JP3812910B2 - 汚染土壌の浄化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚染土壌の浄化方法に関するものであり、詳しくは、原油または重油と海水によって汚染された土壌の効率的な浄化を可能にし、しかも、汚染土壌から油分および塩分をそれぞれ別個に分離して回収し得る汚染土壌の浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、油田やタンカーの事故による流出原油で汚染された海岸近くの土壌、または、製油所の火災によって原油または重油と消火用海水で汚染された土壌などの処理は、出来る限りの石油分を回収するものの、最終的には、揮発性成分の蒸発および残存分の風化に依存していたため、揮発性成分が大気中に拡散して大気汚染の原因となること、風化するまでに長い年月を必要とする等の不都合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、炭化水素汚染土壌の浄化方法として、炭化水素に対する分解機能を有する微生物を利用したバイオレメデーション法が急速に発展している。しかしながら、斯かるバイオレメデーション法においては、微生物の炭化水素分解速度が遅く、また、高い濃度の塩分が微生物にとって有害である。そこで、上記の様な汚染土壌の浄化においては、予め、簡単な操作で石油分および塩分を除去した後にバイオレメデーション法を適用したならば、一層効率的に汚染土壌を浄化することが可能である。
【0004】
本発明は、上記の観点から種々検討の結果なされたものであり、その目的は、原油または重油と海水によって汚染された土壌の効率的な浄化を可能にし、しかも、汚染土壌から油分および塩分をそれぞれ別個に分離して回収し得る汚染土壌の浄化方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、原油または重油と海水によって汚染された土壌を次の(A)〜(D)の工程により浄化することを特徴とする汚染土壌の浄化方法に存する。
(A)加熱手段が備えられた解砕槽を使用し、原油または重油および海水を含む原料土壌を所定粒径以下に解砕するとともに50〜100℃に加熱することにより、原料土壌の粘度をポンプ輸送が可能な粘度に低下させる解砕工程。
(B)混合撹拌手段と加熱手段が備えられた洗浄槽としての処理槽を使用し、前記解砕工程で処理した原料土壌および溶剤としての灯油を50〜100℃に加熱しつつ混合撹拌することにより、原料土壌中の原油または重油を灯油に溶解させた後、静置することによって原油または重油を含む灯油層と原料土壌層とに分離し、次いで、原油または重油を含む分離された灯油を抜き出す灯油洗浄工程。
(C)混合撹拌手段と加熱手段が備えられた洗浄槽としての処理槽を使用し、前記灯油洗浄工程で処理した原料土壌を洗浄水とともに50〜100℃に加熱しつつ混合撹拌することにより、原料土壌中の塩分を洗浄水に溶解させた後、静置することによって塩分を含む洗浄水層と原料土壌層とに分離し、次いで、塩分を含む分離された洗浄水を抜き出す温水洗浄工程。
(D)遠心脱水手段が備えられた脱水槽としての処理槽を使用し、前記温水洗浄工程で処理した原料土壌を脱水処理する脱水工程。
【0006】
また、上記の方法においては、その処理コストを一層低減するため、混合撹拌手段、加熱手段および遠心脱水手段が備えられた一つの処理槽を洗浄槽および脱水槽として使用し、灯油洗浄工程、温水洗浄工程および脱水工程を行うことが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係る汚染土壌の浄化方法の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る汚染土壌の浄化方法による処理工程の一例を示す系統図である。以下、汚染土壌の浄化方法を「浄化方法」と略記する。
【0008】
本発明の浄化方法は、原油または重油と海水によって汚染された土壌を浄化する方法であって、以下に説明する解砕工程、灯油洗浄工程、温水洗浄工程および脱水工程の4つの工程を含む。汚染土壌としては、例えば、海岸にある油田の事故により、流出した原油(以下、石油と言う。)と消火用海水によって汚染された土壌が挙げられる。
【0009】
(A)解砕工程:
