JP3813082B2 - 垂直方向に敷設した漏洩ケーブルによる電波の供給システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、多層の建築物内に電波を供給する技術に関し、詳しくは、漏洩ケーブルを利用して各階に電波を供給することにより、該建築物内での電波の受信状態を改善する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビルなどの高層建築物では電波障害が生じ易い傾向がある。例えば、高層建築物の内部では外部からの電波が届き難い領域が発生することがあり、この様な領域では良好な受信状態を得ることができず電波障害が発生する。
【0003】
また、高層建築物の窓側では、遠方からの電波を拾い易いために、却って電波障害が生じる場合もある。これを、携帯情報端末を例にとって説明する。携帯情報端末は、近くの無線基地局との間で電波を送受信することによって無線回線を接続している。1つの基地局で接続可能な回線数には限りがあるので、無線基地局は複数設けられている。また、これら無線基地局を区別するために、各無線基地局には少しずつ異なった周波数の電波が割り当てられている。もとより、基地局に割り当てることのできる周波数には限りがあるので、遠方の基地局には同じ周波数の電波を割り当てることにより、所定周波数帯の電波を繰り返し使用している。この様に、同じ周波数の電波を使用する無線基地局が複数存在していても、電波が届く距離よりも遠方であれば、このことによる問題は生じない。ところが、高層建築物では周囲に電波を遮るものがないので電波が届き易く、そのため遠方の無線基地局からの電波を受信して、いわゆる混信が生じ易くなっている。加えて、高層建築物が存在する都市部では携帯情報端末の利用者が多いので無線基地局も密集して設けられており、いきおい、さほど遠方ではない地域に同じ周波数の電波が割り当てられてしまい勝ちで、その分だけこうした電波の混信が生じ易くなってる。
【0004】
このような高層建築物での電波障害対策として、高層建築物の各階に漏洩ケーブルを敷設することが行われている。漏洩ケーブルとは、トンネル内など電波の届かないところに電波を供給するためのケーブルであり、周囲に向かって、ちょうどアンテナの様に電波を放出する機能を有している。漏洩ケーブルを用いた電波障害対策の概要は次のようなものである。先ず、予め高層建築物の各階に漏洩ケーブルを敷設しておく。次いで、有線通信網などを利用して高層建築物まで電波を送信した後、漏洩ケーブルを用いて各階に電波を供給する。こうして供給された電波は、遠方からの電波に比べて充分に強いので、正しい電波だけを、電波障害を起こすことなく良好に受信することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、高層建築物の各階に漏洩ケーブルを敷設する作業はたいへんに手間がかかるという問題があった。特に近年の高層建築物には、天井裏も床下も防火区画で区切られていることが多く、防火区画を乗り越えて漏洩ケーブルを敷設する作業は容易な作業ではない。従って、たとえ建築物を建造しながらケーブルを敷設する場合であっても、建築物の各階に漏洩ケーブルを敷設する作業は労力を要するものとなる。また、既存の高層建築物に漏洩ケーブルを敷設する場合には、漏洩ケーブルはそれほど柔軟に屈曲するものではないという事情が更に加わって、既に設置されている機器や配線、配管を避けながらケーブルを敷設する作業は更に困難な作業となる。
【0006】
この発明は、従来技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、漏洩ケーブルを容易に敷設することができ、延いては簡便に電波障害対策を行うことを可能とする技術の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の電波の供給システムは次の構成を採用した。