JP3807940B2 - 植物生育の診断方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、植物生育の診断方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、化学薬品を一切使用することなしに、かつ非破壊で、生きたままの植物の生育を、短時間で診断することのできる、新しい植物生育の診断方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
樹木や園芸植物、あるいは野菜等の農産品植物について、その生育状態を診断して、病変や、老化、あるいは枯死等の変異を早期に判別することが、環境保全や、農業、あるいは農産加工業等にとって重要な課題になってきている。
【0003】
しかしながら、従来では、これら植物の健康状況を判別するには目視等の経験による主観的な手法が一般的であって、客観的な指標をもっての判別はほとんど実現されていないのが実情である。
【0004】
もちろん、化学分析的手法による判別も検討されているが、このような手段は、生体としての植物を破壊することを前提としているため、好ましくなく、また、化学薬品を使用することから、その処理等に多くの手間と時間を要することになり、実際的ではない。
【0005】
このような状況において、植物の生葉にレーザー光を照射して、生葉より放出されるレーザー誘起蛍光より植物の状態についての有用情報を取得しようとの提案がなされ、この出願の発明者らによって、レーザー誘起蛍光のスペクトル解析の詳細な検討が進められてきている。このようなレーザー誘起蛍光の利用は、生体としての植物を破壊することがなく、しかも分析のための化学薬品を使用しなくともよいという利点を有している。
【0006】
だが、この出願の発明者らの検討にもかかわらず、これまでのところ、従来一般的な手法であった目視等の経験的な主観判別の方法に実際的に代わり得るだけの客観的指標を持った、レーザー誘起蛍光を利用しての植物生産の診断方法は依然として具体化されていない。
【0007】
そこで、この出願の発明は、発明者らのこれまでの、詳細で、精力的な検討を踏まえて、レーザー誘起蛍光を利用する場合の長所を生かし、化学薬品を一切使用することなしに、かつ、非破壊で、生きたままの植物の生育状況を、短時間で、しかも客観的な指標をもって的確に診断することのできる、新しい方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、レーザー光の照射によって植物生葉から放出されるレーザー誘起蛍光を観測することによる植物生育の診断方法であって、観測された、685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、530nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 530 との比(F 530 /F685)が最大値よりも1.5以上減少したことをもって、病変あるいは枯死の状態、もしくはこれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴とする植物生育の診断方法を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、第2には、レーザー光の照射によって植物生葉から放出されるレーザー誘起蛍光を観測することによる植物生育の診断方法であって、観測された685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、530nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 530 との比(F 530 /F685)のレベルおよびその増加速度の少くともいずれかによって、植物ごとの、病変あるいは枯死の状態、もしくはそれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴とする植物生育の診断方法を提供する。
【0010】
そして、この出願の発明は、第3には、上記いずれかの方法において、同時に、観測された685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、740nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 740 との比(F 740 /F685)が、1.0以下の場合をもって、病変あるいは枯死の状態、もしくはこれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴とする植物生育の診断方法を提供し、第4には、観測された685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、740nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 740 との比(F 740 /F685)と比例関係にあるクロロフィル濃度との検量線に基づいて、観測された前記の蛍光強度比(F740/F685)から植物含有のクロロフィル量を推定することを特徴とする植物生育の診断方法を提供する。
