JP3808913B2 - 光学補償フィルムの製造方法および光学補償フィルム - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶表示装置に用いられる光学補償フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示素子は、薄型軽量、低消費電力という大きな利点を持つため、パーソナルコンピュータやワードプロセッサ、携帯型電子手帳等の表示装置に積極的に用いられている。液晶表示素子の原理は数多く提案されているが、現在普及している液晶表示素子のほとんどは、ねじれネマチック型の液晶を用いている。このような液晶を用いた表示方式は、複屈折モードと旋光モードの2つの方式に大別される。
【0003】
複屈折モードであるスーパーツイストネマチック(STN)方式は急峻な電気光学特性を持つことにより、単純マトリックスで駆動できるため、比較的低価格で市場に供給されているが、かかる方式では偏光板を介して直線偏光とした入射光が液晶セルによる複屈折で楕円偏光となり、それを偏光板を介して見た場合にはデイスプレイが着色して見えるといった問題がある。そのため、液晶セル透過後の楕円偏光を直線に戻して着色を防止すべく、液晶セルと偏光板の間に延伸フィルム等からなる位相差板を介在させるF−STN方式が提案されている。
【0004】
このような位相差板としては、ポリカーボネートフィルム等を一軸延伸した一軸配向フィルムや、高分子液晶を用いねじれネマチック構造を配向固定したもの等がすでに提案されている。
【0005】
一方、旋光モードであるツイストネマチック(TN)方式は90゜のねじれネマチック液晶からなり、応答速度が数十ミリ秒と速く、高いコントラスト比と良好な階調表示性を示すことから、薄膜トランジスター等のスイッチング素子を各画素ごとに配備した液晶表示素子として、液晶テレビ等の高精細、高速性が要求される用途で使用されている。
【0006】
しかし、このようなスイッチング素子と組み合わせたTN方式の液晶表示素子でも、見る方向によってはコントラスト比が変化するといった視角依存性を持つという難点があった。
【0007】
TN方式の液晶表示素子の視角特性を改善する多くの方法が提案されている。膜厚方向の屈折率が面内方向の屈折率より小さい光学的に負の2軸性光学補償フィルムをTN方式に用いることが提案されている。
【0008】
また、かかる負の2軸性光学補償フィルムについてより具体的に提案している例としては、第16回液晶討論会講演予稿集P236がある。ここでは2枚の偏光板の間にTN方式液晶セルと、ポリカーボネートを材質とした一軸性位相差フィルムを、光学軸が直交するように2枚積層されたものを配置することにより、視角特性を改善する方法を提案している。
【0009】
さらに他の方法としては、特開平6−82779号公報に示されるように、無機層状化合物を用いる方法が開示されている。
【0010】
また、先述の高分子液晶を用い10数回以上のねじれネマチック状態を配向固定させた超ねじれ配向したものを、TN方式における視野角補償板として用いる方法は、Society for information display international symposium, Digest of technical papers volume XXIII,p401(1992) に提案されている。この位相差板は負の2軸性屈折率異方性を有することを特徴としている。
【0011】
一方、TN方式の光学補償フィルムとしては他に傾斜配向がより好ましいことが、特開平6−75116号公報、特開平6−250166号公報に示されている。ここではこのような高度に配向制御された光学補償フィルムの具体的な材料、製法に対しての記載に乏しい。
これら複雑な光学特性を有する光学補償フィルムを得るために、室温でネマチック状態となるアクリレート液晶を配向処理されたガラスセルの間に挟持し、配向状態のまま紫外線硬化させ、硬化後にガラスセルの少なくとも一方を剥がして光学補償フィルムを得るといった方法が、第20回液晶討論会講演予稿集p216〜p219(1994)において報告されている。
【0012】
これら膜厚方向に光学軸を有する位相差板を用いて視角特性を改善する方式の特徴は、液晶セルに対して正面から入射した光に液晶セルが与える位相差と、斜め方向から入射した光に液晶セルが与える位相差とが、液晶セル中の液晶配向のため異なりこれが視角特性を決定する原因である点に注目し、位相差板により特に斜め方向から液晶セルに入射した光の位相差を補償するところにある。
【0013】
STN,TN方式液晶表示装置の画質向上に伴い、すでに述べてきたように位相差フィルムに対して、STNの色補償に必要な光学特性である一軸性といった単純な光学特性から、傾斜配向、ねじれ、超ねじれ配向等より複雑な光学特性が要求されるようになってきている。STNにおいては旋光分散補償も可能であるという点で、ねじれ配向した光学補償フィルムが有効であることはすでに公知である。また、TNにおいては先述の超ねじれ配向フィルムや負の2軸性フィルム等が視野角特性向上に有効であることも公知である。このように、液晶表示装置の光学補償フィルムにおいて、好ましい光学異方性の特性についてはすでにかなりの部分公知となっているが、それを実際に製造するための材料、製法の点に問題があり光学特性および量産性の点で満足するものは得られていないのが現状であった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
光学補償フィルムの傾斜、ねじれ、超ねじれ配向等より複雑な光学特性に対しては高分子液晶を用いる方法が提案されている。これは高分子液晶樹脂を適当な溶媒に溶かし、配向処理がしてある支持体上に製膜後、一度液晶状態となる高温領域まで加熱後、冷却することにより液晶状態を配向固定させ、ねじれ配向や一軸配向等を得るといった方法であるが、高温処理が必要なこと、配向固定に時間がかかること等、生産性の点で課題がある。
【0015】
また、前述した第20回液晶討論会講演予稿集p216〜p219(1994)に記載の方法では、ガラス等支持体の間にアクリレート液晶を挟持させる必要があることから、大面積化が困難であり、さらにロールツウロール等連続生産が困難であるといった課題があった。
【0016】