すなわち、複数階を有する高層ビルの各階に、漏洩ケーブルを用いて電波を供給する供給システムにおいて、前記電波によって供給すべきデータを受信する受信手段と、前記受信したデータを電波に変換し、前記漏洩ケーブルを介して前記高層ビルの各階に供給する電波供給手段とを備え、前記漏洩ケーブルが、前記高層ビルの各階をまたいで敷設されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記の電波の供給システムに対応する本発明の電波の供給方法は、複数階を有する高層ビルの各階に、漏洩ケーブルを用いて電波を供給する供給方法において、前記電波によって供給すべきデータを受信し、前記受信したデータを電波に変換した後、前記変換された電波を、前記高層ビルの各階をまたいで敷設されている前記漏洩ケーブルを介して前記高層ビルの各階に供給することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明は、漏洩ケーブルの敷設方法として把握することもできる。すなわち、上記の電波の供給システム、あるいは供給方法に対応する本発明の敷設方法は、複数階を有する高層ビルの各階に、電波を供給するための漏洩ケーブルを敷設する方法において、前記電波によって供給すべきデータを受信して該電波に変換する変換部を設置し、前記変換部で変換された電波を前記高層ビルの各階に供給するための前記漏洩ケーブルを、該高層ビルの各階をまたいで敷設することを特徴とする。
【0010】
かかる本発明の電波の供給システムおよび供給方法においては、高層ビルの各階に電波を供給するに際して、各階をまたいで敷設された漏洩ケーブルを介して電波を供給する。また、本発明の漏洩ケーブルの敷設方法においては、漏洩ケーブルを、高層ビルの各階をまたいで敷設する。通常、漏洩ケーブルはさほど柔軟ではないため、各階毎にケーブルを敷設することは容易ではないが、こうして階をまたいで敷設すれば漏洩ケーブルをほとんど曲げずに敷設することができるので、容易に敷設することができる。従って、既存の高層ビルに電波障害対策を行う場合であっても容易に電波障害対策を行うことが可能となる。
【0011】
こうした電波の供給システムあるいは敷設方法においては、前記高層ビルの複数箇所に漏洩ケーブルを敷設することとしても良い。複数箇所に漏洩ケーブルを敷設すれば、より広い範囲に電波を供給することができるので、電波障害対策をより確実に行うことが可能となる。
【0012】
加えて、データを電波に変換して漏洩ケーブルに供給する電波供給手段を複数設け、受信手段から、これら電波供給手段に受信したデータを供給して、各漏洩ケーブルに電波を出力することとしても良い。データは電波とは異なり、ほとんどエネルギを損失することなく送信することができる。従って、1つの電波供給手段から複数の漏洩ケーブルに一度に電波を出力する場合に比べて、複数の電波供給手段でデータを電波に変換してから、各々の漏洩ケーブルに電波を出力する方がエネルギの損失を抑制することができ、効率よく電波を供給することが可能となるので好ましい。
【0013】
また、漏洩ケーブルを敷設する位置としては、高層ビルの周縁部に敷設することが好ましい。これは、高層ビルの内部でも、外側に近い周縁部では外部からの電波を拾い易いために電波障害が生じ易い。従って、このような周縁部に漏洩ケーブルを敷設して電波を供給すれば、効果的に電波障害対策を行うことが可能となる。
【0014】
こうした高層ビルの周縁部に敷設する漏洩ケーブルとしては、電波の漏洩方向に指向性を有するケーブルを用いて、該電波の漏洩方向が前記高層ビルの内側を向くように敷設することとしてもよい。こうすれば、漏洩ケーブルから高層ビルの外側に放出される電波を抑制することができ、高層ビルの内部に効率よく電波を供給することができるので好ましい。
【0015】
加えて、高層ビルの内部には、電波の漏洩方向に指向性を持たない漏洩ケーブルを併せて敷設することとしても良い。このように、漏洩ケーブルを敷設する位置に応じて指向性の異なるケーブルを適切に使い分けて敷設すれば、高層ビルの各階に万遍なく電波を供給することが可能となるので好適である。
【0016】
また、高層ビルには、排水管や通気管などを通すために、通常、各階を貫くようにして伸びる縦通路が予め設けられている。そこで、この縦通路内に漏洩ケーブルを敷設することとしてもよい。既存の縦通路内に漏洩ケーブルを敷設すれば、漏洩ケーブルをたいへん簡便に敷設することができる。加えて、こうして漏洩ケーブルを簡便に敷設することができれば、電波障害対策を容易に行うことが可能となるので好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、本発明の実施例について説明する。
