JP3816028B2 - 容器入り溶接用ワイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器と内筒との間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接用ワイヤと、このワイヤ積層体の上面に載置されたワイヤ押え治具とを備えた容器入り溶接用ワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、アーク溶接ロボット等の自動溶接装置による自動溶接では、溶接用ワイヤの交換頻度を減らして溶接作業効率の向上を図るため、容器内に大容量の溶接用ワイヤ(例えば、鋼溶接用の場合、ワイヤ径1.2mmφで200kg)をループ状で且つ円筒状に積層し収納してなる容器入り溶接用ワイヤが使用されている。このような容器入り溶接用ワイヤでは、積層面に対して垂直方向に、すなわち、円筒状をなすワイヤ積層体の軸線方向(容器軸線方向)に溶接用ワイヤ(以下、単にワイヤという)が引き出されるように容器内に収納されているので、このワイヤを引き出したときに、ワイヤ周方向に捻れが発生することになる。そこで、容器入り溶接用ワイヤでは、容器にワイヤを収納する際に、ワイヤを引き出した後の捻れが相殺されてゼロとなるようにすべく、予めワイヤに捻れを与えて収納するようになされている。
【0003】
容器入り溶接用ワイヤでは、容器内にこのように予め捻れを与えた状態でワイヤをループ状で且つ円筒状に積層し収納している。このため、容器入り溶接用ワイヤでは、収納した最後尾のループ状ワイヤから1ループずつ(1輪ずつ)巻き解いて順序よく引き出す必要性があり、その際、今回のループ状ワイヤを引き出す時に次に引き出されるループ状ワイヤの収納状態に悪影響を与えてトラブルを引き起こすことなく円滑に引き出すようにする必要がある。
【0004】
そして従来、この種の容器入り溶接用ワイヤに関する代表的な先行技術として、特開2000−202630号公報に溶接ワイヤ充填ペイルが開示されている。図6は従来の溶接ワイヤ充填ペイルを示す図であって、内・外筒の軸線と垂直方向の断面図である。図7は図6における押え治具の斜視図である。
【0005】
この従来の溶接ワイヤ充填ペイルは、図6及び図7に示すように、同心状に配置された内筒56及び外筒52と、これらの間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接ワイヤWと、この溶接ワイヤWの上面に載置された押え治具60とを備えている。外筒52は有底円筒状をなし、内筒56は円筒状をなしている。また、押え治具60が、外筒52の内周面寄りに位置するリング62と、このリング62の内周縁から求心状に突設され平面視で略三角形を呈し且つ先細の先端部を内筒56の外周面に接触可能とした複数のガイド片64とを有して構成されている。符号68は、リング62の外周縁に沿って立設され、外筒2の内周面に接触する接触帯である。
【0006】
このような溶接ワイヤ充填ペイルにおいては、内筒56と外筒52間から引出される溶接ワイヤWは、内筒56寄りの位置と外筒52寄りの位置との間を繰返し略ジグザグ状に移動するが、複数のガイド片64の形状がこのようなワイヤの引出し時の動きに対応しているため、押え治具60を跳ね上げ難くする。これにより、引出される途中におけるワイヤに細かな絡みやもつれが生じるのを防止するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前述した従来の溶接ワイヤ充填ペイルでは、容器内から溶接用ワイヤを引き出すに際し、ワイヤ積層体でのワイヤ引き出し点から容器上方のワイヤ引き出し治具のワイヤ引き出し口に至る間で溶接用ワイヤのたるみが生じ、該たるみに起因するワイヤ同士の絡みが発生することについては、考慮されておらず、改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、容器と内筒との間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接用ワイヤと、このワイヤ積層体の上面に載置されたワイヤ押え治具とを備え容器入り溶接用ワイヤにおいて、ワイヤ積層体から引き出された直後の内筒外周面との接触点から容器上方に位置するワイヤ引き出し口に至る間での溶接用ワイヤのたるみの発生をなくしてワイヤ同士の絡みを確実に防いで、溶接用ワイヤの円滑な引き出しを行うことができるようにした容器入り溶接用ワイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願発明では次の技術的手段を講じている。