JP3810134B2 - コンタクト及びこのコンタクトを備えたicソケット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気コネクタで導電接触要素として使用されるコンタクトに関し、特に、ICデバイスと外部回路との間を電気的に接続する電気コネクタであるICソケットのうち、ICデバイスの着脱が容易な無挿抜力型のICソケットにおいて好適に使用されるコンタクトに関する。さらに本発明は、そのようなコンタクトを備えた無挿抜力型のICソケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
ICソケットでは、対象となるICデバイスのリードの本数が増えるに従って、リードをコンタクトに接続する際及びコンタクトから分離する際に要する力、すなわちコンタクト接点部分へのリードの挿入力及び引抜き力が大きくなり、ICデバイスの着脱が困難になるとともに、リードを撓曲したり損傷したりする危惧が生じる。このような危惧を排除するために、リード接続時の挿入力及びリード分離時の引抜き力を要しないいわゆる無挿抜力(ZIF)型のICソケットが提供されている(例えば実開平2−64184号公報参照)。
【0003】
図10は、従来技術の一例として、無挿抜力型ICソケット100及びICソケット100に使用されるコンタクト102を示す。図10(a)、(c)に示すように、ICソケット100は、複数の第1貫通孔104を備えた第1支持部材106と、第1支持部材106に相対移動可能に連結され、複数の第1貫通孔104に重畳可能な対応位置に複数の第2貫通孔108を備えた第2支持部材110と、複数の第1貫通孔104に受容される複数のコンタクト102とを備える。第1支持部材106は、外部の回路基板112に対向配置され、複数のコンタクト102が回路基板112上の導体114に固定的に接続される。第2支持部材110の複数の第2貫通孔108には、ICデバイス116の複数のリード118が受容される。
【0004】
図10(e)に示すように、コンタクト102は、平板を略コ字状に曲成してなる基部120と、基部120の対向二片の一側縁から各片に対し鈍角を成して、それぞれの自由端に向かって徐々に相互接近するように延長される一対の接触部122と、基部120の中間片の一側縁から接触部122の反対側へ中間片に略平行に延長される端子部124と、基部120の中間片の他側縁から接触部122と同一側へ中間片に略平行に延長される補助接触部126とを備える。各接触部122の自由端には、ICデバイス116のリード118に接続される接点128が設けられる。両接触部122は、基部120に連結されたそれらの基端を支点として弾性変形可能であり、それにより両接点128間の間隔が拡縮されるようになっている。また両接触部122の、補助接触部126から離れた側で延長方向に沿う一縁には、リード118を両接点128の間に導入する導入案内部130が設けられる。端子部124は、第1支持部材106の外方に突出して外部導体114に固定的に接続される。
【0005】
ICデバイス116のリード118をICソケット100のコンタクト102に接続する際には、まず第1支持部材106の複数の第1貫通孔104に受容されたコンタクト102にリード118が実質的に接触しない位置に複数の第2貫通孔108を配置すべく、第2支持部材110を第1支持部材106上で位置決めする。この状態で、複数の第2貫通孔108の各々にリード118を挿入し、第2支持部材110上にICデバイス116を支持する(図10(a))。このとき、挿入力は実質的に不要であり、リード118は第1貫通孔104に進入してコンタクト102の接触部122に近接配置される(図10(b))。次いで、ICデバイス116を支持した第2支持部材110を第1支持部材106に対して移動すると、複数のリード118の各々が、第1貫通孔104に受容されたコンタクト102の一対の接触部122の間に、両接触部122を弾性変形させつつそれらの導入案内部130から進入し、それによりコンタクト102に摺動式に、かつ所定圧力下で接続される(図10(c)、(d))。