JP3817858B2 - チタン合金を用いた回転子の製造方法 - Google Patents

チタン合金を用いた回転子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はチタン合金の超塑性現象を応用して、円筒状のチタン合金に塑性加工を施し、ロータ部に各種の希土類磁石とか鉄心材料を内蔵させた高強度で低慣性を有するチタン合金を用いた回転子とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から知られている永久磁石式高速発電機又は電動機等に採用されている回転子の概略構造の一例を図20(A)(B)によって説明すると、図中の1はシャフト、2は希土類磁石、3は非磁性材の金属円筒、4,4は非磁性材の金属円板である。
【0003】
この回転子構造では希土類磁石2の強度、例えば引張強度,曲げ強度,ねじり強度が低く、剛性も低いため、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性金属材料を用いた前記金属円筒3の両端に金属円板4を焼ばめすることにより、内部にある希土類磁石2を金属円筒3と金属円板4で拘束して回転子としての強度と剛性を保持している。
【0004】
更に図21(A)(B)の従来例では、上記シャフト1の周囲にバルク材又は積層材でなる鉄心5を配備し、この鉄心5の周縁部に長手方向に沿って断面くさび型の複数の鉄心溝部6を形成して、該鉄心溝部6内に希土類磁石2,2を配置し、エポキシ樹脂等の高分子接着剤を用いて接着する手段が採られている。又、金属円筒3とともにアラミド繊維(ケブラー)あるいはガラス繊維を用いて外周部円周方向を強化した繊維強化プラスチック材料(FRP)を用いてフープによる補強と併用することによって希土類磁石2を拘束し、高速回転に耐える回転子を実現しているのが現状である。
【0005】
上記希土類磁石2とは、ネオジムを用いたNd−Fe−B系磁石とか、プラセオジウムを用いたPr−Fe−B系磁石及びサマリウムを用いたSm−Co系磁石等の活性な希土類元素を主成分として含有する高磁気エネルギー積の磁石であり、この希土類磁石2は腐食しやすいので、エポキシコーティングとかアルミクロメート皮膜又は銅下地のニッケルメッキなどが施され、金属円筒3等のロータ部材金属との固着にはエポキシ樹脂等の高分子接着剤を用いて接着する手段が採られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記の希土類磁石の出現によって磁気特性の飛躍的な向上が達成され、これらの強力な磁石を回転子に組み込んだ永久磁石式同期機では、誘導機や巻線式同期機に比して単位面積当たりのエネルギー密度が高く、且つ回転速度も増大できるので出力向上がはかれる上、電動機や発電機の小型化と高性能化が可能になるという利点がある。しかし以下のような問題が存在する。
【0007】
先ず第1に、粉末焼結法によって作製した希土類磁石は本質的に脆性材料であり、回転子を構成する鉄心その他の金属材料に較べて強度,剛性,靭性,変形能等の機械的特性が不足しているため、電動機等の高速化とか大容量化に伴って回転子に作用する遠心力が一段と増大すると、希土類磁石に変形とか破断が生じやすいという難点がある。
【0008】
例えば希土類磁石は粉末焼結法あるいは鍛造法、圧延法等の手段で作製されており、Nd−Fe−B系磁石は超急冷磁石粉末のホットプレス法とか、超急冷磁石粉末の熱間塑性加工法でも作製されているが、Nd−Fe−B系磁石の曲げ強度は約260(MPa)であって、通常の鋼の1/2以下であり、弾性率は約150(GPa)と鋼の3/4程度である。
【0009】
更に破断伸びは約0.2%と鋼の1/10以下できわめて小さく、しかもほとんど塑性変形せずに弾性変形のみで破断に至っている。しかし曲げ及び引張強度に比して圧縮強度は2倍以上大きいという特徴がある。Pr−Fe−B系磁石もこれとほぼ同等の強度を持つが、Sm−Co系磁石の強度は一段と小さくなっている。
【0010】
尚、粉末焼結磁石の強度を低下させている要因の一つとして、常圧又はやや減圧されたアルゴンガス雰囲気中で粉末焼結した磁石が内包するボイドとか微小亀裂等の内部欠陥の存在が考えられる。
【0011】
第2に希土類磁石の耐食性が不足していることが挙げられる。前記Nd−Fe−B系,Pr−Fe−B系,Sm−Co系の各希土類磁石において、その成分元素の一つであるネオジム,プラセオジウム,サマリウムの各希土類元素は活性なため、これら希土類磁石は大気中で数日放置すると表面が変色し、腐食が進行する。従って通常はエポキシコーティングとかアルミクロメート処理もしくは銅下地のニッケルメッキなどが施された状態で実用に供されている。
【0012】
第3に希土類磁石とロータ部材金属との接合強度不足が挙げられる。例えばエポキシ樹脂剤で接合した希土類磁石とロータ部材金属、例えば鋼との引張強度は、室温で約20(MPa)であり、これはNd−Fe−B系磁石の持つ引張強度の約1/4程度である。しかも100℃を越える高温では接合強度は更に低下するため、運転時に100℃以上に発熱するようなロータ部では、接合強度はほとんど期待できない。尚、通常のNd−Fe−B系磁石の使用時耐熱温度は最大140〜160℃となっている。
【0013】
第4に希土類磁石の磁気特性を劣化させない高強度接合技術が未確立であることが挙げられる。即ち、希土類磁石本来の磁気特性を劣化させずに100℃を越えるロータの発熱温度にも耐え得るような磁石とロータ部材金属との高強度接合技術は確立されていないのが現状である。前記したように希土類元素はきわめて活性なため、銀ロウ等の金属系鑞材で希土類磁石とロータ部材金属を約850〜900℃程度の高温下でロウ付けしようとしても、希土類元素と鑞材が激しく反応して磁石の磁気特性を劣化させることなしに接合することはきわめて困難であり、しかも接合強度は10(MPa)以下となる。又、Nd−Fe−B系磁石においては鑞材中の銀元素が磁石の内部深くまで拡散し、磁石の保磁力が大幅に低下してしまうという難点がある。
【0014】