請求項1の発明は、容器と、この容器内にこれと同心状に設けられた内筒と、前記容器と前記内筒との間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接用ワイヤと、このワイヤ積層体の上面に載置されたワイヤ押え治具とを備え、前記溶接用ワイヤを容器軸線方向に引き出す容器入り溶接用ワイヤにおいて、前記ワイヤ押え治具が、前記容器の内周面に沿って位置する環状枠体と、前記環状枠体から内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなし、先端部が前記内筒の外周面に近接する弾性変形可能な複数のワイヤ押え片と、前記環状枠体から内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなし、弾性変形した状態にて先端部が前記内筒の外周面に上向きに接触する弾性変形可能な複数のワイヤたるみ防止片とにより構成されていることを特徴とする容器入り溶接用ワイヤである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の容器入り溶接用ワイヤにおいて、前記容器の上端面から30mm以上下方の位置に前記内筒の上端面が位置するように前記容器に対して前記内筒が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の容器入り溶接用ワイヤにおいて、溶接用ワイヤがアルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤであることを特徴とするものである。
【0012】
本発明による容器入り溶接用ワイヤでは、ワイヤ積層体の上面に載置されるワイヤ押え治具が、容器の内周面に沿って位置する環状枠体と、この環状枠体から内方に内歯車状に突設された弾性変形可能なワイヤ押え片及びワイヤたるみ防止片とにより構成されており、ワイヤ押え片及びワイヤたるみ防止片による複合構造となされている。このワイヤ押え治具は、ワイヤ積層体を形成しているワイヤが順次引き出されて該ワイヤ積層体が徐々に減るに従って下降して行くものである。
【0013】
この場合、本発明による容器入り溶接用ワイヤは、ワイヤ押え片とワイヤたるみ防止片とを両者が円周方向において同一位置に位置するように構成してよい。すなわち、ワイヤ押え治具は、容器の内周面に沿って位置する環状枠体と、前記環状枠体から内方に内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなし、先端部が内筒外周面に近接する状態でワイヤ積層体の上面に位置する弾性変形可能な複数のワイヤ押え片と、前記環状枠体から内方に内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなすとともに、前記ワイヤ押え片より長尺をなし、ワイヤ押え片の上面に重ねられて位置して途中より斜め上方に延び、弾性変形した状態にて先端部が内筒外周面に上向きに接触する弾性変形可能な複数のワイヤたるみ防止片とにより構成することができる。
【0014】
また、本発明による容器入り溶接用ワイヤは、ワイヤ押え片とワイヤたるみ防止片とを両者が円周方向において交互に位置するように構成してもよい。すなわち、ワイヤ押え治具は、容器の内周面に沿って位置する環状枠体と、前記環状枠体から内方に内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなし、先端部が内筒外周面に近接する状態でワイヤ積層体の上面に位置する弾性変形可能な複数のワイヤ押え片と、前記環状枠体から前記ワイヤ押え片とは位相をずらせ重ならない状態にて内方に内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなすとともに、前記ワイヤ押え片より長尺をなし、ワイヤ積層体の上面に位置して途中より斜め上方に延び、弾性変形した状態にて先端部が内筒外周面に上向きに接触する弾性変形可能な複数のワイヤたるみ防止片とにより構成することができる。
【0015】
このように、前記弾性変形可能な複数のワイヤ押え片は、環状枠体から内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなし、先端部が内筒外周面に近接する構成となされている。これにより、ワイヤ積層体からワイヤが引き出される際にはその引き出し部位のワイヤ押え片のみが弾性変形してワイヤの引き出しを可能とする一方、他の部位に位置する残りのワイヤ押え片により、ワイヤ積層体を形成するループ状ワイヤの跳ね上がりを防止することができる。この場合、ワイヤ押え片は、ワイヤが捻れを与えられて収納されていることから、ワイヤ引き出し時にはワイヤが捻れを解除して元に戻ろうとする力以上の力でもって弾性変形可能となされている。
【0016】