第5には、クロロフィル量が、観測による最大値の1/5以下と推定されたことをもって、病変、老化、あるいは枯死の状態、もしくはこれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴とする植物生育の診断方法を提供する。
【0011】
さらに、以上の方法について、この出願の発明は、第6には、蛍光強度F685は、680〜690nmの範囲の波長の強度であることを特徴とする植物生育の診断方法。
【0012】
第7には、蛍光強度F530は、520〜540nmの範囲の波長の強度であることを特徴とする植物生育の診断方法を提供する。
【0013】
第8には、この出願の発明は、パルスレーザー光を照射して、ゲート機能付CCDによって蛍光を遠隔受信検出し、遠隔観測を可能とすることを特徴とする前記いずれかの植物生育の診断方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0015】
まず、この出願の発明の前提となるレーザー誘起蛍光(LIF:Laser-Induced Fluorescence)の観測について説明すると、レーザー光を植物の生葉に対して照射すると、蛍光が放出される。このレーザー誘起による蛍光(LIF)をスペクトル分析すると、このスペクトルは、400nm〜650nmの短波長成分(Blue-green Fluorescence)と、650nm以上の長波長成分(Red Fluorescence)とにより構成されており、短波長成分は、450〜480nmと、520〜540nmの付近の波長に強度ピークを有し、長波長成分は、680〜690nmと、735745nmの付近の波長に強度ピークを有していることが確認される。
【0016】
そして、これまでの検討によると、蛍光の長波長成分の起源は、植物のクロロフィルによるものであることがわかっている。つまり、植物の生育や枯死に係わる光合成活動等に関する生理情報を含むものである。
【0017】
一方、短波長成分については、その起源は確定されていないが、クロロフィルとは別の、植物の伸長や枯死などの成長過程に関する情報を含むと考えられる。
【0018】
各種の植物生葉についてのレーザー誘起蛍光(LIF)のスペクトル分析によると、一般的に、短波長成分は、初夏と、秋〜冬にかけて強度が大きく、長波長成分は、夏から初秋で大きな強度を示すことが確認されている。このような一般的傾向を代表例として示したものが、図1のとおりのケヤキのLIFスペクトルの月変化である。この蛍光スペクトルは、Nd:YAGレーザーからのレーザー光を第3高調波に変換し、波長355nmパルスレーザーとして照射した場合のものである。この図1には、前記の傾向がよく示されている。
【0019】
さらに詳細に検討すると、ケヤキの8月と12月のLIFスペクトル(ピーク波長685nmで規格化したもの)を示した図2から明らかなように、夏と冬(落葉時)では顕著な差異を示し、685nm波長のピークを基準とすると、短波長側ピークは、冬に大きく増大し、逆に、740nm近傍の長波長側のピークは、夏に増大し、冬には著しい減少を示すことがわかる。
【0020】
そこで、長波長側の強度ピークに注目し、ポプラを対象とした観測でGreen Leafからの傾向とYellow Leafからの蛍光のスペクトルを見ると、図3のように、740nm近傍の強度ピークに大きな変動が認められる。
【0021】
長波長側強度ピークは、植物の生育や枯死に係わる光合成活動に関する生体情報を反映していること、特に、図3に例示したGreen LeafとYellow Leafとの顕著な差異からも、まず、長波長側の蛍光強度ピークに着目することにより、植物の健康状態の判別が可能となるものと考えられる。
【0022】
この出願の発明は、この判別のための方法を具体化したものである。すなわち、測された685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、740nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F740との強度比(F740/F685)が1.0以下の場合には、クロロフィルの光合成活動は実質的に停止ないしは減衰過程にあり、病変、老化、あるいは枯死の状態にあるか、これらの状態への移行過程にあると判別する。
【0023】
このような強度比(F740/F685)1.0以下という指標は、目視等による経験的、主観的判断に先行して客観性のあるものとして確認されている。
【0024】
なお、ここで、「老化」との規定については、通常の季節的な落葉も包含している。