前記したように、非磁性金属材料を用いた金属円筒3の両端に焼ばめすることによって内部にある希土類磁石2を金属円筒3と金属円板4で拘束し、高遠心力に耐え、且つ低慣性の回転子を実現するためには、強度が大きくて比重が小さい高比強度の金属材料を採用することが望ましい。
【0015】
非磁性金属系で比強度が最大な材料は機械構造用のチタン合金であるが、一般にこのチタン合金は、流通段階では中実円柱形状の熱間鍛造材として供給されている。しかもチタン合金は価格的にも高価であり、活性金属で難切削材であることから前記中実円柱形状の熱間鍛造材から薄肉円筒補強環状に機械加工するするための加工コストが高くなり、材料の歩留まり,即ち高価な素材の有効利用率が低下するという課題を有している。
【0016】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、非磁性金属系材料である機械構造用のチタン合金を用いて加工コストの低廉化と材料の歩留まりの向上をはかり、高価な素材の有効利用率を高めるとともに高強度で低慣性を有する回転子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の回転子の製造方法は、超塑性ガス圧成形加工方により形成したシャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材を、補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内にチタン合金円板を中心として両側に希土類磁石を組み合わせて配置し、異径円筒部材を高温に加熱してシャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめを行い、補強環の突合わせ部を隙間なく合わせてから軸方向に圧縮負荷を加えた状態で回転させながら補強環の突合わせ部とチタン合金円板とを電子ビーム溶接により全周にわたって一体接合することを特徴とする
【0021】
更に前記補強環内に、チタン合金円板を中心として両側に希土類磁石と非磁性シャフトを組み合わせて配置した例と、補強環内にチタン合金円板を中心として両側に鉄心を配置し、この鉄心の周縁部長手方向に沿って設けた鉄心溝部内に希土類磁石を挿入して拘束した例と、鉄心として2層中実シャフトを用いた方法を提供する。
【0022】
鉄心として純鉄,低炭素鋼,低合金鋼等の強磁性材でなるバルク材を用いるか、ケイ素鋼板を積層した積層材を用いる。
【0023】
前記補強環内にチタン合金円板を中心として鉄心を強磁性シャフトに圧入して配置し、この鉄心の周縁部長手方向に沿って設けた鉄心溝部内に希土類磁石を挿入して拘束した方法を提供する。強磁性シャフトとして溝付き強磁性シャフトとかアルミダイキャスト製のシャフトを用いる。
【0024】
更に前記補強環内に希土類磁石を中心として両側に磁性端板を配置した方法と、補強環内に奇数の複数個に分割された希土類磁石を配置した方法と、補強環内に積層型鉄心を強磁性シャフトに圧入して配置して、この鉄心の周縁部長手方向に沿って設けた鉄心溝部内に希土類磁石を挿入して拘束した方法を提供する。
【0025】
前記非磁性金属円筒として、アルミ合金、チタン合金、オーステナイト系ステンレス鋼、高マンガン鋼機械加工部材等の非磁性金属材料を用いる。
【0028】
かかるチタン合金を用いた回転子の製造方法によれば、ガスタンクから不活性ガスとして高温高圧のアルゴンガスを金型に導入して圧力媒体とし、ヒータによりチタン金属円筒を加熱しながら所定の圧力をかけることによってチタン金属円筒が内方から加圧処理されて超塑性ガス圧成形加工が施され、シャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材に成形することができる。
【0029】
この異径円筒部材のロータ外周部補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内にチタン合金円板、希土類磁石、非磁性端板、強磁性シャフト及び非磁性金属円筒を組み合わせて配置し、加熱しながらシャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめを行い、補強環の突合わせ部を隙間なく合わせてから軸方向に圧縮負荷を加えた状態で回転させながら補強環の突合わせ部とチタン合金円板とを電子ビーム溶接により全周にわたって一体接合するか、補強環部分の外周から非磁性金属円筒を焼ばめすることによってチタン合金を用いた回転子が得られる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下本発明にかかるチタン合金を用いた回転子とその製造方法の各種実施形態例を説明する。本発明はチタン合金の超塑性現象を応用して「超塑性ガス圧成形法」により内外径が一様なチタン合金厚肉円筒からシャフト部とロータ外周部補強環の構造を兼ね備えた異径円筒に塑性加工を施した後、ロータ部に高エネルギー積希土類磁石や鉄心材料等を内蔵した高強度で低慣性を有する回転子を得ることが基本手段となっている。
【0031】
上記の「超塑性ガス圧成形法」とは、金属材料がある特殊条件下で低い変形応力,即ち流動応力を持続し、くびれ(ネッキング)を生じることなく数百〜千%以上に伸びる現象を言う。
【0032】
チタン合金の金属組織において、β相(体心立方晶)はα相(最密六方晶)よりも辷り方向が多いので、難加工性の改善には加工性に優れたβ合金が有効である。そこで最近ではα+β合金の難加工性の主要因であるα相をなくすか少なくしたβ合金とか、α+β合金でもβ安定化元素の多い「ニアβ合金」が時に注目されている。
【0033】
他方で近時の鋼材メーカはチタン合金の超塑性現象に着目し、できるだけ低い温度で超塑性が得られる「Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo」合金(ニアβ合金:SP−700)を開発した。この合金の特徴は、従来から機械構造用チタン合金として航空機等で多用されている「Ti−6Al−4V」合金(α+β合金)に較べて温度が約100℃低い780℃付近で超塑性が得られ、且つβ安定化元素の量が多く、加工性が改善されている。
【0034】
