JP3811432B2 - コントロールケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インナーケーブルと、金属撚り線よりなるインナーケーブルと、インナーケーブルを摺動自在に案内するために鋼線を螺旋状に巻いたアウターチューブと、アウターチューブの軸方向外端に設けた取付用口金と、アウターチューブおよびインナーケーブル間に配置され、一端が移動不能に固定されて他端が軸方向に移動可能なライナーとを備えたコントロールケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
ドライバーがハンドルに入力する操舵トルクを、ボーデンケーブル等の撓み易いコントロールケーブルでステアリングギヤボックスに伝達して車輪を転舵するケーブル式ステアリング装置が、例えば特開平8−2431号公報により公知である。
【0003】
かかるコントロールケーブルは、鋼線を螺旋状に巻いたアウターチューブの内部に金属縒線よりなるインナーケーブルを摺動自在に収納することで可撓性を持たせているが、共に金属製のアウターチューブおよびインナーケーブルが直接擦れ合って発生する摩擦力で操舵フィーリングが低下するのを防止すべく、アウターチューブおよびインナーケーブルの間に低摩擦係数で耐摩耗性に優れた合成樹脂製のライナーを配置している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで前記ライナーは、コントロールケーブルの可撓性を阻害しないように一端部だけがアウターチューブに固定されており、その他の部分はアウターチューブに対して摺動可能になっている。このような構造のコントロールケーブルを湾曲させると、ライナーの他端部がアウターチューブの内部に引き込まれるため、アウターチューブやそのアウターチューブの端部に固定した取付用口金がライナーから露出してしまい、インナーケーブルが取付用口金やアウターチューブに直接接触する可能性がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、アウターチューブおよびインナーケーブル間にライナーを介在させたコントロールケーブルを湾曲させたときに、インナーケーブルがアウターチューブあるいはその取付用口金に直接接触するのを防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、金属撚り線よりなるインナーケーブルと、インナーケーブルを摺動自在に案内するために鋼線を螺旋状に巻いたアウターチューブと、アウターチューブの軸方向外端に設けた取付用口金と、アウターチューブおよびインナーケーブル間に配置され、一端が移動不能に固定されて他端が軸方向に移動可能なライナーとを備えたコントロールケーブルであって、アウターチューブの湾曲時にインナーケーブルが取付用口金あるいはアウターチューブと接触しないように、インナーケーブルに臨む取付用口金の内周面の軸方向外端よりも、ライナーの軸方向に移動可能な前記他端を外側に延長したことを特徴とするコントロールケーブルが提案される。
【0007】
上記構成によれば、コントロールケーブルの可撓性を阻害しないように、アウターチューブおよびインナーケーブル間に配置されたライナーの一端を移動不能に固定して他端を軸方向に移動可能にしたものにおいて、アウターチューブを固定する取付用口金の内周面の軸方向外端よりもライナーの移動可能な前記他端を外側に延長したので、コントロールケーブルを湾曲させたときにライナーがアウターチューブ内に引き込まれても、金属製の取付用口金の内周面および金属製のアウターチューブの内周面がライナーから露出しないようにし、金属製のインナーケーブルが取付用口金やアウターチューブに直接接触して摺動抵抗が増加するのを防止することができる。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記コントロールケーブルは、車両の操舵を行うケーブル式ステアリング装置のハンドルに接続された駆動プーリとステアリングギヤボックスに接続された従動プーリとを連結することを特徴とするコントロールケーブルが提案される。
【0009】
尚、実施例の第1の取付用口金24は本発明の取付用口金に対応し、実施例の圧延線26は本発明の鋼線に対応する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。 図1〜図5は本発明の一実施例を示すもので、図1はケーブル式ステアリング装置の全体斜視図、図2はコントロールケーブルの一部破断全体図、図3は図2の3部拡大図、図4は図2の4部拡大図、図5はコントロールケーブルの湾曲時の作用説明図である。
【0011】
