、その他図29と同一物には同一の符号を付す。
図32は、ノイズ圧縮を行う処理の流れを示す図である。LOG変換部63で対数変換により得られた投影データP(n)は、ノイズ圧縮部92でノイズ圧縮関数を作用させて、次式、
により変換される。このノイズ圧縮関数は、入力値の増加に伴いその傾斜が緩くなる単調増加の関数であり、投影データの値が大きい程、すなわち、検出されたX線量が少ない程、大きな圧縮がかかるようになっている。また、h0の値により傾斜の角度を調整することができ、h0を増加させれば傾斜は緩くなる。
したがって、本実施の形態によれば、対数変換により得られた投影データに対して上記のノイズ圧縮関数を作用させることで、空間分解能を低下させることなくノイズが低減された断層画像を得ることができる。
なお、ノイズ圧縮関数は、式(15)に限られるものではなく、これに類似する形状を有する関数であれば、同様の効果を得ることができる。
を用いてもよい。ここでパラメータmは1を超える実数で圧縮の曲率を決め、パラメータP0は実数で飽和点を決める。
第5及び第6の実施の形態によるノイズ低減ないしノイズ圧縮は対数変換と同時に作用させることも可能である。この場合は、次式、
で変換される。h(n)を入力すると右辺の関数は、h(n)が大きなときLOG関数に一致し、小さくなるほどLOG関数より小さな値に圧縮させる。この右辺の関数を入力値と出力値よりなるテーブルで作成しておけば、ノイズ圧縮をLOG変換と同時に行なわせることができる。このようなノイズ圧縮を含んだLOG変換は(17)式に限られず、これに類似する形状を有する関数であれば同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。
透過データは、放射線の強度変動の影響により検出時刻が変われば異なってくるものである。この点に関し、従来は、被検体を透過しないX線を検出することができる位置に専用の比較検出器を設置し、X線の強度変動を測定し、透過データに補正を加えていた。
図33は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、その特徴としては、空気補正部62の処理の後に空気領域識別部93において被検体外のX線を検出した領域に対応する透過データ上の領域(以下「空気領域」という)を識別して空気領域におけるX線量の平均値を求め、REF補正部94でこの平均値の逆数を透過データ全体に掛けることで放射線源の強度変動を補正するようにしたことにある。なお、図29と同一物には、同一の符号を付す。
図34は、空気領域の識別および強度変動の補正を示す図である。まず、空気領域識別部93で、同図(a)に示すように空気補正部62での処理の後の同時刻に得られた透過データhについて、値が1±ε(εは微少な値とする)の範囲にある仮の空気領域A(n<n1,n2<nで表されるnの範囲)を求め、この領域を若干縮小して空気領域A'(n<n1',n2'<nで表されるnの範囲) を求め、この領域での透過データhの平均値kを求めて1/kを補正倍数mとする。
次に、REF補正部94で透過データhに補正倍数mを掛けると、空気領域における透過データの平均値は1となり、X線の強度変動による変動が補正される。続いて、LOG変換部63での対数変換を経て投影データPが得られ、再構成部65で360°分の投影データPを用いて画像再構成が行われる。
したがって、本実施の形態によれば、専用の比較検出器を用いることなく、放射線の強度変動の影響による変動を補正することができ、高品質な断層画像を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、空気領域識別およびREF補正をLOG変換の前に行うこととしたが、LOG変換の後で行うようにしてもよい。この場合は、図34(b)に示すように、LOG変換後の投影データPについて値が0±εの範囲にある仮空気領域Aを求め、この領域を縮小した空気領域A'における平均値Paを求め、投影データに−Paを加算するようにすれば数学的に等価となる。
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。