【0025】
強度比(F740/F685)が1.0を超えている場合には、一般的に各種植物においては健全な生育状態にあるものと判別されるが、経時的に強度比の減少が観測される場合には、次の段階での老化や枯死等が考慮されてよいことは言うまでもない。
【0026】
そして、記のとおりの強度比(F740/F685)と、対象植物のクロロフィル濃度との関係を示す検量線を作成し、この検量線に基づいて、観測された強度比(F740/F685)からクロロフィル量を推定することにより植物生育を判別する。
【0027】
クロロフィル含有量には、植物の種類によって差異があるが、LIFの強度比(F740/F685)との間には比例的な関係がある。このため、この関係についての検量線を作成しておくことによって、観測された強度比からクロロフィル量が推定できることになる。この推定値からの植物の生育診断は、たとえば、次の方法として実現される。
【0028】
(1)検量線との対応から推定されるクロロフィル量の最高値に対しての割合から判断する。
【0029】
(2)同様に推定されるクロロフィル量の増減の傾向から判断する。
【0030】
このような判断は、たとえば通常の季節、あるいは年周期での生育パターンからの経時的ずれとしても考慮されることになる。野菜や園芸植物の場合には、このような経時的パターンを考慮しての、病変や、老化、あるいは枯死の判別が有効となる。
【0031】
この出願の発明は、上記(1)の方法として、クロロフィル量が、検量線における観測による最大値の1/5以下と推定されたことをもって、病変、老化、あるいは枯死の状態、もしくはそれらの状態への移行過程にあると判別することを特徴としている。
【0032】
以上の方法は、レーザー誘起蛍光(LIF)の長波長側のピーク強度に着目した方法であるが、この出願の発明においては、前記した短波長側のピーク強度も有意な生体情報として活用される。すなわち、まず、この出願の第4の発明は、観測された685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、530nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F530との強度比(F530/F685)が、最大値よりも1.5以上減少した段階で、植物は、病変、あるいは枯死の状態にあるか、もしくはこれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴としている。
【0033】
通常の季節やその他の生育周期における変化では、発明者による詳細な検討の結果によれば、一般的には、前記の強度比(F530/F685)が最大値よりも1.5以上も減少するようなケースは見出せず、1.5以上の減少は、植物の生育にとっての大きな異変であって、病変、あるいは、水分や栄養、温度等の環境要因や、病害虫、あるいは特異的な遺伝性の変化であると推定される。
【0034】
また、この出願の発明によれば、前記の強度比(F530/F685)には、植物の種類による個性が認められることから、このことを踏まえて、その強度比のレベル(大きさ)およびその増加速度の少くともいずれかによって、植物ごとの、病変、あるいは枯死の状態、もしくはそれら状態への移行過程にあることを判別することを特徴としている。
【0035】
実際、たとえば、実施例にも例示したように、サザンカの場合には、強度比が6を超えると病変等の異変が生じていることが、しかもこの強度比が急増している場合には、確実に病変等から枯死に急速に移行することが確認される。
【0036】
以上のようなこの出願の発明においては、強度比を特定するための波長については、前記のとおり、685nm,、740nm,、および530nmと限定して考慮してもよいし、各々、±(5〜10)nmの範囲を観測上の機器の特徴に応じて許容されるものとしてもよい。たとえば、685nmの波長については、680〜690nm、740nmの波長については、735〜745nm、530nmの波長については、520〜540nmの範囲にあるいずれかの波長として考慮することができる。
【0037】
観測のための機器や装置については、これまでに知られている各種のもの等により構成することができる。
【0038】
たとえば、基本的な構成としては、レーザー光の照射のための光源装置と、レーザー誘起蛍光を受光する受光装置と、受光した蛍光をスペクトル解析し、前記の強度比(F740/F685)(F530/F685)を算出し、所要の情報として示すことのできる演算装置と表示装置が考慮される。
【0039】
たとえば、図4は、このような装置による構成を例示したものである。
【0040】
