JP3814129B2 - マトリクス光スイッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信や光計測などの分野において、光路切り換えを行うための光スイッチに関するものである。更に詳しく述べると本発明は、一対の偏光ビームスプリッタの間に可変偏波回転部を配置した光スイッチユニットをマトリクス(格子状)に配列したM×N型のマトリクス光スイッチに関するものである。この光デバイスは、例えば光通信システムなどで用いられる。
【0002】
【従来の技術】
光サーキュレータは第1ポートからの入力光を第2ポートへ出力し、第2ポートからの入力光を第3ポートへ出力するというように、あるポートからの入力光を特定の他のポートのみに出力する光分離機能を有する光デバイスである。また光スイッチは第1入力ポートからの入力光を第1出力ポート又は第2出力ポートのいずれかに出力し、第2入力入力ポートからの入力光を第2出力ポート又は第1出力ポートのいずれかに出力するというような光路切り換え機能を有する光デバイスである。
【0003】
通常、光サーキュレータは永久磁石により固定磁界を印加する45度ファラデー回転子を用いて、偏波面を予め決められている方向に45度回転させることで光線の非相反性を実現し、光スイッチは電磁石により印加磁界方向を変化させる可変ファラデー回転子を用いることで光路の切り換えを実現しているが、基本的な部分はほぼ同様に構成できる。
【0004】
従来、様々な構成の光サーキュレータが開発されているが、その一例として、反射型偏光分離素子として複合偏光ビームスプリッタを用いる形式がある。これは、全反射ミラーを付随し、偏光分離膜(通常、誘電体多層膜)を組み込んだ一対の複合偏光ビームスプリッタを配置し、それらの間にファラデー回転子と1/2波長板からなる非相反部を配置した構成である(特開昭56−137329号公報参照)。この構成は、各ポートにランダム偏光を入出射することで4ポート光サーキュレータとして機能する。光スイッチの場合には、ファラデー素子への印加磁界方向を電磁石により切り替えることができる可変ファラデー回転子を用いればよい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の光サーキュレータあるいは光スイッチでは、全反射ミラーを含むために光路が複雑となる。ミラーの研磨精度、加工精度が低いと、大きなパワー損失が生じたりアイソレーション特性が劣化するため、ミラーには高い加工精度が求められ、光軸などの調整も非常に面倒である。
【0006】
また、反射型偏光分離素子として誘電体多層膜による複合偏光ビームスプリッタを用いた従来タイプでは、本質的に高アイソレーション特性が得られない。主な原因の一つとして消光比不足(偏光分離能力の不足)が挙げられる。これは偏光分離素子の種類に依存するもので、誘電体多層膜による複合偏光ビームスプリッタにより分離した光は、透過すべきP偏光中にS偏光が漏れ込み、反射すべきS偏光にP偏光が漏れ込むため、消光比は20dB程度にとどまるからである。
【0007】
ところで光スイッチとしては、従来、2×2型までが一般的であり、それ以上の大規模なマトリクス光スイッチは実用化されていない。偏光分離素子として複屈折結晶を用いた光スイッチもあるが、多段化しようとすると偏光分離に長い距離を必要とし高価で大型化するほか、光軸調整が非常に困難となるなどの問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成の光スイッチユニットを用いて実現できるM×N型のマトリクス光スイッチを提供することである。