リード118をコンタクト102から分離する際には、第2支持部材110を第1支持部材106に対して反対方向に移動すればよい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、ICを搭載した電子機器の小形化及び高機能化の要求に伴い、ICデバイスのパッケージの小形化及びリードの配置間隔(ピッチ)の狭小化が進んでおり、それに対応してICソケットにおいても、ソケット本体を小形化すること、及びコンタクトのピッチを狭小化することが求められている。このような要求に対し、上記した従来の無挿抜力型ICソケットに使用されるコンタクトは、その各構成部分がコンタクトの長手方向に沿って配置されており、その結果、コンタクトの全長を縮小することが困難となっていた。これは、コンタクトの基部が、接触部と端子部とを所望強度の下に機械的に連結できるだけの幅(すなわちコンタクト長手方向への寸法)を必要とし、またコンタクトの接触部及び端子部が、リード及び外部導体との確実な電気的接続を達成するに充分な長さを必要とするからである。
【0007】
しかも、上記した従来の無挿抜力型ICソケットでは、第1支持部材に設けた第1貫通孔の底壁がコンタクトを支持しているので、コンタクトの基部及び接触部の合計長さよりも大きな厚み(すなわちコンタクト長手方向への寸法)が第1支持部材に要求される。このように従来の無挿抜力型ICソケットは、使用されるコンタクト形状に起因して、ソケット本体の厚みを所定寸法以下に削減することが困難であるという課題を有していた。
【0008】
また、上記した従来の無挿抜力型ICソケットに使用されるコンタクトは、その材料及び接触部の長さを特定したときに、対向する一対の接触部の無負荷状態での基部に対する傾斜角度が、それら接触部とICデバイスのリードとの間の接触圧力に影響を及ぼすので、所望の接触圧力を維持しつつ両接触部間の間隔を縮小することは困難であった。すなわち、コンタクトの横断方向寸法を削減することは困難であり、その結果、従来の無挿抜力型ICソケットでは、やはりコンタクト形状に起因して、コンタクトのピッチを所定寸法以下に縮小することが困難であるという課題を有していた。
【0009】
したがって本発明の目的は、電気コネクタ用のコンタクトにおいて、それ自体の機械的強度及び電気接続特性を維持しつつ長さを縮小できるコンタクトを提供することにある。
本発明の他の目的は、電気コネクタ内での配置間隔を容易に縮小できるコンタクトを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、そのようなコンタクトを使用でき、それによりソケット本体の寸法を縮小できるようにした無挿抜力型のICソケットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、略平板状の基部と、基部から所定方向に延長され、その延長方向に沿った一縁に電気装置のリードを導入する導入端を有してリードに摺動式に接続される接触部と、接触部とは反対の方向へ基部から延長され、外部回路に固定的に接続される端子部と、電気コネクタの絶縁筐体に係合する係合部とを具備した電気コネクタ用コンタクトにおいて、接触部は、基部の周縁第1位置から基部に鋭角に延長され、端子部は、基部の周縁第1位置とは異なる周縁第2位置から基部に略直交して延長され、係合部は、基部の周縁第1位置及び周縁第2位置とは異なる周縁第3位置から接触部と同一の方向へ基部に略直交して延長され、基部の単一の周縁第1位置から延長される単一の接触部と、周縁第1位置に対向する側で基部の単一の周縁第3位置から延長される単一の係合部とを具備したことを特徴とするコンタクトを提供する。
【0011】
本発明はさらに、複数の第1貫通孔を備えた第1支持部材と、第1支持部材に相対移動可能に配置され、複数の第1貫通孔に重畳可能な対応位置に複数の第2貫通孔を備えた第2支持部材と、複数の第1貫通孔に受容される複数のコンタクトとを具備し、第2支持部材が複数の第2貫通孔にICデバイスの複数のリードを受容した状態で第1支持部材に対して移動することにより、複数のコンタクトが複数のリードに選択的に接続及び分離される無挿抜力型のICソケットにおいて、複数のコンタクトの各々が、上記した本発明に係るコンタクトであることを特徴とするICソケットを提供する。
【0012】
本発明はさらに、上記のICソケットにおいて、第1支持部材は、第2支持部材から離れた側で外部回路に対向配置される裏面を備え、この裏面に、複数のコンタクトの各々の基部が当接支持されるとともに、複数のコンタクトの各々の係合部を個別に受容する複数の凹部が設けられるICソケットを提供する。