表1は、「Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo」合金と「Ti−6Al−4V」合金との両チタン合金の化学組成を示し、図19はα相粒径約3μmでひずみ速度3×10-3/Sの引張試験で得られた両チタン合金の破断伸び,流動応力(変形応力)の温度特性を示している。
【0035】
【表1】
Figure 0003817858
【0036】
「Ti−6Al−4V」合金は880℃付近で約400%,「Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo」合金は780℃付近で約2500%ときわめて大きな塑性伸びを生じ、このような温度域では両チタン合金とも流動応力は約50MPa以下の小さな値を示している。
【0037】
そこで本発明は、高比強度材ではあるが活性金属で難切削性を有する高価なチタン合金製で内外径が一様な寸法の厚肉内筒を金型内で超塑性を発現する高温域に加熱保持し、その内径部に高温高圧のアルゴンガスを吹き込み、円筒中央部を内径側から低ひずみ速度下で膨張変形させることにより、シャフト部とロータ外周部補強環の構造を兼ね備えた異径円筒に超塑性加工して回転子の材料として用いたことが特徴となっている。
【0038】
図1,図2は本発明の第1実施形態例を示す概要図であり、図1はガス加圧成形前のチタン合金円筒の断面形状を示し、図2は高温高圧アルゴンガスによる加圧成形後のチタン合金円筒の断面形状を示している。尚、中実円柱状の素材でなるチタン合金の受入材は、予め厚肉円筒状に機械加工しておく。
【0039】
図中の11は超塑性加工を施すべき厚肉円筒状のチタン合金円筒であり、12,13はチタン合金円筒11を保持する縦割の2分割金型、14はガス溜めタンク、15は図外の大容量ガスタンクからバルブを介して高温高圧のアルゴンガスを供給するパイプ、16は2分割金型12,13を介してチタン合金円筒11を加熱するヒータ、17は断熱層、8,9は水冷用配管である。
【0040】
2分割金型12,13の内方にチタン合金円筒11を挿入後、それぞれの両端フランジ部12a,12b及び13a,13bを、高圧アルゴンガスを供給するパイプ15のフランジ部15aとガス溜めタンク14のフランジ部14aにボルト締めにより固定する。水冷用配管8,9は、ガス加圧成形後に2分割金型12,13と各フランジ部12a,12b,13a,13b及びチタン合金円筒11の冷却用として用いる。
【0041】
上記ガス溜めタンク14を設けたことにより、ガス加圧成形時に高温高圧アルゴンガスの供給側のみでなく、ガス溜めタンク14側からも加圧力が付与されて、チタン合金円筒11内に均一な内圧を与えることができる。
【0042】
実施に際して、図外の大容量ガスタンクからパイプ15を介して不活性ガスとしての高温高圧のアルゴンガスを導入して圧力媒体とし、ヒータ16により加熱しながらチタン金属円筒11に対して所定の圧力と温度をかけ、図2の矢印pに示したようにチタン金属円筒11の内方から加圧処理を行うことによってチタン金属円筒11に超塑性ガス圧成形加工を施し、該チタン金属円筒11をシャフト部11b,11bとロータ外周部補強環11aからなる異径円筒形状に成形する。
【0043】
超塑性ガス圧成形加工の処理条件は、チタン金属円筒11が「Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo」合金(ニアβ合金:SP−700)の場合には、成形温度780℃±50℃とし、ひずみ速度は1×10-2/s以下、好ましくは5×10-3/s以下とする。又、不活性ガスとしてのアルゴンガスの圧力は20〜120MPaとする。尚、アルゴンガスの圧力はひずみ速度条件を満たす範囲内で設定することが必要である。
【0044】
チタン金属円筒11が「Ti−6Al−4V」合金(α+β合金)の場合には、成形温度880℃±50℃とし、ひずみ速度は1×10-2/s以下、好ましくは5×10-3/s以下とする。アルゴンガスの圧力は20〜120MPaとする。このアルゴンガスの圧力は、ひずみ速度条件を満たす範囲内で設定することが必要である。
【0045】
得られたシャフト部11b,11bとロータ外周部補強環11aからなる異径円筒部材を、補強環11aの部分で円周方向に2分割に切断して以下に記す回転子の組付工程に供する。
【0046】
図3(A)(B)は本発明の第2実施形態例を示す回転子構造(a)の概要図であり、11b,11bは図2の装置により得られた異径円筒部材を補強環11aの部分で円周方向に2分割したチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、18はチタン合金円板、2,2は希土類磁石、19はチタン合金円筒を接合する電子ビーム溶接部である。以下に製造工程を簡単に説明すると、
(1)希土類磁石2,2間にチタン合金円板18を組み合わせて、チタン合金円筒の補強環11a内に配置し、
(2)異径管状のチタン合金円筒11を約300℃〜350℃の高温に加熱してシャフト部11b,11bの両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめを行い、
(3)チタン合金円筒11の補強環11aの突合わせ部にほとんど隙間ができないように設定し(クリアランスは0.3mm以下)、
(4)チタン合金円筒11のシャフト部11b,11b両端部を図外の回転治具のチャックにはさみ、軸方向に僅かに圧縮負荷を加えた状態で回転させながら電子ビーム溶接部19で補強環11aの突合わせ部とチタン合金円板18とを全周にわたって一体接合する。
【0047】
上記の工程中、電子ビーム溶接部19は真空雰囲気中での溶接作業で形成し、その際の真空度は1×10-1Pa以上の高真空、例えば1×10-2Pa以上とすることが好ましい。
【0048】
上記第1,第2実施形態例で説明したように、中実円柱状の素材でなる受入材を厚肉円筒状のチタン合金円筒11に機械加工する工程と、超塑性加工を施した異径円筒部材をロータ部中央の補強環11aで円周方向に2分割する切断工程を除けば、その後の切削加工工程が省略されるので、回転子を製造する際の機械加工工数の大幅な削減と材料の歩留まり,即ち高価な素材の有効利用率が向上してコストを大きく低減することができる。