本発明の他の目的は、一体型の偏光分離膜アレイを用い、偏光分離膜の消光比不足に起因する漏れ光の遮断機能を付与することにより、低クロストーク特性を呈し、且つ光軸調整を容易にして製作しやすくしたマトリクス光スイッチを提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、互いに平行の関係にある一対の偏光分離膜と、両偏光分離膜間に配置した可変偏波回転部を具備している光スイッチユニットを、M×N個(但し、M、Nは4以上の整数)のマトリクスに配列した構成であって、前記可変偏波回転部は、±45度可変ファラデー回転子と1/2波長板とからなり、少なくとも前記マトリクスの一部は、偏光分離膜2層毎に不要光を遮断し且つ光学的に分離するための遮光体を設けた偏光分離膜アレイを複数個、可変偏波回転部を介して配列することにより形成されており、マトリクス外周の1辺に沿い偏光分離膜アレイの配列方向にM個の入力ポートを、またそれに隣接する1辺に沿いN個の出力ポートを配設しM×N型としたマトリクス光スイッチである。偏光ビームスプリッタとポートとの間に、それぞれ光路分離合成用複屈折素子とその一方の光路に挿入された1/2波長板からなる偏光制御部を配置し、該偏光制御部でランダム偏光をP偏光又はS偏光に変換し、あるいはP偏光又はS偏光をランダム偏光に戻すようにすると偏光無依存化できる。
【0016】
このようなマトリクス光スイッチを構成するには、一体型の偏光分離膜アレイを用いるのがよい。偏光分離膜アレイは、断面形状が平行四辺形である柱状体が複数個偏光分離膜を介して接着され、更にその両端に断面形状が直角二等辺三角形である柱状体が偏光分離膜を介して接着されて全体が直方体状をなし、偏光分離膜2層毎に光学的に分離するための遮光体が設けられ、且つ少なくとも光の入出射面に反射防止膜が形成されている構成とする。偏光分離膜アレイを複数個、可変偏波回転部を介して配列することにより少なくともマトリクスの一部が形成できる。
【0017】
【実施例】
図1は光サーキュレータの一例を示す説明図であり、Aは偏光分離膜を互いに平行の関係に配置した例、Bは平行分離膜を互いに直交の関係に配置した例を示している。これらの4ポート光サーキュレータの本体部分は、偏光分離膜10,12が互いに平行又は直交の関係となるように設置した一対の偏光ビームスプリッタ14,16と、両偏光ビームスプリッタ間に配置した非相反部18(45度ファラデー回転子20及び1/2波長板22)とを具備している。ここで両方の偏光ビームスプリッタ14,16は、断面が直角二等辺三角形の柱状体を、間に偏光分離膜10,12を介して貼り合わせたような6面体形状である。偏光分離膜10,12は、例えば誘電体多層膜からなる。両方の偏光分離膜10,12と45度ファラデー回転子20と1/2波長板22は1列に配列され、各偏光ビームスプリッタ14,16の隣接する2面に対向して入出力ポートが位置している。図示のようにポート1〜ポート4を設定する。45度ファラデー回転子20は、ファラデー素子(磁気光学結晶)と永久磁石などからなり、永久磁石によってファラデー素子に常に一定の飽和磁界が印加されて、入射する光の偏波面を45度回転させる構成である。1/2波長板は、入射する光の偏波面をその光学軸に対して対称的に回転させる機能を有するから、ここでは入射する光の偏波面を丁度45度回転させるような向きに光学軸が設定されている。
【0018】
45度ファラデー回転子による光の偏波面回転方向は進行方向に無依存であるのに対して1/2波長板のそれは進行方向に依存するため、それらを組み合わせた非相反部18では光の偏波面方向が合計90度回転してP偏光とS偏光とで入れ替わったり、合計0度回転するために不変であったりする。ここで非相反部18は、例えば、順方向(図面左手側から右手側へ向かう方向を順方向とする)に進行するP偏光とS偏光に対してはその偏光状態を入れ替え、逆方向(図面右手側から左手側へ向かう方向を逆方向とする)に進行するP偏光とS偏光に対してはいずれの偏光状態にも変化が無いようにファラデー回転子の印加磁界方向を設定する。
【0019】
