JP3814079B2 - 熱転写インク製造方法、及びその熱転写インクを用いた熱転写インクリボン - Google Patents

熱転写インク製造方法、及びその熱転写インクを用いた熱転写インクリボン Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、サーマルヘッド等を用いる熱転写記録に有用な熱転写インクの製造方法、及びその熱転写インクを用いた熱転写インクリボンに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、コンピューターの端末などのプリンターの他、ワードプロセッサー、ファクシミリ、複写機等において、熱転写記録方式が広く用いられている。
【0003】
熱転写方式は、サーマルヘッド等の発熱素子を用い、所望の文字や図形を記録媒体に印字する記録法であり、熱転写方式に対応した感熱紙を用いる方式と、熱転写インクリボンを用いて普通紙に印字する方式に大別される。
【0004】
それらのうち、熱転写インクリボンを用いる方式は、熱溶融転写記録方式と称されており、熱転写インクリボンが有するインク層を紙等の被転写体(印刷媒体)に密着させ、インク層裏面に存する基材表面にサーマルヘッドを当接して発熱させ、インク層を熱溶融させ、被転写体に転写させるものである。
【0005】
上記のようなインク層を形成するための熱転写インクは、従来では、着色剤、樹脂結着剤、ワックスを溶剤中で混合・分散させて作成しており、その熱転写インクを基材上で数μmの厚みになるように塗布・乾燥し、熱転写インクリボンを製造している。
【0006】
このような熱転写インクリボンの場合、ワックスを含まない熱転写インクリボンに比べ、高耐久性を損うことなく熱転写性を向上させることができると言われている。
【0007】
しかしながら上記のような樹脂結着剤とワックスとを含有する熱転写インクでは、熱転写インクリボンの熱転写性は高いものの、印刷物の耐擦過性に劣り、耐久性が低いという問題があった。特に近年ではバーコードを鮮明に印刷できる熱転写インクリボンが求められているが、耐久性が低い場合、繰り返し読み取られる際にバーコードが摩擦され、バーコードが不鮮明になると読み取りミスが発生するという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、良好な転写性を損なうことなく、耐久性を向上させることができる熱転写インク、及びそのインクを用いた熱転写インクリボンを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、樹脂結着剤中にワックスが分散された熱転写インクでは、ワックス中に混入した着色剤が印刷物の耐久性を損なわせていることを見出した。
【0010】
即ち、従来技術のように、着色剤、樹脂結着剤、及びワックスを一緒に混合・攪拌した場合、攪拌の際に発生した熱によってワックスが一部分可溶化しており、そのため、着色剤がワックスによくなじむものの、混合・攪拌処理が終了した後に熱転写インクの温度が低下すると、可溶化していたワックスが着色剤を取り込んだ状態で析出してしまう。
【0011】
このような熱転写インクを用いて熱転写インクリボンを作成し、被転写体に印刷すると、樹脂結着成分中に分散されたワックスにより、印刷の際に良好な転写性が得られ、切れの良い印刷結果が得られるものの、印刷物表面に形成された転写層のワックス中にも着色剤が取り込まれているため、転写層を摩擦した場合、結着樹脂中に分散している着色剤は転写層中から脱落しないが、ワックス中に分散した着色剤がワックスと一緒に転写層から脱落し、被転写体表面を汚染し、その結果、印刷物の耐久性が低下していた。
【0012】
従って、耐久性を向上させるためには、転写層中に分散されたワックス中に着色剤が取り込まれていなければ良く、そのためには、熱転写インクのワックス中に着色剤を混入させなければよいことになる。
【0013】
本発明は上記知見に基いて創作されたものであり、請求項1記載の発明は、着色剤と、樹脂結着剤と、常温ではイソプロピルアルコールに不溶解なワックスとから成る熱転写インクを製造する熱転写インク製造方法であって、前記樹脂結着剤を溶解可能な溶剤であって、イソプロピルアルコールとトルエンとを混合した溶剤中に、前記樹脂結着剤と、前記着色剤とを混合し溶解液を作成し前記ワックスをイソプロピルアルコール中に投入し、攪拌して分散液作成し、前記溶解液と前記分散液とを冷却しながら混合攪拌し、前記熱転写インクを得ることを特徴とする熱転写インク製造方法である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の熱転写インク製造方法で製造された熱転写インクが基材上に塗布されて形成されたインク層を有することを特徴とする熱転写インクリボンである。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の熱転写インク製造方法であって、前記分散液を加熱して前記ワックスを溶解させ、冷却して前記ワックスを析出させた後、該分散液と前記分散液とを混合攪拌することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の熱転写インク製造方法であって、前記分散処理は、前記ワックスを液体中に投入し、冷却しながら攪拌することで行うことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の熱転写インク製造方法であって、前記分散処理は、前記ワックスを液体中に加熱して溶解させた後、冷却することで行うことを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の熱転写インク製造方法であって、前記溶解液と前記分散液との混合攪拌を冷却しながら行うことを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、熱転写インクであって、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の熱転写インク製造方法で製造されたことを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、熱転写インクリボンであって、請求項6記載の熱転写インクが基材上に塗布されて形成されたインク層を有することを特徴とする。