また、弾性変形可能な複数のワイヤたるみ防止片は、環状枠体から内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなすとともに、前記ワイヤ押え片より長尺をなし、弾性変形した状態にて先端部が内筒外周面に上向きに接触する構成となされている。このように、ワイヤ押え片とワイヤたるみ防止片とによる複合構造となっており、先端部が内筒外周面に上向きに接触するワイヤたるみ防止片により、ワイヤ引き出し時にはワイヤ積層体からのワイヤが内筒側へ向かって導かれる。その結果、容器と内筒間の半径方向における中央位置より内筒側寄り位置においてワイヤ押え片が弾性変形してワイヤ積層体からのワイヤが開放され、該ワイヤがワイヤたるみ防止片と内筒外周面との接触点へと導かれ、内筒外周面に沿って上方へ引き上げられることになる。
【0017】
さて、ワイヤの引き出しを行う場合、ワイヤ積層体から引き出された直後の内筒外周面との接触点から容器上方に位置するワイヤ引き出し口に至る間においてワイヤにたるみが発生すると、予めワイヤに捻れを与えて収納していることから、前記たるみを利用してワイヤが回転(回動)することでワイヤ同士の絡みが生じることになる。本発明による容器入り溶接用ワイヤでは、先端部を内筒外周面に接触させている前記ワイヤたるみ防止片を備えているので、ワイヤ積層体からのワイヤが内筒外周面と各ワイヤたるみ防止片との接触点を該ワイヤたるみ防止片に接触しながら順々に通過して、各ワイヤたるみ防止片がたるみの発生を防ぐためのワイヤの突発的引き出しを防止する間欠的ブレーキの役目をなす。これにより、ワイヤ積層体から引き出された直後の内筒外周面との接触点から容器上方の引き出し治具のワイヤ引き出し口に至る間での溶接用ワイヤのたるみの発生をなくすことができ、該たるみに起因するワイヤの回転(回動)によるワイヤ同士の絡みを確実に防止することができる。
【0018】
本発明による容器入り溶接用ワイヤにおいては、内歯車状をなす複数のワイヤ押え片の各々を2枚重ね以上の多重構成とすることが可能であり、これにより、ワイヤの剛性に応じてこれに合わせて、ワイヤ積層体の上面にかかる押え力であるワイヤ押圧力を、ワイヤに塑性変形を生じさせることなく調整可能に設定することができる。また、同様に、内歯車状をなす複数のワイヤたるみ防止片の各々を2枚重ね以上の多重構成とすることが可能である。これにより、ワイヤの剛性に応じてこれに合わせて、ワイヤ積層体から引き出されるワイヤにかかる先端部による押え力を、ワイヤに塑性変形を生じさせることなく調整可能に設定することができる。
【0019】
本発明による容器入り溶接用ワイヤにおいては、円筒状のワイヤ積層体から引き出されて内筒外周面に沿って上方へ引き上げられてきたワイヤは、内筒上端周縁部と接触しながら、さらに容器上方に位置するワイヤ引き出し治具のワイヤ引き出し口(ワイヤ引き出し孔)へと導かれる。この場合、本発明による容器入り溶接用ワイヤでは、容器の上端面から30mm以上下方の位置に内筒の上端面が位置するように容器に対して内筒を設けて、前記引き出し治具のワイヤ引き出し口に向かって導かれているワイヤが内筒上端周縁部との接触で大きく曲げられることのないようにしている。これにより、本発明による容器入り溶接用ワイヤでは、ワイヤが内筒上端周縁部との接触による大きな変形力を受けることがなく、ワイヤ引き出し抵抗を小さくできるとともに、溶接時のワイヤ直進性を損なうような曲がりなどの塑性変形が発生することを確実に防ぐことができる。
【0020】
なお、本発明による容器入り溶接用ワイヤにおいては、内筒の高さは定格ワイヤ量収納時におけるワイヤ積層体の上面より高くなるように設定されている。また、容器と内筒との間には、ほぼ一定の径のループ状をなすワイヤが円筒状に積層されており、このワイヤ積層体内周面と内筒外周面の間、及び、ワイヤ積層体外周面と容器内周面の間は、ループ状ワイヤが落ち込まないようにすべく、ほとんど隙間がないようにワイヤが収納されている。
【0021】
本発明による容器入り溶接用ワイヤは、特に、アルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤに対して好適である。アルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤは、鋼製ワイヤと比較すると、比重が約1/3で軽く、また、軟らかいことから、容器内を自由に動き易いので、より適切な容器入り溶接用ワイヤが必要となる。特に、軟質系アルミニウム合金ワイヤ(1000系、4000系)は、塑性変形を生じさせないようにして引き出す必要がある。