両偏光ビームスプリッタ14,16と各入出力ポートとの間にそれぞれ偏光子24,25,26,27を配置し、各偏光ビームスプリッタ14,16に対向する2個の入出力ポートのうちの一方(ポート1とポート3)にはS偏光を、他方(ポート2とポート4)にはP偏光を入出力させる。従って、ポート1とポート3の偏光子24,26はS偏光を透過しP偏光をカットする方向に、ポート2とポート4の偏光子25,27はP偏光を透過しS偏光をカットする方向に、それぞれ偏光子の方向を定める。
【0020】
しかし、通常は偏光ビームスプリッタの偏光分離能が低いため理想状態とはならず、透過ポートではP偏光の中に1/1000程度のS偏光が、反射ポートにはS偏光中に2/100程度のP偏光が混入することは避けられない。これを偏光毎に考えると、100%P偏光入射時、P偏光の殆どは偏光分離膜を透過するが、ごく僅かがP偏光のまま反射してしまい、100%S偏光入射時、S偏光の殆どは偏光分離膜により反射するが、ごく僅かがS偏光のまま透過してしまう。このごく僅か反射、又は透過してしまった偏光状態がそのままの光を、以下、「漏れ光」と呼んでいる。
【0021】
ポート1から偏光子24を通った入射S偏光は、偏光分離膜10で反射し非相反部18に向かう。偏光分離膜10を透過してしまった漏れ成分(S偏光)は、その方向にはポートがないため何ら問題は生じない。非相反部18に向かったS偏光は、45度ファラデー回転子20と1/2波長板22とにより90度の偏波面回転を受けてP偏光となり、偏光分離膜12を透過し偏光子27を通りポート4へと出射する。このようにして、ポート1からの入射光はポート4から出射する。なお偏光分離膜12で反射したP偏光漏れ成分はポート3へ向かうが、偏光子26によってカットされるため、高アイソレーション特性が得られる。
【0022】
ポート4から偏光子27を通った入射P偏光は、偏光分離膜12を透過し、非相反部18では偏波面の回転を受けずP偏光のままであり、偏光分離膜10を透過し偏光子25を通りポート2へと出射する。ポート2から偏光子25を通った入射P偏光は、偏光分離膜10を透過し、非相反部18で90度の偏波面回転を受けてS偏光となり、偏光分離膜12で反射して偏光子26を通りポート3へと出射する。ポート3から偏光子26を通った入射S偏光は、偏光分離膜12で反射し、非相反部18では偏波面の回転を受けずS偏光のままであり、偏光分離膜10で反射し偏光子24を通りポート1へと出射する。つまり、ポート4からの入射光はポート2から出射し、ポート2からの入射光はポート3から出射し、ポート3からの入射光はポート1から出射する。いずれの方向についても、漏れ光は、ポートが存在しないか、あるいは偏光板によってカットされるため、高アイソレーション特性が得られる。従って、この構成によって、完全循環4ポート光サーキュレータとして動作することになる。
【0023】
図1のAのように偏光分離膜10,12を平行となる関係に配置した場合は、ポート1とポート3を互いに逆の方向に引き出すことができ、図1のBのように偏光分離膜10,12を直交となる関係に配置した場合は、ポート1とポート3を同じ方向に引き出すことができる。機能及び性能は同じであるので、外部のファイバの引き回し状態に応じて使い分ければよい。
【0024】
これらにおいて45度ファラデー回転子の印加磁界方向を逆にすると、順方向に進行するP偏光とS偏光に対してはいずれの偏光状態にも変化が無く、逆方向に進行するP偏光とS偏光に対してはその偏光状態を入れ替える構成となる。その場合には、ポート1→ポート3→ポート2→ポート4→ポート1の完全循環4ポート光サーキュレータが得られる。
【0025】
図2は光サーキュレータの他の例を示す説明図であり、偏光分離膜を互いに平行の関係に配置した例を示している。この4ポート光サーキュレータの本体部分は図1のAと同様であってよいことから、説明を簡略化するために対応する部分には同一符号を付す。偏光分離膜10,12が互いに平行の関係に設置した一対の偏光ビームスプリッタ14,16と、両偏光ビームスプリッタ間に配置した非相反部18(45度ファラデー回転子20及び1/2波長板22)とを具備している。ここで非相反部18は、順方向に進行するP偏光とS偏光に対してはその偏光状態を入れ替え、逆方向に進行するP偏光とS偏光に対してはいずれの偏光状態にも変化が無いようにファラデー回転子の印加磁界方向を設定している。