このように従来の光学補償フィルムの製造法では、傾斜、ねじれ、超ねじれ配向等高度に配向制御された光学補償フィルムを量産性よく得ることが困難であった。本発明はかかる課題を解決して、傾斜、ねじれ、超ねじれ配向等、従来からある高分子フィルム一軸延伸フィルム等では達成困難なより高度に配向された光学補償フィルムおよび量産性に優れたその製造法の提供を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学補償フィルムの製造方法は、液晶表示装置に用いられる光学補償フィルムの製造方法において、アクリレート基および/またはメタクリレート基を1つ以上有する1種類以上の混合物で、かつ少なくとも10〜70℃の温度範囲内の温度においてネマチック状態となる重合性液晶を、溶媒に溶解させ溶液とし、該溶液を配向処理をした支持体上に流延させ乾燥工程を経た後、ネマチック状態において光により重合性液晶を硬化させ、さらに透明樹脂フィルム上に該硬化物を転写させることにより製造することを特徴としている。
【0018】
また本発明の光学補償フィルムの製造方法は、液晶表示装置に用いられる光学補償フィルムの製造方法において、アクリレート基および/またはメタクリレート基を1つ以上有する1種類以上の混合物で、かつ少なくとも10〜70℃の温度範囲内の温度においてネマチック状態となる重合性液晶を、溶媒に溶解させ溶液とし、該溶液を配向処理をした透明樹脂フィルムからなる支持体上に流延させ乾燥工程を経た後、ネマチック状態において光により重合性液晶を硬化させて製造することを特徴としている。
【0019】
本発明で用いられる重合性液晶においては、アクリレート基および/またはメタクリレート基を1つ以上有することが必要である。重合性官能基としては他にいくつか知られているが、アクリレート基、メタクリレート基を有する重合性液晶は、重合に際して脱離化合物等を発生しない、光重合可能等の特徴を有しているので、重合性液晶が配向している状態において硬化させるといった本発明の製造方法においては、特に硬化中に配向を乱すことが少ないといった優れた特徴を有している。
【0020】
また、重合性液晶の1分子中におけるアクリレート基および/またはメタクリレート基の数は1つである必要はなく、また、異なる重合性液晶分子の混合物であってもよい。また、重合性液晶の構造にも特に限定はないが、重合性液晶のネマチック状態が少なくとも10℃から70℃の間において発現することが必要である。ここで少なくとも10〜70℃の温度範囲内の温度においてネマチック状態となるとは、この温度領域のいずれかにおいてネマチック状態となる温度範囲が5℃以上の幅を持つことである。このネマチック状態の温度範囲はできるだけ広い方が製造上好ましい。また、ネマチック状態より高い温度領域では等方状態となることが必要である。ここで言うネマチック状態には、カイラル液晶を少量含んだカイラルネマチック状態も含む。以下に好ましいアクリレート基、メタクリレート基を有する重合性液晶の構造式を次の構造式(1)〜(7)に示す。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
ただし、上記構造式(1)から(7)において、R1 ,R3 は炭素数8以下の直鎖アルキル基または無し、R2 は炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基、シアノ基、フッ素、塩素または水素である。また、上記構造式中のAは、次の構造式(8)あるいは(9)で示されるアクリレート基またはメタクリレート基である。
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
なお硬化後に測定光400nm〜700nmの間において透過率80%以上であることが必要でありより好ましくは85%以上であるが、本発明はこれらの構造式に限定されない。これら構造を有するものは上記特性を有すれば単独でも使用し得るが、そうでない場合にはブレンドにより最適化される。
【0032】
また、重合性液晶には光開始剤が添加されてもよい。光開始剤を添加した場合、液晶の配向性に影響を与え、相転移温度等に影響を与える場合があるので、重合性液晶に対して3重量%以下とすることが好ましい。開始剤は、硬化させるために用いられる光波長において効率的に反応を起こし得るものであればよく公知のものを使用できる。
【0033】
本発明の製造法では、重合性液晶を溶媒に溶解させ溶液とし、該溶液を配向処理のしてある支持体上に流延し乾燥させ溶媒を蒸発させるが、溶媒乾燥後の支持体上に存在する重合性液晶は、ネマチック状態または、等方状態となっていることが好ましい。溶媒蒸発後に重合性液晶を結晶化させてしまうと、膜厚制御等困難な場合があり、製造上好ましくない。つまり、ネマチック状態が70℃より高い温度領域に存在し、かつそれ以下の温度領域で結晶化するような重合性液晶では、溶媒蒸発後に70℃より高い温度にしなくてはならない。本系のような比較的蒸発速度の速い系では、溶媒の選定および蒸発制御という点において非常に困難であり、さらに、溶媒蒸発過程といった重合性液晶の配向が乱れている状態で熱重合を開始してしまう場合もあることから、均一な光学特性の光学補償フィルムを得ることが困難である。また、10℃未満でのみネマチック状態となる重合性液晶は硬化時に冷却装置を必要とする等、これもやはり製造上困難な点が存在する。
【0034】
溶媒としては特に限定はないが、重合性液晶との相溶性、製膜温度等を考慮して決定される。硬化後に残留溶媒量が1重量%以下となり、光学特性に問題が生じないならば公知の溶媒を使用することができる。そのような溶媒の例としては、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、メチレンクロライド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジオキサン、ジオキソラン等公知の溶媒を用いて製法を最適化することができるが、好ましくはメチレンクロライドである。もちろん、2種類以上の溶媒を混合した混合溶媒であっても良い。ただし、配向処理のしてある支持体上に流延するのであるから、配向処理層を溶解させない溶媒、または、配向性を失わせてしまう溶媒は使用することはできない。
【0035】
