JP3808336B2 - 適応アンテナ送信装置及びその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、適応アンテナ装置を用いた無線通信システムにおける伝搬環境推定、指向性パターンの制御及び干渉除去等を行う適応アンテナ送信装置及びその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
適応アンテナは、希望する信号と相関の高い到来波を合成し、相関の低い到来波を抑圧するように指向性制御を行うアンテナである。以下に従来の下り回線の適応アンテナの指向性パターンの制御方法について説明する。
図13に下り通信の伝搬環境の推定を行わない従来の適応アンテナ装置を示す(例えばR.A.Monzingo and T.W.Miller,Introduction to Adaptive Arrays ,John Wiley & Sons,lnc.1980 )。
【0003】
図13において、従来の適応アンテナ装置は、複数のアンテナ素子5011〜501Nと、各アンテナ素子5011〜501Nに接続され入力信号に複素重みを課す重み付け装置5021〜502Nと、各重み付け装置5021〜502Nの重みを制御する重み制御装置503と、基準信号発生装置504と、受信時には各アンテナ素子5011〜504Nで受信され重み付け装置5021〜502Nで複素重み付けされた信号を合成し、送信時には入力信号を重み付け装置5021〜502Nに分岐するための合成/分岐装置505から構成される。尚、Nは1以上の整数である。
【0004】
一般に適応アンテナ装置の複数のアンテナ素子5011〜501Nで受信された信号をx1 〜xN とし、重み付け装置5021〜502Nに設定される重みの値をw1 〜wN とし、希望信号成分をdと表すと、希望信号との誤差の2乗が最小になるように指向性を形成する重みの値は、
【0005】
【数1】
【0006】
で与えられる。
【0007】
上り通信時の伝搬環境と下り通信時の伝搬環境が全く同一と見なせる場合には、上記(2)式のアンテナ間の相関行列RXX、及び上記(3)式の希望ユーザに対するステアリングベクトルrXDに変化が生じないため、上り通信時の重みの値を下り通信にもそのまま適用すれば、通信路の2乗誤差を最小とする指向性を形成することができる。従って、上り通信と下り通信の伝搬環境がほぼ等しい場合には、単に複数のアンテナ素子で構成するアレーアンテナを構成すればよい。
【0008】
ところが、上り通信と下り通信で周波数が異なるFDD(Frequency DivisionDuplex) システムや、環境変動の大きい環境では、(2)式で定義したアンテナ間の相関行列RXXを推定することができず、適応アンテナ装置が動作しないという問題がある。
【0009】
下り通信において受信局で伝搬環境を推定し、伝搬環境の推定結果を送信局にフィートバックし、下り回線用の指向性形成を行う方法が提案されている(Derlek Gerlacha,Arlogyaswami Paulraj, “Base Station Antenna Arrays with Mobile to Base Feedback,"Conference Reccord of The Twenty-Seventh Asilomar Conference,1993) 。以下にその動作について説明する。
【0010】
下り通信では、情報信号の間にプロービング信号を周期的に挿入して信号を伝送する。プロービング信号は、送信局の各アンテナと受信局との間の伝達関数の推定に用いる。ブロービング信号を伝送する区間では、各アンテナから異なったプロービング信号系列を送信する。また、各アンテナから送信するプロービング信号は、全受信局が既知の信号系列とする。
受信局では、受信信号に対して、各アンテナから送信される各ブロービング信号との相関演算を行い、各アンテナのプロービング信号毎に複素相関値を求める。この複素相関値を上り通信において送信局にフィードバックし、適応アンテナの指向性形成に反映させる。
【0011】
この方法によれば、各アンテナのプロービング信号との相関値を受信局において求めることによって、送信局の各アンテナと受信局との間の伝搬環境を推定することができる。
【0012】
しかしながら、この方法を利用する場合には、各アンテナから異なる信号が送信されるため、指向性パターンを形成することができない。従って、同一チャネルを利用する周辺セルに対して干渉を与えてしまうという問題がある。また、アンテナ素子数が増えると、プロービング信号の信号系列長が長くなるため、スループットが低下するという問題が生じる。
【0013】