従来、検出チャネル列を放射線源の焦点を出発し回転軸を通る放射線の経路に対し1/4チャネル分ずらして配置し、180°回転させたときに同一の検出チャネル群で1/2チャネル分ずれた経路上のX線が検出されるようにし、180°対向する投影データを組み合わせて一つの投影データとして、180°分の投影データについて見かけ上1/2チャネル毎にデータが得られるようにして分解能を向上させるCTスキャナが知られている。このCTスキャナは対向データを組み合せてから再構成処理するため、360°分データを収集してから再構成を始めるので、断層画像が出来るのに時間がかかる問題がある。これを解決するために、特開昭62−231626号公報では、180°対向する投影データを組み合わせることをせずに、各データ間に0値を挿入することで360°分の投影データについて1/2チャネル毎にデータ値が得られるようにして、分解能が高く、かつ、データ収集と平行して再構成を行なえるようにしている。しかし、この方法では0値の挿入により隣接するデータ間で変化が激しくなるため断層画像上にリング状のアーチファクト(偽像)を生ずることがあるという問題がある。
図35(a)は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、同図(b)は検出器60の中心部分Aの拡大図を示す図である。その特徴としては、検出器60の検出チャネル81の列の中心を焦点Fと回転軸とを結ぶ中心線71に対し1/4チャネル分ずらして配置するとともに、データ処理部84においてLOG変換部63の後にデータ挿入部95を設けて、投影データのデータ間に隣接する2点の値を補間する補間値を挿入するようにしたことにある。なお、その他図23と同一物には、同一の符号を付す。
図36は、データ挿入の処理の流れを示す図である。検出された投影データ(図中黒丸で示す)に対し、隣接する2点を補間する補間値(図中白丸で示す)を線形補間により求め、この補間値をデータ間に挿入する。補間値を挿入した後の投影データのサンプル数は2倍となる。
したがって、本実施の形態によれば、検出器を1/4チャネルずらして配置したCTスキャナにおいて、隣接する2点を補間する補間値をデータ間に挿入して投影データのサンプル数を実質的に2倍としたことで、再構成処理の分解能を2倍にすることができるので断層画像の分解能が向上するとともに、隣接データ間に無理がないのでリング状のアーチファクトの少ない断層画像を得ることができる。また、データ収集と平行して再構成処理が行なえるので短時間で断層画像を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、データ挿入をLOG変換の後に行うこととしたが、LOG変換の前に行うようにしても同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。
従来、回転軸の位置をずらして被検体の片側を撮影領域の外に出した状態で投影データを検出することで、大きな被検体の撮影を可能にしたCTスキャナが知られている(特開昭58−116342号公報)。しかし、実際にデータ収集が行われた撮影領域とデータ収集が行われなかった非撮影領域とで投影データが急激に変化するため、このような投影データを用いて画像再構成を行うとリング状のアーチファクトが生じ易くなる問題がある。
図37は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、その特徴としては、大きな被検体54を乗せる回転テーブル150の回転軸を撮影領域内で外側に設置させるとともに、データ処理部85に窓関数掛け部96を設け、投影データに所定の窓関数をフィルタとして作用させて再構成画像を得るようにしたことにある。ここで、窓関数掛け部96は、窓関数演算手段を構成する。なお、その他図23と同一物には、同一の符号を付す。
図38は、窓関数掛けの処理の流れを示す図である。窓関数w(n)は、横軸を検出チャネルNo.nとし、焦点Fと回転軸とを結ぶ経路が入射する検出チャネル(nc)を中心とする0から1まで変化する傾斜部を有し、ncにおける値は0.5としてある。窓関数掛けにおいては、各チャネルnごとに投影データP(n)と窓関数w(n)とを掛けることで新たな投影データP'(n)が得られる。このP'(n)を360°分、FBP法で再構成処理することで断層画像が 得られる。
したがって、本実施の形態によれば、大きな被検体の片側を撮影領域外に出した状態で投影データを検出する際に、窓関数を作用させて投影データが撮影領域の検出値から非撮影領域の0値へ滑らかに変化していくようにしたことで、リング状のアーチファクトの少ない断層画像を得ることができる。