【0013】
さらに本発明は、上記のICソケットにおいて、第1支持部材の複数の第1貫通穴の各々は、複数のコンタクトの各々の接触部に対向配置される壁を備え、この壁が、接触部と協働してICデバイスのリードを挟持できるとともに、接触部の導入端に実質的に対向した壁の一部分に、リードを導入する傾斜面が形成されるICソケットを提供する。
【0014】
本発明はさらに、上記のICソケットにおいて、第1支持部材の複数の第1貫通穴が、千鳥状に整列配置されるICソケットを提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明をその好適な実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による電気コネクタ用のコンタクト10を示す。コンタクト10は、電気信号の伝送が可能な電気良導性の弾性金属材料からなり、例えば図2に示すような無挿抜力型のICソケットにおいて、ICデバイスのリードに摺動式に接触及び分離する導電接続要素として特に好適に使用される。
【0016】
コンタクト10は、略矩形平板状の基部12と、基部12の一長縁12aに配された周縁第1位置から基部12に鋭角に延長される平板状の接触部14と、周縁第1位置に対向して基部12の他長縁12bに配された周縁第2位置から、接触部14とは反対の方向へ基部12に略直交して延長される平板状の端子部16と、周縁第2位置に隣接して基部12の他長縁12bに配された周縁第3位置から、接触部14と同一の方向へ基部12に略直交して延長される平板状の係合部18とを備える。
【0017】
接触部14は、基部12に連結される基端14aから末端の自由端14bに向かって徐々に縮幅され、自由端14bに、例えばICデバイス等の電気装置の導通端子(すなわちリード)に接触する接点領域20が設けられる。接触部14は、基端14aを支点として弾性的に撓むことができ、それにより接点領域20が、基部12の上方で基部12を横断する方向へ弾性的に揺動できるようになっている。なお無負荷状態では、接点領域20は基部12の主表面12cの鉛直上方に配置される。
【0018】
接触部14の延長方向に沿って斜めに延びる一縁には、電気装置のリードを接点領域20に導入する導入端22が設けられる。すなわちコンタクト10は、基部12に略平行な方向(図示矢印A)へ移動する電気装置のリードを、接触部14の導入端22から導入して接点領域20に摺動式に接触させる構成を有する。なお好ましくは、接点領域20の導入端22側に、電気装置のリードを接点領域20に正確に案内するための案内板24が設けられる。
【0019】
後述するようにコンタクト10を電気コネクタの所定の受容部に組み込んだときに、接触部14は受容部の固定壁に対向配置される。したがって電気装置のリードは、接触部14の導入端22から、案内板24により案内されつつ接点領域20と対向固定壁との間に導入される。このとき接触部14は、リードに押圧されて弾性的に撓曲し、それによりリードは、接触部14の弾性復元力(ばね力)による所定圧力の下でコンタクト10に接続される。なお案内板24は、リードを接点領域20と対向固定壁との間に導入するに要する力を軽減する作用も果たす。
【0020】
端子部16は、コンタクト10を電気コネクタに組み込んだときに電気コネクタから外方に突出して、プリント配線板等の外部回路の導体に固定的に接続される。係合部18は、コンタクト10を電気コネクタに組み込んだときに電気コネクタの絶縁筐体に係合して、コンタクト10を電気コネクタの所定の受容部内に固定的に保持する。なお、端子部16及び係合部18には、それらの機械的強度を増大する窪み17及び19がそれぞれ設けられる。
【0021】
このようにコンタクト10によれば、基部12がコンタクト長手方向に対して略直交する方向へ延びるので、図10に示すような基部120がコンタクト長手方向に沿って設けられる従来のコンタクト102に比べて、コンタクト10の全長を縮減することが可能となる。このとき基部12は、接触部14と端子部16とを所望強度の下に機械的に連結できるだけの幅(すなわちコンタクト横断方向への寸法)を維持でき、接触部14は、リードとの確実な電気的接続を達成するに充分なばね力を発揮する長さを維持でき、また端子部16は、外部導体に確実に固定されるに充分な長さを維持できる。
【0022】
