JP3811901B2 - トリグリセリド油の分別 - Google Patents
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Description
トリグリセリド油の分別(分別結晶)は、Gunstone、Harwood及びPadleyによってThe Lipid Handbook、1986年版、213乃至215頁に記載されている。一般に、トリグリセリド油は異なる融点を有する種々のトリグリセリドの混合物である。トリグリセリド油は、例えば、異なる融点又は溶解度を有する画分の結晶化によってそれらから分離することにより改質し得る。
分別方法の一つは、いわゆる乾燥分別法であり、固体相が結晶化するまで冷却し、液相から結晶化相を分離することを含む。液相はオレイン相として表記され、固相はステアリン相として表記される。
相の分離は、通常濾過により、任意にいくらかの圧力を加えて行われる。
乾燥分別法における相分離が直面する主な問題は、分離したステアリン画分中に多くの液性オレイン画分が含まれることである。そのため、オレイン画分はステアリン画分の結晶の塊の間又は結晶内の空間に引き込まれる。それゆえ、液相画分からの固体の分離は部分的のみでしかない。
ステアリン画分の固体含量は分離効率として表記される。パーム油の乾燥分別において、50重量%を越えることはめったにない。これは、ステアリンの品質及びオレインの収率にとって有害である。
関連する溶剤分別法では、分別される脂肪が、例えば、ヘキサン又はアセトン溶液から結晶化される場合、分離効率は95%までになり得る。
乾燥分別は、溶剤画分よりも費用がかからず、より環境的に優しい方法である。従って、乾燥分別において、分離効率を増大させることがより望ましい。
一般的に結晶化改質物質といわれる物質を結晶化させる油へ添加することによって結晶化が干渉されることは公知である。冷却中の油にこのような物質を少量加えることにより、結晶化を促進、遅延、又は阻害し得る。特定の状況において、上記の物質は、より正確に晶癖改質剤といわれる。公知の結晶改質剤は、例えば、米国特許第3,059,010号に記載されたスクロース脂肪酸エステル、米国特許第3,059,011号に記載されたグルコースの脂肪酸エステル及びその誘導体である。これらの結晶改質剤は結晶化速度を上昇させるのに効果的であるが、分離効率を増加させることは報告されていない。これらは、このような効果を示唆すらしていない。
例えば、米国特許第3,158,490号に記載されているような他の結晶化改質剤は、キッチン油へ添加する場合、固体脂肪結晶化が阻害される又は遅延されるという効果を有する。他のタイプの結晶化改質剤は、特に晶癖改質剤といわれる場合、低温でワックスを結晶化させる傾向にある、鉱物燃料油用の成分として広く使用される。米国特許第3,536,461号は、晶癖改質剤の燃料油への添加が、曇り点(又は流動点)の温度を、結晶の沈降を避けるのに十分低下させるという効果を有することを教示している。又、代わりに、結晶が形成されるときに結晶が目を詰まらせずに燃料フィルターを通過できるように、異なる性質の結晶化を固体に誘導する。
他の晶癖改質剤は、結晶化の後、結晶、すなわち、ステアリン相を液相、すなわち、オレイン相からより効率的に分離することができるような方法で、実際に結晶化されるトリグリセリド脂肪結晶の性質を変化させるものである。公開されていない特許出願、国際公開第95/04122号は、エステル化されたイヌリン及びフレアンを晶癖改質剤として使用する乾燥分別を扱っている。このような晶癖改質剤を記載した刊行物は、例えば、英国特許第1,015,354号又は米国特許第2,610,915号であり、このような効果が、ビニルアルコール又は置換されたビニルアルコールのエステルの重合生成物の少量の添加によって達成される。米国特許第3,059,008号は、同一の目的のためのデキストリン誘導体の使用を記載している。しかし、これらの結晶化改質物質は理想からは程遠いものである。前者の場合、結晶化から3日後、オレイン収率は、71%から82%のみへの増大であることが報告されている。
このような改良は十分であると考えられるが、より早く、そして乾燥分別中で作用し、オレイン収率においてよりより改良をもたらす、より効果のある結晶化改質物質の必要性が存在する。このような晶癖改質剤の選択は、物質がこれらの要求を成功裡に応じ得ることを予想できないため、問題である。
発明の要約
結晶化改質物質として適するポリサッカライドエステルが見出された。先行技術の多くの改質剤に対して、本発明の改質剤は、分離効率をはるかに増大させる。従って、本発明はトリグリセリド油から固体脂肪物質を分離するための改質剤を使用する方法に関し、
A.油又は不活性溶剤中の油の溶液を、固体物質の実質的な量が存在しなくなるまで加熱し、
B.油又は油の溶液へ結晶化改質物質を添加し、
C.油を冷却し、液性のオレイン相を除く固体のステアリン相を結晶化させ、及び、
D.オレイン相からステアリン相を分離することによってステアリン相を回収する
