JP3810496B2 - 有床義歯の作製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有床義歯を作製する際に、フラスコ内に填入された餅状の義歯床用レジンを義歯床の粘膜面側となる石膏模型面側から重合を開始させることにより、適合性に優れた有床義歯を作製する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に有床義歯の作製方法は、患者の口腔内状態を再現した石膏模型上で、義歯床部分を蝋で作製し人工歯を配列して蝋義歯を作製し、この蝋義歯を石膏模型と共に埋没用石膏を用いてフラスコ内に埋没し、埋没用石膏が硬化したら義歯床部分を流蝋し、得られた義歯床部分の空隙に粉剤と液剤とを混合練和して餅状とした義歯床用レジンを填入し、その後、加熱することにより義歯床用レジンを重合硬化させ、冷却後、掘り出し、研磨する工程で行われている。
【0003】
義歯床用レジンの加熱重合方法としては、沸騰水中で加熱する湿熱重合法,乾熱重合装置を使用する乾熱重合法,電子レンジのマイクロ波で加熱するマイクロ波重合法等が採用されている。しかし、湿熱重合方法や乾熱重合方法の場合には、熱伝導によりフラスコの外側から加熱されるためフラスコの外側に近い部分から義歯床用レジンの重合が開始してしまい、またマイクロ波重合法の場合には石膏模型や埋没用石膏中の残留水分量によって昇温速度が異なってしまうので義歯床用レジンの重合開始部位が不規則となっている。更に、義歯床部分の厚みや形状は複雑で各個人によっても異なるため、義歯床用レジンの重合開始部位をコントロールすることは不可能である。その結果、重合が遅れて始まった部位には義歯床用レジンの重合収縮等に起因する適合精度の低下が生じている。
【0004】
有床義歯においては、口腔内に接する部分である粘膜面側の適合精度が最も重要であり、この部分の適合精度が劣るものは患者の口腔内に適合せず疼痛を起こしたり脱落したりする。そのため、義歯床用レジンの重合を義歯の粘膜面側から開始させて適合精度を向上させる試みがなされている。特開平4−266754号公報では、予めフラスコを義歯床用レジンの重合温度以上であって、且つ石膏模型の粘膜面側を人工歯側より高温にしておき、これに餅状の義歯床用レジンを填入し、熱重合させる方法が開示されている。しかし、予め2種の温度にフラスコを加熱しておくには大きな設備が必要であることや、加熱されたフラスコの取扱いには火傷等の危険性が伴うことや、また石膏模型に接した義歯床用レジンの重合が急激に進行するため硬化物中に気泡が入ったり、充分な量の義歯床用レジンが填入されない間に硬化が進行してしまったりする等の問題点があった。また、特開平1−256954号公報では、アルミニウム粉末が混入された石膏で作製した石膏模型を用いてマイクロ波重合法を行うことによって、石膏模型が選択的に加熱されて義歯床用レジンを粘膜面側から重合させることができるので精度の良い有床義歯が作製できることが開示されている。しかし、この開示はマイクロ波重合法専用であり、湿熱重合法や乾熱重合法には応用できないという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、特に有床義歯の作製において湿熱重合法,乾熱重合法,マイクロ波重合法等の何れの重合方法を用いた場合でも、安全且つ簡便な操作で義歯床用レジンの重合開始位置を自由にコントロールできる方法によって義歯床用レジンを義歯床の粘膜面側から重合開始させて、適合精度に優れた有床義歯を作製できる方法を開発することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、義歯床用レジンが、粉剤としてメタクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸化物とを含み、液剤がモノメタクリル酸エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライドとを含む構成の場合に、義歯床用レジンの硬化反応であるバルビツール酸誘導体と第4級アンモニウムクロライドとの反応が、鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩によって急速に促進され重合速度が加速されることを究明し、有床義歯を作製する場合に、餅状の義歯床用レジンを填入する前の義歯床の粘膜面側となる石膏模型表面に、この鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を存在させておくことによって義歯床用レジンを粘膜面側から重合開始させることができ、その結果、粘膜面側の適合精度に優れた有床義歯の作製が可能になることを究明して本発明を完成したのである。
【0007】