さらにコンタクト10によれば、係合部18が接触部14と同一の方向へ基部12から直立状に延長されるので、コンタクト10を受容する電気コネクタの絶縁筐体の、プリント配線板等の外部回路に対向配置される底面に係合部18を嵌入する凹部を設ければ、係合部18と凹部との協働によりコンタクト10を所定位置に容易に固定できる。しかもこのとき、絶縁筐体底面に基部12を当接することにより、コンタクト10を適正姿勢に容易に保持できる。このようにして絶縁筐体は、コンタクト10の基部12を支持するコンタクト受容部の底壁を省略できるので、絶縁筐体全体の厚みを削減することが可能となる。
【0023】
次に図2〜図8を参照し、上記のコンタクト10を使用した本発明の一実施形態による無挿抜力型のICソケット30を説明する。図2に示すように、ICソケット30は、複数の第1貫通孔32を備えた第1支持部材34と、第1支持部材34に相対移動可能に連結され、複数の第1貫通孔32に重畳可能な対応位置に複数の第2貫通孔36を備えた第2支持部材38と、第1支持部材34の複数の第1貫通孔32に受容される複数のコンタクト10とを備える。さらにICソケット30には、第2支持部材38を第1支持部材34に対して所定方向へ移動させるカム部材40が、第1支持部材34と第2支持部材38との間に配設される。
【0024】
ICソケット30は、第1支持部材34を外部の回路基板42に対向配置して回路基板42に実装される。このとき複数のコンタクト10が、端子部16を介して回路基板42上の導体44に例えば半田付け等により固定的に接続される(図5)。ICデバイス46は、第2支持部材38に対向してICソケット30に搭載される(図4)。このときICデバイス46の複数のリード48が、第2支持部材38の複数の第2貫通孔36に受容される(図5)。なお図示実施形態では、ICデバイス46は一般にPGA(ピングリッドアレイ)と称するパッケージ構造の改良構造を有し、パッケージ本体に通常のPGAにおける行列配置をさらに狭ピッチ化した千鳥状配置で突設された多数の円柱状リード48を有する。
【0025】
第1支持部材34及び第2支持部材38は、外力に抗して少なくとも複数のコンタクト10及びICデバイス46を所定姿勢に支持し得る剛性を有した電気絶縁性の板状部材からなる。第1支持部材34は、略平坦な矩形主表面50と、主表面50の反対側で主表面50に略平行に延び、回路基板42に対向する矩形裏面52とを備える。第2支持部材38は、ICデバイス46に対向する略平坦な矩形主表面54と、主表面54の反対側で主表面54に略平行に延び、第1支持部材34に対向する矩形裏面56とを備える。第2支持部材38の一対の長縁には、裏面56に略直交して垂れ57が延設され、それら垂れ57が、第1支持部材34の一対の長縁53を抱持することにより、第2支持部材38が第1支持部材34に長手方向(図3矢印B)へ移動可能に連結される。なお垂れ57及び長縁53には、第2支持部材38を長手方向Bへ正確に案内するために、例えば図示しない突起と溝とからなる係合案内手段を適宜設けることができる。
【0026】
第1支持部材34の複数の第1貫通孔32は、それぞれ略矩形開口の角柱状輪郭を有し、各開口の対応辺を同一方向に向けて千鳥状に整列配置される。第1貫通孔32を画成する4つの壁58a〜58d(図6)は、いずれも第1支持部材34の主表面50及び裏面52に略直交して配置され、開口の長辺を成す一対の壁58a、58cが、第1支持部材34上での第2支持部材38の移動方向に平行に配置される。なお一方の壁58aには、第2支持部材38の移動方向の中間位置に傾斜案内面60が設けられ、それにより壁58aに段差が付与される。その結果、第1貫通孔32の開口の短辺を成す一方の壁58bは、同短辺を成す他方の壁58dより大きな面積を有する。さらに第1支持部材34の裏面52には、壁58aと壁58dとの交差部位の近傍に、凹部62が設けられる(図7)。
【0027】
第2支持部材38の複数の第2貫通孔36は、第1支持部材34の複数の第1貫通孔32に対応して千鳥状に整列配置される。各第2貫通孔36は、第2支持部材38の裏面56に一端で開口する円柱状輪郭部分と、円柱状輪郭部分の他端から同心状に拡径して主表面54に開口する円錐台状輪郭部分とを備え、両部分の軸線が主表面54及び裏面56に略直交して配置される。第2貫通孔36の円柱状輪郭部分は、第1支持部材34上で第2支持部材38が移動する間、常に第1貫通孔32に重畳され、第1貫通孔32の一対の壁58b、58dによって規定される区域を壁58cに略平行な方向へ変位する。