下り回線の送信局の複数のアンテナと受信局のアンテナとの間の伝達関数を推定する方法として、Space-Time-Coding が提案されている(Vahid Tarokh,et al"Space-Time Codes for High Data Rate Wireless Communication: Performance Criterion and Code Construction" ,IEEE Trans.Information Theory ,Vo.1.44,N0.2 ,MARCH,1998) 。このSpace-Time-Coding によれば、送信局の各アンテナから異なる信号を送信し、受信局で伝達関数を推定することができる。
【0014】
以下に、送信局のアンテナ素子数が2素子、受信局のアンテナ素子数が1素子で、Space-Time-Coding の符号化にSpace-Time-Block-Coding を用いた場合の伝搬環境推定方法を示す。送信信号系列は2信号ごとに1つのブロックを形成する。例えば送信信号をs1、s2、s3、‥・ とした場合には、
1つ目のブロックはs(1)、s(2)
2つ目のブロックはs(3)、s(4)
となる。ここで、s(n)はn番目の送信信号を表す。
【0015】
次に、各アンテナで送信する信号系列を以下のように決定する。
アンテナ1からの送信信号は、偶数番目の信号に対しては共役値をとり、
s(1)、-s(2) * 、s(3)、-s(4) * 、s(5)、-s(6) * ‥‥
とする。ここで *は複素共役を表す。また、アンテナ2からの送信信号は、奇数番目の信号に対しては共役値をとり、さらに各ブロックで送信する順番を逆にする。即ち、アンテナ2からの送信信号は
s(2) 、s(1) * 、s(4) 、s(3) * 、s(6) 、s(5) * ‥‥
となる。このとき、受信局での時刻k 、k+1 での受信信号r(k)、r(k+1)は、次の(5)式で表される。
【0016】
【数2】
【0017】
ここで、h1 は送信局のアンテナ1と受信局との間のチャネル応答、h2 は送信局のアンテナ2と受信局との間のチャネル応答であり、いずれも複素数値である。従って、受信局の受信信号からh1 、h2 を推定できれば、送信局のアンテナと受信局の間の伝搬環境を推定できたことになる。上記(5)式を変形すると以下の(6)式が得られる。
【0018】
【数3】
【0019】
送信局、受信局間でs(k)が既知である場合には、(6)式からただちにh1 、h2 を求めることができる。また、s(k)が情報区間の信号である場合には、受信信号データはメモリに保存し、復号時に決定したs(k)を利用することで、情報伝送中にも伝達関数を推定することができる。
ただし、この方法を用いた場合にも、各アンテナから異なる信号が送信されるため、指向性パターンを形成することができない。従って、同一チャネルを利用する周辺セルに対して干渉を与えてしまうという問題がある。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
ディジタル無線伝送での下り通信における指向性制御では、送信局アンテナと受信局との間の伝達関数を推定する必要がある。ところが上述したように、伝達関数を推定するために各アンテナから異なる信号を送信するので、伝達関数推定時に指向性パターンを形成することができず、このため、他システムや同一周波数チャネルを利用する他セルに多大な干渉を与えてしまうという問題があった。また、従来の伝達関数推定方法では、送信局アンテナと受信局との間の伝達関数を推定するためには、予め定められた信号系列を送信する必要があるため、スループットが低下するという問題があった。
【0021】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、他のセルに対する干渉を低減すると共に、スループットの向上を図ることのできる適応アンテナ送信装置の及びその制御方法を提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明による適応アンテナ送信装置は、それぞれM個のアンテナ素子が所定の位置関係に配置されたM個のサブアレーアンテナが前記所定の位置関係と同一の位置関係に配置され、同一の指向性パターンを有する複数のアンテナ素子と、受信局への送信信号に基づいて各サブアレーアンテナ毎に異なるM個の信号を生成する信号発生装置と、前記M個の異なる信号をそれぞれM個に分岐する分岐装置と、前記分岐された各信号にそれぞれ重み付けを行って対応する各アンテナ素子に与える複数の重み付け装置と、各重み付け装置に設定される重みを制御することにより各サブアレーアンテナの指向性パターンを同一に制御する指向性制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0023】