【0026】
両側の偏光ビームスプリッタ14,16の2面に対向して入出力ポート(ポート1〜ポート4)を設け、偏光ビームスプリッタと入出力ポートとの間に、それぞれ偏光制御部30,31,32,33を配置する。偏光制御部30は、光路分離合成用複屈折素子34とその一方の光路に挿入される1/2波長板35とからなる。他の偏光制御部31,…,33も同様の構成である。これら偏光制御部30,…,33は、ランダム偏光をP偏光又はS偏光に変換し、あるいはP偏光又はS偏光をランダム偏光に戻す機能を果たす。
【0027】
ポート1から入射するランダム偏光は、偏光制御部30の複屈折素子によってP偏光とS偏光に分離し、P偏光は1/2波長板によってS偏光に変換されて、両方ともS偏光に揃えられる。両方のS偏光は、偏光分離膜10で反射し、非相反部18に向かう。偏光分離膜10を透過してしまった漏れ成分(S偏光)は、その方向にはポートがないため何ら問題は生じない。非相反部18に向かったS偏光は、45度ファラデー回転子20と1/2波長板22とにより90度の偏波面回転を受けてP偏光となり、偏光分離膜12を透過する。偏光制御部33では、一方のP偏光は1/2波長板をバイパスし、他方のP偏光は1/2波長板によってS偏光に変換され、S偏光とP偏光は複屈折素子によって合成されランダム偏光となってポート4へと出射する。このようにしてポート1からの入射光はポート4から出射することになる。なお、偏光分離膜12で反射したP偏光漏れ成分はポート3へ向かうが、偏光制御部32において一方は1/2波長板によって偏波回転を受け、複屈折素子により信号光とは異なる光路をとるため結合することはなく、偏波無依存化と高アイソレーション特性が得られる。
【0028】
ポート4から入射するランダム偏光は偏波制御部33を通ってP偏光となり、偏光分離膜12を透過し、非相反部18では偏波面の回転を受けずP偏光のままであり、偏光分離膜10を透過し偏波制御部31を通りランダム偏光となってポート2へと出射する。ポート2から入射するランダム偏光は偏波制御部31を通ってP偏光となり、偏光分離膜10を透過し、非相反部18で90度の偏波面回転を受けてS偏光となり、偏光分離膜12で反射して偏波制御部32を通りランダム偏光となってポート3へと出射する。ポート3から入射するランダム偏光は偏波制御部32を通ってS偏光となり、偏光分離膜12で反射し、非相反部18では偏波面の回転を受けずS偏光のままであり、偏光分離膜10で反射し偏波制御部30を通りランダム偏光となってポート1へと出射する。このようにしてポート1→ポート4→ポート2→ポート3→ポート1の偏波無依存の完全循環4ポート光サーキュレータとして動作し、いずれの方向についても結合するポートが無いか、あるいは偏波制御部によって漏れ光がカットされ、高アイソレーション特性が得られる。
【0029】
なお、偏波制御部における偏波分離の方向には2通り考えられるが、偏光ビームスプリッタや非相反部などの配列面(紙面に平行な面)に対して平行な平面内で偏光分離を行うと、続いて配置するべき偏光ビームスプリッタを光路方向に大きくする必要が生じる。そこで、本実施例では、偏光分離方向をそれとは垂直な方向(紙面に垂直な面内)とし、偏光ビームスプリッタをそれに合致した寸法とすることで、偏光ビームスプリッタが大型化するのを抑制している。
【0030】