【0028】
カム部材40は、略L字状に曲成された丸棒からなり、L字の一方の腕がその中央領域で僅かに軸線を偏移すべく曲成されてカム部分64を成し、他方の腕がハンドル66を成す。第1支持部材34は、主表面50の一方の短辺に沿って主表面50から凹設される溝68を備え、溝68にカム部材40のカム部分64が回動可能に受容支持される。第2支持部材38には、第1支持部材34の溝68に対応する位置に、例えば図示しない突起が設けられ、溝68に支持されたカム部材40のカム部分64がこの突起に当接される。したがって、カム部材40を操作してカム部分64を溝68内で回動(図3矢印C)すると、軸線の偏移したカム部分64が突起を押圧し、それにより第2支持部材38が第1支持部材34上で長手方向Bへ移動する。
【0029】
コンタクト10は、第1支持部材34の裏面52側から第1貫通孔32に挿入される。このときコンタクト10の接触部14は、第1貫通孔32の段付きの壁58aに所定間隔を開けて略平行に対向配置され、導入端22が第1貫通孔32の壁58bから離間配置されるとともに導入端22の反対側の縁部14cが壁58dに隣接配置される。したがって接触部14の接点領域20は、壁58aの壁58cに接近した部分に対向配置され、案内板24が、壁52aの傾斜案内面60に実質的に対向配置される。なお、接触部14の接点領域20は、第1支持部材34の主表面50における第1貫通孔32の開口に近接配置され、接点領域20と第1貫通孔32の壁52aとの間隔は、接触部14に負荷が加わらない状態で、ICデバイス46のリード48の直径よりも小さく設定される。
【0030】
コンタクト10の係合部18は、第1支持部材34の凹部62に嵌入され、係合部18に隣接する基部12の一部分が第1支持部材34の裏面52に当接される。この状態でコンタクト10は、係合部18と凹部62との協働により第1貫通孔32内に固定的に支持され、基部12と裏面52との協働により適正姿勢に保持される。またコンタクト10の端子部16は、第1支持部材34の裏面52から外方に突出して、回路基板42の導体44に固定的に接続される。
【0031】
ICソケット30にICデバイス46を搭載する際には、まず第2貫通孔36の円柱状輪郭部分が第1貫通孔32の壁58bに近接して重畳する相対位置に、第1支持部材34と第2支持部材38とを配置する(図3)。この状態で、ICデバイス46のリード48を第2貫通孔36に挿入すると、リード48は第1貫通孔32内に進入して、コンタクト10の接触部14の案内板24及び第1貫通孔32の壁58aの傾斜案内面60に近接して配置される(図5(a)及び図6(a))。このとき、リード48はコンタクト10に実質的に接触しないので、挿入力を要さずにICデバイス46を第2支持部材38に搭載できる。
【0032】
次いでカム部材40を回動操作して、ICデバイス46を支持した第2支持部材38を第1支持部材34に対し長手方向へ移動すると、複数のリード48の各々が、まず第1貫通孔32の傾斜案内面60に案内され、次いでコンタクト10の案内板24に案内されて、導入力を軽減されつつ、接触部14の導入端22から接点領域20と壁58aとの間に導入される。このとき接触部14は、リード48に押圧されて弾性的に撓曲し、弾性復元力(ばね力)により、壁58aとの間にリード48を挟持する。このようにしてリード48は、接触部14のばね力による所定圧力の下でコンタクト10に接続される。
【0033】
さらにこの状態から、カム部材40を逆方向に回動操作して、第2支持部材38を第1支持部材34に対して反対方向に移動すれば、リード48がコンタクト10から容易に分離され、引抜き力を要さずにICデバイス46をICソケット30から脱離することができる。
【0034】
このように、コンタクト10を使用したICソケット30は、前述のように所望の機械的強度及び電気接続特性を維持しつつコンタクト10の全長を削減でき、しかも、コンタクト10をその基部12を第1支持部材34の裏面52に当接した状態で第1貫通孔32に固定的に支持できるので、従来のコンタクトを使用したICソケットに比べて、第1支持部材34の厚み(すなわちコンタクト長手方向への寸法)を削減することが可能となる。
【0035】