工程を含み、結晶化改質物質は、500乃至3990Da、好ましくは1300乃至2500Daの分子量を有するイヌリン又はフレアンであるポリサッカライドであり、サッカライドサブユニットの水酸基の50%以上が(C8乃至C24)の分枝していないアルキル鎖と結合し、残りの水酸基は、任意に、(C1乃至C7)アルキル鎖と結合していることを特徴とする。
顕微鏡下での観察では、このような結晶化改質物質が存在すると、油中で、結晶化改質物質なしで得られる結晶とは著しく異なる結晶及び結晶凝集体を形成するという効果がある。低い又は中間の濾過圧においてさえ、ステアリン画分がオレイン画分をほとんど保持しないため、これらの結晶及び凝集体は、より効果的に濾過され得る。従って、変形された結晶化は分離効率をかなり増大させる結果となる。
発明の詳細な説明
分別される油は、全ての固体トリグリセリド脂肪、及び好ましくは全ての改質物質が液性化されるように、結晶化が始まる前、好ましくは、油が加熱される前、結晶化改質物質と混合される。
次に、油は選択された結晶化温度へ冷却される。適する結晶化温度は、例えば、パーム油は、13乃至35℃である。異なる温度を選択することによって、オレイン及びステアリン相の組成は変化し得る。選択された温度での結晶化は、一定の固相含量に達するまで続く。結晶化時間は、所望の固相含量によって変動し得る。通常の時間は4乃至16時間の範囲であるが、脂肪を結晶化するには、平衡に到達するのにもっと時間がかかることもある。結晶化の間、油は例えば、ゲート撹拌機で撹拌され得る。しかし、ゆっくりした(stagnant)結晶化が最良の分離効率を付与することもある。
液相からの固相の分離では、一般にメンブランフィルタープレス(membrane filter press)を使用するが、これは、より高い圧力を使用できるためである。適する圧力は、3乃至50barで、約20乃至200分間適用し得る。しかし、本発明の方法で得られるステアリン相は、低い又は適度の圧力においても、オレイン相から容易に分離される。通常、両方の相を適度に分離するのに、約30乃至60分で済む。
分離前の結晶スラリー及び分離されたステアリン相の固体含量は、公知のパルスNMR法によって測定される(Fette及びSeifen、Anstrichmittel 1978、80、nr.5、180乃至186頁)。
本発明の結晶化改質物質の特徴的なアルキル鎖は、好ましくは、例えば適する脂肪酸又は脂肪酸の混合物を、任意に活性誘導体の形で、ポリサッカライドの水酸基と反応させることによってエステルの架橋によりポリサッカライド骨格に結合される。
食品等級として適しているために、特に適当な方法は、一種又は複数の脂肪酸のメチルエステル及びポリサッカライドの過酢酸エステルを使用することを含む。適切な溶剤及び通常の塩基性物質の存在のような通常の工程の条件を使用すると、反応体の反応は、混合物から回収され得る所望のポリサッカライドエステルをもたらす。
水酸基の50%以上がエステル化される条件は、水酸基の全量のうちの最小限のエステル化の程度であり、個々のサブユニットの水酸基がこの要件を満たしていなければならないと理解してはならない。
サッカライド骨格に結合されたアルキル鎖は、同一又は異なっていてもよい。
サッカライドサブユニットに結合するアルキル鎖の大きさが、所望のステアリン相の脂肪酸のアルキル鎖の大きさと一致する場合、最良の結果が得られる。この一致は、鎖の実質的な部分が、同一又はほぼ同一の炭素原子の数を有する場合に起こる。この観点において、「実質的な部分」とは鎖の60乃至100%に当てはまると理解されたい。それゆえ、パーム油を分別する場合、好ましくはアルキル鎖は、セチル(C16)及びステアリル(C18)アルキル鎖である。
イヌリンは、サブユニットがβ−1,2−グリコシド架橋によって相互に連結している末端グルコースサブユニットを含む、ポリフルクトースである。フレアンは、サブユニットがβ−2,6−グリコシド架橋によって相互に連結している末端グルコースサブユニットを含む、ポリフルクトースである。イヌリン又はフレアンの分子量は500乃至3990Da、好ましくは1300乃至2500Daであるが、これは、イヌリン又はフレアンの鎖長(GFnと表記)が、n=2乃至23、好ましくはn=7乃至14であることに相当する。
水酸基の50%以上は、好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸を含む群から選択された、(C8乃至C24)アルキル含有脂肪酸とエステル化され、残りの水酸基は、好ましくは酢酸である、(C1乃至C7)アルキル含有脂肪酸とエステル化されている。
3つのパルミチン酸残基と十分にエステル化されたイヌリンの分子量は、5.5×エステル化されていないイヌリンの分子量である。
イヌリンエステルの特定の好ましい群は、50%以上が、ラウリン酸及びパルミチン酸の9:1乃至1:9の混合物とエステル化される。この結晶化改質物質は特に、撹拌による結晶化において有用である。
本発明の方法は、溶剤分別又は洗浄剤分別においても有用であるが、乾燥分別法として実施するのが好ましい。