ところでファラデー回転子による偏波回転角度は材料特性に起因する温度特性と波長特性があり、温度や波長が変化すると回転角度も変わる。回転角度が設計値からずれると直交偏光成分を持つことになり、アイソレーション特性の劣化につながる。そこで、温度特性、波長特性の符号が異なり、その絶対値の比に相当する光路長比のファラデー素子を複数個組み合わせることで、回転角度の温度依存、波長依存をなくすことができる。他方、1/2波長板は、見掛け上45度の偏波回転を与えるが、実際には直交する偏光成分間の位相差が半波長ずれることにより回転しているように振る舞う。波長板の温度特性、波長特性はファラデー回転子とは異なり、位相差として与えられるため信号光の偏光状態が変わり、やはりアイソレーション特性が劣化する。従って、与えられる位相差の温度特性、波長特性の符号が異なる複数枚の位相板を組み合わせて用いることで位相差の温度特性、波長特性を無くすことができる。
【0031】
図3は本発明で用いる光スイッチユニットの一例を示す説明図である。光スイッチユニット38は、偏光分離膜40,42が互いに平行の関係となるように設置した一対の偏光ビームスプリッタ44,46と、両偏光ビームスプリッタ間に配置した可変偏波回転部48(±45度可変ファラデー回転子50と1/2波長板52)を具備している。ここで、両方の偏光ビームスプリッタ44,46は、断面が直角二等辺三角形の柱状体を、間に偏光分離膜40,42を介して貼り合わせたような6面体形状である。両方の偏光分離膜40,42と±45度可変ファラデー回転子50と1/2波長板52は1列に配列され、一方の偏光ビームスプリッタ44の隣接する2面に対向して入力側のポート1とポート2が、他方の偏光ビームスプリッタ46の隣接する2面に対向して出力側のポート3とポート4が位置している。図示のようにポート1〜ポート4を設定する。±45度可変ファラデー回転子50は、ファラデー素子(磁気光学結晶)と電磁石からなり、電磁石への通電電流の向きを切り換えることで入力する光の偏波面を+45度あるいは−45度回転させる構成である。1/2波長板52は、入力する光の偏波面をその光学軸に対して対称的に回転させる機能を有するから、ここでは入射する光の偏波面を丁度45度回転させるような向きに光学軸が設定されている。
【0032】
このように±45度可変ファラデー回転子50による光の偏波面回転方向は、電磁石による印加磁界の方向によって決まるのに対して1/2波長板52による光の偏波面回転方向は一定方向であるため、それらを組み合わせた可変偏波回転部48では、電磁石への通電電流の向きによって、光の偏波面方向が合計で回転しなかったり90度回転したりし、P偏光とS偏光とで入れ替わったり不変であったりする。
【0033】
電磁石の通電電流の向きを可変偏波回転部48における偏波面の回転角が0度となるように設定する。ポート1から入射したS偏光は、偏光分離膜40で反射し、可変偏波回転部48に向かう。偏光分離膜40を透過してしまった漏れ成分(S偏光)は、その方向にはポートがないため何ら問題は生じない。可変偏波回転部48に向かったS偏光は、可変偏波回転部48により0度の偏波面回転を受けて(即ち、偏波面が回転せず)S偏光のままであり、偏光分離膜42で反射してポート3へと出射する。ポート2から入射したP偏光は、偏光分離膜40を透過し、可変偏波回転部48に向かう。偏光分離膜40で反射してしまった漏れ成分(P偏光)は、その方向にはポートがないため何ら問題は生じない。可変偏波回転部48に向かったP偏光は、可変偏波回転部48により0度の偏波面回転を受けて(即ち、偏波面が回転せず)P偏光のままであり、偏光分離膜42を透過してポート4へと出射する。即ち、ポート1→ポート3及びポート2→ポート4の光路が成立する。
【0034】
電磁石の通電電流の向きを逆にしてファラデー素子への印加磁界方向を反対にし、可変偏波回転部48における偏波面の回転角が90度となるように切り替える。ポート1から入射したS偏光は、偏光分離膜40で反射し、可変偏波回転部48に向かう。偏光分離膜40を透過してしまった漏れ成分(S偏光)は、その方向にはポートがないため何ら問題は生じない。可変偏波回転部48に向かったS偏光は、可変偏波回転部48により90度の偏波面回転を受けてP偏光となり、偏光分離膜42を透過してポート4へと出射する。ポート2から入射したP偏光は、偏光分離膜40を透過し、可変偏波回転部48に向かう。偏光分離膜40で反射してしまった漏れ成分(P偏光)は、その方向にはポートがないため何ら問題は生じない。可変偏波回転部48に向かったP偏光は、可変偏波回転部48により90度の偏波面回転を受けてS偏光となり、偏光分離膜42で反射してポート3へと出射する。即ち、ポート1→ポート4及びポート2→ポート3の光路が成立する。
