JP3816427B2 - 試験機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制御された雰囲気内において疲労試験等の試験を行うための試験機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高温高圧等の腐食環境下での材料強度の評価に対するニーズが高まってきている。特に最近では、上記環境中における低サイクル疲労試験を行うことが望まれている。引張圧縮荷重を試験片に負荷して低サイクル疲労試験を行う際には、オートクレーブと呼ばれる内部雰囲気調整可能な試験容器内に試験片をセットし、試験容器を貫通する負荷軸により前記試験片に荷重を負荷している。荷重の検出は試験容器外の負荷軸上に設けられたロードセルにより検出するのが一般的である。
【0003】
低サイクル疲労試験を行う場合には、大きな圧縮荷重が試験片に負荷されるため、精度の良い試験を行うためには、試験片を座屈させない(試験片に曲げ応力が発生しない)ことが極めて重要である。そのためには、試験機の荷重負荷機構を精度良く製造するとともに、荷重負荷機構の剛性を高める必要があり、特に負荷軸の横剛性(負荷軸の軸線方向と直交する方向に負荷軸を曲げようとした場合の曲げ剛性を意味する。以下同じ。)を高めることが重要である。
【0004】
負荷軸の横剛性を高めるためには、負荷軸を太く短くすることが必要であるが、負荷軸は試験容器外にある荷重負荷装置から試験容器内にある試験片へと荷重伝達を行うものであるため、短くすることは容易ではない。また、負荷軸を太くすると、可動部分の重量増により荷重負荷装置の負担が高くなるため好ましくない。
【0005】
また、負荷軸を太くすると以下のような問題もある。すなわち、前述したように荷重負荷軸が試験容器を貫通しているため、負荷軸と試験容器との間で圧力シールが必要となるが、このシール部において発生する摩擦力は負荷軸を太くするほど大きくなる。摩擦力が大きくなると、試験片に負荷される荷重波形にも影響を及ぼすおそれがある。また、荷重を試験容器外の負荷軸上に設けたロードセルで検出する場合には、ロードセルは摩擦力も検出してしまうため、荷重検出精度が損なわれてしまうという問題がある。
【0006】
実開昭60−72549号公報には、シール部の摩擦力をロードセルが検出しないようにする構成が記載されている。ここでは、負荷軸を2分割して、試験片に接続される上側負荷軸を荷重負荷装置に接続される下側負荷軸に形成された空洞内に挿入し、試験容器と負荷軸との間のシールは下側負荷軸の外周にて行い、上側負荷軸の前記空洞内に差し込まれた部分にロードセルを形成するといった構成がとられている。
【0007】
しかし、このような構成をとると、上側負荷軸と下側負荷軸との間の相対変位が生じうること、並びに限られたスペース内に十分な検出能を持つロードセル構造を配置するために上側負荷軸のロードセル対応部分を空洞化せざるを得ないこと等に起因して、負荷軸全体の横剛性を確保することが困難となる。また、シールのサイズが大きくなるため、試験片に負荷される荷重波形にも悪影響を与えるおそれがある。
【0008】
【特許文献1】
実開昭60−72549号公報(第2図)
【特許文献2】
実開昭59−3347号公報(第1図および第2図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであり、負荷軸を太くすることなく、負荷軸の曲げ剛性を増大させることと等価な効果を得ることができる試験機の構成を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、試験容器と、前記試験容器外に配置された荷重負荷装置と、前記試験容器を貫通して延び、前記荷重負荷装置で発生した荷重を前記試験容器内に配置された試験片の一側に伝達する負荷軸と、前記試験容器内に配置された支持体と、前記試験容器内に配置されるとともに前記負荷軸および前記支持体に接続された負荷軸支持部材と、を備え、前記負荷軸支持部材は、前記負荷軸がその軸線方向に変位することを実質的に妨げない程度に前記軸線方向の荷重に対する低い変形抵抗を有し、かつ、前記負荷軸が前記軸線方向と直交する方向に変位することを実質的に防止することができる程度に前記軸線方向と直交する方向の荷重に対する高い変形抵抗を有することを特徴とする試験機を提供する。