本発明による容器入り溶接用ワイヤによれば、前述した構成を有しているので、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶接用ワイヤであっても、ワイヤ積層体から引き出された直後の内筒外周面との接触点から容器上方のワイヤ引き出し口に至る間でのワイヤのたるみの発生をなくして塑性変形を生じさせるワイヤ同士の絡みを確実に防止することができ、また、ワイヤ積層体から引き出されて上方に引き上げられるワイヤに内筒上端周縁部との接触による曲がりなどの塑性変形が生じることを防いで、ワイヤの円滑な引き出しを行うことができ、その結果、溶接時に溶接トーチからのワイヤの直進性に優れ、溶接作業を安定して行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態による容器入り溶接用ワイヤを模式的に示す一部破断斜視図、図2は図1に示す容器入り溶接用ワイヤの断面図である。また、図3は図1におけるワイヤ押え治具を模式的に示す平面図、図4は図1におけるワイヤ押え治具を模式的に示す断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、有底円筒をなす容器1の内側に、容器1と同心状に円筒形をなす内筒2が設けられている。容器1及び内筒2は、例えば積層紙材からなっている。この容器1と内筒2との間に、ワイヤWをループ状で且つ円筒状に積層して充填している。ワイヤWは、例えば、ワイヤ径1.2mmφのアルミニウム合金のワイヤである。なお、内筒2の上端面は、容器1上端面より30mm以上下方に位置するように設定されており、この実施形態では、軸線方向における容器1上端面と内筒2上端面間の距離Hは、60mmに設定されている。
【0024】
さらに、容器1と内筒2との間に積層充填されたワイヤWによる円筒状をなすワイヤ積層体W’の上面に、ワイヤWがループ状のまま上昇することを防ぐなどするための、全体として環状をなすワイヤ押え治具3が載置されている。
【0025】
ワイヤ押え治具3は、図1、図3及び図4に示すように、容器1の内周面に沿って位置する環状枠体4と、この環状枠体4から内方に内歯車状に突設された弾性変形可能な複数のワイヤ押え片5及びワイヤたるみ防止片6とにより構成されている。弾性変形可能で内歯車状をなす複数のワイヤ押え片5は、平面視で先細の略三角形状をなし、先端部が内筒2の外周面に近接する状態でワイヤ積層体W’の上面に位置する構成となされている。また、弾性変形可能で内歯車状をなす複数のワイヤたるみ防止片6は、ワイヤ押え片5とほぼ同一形状で平面視で先細の略三角形状をなすとともに、ワイヤ押え片5より長尺をなし、ワイヤ押え片5の上面に重ねられて位置して途中より斜め上方に延び、弾性変形した状態にて先端部が内筒2外周面に上向きに接触する構成となされている。そして、対をなす(1組をなす)ワイヤ押え片5及びワイヤたるみ防止片6同士の垂直上方に延びる基端部が、重ねられた状態で環状枠体4の外周面に固着されている。なお、図3では、ワイヤ押え片5及びワイヤたるみ防止片6の基端部については図示省略している。
【0026】
ここで、これらのワイヤ押え片5及びワイヤたるみ防止片6は、図3に示すように、平面視において、容器1(内筒2)の円中心点に向かって求心状をなすのではなく、ワイヤ積層体W’からワイヤWが巻き解かれる方向(図1及び図3における反時計方向)に傾斜させて設けられている。このように平面視においてワイヤ押え片5及びワイヤたるみ防止片6を傾斜させ、これによってワイヤ積層体W’からのワイヤWの引き出しに伴ってワイヤ押え治具3が回転(回動)可能となされているので、万が一、ワイヤ押え治具3がワイヤ積層体W’の上面から浮き上がって傾斜しても、この状態を直ちに解消してワイヤ押え治具3をワイヤ積層体W’の上面に位置させることができるようになされている。
【0027】
前記環状枠体4は、比較的薄肉のリング状をなし、例えば積層紙材からなっている。また、ワイヤ押え片5及びワイヤたるみ防止片6は、弾性材製の薄いシートからなっている。ワイヤ押え片5及びワイヤたるみ防止片の弾性材の材質としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の適度な弾性を有し、繰り返し曲げに対しても十分な強度を持つ材料が好適である。
【0028】
このように構成される本実施形態の容器入り溶接用ワイヤにおいては、ワイヤ積層体W’からワイヤWが引き出されるに際し、その引き出し部位のワイヤ押え片5のみが弾性変形してワイヤWの引き出しを可能とする一方、他の部位に位置する残りのワイヤ押え片5により、ワイヤ積層体W’を形成するループ状ワイヤの跳ね上がりを防止することができる。また、先端部が内筒2外周面に上向きに接触するワイヤたるみ防止片6により、ワイヤ引き出し時にはワイヤ積層体W’からのワイヤW’が内筒2側へ向かって導かれる。その結果、容器1と内筒2間の半径方向における中央位置より内筒2側寄り位置においてワイヤ押え片5が弾性変形してワイヤ積層体W’からのワイヤWが開放され、該ワイヤWがワイヤたるみ防止片6と内筒2外周面との接触点へと導かれ、内筒2外周面に沿って上方へ引き上げられることになる。
【0029】