【0049】
又、シャフト部11bとロータ外周部補強環11aを一体化部材としたことで回転子としての部品点数が削減され、且つシャフト部11b,補強環11a部とも高比強度,軽量化を可能として、回転子として小型化と高性能化,低慣性化をはかる事ができる。
【0050】
図4(A)(B)(C)は本発明の第3実施形態例を示す回転子構造(b)の概要図であり、11b,11bは2分割されたチタン合金円筒のシャフト部、11aは同補強環、20,20は非磁性シャフト、18はチタン合金円板、2,2は希土類磁石、19は電子ビーム溶接部である。非磁性シャフト20,20にはアルミ合金熱間鍛造品とかチタン合金、オーステナイト系ステンレス鋼、高マンガン鋼機械加工部材等の2層中実シャフトの非磁性金属材料を用いる。製造工程を簡単に説明すると、
(1)非磁性シャフト20,20と希土類磁石2,2及びチタン合金円板18を図示のように組み合わせて、チタン合金円筒11の補強環11a内に配置し、
(2)チタン合金円筒11を約300℃〜350℃の高温に加熱してシャフト部11b,11b両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめし、
(3)チタン合金円筒11の補強環11aの突合わせ部にほとんど隙間ができないように設定し、
(4)チタン合金円筒11のシャフト部11b,11b両端部を回転治具のチャックにはさみ、軸方向に僅かに圧縮負荷を加えた状態で回転させながら電子ビーム溶接部19で補強環11aの突合わせ部とチタン合金円板18とを全周にわたって一体接合する。
【0051】
図5(A)(B)は本発明の第4実施形態例を示す回転子構造(c)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、5,5はバルク材でなる鉄心、6,6は鉄心溝部、18はチタン合金円板、2,2は希土類磁石、19は電子ビーム溶接部である。鉄心5,5のバルク材には、純鉄とか低炭素鋼,低合金鋼等の強磁性材を用いる。製造工程を簡単に説明すると、
(1)バルク材でなる鉄心5,5の周縁部に長手方向に沿って設けた断面くさび型の鉄心溝部6,6内に希土類磁石2,2を挿入して機械的に拘束し、
(2)チタン合金円板18を鉄心5,5間に挟んでチタン合金円筒11の補強環11a内に配置し、
(2)チタン合金円筒11を約300℃〜350℃の高温に加熱してシャフト部11b,11b両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめし、
(3)チタン合金円筒11の補強環11aの突合わせ部にほとんど隙間ができないように設定し、
(4)チタン合金円筒11のシャフト部11b,11b両端部を回転治具のチャックにはさみ、軸方向に僅かに圧縮負荷を加えた状態で回転させながら電子ビーム溶接部19で補強環11aの突合わせ部とチタン合金円板18とを全周にわたって一体接合する。
【0052】
図6(A)(B)は本発明の第5実施形態例を示す回転子構造(d)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、5,5はバルク材でなる2層中実シャフトで構成された鉄心、6,6は鉄心溝部、18はチタン合金円板、2,2は希土類磁石、19は電子ビーム溶接部である。製造工程は第4実施形態例と略一致している。
【0053】
この第5実施形態例は、鉄心5,5として2層中実シャフトを用いたことにより、第4実施形態例に比して剛性をより一層高めた例である。
【0054】
図7(A)(B)(C)は本発明の第6実施形態例を示す回転子構造(e)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、5,5は積層材でなる鉄心、6,6は鉄心溝部、18はチタン合金円板、2,2は希土類磁石、19は電子ビーム溶接部である。鉄心5,5の積層材にはケイ素鋼板,例えば6.5%高ケイ素鋼板を積層して用いる。製造工程は第4実施形態例と略一致している。
【0055】
図8(A)(B)(C)は本発明の第7実施形態例を示す回転子構造(f)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、21は強磁性シャフト、5,5は積層材でなる鉄心、6,6は鉄心溝部、18はチタン合金円板、2,2は希土類磁石、19は電子ビーム溶接部である。製造工程を簡単に説明すると、
(1)積層材でなる鉄心5,5とチタン合金円板18を強磁性シャフト21に圧入してチタン合金円筒11の補強環11a内に配置し、
(2)鉄心5,5の周縁部に長手方向に沿って設けた断面くさび型の鉄心溝部6,6内に希土類磁石2,2を挿入して機械的に拘束し、
(3)チタン合金円筒11を約300℃〜350℃の高温に加熱してシャフト部11b,11b両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめし、
(4)チタン合金円筒11の補強環11aの突合わせ部にほとんど隙間ができないように設定し、
(5)チタン合金円筒11のシャフト部11b,11b両端部を回転治具のチャックにはさみ、軸方向に僅かに圧縮負荷を加えた状態で回転させながら電子ビーム溶接部19で補強環11aの突合わせ部とチタン合金円板18とを全周にわたって一体接合する。
【0056】
図9(A)(B)(C)は本発明の第8実施形態例を示す回転子構造(g)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、21aは溝付き強磁性シャフト、22,22は溝部に嵌合固定されたキー、5,5は積層材でなる鉄心、6,6は鉄心溝部、18はチタン合金円板、2,2は希土類磁石、23,23は非磁性端板、19は電子ビーム溶接部である。非磁性端板23,23にはアルミ合金とかチタン合金、オーステナイト系ステンレス鋼、高マンガン鋼機械加工部材等の非磁性金属材料を用いる。製造工程を簡単に説明すると、
(1)キー22を溝付き強磁性シャフト21aの溝部に取付け、積層材でなる鉄心5,5とチタン合金円板18、非磁性端板23,23を組み合わせて溝付き強磁性シャフト21aに圧入し、