【発明の実施の形態】
即ち、本発明に係る有床義歯の作製方法は、石膏模型上で蝋義歯を作製し、埋没用石膏を用いてフラスコ内に石膏模型と共に蝋義歯を埋没し、流蝋して得た義歯床部分の空隙の義歯床の粘膜面側となる石膏模型表面に鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含む塗布材を塗布した後、該空隙内にメタクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸化物とを含む粉剤と、モノメタクリル酸エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライドとを含む液剤とを混合練和した餅状の義歯床用レジンを填入し、加熱重合して有床義歯を作製することを特徴とするものである。
【0008】
具体的な有床義歯の作製手順に基づいて、更に詳細に説明すると、有床義歯の作製は、
(1) 印象材を使用して口腔内の印象採得を行う。
(2) 得られた印象に石膏を注入して硬化させ、患者の口腔内を再現した石膏模型を作製する。
(3) この石膏模型上で義歯床部分は蝋を用いて形成すると共に、人工歯を配列して蝋義歯を作製する。
(4) 埋没用石膏を用いてフラスコ内に石膏模型ごと蝋義歯を埋没させる。
(5) 埋没用石膏が硬化したら、蝋義歯付き石膏模型の部分でフラスコを分割して、蝋義歯の蝋部分(義歯床部分)を温湯等で軟化除去して流蝋させ、義歯床部分の陰型空隙を得る。
(6) 義歯床部分の空隙を形成している石膏模型面と埋没用石膏面とにレジン分離剤を塗布する。
(7) 義歯床の粘膜面側となる石膏模型表面に鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含む塗布材を筆等を用いて塗布する。
(8) タクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸化物とを含む粉剤と、モノメタクリル酸エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライドとを含む液剤とを混合練和して義歯床用レジンを餅状化させる。
(9) 餅状となった義歯床用レジンを義歯床部分の空隙内に填入して、分割していたフラスコを一体化させる。
(10) 義歯床用レジンを填入したフラスコを、湿熱重合法の場合は沸騰水中に入れ,乾熱重合法の場合は乾熱重合装置を使用し,マイクロ波重合法の場合は電子レンジを使用して加熱し、義歯床用レジンを加熱重合させる。
(11) 冷却後、埋没用石膏を破壊して人工歯を保持した状態で重合硬化した義歯床用レジンを掘り出す。
(12) 付着している石膏を電気エンジンを使用して除去し、仕上げ研磨する。
の工程で行われ、適合精度に優れた有床義歯が完成するのである。
【0009】
即ち、本発明方法は、従来の有床義歯の作製工程の中に、新たに前記(7)の義歯床用レジンを填入する前の義歯床の粘膜面側となる石膏模型表面に鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含む塗布材を塗布する工程を取り入れたこと、前記(8)の工程において、義歯床用レジンとしてメタクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸化物とを含む粉剤と、モノメタクリル酸エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライドとを含む液剤とから成る義歯床用レジンを用いとを大きな特徴とするものである。
【0010】
前述した如く、本発明に係る有床義歯の作製方法に使用される義歯床用レジンは、硬化反応がバルビツール酸誘導体と第4級アンモニウムクロライドとの反応で行われる粉剤と液剤との組み合わせから成るものであることが必要である。
具体的には、粉剤が、メタクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸化物とを含むものであり、液剤が、モノメタクリル酸エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライドとを含むものが使用される。
【0011】
粉剤の構成成分であるメタクリル酸エステル重合体としては、メタクリル酸メチル重合体又はメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体が主に用いられる。メタクリル酸メチルを主成分とする共重合体としては、メタクリル酸メチル・メタクリル酸エチル共重合体,メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル共重合体,メタクリル酸メチル・トリメタクリル酸トリメチロールプロパン共重合体,メタクリル酸メチル・スチレン共重合体などが挙げられ、メタクリル酸メチル重合体とこれ等のメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体とを混合して使用することができる。