このように、この容器入り溶接用ワイヤでは、内歯車状をなし、先端部を内筒2外周面に接触させている複数のワイヤたるみ防止片6を備えているので、ワイヤ積層体W’からのワイヤWが内筒2外周面と各ワイヤたるみ防止片6との接触点を該ワイヤたるみ防止片6に接触しながら順々に通過して、各ワイヤたるみ防止片6がたるみの発生を防ぐためのワイヤの突発的引き出しを防止する間欠的ブレーキの役目をなす。これにより、ワイヤ積層体W’から引き出された直後の内筒2外周面との接触点から容器上方の円錐状のワイヤ引き出し治具7(図2参照)のワイヤ引き出し口に至る間でのワイヤWのたるみの発生をなくすことができ、該たるみに起因するワイヤWの回転(回動)によるワイヤ同士の絡みを確実に防止することができる。
【0030】
また、この容器入り溶接用ワイヤでは、容器1の上端面から30mm以上下方の位置に内筒2の上端面が位置するように容器1に対して内筒2を設けて、ワイヤ引き出し治具7のワイヤ引き出し口に向かって導かれているワイヤWが内筒2上端周縁部との接触で大きく曲げられることのないようにしている。これにより、ワイヤWが内筒2上端周縁部との接触による大きな変形力を受けることがなく、ワイヤ引き出し抵抗を小さくできるとともに、溶接時のワイヤ直進性を損なうような曲がりなどの塑性変形が発生することを確実に防ぐことができる。
【0031】
なお、ワイヤ押え治具として、前記ワイヤ押え治具3に代えて、図5に示すワイヤ押え治具3’を備えるようにしてもよい。このワイヤ押え治具3’は、図5に示すように、環状枠体4から内歯車状に突設されたワイヤ押え片5’と、環状枠体4から内歯車状に突設されたワイヤたるみ防止片6’とを両者が円周方向において交互に位置するように構成してなるものである。このようなワイヤ押え治具3’を備えることによっても、前記図3に示すワイヤ押え治具3と同様に、ワイヤWの回転に起因するワイヤ同士の絡みを確実に防止することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1の容器入り溶接用ワイヤによれば、ワイヤ積層体から引き出された直後の内筒外周面との接触点から容器上方に位置するワイヤ引き出し口に至る間での溶接用ワイヤのたるみの発生をなくしてワイヤ同士の絡みを確実に防止することができるので、溶接用ワイヤの円滑な引き出しを行うことができ、溶接作業を安定して行うことができる。また、請求項2の容器入り溶接用ワイヤによれば、前記効果に加え、ワイヤ積層体から引き出されて上方に引き上げられる溶接用ワイヤに内筒上端周縁部との接触による曲がりなどの塑性変形が生じることを確実に防いで、溶接時に溶接用ワイヤの直進性に優れた溶接作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による容器入り溶接用ワイヤを模式的に示す一部破断斜視図である。
【図2】図1に示す容器入り溶接用ワイヤの模式的断面図である。
【図3】図1におけるワイヤ押え治具の模式的平面図である。
【図4】図1におけるワイヤ押え治具の模式的断面図である。
【図5】別の実施形態によるワイヤ押え治具の模式的平面図である。
【図6】従来の溶接ワイヤ充填ペイルを示す図であって、内・外筒の軸線と垂直方向の断面図である。
【図7】図6における押え治具の斜視図である。
【符号の説明】
1…容器 2…内筒 3,3’…ワイヤ押え治具 4…環状枠体 5,5’…ワイヤ押え片 6,6’…ワイヤたるみ防止片 7…ワイヤ引き出し治具 W…溶接用ワイヤ W’…ワイヤ積層体
Claims (3)
- 容器と、この容器内にこれと同心状に設けられた内筒と、前記容器と前記内筒との間にループ状で且つ円筒状に積層された溶接用ワイヤと
、このワイヤ積層体の上面に載置されたワイヤ押え治具とを備え、前記溶接用ワイヤを容器軸線方向に引き出す容器入り溶接用ワイヤにおいて、
前記ワイヤ押え治具が、前記容器の内周面に沿って位置する環状枠体と、前記環状枠体から内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなし、先端部が前記内筒の外周面に近接する弾性変形可能な複数のワイヤ押え片と、前記環状枠体から内歯車状に突設され平面視で先細の略三角形状をなし、弾性変形した状態にて先端部が前記内筒の外周面に上向きに接触する弾性変形可能な複数のワイヤたるみ防止片とにより構成されていることを特徴とする容器入り溶接用ワイヤ。 - 前記容器の上端面から30mm以上下方の位置に前記内筒の上端面が位置するように前記容器に対して前記内筒が設けられていることを特徴とする請求項1記載の容器入り溶接用ワイヤ。
- 溶接用ワイヤがアルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤであることを特徴とする請求項1又は2記載の容器入り溶接用ワイヤ。
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