従って、本発明によれば、サブアレーアンテナを構成する複数のアンテナ素子の位置関係と、各サブアレーアンテナの位置関係とを同一にすると共に、サブアレーアンテナ毎に指向性パターンが同一となるように制御することによって、送信局の適応アンテナ送信装置における各アンテナ素子と受信局のアンテナとの間の伝達関数を推定する場合に、上記伝達関数を、各サブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数で近似することができる。このため、各アンテナ素子から異なる信号を送信することなく、従って、他システムや同一周波数を利用する他チャンネルに干渉を与えることなく、また、スループットを低下させることなく、上記伝達関数の推定を行うことができる。
【0024】
また、本発明による適応アンテナ送信装置の制御方法は、それぞれM個のアンテナ素子が所定の位置関係に配置されたM個のサブアレーアンテナが前記所定の位置関係と同様の位置関係に配置され、同一の指向性パターンを有する複数のアンテナ素子と、受信局への送信信号に基づいて各サブアレーアンテナ毎に異なるM個の信号を生成する信号発生装置と、前記M個の異なる信号をそれぞれM個に分岐する分岐装置と、前記分岐された各信号にそれぞれ重み付けを行って対応する各アンテナ素子に与える複数の重み付け装置と、各重み付け装置に設定される重みを制御することにより各サブアレーアンテナにおける各指向性パターンを同一にする指向性制御装置とを備え、送信局に設けられたた適応アンテナ送信装置の制御方法であって、前記各サブアレーアンテナから異なる信号系列を送信し、前記受信局において各サブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数を推定し、上記推定結果を上り通信により前記送信局に送信し、送信局において、受信した推定結果に基づいてサブアレーアンテナで形成する指向性パターンを決定することを特徴とするものである。。
【0025】
従って、本発明によれば、サブアレーアンテナを構成する複数のアンテナ素子の位置関係と、各サブアレーアンテナの位置関係とを同一にすると共に、サブアレーアンテナ毎に指向性パターンが同一となるように制御し、また、各サブアレーアンテナから異なる信号系列を送信し、受信局において、送信局の適応アンテナ送信装置における各アンテナ素子と受信局のアンテナとの間の伝達関数を推定し、推定結果を送信局にフィードバックし、送信局において、フィードバックされた推定結果に基づいて各サブアレーアンテナ毎の指向性パターンを決定することにより、各アンテナ素子と受信局との間の伝達関数を、各サブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数で近似することができる。このため、各アンテナ素子から異なる信号を送信する必要がなく、従って、他システムや同一周波数を利用する他チャンネルに干渉を与えることなく、また、スループットを低下させることなく、伝達関数の推定を行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態による送信局における適応アンテナ送信装置を示すブロック図である。本実施の形態は、サブアレーアンテナを構成する複数のアンテナ素子の位置関係と、複数のサブアレーアンテナの位置関係を同一とすることによって、各アンテナ素子と端末局(受信局)との間の伝達関数を各サブアレーアンテナと端末局との間の伝達関数で近似するようにしたものである。
【0027】
図2はサブアレーアンテナを直線アレーアンテナによって構成した場合の構成例を示す。図3はサブアレーアンテナ間で1つのアンテナ素子を共用する場合に用いられる合成器を示す。図4はサブアレーアンテナを平面アレーアンテナで構成した場合の構成例を示す。図5はサブアレーアンテナからの送信信号のフレームを示す。図6はアンテナ素子間の相互結合が影響する場合に各アンテナ素子の指向性を同一とするためのアレーアンテナ構成方法を示す。図7は本実施の形態による効果と従来方法の効果を示している。
【0028】
各図において、1111〜11MMはアンテナ素子、12は複数サブアレー用信号発生装置、1311〜13K1〜13MMは出力端子、1411〜14MMは重み付け装置、151〜15Mは分岐装置、16は信号発生装置、17は指向性制御装置、18(図3)は合成器、191〜19Mはサブアレーアンテナ指向性形成装置である。尚、Mは1以上の整数である。
アンテナ素子1111〜11MMは、サブアレーアンテナ1〜Mを構成する。サブアレーアンテナ1は、アンテナ素子1111〜111Mで構成され、サブアレーアンテナ2は、アンテナ素子1121〜112Mで構成され、サブアレーアンテナMは、アンテナ素子11M1〜11MMで構成されている。
【0029】
次に動作について説明する。
図1において、受信局(端末局)への送信信号は、まず信号発生装置16に入力される。信号発生装置16では、受信局が伝搬環境を推定する区間において、M個のサブアレーアンテナ毎に異なる信号が入力されるように、サブアレーアンテナ毎の入力信号を生成する。