【0035】
従って、この光スイッチユニットは、電磁石への通電電流の切り替え動作によって、ポート1→ポート3及びポート2→ポート4という光路と、ポート1→ポート4及びポート2→ポート3という光路とに切り替えることができ、それ単独で2×2型光スイッチとして動作する。また入出力の幾何学的伝播方向と伝播する偏光状態が一致するために、多段化に適する基本ユニットとなりうる。
【0036】
2×2型の光スイッチの構成例を図4に示す。これは、図3に示す光スイッチユニット38の両偏光ビームスプリッタ40,42と各ポート(ポート1〜ポート4)との間に、それぞれ偏光制御部54,55,56,57を配置した構成である。偏光制御部54は、光路分離合成用複屈折素子58とその一方の光路に挿入された1/2波長板59からなる。他の偏光制御部55,…,57も同様の構成である。これら偏光制御部54,…,57は、ランダム偏光をP偏光又はS偏光に変換し、あるいはP偏光又はS偏光をランダム偏光に戻す機能を果たす。
【0037】
電磁石の通電電流の向きを可変偏波回転部48における偏波面の回転角が0度となるように設定する。ポート1から入射するランダム偏光は、偏光制御部54の複屈折素子58によってP偏光とS偏光に分離し、1/2波長板59によってP偏光がS偏光に変換されて、両方ともS偏光に揃えられる。両方のS偏光は偏光分離膜40で反射し、可変偏波回転部48に向かう。偏光分離膜40を透過してしまった漏れ成分(S偏光)は、その方向にはポートがないため何ら問題は生じない。可変偏波回転部48に向かったS偏光は0度の偏波面回転を受けるため(即ち、偏波面が回転せず)S偏光のままであり、偏光分離膜42で反射し、偏光制御部42では一方のS偏光は1/2波長板をバイパスし他方のS偏光は1/2波長板によってP偏光に変換され、S偏光とP偏光は複屈折素子によって合成されランダム偏光となってポート3へと出射する。このようにしてポート1からの入射光はポート3から出射することになる。なお、偏光分離膜42を透過したS偏光漏れ成分はポート4へ向かうが、一方は偏光制御部57の1/2波長板によって偏波回転を受け、複屈折素子により信号光とは異なる光路をとるため結合することはなく、低クロストーク特性が得られる。ポート2から入射したランダム偏光は、偏光制御部55の複屈折素子によってP偏光とS偏光に分離し、1/2波長板によってS偏光がP偏光に変換されて、両方ともP偏光に揃えられる。両方のP偏光は、偏光分離膜40を透過し、可変偏波回転部48に向かう。偏光分離膜40で反射してしまった漏れ成分(P偏光)は、その方向にはポートがないため何ら問題は生じない。可変偏波回転部48に向かったP偏光は0度の偏波面回転を受けるため(即ち、偏波面が回転せず)P偏光のままであり、偏光分離膜42を透過して、偏光制御部57で一方のP偏光は1/2波長板によってS偏光に変換され、P偏光とS偏光は複屈折素子によって合成されランダム偏光となってポート4へと出射する。このようにしてポート2からの入射光はポート4から出射することになる。なお、偏光分離膜42で反射したP偏光漏れ成分はポート3へ向かうが、偏光制御部56で一方は1/2波長板によって偏波回転を受け、複屈折素子により信号光とは異なる光路をとるため結合することはなく、低クロストーク特性が得られる。
【0038】