【0018】
A.全体構成:
図1は、本発明の電波供給システムを高層ビルに適用した様子を概念的に示した説明図である。図1では、高層ビル10は細線で示されている。以下では、高層ビル10内の携帯情報端末にビルの外部から電話回線を接続する場合を例にとって、高層ビル10の各階に電波を供給する様子について説明する。
【0019】
高層ビル10の外部の電話機から電話をかけると、呼び出し信号が電話回線網に出力され、電話回線網の交換機を介して屋内携帯情報端末装置130に送信される。屋内携帯情報端末装置130は、同時に複数の携帯情報端末と情報をやり取りして、それぞれの携帯情報端末を電話回線網に接続する機能を有している。電話回線網の交換機と屋内携帯情報端末装置130との間は光通信ケーブル140で接続されており、同時に多数の複数の携帯情報端末の通話信号を送受信することができる。
【0020】
室内携帯情報端末装置130には、光通信ケーブル120を介して、複数の光−電気変換器110に接続されている。図1に示されているように、各々の光−電気変換器110には漏洩ケーブル100が接続されており、各々の漏洩ケーブル100は、高層ビル10の各階を貫くようにして縦方向に敷設されている。
【0021】
屋内携帯情報端末装置130は、交換機からの呼び出し信号を受信すると、光通信ケーブル120を介して、光−電気変換器110に供給する。各変換器は、受け取った信号を所定周波数の電波に変換した後、それぞれの漏洩ケーブル100に出力する。尚、図1では、それぞれの光−電気変換器110には1本ずつ漏洩ケーブル110が接続され、それぞれのケーブルに電波を出力するものとしているが、もちろん、1つの光−電気変換器110から複数本の漏洩ケーブル100に電波を出力することもできる。もっとも、複数本の漏洩ケーブル100に電波を出力すれば、それだけ高出力の光−電気変換器110が必要となることから、図示するように、1つの光−電気変換器110から電力を出力する漏洩ケーブル100は1,2本程度としておき、その代わりに光−電気変換器110を多数設けることが好ましい。こうすれば、低出力で小型の変換器を用いることが可能となる。
【0022】
また、光通信ケーブル120を用いれば、ほとんどエネルギの損失無く信号を伝えることができる。従って、複数の光−電気変換器110まで光通信ケーブル120で信号を伝達し、各変換器で電波に変換して漏洩ケーブル100に出力すれば、高出力の光−電気変換器110からそれぞれの漏洩ケーブルに一度に電波を出力する場合よりも、効率よく電波を供給することができる。
【0023】
こうして、それぞれの光−電気変換器110から出力された電波は、漏洩ケーブル100内をケーブルの他端に向かって伝搬していくとともに、漏洩ケーブル100からは、周囲に向かって少しずつ電波が放出される。高層ビル10内の携帯情報端末は、このように漏洩ケーブル100から周囲に放出された電波を受信すると所定の着信音を鳴らし、着信音に応えて携帯情報端末の所有者が所定の操作を行うと、携帯情報端末から応答信号が電波に載って出力される。出力された応答信号は漏洩ケーブル100を経由して、光−電気変換器110で光信号に変換され、光通信ケーブル120、屋内携帯情報端末装置130を介して電話回線網に接続される。こうして、高層ビル10内の携帯情報端末とビル外の電話機との間で一旦、電話回線が接続されると、以降は、ビル外の電話機あるいは携帯情報端末のいずれかが回線を切断するまで通話可能に回線が維持される。
【0024】
比較のために、従来から一般的に用いられている電波供給システムを、高層ビル10に適用した様子を図2に示している。図1と同様に、高層ビル10は細線で示している。一般的な電波供給システムでは、漏洩ケーブルは各階の天井裏に敷設されている。より詳しくは、各階の天井裏に光−電気変換器110が設けられ、それぞれの変換器は光通信ケーブル120によって屋内携帯情報端末装置130と接続されている。屋内携帯情報端末装置130から送信された信号は、光通信ケーブル120を介してそれぞれの光−電気変換器110に伝達され、光−電気変換器110で電波に変換されて、漏洩ケーブル100に出力される。高層ビル10内の携帯情報端末は、各階の天井裏に敷設された漏洩ケーブル100から放出される電波を受信するとともに、漏洩ケーブル100に向かって電波を出力して回線を接続する。尚、漏洩ケーブル100を天井裏ではなく床下に敷設することも物理的には可能であるが、法律上の問題から、漏洩ケーブル100を床下に敷設することは通常は行われていない。