【0020】
上述したように、本発明の熱転写インクは、溶剤を用いて着色剤を樹脂結着剤中に分散し、溶解液を作成し、他方、ワックスを分散処理した分散液を作成しており、その溶解液と分散液とを混合攪拌し、熱転写インクを作成している。従って、ワックスと着色剤が別々に樹脂結着剤中に分散し、ワックス中に着色剤が取り込まれないようになっている。
【0021】
ワックスが分散処理された分散液と、着色剤を含み、結着樹脂が溶解された溶解液を混合・攪拌する際に、ワックスがその溶解液に溶解してしまうと、基材上に熱転写インクを塗布した後、乾燥してインク層を形成する際に、溶解したワックスが着色剤が取り込みながら析出してしまう。
【0022】
溶解液には樹脂結着剤を溶解するための溶剤が含まれているが、ワックスが溶解液に溶解しないようにするためには、樹脂結着成分を溶解させた溶剤に不溶解な種類のワックスを選択するとよい。
【0023】
また、樹脂結着剤と着色剤とを含有する溶解液と、ワックスが分散処理された分散液とを混合攪拌する際に、分散液中にワックスが溶解していると、混合攪拌後、温度低下したときにワックスが着色剤を取り込んで析出してしまう。
従って、ワックスは、分散液の作成に用いる液体や、溶解液を作成した溶剤に対し、少なくとも常温では不溶解なものを用いる必要がある。
【0024】
また、分散液を作成する分散処理が、ワックスを液体中に投入し、機械的に攪拌して行う場合には、攪拌によって発熱しワックスが溶解しないように、冷却しながら攪拌するとよい。
【0025】
他方、分散処理が、ワックスを液体中に投入し、加熱して溶解させた後、析出させる場合には、溶解液と混合攪拌する前に分散液を冷却しておく必要がある。この場合の分散処理は、機械的に攪拌するだけの分散処理よりもワックスの分散粒子の粒径が均一になって好ましい。
【0026】
図1(a)の符号1は、本発明の熱転写インクリボンの模式的な断面図であり、同図(b)はその部分拡大図である。
図1(a)、(b)に示すように、この熱転写インクリボン1では、その基材3上に、本発明の熱転写インクが塗布、乾燥され、インク層2が形成されている。このインク層2中では、樹脂結着剤4中に着色剤6とワックス7が分散されているが、ワックス7中には着色剤6は取り込まれていない。
【0027】
この熱転写インクリボン1を用いる場合、図1(c)に示すように、サーマルヘッド等を用いてインク層2を被転写体9上に転写させ、転写層12を形成し、印刷物10を得る。
【0028】
転写層12中では、熱転写インク層2中に分散されていたワックス7が一旦溶融し、再凝縮してワックス8が分散した状態で形成されるが、元々着色剤6が含まれておらず、樹脂結着剤4中の着色剤6は安定しているため、再凝縮したワックス8中には、着色剤6は取り込まれない。
【0029】
図2(a)の符号101は、従来技術の熱転写インクリボンの模式的な断面図であり、同図(b)はその部分拡大図である。
この熱転写インクリボンを作成する際の熱転写インクは、樹脂結着剤と着色剤とワックスとを一緒に混合・攪拌し、着色剤及びワックスを樹脂結着剤中に同時に分散させており、そのため、基材103上のインク層102の樹脂結着剤104中に、ワックス107と着色剤1061が分散しているだけでなく、ワックス107中にも着色剤1062が分散してしまっている。
【0030】
この熱転写インクリボン101を用い、バーコード等の印刷を行うと、図2(c)に示すように、インク層102の転写により、被転写体109上に転写層112が形成され、印刷物110が得られるが、熱転写インクリボン101中のワックス107には着色剤1062が取り込まれていたため、転写層112中で再凝縮したワックス108中にも着色剤1062が存在したままになり、転写層112を摩擦したときに、着色剤1062がワックス108と一緒に転写層112から脱落してしまう。
【0031】
上述したように、本発明の熱転写インク及び熱転写インクリボンでは、ワックス8が転写層12から脱落しても、その中には着色剤6が含まれていない点が従来技術とは異なっている。
【0032】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
樹脂結着剤としてポリアミド樹脂15重量部と、着色剤としてカーボン15重量部を用意し、イソプロピルアルコール(IPA)56重量部とトルエン(TOL)14重量部を混合した溶媒中に投入し、ミルで溶解・分散し、本発明の溶解液を作成した。
【0033】
その溶解液とは別に、カルナバワックス10重量部をIPA90重量部中に投入し、ミルで分散した分散液を作成した。
上述の溶解液及び分散液を2:3の比率で混合し、本発明の熱転写インクを作成した。
【0034】
(比較例1)
実施例1と同じ材料を同じ重量部で同時に混合・分散させ、熱転写インクを作成した。
【0035】
(比較例2)
カルナバワックス50重量部とカーボン50重量部をミルで混練し、チップ状の着色成分を作成した。
次に、その着色成分20重量部をIPA80重量部中に投入し、ミルで分散し、着色剤とワックスの混合液を作成した。
【0036】
それとは別に、IPA64重量部とTOL10重量部を混合した溶剤中にポリアミド樹脂20重量部を投入し、ミルで溶解して樹脂結着剤の希釈溶液を作成した。