配向処理のしてある支持体上に重合性液晶を含む溶液を流延する方法としては、特にロールツウロール等連続生産させる場合には、ダイより溶液を吐出させ流延させる方法が好ましい。一般にダイは高分子樹脂を溶媒に溶解させた溶液や、高分子溶融物を吐出させフィルム化させる方法において、膜厚を均一に製造できる方法としてすでに公知の技術であるが、本発明の重合性液晶を含む溶液を流延させる際にも膜厚の均一性という点で特に有効である。また、ナイフ塗工等で用いられるアプリケーターを用いて溶液を流延し製膜することも可能である。
【0036】
支持体としては、透明樹脂フィルムまたはステンレス等に配向処理をしたものが用いられる。配向処理の方法としては、公知の技術である支持体上にポリイミド、ポリビニールアルコール等を形成させ、ラビング処理する方法がある。また、SiOx等無機材料を斜め蒸着するなどして形成させても良い。さらに無機材料の上にポリイミド等有機材料を塗布するといった等、有機、無機材料の組み合わせでも構わない。本発明において光学補償フィルムを斜め配向させる方法には、この支持体における配向処理、すなわち、プレチルト角が高くなるよう配向材料および配向方法を最適化することが必要である。これらプレチルト角を高くする方法、材料については公知のものを利用できる。もちろんこれら配向処理装置を製造ライン上に設け、流延、硬化の前にそれらを行っても良い。
【0037】
支持体としてステンレス、ガラス等を用いた場合には、支持体にて重合性液晶を硬化させた後、透明樹脂フィルムに転写させなくてはならない。これには、透明樹脂フィルム上にアクリル系粘着剤を塗布し、ステンレス上の重合性液晶硬化物と貼り合わせ、その後引き剥がす方法、または、透明樹脂フィルムとステンレス等支持体上に形成されている重合性液晶硬化物との間に光硬化性の接着剤を挟み、硬化させ剥がすことにより透明樹脂フィルム上に転写させるといった方法が好ましい。ステンレス製ベルトをコンベア方式にて用い支持体として使用すれば、転写する方法でもロールツウロール等連続生産が可能である。
【0038】
支持体として透明樹脂フィルムを用いた場合には、直接フィルム上にラビング処理をするなどしてもよい。また、必要に応じて透明樹脂フィルム上に耐溶剤層を設け、その上に配向膜を形成させラビングさせても良い。これらはすでに公知の技術を用いて形成することができる。特に、本発明の製造方法で、透明樹脂フィルムを溶解させるような溶媒を用いる際には耐溶剤層が必要となる。もちろん、耐溶剤層を設けない方がコストは低く抑えることが可能であるので、耐溶剤層を設けないでも良いような溶媒と透明樹脂フィルムとの組み合わせを選択することが好ましい。もちろん耐溶剤層を形成するにあたっては製造ライン上に耐溶剤層形成工程を、重合性液晶を含む溶液の流延、硬化の前に設置しても良い。
【0039】
重合性液晶を含む溶液を支持体上に流延後、溶媒を乾燥させるが、乾燥中または乾燥後に一度アイソトロピック状態としその後温度を下げてネマチック状態とした後に、光により硬化させることが好ましい。溶媒に溶解中は液晶の状態がアイソトロピック状態となる場合が多いので、本方式は流動配向等が生じにくいが、いずれにしても一度はアイソトロピック状態とし、その後に、ネマチック状態とし光により硬化させる方法が好ましい。
【0040】
光による重合性液晶の硬化は、重合性液晶がネマチック配向状態において行われる。カイラルネマチック状態を得るためには、カイラル剤を少量添加することにより得られるが、通常用いられる量は多くても数重量%以下であるので、これには必ずしもアクリレート基および/またはメタクリレート基を有している必要はない。また硬化に用いられる光は、紫外線であることが好ましい。これらは公知の紫外線硬化装置等を用いることができる。
【0041】
光による重合性液晶の硬化の後、ハードコート性を付与するために重合性液晶硬化物上に、透明な積層物を設けても良い。このハードコート剤は光学的に透明かつ等方であればよく、特に限定はないが、接着性を考慮した場合には、アクリレート系ハードコート剤が好適に用いられる。さらに好ましくは光硬化性のアクリレート系ハードコート剤である。
【0042】
重合性液晶硬化物と積層される透明樹脂フィルムは、測定光400nm〜700nmの範囲で透過率80%以上であることが必要であり、好ましくは85%以上である。重合性液晶硬化物のみにより、光学補償機能を与える場合には、透明樹脂フィルムの光学異方性はできるだけ小さい方がよい。具体的には測定光590nmの光で測定して、フィルム面内に平行な方向にある遅相軸、進相軸方向のリタデーションの差Δnと膜厚dとの積であるリタデーション(Δnd)が10nm以下であることが好ましい。10nmより大きい範囲では、フィルム異方性の影響が無視できなくなる。590nmで定義したが、上記リタデーション範囲は測定光400nm〜700nmの範囲で成立することが好ましい。一方、本発明の樹脂フィルムにSTN方式位相差板としてすでに公知の一軸延伸フィルム等を用い、複合位相差フィルムとしてもよい。
【0043】
またこうした本発明の製造方法により製造する光学補償フィルムとしては、重合性液晶硬化物中に含まれる溶媒が1重量%以下であることが必要である。この範囲を外れる光学補償フィルムでは、耐熱性が劣る。さらに耐熱性の点からは、重合性液晶硬化物は130℃以下の温度領域において液晶状態とならないものがより好ましい。
【0044】
以上のような本発明の光学補償フィルムは偏光板と貼り合わせたりあるいは、直接光学補償層を偏光板に形成させても良い。本発明の製造方法により作成された光学補償フィルムを液晶表示装置において、偏光板と液晶セルの間に挟むことにより、STN方式では白黒表示を可能にするだけではなく、視野角特性も向上させることが可能であり、TFT−TN方式においても視野角特性を向上させることができる。
【0045】
【実施例1】
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)社製の商品名「C−1400」)20重量部を塩化メチレンクロライド80重量部に溶解させた後、ガラス板上にアプリケーターにて流延し、ついで乾燥機中に置き室温から徐々に昇温した。残留溶媒が13重量%になったとき、ガラス板より剥離させ、縦横の張力をバランスさせながら120℃にて残留溶媒が0.1重量%以下になるまで乾燥し、ポリカーボネートフィルムを得た。このフィルムの厚さは90μmであった。
【0046】