【0025】
図1と図2とを比較すれば明らかなように、高層ビル10の各階を貫いて漏洩ケーブル100を敷設すれば、各階の天井裏に敷設する場合よりも、電波の供給システム全体を簡素な構造とすることができる。また、漏洩ケーブル100は、通常、数cmから10cm程度の直径を有する中空の導体管である。こうした構造に起因して、漏洩ケーブル100はそれほど柔軟性に富んでいるわけではなく、ケーブルを天井裏に敷設することは必ずしも容易なことではない。これを図3を参照しながら説明する。
【0026】
図3は、高層ビル10を、天井裏の部分で地面と水平な面で切断した様子を模式的に示した断面図である。図3(a)は、図1に示した本実施例の電波供給システムを示し、図3(b)は、比較のために図2に示した通常の電波供給システムを示している。ビルの外部から来る電波の影響は窓側がもっとも受け易いので、本来ならば、漏洩ケーブル100はできるだけ窓側に寄せて敷設することが望ましい。ところが、漏洩ケーブル100は、それほど柔軟性に富んではいないためビルの窓側に寄せて敷設することは容易ではなく、図3(b)の白抜きの矢印で示したように、ビルの角部にケーブルを敷設できない部分が発生してしまう。
【0027】
これに対して、漏洩ケーブル100を縦方向に敷設する本実施例の電波供給システムでは、図3(a)に示すように、ケーブルを大きく曲げることなく高層ビル10の窓側に寄せて敷設することができるので、ケーブルを容易に敷設することができる。
【0028】
また、電波を効率よく供給するためには、電波の減衰を抑えるために漏洩ケーブル100をできるだけ天井裏に近づけて敷設することが望ましい。しかし、天井裏は必ずしも平坦ではなく段差や凹凸などがあるために、さほど柔軟性のない漏洩ケーブル100を敷設しようとすると、どうしても天井裏と漏洩ケーブル100との間に隙間が生じてしまう。
【0029】
これに対して、本実施例の電波供給システムのように漏洩ケーブル100を縦方向に敷設すれば、このような問題が生じることはない。特に、高層ビルには、排水管などを通すために、縦方向に伸びる通路が予め複数本設けられている。このような通路は、シャフト150と呼ばれることがある。図3(a)に示すように、こうしたシャフト150内に漏洩ケーブル100を敷設すれば、ケーブルの敷設作業はたいへん容易なものとなる。
【0030】
漏洩ケーブル100を縦方向に敷設する本実施例の電波供給システムでは、次のような利点もある。高層ビル10の内部は、通常、防火壁によって複数の防火区画に区切られており、仮にある区画で火災が発生しても他の区画は延焼しないような構造となっている。図3に示した破線は、こうした防火壁160を模式的に示したものである。防火壁160は天井裏にも設けられているので、電波障害対策として天井裏に漏洩ケーブル100を敷設するためには、防火壁160に穴を空けてケーブルを敷設しなければならない。図3(b)中では、防火壁160に穴を設けた箇所を斜線付きの矢印で示している。いざ火災が発生した時に、こうした箇所から火が回ったのでは防火壁160を設けた意味が無くなるので、防火壁160に穴を空けた箇所には、きちんと防火対策を施しておく必要がある。このことから明らかなように、天井裏に漏洩ケーブル100を敷設するためには、防火壁160に穴を空ける作業が必要になるだけでなく、空けた穴に防火対策を施すための作業も必要となるので、ケーブルの敷設作業はたいへんに手間のかかる作業となってしまう。
【0031】
これに対して、漏洩ケーブル100を縦方向に敷設する本実施例の電波供給システムでは、図3(a)に示すように、防火壁160に穴を空けることなくケーブルを敷設することができるので、たいへんに簡便に漏洩ケーブル100を敷設することができる。
【0032】