またICソケット30では、接触部14を1つしか有しないコンタクト10を使用したので、第1支持部材34の第1貫通孔32の配置間隔を縮小して、図8(a)に示すような千鳥状配置に第1貫通孔32を形成できる。その結果、ICソケット30は、PGAパッケージのリード配置をさらに狭ピッチ化した千鳥状配置のリード48を有するICデバイス46への適用が可能となる。
【0036】
さらにICソケット30は、第1支持部材34の第1貫通孔32の壁58aに傾斜案内面60を設けたので、接触部14を1つしか有しないコンタクト10を使用したときにも、ICデバイス46のリード48を接触部14の接点領域20に導入する力を軽減するとともに、接点領域20とリード48との間に所望の接触圧力を容易に得ることができる。特に、接触部14を1つしか有しないコンタクト10では、2つの接触部を有する従来のコンタクトに比べて、接触部14先端の接点領域20の弾性変位量を大きく取れるので、コンタクト10の材料としてばね定数の比較的小さな材料を使用できる。ばね定数の小さな材料を使用すれば、リード48の径寸法(すなわち接触部14の変位量)の変化に対するばね力(すなわち接触圧力)の変化が小さく、所望の接触圧力を容易に得ることができる利点が生じる。
【0037】
図9は、本発明の関連技術によるコンタクト70を示す。コンタクト70は、図1のコンタクト10と同様に、例えば図2に示すような無挿抜力型のICソケットにおいて、ICデバイスのリードに摺動式に接触及び分離する導電接続要素として特に好適に使用される。
【0038】
コンタクト70は、略矩形平板状の基部72と、基部72の一対の長縁72a、72bに配された2つの周縁第1位置から基部72に鋭角に延長される一対の平板状の接触部74と、基部72の一短縁72cに配された周縁第2位置から、接触部74とは反対の方向へ基部72に略直交して延長される平板状の端子部76と、周縁第2位置に対向して基部72の他短縁72dに配された周縁第3位置から、接触部74と同一の方向へ基部72に略直交して延長される平板状の係合部78とを備える。
【0039】
各接触部74は、基部72に連結される基端74aから末端の自由端74bに向かって徐々に縮幅され、自由端74bに、例えばICデバイス等の電気装置の導通端子(すなわちリード)に接触する接点領域80が設けられる。両接触部74は、基端74aを支点として弾性的に撓むことができ、それにより両接点領域80が、基部72の上方で基部72を横断する方向へ弾性的に揺動できるようになっている。なお無負荷状態では、両接点領域80は基部72の主表面72eの鉛直上方に配置される。
【0040】
各接触部74の延長方向に沿って斜めに延びる一縁には、電気装置のリードを接点領域80に導入する導入端82が設けられる。すなわちコンタクト70は、基部72に略平行な方向(図示矢印A)へ移動する電気装置のリードを、両接触部74の導入端82から導入して両接点領域80に摺動式に接触させる構成を有する。なお好ましくは、各接点領域80の導入端82側に、電気装置のリードを接点領域80に正確に案内するための案内板84が設けられる。
【0041】
前述したようにコンタクト70を電気コネクタの所定の受容部に組み込んだときに、電気装置のリードは、両接触部74の導入端82から、案内板84により案内されつつ両接点領域80の間に導入される。このとき両接触部74は、リードに押圧されて弾性的に撓曲し、それによりリードは、接触部74の弾性復元力(ばね力)による所定圧力の下でコンタクト70に接続される。なお案内板84は、リードを両接点領域80の間に導入する力を軽減する作用も果たす。
【0042】
端子部76は、コンタクト70を電気コネクタに組み込んだときに電気コネクタから外方に突出して、プリント配線板等の外部回路の導体に固定的に接続される。係合部78は、コンタクト70を電気コネクタに組み込んだときに電気コネクタの絶縁筐体に係合して、コンタクト70を電気コネクタの所定の受容部内に固定的に保持する。
【0043】
このようにコンタクト70は、コンタクト10と同様に、基部72がコンタクト長手方向に対して略直交する方向へ延びるので、所望の機械的強度及び電気接続特性を維持しつつ、コンタクト70の全長を削減することが可能となる。さらに、係合部78が接触部74と同一の方向へ基部72から直立状に延長されるので、コンタクト70を受容する電気コネクタの絶縁筐体の、外部回路に対向配置される底面に係合部78を嵌入する凹部を設ければ、係合部78と凹部との協働によりコンタクト70を所定位置に容易に固定でき、しかも絶縁筐体底面に基部72を当接することにより、コンタクト70を適正姿勢に容易に保持できる。その結果、電気コネクタの絶縁筐体の厚みを削減することが可能となる。