このフィルム上にシリコーン系硬化性樹脂をマイヤーバーにて塗布し硬化させ、4μmの耐溶剤層を形成し、これを耐溶剤層付透明樹脂フィルムとした。この耐溶剤層付透明樹脂フィルムのリタデーションは測定光590nmで3nmであり、透過率は86%であった。リタデーション測定は日本分光(株)社製M150で行った。さらにその上に、配向膜形成法としては公知の方法であるフレキソ印刷法によりポリイミド配向膜を形成し、ラビングにより配向処理させた。
【0047】
下記の構造式(10)〜(13)で表される化合物を、それぞれ順に87:2:10:1で混合させたものを重合性液晶混合物とした。この重合性液晶混合物は、少なくとも45〜55℃の間でネマチック相をとる。
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
この重合性液晶混合物、光開始剤としてはチバガイギー社製の商品名「イルガキュアー651」として市販されている2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、溶媒としてメチレンクロライドを、それぞれ重量比で49.8:0.2:50で混合させ溶液を作成し、アプリケータを用いて耐溶剤層付透明樹脂フィルム上に流延した。
【0053】
そして溶液流延中は25℃とし、その後一度90℃で加熱乾燥し3分間経過した後、50℃に保ち、窒素雰囲気下において紫外線ランプにより光強度20mW/平方cmで3分間照射し、重合性液晶硬化物層の膜厚が6.0μmである目的の光学補償フィルムを得た。
【0054】
こうして得られた光学補償フィルムの透過率は測定光590nmで84%であった。作成した光学補償フィルムの重合性液晶硬化物を偏光顕微鏡で観察したところ、一軸かつモノドメインに配向していることを確認した。重合性液晶硬化物中に含まれる残留溶媒量は0.1重量%であった。
【0055】
【実施例2】
実施例1で用いた重合性液晶混合物、BDH社製にて商品名「CB15」として市販されている構造式(14)で表されるカイラル液晶、光開始剤としてはチバガイギー社製の商品名「イルガキュアー651」として市販されている2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、そしてメチレンクロライドを、それぞれ重量比で48.3:1.5:0.2:50で混合させ溶液とした以外は、実施例1と同様の条件で製膜し、重合性液晶硬化物層の膜厚が5.8μmである光学補償フィルムを得た。
【0056】
【化14】
【0057】
作成した光学補償フィルムの重合性液晶混合物を偏光顕微鏡で観察したところ、ねじれ配向かつモノドメインに配向していることを確認した。なお重合性液晶硬化物中に含まれる残留溶媒量は0.1重量%であった。
【0058】
【実施例3】
鏡面仕上げしたステンレス基板上に実施例1と同様の方法で配向膜を形成し、ラビングにより配向処理を行った。次に、実施例1で用いた溶液を実施例1と同様の方法で流延し、硬化させた。重合性液晶硬化物層の膜厚は5.9μmであり、残留溶媒量は0.1重量%であった。
【0059】
一方、実施例1で作成したポリカーボネートフィルム上にアクリル系粘着剤を2μm形成させ、重合性液晶硬化物層と貼り合わせ剥がした。ポリカーボネートフィルム側に液晶硬化物層が転写されていることを確認した。得られた光学補償フィルムの透過率は、測定光590nmで84%であった。作成した光学補償フィルムの重合性液晶硬化物を偏光顕微鏡で観察したところ、一軸かつモノドメインに配向していることを確認した。
【0060】
【比較例1】
次の構造式(15)で表され、昇温過程では105℃から150℃の間でネマチック状態、室温から105℃以下では結晶状態となる重合性液晶、光開始剤としてはチバガイギー社製の商品名「イルガキュアー651」として市販されている2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、溶媒としてメチレンクロライドを、それぞれ重量比で49.8:0.2:50で混合させ溶液を作成し、アプリケータを用いて耐溶剤層付透明樹脂フィルム上に流延した。
【0061】
【化15】
【0062】
溶液流延中は100℃とし、その後一度160℃に加熱し3分間経過した後、120℃に保ち、窒素雰囲気下で紫外線ランプにより光強度20mW/平方cmで3分間照射し、硬化させたが、溶液流延中に急激に溶媒が蒸発してしまうため、均一な膜質を得ることができなかった。
【0063】
【比較例2】
前述の構造式(15)で表され、昇温過程では105℃から150℃の間でネマチック状態、室温から105℃以下では結晶状態となる重合性液晶、光開始剤としては商品名「イルガキュアー651」、溶媒としてメチレンクロライドを、それぞれ重量比で49.8:0.2:50で混合させ溶液を作成し、アプリケータを用いて耐溶剤層付透明樹脂フィルム上に流延した。
【0064】
溶液流延中は25℃とし、その後一度160℃に加熱し3分間経過した後、120℃に保ち、窒素雰囲気下にて紫外線ランプにより光強度20mW/平方cmで3分間照射し、硬化させたが、溶液流延中に溶媒蒸発に伴い急激に結晶化が進行してしまったため、均一な膜質を得ることができなかった。
【0065】
【発明の効果】
本発明は、特定された物性、官能基を有する重合性液晶を溶媒に溶かして支持体上に流延し、乾燥後ネマチック状態において光重合するといった新規な製造方法およびそれにより製膜された光学補償フィルムに関するものであり、この発明により高品質でかつ生産性に優れた液晶表示装置用光学補償フィルムを提供することができるといった効果を有する。
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶表示装置に用いられる光学補償フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示素子は、薄型軽量、低消費電力という大きな利点を持つため、パーソナルコンピュータやワードプロセッサ、携帯型電子手帳等の表示装置に積極的に用いられている。液晶表示素子の原理は数多く提案されているが、現在普及している液晶表示素子のほとんどは、ねじれネマチック型の液晶を用いている。このような液晶を用いた表示方式は、複屈折モードと旋光モードの2つの方式に大別される。
【0003】
