JP3815644B2 - 圧電振動子 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は厚み振動を利用した水晶振動子さらには水晶以外の圧電材料であるタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、圧電セラミックス等を使った圧電振動子に適用可能であるが、特に高機能化が要求される移動体通信分野での携帯電話機用や情報処理分野におけるコンピュータ等の基準信号発振源として使用されるモジュール部品の心臓部である圧電発振器の高機能化を目的とする圧電振動子の電極構造に関するもので、高調波振動モードの抑圧された基本波単一振動の高性能化圧電振動子を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話機器等の超小型・高機能化が要求される分野において、水晶発振器は必須のデバイスとしてその地位を確立している。これまでの水晶発振器には、温度補償型水晶発振器(TCXO)、ディジタル温度補償型水晶発振器(D-TCXO)、電圧制御型水晶発振器(VCXO)等があり、水晶振動子とLSIと抵抗・コンデンサ等の受動部品と組合わせて、各種水晶発振器を実現している。また、情報処理分野におけるコンピュータのクロック用発信源として、水晶を使った水晶発振器の他に、用途によっては、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、圧電セラミックスを使った圧電振動子からなるクロック用発振器が使われている。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】
急速な各種通信機器の小型化、軽量化、高機能化、低コスト化の要請に対して従来の技術で実現する水晶発振器では対応が困難な状況下になってきた。これまでの開発の主眼は、最適な発振回路に合うように回路網的なアプローチで水晶発振回路全体の性能向上と高機能化をはかってきた。低コスト化の要求に対しては、水晶発振器としての部品点数の削減が各社の主眼であった。これと平行して生産技術面では、アセンブリや検査コスト削減の方策として、自動化設備の導入が積極的に検討されてきた。しかしながら、従来の技術の踏襲では、開発技術的にも生産技術的にも限界にきている。というのは、先に述べた水晶発振器は、水晶振動子を構成する圧電板は水晶の厚みで決まる固有振動の基本波振動の他に三倍波、五倍波、七倍波等の奇数次の高調波振動モードが同時に存在している。(参考文献1:奈良慎一、山形積治、深井一郎“プラノコンベックス型水晶振動子の計算機による解析”、電子通信学会技報、US-77-47(1977-11))発振回路としては、通常は基本波振動を利用することが多いが、高い周波数での発振回路を実現する場合には、特定の高調波振動をすることがある。三倍波振動を使用した発振回路では、基本波、五倍波、七倍波等がスプリアスとして同時に存在している。このため、発振出力に基本波と高調波成分が混在しており、発振が不安定な時には、ジャンピング現象により基本波で発振することがあったり、時には五倍波や七倍波で発振したりする。このことは、他のタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、圧電セラミックスを使った圧電振動子についても同じようなことが起こる。三倍波高調波水晶振動子で基本波を抑圧する試みとして、一部のメーカーでは水晶振動子を形成する水晶板の形状加工や付加的な電極で基本波を抑圧する方法を採用しているが、十分要求を満たしているとは言い難い。そこで、水晶振動子や圧電振動子の高調波振動をすべて抑圧した基本波単一振動を実現する手段を考えた。
【0004】
【問題を解決するための手段】
本発明の圧電振動子は、圧電板の厚み振動のエネルギー閉じ込め現象を利用している。電極直下で励振される基本波振動と高調波振動から誘起される電極部の電荷分布が異なる、つまり基本波振動の方が高調波振動よりも電極部での振動領域が電極全体に広がっていて、発生する電荷分布も異なることから、従来の問題点を解決する手段として、本発明では、下記の電極構成を採用している。
【0005】
本発明の圧電振動子は、圧電板の厚み振動を励振する電極を圧電板の上下に形成してなる圧電振動子において、この電極は二重の円形または二重の矩形の内側に空隙を設けて形成される浮き電極を有する構造とし、外側に配置された円形または矩形の電極には引出し電極が接続されてなることを特徴とする圧電振動子を提供する。
【0006】
本発明の圧電振動子の電極構造として、圧電板の中心部に円形または矩形の電極を形成し、中心部に設けられた円形または矩形の電極を取り巻くように空隙を設けて、外部に電極を配置するものである。この外部に配置された電極で基本波振動で誘起される電荷を外部に取り出して振動子を構成する。中心部に配置された浮き電極の機能は、厚み振動モードのエネルギー閉じ込めをおこなっている。つまり、中心部に誘起された基本波の電荷の一部と殆どすべての高調波成分の電荷は中心部の浮き電極に集まることになるが、外部に取り出さないため、高調波成分(三倍波、五倍波、七倍波等)は抑圧されることになる。基本波から誘起される電荷の一部が集まることになる外側に配置された電極は、実際、電極寸法と電極膜厚を適正に選択することにより、十分実用的な等価直列抵抗が得られている。