【0044】
ただしコンタクト70は、図10に示すような従来のコンタクト102と同様に、相互に対向する2つの接触部74を備えるので、コンタクト10のように、第1支持部材34の第1貫通孔32の配置間隔を千鳥状に縮小したICソケット30に使用することは困難である。したがってコンタクト70は、図8(b)に示すような格子状配置に第1貫通孔32′を形成した第1支持部材を備え、一般的なPGAパッケージ構造を有するICデバイスに適用されるICソケットにおいて、特に好適に使用される。しかしその場合も、ICソケットの厚み(すなわちコンタクト長手方向への寸法)を削減できることは言うまでもない。なお、そのようなICソケットでは、図2のICソケット30における第1貫通孔32の傾斜案内面60は省略される。
【0045】
本発明に係るコンタクトは、上記以外の様々な構成を有することができる。例えば上記実施形態において、コンタクト10、70の端子部16、76及び係合部18、78は、基部12、72の周縁上で、かつ外部回路との電気接続及びコンタクトの固定支持を確実に達成できる位置あれば、図示の位置以外の様々な位置に形成できる。また、接触部14、74の案内板24、84を省略し、導入端22、82のみにより、リードを接点領域20、80に導入する構成としてもよい。
【0046】
本発明に係るICソケットは、上記したようなPGA構造のICデバイスのみならず、各コンタクトの配置を適宜変更することにより、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、SIP(シングルインラインパッケージ)、ZIP(ジグザグインラインパッケージ)、SOI(スモールアウトラインIリードパッケージ)、QFI(クワッドフラットIリードパッケージ)等のパッケージ構造を有するICデバイスに適用できる。
【0047】
本発明に係るコンタクトは、様々な材料から形成できるが、例えばベリリウム銅や燐青銅等のばね性を有する金属材料からなることが好ましい。また、それらコンタクトの少なくとも接点領域には、ニッケル下地の金メッキを施すことが望ましい。また本発明に係るコンタクトは、例えば上記金属材料の薄板に打抜き工程及び曲げ工程を施すことにより形成できる。なお、メッキ工程を考慮すれば、上記実施形態によるコンタクト10のように1つの接触部14を有する場合、2つの接触部74を有するコンタクト70に比べて、接触領域20へのメッキ材料の塗着が容易である利点が生じる。
【0048】
本発明に係るICソケットは、様々な材料から形成できる。例えば上記実施形態において、第1支持部材34及び第2支持部材38は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)等の、耐熱性及び機械的強度に優れた樹脂材料から形成されることが好ましい。またカム部材40は、ステンレス鋼等の金属材料から形成されることが好ましい。この場合、第1支持部材34及び第2支持部材38は、上記樹脂材料から例えば射出成型工程により製造できる。またカム部材40は、例えば上記金属材料からなる棒材に曲げ加工を施すことにより製造できる。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、コンタクトの基部をコンタクト長手方向に対して略直交する方向へ延長したので、コンタクト自体の機械的強度及び電気接続特性を維持しつつその長さを縮小でき、しかも、コンタクトの係合部を接触部と同一の方向へ基部から直立状に延長したので、コンタクトを電気コネクタの絶縁筐体の底面に固定でき、その結果、電気コネクタの厚みを削減することができる。また、そのようなコンタクトにおいて、接触部を1つにすることにより、電気コネクタ内でのコンタクトの配置間隔を容易に縮小できる。
さらに本発明によれば、そのようなコンタクトを使用でき、それによりソケット本体の寸法を縮小できるようにした無挿抜力型のICソケットが提供される。したがって本発明は、電子機器の小形化及び高機能化の促進に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるコンタクトの斜視図である。