解砕工程においては、加熱手段が備えられた解砕槽(2)を使用し、石油および海水を含む原料土壌を所定粒径以下に解砕するとともに50〜100℃に加熱することにより、原料土壌の粘度をポンプ輸送が可能な粘度に低下させる。
【0010】
原料土壌の概略組成は、例えば、全体を100としたとき、次の通りである。
【0011】
【表1】
石油分:20〜40重量%
塩分 : 9〜14重量%
水分 : 3重量%
土壌 :68〜43重量%
【0012】
上記の原料土壌は、流動性が少ないため、先ず、ダンプカーなどで貯留設備である土壌ピット(1)に回収する。次いで、ショベルローダー等の搬入手段(11)を使用し、土壌ピット(1)から解砕槽(2)に投入する。解砕槽(2)はホッパー形状であり、その底部には、回転式の解砕機が付設されている。また、解砕槽(2)には、ジャケット(加熱手段)が備えられており、スチーム又は温水などの熱源(S)を使用して加熱可能に構成されている。
【0013】
解砕槽(2)においては、油分および塩分の抽出効果を高め且つポンプ輸送を可能にするため、投入された原料土壌を例えば10ミリ以下に細かく砕くことが必要である。同時に、更に流動性を高めるため、原料土壌を65〜75℃まで予熱し、その粘度を低下させる。なお、解砕工程においては、必要に応じ、原料土壌の粘度を調整するため、解砕槽(2)に対し、灯油タンク(3)の灯油を管路(31)を通じて注入する。
【0014】
(B)灯油洗浄工程:
灯油洗浄工程においては、混合撹拌手段と加熱手段が備えられた洗浄槽としての洗浄機(4)の処理槽(40)を使用し、上記の解砕工程で処理した原料土壌および溶剤としての灯油を50〜100℃に加熱しつつ混合撹拌することにより、原料土壌中の石油を灯油に溶解させた後、静置することによって石油を含む灯油層と原料土壌層とに分離し、次いで、石油を含む分離された灯油を抜き出す。
【0015】
先ず、解砕工程で処理したスラリー状の原料土壌は、解砕槽(2)の下部に直結されたスクリュウ型のスラッジポンプ(22)を使用し、管路(21)を通じて洗浄機(4)へ供給する。洗浄機(4)としては、原料土壌と溶剤を撹拌混合し得る構造であるならば、各種の装置を使用することが出来る。
【0016】
洗浄機(4)としては、混合撹拌効果を高め且つ洗浄した土壌の円滑な排出を行うため、例えば、撹拌羽根(撹拌混合手段)が備えられた回転バスケット型の処理槽(40)を傾斜装置(41)に搭載することにより、処理槽(40)を傾転可能に構成した装置が好適である。処理槽(40)は、実質的に容器を構成するケーシングの内側に配置された内槽であり、斯かる処理槽(40)のケーシング外周部にはジャケット(加熱手段)が付設されており、スチームその他の熱媒(S)で加熱可能に構成されている。
【0017】
土壌の投入に先行し、灯油ポンプ(32)を含む管路(31)を通じ、灯油タンク(3)から処理槽(40)に灯油を供給し、処理槽(40)を囲繞しているケーシング内に灯油を必要量張り込む。灯油の必要量は、土壌100に対して重量比で30前後が最適である。これより少ない場合は撹拌効果および溶媒力の点で問題があり実用的でない。
【0018】
処理槽(40)に投入された土壌は、最初に溶剤である灯油によって洗浄され、土壌に付着している石油分を灯油中に溶解させる。抽出用の溶剤としては灯油が最適である。灯油を使用する理由は、例えば、灯油より軽質のナフサでは溶解力はあるが揮発性が高く引火する恐れがあるため、安全上好ましくないからである。また、灯油より重質の軽油などでは溶解力が小さく実用に適さないからである。
【0019】
灯油洗浄の際は、ジャケットを使用し、灯油および土壌を65〜75℃まで加熱する。そして、傾斜装置(41)によって処理槽(40)を水平面に対して約30度傾けて回転する。斯かる処理槽(40)の傾斜回転により、比重の重たい土壌成分も処理槽(40)内で揺動するため、効率良く撹拌して灯油と石油分を十分に接触させることが出来、石油分を短時間で溶解することが出来る。この際、循環ポンプ(47)が備えられた循環路(46)を使用し、灯油を循環させると一層効率よく溶解することが出来る。
【0020】
上記の様に、例えば、約30分混合撹拌した後に、傾斜装置(41)の作動により処理槽(40)を水平に戻して静置し、石油を含む灯油層と原料土壌層とに分離する。そして、循環路(46)の循環ポンプ(47)を使用し、循環路(46)から分岐する管路(42)を通じ、灯油層を構成する灯油溶液を処理槽(40)の底部から抜き出して回収油タンク(5)に回収する。なお、回収油タンク(5)内の回収油は、タンクローリー(51)によって製油所に移送され、通常の原油と同様に常圧蒸留装置で処理され、石油製品として回収される。