図1に示すように、自動車のハンドル1の前方に設けた駆動プーリハウジング2と、ステアリングギヤボックス3に設けた従動プーリハウジング4とが2本のコントロールケーブル5,6によって接続される。ステアリングギヤボックス3を貫通して車体左右方向に延びるステアリングロッド7の両端が、タイロッド8L,8Rを介して左右の車輪WL,WRを支持するナックル(図示せず)に接続される。
【0012】
ドライバーの操作によるハンドル1の回転は、駆動プーリハウジング2に収納した駆動プーリ(図示せず)から一対のコントロールケーブル5,6を介して従動プーリハウジング4の内部に収納した従動プーリ(図示せず)に伝達され、従動プーリの回転軸に設けたピニオン9がステアリングロッド7に設けたラック10に噛み合うことで、ステアリングロッド7が左右に移動して車輪WL,WRが転舵される。ドライバーによるハンドル1の操作をアシストすべく、従動プーリハウジング4にピニオン9を駆動するアシスト用モータ11が設けられる。
【0013】
一対のコントロールケーブル5,6の構造は同一であり、以下、図2〜図4に基づいて一方のコントロールケーブル5の構造を説明する。
【0014】
コントロールケーブル5は、アウターチューブ21と、インナーケーブル22と、ライナー23と、アウターチューブ21を駆動プーリハウジング2に結合する第1の取付用口金24と、アウターチューブ21を従動プーリハウジング4に結合する第2の取付用口金25とを備える。アウターチューブ21は長方形の二つの短辺を半円状に丸めた断面形状を有する鋼製の圧延線26を螺旋状に巻いた導管と、その導管の外表面を覆う樹脂コーティング27とで構成される。アウターチューブ21の内部に摺動自在に収納されるインナーケーブル22は、複数本の金属素線を縒り合わせたもの、あるいはそのようにして得られたストランドを複数本縒り合わせた金属撚り線で構成される。アウターチューブ21の内周面とインナーケーブル22の外周面との間に配置されるライナー23は、低摩擦係数で耐摩耗性に優れた合成樹脂で構成される。
【0015】
図3に良く示されるように、コントロールケーブル5のアウターチューブ21の一端部に固定される第1の取付用口金24は概略円筒状の部材であって、駆動プーリハウジング2にねじ結合される雄ねじ部24aと、アウターチューブ21の端部外周に嵌合してかしめにより固定されるかしめ部24bと、半径方向内側に延びてアウターチューブ21の端部に当接する環状の内側フランジ24cとを備える。第1の取付用口金24の雄ねじ部24aの内周面には、低摩擦係数で耐摩耗性に優れた合成樹脂で構成された円筒状の樹脂ガイド28が固定される。ライナー23の自由端23aは、アウターチューブ21の端部を超え、更に第1の取付用口金24の内側フランジ24cを超えて樹脂ガイド28の長手方向中間部まで延びている。
【0016】
図4に良く示されるように、コントロールケーブル5のアウターチューブ21の他端部に固定される第2の取付用口金25は、従動プーリハウジング3に固定される固定部25aと、アウターチューブ21の端部外周に嵌合してかしめにより固定されるかしめ部25bと、半径方向内側に延びてアウターチューブ21の端部に対向する環状の内側フランジ25cとを備える。第2の取付用口金25の取付部25aの内周面には、低摩擦係数で耐摩耗性に優れた合成樹脂で構成された円筒状の樹脂ガイド29が固定される。ライナー23の端部には半径方向外側に折り曲げられた係止端23bが設けられ、この係止端23bはアウターチューブ21の端部と第2の取付用口金25の内側フランジ25cとに挟まれて移動不能に固定される。
【0017】
尚、インナーケーブル22の両端部に固定された円柱状のピン30,31は、インナーケーブル22両端部をそれぞれ駆動プーリおよび従動プーリに固定するためのものである。
【0018】
ところで、ライナー23の第2の取付用口金25側の端部に設けられた係止端23bは、アウターチューブ21に対して軸方向に移動不能に固定されているのに対し、ライナー23の第1の取付用口金24側の自由端23aはアウターチューブ21に対して軸方向に摺動可能であるため、コントロールケーブル5,6を湾曲させたときに、ライナー23の自由端23aはアウターチューブ21の内部に引き込まれるように移動する。以下、その理由を図5に基づいて説明する。
【0019】
図5(A)に示すように、アウターチューブ21およびライナー23が直線状態で同じ長さLであるとし、両者が図中左端部で一体に固定されているとする。この状態から、図5(B)に示すように、アウターチューブ21およびライナー23を曲率半径Rおよび中心角θとなるように円弧状に湾曲させたとする。曲げ方向内側ではアウターチューブ21の圧延線26が相互に接しながら湾曲するので長さL1がLのまま変化しないのに対し、曲げ方向外側ではアウターチューブ21の圧延線26が相互に隙間を広げながら湾曲するので長さL2がLよりも長くなる。従って、アウターチューブ21の直径をDとすると、曲げ方向内側でのアウターチューブ21の長さL1は、
L1=(R−D/2)×θ=L
となり、曲げ方向外側でのアウターチューブ21の長さL2は、