送信局と受信局で予め定められた既知信号を利用できる場合には、図5に示すように受信局への送信信号に既知信号を付加した入力信号を発生し、既知信号を送信する区間では、各サブアレーアンテナからは異なる信号系列が送信されるようにする。
【0030】
さらに、情報信号を伝送中にも伝搬環境を推定するには、例えば信号発生装置16において送信信号のシリアルーパラレル変換を行えばよい。あるいは、入力信号をサブアレーアンテナの数に分岐した後、異なる畳み込み符号化をかける方法もある。また、入力信号に対して畳み込み符号等の符号化を行った後、シリアルパラレル変換する方法等もある。
【0031】
信号発生装置16の出力信号は、分岐装置151〜15Mに入力され、それぞれサブアレーアンテナを構成するアンテナ数Mに分岐される。分岐装置151〜15Mの出力信号は、重み付け装置1411〜14MMにより重み付けされた後、出力端子1311〜13KMから出力される。
【0032】
ここで、重み付け装置1411〜14MMにより重み付けされる重みの値w11、wMMは以下の関係を満たすように指向性制御装置17により制御される。
wnm=wnm , ……(7)
ただし、nはM個のサブアレーアンテナにおけるn番目のサブアレーアンテナを表し、1≦n≦Mである。またmはサブアレーアンテナを構成するM個のアンテナ素子のm番目を表し、1≦m≦Mである。
上式のように各重みを制御することによって、各サブアレーアンテナで形成される各指向性パターンは同一になる。
【0033】
複数サブアレー用信号発生装置12の出力信号(重み付け装置1411〜14MMの各出力信号)は、複数のアンテナ素子1111〜11MMに与えられ、送信局から送信される。ここで、複数のアンテナ素子1111〜11MMは、各指向性パターンが同一のものを使用するものとする。
【0034】
また、隣接するアンテナ素子の影響で指向性パターンに差が生じる場合には、無給電のアンテナを周辺に配置することで、指向性パターンを調整する。例えば、直線上にアンテナ素子を配置し、素子間隔を等間隔とした場合には、両端のアンテナの指向性を補正するために、図6に示すようにその両側に無給電の付加素子を配置すればよい。
【0035】
図2に直線アレーアンテナの場合のアンテナ配置を示す。図中、略凹形で囲ったアンテナによりサブアレーアンテナが構成される。図示では、それぞれ3つのアンテナ素子により3つのサブアレーアンテナが構成されている。この場合、各1ブアレーアンテナにおいて、各アンテナ素子の配置(位置関係)は同一となっている。また、サブアレーアンテナ間の間隔は、サブアレーアンテナを構成するアンテナ素子の間隔と同一となっている。即ち、各サブアレーアンテナの配置(各凹形の位置関係)とサブアレーアンテナ内のアンテナ素子の配置は同一となっている。
【0036】
尚、図2のように各サブアレーアンテナで同じ位置にアンテナ素子を配置する必要がある場合には、1つのアンテナ素子を複数のサブアレーアンテナで共用することも可能である。1つのアンテナ素子を2つのサブアレーアンテナで共用する場合は、図3に示すように合成器18を用いて、異なる2つのサブアレーアンテナからの信号を合成した後、アンテナ素子に入力する。
【0037】
以下、伝搬環境をフラットフェージング環境として、本実施の形態の動作について説明する。フラットフェージング環境がマルチパス環境であり、送信局でのマルチパス波の方向がほぼ同一方向となる場合は、アンテナ素子nと受信局との間の伝達関数hn は以下の式で表すことができる(荒木純道、鄭重植、ノル シャヒタ モハッマド シャー 阪口啓、高田潤一“Extension of array mode vector to take the angular spread into account”電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、20O0年9月)。
【0038】
【数4】
【0039】
ただし、A、θn は共に複素数であり、直線アレーアンテナではθn はある基準位置からの距離に比例する値である。例えば、図2でアンテナ素子1111の位置を基準とした場合には、以下のようになる。
【0040】
【数5】
【0041】
ここで、hnmはサブアレーアンテナnのアンテナ素子mと受信局との間の伝達関数を表すものとする。このとき、受信局で推定するサブアレーアンテナnと受信局との間の伝達関数Hn は以下の式で表される。
【0042】
【数6】
【0043】
各サブアレーアンテナの配置と、サブアレーアンテナを構成するアンテナ素子の配置が同じなので、Hn とHm の間には以下の関係が成り立つ。
【0044】
【数7】
【0045】