【0021】
(C)温水洗浄工程:
温水洗浄工程においては、混合撹拌手段と加熱手段が備えられた洗浄槽としての処理槽(40)を使用し、前記灯油洗浄工程で処理した原料土壌を洗浄水とともに50〜100℃に加熱しつつ混合撹拌することにより、原料土壌中の塩分を洗浄水に溶解させた後、静置することによって塩分を含む洗浄水層と原料土壌層とに分離し、次いで、塩分を含む分離された洗浄水を抜き出す。
【0022】
温水洗浄工程においては、洗浄機(4)の処理槽(40)を洗浄槽として使用する。すなわち、灯油洗浄後の土壌を収容した処理槽(40)に対し、先ず、洗浄水ポンプ(62)が備えられた管路(61)を通じ、洗浄水タンク(6)に予め貯留された洗浄水を供給し、処理槽(40)のケーシング内に洗浄水を張り込む。その際、ジャケットにスチームを通して洗浄水を約70℃に加熱する。洗浄水の量は、土壌100に対して洗浄水100が望ましい。
【0023】
次いで、傾斜装置(41)により処理槽(40)を傾斜させ、土壌を揺動しながら撹拌混合し、土壌中の塩分を除去する。温水洗浄中も、ジャケットにより処理槽(40)内を約70℃に維持する。これは土壌に残存している油分を温水中に移動し、残存油分を出来るだけ少なくするためである。また、温水洗浄中は、循環路(46)の循環ポンプ(47)を駆動することにより、温水と土壌の混合効率をより一層高めることが出来る。
【0024】
上記の温水洗浄を例えば約20分行った後に、処理槽(40)を水平に戻して静置し、比重差を利用して液面に油分を浮上させる。次いで、傾斜装置(41)の作動により処理槽(40)を傾け、液面に浮上した油分を流路(45)を通じて油水分離槽(9)に移送する。油水分離槽(9)は、内部が2槽構造になされ、一方の槽に貯留された上層部分の回収油分を他方の層にオーバーフローさせることにより、油と水の分離を行う槽である。
【0025】
油水分離槽(9)で回収された回収油は、回収油ポンプ(92)が備えられた管路(91)を通じて前記の回収油タンク(5)に回収する。また、処理槽(40)のケーシング内に残った温水は、管路(46)中の循環ポンプ(47)を使用して抜き出し、管路(46)から分岐する管路(43)を通じて回収水タンク(7)に回収する。
【0026】
上記の様な温水洗浄により灯油を含む残存油分を除去した後、続いて、塩分除去を主目的とした2回目の温水洗浄を行う。洗浄操作は、上記の1回目の洗浄と略同じであるが、表面浮上油の回収を必要としないため、温水の傾斜排出は行う必要がない。すなわち、上記と同様の撹拌洗浄によって塩分を温水中に溶解させた後、循環ポンプ(47)を使用し、管路(43)を通じて回収水タンク(7)に洗浄排水を抜き出す。
【0027】
なお、回収水中には塩分が相当量溶解しており、場合によっては塩分を回収するため、回収水ポンプが備えられた管路(71)を通じ、回収した排水を回収水タンク(7)から塩分回収装置(72)に供給する。
【0028】
(D)脱水工程:
上記の各工程を経ることによって油分および塩分をそれぞれ所定濃度以下まで除去した後、脱水操作を行うことにより、土壌に付着している洗浄水を除去する。すなわち、脱水工程においては、遠心脱水手段が備えられた脱水槽としての洗浄機(4)の処理槽(40)を使用し、前記温水洗浄工程で処理した原料土壌を脱水処理する。
【0029】
処理槽(40)は、その内周面に細かいメッシュの金網が貼着された回転バスケットであり、斯かる処理槽(40)のメッシュ構造および処理槽(40)をその軸線周りに高速回転させる駆動機構が遠心脱水手段を構成している。従って、上記の洗浄工程によって土壌が残存した処理槽(40)を所定速度で回転することにより、土壌に付着している洗浄水を遠心効果で処理槽(40)の半径方向外向きに移動させ、処理槽(40)の金網を通して外槽であるケーシング側に補集することが出来る。
【0030】
補集した水は、上記と同様に、管路(43)を通じて回収水タンク(7)に取り出す。そして、脱水運転を終了した後、傾斜装置(41)によって処理槽(40)を傾転させ、処理槽(40)内の概ね水分が除去された土壌を排出する。また、処理槽(40)からの排出においては、コンベヤ等の搬送機構(44)を使用し、浄化された土壌を回収ヤード(8)に搬出する。