本発明の方法は、パーム油、パーム核油、シア油、ヤシ油、綿実油、バター油、水素化された菜種油、水素化された大豆油、又はこれらの油の画分、又は、エステル交換によって以前に得られた油から得られた油のような比較的高温融解する脂肪を含有するトリグリセリド油に適用し得る。
本発明の方法は、特にパーム油の分別に有用である。パーム油は粗パーム油でもよいが、一般的には精製された品質が使用される。
結晶化改質物質は、油の総量の0.005乃至2重量%、好ましくは0.01乃至1重量%の量で、適度に使用される。
本発明の結晶化改質エステルの特に有利な点は、それらがポリサッカライド及び脂肪酸から成り、両方とも天然物質で、生理的に受容可能な物質であり、食物等級として適当な調製方法が使用されることである。
本発明は、特に、トリグリセリド油結晶化改質物質として、上記のイヌリン及びフレアンの全てのエステルを使用することを含む。
実施例 1
それぞれ1200gのパーム油(中性化し、漂白し、脱臭した)を含有する2つのサンプルを調製した。通常の乾燥分別のとおりに工程を実施したが、第一のサンプル(A)には、1.2g(0.1重量%)の結晶化改質物質を添加した。第二のサンプル(B)には、結晶化改質物質を添加しなかった。結晶化改質物質は、約1700Daの平均分子量を有するイヌリンである。それは、ラウリン酸及びパルミチン酸の1:2混合物で十分にエステル化されている(DS=3)。
両方のサンプルを、完全に液性化(固体脂肪を含有しない)するまで65℃で加熱し、次に結晶化させるために冷却した。結晶化は、23℃の選択された温度で、ゆっくりした条件下で、一定の固体脂肪含量に到達するまで続けられた。サンプルをメンブランフィルター中で30分間加圧した。濾過した後、画分の重量を測定した。オレイン収率は、濾過物の重量である。ステアリンの収率は、フィルター上に残った結晶の塊(ケーキ)の重量である。測定されたステアリン及びオレイン画分の収率は、第1表に付与される。
濾過の前に、2つのサンプルは、同量の固体脂肪を含有した。比較は、結晶化改質物質を含むサンプル(A)のステアリン画分が、結晶化改質物質を含まないサンプル(B)よりもかなり少ないオレイン画分を含んでいたことを示す。分離効率は、110%の相対的な増加を示した。
実施例 2
撹拌条件下で油を結晶化させながら、実施例1を繰り返した。得られた分画は第2表に付与される。
分離効率は、10%の相対的な増加を示した。
Claims (8)
- トリグリセリド油から固体脂肪物質を除去する方法であって、
a.油又は不活性溶剤中の油の溶液を、実質的に固体物質が存在しなくなるまで加熱し、
b.油又は油の溶液へ結晶化改質物質を添加し、
c.油を冷却し、液性オレイン相を除く固体ステアリン相を結晶させ、及び
d.オレイン相からステアリン相を分離することによってステアリン相を回収する工程を含み、
結晶化改質物質は、500乃至3990Da、好ましくは1300乃至2500Daの分子量を有するイヌリン又はフレアンであるポリサッカライドであり、サッカライドサブユニットの水酸基の50%以上が(C8乃至C24)の分枝していないアルキル鎖と結合し、残りの水酸基は、任意に、(C1乃至C7)アルキル鎖と結合していることを特徴とする、方法。 - アルキル鎖が、エステルの架橋によってポリマー鎖に結合している、請求項1の方法。
- イヌリンが、水酸基の50%以上で、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸を含む群から選択された一つ以上の脂肪酸とエステル化され、残りの水酸基は、そのままか、又は、酢酸でエステル化されていることを特徴とする、請求項2又は3のいずれかの方法。
- イヌリンの水酸基が、ラウリン酸及びパルミチン酸の9:1乃至1:9の混合物とエステル化され、残りの水酸基は、そのままか、又は、酢酸でエステル化されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1請求項の方法。
- 乾燥分別法として使用されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1請求項の方法。
- 分別されるトリグリセリド油が、パーム油、パーム核油、シア油、ヤシ油、綿実油、バター油、水素化された菜種油、水素化された大豆油、又はこれらの油の画分、又は、エステル交換によって以前に得られた油から得られた油であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1請求項の方法。
- 結晶化改質物質が、油の総量の0.005乃至2重量%、好ましくは0.01乃至1重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1請求項の方法。
- 請求項1乃至7のいずれか1請求項のイヌリン又はフレアンエステルの、トリグリセリド油結晶化改質物質としての使用。
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