例えば、サブアレーアンテナ1を基準とし、θ1 =0とすれば、Hn /H1 によりθn を推定することができる。さらに、推定したθn を用いれば、以下の式によりAを推定することができる。
【0046】
【数8】
【0047】
次に、図4に平面アレーアンテナの場合のアンテナ配置(位置関係)を示す。図中、三角形で囲ったアンテナ素子によりサブアレーアンテナが構成される。図示のように、それぞれ3つのアンテナ素子により3つのサブアレーアンテナを構成した場合、各サブアレーアンテナにおいて、アンテナ配置は同一となっている。また、サブアレーアンテナの配置はサブアレーアンテナを構成するアンテナ素子の配置と同一となっている。
【0048】
即ち、各サブアレーアンテナを構成する3つのアンテナ素子が形作る全ての三角形(1111−1112−1113の作る三角形、1121−1122−1123の作る三角形、1131−1132−1133の作る三角形)は合同である。
【0049】
また、各サブアレーアンテナの配置は、サブアレーアンテナを構成するアンテナ素子の配置と同様である。即ち、図4において、各サブアレーアンテナの重心(鈍角の頂点等でも可)を結んだ三角形は、1111−1112−1113の作る三角形、1121−1122−1123の作る三角形、1131−11322−1133の作る三角形と合同である。
また、上記合同を相似とする場合が、後述する第5の実施の形態である。
【0050】
尚、図示のように、各サブアレーアンテナで同じ位置にアンテナを配置する必要がある場合には、1つのアンテナ素子を複数のサブアレーアンテナで共用することも可能である。共用する場合には図3の合成器18を用いて、異なるサブアレーアンテナからの信号を合成した後、アンテナ素子に入力する。
【0051】
上記平面アレーアンテナの場合にも、伝達関数は(8)式のように表すことができる。サブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数も(10)式のように表すことができ、さらに、サブアレーアンテナ1を基準とすることで、(11)、(12)式により各アンテナ素子と受信局との間の伝達関数を推定することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、サブアレーアンテナと受信局との間で伝達関数を推定することによって、各アンテナ素子と受信局との間の伝達関数を推定することができる。
【0052】
図6に本実施の形態による方法と図13の従来方法を適用した場合の伝搬環境推定時の他セルヘの干渉量を示す。
図から分かるように、従来方法では、下り回線の伝達関数の推定を行う際に、送信局で指向性形成を行うことができないため、伝達関数推定時の他セルヘの干渉量は同一となる。これに対して本実施の形態による方法では、サブアレーアンテナ毎に指向性パターンを形成し、アンテナ素子数を増加させることにより干渉量を低減できることが分かる。
また、従来方法では、伝搬環境推定時に指向性パターンを形成することができないため、アンテナ素子数の増大に伴って干渉量が増大していることが分かる。
【0053】
図8は本発明の第2の実施形態による適応アンテナ送信装置を示すブロック図である。本実施の形態は、サブアレーアンテナを構成する複数のアンテナ素子の配置と、複数のサブアレーアンテナの配置とを同一とすることによって、各アンテナ素子と複数の受信局との間の伝達関数を各サブアレーアンテナと各受信局との間の伝達関数で近似することを可能としたものである。
【0054】
図8において、1111〜11MMは複数のアンテナ素子、211〜21Kは複数サブアレー信号発生装置で、図示せずも図1の重み付け装置と分岐装置とからなるサブアレーアンテナ指向性形成装置をそれぞれ内蔵している。2211〜22MMは合成器、23111〜23KMMは出力端子、17は指向性制御装置である。Kは同一チャンネルで通信する受信局の数である。尚、サブアレーアンテナを構成する複数のアンテナ素子の配置と、各サブアレーアンテナの配置とは、図2、図4と同様であるとする。
【0055】
次に動作について説明する。
各受信局1〜Kへの送信信号は、複数サブアレー信号発生装置211〜21Kに入力されて各サブアレーアンテナ毎に異なる信号が生成される。複数サブアレー信号発生装置211〜21Kの出力信号は、合成器2211〜22MMに入力されて、同一のアンテナ素子に入力する各受信局用の複数サブアレー信号発生装置211〜21Kからの出力信号を合成し、各アンテナ素子1111〜11MMに与える。各複数サブアレー信号発生装置211〜21K内部の重み付け装置に対して指向性制御装置17により設定する重み値は、複数サブアレー信号発生装置毎に異なる値とし、各受信局に対して異なる指向性パターンを形成する。
【0056】