【0031】
本発明の浄化方法においては、上記4工程により、比較的簡単な操作で且つ短い時間で土壌中の石油分と塩分を概ね除去することが出来、バイオレメデーション法などの前処理として本発明の浄化方法を実施した場合、汚染土壌の浄化を一層効率的に行うことが出来る。また、本発明の浄化方法では、汚染土壌から油分および塩分をそれぞれ別個に分離して回収することが出来、回収した油分および塩分を有効に利用することが出来る等、種々の効用を得ることが出来る。
【0032】
また、本発明においては、上記の実施形態の様に、上記(A)〜(D)の4工程の中、(B)〜(D)の3工程を同一装置によって行うことにより、搬送などによる滞留を防止し且つ装置規模を小さくすることが可能である。すなわち、本発明の浄化方法においては、混合撹拌手段、加熱手段および遠心脱水手段が備えられた一つの処理槽(40)を洗浄槽および脱水槽として使用し、灯油洗浄工程(B)、温水洗浄工程(C)及び脱水工程(D)を行うことにより、処理コストを一層低減することが出来る。勿論、洗浄槽や脱水槽を別個に設けることも可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明の汚染土壌の浄化方法によれば次の様な効果を奏する。
(1)汚染された土壌中の油分、塩分をそれぞれ別個に分離して回収でき、回収油は製油所で処理して石油製品として、また、塩分は塩の原料としてそれぞれに利用できるため、資源の有効利用が可能になる。
(2)土壌を洗浄する溶剤としての灯油の使用量を増減することにより、土壌の残存油分を容易に調節し得る。
(3)洗浄に使用する溶剤の灯油は、全く毒性がないため、仮に土壌に残存した場合も環境に悪影響を与える怖れがない。
(4)灯油洗浄、温水洗浄、脱水の各操作を1台の装置で行い得るため、設備費が経済的であるとともに、装置全体をスキッド化して汚染現場の最適場所に搬入でき、土壌の移送費用を節減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る汚染土壌の浄化方法による処理工程の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
1 :土壌ピット
2 :解砕槽
3 :灯油タンク
4 :洗浄機
40:処理槽
41:傾斜装置
5 :回収油タンク
6 :洗浄水タンク
7 :回収水タンク
8 :回収ヤード
9 :油水分離槽
Claims (2)
- 原油または重油と海水によって汚染された土壌を次の(A)〜(D)の工程により浄化することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
(A)加熱手段が備えられた解砕槽を使用し、原油または重油および海水を含む原料土壌を所定粒径以下に解砕するとともに50〜100℃に加熱することにより、原料土壌の粘度をポンプ輸送が可能な粘度に低下させる解砕工程。
(B)混合撹拌手段と加熱手段が備えられた洗浄槽としての処理槽を使用し、前記解砕工程で処理した原料土壌および溶剤としての灯油を50〜100℃に加熱しつつ混合撹拌することにより、原料土壌中の原油または重油を灯油に溶解させた後、静置することによって原油または重油を含む灯油層と原料土壌層とに分離し、次いで、原油または重油を含む分離された灯油を抜き出す灯油洗浄工程。
(C)混合撹拌手段と加熱手段が備えられた洗浄槽としての処理槽を使用し、前記灯油洗浄工程で処理した原料土壌を洗浄水とともに50〜100℃に加熱しつつ混合撹拌することにより、原料土壌中の塩分を洗浄水に溶解させた後、静置することによって塩分を含む洗浄水層と原料土壌層とに分離し、次いで、塩分を含む分離された洗浄水を抜き出す温水洗浄工程。
(D)遠心脱水手段が備えられた脱水槽としての処理槽を使用し、前記温水洗浄工程で処理した原料土壌を脱水処理する脱水工程。 - 混合撹拌手段、加熱手段および遠心脱水手段が備えられた一つの処理槽を洗浄槽および脱水槽として使用し、灯油洗浄工程、温水洗浄工程および脱水工程を行う請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
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