JP3819262B2 - 設備管理システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、プラントを構成する設備機器を管理するための設備管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鉄鋼や化学等のあらゆる分野に用いられているプラントは、計算機によるプロセス制御システムにより自動化され、人間(オペレータ)は中央の制御室に居て、生産管理,運転管理,安全管理,設備管理等の作業を重点的に行うような体制を有している。
【0003】
ところで、このようなプラントにおいて、プラント異常が発生する原因は、プラントを構成している設備機器の異常や寿命に起因するものが多い。従って、プラント異常を未然に防ぐためには、プラントを構成している各種の設備機器の余寿命等を管理できれば、事前に修理や保全,機器の交換等適切な措置を講ずることができ、プラントの高い信頼性を維持することができる。また、保全コストの低減を図ることが可能となる。
【0004】
従来から、プラントの設備機器の異常診断を行う種々の方法が開示されている(特開昭59−63526号公報、特開昭59−63527号公報等)。また、複数の部品からなる機器の余寿命を診断する方法あるいは装置としては、特開平3−15768号公報等に開示されている。
【0005】
特開平3−15768号公報に開示された機器の余寿命を算出する装置は、図2に示す構成概念図で示されるものである。これは、機器を構成する複数の部品について、それぞれモデル化した複数の劣化モデル・モジュールにより構成されたモデル部1、及び余寿命算出手段2から構成され、モデル部1から出力される各余寿命情報を余寿命算出手段2に入力し、これらの余寿命中の最も短い値を各部品の集合体である機器の余寿命として出力するように構成されたものである。
【0006】
上記モデル部1は、余寿命と直接関連性のある属性についての余寿命情報を出力する。この属性についての余寿命情報は、使用環境や経歴等の保全情報に基づいて予測されたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、昨今の状況の変化から、上記対象機器を含む設備の稼動条件が変動する場合が多数見受けられるようになってきた。この場合、余寿命予測は、過去の保全情報に基づいて行われているので、稼動条件が変動すると、余寿命を予測することが困難となる場合が多かった。
【0008】
そこでこの発明は、対象機器の稼動条件が変化した場合であっても、対応できる設備管理システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、プラントを構成する設備機器を管理するための設備管理システムであって、管理対象機器の余寿命に関連する機能に関する劣化モデルを有し、印加される情報に基づいて、この劣化モデルから算出される機能データを出力する機能部と、上記管理対象機器の余寿命に関連する属性に関する劣化モデルを有し、印加される情報に基づいて、この劣化モデルから算出される属性データを出力する属性部とを有する劣化モデル部、上記管理対象機器に与えられるストレスに関連する情報を上記劣化モデル部に印加するストレス情報部、上記劣化モデル部の機能部から印加される上記機能データを用いて余寿命を予測する余寿命予測部、及び上記劣化モデル部の属性部からの属性データと上記管理対象機器からの現実データとを比較し、上記劣化モデル部の劣化モデルの修正を指示する比較部から構成される。
【0010】
劣化モデル部を属性部と機能部に分けたので、属性部の属性データを用いて、劣化モデルの修正を行うことが可能になると共に、機能部の機能データを用いて、管理対象機器の余寿命を予測することができる。劣化モデルの修正は、劣化モデルの精度を向上させると共に、管理対象機器の稼動条件が変更された場合に生じる劣化モデルの修正を的確に行うことができる。
【0011】
さらに、余寿命予測部から出される予測余寿命を用いてストレス条件の変更の有無を判断し、ストレス情報部に指示するストレス条件変更部を設けると、ストレス条件の変更により、変更後の余寿命が予測されるので、管理対象機器のストレス条件と余寿命とをシミュレートすることが可能となる。
【0012】
さらにまた、余寿命予測部から出される予測余寿命を用いて管理対象機器の保全の有無を判断し、管理対象機器の保全を指示する保全部を設けると、設備保全や設備の部品交換の時期等を把握することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下において、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかる設備管理システムは、図1に示すように、プラントを構成する設備機器を管理するための設備管理システムであり、劣化モデル部11、ストレス情報部12、余寿命予測部13、及び比較部14から構成される。
【0014】
上記劣化モデル部11は、管理対象機器15の劣化状態をモデル化した複数の劣化モデルを有する。この劣化モデル部11は、機能部16と属性部17に分けられる。