【0011】
好適な実施形態においては、前記負荷軸支持部材は、前記負荷軸の軸線方向と直交する平面上で延びる板状体から形成される。また、好適な実施形態においては、前記支持体は、例えば負荷軸の周りに配置された複数の支柱である。好適な実施形態においては、前記支柱は前記負荷軸を中心とする円周を等分した位置に配置され、前記負荷軸支持部材は、前記平面上を各支柱まで延びて各支持体に接続される。好適な実施形態においては、前記負荷軸支持部材は、円盤形に形成される。前記板状体はフレキシブルプレートと呼ばれる。フレキシブルプレートは、試験容器内の雰囲気に耐え、かつバネ性を有する適当な金属材料により形成することが好適である。
【0012】
本発明による試験機は、前記試験容器内に配置されて前記試験片の他側を支持する支持体と、前記試験片の他側を支持する支持体に設けられて前記負荷軸が前記試験片に負荷した荷重を検出する荷重検出器(例えばロードセル)と、を更に備えて構成することができる。前記試験片の他側を支持する支持体と前記負荷軸支持部材が接続される支持体は同一の部材であってもよいし、異なる部材であってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図1および図2を参照して本発明の実施の形態について説明する。図面には、本発明による試験機の一例として、低サイクル疲労試験を行うのに適した疲労試験機が示されている。
【0014】
疲労試験機は、図示しない雰囲気調節手段(例えば温度調整装置、圧力調整装置、湿度調整装置等)により内部雰囲気の調節が可能となっている試験容器1を有する。試験容器1は、蓋板1aと、蓋板1a上に載置されるフランジ1c付きのカップ形状の容器本体1bとを有する。試験時には、容器本体1bは蓋板1aに強固に固定されるともに、フランジ1cと蓋板1aとの間はシール部材1dによりシールされる。
【0015】
蓋板1a上には、支持体2が固定されている。この支持体2全体は、十分に高い剛性を有している。支持体2は、複数の支柱2aと支柱2aの上端に固定された天板2bとを有している。支柱2aは図2に示すように4本あるが、図1では下記負荷軸4と重なる位置にあるものは表示していない。天板2bには、試験片Sに負荷された荷重を検出するロードセル3が設けられている。試験片Sの上端は、ロードセル3と試験片Sとの間に介在するか若しくはロードセル3一体型の試験片支持要素(図示せず)により支持されている。
【0016】
蓋板1aの中央部には貫通孔が設けられており、貫通孔には試験片Sに荷重を負荷する負荷軸4が貫通している。負荷軸4の上側は試験容器1内にあり、荷重負荷軸4の下側は試験容器1外にある。荷重負荷軸4と蓋板1aとの間は、前記貫通孔内周面に配置されたシール部材5によりシールされている。
【0017】
蓋板1aは、図示しない定盤上に設置されたベース板6a上に立設された支柱6bにより支持されている。
【0018】
負荷軸4は鉛直方向に延びており、負荷軸4の上端は図示しない試験片支持要素(例えば負荷軸4上端に形成された試験片がねじ込まれる孔)を介して試験片Sの下端に接続される。負荷軸4の下端はベース板6a上に取り付けられた荷重負荷装置8に接続されている。負荷軸4の下端近傍にはロードセル7が設けられている。荷重負荷装置8は、ロードセル3および/またはロードセル7が検出した荷重に基づいて、試験片Sに負荷される荷重を制御できるように構成することができる。
【0019】
試験容器1外において、負荷軸4にはバランスピストン4aが設けられている。バランスピストン4aは、荷重負荷軸4の拡径部として形成することができる。バランスピストン4aは、蓋板1aに固定されたシリンダ4b内に収容されている。シリンダ4bの下室4cは、管4dを介して試験容器1内と連通している。また、シリンダ4bの上室4eは、大気に開放されている。バランスピストン4aは、試験容器1内の圧力によって負荷軸4に負荷された荷重を補償する。なお、符号4f、4gを付した部材は、いずれもシール部材である。