次に、電磁石の通電電流の向きを逆にして可変偏波回転部48における偏波面の回転角が90度となるように切り替える。ポート1から入射するランダム偏光は、偏光制御部54によってS偏光に揃えられる。両方のS偏光は、偏光分離膜40で反射し、可変偏波回転部48に向かい90度の偏波面回転を受けてP偏光となり、偏光分離膜42を透過して、偏光制御部57でランダム偏光となってポート4へと出射する。ポート2から入射したランダム偏光は、偏光制御部55によってP偏光に揃えられる。両方のP偏光は、偏光分離膜40を透過し、可変偏波回転部48に向い90度の偏波面回転を受けてS偏光となり、偏光分離膜42で反射して、偏光制御部56によってランダム偏光となってポート3へと出射する。このようにしてポート2からの入射光はポート3から出射することになる。これらの光路の場合も、不要偏波が除去される機能は、前記光路の場合と同様である。
【0039】
図5は本発明に係るマトリクス光スイッチの一例を示す説明図である。原理的には、図3に示すような光スイッチユニット38をM×N個(但し、M、Nのうちどちらか一方は1以上の整数、他方は2以上の整数:ここではM=N=4)のマトリクス(格子状)に配列し、光スイッチユニット間に遮光体50を設け、マトリクスの隣接する2辺に沿ってそれぞれM個の入力ポートとN個の出力ポートを配設して構成する。ここでは各ポートに、光路分離合成用複屈折素子52とその一方の光路に挿入された1/2波長板54からなる偏光制御部56を配置し、該偏光制御部56でランダム偏光をP偏光又はS偏光に変換し、あるいはP偏光又はS偏光をランダム偏光に戻すようにして偏光無依存化している。
【0040】
マトリクス光スイッチの製作には、図6のB、Cに示すような光遮断機能を有する偏光ビームスプリッタアレイ60、62を用いるのがよい。図6のAに示すように、4枚の偏光分離膜64をもつ一体型の偏光ビームスプリッタアレイ66を複数用意する。ここでは、断面形状が平行四辺形である柱状体を3個、偏光分離膜64を介して接着し、更にその両端に断面形状が直角二等辺三角形である柱状体を偏光分離膜64を介して接着して、全体が直方体状をなしている構造である。そして、偏光分離膜2層毎に、中央1箇所(図6のB)及び両側2箇所(図6のC)に溝68を形成し、該溝68内に遮光体70(例えば、通信波長に応じた赤外線吸収ガラスなど)を挿入したものである。寸法的には、偏光ビームスプリッタアレイ66の幅lに対して偏光分離膜64同士の間隔はl+d(dは溝の幅)とする。偏光ビームスプリッタアレイの高さ(紙面に垂直方向の長さ)は3d程度、溝の深さは2d程度とするのがよい。
【0041】
図6のBに示す偏光ビームスプリッタアレイ60を3個と、図6のCに示す偏光ビームスプリッタアレイ62を2個と、偏光分離膜を順次1ずつ少なくした偏光ビームスプリッタアレイをそれぞれ2個ずつ作製し、各偏光ビームスプリッタアレイを一定間隔だけ離して並べ、間に±45度可変ファラデー回転子72と1/2波長板74とからなる可変偏光回転部76を配置する。各ポートに付設する偏波制御部56は、光路分離合成用複屈折素子(ルチル単結晶)52とその一方の光路に挿入された1/2波長板54からなる。ルチルと1/2波長板の結晶軸方位は、入力ポートでは無偏波入射光がP偏光とS偏光とに偏光分離され、偏波制御部通過直後で両ビームの偏光面がS偏光となるように、また出力ポートではP偏光である2本のビームのうち片方がS偏光となり、更にそのP偏光とS偏光とが合成するように設定されている。
【0042】
このような構成によって偏波無依存の4×4(M×N:ここではM=N=4)型のマトリクス光スイッチが得られる。入力ポート1から入射したランダム偏光は、それぞれの可変偏波回転部による偏波面回転角によって出力ポート1〜出力ポート4のいずれかにランダム偏光として結合する。入力ポート2〜入力ポート4についても同様である。試作結果によれば−45dBの遮断特性が得られた。
【0043】