【図2】 本発明の一実施形態によるICソケットの分解斜視図である。
【図3】 図2のICソケットを組立てた状態で、かつICデバイスを搭載する前の状態で示す斜視図である。
【図4】 図2のICソケットを組立てた状態で、かつICデバイスを搭載した状態で示す斜視図である。
【図5】 図2のICソケットを回路基板に実装してICデバイスを搭載した状態で示す部分断面図で、(a)図6の線Va−Vaに沿って示すリード未接続時の図、及び(b)図6の線Vb−Vbに沿って示すリード接続時の図である。
【図6】 図5に対応するICソケットの部分平面図で、(a)図5の線 VIa−VIa に沿示すリード未接続時の図、及び(b)図5の線 VIb−VIb に沿って示すリード接続時の図である。
【図7】 図2のICソケットの部分拡大底面図である。
【図8】 本発明の実施形態によるICソケットの第1支持部材の第1貫通孔の配置例を示す図で、(a)格子状配置の図、及び(b)千鳥状配置の図である。
【図9】 本発明の関連技術によるコンタクトの斜視図である。
【図10】 従来のコンタクト及びICソケットを示す図で、(a)リード未接続時のICソケットの部分断面図、(b)リード接続時のICソケットの部分断面図、(c)リード未接続時のICソケットの部分平面図、(b)リード接続時のICソケットの部分平面図、及び(e)コンタクトの斜視図である。
【符号の説明】
10、70…コンタクト
12、72…基部
14、74…接触部
16、76…端子部
18、78…係合部
20、80…接点領域
22、82…導入端
24、84…案内板
30…ICソケット
32…第1貫通孔
34…第1支持部材
36…第2貫通孔
38…第2支持部材
42…回路基板
46…ICデバイス
48…リード
52…裏面
60…傾斜案内面
62…凹部
Claims (5)
- 略平板状の基部と、該基部から所定方向に延長され、その延長方向に沿った一縁に電気装置のリードを導入する導入端を有して該リードに摺動式に接続される接触部と、該接触部とは反対の方向へ該基部から延長され、外部回路に固定的に接続される端子部と、電気コネクタの絶縁筐体に係合する係合部とを具備した電気コネクタ用コンタクトにおいて、
前記接触部は、前記基部の周縁第1位置から該基部に鋭角に延長され、
前記端子部は、前記基部の前記周縁第1位置とは異なる周縁第2位置から該基部に略直交して延長され、
前記係合部は、前記基部の前記周縁第1位置及び前記周縁第2位置とは異なる周縁第3位置から前記接触部と同一の方向へ該基部に略直交して延長され、
前記基部の単一の前記周縁第1位置から延長される単一の前記接触部と、該周縁第1位置に対向する側で該基部の単一の前記周縁第3位置から延長される単一の前記係合部とを具備したこと、
を特徴とするコンタクト。 - 複数の第1貫通孔を備えた第1支持部材と、該第1支持部材に相対移動可能に配置され、該複数の第1貫通孔に重畳可能な対応位置に複数の第2貫通孔を備えた第2支持部材と、該複数の第1貫通孔に受容される複数のコンタクトとを具備し、該第2支持部材が該複数の第2貫通孔にICデバイスの複数のリードを受容した状態で該第1支持部材に対して移動することにより、該複数のコンタクトが該複数のリードに選択的に接続及び分離される無挿抜力型のICソケットにおいて、
前記複数のコンタクトの各々が、請求項1に記載のコンタクトであることを特徴とするICソケット。 - 前記第1支持部材は、前記第2支持部材から離れた側で外部回路に対向配置される裏面を備え、該裏面に、前記複数のコンタクトの各々の前記基部が当接支持されるとともに、該複数のコンタクトの各々の前記係合部を個別に受容する複数の凹部が設けられる、請求項2に記載のICソケット。
- 前記第1支持部材の前記複数の第1貫通穴の各々は、前記複数のコンタクトの各々の前記接触部に対向配置される壁を備え、該壁が、該接触部と協働してICデバイスのリードを挟持できるとともに、該接触部の前記導入端に実質的に対向した該壁の一部分に、該リードを導入する傾斜面が形成される、請求項2又は3に記載のICソケット。
- 前記第1支持部材の前記複数の第1貫通穴が、千鳥状に整列配置される、請求項2〜4のいずれか1項に記載のICソケット。
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