複屈折モードであるスーパーツイストネマチック(STN)方式は急峻な電気光学特性を持つことにより、単純マトリックスで駆動できるため、比較的低価格で市場に供給されているが、かかる方式では偏光板を介して直線偏光とした入射光が液晶セルによる複屈折で楕円偏光となり、それを偏光板を介して見た場合にはデイスプレイが着色して見えるといった問題がある。そのため、液晶セル透過後の楕円偏光を直線に戻して着色を防止すべく、液晶セルと偏光板の間に延伸フィルム等からなる位相差板を介在させるF−STN方式が提案されている。
【0004】
このような位相差板としては、ポリカーボネートフィルム等を一軸延伸した一軸配向フィルムや、高分子液晶を用いねじれネマチック構造を配向固定したもの等がすでに提案されている。
【0005】
一方、旋光モードであるツイストネマチック(TN)方式は90゜のねじれネマチック液晶からなり、応答速度が数十ミリ秒と速く、高いコントラスト比と良好な階調表示性を示すことから、薄膜トランジスター等のスイッチング素子を各画素ごとに配備した液晶表示素子として、液晶テレビ等の高精細、高速性が要求される用途で使用されている。
【0006】
しかし、このようなスイッチング素子と組み合わせたTN方式の液晶表示素子でも、見る方向によってはコントラスト比が変化するといった視角依存性を持つという難点があった。
【0007】
TN方式の液晶表示素子の視角特性を改善する多くの方法が提案されている。膜厚方向の屈折率が面内方向の屈折率より小さい光学的に負の2軸性光学補償フィルムをTN方式に用いることが提案されている。
【0008】
また、かかる負の2軸性光学補償フィルムについてより具体的に提案している例としては、第16回液晶討論会講演予稿集P236がある。ここでは2枚の偏光板の間にTN方式液晶セルと、ポリカーボネートを材質とした一軸性位相差フィルムを、光学軸が直交するように2枚積層されたものを配置することにより、視角特性を改善する方法を提案している。
【0009】
さらに他の方法としては、特開平6−82779号公報に示されるように、無機層状化合物を用いる方法が開示されている。
【0010】
また、先述の高分子液晶を用い10数回以上のねじれネマチック状態を配向固定させた超ねじれ配向したものを、TN方式における視野角補償板として用いる方法は、Society for information display international symposium, Digest of technical papers volume XXIII,p401(1992) に提案されている。この位相差板は負の2軸性屈折率異方性を有することを特徴としている。
【0011】
一方、TN方式の光学補償フィルムとしては他に傾斜配向がより好ましいことが、特開平6−75116号公報、特開平6−250166号公報に示されている。ここではこのような高度に配向制御された光学補償フィルムの具体的な材料、製法に対しての記載に乏しい。
これら複雑な光学特性を有する光学補償フィルムを得るために、室温でネマチック状態となるアクリレート液晶を配向処理されたガラスセルの間に挟持し、配向状態のまま紫外線硬化させ、硬化後にガラスセルの少なくとも一方を剥がして光学補償フィルムを得るといった方法が、第20回液晶討論会講演予稿集p216〜p219(1994)において報告されている。
【0012】
これら膜厚方向に光学軸を有する位相差板を用いて視角特性を改善する方式の特徴は、液晶セルに対して正面から入射した光に液晶セルが与える位相差と、斜め方向から入射した光に液晶セルが与える位相差とが、液晶セル中の液晶配向のため異なりこれが視角特性を決定する原因である点に注目し、位相差板により特に斜め方向から液晶セルに入射した光の位相差を補償するところにある。
【0013】
STN,TN方式液晶表示装置の画質向上に伴い、すでに述べてきたように位相差フィルムに対して、STNの色補償に必要な光学特性である一軸性といった単純な光学特性から、傾斜配向、ねじれ、超ねじれ配向等より複雑な光学特性が要求されるようになってきている。STNにおいては旋光分散補償も可能であるという点で、ねじれ配向した光学補償フィルムが有効であることはすでに公知である。また、TNにおいては先述の超ねじれ配向フィルムや負の2軸性フィルム等が視野角特性向上に有効であることも公知である。このように、液晶表示装置の光学補償フィルムにおいて、好ましい光学異方性の特性についてはすでにかなりの部分公知となっているが、それを実際に製造するための材料、製法の点に問題があり光学特性および量産性の点で満足するものは得られていないのが現状であった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
光学補償フィルムの傾斜、ねじれ、超ねじれ配向等より複雑な光学特性に対しては高分子液晶を用いる方法が提案されている。これは高分子液晶樹脂を適当な溶媒に溶かし、配向処理がしてある支持体上に製膜後、一度液晶状態となる高温領域まで加熱後、冷却することにより液晶状態を配向固定させ、ねじれ配向や一軸配向等を得るといった方法であるが、高温処理が必要なこと、配向固定に時間がかかること等、生産性の点で課題がある。
【0015】
また、前述した第20回液晶討論会講演予稿集p216〜p219(1994)に記載の方法では、ガラス等支持体の間にアクリレート液晶を挟持させる必要があることから、大面積化が困難であり、さらにロールツウロール等連続生産が困難であるといった課題があった。
【0016】
このように従来の光学補償フィルムの製造法では、傾斜、ねじれ、超ねじれ配向等高度に配向制御された光学補償フィルムを量産性よく得ることが困難であった。本発明はかかる課題を解決して、傾斜、ねじれ、超ねじれ配向等、従来からある高分子フィルム一軸延伸フィルム等では達成困難なより高度に配向された光学補償フィルムおよび量産性に優れたその製造法の提供を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学補償フィルムの製造方法は、液晶表示装置に用いられる光学補償フィルムの製造方法において、アクリレート基および/またはメタクリレート基を1つ以上有する1種類以上の混合物で、かつ少なくとも10〜70℃の温度範囲内の温度においてネマチック状態となる重合性液晶を、溶媒に溶解させ溶液とし、該溶液を配向処理をした支持体上に流延させ乾燥工程を経た後、ネマチック状態において光により重合性液晶を硬化させ、さらに透明樹脂フィルム上に該硬化物を転写させることにより製造することを特徴としている。