【0015】
上記機能部16は、管理対象機器の余寿命に関連する機能に関する劣化モデルを有し、上記ストレス情報部12から出力され、印加される情報に基づいてこの劣化モデルから算出される機能データを出力する。上記機能とは、余寿命に直接関連する因子をいい、例えば、気密性を要求する機器なら、気密性をいい、また、回転機器なら、回転性をいう。
【0016】
また、上記属性部17は、上記管理対象機器の余寿命に関連する属性に関する劣化モデルを有し、印加される情報に基づいてこの劣化モデルから算出される属性データを出力する。上記属性とは、余寿命に直接関連する構成部材の因子をいい、主に、測定可能なものをいう。例えば、気密性を要求する機器なら、パッキンの肉厚や劣化度、傷等の程度をいい、また、回転機器なら、モーター、回転軸等の部材の劣化度の程度等をいう。
【0017】
上記の機能部16の劣化モデル、及び属性部17の劣化モデルは、理論や過去の経験等から導き出される。
【0018】
上記のストレス情報部12は、上記管理対象機器15に与えられるストレスに関連する情報を上記劣化モデル部に印加する部分である。
【0019】
上記余寿命予測部13は、劣化モデル部11の機能部16から印加される機能データを用いて余寿命を予測する部分である。
【0020】
上記比較部14は、劣化モデル部11の属性部17からの属性データと上記管理対象機器15からのメンテナンス結果等による現実のデータとを比較し、劣化モデルの修正が必要な場合は、劣化モデル部11の劣化モデルの修正を指示する部分である。
【0021】
実際の管理対象機器15のメンテナンス結果が、劣化モデルにより想定した状態と比べて差がある場合、比較部14からの指示で、その差が無くなるように、又は少なくなるように、劣化モデル部11の劣化モデルのパラメータが修正される。これにより、劣化モデル部11の機能データ及び属性データが、現実のデータとできるだけ一致するように調整することができる。
【0022】
さらに必要に応じて、上記余寿命予測部13から出される余寿命を用いて所定の判断を行う判断部18が設けられる。この判断部18では、主にオペレータ(人間)によって判断が行われる。上記判断部18で行われる判断としては、管理対象機器15に与えるストレス条件の変更や、管理対象機器15の保全の有無があげられる。
【0023】
上記ストレス条件を変更する場合は、ストレス条件の変更がストレス条件変更部19から上記ストレス情報部12に指示され、劣化モデル部11に与えられるストレス情報が変更される。この新しいストレス情報により、管理対象機器15の余寿命予測を再び行うことができる。この余寿命のシミュレーションにより、実際のストレス情報変更のための情報を得ることができる。
この情報から管理対象機器15のストレスを調整することにより、生産計画や保全計画に沿ったプラント操業を実現することができる。
【0024】
また、上記管理対象機器15の保全を行う必要と判断された場合は、その旨が保全部20に指示される。これにより、管理対象機器15の部品交換や整備等の保全を行ったり、保全をすべき時期を把握することができる。
【0025】
【実施例】
以下、この発明にかかる設備管理システムの一実施例を具体的に説明する。
図1に示す設備管理システムにおいて、管理対象機器15として、貯蔵タンク(材質:SUS304、内容液:希硫酸(0.5〜5.0重量%)、圧力1.0MPa)を用いた。
【0026】
また、劣化モデル部11の劣化モデルとしては、下記のものを採用した。
まず、属性部17において属性として上記貯蔵タンクの板厚に着目し、下記式(1)で示される板厚の式を劣化モデルとして設定した。
T=To−Σ(R×N)dt (1)
(適用範囲:硫酸濃度0〜40重量%)
なお、T:板厚、To:初期板厚、R:係数、N:希硫酸濃度(重量%)、dt:単位時間(時間)を示す。また、R×Nは、腐食速度(mm/y)を示し、故障物理及び実験結果から、R=0.5とした。
【0027】
一方、機能部16において、機能として上記板厚の変化で生じ得る漏洩確率に着目し、下記式(2a)(2b)に示される漏洩確率(%)の式を劣化モデルとして設定した。
S=0 (T≧Tc) (2a)
S=100−(T/Tc)×100 (T<Tc) (2b)
なお、S:漏洩確率(%)を示す。また、Tcは計算肉厚を示し、下記に示される式(3)を満たす。
Tc=P×Do/(2×σ×η−0.8×P) (3)
上記式(3)において、P:設計圧力、Do:貯蔵タンク外径、σ:許容引張応力、η:溶接継ぎ手効率を示す。
【0028】
さらに、余寿命予測部13においては、機能部16で得られた漏洩確率(S)から余寿命を予測した。
【0029】
(実施例1)
初期板厚(To)が10mmの貯蔵タンクに1重量%希硫酸を入れ、10年間連続使用した。10年経過時の検査の結果、板厚は4mmであった。
一方、上記条件をストレス情報として劣化モデル部16に印加した。その結果、属性データとして、板厚(T)が5mmと出力された。
【0030】
上記の板厚の検査結果と属性データを比較部14で比較検討し、属性部17の劣化モデルのうち、パラメータのRを0.6とするのが適当と判断されたので、劣化モデルを修正した。