(2)鉄心5,5の周縁部に長手方向に沿って設けた断面くさび型の鉄心溝部6,6内に希土類磁石2,2を挿入して機械的に拘束し、
(3)チタン合金円筒11を約300℃〜350℃の高温に加熱してシャフト部11b,11b両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめし、
(4)チタン合金円筒11の補強環11aの突合わせ部にほとんど隙間ができないように設定し、
(5)チタン合金円筒11のシャフト部11b,11b両端部を回転治具のチャックにはさみ、軸方向に僅かに圧縮負荷を加えた状態で回転させながら電子ビーム溶接部19で補強環11aの突合わせ部とチタン合金円板18とを全周にわたって一体接合する。
【0057】
図10(A)(B)(C)は本発明の第9実施形態例を示す回転子構造(h)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、24はアルミダイキャスト製シャフト、5,5は積層材でなる鉄心、6,6は鉄心溝部、18はチタン合金円板、2,2は希土類磁石、19は電子ビーム溶接部である。
【0058】
この例はアルミダイキャスト製のシャフト24によってチタン合金円筒11,11の中空部にアルミ合金を充填して剛性を改善したことが特徴となっている。製造工程は第8実施形態例と略一致している。
【0059】
図11(A)(B)(C)は本発明の第10実施形態例を示す回転子構造(i)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、2は希土類磁石、23,23は非磁性端板、25は非磁性金属円筒である。非磁性金属円筒25にはアルミ合金とかチタン合金、オーステナイト系ステンレス鋼、高マンガン鋼機械加工部材等の非磁性金属材料を用いる。製造工程を簡単に説明すると、
(1)非磁性端板23,23間に希土類磁石2を組み合わせてチタン合金円筒11の補強環11a内に配置し、
(2)チタン合金円筒11を約300℃〜350℃の高温に加熱してシャフト部11b,11b両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で補強環11aの部分の外周から非磁性金属円筒25を焼ばめすることによって2分割されたチタン合金円筒11を機械的に拘束し、
(3)チタン合金円筒11のシャフト部11b,11b両端部を回転治具のチャックにはさみ、軸方向に僅かに圧縮負荷を加えた状態で回転させながら一体接合する。
【0060】
この例では、前記各例で用いたチタン合金円板18は使用していないため、電子ビーム溶接を不要としたことが特徴となっている。
【0061】
図12(A)(B)(C)は本発明の第11実施形態例を示す回転子構造(j)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、2,2,2は奇数の複数個に分割された希土類磁石、23,23は非磁性端板、25は非磁性金属円筒である。非磁性金属円筒25にはアルミ合金とかチタン合金、オーステナイト系ステンレス鋼、高マンガン鋼機械加工部材等の非磁性金属材料を用いる。
【0062】
本例は奇数の複数個に分割された希土類磁石2,2,2と非磁性端板23及び非磁性金属円筒25を組み合わせたことが特徴となっている。製造工程は第10実施形態例(図11)と略一致している。
【0063】
図13(A)(B)(C)は本発明の第12実施形態例を示す回転子構造(k)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、21は強磁性シャフト、5は積層材でなる鉄心、23,23は非磁性端板、6,6は鉄心溝部、2,2は希土類磁石、25は非磁性金属円筒である。製造工程を簡単に説明すると、
(1)非磁性端板23,23間に積層材でなる鉄心5を組み合わせて強磁性シャフト21に圧入し、
(2)鉄心5の周縁部に長手方向に沿って設けた断面くさび型の鉄心溝部6,6内に希土類磁石2,2を挿入して機械的に拘束し、
(3)チタン合金円筒11を約300℃〜350℃の高温に加熱してシャフト部11b,11b両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で補強環11aの部分の外周から非磁性金属円筒25を焼ばめすることによって2分割されたチタン合金円筒11を機械的に拘束し、
(3)チタン合金円筒11のシャフト部11b,11b両端部を回転治具のチャックにはさみ、軸方向に僅かに圧縮負荷を加えた状態で回転させながら一体接合する。
【0064】
この例でも前記各例で用いたチタン合金円板18は使用していないため、電子ビーム溶接を不要としている。
【0065】
図14(A)(B)(C)は本発明の第13実施形態例を示す回転子構造(l)の概要図であり、11b,11bはチタン合金円筒11のシャフト部、11aは同補強環、5は積層材でなる鉄心、6,6は鉄心溝部、2,2は希土類磁石、25は非磁性金属円筒である。鉄心5,5の積層材にはケイ素鋼板,例えば6.5%高ケイ素鋼板を積層して用いる。製造工程は
(1)積層材でなる鉄心5,5の周縁部に長手方向に沿って設けた断面くさび型の鉄心溝部6,6内に希土類磁石2,2を挿入して機械的に拘束してからチタン合金円筒11の補強環11a内に挿入し、
(2)チタン合金円筒11を約300℃〜350℃の高温に加熱してシャフト部11b,11b両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で補強環11aの部分の外周から非磁性金属円筒25を焼ばめすることによって2分割されたチタン合金円筒11を機械的に拘束し、
(3)チタン合金円筒11のシャフト部11b,11b両端部を回転治具のチャックにはさみ、軸方向に僅かに圧縮負荷を加えた状態で回転させながら一体接合する。
【0066】
この例ではチタン合金円板18と強磁性シャフト21は使用していないため、電子ビーム溶接を不要とするとともに構成が簡易化されていることが特徴となっている。
【0067】