L2=(R+D/2)×θ=L+D×θ
となる。
【0020】
そしてアウターチューブ21の中心線上での長さL3は、
L3=(L1+L2)/2=L+(D×θ)/2
となる。
【0021】
一方、アウターチューブ21の内部に収納されたライナー23の長さはLのままで変化しないため、アウターチューブ21およびライナー23の図中右端部における長さの差ΔLは、
ΔL=L3−L=(D×θ)/2
となり、ライナー23の自由端23aはΔL=(D×θ)/2だけアウターチューブ21の内部に引き込まれる。
【0022】
このように、コントロールケーブル5,6を湾曲させると、係止端23bを従動プーリハウジング4に固定されたライナー23の自由端23aが、駆動プーリハウジング2の内部においてアウターチューブ21内に引き込まれる。従って、仮にアウターチューブ21の長さとライナー23の長さを等しく設定しておくと、ライナー23がアウターチューブ21内に引き込まれることで、第1の取付用金具24の内側フランジ24cや、それに連なるアウターチューブ21の圧延線26の一部が露出してインナーケーブル22と接触してしまい、金属どうしの接触により摺動抵抗が増加する可能性がある。
【0023】
それに対して、本実施例では、ライナー23の長さが予めアウターチューブ21の長さよりも長く設定されているため、コントロールケーブル5,6が湾曲してライナー23がアウターチューブ21内に引き込まれても、ライナー23は第1の取付用金具24の内側フランジ24cおよびアウターチューブ21の圧延線26を完全に覆い、金属どうしが接触しないようにして摺動抵抗の増加を防止することができる。コントロールケーブル5,6が直線状に延びているときと湾曲しているときのライナー23の自由端23aの移動範囲を、図3のa領域に設定すれば、つまり樹脂ガイド28の長さ範囲内に設定すれば、金属どうしの接触を確実に防止することができる。
【0024】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0025】
例えば、実施例ではケーブル式ステアリング装置用のコントロールケーブルを例示したが、本発明は他の任意の用途のコントロールケーブルに適用することができる。また本発明のコントロールケーブルは2本をセットにして使用するものに限定されず、1本を単独で使用するものであっても良い。
【0026】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、コントロールケーブルの可撓性を阻害しないように、アウターチューブおよびインナーケーブル間に配置されたライナーの一端を移動不能に固定して他端を軸方向に移動可能にしたものにおいて、アウターチューブを固定する取付用口金の内周面の軸方向外端よりもライナーの移動可能な前記他端を外側に延長したので、コントロールケーブルを湾曲させたときにライナーがアウターチューブ内に引き込まれても、金属製の取付用口金の内周面および金属製のアウターチューブの内周面がライナーから露出しないようにし、金属製のインナーケーブルが取付用口金やアウターチューブに直接接触して摺動抵抗が増加するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ケーブル式ステアリング装置の全体斜視図
【図2】 コントロールケーブルの一部破断全体図
【図3】 図2の3部拡大図
【図4】 図2の4部拡大図
【図5】 コントロールケーブルの湾曲時の作用説明図
【符号の説明】
1 ハンドル
3 ステアリングギヤボックス
5 コントロールケーブル
21 アウターチューブ
22 インナーケーブル
23 ライナー
24 第1の取付用口金(取付用口金)
26 圧延線(鋼線)
Claims (2)
- 金属撚り線よりなるインナーケーブル(22)と、インナーケーブル(22)を摺動自在に案内するために鋼線(26)を螺旋状に巻いたアウターチューブ(21)と、アウターチューブ(21)の軸方向外端に設けた取付用口金(24)と、アウターチューブ(21)およびインナーケーブル(22)間に配置され、一端が移動不能に固定されて他端が軸方向に移動可能なライナー(23)とを備えたコントロールケーブルであって、
アウターチューブ(21)の湾曲時にインナーケーブル(22)が取付用口金(24)あるいはアウターチューブ(21)と接触しないように、インナーケーブル(22)に臨む取付用口金(24)の内周面の軸方向外端よりも、ライナー(23)の軸方向に移動可能な前記他端を外側に延長したことを特徴とするコントロールケーブル。 - 前記コントロールケーブル(5)は、車両の操舵を行うケーブル式ステアリング装置のハンドル(1)に接続された駆動プーリとステアリングギヤボックス(3)に接続された従動プーリとを連結することを特徴とする、請求項1に記載のコントロールケーブル。
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