また、上記条件をストレス情報として劣化モデル部16に印加した結果、機能データとして、漏洩確率が0%と出力された。これを余寿命予測部に印加し、この貯蔵タンクの必要板厚は2mmであることから、同様のストレス条件下で使用を継続すると、余寿命は6年と予測された。
【0031】
(実施例2)
実施例1の余寿命予測を判断部18で検討し、余寿命を12年にしたいと考えてストレス情報を変更して劣化モデル部11に印加し、余寿命予測のシミュレーションを行った。その結果、貯蔵タンク中の希硫酸濃度を0.5%に変更することにより、余寿命を12年に延ばすことができることが明らかとなった。
【0032】
【発明の効果】
この発明によると、劣化モデル部を属性部と機能部に分けたので、属性データを用いて、劣化モデルの修正を行うことが可能になると共に、機能データを用いて管理対象機器の余寿命を予測することができる。
【0033】
また、劣化モデルの修正は、劣化モデルの精度を向上させることができると共に、管理対象機器の稼動条件が変更された場合に生じる劣化モデルの修正を的確に行うことができる。
【0034】
さらに、得られる予測余寿命からストレス条件の変更の有無を判断し、ストレス情報部に指示するストレス条件変更部を設けることにより、ストレス条件の変更により、変更後の余寿命を予測することができ、管理対象機器のストレス条件と余寿命とのシミュレーションが可能となる。
【0035】
さらにまた、得られる予測余寿命から管理対象機器の保全の有無を判断し、上記管理対象機器の保全を指示する保全部を設けることにより、設備保全や設備の部品交換の時期等を把握することができる。
【0036】
また、この発明にかかる設備管理システムは、化学プラントや鉄鋼プラント等を構成する設備機器のシミュレーション機能を有するので、化学プラントや鉄鋼プラント等の余寿命を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる設備管理システムの例を示す模式図
【図2】従来の設備管理システムの例を示す模式図
【符号の説明】
1 モデル部
2 余寿命算出手続
11 劣化モデル部
12 ストレス情報部
13 余寿命予測部
14 比較部
15 管理対象機器
16 機能部
17 属性部
18 判断部
19 ストレス条件変更部
20 保全部
Claims (2)
- プラントを構成する設備機器を管理するための設備管理システムであって、
管理対象機器の余寿命に関連する機能に関する機能劣化モデルを有し、印加される情報に基づいて、この機能劣化モデルから算出される機能データを出力する機能部と、上記管理対象機器の余寿命に関連する属性に関する寿命劣化モデルを有し、印加される情報に基づいて、この寿命劣化モデルから算出される属性データを出力する属性部とを有する劣化モデル部、
上記管理対象機器に与えられるストレスに関連する情報を上記劣化モデル部に印加するストレス情報部、
上記劣化モデル部の機能部から印加される上記機能データを用いて余寿命を予測する余寿命予測部、
及び上記劣化モデル部の属性部からの属性データと上記管理対象機器からの現実データとを比較し、上記劣化モデル部の寿命劣化モデルの修正を指示する比較部から構成され、
上記設備機器は、貯蔵タンクであり、
上記寿命劣化モデルは、下記式(1)に示される板厚の式であり、
・T=To−Σ(R×N)dt (1)
(なお、Tは板厚、Toは初期板厚、Rは係数、Nは希硫酸濃度(重量%)、dtは単位時間(時間)を示す。)
また、上記機能劣化モデルは、下記式(2a)(2b)に示される漏洩確率(%)の式であり、
・S=0 (T≧Tc) (2a)
・S=100−(T/Tc)×100(T<Tc) (2b)
(なお、Sは漏洩確率(%)を示す。また、Tcは計算肉厚を示し、下記に示される式(3)を満たす。)
・Tc=P×Do/(2×σ×η−0.8×P) (3)
(なお、Pは設計圧力、Doは貯蔵タンク外径、σは許容引張応力、ηは溶接継ぎ手効率を示す。)
上記機能データは、上記式(2a)(2b)で示される機能劣化モデルから算出されるデータであるS(漏洩確率、%)をいい、
上記属性データは、上記式(1)で示される寿命劣化モデルから算出されるデータであるT(板厚)をいい、
上記の印加される情報、及びストレス情報部から与えられるストレスに関連する情報は、上記式(1)のN(希硫酸濃度、重量%)を意味し、
上記の劣化モデル部の属性部からの属性データと上記管理対象機器からの現実データとを比較し、上記劣化モデル部の寿命劣化モデルの修正を指示するとは、属性データであるT(板厚)と、現実のデータとの差から、上記式(1)で示される寿命劣化モデルの係数であるRを修正することを意味する設備管理システム。 - 上記余寿命予測部から出される予測余寿命を特定の値とするため、上記式(1)のN(希硫酸濃度、重量%)を変更することを上記ストレス情報部に指示するための、ストレス条件変更部を有する請求項1に記載の設備管理システム。
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