【0012】
更に餅状化時間や餅状化義歯床用レジンの操作性を調整するために、メタクリル酸メチル重合体,メタクリル酸メチルを主成分とする共重合体,又はメタクリル酸メチル重合体にメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体を加えた混合物にメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル重合体の1種又は2種以上を混合することができる。メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル重合体としては、メタクリル酸エチル重合体,メタクリル酸ブチル重合体などが挙げられ、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル共重合体としては、メタクリル酸エチル・トリメタクリル酸トリメチロールプロパン共重合体などが挙げられる。
【0013】
粉剤に配合されるバルビツール酸誘導体としては、第5の位置がアルキル基又はアリール基で置換されたバルビツール酸誘導体が好ましく、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3,−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−n−ブチルバルビツール酸、5−フェニルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸などが挙げられるが、中でも、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−n−ブチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸は特に好ましい。これ等は1種又は2種以上を混合して使用してもい。また、これ等のバルビツール酸誘導体の添加量はメタクリル酸エステル重合体100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましい。添加量が0.05重量部未満であるとマイクロ波が照射されたときの重合反応の促進効果が不充分となり硬化体が不均質になり内部気泡を生ずる恐れがあり、3重量部を超えると第4級アンモニウムクロライドを含む液剤と混合されたときに重合反応が早期に開始され、適当な操作時間が得られないことがあり、また硬化体の耐水性が劣化する恐れがある。
【0014】
粉剤に配合される有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキイサイド、4,4'−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイドなどが挙げられるが、特に好ましくはベンゾイルパーオキサイドであり、これ等は夫々1種又は2種以上を混合して使用してもい。これ等の有機過酸化物の添加量は、メタクリル酸エステル重合体100重量部に対して0.1〜2重量部が好ましい。添加量が0.1重量部未満であるとマイクロ波が照射され重合反応が開始されてから組成物全体の重合を連鎖的に急速に進行させる能力が不充分となり、硬化体が不均質となる。また、添加量が2重量部を超えると重合反応時の発熱量が多くなり組成物の内部温度が著しく高くなるためメタクリル酸メチル単量体の気化による気泡を生じることがある。
【0015】
その他、粉剤の成分には、更に「歯ぎん色」を再現するために有機若しくは無機の着色顔料や着色された繊維などを添加することができる。
【0016】
液剤に用いられるモノメタクリル酸エステル単量体にはメタクリル酸メチル単量体が主に用いられるが、粉剤と混合したときの餅状化時間や餅状化義歯床用レジンの操作性を調整するために、メタクリル酸メチル単量体以外のモノメタクリル酸エステル単量体を混合して用いることができる。
その他のモノメタクリル酸エステル単量体としては、メタクリル酸エチル単量体,メタクリル酸ブチル単量体,メタクリル酸イソブチル単量体,メタクリル酸2−エチルヘキシル単量体,メタクリル酸シクロヘキシル単量体,メタクリル酸テトラヒドロフルフリル単量体などが挙げられ、これ等の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
