JP3818481B2 - まな板用樹脂ベルト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はまな板用樹脂ベルト、詳しくは食品、漢方薬等を搬送しながら裁断するために使われてまな板の役目を果たすベルト厚みの厚いまな板用樹脂ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品、漢方薬等を搬送しながら裁断するために使われてまな板の役目を果たすまな板用ベルトとしては、(1)表カバー層の硬度が70前後と低い食品搬送用白色ニトリルゴム製ベルト、(2)表カバー層の硬度が92前後と高い熱硬化性ウレタンからなる無心体の樹脂製ベルト等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のまな板用ベルトは、(1)のゴム製ベルトでは食品衛生法に不合格であるばかりでなく、耐カット性が悪いためカット時、カバーゴムにささくれが発生し、カット屑が食品に混入したり、更にはカバーゴムの硬度が低いため繊維質の漢方薬等をカットする時、カバーゴムにカッター刃が食い込んでもカバーゴムに弾力があるためカットできない等の問題がある。
【0004】
又、(2)の樹脂製ベルトでは硬度が高く繊維質の漢方薬等をカットするには適しているが食品衛生法に不合格であるばかりでなく、無心体のためベルトのソリが大きく、更にはベルトの伸びが大きくテンション張り調整がしにくい等の問題がある。
【0005】
本発明は、前述の問題点を解決すべく鋭意検討の結果提案されたものであり、表カバー層のカバー材質とベルト総厚み及びカバー特性を規制することにより、食品衛生法に合格し、耐カット性、耐ささくれ性に優れ、且つ被裁断物のカット不良をなくすことができる優れたまな板用樹脂べルトを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述の目的を達成するため本発明の特徴とするところは、心体帆布の表裏カバーが樹脂層からなる搬送用樹脂ベルトにおいて、該表裏カバー層が熱可塑性樹脂からなり、表カバー層が裏カバー層より厚く、且つ抗菌、防黴性であるとともに、カット時のカット屑の発生防止と、カッター刃の食い込み防止の相反する機能を両立させるために表カバー層を2層構造とし、搬送側カバー層の硬度がJIS−Aで60〜80、100%モジュラスが5MPa以下及び25%伸張時の永久歪みが4%以下であり、心体帆布側カバー層の硬度がJIS−Aで80〜90であるまな板用樹脂ベルトである。
【0007】
そして、このまな板用樹脂ベルトはベルト総厚みが5〜20mmであり、熱可塑性樹脂はポリエーテル系ポリウレタンもしくはポリエステル系ポリウレタンであるとしている。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に本発明に係るまな板用樹脂ベルトの実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
本発明に係るまな板用樹脂ベルト1は、図1に示す如くベルト本体となる心体帆布2及びこの心体帆布2の表面側には表カバー層3と、裏面側には裏カバー層4とが積層された構成となっている。表カバー層3は搬送側カバー層3aと心体帆布側カバー層3bの2層構造となっており、カット時のカット屑の発生防止と、カッター刃の食い込み防止の相反する機能を両立できるようになっている。
【0010】
この心体帆布2は、綿繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、ナイロン繊維等の伸びの少ない繊維で平織り、綾織り、朱子織り等で織成され、必要に応じて心体帆布2は熱可塑性樹脂であるポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂液が含浸あるいはコーティング処理される。
【0011】
この表裏カバー層3、4を形成する熱可塑性樹脂は本発明の主要部であって、この熱可塑性樹脂としてはポリエーテル系ポリウレタン又はポリエステル系ポリウレタンを主原料としたポリウレタン樹脂が好ましく、その他に塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂などがあり、この熱可塑性樹脂に抗菌防黴剤組成物を配合したものである。
【0012】
この抗菌防黴剤組成物としては、抗菌防黴の有効成分であるビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛に、紫外線吸収剤及び変色防止剤を配合し、さらに分散剤を配合したものが用いられる。
【0013】
紫外線吸収剤は紫外線の作用でベルトが劣化するのを防ぐために配合されるものであり、この紫外線吸収剤としては、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−{2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル}−2H−ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ルなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2,5−ビス{5’−t−ブチルベンゾオキザゾリル(2)チオフェンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤を用いることができる。