図4は、高層ビル10の垂直方向の断面を取って、ある階での室内の様子を概念的に示した説明図である。図4(a)は、本実施例の電波供給システムを適用した場合を示し、図4(b)は、従来の一般的な電波供給システムを適用した場合を示している。図中では、漏洩ケーブル100は斜線を付して表示されている。また、漏洩ケーブル100から出ている矢印は、ケーブルから放出される電波を模式的に示したものである。図4(b)に示すように、一般的な電波供給システムでは電波は天井裏から放出されるので、床面に近づくに従って電波は減衰してしまう。すなわち、室内では高さ方向に電波の強度が不均一に分布していることになる。
【0033】
これに対して、本実施例の電波供給システムでは、漏洩ケーブル100はシャフト150の内を縦方向に設けられているので、電波の強度が高さ方向の不均一になることがなく、均一な電波強度を得ることができるという利点もある。尚、図4(b)では、図示が煩雑となることを避けるために、シャフトの表示を省略している。
【0034】
以上の説明は、新たに建設した高層ビル10に漏洩ケーブル100を敷設して電波障害対策を行うものとして説明したが、既存の高層ビル10の電波障害対策を施す場合にも、ケーブルを縦方向の敷設する本実施例の電波供給システムによれば容易に対策を行うことができる。すなわち、本実施例の電波供給システムによれば、漏洩ケーブル100を縦方向に敷設するので、防火壁160に穴を空けることなく敷設することができる。また、高層ビルには通常、シャフトと呼ばれる縦穴が複数設けられているので、シャフト内に縦方向の漏洩ケーブル100を敷設することで、極めて容易に敷設作業を行うことができる。
【0035】
また、かかる電波の供給システムは、ホテルや百貨店などのように、室内の美観を重視するようなビルにも好適に適用することができる。すなわち、天井裏に漏洩ケーブルを敷設するシステムでは、電波状況の悪い部分には室内アンテナを取り付けて電波を供給する必要がある。これは、前述したように漏洩ケーブル100がそれほど柔軟なものではないために、天井裏に自由に敷設することができず、いきおい電波強度の低い部分が発生し易いためである。
【0036】
これに対して、ビル内に複数設けられているシャフト150に漏洩ケーブル100を敷設することとすれば、各階のフロアに万遍なく電波を供給することができるので、室内アンテナを取り付ける必要が無い。従って、天井に取り付けられた室内アンテナによって美観を損なうおそれがないので好ましい。また、シャフト150内に漏洩ケーブル100を縦に敷設するシステムでは、室内の改修を行う場合にも、漏洩ケーブルを敷設し直したり、室内アンテナの設置位置を変更する必要がないという利点も得られる。
【0037】
B.変形例:
上述した本実施例の電波供給システムには種々の変形例が存在する。以下、これら変形例について説明する。
【0038】
B−1.第1の変形例:
図5は、第1の変形例の電波供給システムを概念的に示した説明図である。前述した実施例では、漏洩ケーブル100は、外部からの電波が届き易い窓側に敷設するものとして説明したが、もちろん図5に示すように、高層ビル10の内側にも、必要に応じて漏洩ケーブル100を敷設することとしても良い。例えば、エレベータの通路に漏洩ケーブル100を縦に敷設すれば、エレベータの中でも確実に電波を送受信して、快適に通話を行うことができる。
【0039】
こうして窓側に敷設した漏洩ケーブル100に加えて、ビルの内側にもケーブルを敷設する場合、窓側に敷設する漏洩ケーブル100と、内側に敷設する漏洩ケーブル100とで、指向性の異なるケーブルを使い分けることとしても良い。図6は、高層ビル10を、地面と水平な面で切断したときの断面図である。図6(a)に示すように、ビルの角部には、周囲の約1/4の範囲に電波を放出する漏洩ケーブル100aを敷設し、ビルの壁面には周囲の約半分に電波を放出する漏洩ケーブル100bを、エレベータ通路のようなビルの内側には、周囲の全周に電波を放出する漏洩ケーブル100cを敷設することとしても良い。もちろん、図6(b)に示すように、複数の漏洩ケーブル100bを適切な指向性が得られるように組み合わせて、ビルの中央部付近に敷設しても構わない。このように、漏洩ケーブル100を敷設する場所に応じて適切な指向性の漏洩ケーブルを使い分けてやれば、ビル内に万遍なく且つ効率よく電波を供給することが可能となる。