【0020】
図2に示すように、4本の支柱2aは負荷軸4を中心とする円周上に等間隔で配置されている。試験容器1内において、負荷軸4および支柱2aは円盤状のフレキシブルプレート9により連結されている。フレキシブルプレート9は負荷軸4および支柱2aに強固に固定されている。フレキシブルプレート9は、試験容器内の雰囲気に耐え、かつバネ性を有する適当な金属材料により形成することが好適である。
【0021】
フレキシブルプレート9は、負荷軸4がその軸線A方向に変位することを妨げることがないようにその厚さTが十分に薄く形成されている。従って、フレキシブルプレート9は、負荷軸4から負荷軸4の軸線A方向の力を受けた場合には容易に変形する。その一方で、フレキシブルプレート9は負荷軸4の軸線A方向と直交する平面上に拡がっているため、フレキシブルプレート9は負荷軸4から負荷軸4の軸線A方向と直交する方向の力を受けた場合には殆ど変形せず、負荷軸4の軸線A方向と直交する方向の変位を阻止する。従って、試験片Sに圧縮荷重が負荷される場合に、負荷軸4に倒れや曲がりが発生することを防止することができ、試験片Sが座屈することを効果的に防止することができる。
【0022】
フレキシブルプレート9は、強固に固定されさえすれば、どのような手段で負荷軸4および支柱2aに取り付けてもよい。例えば、フレキシブルプレート9を、荷重負荷軸4および支柱2aに溶接してもよい。しかし、装置のメンテナンスの容易化および試験時の作業性等を考慮すると、フレキシブルプレート9は、荷重負荷軸4および支柱2aの少なくとも一方から取り外し可能とすることが好ましい。
【0023】
特に図2(b)には、フレキシブルプレート9の負荷軸4および支柱2aへの取付方法の一例が示されている。負荷軸4および各支柱2aには、フランジ10が設けられている。フレキシブルプレート9には、負荷軸4および各支柱2aに対応する位置に穴が形成されている。フレキシブルプレート9の各穴に負荷軸4および各支柱2aが通され、フレキシブルプレート9はフランジ10上に載置される。さらに、フレキシブルプレート9上に、負荷軸4および各支柱2aを通して、リング11が載置される。リング11はネジ12によりフランジ10に固定され、これによりフレキシブルプレート9は負荷軸4および各支柱2aに堅固に固定される。
【0024】
上記実施形態には、負荷軸4に倒れや曲がりが発生することを防止することができることに加えて、更に以下の利点がある。
【0025】
負荷軸4を太くする必要がなくなるため、負荷軸4の重量を低減することができ、荷重負荷装置8の負担を低減することができる。
【0026】
また、負荷軸4を太くする必要がなくなるため、シール部材5と負荷軸4との間の摩擦を低減することができる。これにより試験片Sに負荷される荷重の波形を安定させることができる。また、試験容器1外に配置したロードセル7により試験荷重を検出する必要がある場合、例えば試験容器1内の雰囲気(例えば高温)により試験容器1内にロードセル3を配置することができない場合に、ロードセル7が検出する荷重に含まれるシール部の摩擦力を抑制することができ、精度の良い試験を行うことができる。なお、この場合、ロードセル7の検出荷重にフレキシブルプレート9の変形抵抗が含まれることになるが、その値はシール部の摩擦力に比べれば小さく、また、補正も容易である。
【0027】
また、ロードセル3を負荷軸4の反対側に配置しているため、この試験容器1内に配置されたロードセル3を荷重検出用のロードセルとして用いた場合には、ロードセル3が検出する荷重にシール部の摩擦力およびフレキシブルプレート9の変形抵抗が含まれることはなく、試験片Sに負荷される荷重を精度良く検出することができる。
【0028】
また、ロードセル3を負荷軸4の反対側に配置しているため、ロードセル3の配置スペースには十分な余裕がある。このため、扁平な横剛性の高いロードセルを用いることができるため、試験片Sの座屈をより効果的に防止することができる。なお、扁平な横剛性の高いロードセルとしては、本件出願人による実用新案登録出願に係る実開昭59−3347号に開示されたものを用いることができる。