【0007】
【実施例】
【0008】
次に本発明の実施例を図面を参照にして説明する。
【0009】
図1は、本発明の圧電振動子の平面図である。圧電板(例えば水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、圧電セラミックス)100上に、二重の矩形の電極101、102が空隙103を隔てて配置され、外側に配置された電極101には、引出し電極104が電極パターンで接続されている。圧電板の裏側には、同様に電極105、引出し電極106が、表面に対向して設けられている。
【0010】
図2は本発明の動作原理を説明する圧電振動子の断面図である。圧電板201の両面に矩形の電極202,203,204,205が蒸着やスパッタリング等の手段で形成される。電極202と電極203の間、電極204と電極205の間には電気的に導通が起こらないように空隙が存在する。電極202と電極204により励振される厚み振動モードである基本波の振動モード209、三倍波の振動モード210、五倍波の振動モード211が圧電板の厚み方向に存在する。これら振動モードに相伴う誘起電荷である基本波に相当する206、三倍波に相当する207、五倍波に相当する208が上下電極に発生する。図2からも明らかなように、電極203,205上に発生する基本波の振動モードで発生する基本波の電荷の一部、三倍波の振動モードで発生する電荷、五倍波の振動モードによる電荷は、浮き電極上に存在する。一方、電極202、204上に発生した基本波の一部の電荷は引出し電極を通じて外部に取り出せることから、理想的には基本波のみの特性が得られることになる。
【0011】
本発明の具体的な例を図3を示しながら説明する。中心周波数15.2MHzの水晶振動子の例である。水晶板3×5mmの角板に銀電極(図1の電極101に相当):膜厚1500Åを2×3mmとし、空隙0.2mmを設けて1×2mmの矩形銀電極(図1の電極102に相当):膜厚1500Åを水晶板の中心部に形成した。
【0012】
この時に得られた周波数特性は図3の本発明の水晶振動子である。基本波の波形応答が顕著見られるが、高調波の応答は極めて弱い。従来の水晶振動子は、水晶板3×5mmの角板に電極寸法2×3mmの銀電極:膜厚1500Åのみを形成したときの周波数特性を第3図に従来の水晶振動子として示してある。従来の水晶振動子では、基本波の他に三倍波45.5MHz付近、五倍波76MHZ付近、七倍波102.6MHz付近、九倍波136MHz付近に高調波モードによる波形応答がある。この実施例からも明らかなように、本発明の水晶振動子では、三倍波、五倍波、七倍波、九倍波が抑圧されていることがわかる。
【0013】
なお、十一倍波以上の高調波振動モードが抑圧されているのは確認されている。
【0014】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の水晶振動子は、圧電板の厚み振動を励振する電極を圧電板の上下に形成してなる圧電振動子において、この電極は二重の円形または二重の矩形の内側に空隙を設けて形成される浮き電極を有する構造とし、外側に配置された円形または矩形の電極には引出し電極が接続されてなることを特徴とする圧電振動子で構成され、極めて簡単な電極構造を採用することで、水晶発振器で従来から悩まされ続けてきた高調波振動へのジャンピング現象やジッタ現象を抑圧することができる。本発明の圧電振動子を使って構成される圧電発振器は極めて安定な純度の高い発振出力を得ることができる。したがって、不要な発振出力を抑圧するために使用されてきたフィルタを必要としなくなる利点もある。本発明では、エネルギー上昇型閉じ込め現象を利用する圧電振動子にも適用できることは言及するまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 本発明の圧電振動子の構造の平面図である。
【図2】 本発明の圧電振動子の動作原理の断面図である。
【図3】 本発明の圧電振動子の周波数特性である。
【符号の説明】
【0016】
100 圧電板
101 矩形の電極
102 矩形の電極
103 空隙
104 引出し電極
105 矩形の電極
106 引出し電極
201 圧電板
202 矩形の電極
203 矩形の電極
204 矩形の電極
205 矩形の電極
206 誘起電荷
207 誘起電荷
208 誘起電荷
209 基本波振動モード
210 三倍波振動モード
211 五倍波振動モード
Claims (1)
- 圧電板の厚み振動を励振する電極を圧電板の上下に形成してなる圧電振動子において、該電極は二重の円形または二重の矩形の内側に空隙を設けて形成される浮き電極を有する構造とし、外側に配置された円形または矩形の電極には引出し電極が接続されてなることを特徴とする圧電振動子。
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