その希釈溶液と上記の混合液とを1:1の割合で混ぜ、熱転写インクを作成した。
【0037】
(測定)
実施例1の熱転写インクリボンでは、ワックス中に着色剤が分散していないのに対し、比較例1では着色剤は樹脂結着剤とワックス中に分散している。また、比較例2では、着色剤は主としてワックス中に分散している。
【0038】
このような実施例1、比較例1、2の熱転写インクを、それぞれ樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して熱転写インクリボンを作成し、熱転写プリンタ(日本ノバック社(株)製)を用いてバーコードを被転写物(紙片)上に印刷し、その表面を観察することで転写性を評価した。
【0039】
次に、印刷したバーコード表面を、学振型摩擦堅牢試験機(テスター産業(株)製)を用い、荷重をかけた状態で所定回数摩擦し、摩擦前の印刷状態と比較して耐久性を評価した。
評価結果を下記表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003814079
【0041】
上記各熱転写インクリボンにはワックスが分散されているため、いずれも転写性は良好であるが、本発明の熱転写インクリボン(実施例1)は耐久性に優れているのに比べ、比較例1、2の熱転写インクリボンは耐久性に劣っている。
特に、比較例2の熱転写インクリボンは比較例1よりも耐久性に劣っており、ワックス中に含まれる着色剤の量が耐久性を決定していることが分かる。
【0042】
以上は、本発明の熱転写インクを用い、基材上にインク層が形成された熱転写インクリボンについて説明したが、本発明の熱転写インクは、インク層を形成するものに限定されるものではない。
【0043】
例えば、本発明の熱転写インクはトップコート層やプライマー層を形成するためにも有用である。要するに、本発明は、樹脂結着剤中に着色剤とワックスを分散させ熱転写インクを製造する場合に、樹脂結着剤中に予め着色剤を分散させておき、その後で溶解させないようにしながらワックスを分散させた熱転写インク、及びその熱転写インクが用いられた熱転写インクリボンを広く含む。
【0044】
なお、本発明の熱転写インクに用いることができる樹脂結着剤としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、EEA(エチレンエチルアクリル酸共重合体)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、テルペン、石油樹脂、SIS(スチレンイソプレンスチレン共重合体)、SBS(スチレンブタジエンスチレン共重合体)等の熱溶融性樹脂があり、それらの樹脂1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0045】
また、熱転写インクに含有させる着色剤には、熱溶融転写記録方式に従来から使用されている顔料や染料を広く使用することができる。例えば、カーボンブラック、ファストイエローG、ジスアゾイエローAAA、ブリリアントカーミン6B、フタロシアニンブルー、酸化チタン、ブロンズ、アルミニウム等の1種類を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
本発明に用いることができるワックスは低融点材料(一般に、熱転写プリンタには融点90℃以下の材料が用いられる。)であり、カルナバワックス、キャンデリラワックス、蜜蝋、パラフィンワックス等がある。
【0047】
上述したような樹脂結着剤を溶解させる溶剤は、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール等があり、それらを1種類で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。この溶剤はワックスを溶解させないものが望ましい。
【0048】
基材は、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、コンデンサーペーパー等を使用することができる。
また、本発明の熱転写インクには、可塑剤、分散剤、樹脂粒子等の添加物を適宜配合することもできる。
更に、基材の裏面には保護層を設け、その保護層側に密着するサーマルヘッドがスムーズ走行するようにすることもできる。
【0049】
【発明の効果】
転写性が良く、耐久性の高い熱転写インクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a):本発明の熱転写インクリボンの模式的な断面図
(b):その部分拡大図
(c):その熱転写インクリボンを用いた印刷物の状態を示す模式的な断面図
【図2】(a):従来技術の熱転写インクリボンの模式的な断面図
(b):その部分拡大図
(c):その熱転写インクリボンを用いた印刷物の状態を示す模式的な断面図
【符号の説明】
1……熱転写インクリボン 4……樹脂結着剤 6……着色剤 7……ワックス

Claims (2)

  1. 着色剤と、樹脂結着剤と、常温ではイソプロピルアルコールに不溶解なワックスとから成る熱転写インクを製造する熱転写インク製造方法であって、
    前記樹脂結着剤を溶解可能な溶剤であって、イソプロピルアルコールとトルエンとを混合した溶剤中に、前記樹脂結着剤と、前記着色剤とを混合し溶解液を作成し
    前記ワックスをイソプロピルアルコール中に投入し、攪拌して分散液作成し、
    前記溶解液と前記分散液とを冷却しながら混合攪拌し、前記熱転写インクを得ることを特徴とする熱転写インク製造方法。
  2. 請求項1記載の熱転写インク製造方法で製造された熱転写インクが基材上に塗布されて形成されたインク層を有することを特徴とする熱転写インクリボン。
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