【0018】
また本発明の光学補償フィルムの製造方法は、液晶表示装置に用いられる光学補償フィルムの製造方法において、アクリレート基および/またはメタクリレート基を1つ以上有する1種類以上の混合物で、かつ少なくとも10〜70℃の温度範囲内の温度においてネマチック状態となる重合性液晶を、溶媒に溶解させ溶液とし、該溶液を配向処理をした透明樹脂フィルムからなる支持体上に流延させ乾燥工程を経た後、ネマチック状態において光により重合性液晶を硬化させて製造することを特徴としている。
【0019】
本発明で用いられる重合性液晶においては、アクリレート基および/またはメタクリレート基を1つ以上有することが必要である。重合性官能基としては他にいくつか知られているが、アクリレート基、メタクリレート基を有する重合性液晶は、重合に際して脱離化合物等を発生しない、光重合可能等の特徴を有しているので、重合性液晶が配向している状態において硬化させるといった本発明の製造方法においては、特に硬化中に配向を乱すことが少ないといった優れた特徴を有している。
【0020】
また、重合性液晶の1分子中におけるアクリレート基および/またはメタクリレート基の数は1つである必要はなく、また、異なる重合性液晶分子の混合物であってもよい。また、重合性液晶の構造にも特に限定はないが、重合性液晶のネマチック状態が少なくとも10℃から70℃の間において発現することが必要である。ここで少なくとも10〜70℃の温度範囲内の温度においてネマチック状態となるとは、この温度領域のいずれかにおいてネマチック状態となる温度範囲が5℃以上の幅を持つことである。このネマチック状態の温度範囲はできるだけ広い方が製造上好ましい。また、ネマチック状態より高い温度領域では等方状態となることが必要である。ここで言うネマチック状態には、カイラル液晶を少量含んだカイラルネマチック状態も含む。以下に好ましいアクリレート基、メタクリレート基を有する重合性液晶の構造式を次の構造式(1)〜(7)に示す。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
ただし、上記構造式(1)から(7)において、R1 ,R3 は炭素数8以下の直鎖アルキル基または無し、R2 は炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基、シアノ基、フッ素、塩素または水素である。また、上記構造式中のAは、次の構造式(8)あるいは(9)で示されるアクリレート基またはメタクリレート基である。
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
なお硬化後に測定光400nm〜700nmの間において透過率80%以上であることが必要でありより好ましくは85%以上であるが、本発明はこれらの構造式に限定されない。これら構造を有するものは上記特性を有すれば単独でも使用し得るが、そうでない場合にはブレンドにより最適化される。
【0032】
また、重合性液晶には光開始剤が添加されてもよい。光開始剤を添加した場合、液晶の配向性に影響を与え、相転移温度等に影響を与える場合があるので、重合性液晶に対して3重量%以下とすることが好ましい。開始剤は、硬化させるために用いられる光波長において効率的に反応を起こし得るものであればよく公知のものを使用できる。
【0033】
本発明の製造法では、重合性液晶を溶媒に溶解させ溶液とし、該溶液を配向処理のしてある支持体上に流延し乾燥させ溶媒を蒸発させるが、溶媒乾燥後の支持体上に存在する重合性液晶は、ネマチック状態または、等方状態となっていることが好ましい。溶媒蒸発後に重合性液晶を結晶化させてしまうと、膜厚制御等困難な場合があり、製造上好ましくない。つまり、ネマチック状態が70℃より高い温度領域に存在し、かつそれ以下の温度領域で結晶化するような重合性液晶では、溶媒蒸発後に70℃より高い温度にしなくてはならない。本系のような比較的蒸発速度の速い系では、溶媒の選定および蒸発制御という点において非常に困難であり、さらに、溶媒蒸発過程といった重合性液晶の配向が乱れている状態で熱重合を開始してしまう場合もあることから、均一な光学特性の光学補償フィルムを得ることが困難である。また、10℃未満でのみネマチック状態となる重合性液晶は硬化時に冷却装置を必要とする等、これもやはり製造上困難な点が存在する。
【0034】
溶媒としては特に限定はないが、重合性液晶との相溶性、製膜温度等を考慮して決定される。硬化後に残留溶媒量が1重量%以下となり、光学特性に問題が生じないならば公知の溶媒を使用することができる。そのような溶媒の例としては、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、メチレンクロライド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジオキサン、ジオキソラン等公知の溶媒を用いて製法を最適化することができるが、好ましくはメチレンクロライドである。もちろん、2種類以上の溶媒を混合した混合溶媒であっても良い。ただし、配向処理のしてある支持体上に流延するのであるから、配向処理層を溶解させない溶媒、または、配向性を失わせてしまう溶媒は使用することはできない。
【0035】
配向処理のしてある支持体上に重合性液晶を含む溶液を流延する方法としては、特にロールツウロール等連続生産させる場合には、ダイより溶液を吐出させ流延させる方法が好ましい。一般にダイは高分子樹脂を溶媒に溶解させた溶液や、高分子溶融物を吐出させフィルム化させる方法において、膜厚を均一に製造できる方法としてすでに公知の技術であるが、本発明の重合性液晶を含む溶液を流延させる際にも膜厚の均一性という点で特に有効である。また、ナイフ塗工等で用いられるアプリケーターを用いて溶液を流延し製膜することも可能である。
【0036】
支持体としては、透明樹脂フィルムまたはステンレス等に配向処理をしたものが用いられる。配向処理の方法としては、公知の技術である支持体上にポリイミド、ポリビニールアルコール等を形成させ、ラビング処理する方法がある。また、SiOx等無機材料を斜め蒸着するなどして形成させても良い。さらに無機材料の上にポリイミド等有機材料を塗布するといった等、有機、無機材料の組み合わせでも構わない。本発明において光学補償フィルムを斜め配向させる方法には、この支持体における配向処理、すなわち、プレチルト角が高くなるよう配向材料および配向方法を最適化することが必要である。これらプレチルト角を高くする方法、材料については公知のものを利用できる。もちろんこれら配向処理装置を製造ライン上に設け、流延、硬化の前にそれらを行っても良い。