次に本発明で採用した「超塑性ガス圧成形法」による異径円筒部材の製造方法の各種変形例を説明する。尚、装置の要部は図1,図2に示した第1実施形態例と基本的に同一であるため、同一部分に同一の符号を付して表示してある。
【0068】
図15(A)(B)は本発明の第14実施形態例を示す超塑性ガス圧成形装置の概要図であり、それぞれガス加圧成形前とガス加圧成形後のチタン合金円筒11の断面形状を示している。主要な構成要素として、12,13はチタン合金円筒11を保持する縦割の2分割金型、15は高温高圧のアルゴンガスを供給するパイプ、16は金型12,13を介してチタン合金円筒11を加熱するヒータ、17は断熱層、8,9は水冷用配管である。
【0069】
本例では第1実施形態例で用いたガス溜めタンク14(図1参照)に代えて、蓋部材26を用いたことが特徴となっている。
【0070】
かかる第14実施形態例によれば、2分割金型12,13の内方にチタン合金円筒11を挿入後、両端フランジ部12a,12b及び13a,13bをそれぞれ高圧アルゴンガスを供給するパイプ15のフランジ部15aとガス溜めタンク14のフランジ部14aにボルト締めにより固定し、図外の大容量ガスタンクからパイプ15を介して不活性ガスとしての高温高圧のアルゴンガスを導入して圧力媒体とし、ヒータ16により加熱しながらチタン金属円筒11に対して所定の圧力と温度をかけることにより、pに示したようにチタン金属円筒11に超塑性ガス圧成形加工を施してシャフト部11b,11bとロータ外周部補強環11aからなる異径円筒形状に成形することができる。又、蓋部材26を設けたことによってガス加圧成形時にアルゴンガスの供給側のみでなく、蓋部材26側からも加圧力が付与されるので、チタン合金円筒11内に均一な内圧を与えることができる。
【0071】
チタン金属円筒11にガス加圧成形を行った後に水冷用配管8,9に冷却水を流して2分割金型12,13と各フランジ部12a,12b,13a,13b及びチタン合金円筒11を冷却する。
【0072】
図16(A)(B)は本発明の第15実施形態例を示す超塑性ガス圧成形装置の概要図であり、基本的な構成は第1,第14実施形態例と同一であるため、同一の符号を付して表示してある。この例ではチタン合金円筒11を保持する縦割の2分割金型12,13の一方側にアルゴンガスを供給するパイプ15を設けるとともに該2分割金型12,13の他方側にもアルゴンガスを供給するパイプ15aを設けたことが特徴となっている。
【0073】
かかる第15実施形態例によれば、2分割金型12,13の内方にチタン合金円筒11を挿入して固定した後、図外の大容量ガスタンクからパイプ15及びパイプ15aの両方から高温高圧のアルゴンガスを導入してチタン金属円筒11に所定の圧力と温度をかけることにより、チタン金属円筒11に超塑性ガス圧成形加工を施すことができる。従ってチタン金属円筒11内へのガス充填速度が早くなり、より均一な内圧を付与することができる。
【0074】
図17(A)(B)は本発明の第16実施形態例を示す超塑性ガス圧成形装置の概要図であり、この例では第1実施形態例(図1参照)におけるチタン合金円筒11を保持する縦割の2分割金型12,13に代えて、横割の2分割金型12c,13cを設けたことが特徴となっている。
【0075】
かかる第16実施形態例による動作態様は第1実施形態例と基本的に同一である。尚、横割の2分割金型12c,13cを用いる場合には金型に僅かな抜きテーパを設ける必要がある。
【0076】
図18(A)(B)は本発明の第17実施形態例を示す超塑性ガス圧成形装置の概要図であり、本例はチタン合金円筒11を保持する縦割の2分割金型12,13の内径側に予め波型の溝部27を形成したことが特徴となっている。
【0077】
かかる第17実施形態例によれば、2分割金型12,13の内方にチタン合金円筒11を挿入して固定した後、パイプ15から高温高圧のアルゴンガスを導入してチタン金属円筒11に所定の圧力と温度をかけて超塑性ガス圧成形加工を施すことにより、チタン合金製のベローズ28を製作することができる。
【0078】
チタン合金の強度はオーステナイト系ステンレス鋼と大差ないが、弾性係数は約0.6倍であるため、同一負荷に対するベローズの撓みは本実施形態例で得られたベローズ28の方がかなり大きく、ステンレス性のベローズに比してばね性に優れている。このベローズ28は従来の溶接方式によらない「継ぎ目」なしの物品であり、真空しゃ断器,真空保持ケース等の非磁性ベローズとして採用して有効である。
【0079】
以上詳細に説明したように、本発明にかかるチタン合金を用いた回転子の製造方法によれば、圧力媒体として不活性ガスを金型に導入して、チタン金属円筒を加熱しながら所定の圧力をかけることによってチタン金属円筒が内方から加圧処理されて超塑性ガス圧成形加工が施され、シャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材に成形することができる。従って中実円柱状の素材でなる受入材を厚肉円筒状のチタン合金円筒に機械加工する工程と、超塑性加工を施した異径円筒部材をロータ部中央の補強環で円周方向に2分割する切断工程を除けば、その後の切削加工工程が省略されて回転子を製造する際の機械加工工数が大幅に削減され、材料の歩留まりを高めて高価な素材の有効利用率が向上するという効果が得られる。
【0080】
超塑性ガス圧成形法として、金型の一方側に不活性ガス導入パイプを連結するとともに、金型の他方側にガス溜めタンクを設けるか、金型の他方側に蓋部材を設けて閉止したことにより、不活性ガスの供給側のみでなく、ガス溜めタンクもしくは蓋部材側からも加圧力が付与されてチタン合金円筒内に均一な内圧を与えることができる。更に金型の一方側と他方側との両側から金型内に高温高圧の不活性ガスを導入することにより、チタン金属円筒内へのガス充填速度が早くなり、より均一な内圧を付与することができる。
【0081】