【0029】
上記実施形態は、以下のように改変することも可能である。
【0030】
図1には、フレキシブルプレート9を負荷軸4の異なる2つの高さ位置に設けているが、これには限定されず、3つ以上の異なる高さ位置に設けてもよい。また、フレキシブルプレート9を負荷軸4の1つのみの高さ位置に設けることもできるが、負荷軸の曲がりおよび倒れを防止する観点からは、複数の異なる高さ位置に設けることがより好ましい。
【0031】
また、図示された実施形態においては、試験片Sの上端およびロードセル3を保持するための支持体2の支柱2aにフレキシブルプレート9を固定したが、これに限定されるものではなく、フレキシブルプレート9を固定するための専用の支持体を設けてもよい。しかし、フレキシブルプレート9は支持体2全体の剛性向上にも寄与するため、支持体2の一部にフレキシブルプレート9を固定することがより好ましい。
【0032】
また、図示された実施形態においては、フレキシブルプレート9は円盤状の部材であったが、これには限定されない。例えば、フレキシブルプレート9は、各支柱2a近傍を頂点とする多角形若しくはその類似形状、または負荷軸4から各支柱に向けて延びる複数の腕を有するような形状(例えば、負荷軸4を中心とする十文字形状のプレート)であってもよい。
【0033】
なお、上記実施形態においては、試験容器1内部および外部にロードセル3、7をそれぞれ設けたが、上述した利点のうちの一部のみが求められるのであれば、ロードセル3、7の一方のみを設けてもよい。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、負荷軸を太くすることなく負荷軸の剛性を高めたのと等価な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による疲労試験機の構成を示す断面図。
【図2】フレキシブルプレートの負荷軸および支柱への取付状態を説明する図であって、図2(a)は図1におけるIIa−IIa線に沿う拡大断面図、図2(b)は図2(a)におけるIIb−IIb線に沿う拡大断面図。
【符号の説明】
1 試験容器
2 支持体
3 荷重検出器(ロードセル)
4 負荷軸
8 荷重負荷装置
9 負荷軸軸支持部材(フレキシブルプレート)
S 試験片
Claims (5)
- 試験容器と、
前記試験容器外に配置された荷重負荷装置と、
前記試験容器を貫通して延び、前記荷重負荷装置で発生した荷重を前記試験容器内に配置された試験片の一側に伝達する負荷軸と、
前記試験容器内に配置された支持体と、
前記試験容器内に配置されるとともに前記負荷軸および前記支持体に接続された負荷軸支持部材と、を備え、
前記負荷軸支持部材は、前記負荷軸がその軸線方向に変位することを実質的に妨げない程度に前記軸線方向の荷重に対する低い変形抵抗を有し、かつ、前記負荷軸が前記軸線方向と直交する方向に変位することを実質的に防止することができる程度に前記軸線方向と直交する方向の荷重に対する高い変形抵抗を有することを特徴とする試験機。 - 前記負荷軸支持部材は、前記負荷軸の軸線方向と直交する平面上で延びる板状体であることを特徴とする、請求項1に記載の試験機。
- 前記支持体は前記負荷軸の周りに複数配置されており、前記負荷軸支持部材は、前記各支持体まで延びて各支持体に接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の試験機。
- 前記負荷軸支持部材は、円盤形であることを特徴とする、請求項3に記載の試験機。
- 前記試験容器内に配置され、前記試験片の他側を支持する支持体と、
前記試験片の他側を支持する支持体に設けられ、前記負荷軸が前記試験片に負荷する荷重を検出する荷重検出器と、
を更に備えたことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の試験機。
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