液剤に配合される架橋剤としては、多官能性メタクリレート、ジアリルフタレート又は多官能性メタクリレートにジアリルフタレートを加えた混合物が用いられ、多官能性メタクリレートとしては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ウレタン結合を含む多官能性メタクリレートなどが好適に用いられ、これ等は夫々1種又は2種以上を混合して使用してもい。これ等の添加量は、モノメタクリル酸エステル単量体100重量部に対し0.1〜15重量部が好ましい。0.1重量部未満であると重合反応速度が不充分となり、硬化体が不均質になり易く、また架橋密度が不足し緻密な構造とならないため変形し易くなる。15重量部を超えると重合収縮が大きくなり義歯の適合精度が悪くなる傾向があり、更に硬化体が脆くなり破折し易くなる傾向がある。
【0018】
剤に配合される第4級アンモニウムクロライドとしては、メタクリル酸エステル単量体に溶解し易いものが好ましく、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられるが、特に好ましくはジラウリルジメチルアンモニウムクロライドである。これ等は1種又は2種以上を混合して使用してもい。これ等の第4級アンモニウムクロライドの添加量としては、モノメタクリル酸エステル単量体100重量部に対し0.05〜1重量部が好ましい。添加量が0.05重量部未満であるとバルビツール酸誘導体との反応によるラジカル生成が充分に行われないため、マイクロ波が照射されたときの重合反応の促進効果が不充分になり硬化体が不均質になり内部気泡を生ずる恐れがある。また1重量部を超えると重合反応が早期に開始され、適当な操作時間が得られないことがあり、また硬化体の耐水性が劣化する傾向がある。
【0019】
剤には更に保存安定性のために重合禁止剤として、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベゾフェノン、2,4−ジメチル−6−タ−シャリ−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシトルエンなどが適宜添加可能であり、また紫外線防止剤なども添加可能である。
【0020】
また、本発明に係る有床義歯の作製方法においては、鉄塩,銅塩,コバルト塩の1種又は2種以上を含む塗布材の義歯床の粘膜面側となる石膏模型表面への塗布が義歯床用レジンの義歯床の粘膜面側となる面側からの硬化反応の促進に重要であり、これらの塩は溶媒中に含有させて義歯床の粘膜面側となる石膏模型面に筆等により塗布される。具体的に使用される鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩としては、塩化物,硝酸塩,硫酸塩,酢酸塩,アクリル酸塩,メタクリル酸塩,その他有機酸の塩,アセチルアセトン等との有機錯体が挙げられ、これら多価の金属化合物塩は何れの価数のものでもい。代表的な例として、銅塩としては、塩化第二銅,硝酸銅,酢酸銅,アクリル酸銅,メタクリル酸銅,アセチルアセトン銅等があり、また鉄塩としては、塩化第二鉄,硝酸鉄,酢酸鉄,アクリル酸鉄,メタクリル酸鉄,アセチルアセトン鉄等が、コバルト塩としては、塩化第二コバルト,硝酸コバルト,酢酸コバルト,アクリル酸コバルト,メタクリル酸コバルト,アセチルアセトンコバルト等が挙げられるが、中でも塩化第二銅,アセチルアセトン銅,塩化第二鉄が好ましく使用できる。
【0021】
これらの鉄塩,銅塩,コバルト塩は義歯床の粘膜面側となる石膏模型面に筆等により塗布されるものであるから多数回塗り重ねなくてもいように、鉄塩,銅塩,コバルト塩の1種又は2種以上の濃度は塗布材の溶媒100重量部に対して0.005〜10重量部であることが好ましい。0.005重量部未満ではバルビツール酸誘導体と第4級アンモニウムクロライドの重合反応を促進する効果が弱く、10重量部を超えると鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩自体の色調が義歯床に現れたり重合した義歯床が変色したりする傾向が生じる。
【0022】
また、これらの塩を含む塗布材に使用される溶媒としては、通常、水が用いられるが、後記する実施例4のようにワセリンを用いることもでき、必要に応じて増粘材などの塗布操作性の改善のための添加剤が含まれていてもい。また、鉄塩,銅塩,コバルト塩は、高級アルコール,ハイドロカーボン,樹脂液,シリコーン等の油状物に分散させたり、これにアルコール,クロロホルム等に粘度調整を加えたものを塗布材として用いてもい。その他、一般に有床義歯の作製においては、重合後の義歯床用レジンを掘り出し易くするために、石膏模型面や埋没用石膏面に予めアルギン酸ソーダを主成分とする水溶液をレジン分離剤として塗布使用しているが、このような分離剤の水溶液中に、これらの塩類を含有させて塗布材とすることも可能である。
【0023】