本実施の形態によれば、図2の直線アレーアンテナ、図4の平面アレーアンテナのどちらの場合でも、複数の受信局で同一チャネルの同一時刻において各サブアレーアンテナと各受信局との間の伝達関数の推定が可能になる。
さらに、(11)、(12)式を用いることにより、各アンテナと各受信局との間の伝達関数の推定も可能となる。また、図7に示す効果は本実施の形態においても得られる。
【0057】
図9は本発明の第3の実施の形態による動作を示すフローチャートである。本実施の形態は、第1の実施の形態で用いられる適応アンテナ送信装置の制御方法であり、受信局が1局の場合に、下り回線の指向性パターンの形成と伝搬環境推定を同時に行うと共に、伝搬環境推定結果を下り回線の指向性パターンの形成に反映させる場合を示している。
【0058】
図9において、ステップS1により、サブアレーアンテナnから送信される送信信号をSn(t) と表すと、受信局での受信信号は、
【0059】
【数9】
【0060】
と表すことができる。例えば、伝搬環境推定時刻における信号Sn(t) が既知である場合には、ステップS2により、受信信号とSn(t) の相関値を求めることにより、以下のようにサブアレーアンテナとの伝達関数を推定することができる。
【0061】
【数10】
【0062】
ただし、各サブアレーアンテナから送信する送信信号の間には相関がないものを選び、以下の式を満たす必要がある。
【0063】
【数11】
【0064】
また、送信局からの送信信号が未知である場合には、既知信号区間等で一度推定した伝達関数Hn を利用し、
【0065】
【数12】
【0066】
が最小となるようにSm(t) を決定し、判定後に(14)式により伝達関数を推定すればよい。また、既知信号区間の場合には、各アンテナの代わりに、前述したSpace-Time-Coding の符号化を各サブアレーアンテナに適用することで(6)式を用いて伝達関数を推定することができる。
【0067】
以上のようにして受信局で推定されたサブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数Hn は、ステップS3により上り通信において送信局に伝送される。送信局への伝送は、無線を用いる方法、有線を用いる方法がある。
送信局ではHn が推定できれば、(11)式及び(12)式によって伝達関数が推定できる。推定した伝達関数に基づいて、例えば以下のように重みベクトルを決定することができる。
【0068】
【数13】
【0069】
上記(17)式におけるσは任意の定数である。
上述した手順により、下り回線での伝達関数を指向性形成を行いながら推定し、さらに、下り回線用の重みの値を決定してステップS4で重み制御を行うことができる。
【0070】
図10は本発明の第4の実施の形態による動作を示すを示すフローチャートである。本実施の形態は、第2の実施の形態で用いられる適応アンテナ送信装置の制御方法であり、受信局が複数局の場合に、下り同線の指向性形成と伝搬環境推定を同時に行うと共に、伝搬環境推定結果を下り回線の指向性形成に反映させる場合を示している。
【0071】
図10において、ステップS11により、サブアレーアンテナnから送信される受信局k(1≦k≦K)への送信信号をSkn(t)と表し、サブアレーアンテナnの受信局kへの信号に対するアンテナmの重みの値をwknm と表すと、受信局kでの受信信号は、
【0072】
【数14】
【0073】
と表すことができる。例えば、伝搬環境推定時刻における信号Skn(t)が既知である場合には、受信局kにおいて、受信信号とSkn(t)の相関値を求めることにより、ステップS12により以下のようにサブアレーアンテナとの伝達関数を推定することができる。
【0074】
【数15】
【0075】
ただし、各サブアレーアンテナから送信する送信信号の間には相関がないものを選び、以下の式をみたす必要がある。
【0076】
【数16】
【0077】
また、送信局からの送信信号が未知である場合には、既知信号区間等で一度推定した伝達関数Hn を利用し、
【0078】
【数17】
【0079】
が最小となるようにSk,m(t) を決定し、判定後に(式14)によって伝達関数を推定すればよい。また、既知信号区間の場合には各アンテナの代わりに、前述のSpace-Time-Coding の符号化を各サブアレーアンテナに適用することで(6)式を用いて伝達関数を推定することができる。
【0080】
以上のようにして受信局で推定されたサブアレーアンテナと受信局の間の伝達関数Hknは、ステップS13で上り通信において送信局に伝送される。送信局への伝送は、無線を用いる方法、有線を用いる方法がある。
送信局ではHknが推定できれば、(式11)及び(式12)によって伝達関数が推定できる。推定した伝達関数に基づいて、受信局nに対しては例えば以下のように重みベクトルを決定することができる。
【0081】
【数18】
【0082】