回転子の製造時には、異径円筒部材のロータ外周部補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内にチタン合金円板、希土類磁石、非磁性端板、強磁性シャフト及び非磁性金属円筒を組み合わせて配置し、シャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめを行い、補強環の突合わせ部とチタン合金円板とを全周にわたって一体接合するか、補強環部分の外周から非磁性金属円筒を焼ばめすることにより完成するため、部品点数と組付工数が少ない上、シャフト部、補強環部ともに高比強度であり、軽量化を可能として回転子として小型化,高性能化及び低慣性化をはかることができる。
【0082】
得られた回転子は、補強環内にチタン合金円板、希土類磁石、非磁性端板、強磁性シャフト等とともに組み込まれているため、希土類磁石の持つ脆性が補填され、希土類磁石の本来の磁気特性を低下させることなしに高速回転機等に利用可能な回転子を得ることができる。従って電動機等の高速化とか大容量化に伴って回転子に作用する遠心力が増大しても、希土類磁石に変形とか破断が生じる惧れは大幅に軽減することができる。
【0083】
従って本発明によれば、回転子を製造する際の工数の大幅な削減と高価な素材の有効利用率の向上をはかるとともに、希土類磁石の持つ脆性とか強度,剛性,靭性等の不足をカバーし、磁気特性を劣化させることなく高速大容量化された電動機の回転子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態例におけるガス加圧成形前のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図。
【図2】第1実施形態例における不活性ガスによる加圧成形後のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図。
【図3】図3(A)は第2実施形態例を示す要部断面図、図3(B)は図3(A)のB−B線に沿う断面図。
【図4】図4(A)は第3実施形態例を示す要部断面図、図4(B)は図3(A)のB−B線に沿う断面図、図4(C)は図4(A)のC−C線に沿う断面図。
【図5】図5(A)は第4実施形態例を示す要部断面図、図5(B)は図5(A)のB−B線に沿う断面図。
【図6】図6(A)は第5実施形態例を示す要部断面図、図6(B)は図6(A)のB−B線に沿う断面図。
【図7】図7(A)は第6実施形態例を示す要部断面図、図7(B)は図7(A)のB−B線に沿う断面図、図7(C)は図7(A)のC−C線に沿う断面図。
【図8】図8(A)は第7実施形態例を示す要部断面図、図8(B)は図8(A)のB−B線に沿う断面図、図8(C)は図8(A)のC−C線に沿う断面図。
【図9】図9(A)は第8実施形態例を示す要部断面図、図9(B)は図9(A)のB−B線に沿う断面図、図9(C)は図9(A)のC−C線に沿う断面図。
【図10】図10(A)は第9実施形態例を示す要部断面図、図10(B)は図10(A)のB−B線に沿う断面図、図10(C)は図10(A)のC−C線に沿う断面図。
【図11】図11(A)は第10実施形態例を示す要部断面図、図11(B)は図11(A)のB−B線に沿う断面図、図11(C)は図11(A)のC−C線に沿う断面図。
【図12】図12(A)は第11実施形態例を示す要部断面図、図12(B)は図12(A)のB−B線に沿う断面図、図12(C)は図12(A)のC−C線に沿う断面図。
【図13】図13(A)は第12実施形態例を示す要部断面図、図13(B)は図13(A)のB−B線に沿う断面図、図13(C)は図13(A)のC−C線に沿う断面図。
【図14】図14(A)は第13実施形態例を示す要部断面図、図14(B)は図14(A)のB−B線に沿う断面図、図14(C)は図14(A)のC−C線に沿う断面図。
【図15】図15(A)は第14実施形態例を示すガス加圧成形前のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図、図15(B)はガス加圧成形後のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図。
【図16】図16(A)は第15実施形態例を示すガス加圧成形前のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図、図16(B)はガス加圧成形後のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図。
【図17】図17(A)は第16実施形態例を示すガス加圧成形前のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図、図17(B)はガス加圧成形後のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図。
【図18】図18(A)は第17実施形態例を示すガス加圧成形前のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図、図18(B)はガス加圧成形後のチタン合金円筒の断面形状を示す概要図。
【図19】「Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo」合金と「Ti−6Al−4V」合金の引張試験で得られた破断伸び,流動応力の温度特性を示すグラフ。
【図20】従来の希土類磁石を用いた回転子の概略構造を示す要部断面図。
【図21】従来の希土類磁石を用いた他の回転子の概略構造を示す要部断面図。
【符号の説明】
1…シャフト
2…希土類磁石
3…金属円筒
4…金属円板
5…鉄心
6…鉄心溝部
8,9…水冷用配管
11…チタン合金円筒
11a…補強環
11b…シャフト部
12,13…2分割金型
14…ガス溜めタンク
16…ヒータ
17…断熱層
18…チタン合金円板
19…電子ビーム溶接部
20…非磁性シャフト
21…強磁性シャフト
21a…溝付きシャフト
22…キー
23…非磁性端板
24…(アルミダイキャスト製)シャフト
25…非磁性金属円筒
26…蓋部材
27…溝部

Claims (14)