【0014】
また変色防止剤は抗菌防黴剤の有効成分の変色を防止してベルトが変色することを防ぐために配合されるものであり、この変色防止剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、酢酸ヘキサメタ燐酸ナトリウムなどのキレート剤を用いることができる。
【0015】
抗菌防黴剤組成物を構成する上記のビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛に、紫外線吸収剤、変色防止剤を樹脂や接着処理剤に配合して混練あるいは混合するにあたって、これら各成分の流動性や分散性を高めて樹脂中や接着処理剤中に均一に分散あるいは溶解させるために、本発明ではビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛に紫外線吸収剤及び変色防止剤を配合すると共に、さらに分散剤を配合して抗菌防黴剤組成物を調整するようにしているものである。この分散剤としては炭酸カルシュウム、タルク、二酸化珪素などをもちいることができる。
【0016】
上記のようにして調整される抗菌防黴剤組成物は、100メッシュの篩を通過する粒径が50μm〜150μm程度の粉末である。また抗菌防黴剤組成物の組成比は、特に限定されるものではないが、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛100重量部に対して、紫外線吸収剤20〜50重量部、変色防止剤20〜50重量部、分散剤100〜400重量部の範囲が好ましい。
【0017】
又、この表裏カバー層3、4は耐カット性改善及びささくれ防止のためカバー層の硬度が60〜80(JIS−A)、カバー層引張強度として100%モジュラスが5MPa以下、25%伸張時の永久歪みが4%以下になるようにつくられており、更に表裏カバー層の厚みは、表カバー層の厚みが裏カバー層の厚みより厚く、ベルト総厚みが5〜20mmになるように形成されている。
【0018】
尚、カバー層の硬度が60未満では、カバー層の硬度が低いため繊維質の物をカットする時にカッター刃が食い込んでもカバーの弾力があるためカットできない。反面、カバー層の硬度が80以上では、カバー層の硬度が高すぎてカッター刃が食い込んでも応力分散しないことからカバー層のささくれが発生する。
【0019】
また、100%モジュラスが5MPa以上では、カバー層の硬度が高く弾性率が大きくなることからカッター刃が食い込んでも応力分散しない。更に、25%伸張時の永久歪みが4%以上では、カッター刃の圧縮力でカバー層のへたりが発生しやすい。
【0020】
更に、ベルト総厚が5mm未満では、表カバー層が薄すぎるため被裁断物をカットする時に心体帆布を傷つけやすくなり、心体帆布に起因するベルト寿命を短くする。一方、ベルト総厚が20mm以上では、プーリ径との関連から屈曲性が悪くなる。
【0021】
図2は、本発明のまな板用樹脂ベルトが使用される状態を示した側面図であり、図3は、図2で示した押えロ−ル部のN−N断面図である。図2において一対の駆動プーリ5と従動プーリ6の間にまな板用樹脂ベルト1が懸架され、ベルトの幅方向両側には荷こぼれ防止板7が取り付けられ、駆動プーリの手前に上下動可能な押えロール8が設置され、駆動プーリ5上には上下に動くカッター刃9が取り付けられている。
【0022】
被裁断物がベルト1に載せられて押えロ−ル8の下に移動すると、押えロ−ル8にて押圧されると同時にカッター刃9が下降して被裁断物をカットする。尚、荷こぼれ防止板7とベルト1間は上下方向に3mmの間隔Wが設けられている。
【実施例】
次に本発明の効果を具体的実施例に基づいて説明する。
【0023】
(実施例1)
本発明に係るまな板用樹脂ベルトは、図1に示すように、心体帆布2にはベルト許容張力12kg/cmのポリエステル繊維を綾織りした3プライの心体帆布2を用い、表カバー層3の2層目となる心体帆布側カバー層3bと、裏カバー層4には硬度が88である熱可塑性樹脂のポリエステル系ポリウレタンを用い、その厚みを夫々、0.5mm、3mmとした。
【0024】
また、表カバー層3の1層目となる搬送側カバー層3aには、実施例2と同じポリエステル系ポリウレタンを用い、そのカバー特性は硬度がJIS−Aで73、100%モジュラスが3.4MP a 、25%伸張時の永久歪みが2.2%とした。このポリエステル系ポリウレタンからなる搬送側カバー層3aの厚みは5mmであり、ベルト総厚みが10mm となるように形成した。
【0025】
(比較例1)