【0037】
支持体としてステンレス、ガラス等を用いた場合には、支持体にて重合性液晶を硬化させた後、透明樹脂フィルムに転写させなくてはならない。これには、透明樹脂フィルム上にアクリル系粘着剤を塗布し、ステンレス上の重合性液晶硬化物と貼り合わせ、その後引き剥がす方法、または、透明樹脂フィルムとステンレス等支持体上に形成されている重合性液晶硬化物との間に光硬化性の接着剤を挟み、硬化させ剥がすことにより透明樹脂フィルム上に転写させるといった方法が好ましい。ステンレス製ベルトをコンベア方式にて用い支持体として使用すれば、転写する方法でもロールツウロール等連続生産が可能である。
【0038】
支持体として透明樹脂フィルムを用いた場合には、直接フィルム上にラビング処理をするなどしてもよい。また、必要に応じて透明樹脂フィルム上に耐溶剤層を設け、その上に配向膜を形成させラビングさせても良い。これらはすでに公知の技術を用いて形成することができる。特に、本発明の製造方法で、透明樹脂フィルムを溶解させるような溶媒を用いる際には耐溶剤層が必要となる。もちろん、耐溶剤層を設けない方がコストは低く抑えることが可能であるので、耐溶剤層を設けないでも良いような溶媒と透明樹脂フィルムとの組み合わせを選択することが好ましい。もちろん耐溶剤層を形成するにあたっては製造ライン上に耐溶剤層形成工程を、重合性液晶を含む溶液の流延、硬化の前に設置しても良い。
【0039】
重合性液晶を含む溶液を支持体上に流延後、溶媒を乾燥させるが、乾燥中または乾燥後に一度アイソトロピック状態としその後温度を下げてネマチック状態とした後に、光により硬化させることが好ましい。溶媒に溶解中は液晶の状態がアイソトロピック状態となる場合が多いので、本方式は流動配向等が生じにくいが、いずれにしても一度はアイソトロピック状態とし、その後に、ネマチック状態とし光により硬化させる方法が好ましい。
【0040】
光による重合性液晶の硬化は、重合性液晶がネマチック配向状態において行われる。カイラルネマチック状態を得るためには、カイラル剤を少量添加することにより得られるが、通常用いられる量は多くても数重量%以下であるので、これには必ずしもアクリレート基および/またはメタクリレート基を有している必要はない。また硬化に用いられる光は、紫外線であることが好ましい。これらは公知の紫外線硬化装置等を用いることができる。
【0041】
光による重合性液晶の硬化の後、ハードコート性を付与するために重合性液晶硬化物上に、透明な積層物を設けても良い。このハードコート剤は光学的に透明かつ等方であればよく、特に限定はないが、接着性を考慮した場合には、アクリレート系ハードコート剤が好適に用いられる。さらに好ましくは光硬化性のアクリレート系ハードコート剤である。
【0042】
重合性液晶硬化物と積層される透明樹脂フィルムは、測定光400nm〜700nmの範囲で透過率80%以上であることが必要であり、好ましくは85%以上である。重合性液晶硬化物のみにより、光学補償機能を与える場合には、透明樹脂フィルムの光学異方性はできるだけ小さい方がよい。具体的には測定光590nmの光で測定して、フィルム面内に平行な方向にある遅相軸、進相軸方向のリタデーションの差Δnと膜厚dとの積であるリタデーション(Δnd)が10nm以下であることが好ましい。10nmより大きい範囲では、フィルム異方性の影響が無視できなくなる。590nmで定義したが、上記リタデーション範囲は測定光400nm〜700nmの範囲で成立することが好ましい。一方、本発明の樹脂フィルムにSTN方式位相差板としてすでに公知の一軸延伸フィルム等を用い、複合位相差フィルムとしてもよい。
【0043】
またこうした本発明の製造方法により製造する光学補償フィルムとしては、重合性液晶硬化物中に含まれる溶媒が1重量%以下であることが必要である。この範囲を外れる光学補償フィルムでは、耐熱性が劣る。さらに耐熱性の点からは、重合性液晶硬化物は130℃以下の温度領域において液晶状態とならないものがより好ましい。
【0044】
以上のような本発明の光学補償フィルムは偏光板と貼り合わせたりあるいは、直接光学補償層を偏光板に形成させても良い。本発明の製造方法により作成された光学補償フィルムを液晶表示装置において、偏光板と液晶セルの間に挟むことにより、STN方式では白黒表示を可能にするだけではなく、視野角特性も向上させることが可能であり、TFT−TN方式においても視野角特性を向上させることができる。
【0045】
【実施例1】
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)社製の商品名「C−1400」)20重量部を塩化メチレンクロライド80重量部に溶解させた後、ガラス板上にアプリケーターにて流延し、ついで乾燥機中に置き室温から徐々に昇温した。残留溶媒が13重量%になったとき、ガラス板より剥離させ、縦横の張力をバランスさせながら120℃にて残留溶媒が0.1重量%以下になるまで乾燥し、ポリカーボネートフィルムを得た。このフィルムの厚さは90μmであった。
【0046】
このフィルム上にシリコーン系硬化性樹脂をマイヤーバーにて塗布し硬化させ、4μmの耐溶剤層を形成し、これを耐溶剤層付透明樹脂フィルムとした。この耐溶剤層付透明樹脂フィルムのリタデーションは測定光590nmで3nmであり、透過率は86%であった。リタデーション測定は日本分光(株)社製M150で行った。さらにその上に、配向膜形成法としては公知の方法であるフレキソ印刷法によりポリイミド配向膜を形成し、ラビングにより配向処理させた。
【0047】
下記の構造式(10)〜(13)で表される化合物を、それぞれ順に87:2:10:1で混合させたものを重合性液晶混合物とした。この重合性液晶混合物は、少なくとも45〜55℃の間でネマチック相をとる。
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
この重合性液晶混合物、光開始剤としてはチバガイギー社製の商品名「イルガキュアー651」として市販されている2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、溶媒としてメチレンクロライドを、それぞれ重量比で49.8:0.2:50で混合させ溶液を作成し、アプリケータを用いて耐溶剤層付透明樹脂フィルム上に流延した。