【0040】
B−2.第2の変形例:
図7は、第2の変形例の電波供給システムを概念的に示した説明図である。前述した実施例では、高層ビル10の最上階から最下階まで1本の漏洩ケーブル100を敷設していたが、1本のケーブルで上から下まで全階を貫く必要はなく、図7に示すように、複数に分割してケーブルを敷設することとしても良い。例えば、最下階から途中階までは1本の漏洩ケーブルを敷設して電波を供給し、途中階に光−電気変換器110を設けて、途中階からから最上階までは別のケーブルを敷設することとしても良い。ビルが高層になるほど漏洩ケーブル100も長くなるので、最上階から最下階までを1本の漏洩ケーブル100で電波を供給するためには高出力の光−電気変換器110が必要となる。
【0041】
これに対して、図7に示したように、複数の漏洩ケーブル100に分割して電波を供給してやれば、小型で低出力の光−電気変換器110を用いて電波を供給することが可能となるので好適である。
【0042】
B−3.第3の変形例:
また、漏洩ケーブル100を縦方向に敷設するとともに、必要に応じて天井裏にも漏洩ケーブル100を敷設することとしても良い。図8は、この様な第3の変形例の電波供給システムを概念的に示した説明図である。高層ビル10中で、特定の領域だけ電波の受信状態を特に改善したい場合、あるいは何らかの理由で特に電波の届き難い領域がある場合などには、縦方向に敷設した漏洩ケーブル100の途中に分配器170を設け、電波を供給したい領域の天井裏に分配器170から漏洩ケーブル100を水平に敷設することとしても良い。必要に応じて一部領域に敷設するのであれば、漏洩ケーブルを水平方向に敷設しても防火壁160に穴を空けずに敷設することが可能であり、通常の漏洩ケーブルの敷設作業に比べて簡単に敷設することができる。こうして、縦方向に敷設する漏洩ケーブル100と、横方向に敷設する漏洩ケーブル100とを適宜組み合わせれば、高層ビル10の一部の階のみに電波を供給する場合にも、簡便に供給することが可能となる。
【0043】
B−4.第4の変形例:
上述した各種実施例はいずれも、高層ビル10までは、光通信ケーブル140などの有線通信によって信号あるいはデータが送られてくるものとして説明したが、これに限らず、無線通信によって信号あるいはデータを送信することとしてもよい。図9は、このような第4の変形例の電波供給システムを概念的に示した説明図である。高層ビル10の屋上に無線通信の電波を受けるための専用アンテナ200を設けておき、電波障害の発生し難い周波数の電波、例えば通信衛星からの電波や、テレビ放送の電波などを受信すれば、電波障害を起こすことなく確実に電波を受信することができる。次いで、こうして受信した電波を、光信号あるいは電気信号に変換して、通信ケーブル190を介して電気変換器180に供給する。電気変換器180は、光信号あるいは電気信号を電波に変換した後、電気変換器180にそれぞれ接続された漏洩ケーブル100に出力する。
【0044】
こうした第4の変形例の電波供給システムによれば、高層ビル10までを無線通信によって信号あるいはデータを伝達することができ、光通信ケーブル140などの専用ケーブルを敷設する必要がない。専用アンテナ200でテレビ放送の電波を受信して、漏洩ケーブル100で各階に電波を供給すれば、室内アンテナを用いても充分に良好なテレビ画像を得ることができるので、テレビ信号用のケーブルを敷設する作業を廃止することも可能となる。
【0045】
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
【0046】
例えば、上述した各種実施例の電波供給システムは、地上の構造物に限らず、地下の構造物や、例えば大型客船などの海上の構造物にも好適に適用することができる。これら地上の構造物、地下の構造物、海上の構造物が、建造中の構造物であっても既存の構造物であっても、上述した各種実施例の電波供給システムは好適に適用することができる。
【0047】