なお、この塗布材は、義歯床の粘膜面側となる石膏模型面に筆等により塗布された際に液粘度によって塗布層の厚みに差異が生じることが考えられるが、通常1〜70μmの厚さに塗布した場合が適合精度に良好な結果が得られた。
【0024】
本発明に係る有床義歯の作製方法は、湿熱重合,乾熱重合,マイクロ波重合の何れの重合方法にも適用可能であり、使用されるフラスコとしては、分割して餅状の義歯床用レジンを填入し万力等で加圧するタイプ(填入加圧型と言う場合がある)のものや、分割型ではあるがレジン注入装置を使用して注入口から餅状の義歯床用レジンを加圧注入するタイプ(加圧注入型と言う場合がある)のものなどがあるが何れのタイプでもく、また材質も真鍮のような金属製でもFRPのようなプラスチック製でも制限されることなく使用することができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて、有床義歯の作製を行い適合精度の比較を行った。
実施例1
表1に示すように、粉剤としてメタクリル酸メチル重合体:100重量部,1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸:1重量部,ベンゾイルパーオキサイド:1重量部を配合し、液剤としてメタクリル酸メチル単量体:100重量部,エチレングリコールジメタクリレート:0.5重量部,ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド:0.5重量部を配合して、義歯床用レジンを調整した。
また塗布材として、水:100重量部,アルギン酸ソーダ:5重量部,アセチルアセトン銅:1重量部を調整した。
【0026】
《適合試験》
1)石膏模型は、上顎無歯顎模型作製用シリコーン枠(ニッシン株式会社製,商品名:シリコーン型402U)に、模型用超硬石膏(株式会社ジーシー製,商品名:ニューフジロック)を指定混水比で練和して注入して2個の石膏模型を作製し、一方の石膏模型は有床義歯の作製に使用し、もう一方の石膏模型は完成したマスター模型1として有床義歯の適合試験に使用した。
2)石膏模型上でパラフィンワックス(株式会社ジーシー製,商品名:パラフィンワックス)を用いて義歯床部分を形成して人工歯3を配列して蝋義歯を作製した。
3)埋没用石膏(株式会社ジーシー製,商品名:アドバストーン)を用いて、石膏模型と蝋義歯とをフラスコ内に埋没した。
なお、フラスコは、湿熱重合用の填入加圧型真鍮製フラスコ,湿熱重合用の加圧注入型真鍮製フラスコ,マイクロ波重合用の填入加圧型FRP製フラスコ,マイクロ波重合用の加圧注入型FRP製フラスコの何れかを使用することとし、使用したフラスコの種類は表1中に示した。
4)埋没用石膏が硬化後、蝋義歯付き石膏模型の部分でフラスコを分割して流蝋槽中で流蝋した。
5)義歯床部分の蝋が除去されてできた空隙を形成している石膏模型面と埋没用石膏面にレジン分離剤(株式会社ジーシー製,商品名:アクロセップ)を塗布した。
6)義歯床の粘着面側となる石膏模型面には表1に示す各実施例と比較例に示した塗布材を筆により塗布した。
7)表1に示す各実施例と比較例に示した粉剤と液剤とから成る義歯床用レジンを重量比で10:4.3(粉剤:液剤)の割合で混合練和して餅状化し、フラスコ内の義歯床部分空隙内に填入した。なお、填入はフラスコの使用方法に従って填入加圧方式又は加圧注入方式で行った。
8)義歯床用レジンを填入したフラスコを湿熱重合法の場合は70℃で30分加熱後100℃で60分間加熱し、マイクロ波重合法の場合は電子レンジ(周波数2450MHz,高周波出力500W)を使用して3分間加熱し、義歯床用レジンを加熱重合した。
9)室温放冷60分間,水冷30分間の条件で冷却後、埋没用石膏を破壊して人工歯を保持した状態で重合硬化している義歯床用レジン2を掘り出した。
10)バリ及び付着した石膏を電気エンジンを使用して除去し有床義歯を作製し、37℃水中に1日間保管した。
11)得られた人工歯3に重合硬化している義歯床用レジン2が固着されている有床義歯をほぼ無圧でマスター模型1に嵌め込み、辺縁を即時重合レジン(株式会社ジーシー製,商品名:ユニファスト)で固定し、図1で示すX−X線部で切断し、投影機(株式会社キーエンス製マイクロスコープ)で図2に示す粘膜面側の5点(A,B,C,D及びEの各点)の隙間量を測定し、適合精度を比較した。結果は表1に示した。
【0027】
実施例2〜10、比較例1〜2
実施例2〜10及び比較例1〜2は、義歯床用レジン,塗布材,フラスコの種類,重合方法を表1に示したものに変えた以外は実施例1と同様にして適合試験を実施した。結果は表1にまとめて示した。
【0028】
【表1】
Figure 0003810496
【0029】
【発明の効果】