【0053】
そして溶液流延中は25℃とし、その後一度90℃で加熱乾燥し3分間経過した後、50℃に保ち、窒素雰囲気下において紫外線ランプにより光強度20mW/平方cmで3分間照射し、重合性液晶硬化物層の膜厚が6.0μmである目的の光学補償フィルムを得た。
【0054】
こうして得られた光学補償フィルムの透過率は測定光590nmで84%であった。作成した光学補償フィルムの重合性液晶硬化物を偏光顕微鏡で観察したところ、一軸かつモノドメインに配向していることを確認した。重合性液晶硬化物中に含まれる残留溶媒量は0.1重量%であった。
【0055】
【実施例2】
実施例1で用いた重合性液晶混合物、BDH社製にて商品名「CB15」として市販されている構造式(14)で表されるカイラル液晶、光開始剤としてはチバガイギー社製の商品名「イルガキュアー651」として市販されている2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、そしてメチレンクロライドを、それぞれ重量比で48.3:1.5:0.2:50で混合させ溶液とした以外は、実施例1と同様の条件で製膜し、重合性液晶硬化物層の膜厚が5.8μmである光学補償フィルムを得た。
【0056】
【化14】
【0057】
作成した光学補償フィルムの重合性液晶混合物を偏光顕微鏡で観察したところ、ねじれ配向かつモノドメインに配向していることを確認した。なお重合性液晶硬化物中に含まれる残留溶媒量は0.1重量%であった。
【0058】
【実施例3】
鏡面仕上げしたステンレス基板上に実施例1と同様の方法で配向膜を形成し、ラビングにより配向処理を行った。次に、実施例1で用いた溶液を実施例1と同様の方法で流延し、硬化させた。重合性液晶硬化物層の膜厚は5.9μmであり、残留溶媒量は0.1重量%であった。
【0059】
一方、実施例1で作成したポリカーボネートフィルム上にアクリル系粘着剤を2μm形成させ、重合性液晶硬化物層と貼り合わせ剥がした。ポリカーボネートフィルム側に液晶硬化物層が転写されていることを確認した。得られた光学補償フィルムの透過率は、測定光590nmで84%であった。作成した光学補償フィルムの重合性液晶硬化物を偏光顕微鏡で観察したところ、一軸かつモノドメインに配向していることを確認した。
【0060】
【比較例1】
次の構造式(15)で表され、昇温過程では105℃から150℃の間でネマチック状態、室温から105℃以下では結晶状態となる重合性液晶、光開始剤としてはチバガイギー社製の商品名「イルガキュアー651」として市販されている2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、溶媒としてメチレンクロライドを、それぞれ重量比で49.8:0.2:50で混合させ溶液を作成し、アプリケータを用いて耐溶剤層付透明樹脂フィルム上に流延した。
【0061】
【化15】
【0062】
溶液流延中は100℃とし、その後一度160℃に加熱し3分間経過した後、120℃に保ち、窒素雰囲気下で紫外線ランプにより光強度20mW/平方cmで3分間照射し、硬化させたが、溶液流延中に急激に溶媒が蒸発してしまうため、均一な膜質を得ることができなかった。
【0063】
【比較例2】
前述の構造式(15)で表され、昇温過程では105℃から150℃の間でネマチック状態、室温から105℃以下では結晶状態となる重合性液晶、光開始剤としては商品名「イルガキュアー651」、溶媒としてメチレンクロライドを、それぞれ重量比で49.8:0.2:50で混合させ溶液を作成し、アプリケータを用いて耐溶剤層付透明樹脂フィルム上に流延した。
【0064】
溶液流延中は25℃とし、その後一度160℃に加熱し3分間経過した後、120℃に保ち、窒素雰囲気下にて紫外線ランプにより光強度20mW/平方cmで3分間照射し、硬化させたが、溶液流延中に溶媒蒸発に伴い急激に結晶化が進行してしまったため、均一な膜質を得ることができなかった。
【0065】
【発明の効果】
本発明は、特定された物性、官能基を有する重合性液晶を溶媒に溶かして支持体上に流延し、乾燥後ネマチック状態において光重合するといった新規な製造方法およびそれにより製膜された光学補償フィルムに関するものであり、この発明により高品質でかつ生産性に優れた液晶表示装置用光学補償フィルムを提供することができるといった効果を有する。
Claims (4)
- 液晶表示装置に用いられる光学補償フィルムの製造方法において、アクリレート基および/またはメタクリレート基を1つ以上有する1種類以上の混合物で、かつ少なくとも10〜70℃の温度範囲内の温度においてネマチック状態となる重合性液晶を、溶媒に溶解させ溶液とし、該溶液を配向処理をした支持体上に流延させ乾燥工程を経た後、ネマチック状態において光により重合性液晶を硬化させ、さらに透明樹脂フィルム上に該硬化物を転写させることにより製造することを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
- 液晶表示装置に用いられる光学補償フィルムの製造方法において、アクリレート基および/またはメタクリレート基を1つ以上有する1種類以上の混合物で、かつ少なくとも10〜70℃の温度範囲内の温度においてネマチック状態となる重合性液晶を、溶媒に溶解させ溶液とし、該溶液を配向処理をした透明樹脂フィルムからなる支持体上に流延させ乾燥工程を経た後、ネマチック状態において光により重合性液晶を硬化させて製造することを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
- 透明樹脂フィルムは、リタデーションが10nm以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の光学補償フィルムの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法を用いて製造し、かつネマチック状態において光により硬化させた重合性液晶の硬化物に含有される溶媒量が1重量%以下であることを特徴とする光学補償フィルム。
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