上述した手順によって、下り回線での伝達関数を指向性形成を行いながら推定し、さらに下り回線用の重みの値を決定するステップS14で重みを制御することができる。
【0083】
次に、図11、図12を参照して本発明の第5の実施の形態を説明する。
図11は直線アレーアンテナの場合のアンテナ配置を示し、図12は平面アレーアンテナの場合のアンテナ配置を示す。本実施の形態は、サブアレーアンテナを構成する複数のアンテナ素子の幾何学的配置が、複数のサブアレーアンテナの配置と相似の関係にある場合である。
【0084】
図11において、略凹形で囲ったアンテナによりサブアレーアンテナを構成する。図示のように各サブアレーアンテナにおいて、アンテナ配置は同一となっている。また、サブアレーアンテナ間の間隔はサブアレーアンテナを構成するアンテナ素子の間隔のr倍となっている。
【0085】
尚、図示のように、各サブアレーアンテナで同じ位置にアンテナを配置する必要がある場合には、図3の合成器18を用いて1つのアンテナ素子を複数のサブアレーアンテナで共用することも可能である。
【0086】
以下、伝搬環境をフラットフェージング環境として、本実施の形態の動作について説明する。フラットフェージング環境がマルチパス環境であり、送信局でのマルチパス波の方向がほぼ同一方向となる場合は、アンテナ素子nと端末局の間の伝達関数は(8)式で表すことができる。直線アレーアンテナの場合は、θnはある基準位置からからの距離に比例し、例えば図11でアンテナ素子1111の位置を基準とした場合には、以下のようになる。
【0087】
【数19】
【0088】
受信局で推定するサブアレーアンテナnと受信局との間の伝達関数Hn は式(10)で与えられ、サブアレーアンテナの間隔がアンテナ間隔のr倍になっていることに注意すると、Hn とHm との間には以下の関係が成り立つ。
【0089】
【数20】
【0090】
例えばサブアレーアンテナ1を基準とし、θ1 =0とすればHn /H1 によりrθn を推定することができる。さらに、推定したθn を用いれば(12)式によりAを推定することができる。
【0091】
次に、図12に示すような平面アレーアンテナの場合にも、伝達関数は(23)式のように表すことができる。サブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数も(10)式のように表すことができる。さらに、サブアレーアンテナ1を基準とすることで、(24)、(12)式によって各アンテナ素子と受信局との間の伝達関数を推定することができる。
【0092】
図12において、各サブアレーアンテナの重心(鈍角の頂点等でも可)を結んだ三角形は、1111−1112−1113の作る三角形、1121−1122−1123の作る三角形、1131−11322−1133の作る三角形と相似形である。
【0093】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、送信局の適応アンテナ送信装置における各アンテナ素子と一つ又は複数の受信局のアンテナとの間の伝達関数を推定する場合に、他システムや同一周波数を利用する他チャンネルに干渉を与えることなく、また、スループットを低下させることなく、伝達関数の推定を行うことができる。これによって、送信局が1つ又は複数の受信局と通信する場合に、送信局と各受信局との間の環境変動に追従して各受信局に対する伝送品質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態による送信局における適応アンテナ送信装置を示すブロック図である。
【図2】 サブアレーアンテナを直線アレーアンテナにより構成した場合を示す構成図である。
【図3】 サブアレーアンテナ間で1つのアンテナ素子を共用する場合に用いられる合成器を示すブロック図である。
【図4】 サブアレーアンテナを平面アレーアンテナで構成した場合を示す構成図である。
【図5】 サブアレーアンテナからの送信信号のフレームを示す構成図である。
【図6】 アンテナ素子間の相互結合が影響する場合に各アンテナ素子の指向性を同一とするためのアレーアンテナ構成方法を示す構成図である。
【図7】 本発明による効果と従来方法の効果を示す特性図である。
【図8】 本発明の第2の実施の形態による送信局における適応アンテナ送信装置を示すブロック図である。
【図9】 本発明の第3の実施の形態による送信局における適応アンテナ送信装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図10】 本発明の第4の実施の形態による適応アンテナ送信装置の制御方法を示すフローチャートである。
【図11】 本発明の第5の実施の形態による適応アンテナ送信装置のサブアレーアンテナを直線アレーアンテナにより構成した例を示す構成図である。