比較例1であるまな板用樹脂ベルトのベルト本体1は、ベルト許容張力12kg/cmのポリエステル繊維を綾織りした3プライの心体帆布2であり、この心体帆布2の表裏側にはカバー層として熱可塑性樹脂のポリエーテル系ポリウレタンを主原料とした厚み5mmの表カバー層3と、厚み3mmの裏カバー層4が積層され、ベルト総厚みが10mmに形成されている。このカバー特性は硬度がJIS−Aで80、100%モジュラスが5.0MP a 、25%伸張時の永久歪みが2.9%であった。
【0026】
(比較例2)
比較例1とカバー層の材質以外は同じ構成からなり、カバー層として熱可塑性樹脂のポリエステル系ポリウレタンで、カバー特性は硬度がJIS−Aで73、100%モジュラスが3.4MP a 、25%伸張時の永久歪みが2.2%であった。
【0027】
これらのポリエーテル系及びポリエステル系ポリウレタン樹脂には、抗菌防黴剤組成物が添加されている。具体的には、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛100重量部に対して紫外線吸収剤の2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ルを30重量部、変色防止剤のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを20重量部、分散剤の炭酸カルシュウムを300重量部からなる抗菌防黴剤組成物を、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂及びポリエーテル系ポリウレタン樹脂にそれぞれ0.2重量%添加してドライブレンドし、これを加熱して可塑化して押し出し機でシート状にしてペレットを作製し、このペレットを別の押し出し機に投入してシート状に押出成形した。
【0028】
(比較例3、比較例4)
一方、従来のまな板用樹脂ベルトである比較例3は、白色ニトリルゴム製ベルトであり、総強力100kg/cmのポリエステル繊維からなる2プライの心体帆布2であり、この心体帆布2の表裏側にはカバー層としてニトリルゴムの厚み5.0mmの表カバー層と、厚み3.0mmの裏カバー層が積層され、ベルト総厚みが10mmに形成されている。又、比較例4は無心体ベルトであり、熱硬化製ウレタンを主原料としたベルト総厚みが15mmに形成されている。
【0029】
上記した各々のベルトを用いてまな板用樹脂ベルトの評価を行った。まず、ベルトの静的評価として、カバー硬度、カバー引張強度、永久歪み、被裁断物のカット性、カバー屑発生状態、及び食品衛生法に基づく食品衛生試験を実施した。被裁断物のカット性の評価は、オートグラフのロードセル部にカッター刃を取付け、それぞれのベルト総厚で幅50mmで長さ150mmの試料にカッター刃を2mm食い込ませた時の荷重を測定した。
【0030】
また、カバー屑の発生状態は、カッター刃の食い込み量を一定(食い込み量2mm)にした場合と、食い込み圧力を一定(圧力9.6KN/m)にした場合に別けて試験評価した。尚、食品衛生試験は厚生省告示第20号FDA177−2700抽出試験で行った。
【0031】
以上の諸条件下で夫々のベルトについて静的評価を行なった結果は、下記の表1に示す通りであった。
【0032】
【表1】
Figure 0003818481
【0033】
この結果から明らかなように、本発明のベルトは従来のベルトに比較し食品衛生試験に合格し、耐カット性及びささくれ発生状況についてもほとんど問題ないことが確認出来た。
【0034】
【発明の効果】
以上の如く本発明のまな板用樹脂ベルトは、表裏カバー層が熱可塑性樹脂からなるカバー層であり、このカバー層の特性を限定して、表カバー層が裏カバー層より厚く、且つ抗菌、防黴性であることにより、食品衛生試験に合格し、且つ被裁断物のカット不良をなくし、同時にカット時のささくれが発生し難いまな板用樹脂べルトを得ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るまな板用樹脂ベルトの断面図である。
【図2】 本発明のまな板用樹脂ベルトの使用状態を示す側面図である。
【図3】 図2のN−N断面図である。
【符号の説明】
1 まな板用樹脂ベルト
2 心体帆布
3 表カバー層
3a 搬送側カバー層
3b 心体帆布側カバー層
4 裏カバー層
5 駆動プーリ
6 従動プーリ
7 側板
8 押えロール
9 カッター刃

Claims (3)

  1. 心体帆布の表裏カバー層が樹脂層からなる搬送用樹脂ベルトにおいて、該表裏カバー層が熱可塑性樹脂からなり、表カバー層が裏カバー層より厚く且つ抗菌、防黴性であるとともに該表カバー層は、2層構造からなり、搬送側カバー層の硬度がJIS−Aで60〜80、100%モジュラスが5MPa以下及び25%伸張時の永久歪みが4%以下であり、その余の心体帆布側カバー層の硬度がJIS−Aで80〜90であることを特徴とするまな板用樹脂ベルト。
  2. ベルト総厚みが5〜20mmである請求項1記載のまな板用樹脂ベルト。
  3. 該熱可塑性樹脂がポリエーテル系ポリウレタもしくはポリエステル系ポリウレタンの何れかである請求項1記載のまな板用樹脂ベルト。
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