また、上述した実施例では、高層ビル10の内部の携帯情報端末との間で、双方向に電波を送受信する場合を例にとって説明したが、もちろん、本実施例の電波供給システムは、双方向通信に限定されるものではない。例えば、テレビ放送のような単方向通信の信号を、無線通信あるいは有線通信を問わずに受信してビル内に供給する場合にも好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の電波供給システムの構成を概念的に示した説明図である。
【図2】従来から一般的に採用されている電波供給システムの構成を概念的に示した説明図である。
【図3】高層ビルを、天井裏の部分で地面と水平な面で切断したときの断面図である。
【図4】高層ビルのある階で垂直方向の断面を取って、室内の様子を概念的に示した説明図である。
【図5】第1の変形例の電波供給システムの構成を概念的に示した説明図である。
【図6】漏洩ケーブルの敷設位置に応じて適切な指向性を有するケーブルを使い分けている様子を示す説明図である。
【図7】第2の変形例の電波供給システムの構成を概念的に示した説明図である。
【図8】第3の変形例の電波供給システムの構成を概念的に示した説明図である。
【図9】第4の変形例の電波供給システムの構成を概念的に示した説明図である。
【符号の説明】
100…漏洩ケーブル
110…光−電気変換器
120…光通信ケーブル
130…屋内携帯情報端末装置
140…光通信ケーブル
150…シャフト
160…防火壁
170…分配器
180…電気変換器
190…通信ケーブル
200…専用アンテナ

Claims (6)

  1. 複数階を有する高層ビルの各階に、漏洩ケーブルを用いて電波を供給する供給システムにおいて、
    前記電波によって供給すべきデータを受信する受信手段と、
    前記受信したデータを電波に変換し、前記漏洩ケーブルを介して前記高層ビルの各階に供給すると共に、前記高層ビルの最下階および途中階に複数配置される電波供給手段とを備え、
    前記漏洩ケーブル、前記高層ビルの窓側周縁部の複数箇所に各階をまたいで敷設されていると共に電波の漏洩方向が前記高層ビル内側を向く指向性を有する漏洩ケーブルと、前記高層ビルの中央部付近において各階をまたいで敷設されていると共に電波の漏洩方向に指向性を有しない漏洩ケーブルとを備えることを特徴とする供給システム。
  2. 請求項1記載の電波の供給システムであって、
    記受信手段は、前記受信したデータを前記複数の電波供給手段に分配する手段である供給システム。
  3. 請求項1記載の電波の供給システムであって、
    前記漏洩ケーブルは、前記高層ビルの各階を貫いて予め設けられている縦通路の内部に敷設されたことを特徴とする供給システム。
  4. 複数階を有する高層ビルの各階に、漏洩ケーブルを用いて電波を供給する供給方法において、
    前記電波によって供給すべきデータを受信し、
    前記受信したデータを前記高層ビルの最下階および途中階の複数箇所において電波に変換した後、
    前記変換された電波を、前記高層ビルの窓側周縁部の複数箇所に各階をまたいで敷設されていると共に電波の漏洩方向が前記高層ビルの内側を向く漏洩ケーブルと、前記高層ビルの中央部付近において各階をまたいで敷設されていると共に電波の漏洩方向に指向性を有しない漏洩ケーブルを介して前記高層ビルの各階に供給することを特徴とする電波の供給方法。
  5. 複数階を有する高層ビルの各階に、電波を供給するための漏洩ケーブルを敷設する方法において、
    前記電波によって供給すべきデータを受信して該電波に変換する変換部を前記高層ビルの最下階および途中階に複数設置し、
    前記変換部で変換された電波を前記高層ビルの各階に供給するための前記漏洩ケーブルであって、電波の漏洩方向に指向性を有する漏洩ケーブルを電波の漏洩方向が前記高層ビルの内側を向くようにして前記高層ビルの窓側周縁部の複数箇所に各階をまたいで敷設し、電波の漏洩方向に指向性を有しない漏洩ケーブルを前記高層ビルの中央部に各階をまたいで敷設することを特徴とする敷設方法。
  6. 請求項5記載の敷設方法であって、
    前記漏洩ケーブルを敷設するに際しては、前記高層ビルの各階を貫いて予め設けられている縦通路の内部に敷設することを特徴とする敷設方法。
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