なお、窓関数は、ncにおける値が0.5であって、ncの左右で傾きが対称な形状で0から1まで変化する傾斜部を有するもの、すなわち次の条件、
を満たすものであればこれに類似する他の関数であってもよい。例えば、図39に示すような傾斜部分を曲線で置き換えた窓関数を用いるようにしても、同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第10の実施の形態について説明する。
従来、等間隔に配置された検出チャネルを有する検出器を用いて画像再構成を行う場合、等間隔に検出された投影データを等角度間隔の投影データに変換してから画像再構成をしており、この変換の過程における誤差により画質が劣化する問題がある。
図40は、本実施の形態に係るコンピュータ断層撮影装置の構成を示す図であり、その特徴としては、X線管1から発生したX線ビーム3を平面上に等間隔で配置された検出チャネル行列を有する平面固体検出器151で検出し、スライス抽出部11、空気補正部12、LOG変換部13を経て投影データPを求め、フィルタ部98において通常のFBP法で行うフィルタを作用させた後、直線データ逆投影部99において等間隔の投影データを等角度間隔の投影データに変換することなく再構成画像を計算するようにしたことにある。なお、その他図1と同一物には、同一の符号を付す。
以下、直線データ逆投影部99における処理について説明する。図41は等間隔検出を示す図であり、図42は直線データ逆投影の処理の流れを示す図である。図41は、回転軸を原点とする被検体に固定した座標軸x,yにおいて、回転角をφとしたときの焦点Fの座標(x
F,y
F)と平面固体検出器151の検出位置を示す測定線45との関係を示すものであり、x軸上の等間隔の各位置をセンタリング番号kで表す。図42においては、まず、ステップ300で360°分の投影データPを−45°〜45°を一単位とする90°分ずつの4つのクオータに分け、ステップ310で最初の90°分の投影データについての演算ループに入り、一定角度φ毎にステップ320で焦点Fの座標(x
F,y
F)を計算し、ステップ330で測定線45上で等間隔に得られた投影データPをx軸上の等間隔のデータ列に変換する(以下「センタリング」という)。ステップ330におけるセンタリングでは、ステップ340で各センタリング番号kについての演算ループに入り、次式によりセンタリングデータPc(k)を求める。
(n'は実数なのでP(n')は線形補間により求める)
ただし、cp:センタリングピッチ、kc:中心k、nc:センタチャネル、
d:チャネルピッチ、FDD:焦点と測定線の距離、
は既知とする。
すなわち、センタリング番号kに対応する測定線45上のn'の位置を幾何学 的に求め、この位置における投影データP(n')を線形補間により求めてセンタリング番号kにおける投影データPc(k)とするものである。ステップ370では、このように得られたPc(k)を再構成画像の各画素へ逆投影する際に、特開昭54−152490号公報等で知られている方法を用いる。続いてステップ380で角度φをインクリメントし、ステップ310へ戻って上記の処理を繰り返し行う。90°分のデータについての上記処理が終了した後、ステップ390で画像を90°回転し、ステップ400で次のクオータに移ってステップ300からの同様の処理を繰り返し、4つのクオータについて逆投影を行って最終的な断層画像を得る。
したがって、本実施の形態によれば、等間隔に配置された検出チャネル行列で検出された投影データを等角度間隔に変換することなく逆投影することができ、等角度間隔に変換する際に生ずる誤差のない高品質な断層画像を得ることができる。
なお、上記各実施の形態においては、被検体を載置する回転テーブルを回転させることとしたが、X線管と検出器を回転させるようにしてもよい。
また、上記各実施の形態において、放射線源から照射される放射線はX線としたが、他の透過性の放射線を用いるようにしてもよい。
さらに、第3及び第5乃至第9の実施の形態においては、検出器は1次元の検出器としたが、2次元的に検出する検出器であってもよく、第5乃至第7の実施の形態においては、走査方式は、RR走査やTR走査に限られず、他の走査方式、例えば、被検体を囲むリング状の検出器を固定して設置し、X線管をその内周または外周で回転させるSR(Stationary-Rotate)方式等としてもよいことはいうまでもない。