ところで、空間伝播型のマトリクス光スイッチを構成する場合、入力ポートから出力ポートへの異なる全ての光路に対して軸ずれ、角度ずれをできるだけ起こさないように製作する必要がある。本実施例では偏光ビームスプリッタアレイを用いることで、光学的な軸調整をできるだけ減らしている。また、多段構成のマトリクス光スイッチを作製する場合、ある光スイッチユニットの外に逃がした漏れ光が別の光スイッチユニットに漏れ込むとマトリクス光スイッチ全体としての遮断特性が不足する。本実施例では遮光体を設けることで、ある光スイッチユニットの外に逃がした漏れ光は遮光体で吸収されるため、別の光スイッチユニットに漏れ込むのを防止することができる。溝側面を粗面としておけば、漏れ光は無秩序な方向に散乱されてしまうために、漏れ光が最終的に出力ポートに結合するのを防止できる。溝の形成方向を傾けておくと(例えば10度程度)、溝及び遮光体を通過した後の漏れ光の光路は元の光路と平行にはならないために、漏れ光が最終的に出力ポートに結合するのを防止できる。従って、溝側面を粗面にしたり、溝の形成方向を傾けることも有効である。
【0046】
【発明の効果】
本発明は、互いに平行の関係にある一対の偏光分離膜と、両偏光分離膜間に配置した可変偏波回転部を具備している簡単な構成の光スイッチユニットを用いているため、M×N型のマトリクス光スイッチが実現できる。偏光分離膜の消光比不足に起因する漏れ光は、遮光体や偏光子で遮断されるために、多段化しても他の光スイッチユニットに悪影響を及ぼす恐れは生じない。特に、多数の偏光分離膜をアレイ化しておくことで、マトリクス光スイッチ製造時の光軸調整などの手間を減らすことができる利点が生じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 光サーキュレータの一例を示す説明図。
【図2】 光サーキュレータの他の例を示す説明図。
【図3】 本発明で用いる光スイッチユニットの一例を示す説明図。
【図4】 光スイッチの一例を示す説明図。
【図5】 本発明に係るマトリクス光スイッチの一実施例を示す説明図。
【図6】 それに用いる偏光ビームスプリッタアレイの一例を示す説明図。
Claims (4)
- 互いに平行の関係にある一対の偏光分離膜と、両偏光分離膜間に配置した可変偏波回転部を具備している光スイッチユニットを、M×N個(但し、M、Nは4以上の整数)のマトリクスに配列した構成であって、前記可変偏波回転部は、±45度可変ファラデー回転子と1/2波長板とからなり、少なくとも前記マトリクスの一部は、偏光分離膜2層毎に不要光を遮断し且つ光学的に分離するための遮光体を設けた偏光分離膜アレイを複数個、可変偏波回転部を介して配列することにより形成されており、マトリクス外周の1辺に沿い偏光分離膜アレイの配列方向にM個の入力ポートを、またそれに隣接する1辺に沿いN個の出力ポートを配設しM×N型としたマトリクス光スイッチ。
- 1/2波長板は、位相差の温度特性と波長特性とを互いに打ち消し合う2枚の1/4波長板の組み合わせからなり、±45度可変ファラデー回転子は、ファラデー回転角の温度特性と波長特性とを互いに打ち消し合う2枚の22.5度ファラデー素子を組み合わせて構成されている請求項1記載のマトリクス光スイッチ。
- 偏光ビームスプリッタとポートとの間に、それぞれ光路分離合成用複屈折素子とその一方の光路に挿入された1/2波長板からなる偏光制御部を配置し、該偏光制御部でランダム偏光をP偏光又はS偏光に変換し、あるいはP偏光又はS偏光をランダム偏光に戻すようにして偏光無依存化した請求項1又は2記載のマトリクス光スイッチ。
- 偏光分離膜アレイは、断面形状が平行四辺形である柱状体が複数個偏光分離膜を介して接着され、更にその両端に断面形状が直角二等辺三角形である柱状体が偏光分離膜を介して接着されて全体が直方体状をなし、偏光分離膜2層毎に遮光体が設けられ、且つ少なくとも光の入出射面に反射防止膜を形成した構造をなしている請求項3記載のマトリクス光スイッチ。
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