【図12】 本発明の第5の実施の形態による適応アンテナ送信装置のサブアレーアンテナを平面アレーアンテナにより構成した例を示す構成図である。
【図13】 従来の適応アンテナ送信装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1111〜11MM アンテナ素子
12 複数サブアレー用信号発生装置
1311〜13MM 出力端子
1411〜14MM 重み付け装置
151〜15M 分岐装置
16 信号発生装置
17 指向性制御装置
18 合成器
191〜19M サブアレーアンテナ指向性形成装置
211〜21K 複数サブアレー信号発生装置
2211〜22MM 合成器
23111〜23KMM 出力端子
1〜M サブアレーアンテナ
Claims (7)
- それぞれM個のアンテナ素子が所定の位置関係に配置されたM個のサブアレーアンテナが前記所定の位置関係と同一の位置関係に配置され、同一の指向性パターンを有する複数のアンテナ素子と、
受信局への送信信号に基づいて各サブアレーアンテナ毎に異なるM個の信号を生成する信号発生装置と、
前記M個の異なる信号をそれぞれM個に分岐する分岐装置と、
前記分岐された各信号をそれぞれ重み付けして対応する各アンテナ素子に与える複数の重み付け装置と、
各重み付け装置に設定される重みを制御することにより各サブアレーアンテナで形成される指向性パターンを同一に制御する指向性制御装置とを備えたことを特徴とする適応アンテナ送信装置。 - 前記信号発生装置、分岐装置及び複数の重み付け装置から構成される部分をK個の受信局への異なる送信信号に対してK個設けると共に、各重み付け装置の出力を対応するアンテナ素子毎に合成して各アンテナ素子に与える複数の合成装置を設け、前記指向性制御装置は、各受信局に対して異なる指向性パターンが形成されるように制御することを特徴とする請求項1記載の適応アンテナ送信装置。
- 前記サブアレーアンテナを構成するM個のアンテナ素子が形成する形とM個のサブアレーアンテナにおける各所定位置が形成する形とが互いに合同又は相似形であることを特徴とする請求項1又は2記載の適応アンテナ送信装置。
- 前記各サブアレーアンテナから異なる信号系列を送信し、この信号系列に基づいて前記受信局で推定された各サブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数を前記受信局から受信し、受信した推定された伝達関数に基づいて各サブアレーアンテナで形成する指向性パターンを決定する指向性決定手段を設けたことを特徴とする請求項1又は3記載の適応アンテナ送信装置。
- 前記受信局が複数あり、前記指向性決定手段は、各受信局毎に指向性パターンを決定することを特徴とする請求項4記載の適応アンテナ送信装置。
- それぞれM個のアンテナ素子が所定の位置関係に配置されたM個のサブアレーアンテナが前記所定の位置関係と同一の位置関係に配置され、同一の指向性パターンを有する複数のアンテナ素子と、受信局への送信信号に基づいて各サブアレーアンテナ毎に異なるM個の信号を生成する信号発生装置と、前記M個の異なる信号をそれぞれM個に分岐する分岐装置と、前記分岐された各信号をそれぞれ重み付けして対応する各アンテナ素子に与える複数の重み付け装置と、各重み付け装置に設定される重みを制御することにより各サブアレーアンテナで形成される指向性パターンを同一に制御する指向性制御装置とを備え、送信局に設けられた適応アンテナ送信装置の制御方法であって、
前記各サブアレーアンテナから異なる信号系列を送信し、
前記受信局において各サブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数を推定し、
上記推定結果を上り通信により前記送信局に送信し、
送信局において、受信した推定結果に基づいてサブアレーアンテナで形成する指向性パターンを決定することを特徴とする適応アンテナ送信装置の制御方法。 - 前記信号発生装置、分岐装置及び複数の重み付け装置から構成される部分をK個の受信局への異なる送信信号に対してK個設けると共に、各重み付け装置の出力を対応するアンテナ素子毎に合成して各アンテナ素子に与える複数の合成装置を設け、前記指向性制御装置は、各受信局に対して異なる指向性パターンが形成されるように制御するようになされ、
前記各サブアレーアンテナから異なる信号系列を送信し、
前記各受信局では各サブアレーアンテナと受信局との間の伝達関数を推定し、
前記推定結果を上り通信により前記送信局に送信し、
送信局において、受信した推定結果に基づいて各信号発生装置毎のサブアレーアンテナで形成する指向性を決定することを特徴とする請求項6記載の適応アンテナ送信装置の制御方法。
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