実施例と比較例の試験結果より明らかなように、本発明方法によれば、従来の湿熱重合方法やマイクロ波重合方法と比べて、優れた適合精度を有する有床義歯の作製が可能となった。また、実施例7〜10は義歯床用レジン,塗布材が同じで重合方法とフラスコの種類とが異なる例であるが、実施例9,10のように加圧注入型のフラスコを用いた場合に格段に適合精度が向上した有床義歯が作製できることが判明した。
【0030】
このように本発明に係る有床義歯の作製方法によれば、義歯床用レジンが粉剤としてメタクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸化物とを含み、液剤がモノメタクリル酸エステル単量体と架橋材と第4級アンモニウムクロライドとを含む構成の場合に、餅状の義歯床用レジンを填入する前の義歯床の粘着面側となる石膏模型表面に鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含んだ塗布材を一層塗布しておくことよって義歯床用レジンを義歯床の粘膜面側から重合を開始させることができ、簡便な操作で適合精度に優れた有床義歯の作製が可能になった。その結果、患者は、口腔粘膜面に良好に適合し脱落の恐れのない満足した有床義歯を装着できるという非常に優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 適合精度の試験に使用した上顎無歯顎模型の平面図である。
【図2】 適合試験における隙間測定個所を示す第1図のX−X線部で切断した模型と有床義歯の切断面図である。
【符号の説明】
1 マスター模型
2 重合硬化している義歯床用レジン
3 人工歯
A〜E 模型と有床義歯との隙間測定箇所

Claims (7)

  1. 石膏模型上で蝋義歯を作製し、埋没用石膏を用いてフラスコ内に石膏模型と共に蝋義歯を埋没し、流蝋して得た義歯床部分の空隙の義歯床の粘膜面側となる石膏模型表面に鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含む塗布材を塗布した後、該空隙内にメタクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸化物とを含む粉剤と、モノメタクリル酸エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライドとを含む液剤とを混合練和した餅状の義歯床用レジンを填入し、加熱重合して有床義歯を作製することを特徴とする有床義歯の作製方法。
  2. 鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含む塗布材として、鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上の濃度が溶媒100重量部に対して0.005〜10重量部である塗布材を使用する請求項1に記載の有床義歯の作製方法。
  3. 義歯床用レジンの粉剤として、メタクリル酸エステル重合体100重量部に対して、バルビツール酸誘導体0.05〜3重量部、有機過酸化物0.1〜2重量部から成る組成物を使用する請求項1又は2に記載の有床義歯の作製方法。
  4. 義歯床用レジンの粉剤において、バルビツール酸誘導体が1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸,5−n−ブチルバルビツール酸,1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸から選ばれる1種又は2種以上であり、有機過酸化物がベンゾイルパーオキサイドであるものを使用する請求項1から3までのいずれか1項に記載の有床義歯の作製方法。
  5. 義歯床用レジンの液剤として、モノメタクリル酸エステル単量体100重量部に対し、架橋剤が0.1〜15重量部、第4級アンモニウムクロライドが0.05〜1重量部から成る組成物を使用する請求項1から4までのいずれか1項に記載の有床義歯の作製方法。
  6. 義歯床用レジンの液剤において、モノメタクリル酸エステル単量体がメタクリル酸メチル単量体であるか、又はメタクリル酸メチル単量体とメタクリル酸メチル単量体以外のモノメタクリル酸エステル単量体との混合物であり、架橋剤が多官能性メタクリレート、ジアリルフタレート又は多官能性メタクリレートにジアリルフタレートを加えた混合物であり、第4級アンモニウムクロライドがジラウリルジメチルアンモニウムクロライドであるものを使用する請求項1から5までのいずれか1項に記載の有床義歯の作製方法。
  7. 流蝋して得た義歯床部分の空隙に餅状の義歯床用レジンを填入するフラスコとして、加圧注入型のフラスコを用いる請求項1から6までのいずれか1項に記載の有床義歯の作製方法。
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