  1. 超塑性ガス圧成形加工法により形成したシャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材を、補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内にチタン合金円板を中心として両側に希土類磁石を組み合わせて配置し、異径円筒部材を高温に加熱してシャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめを行い、補強環の突合わせ部を隙間なく合わせてから軸方向に圧縮負荷を加えた状態で回転させながら補強環の突合わせ部とチタン合金円板とを電子ビーム溶接により全周にわたって一体接合することを特徴とする、チタン合金を用いた回転子の製造方法。
  2. 前記補強環内に、チタン合金円板を中心として両側に希土類磁石と非磁性シャフトを組み合わせて配置したことを特徴とする請求項1に記載のチタン合金を用いた回転子の製造方法。
  3. 超塑性ガス圧成形加工法により形成したシャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材を、補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内にチタン合金円板を中心として両側に鉄心を配置し、この鉄心の周縁部長手方向に沿って設けた鉄心溝部内に希土類磁石を挿入して拘束し、異径円筒部材を高温に加熱してシャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめを行い、補強環の突合わせ部を隙間なく合わせてから軸方向に圧縮負荷を加えた状態で回転させながら補強環の突合わせ部とチタン合金円板とを電子ビーム溶接により全周にわたって一体接合することを特徴とする、チタン合金を用いた回転子の製造方法。
  4. 鉄心として2層中実シャフトを用いたことを特徴とする請求項3に記載のチタン合金を用いた回転子の製造方法。
  5. 鉄心として純鉄,低炭素鋼,低合金鋼等の強磁性材でなるバルク材を用いたことを特徴とする請求項3に記載のチタン合金を用いた回転子の製造方法。
  6. 鉄心としてケイ素鋼板を積層した積層材を用いたことを特徴とする請求項3に記載のチタン合金を用いた回転子の製造方法。
  7. 超塑性ガス圧成形加工法により形成したシャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材を、補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内にチタン合金円板を中心として鉄心を強磁性シャフトに圧入して配置し、この鉄心の周縁部長手方向に沿って設けた鉄心溝部内に希土類磁石を挿入して拘束し、異径円筒部材を高温に加熱してシャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめを行い、補強環の突合わせ部を隙間なく合わせてから軸方向に圧縮負荷を加えた状態で回転させながら補強環の突合わせ部とチタン合金円板とを電子ビーム溶接により全周にわたって一体接合することを特徴とする、チタン合金を用いた回転子の製造方法。
  8. 超塑性ガス圧成形加工法により形成したシャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材を、補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内にチタン合金円板を中心として鉄心と非磁性端板を強磁性シャフトに圧入して配置し、この鉄心の周縁部長手方向に沿って設けた鉄心溝部内に希土類磁石を挿入して拘束し、異径円筒部材を高温に加熱してシャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で焼ばめを行い、補強環の突合わせ部を隙間なく合わせてから軸方向に圧縮負荷を加えた状態で回転させながら補強環の突合わせ部とチタン合金円板とを電子ビーム溶接により全周にわたって一体接合することを特徴とする、チタン合金を用いた回転子の製造方法。
  9. 強磁性シャフトとして溝付き強磁性シャフトを用いたことを特徴とする請求項8に記載のチタン合金を用いた回転子の製造方法。
  10. 強磁性シャフトとしてアルミダイキャスト製のシャフトを用いたことを特徴とする請求項7,8の何れか1項に記載のチタン合金を用いた回転子の製造方法。
  11. 超塑性ガス圧成形加工法により形成したシャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材を、補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内に希土類磁石を中心として両側に磁性端板を配置し、異径円筒部材を高温に加熱してシャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で補強環部分の外周から非磁性金属円筒を焼ばめすることによって2分割されたチタン合金円筒を機械的に拘束して一体接合することを特徴とする、チタン合金を用いた回転子の製造方法。
  12. ロータ外周部補強環内に奇数の複数個に分割された希土類磁石を配置したことを特徴とする請求項11に記載のチタン合金を用いた回転子の製造方法。
  13. 超塑性ガス圧成形加工法により形成したシャフト部とロータ外周部補強環からなる異径円筒部材を、補強環の部分で円周方向に2分割に切断した後、補強環内に積層型鉄心を強磁性シャフトに圧入して配置し、この鉄心の周縁部長手方向に沿って設けた鉄心溝部内に希土類磁石を挿入して拘束し、異径円筒部材を高温に加熱してシャフト部の両端部に軸方向の圧縮負荷を加えた状態で補強環部分の外周から非磁性金属円筒を焼ばめすることによって2分割されたチタン合金円筒を機械的に拘束して一体接合することを特徴とする、チタン合金を用いた回転子の製造方法。
  14. 前記非磁性金属円筒として、アルミ合金、チタン合金、オーステナイト系ステンレス鋼、高マンガン鋼機械加工部材等の非磁性金属材料を用いたことを特徴とする請求項11,12,13項の何れか1項に記載のチタン合金を用いた回転子の製造方法。
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