この例においては、ネオジウム・ヤグレーザーからのレーザー光を非線形結晶を用いて第3高調波に変換し、波長355nmのパルスレーザー光を得て励起光源とする。355nmの波長を選ぶのは、いわゆるBlue-green Fluorescenceと呼ばれる短波長蛍光スペクトルを含む、全可視域でのLIFスペクトルの取得を目指すためである。また時間分解蛍光スペクトル計測およびレーザー遠隔計測への発展性をも考慮に入れ、パルスモードのレーザー装置を使用する。パルス時間幅はたとえば10nsとし、レーザーエネルギーは0.2mJで、植物生体に損傷を与えない大きさであることとしている。レーザー光は適当な全反射ミラーにより測定試料まで導かれて照射されるが、その際に非線形結晶から漏れる波長の異なる少量の不要なレーザー光は光路中に配置された光学フィルターにより除去される。試料からの蛍光は光ファイバーにより集められ分光器へと送られる。光ファイバーの前面には照射レーザー光除去用フィルターが取り付けられる。光ファイバーの入射端と植物生葉は、たとえば20mm離れるものとし、直径約9mmの領域からの蛍光が集められる。これに対して生葉上でのレーザー光の直径は約10mmであり、分光後のLIFスペクトルは、たとえば1024個の1次元配列MOS型CCD検出器により電気信号に変換される。CCDの露光時間はたとえば50msに設定される。微弱なLIFスペクトルを確実に検出する為の工夫として、イメージインテンシファイアー(II)により光を増幅して高感度に検出する。システム全体の制御や簡単な信号処理(背景光処理、信号積算)はパーソナルコンピュータで行う。
【0041】
また、この出願の発明においては、遠隔観測も可能としている。たとえば、第8の発明のように、パルスレーザー光を照射して、ゲート機能付CCDによって蛍光を遠隔受信検出して、遠隔観測を可能とすることである。
【0042】
この方法によって、ロロフィル量の推定で植物生育の診断が可能となる。
【0043】
すなわち、レーザー光を大気中に伝搬させて目標とする植物や樹木に照射し、植物体から発せられる蛍光スペクトルを受信して得られる2波長(685nm付近と740nm付近)蛍光画像の比より、遠隔的にクロロフィル濃度を推定するものである。
【0044】
このような方法に近いものとして光透過量を計測してクロロフィル濃度を推定する方法がある。しかしながら、これは植物葉を挟む接触法であり、また、ポイントサンプリングなため測定可能領域が限定される。この発明で提案している非接触、広範囲かつ遠隔画像計測法とは全く異なるものである。
【0045】
装置構成を例示したものが図5である。この図5に例示したように、レーザー光を大気中で伝搬させ離れた場所に生育する植物に照射する。植物からの蛍光はCCDカメラで画像として遠隔検出される。カメラ前面には上記2波長に対応したフィルターが装着されている。2波長画像比の計算が行われ検量線と照合してクロロフィル濃度が求められる。
【0046】
たとえば、励起光源にNd:YAGレーザーの第二高調波(532nm,10mJ,10ns,10Hz)を用いる。レーザーは測定領域を広範囲に確保するために150mrad.に拡げられる。このときレーザービームの直径は距離100mで15mとなる。また、レーザーによって照射励起された植物生葉からの蛍光は、直径50mmのカメラレンズを介してイメージインテンシファイア(II)付きのCCDカメラで検出される。蛍光画像やレーザー照射位置は、TVモニターによって確認しながら測定を行う。また、カメラレンズ前面にクロロフィル蛍光の685nm、740nmに対応した干渉フィルタ(中心波長685nm,740nm:半値幅20nm)をそれぞれ入れることで、蛍光についての波長情報を得ることができる。さらに、このシステムではCCDカメラのDelay 時間を200ns〜4200ns(30m〜630m)、Gate幅を10ns〜420ns(1.5m〜63m)で連続的に変化させることを可能とし、測定距離や距離分解能を変えながら蛍光画像を測定することも可能とする。
【0047】
もちろん、以上のような装置構成は例示であって、これらのものに限定されることはない。
【0048】
そこで、以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。
【0049】
【実施例】
<実施例1>
図4の装置を用いて、サザンカの生育診断についてのモデル実験を行った。すなわち、サザンカに与える水分量を変化させて、サザンカ葉のLIFスペクトルを検出した。すなわち、測定試料であるサザンカは与える水分量を変化させて(ストレスを与えて)生育された鉢植えのものを用いた。樹高は約70cmである。水分条件は、それぞれ1回当たり100mlの水分を月2回(生育ストレス大)、週2回(中)、1日1回(小)と変化させた3種類である。
【0050】
図6は、水分ストレスを与えはじめてから59日後の代表的なLIFスペクトルの変化例を示したものである。スペクトルはクロロフィルの蛍光スペクトルのピーク波長の1つである685nmの強度で規格化されている。このときのサザンカの状態は、水分ストレスの大きなものは完全に枯死、水分ストレスが中位のものは部分的に赤茶けた葉が点在、水分ストレスが小さなものは全ての葉が緑葉であった。緑葉のLIFスクトル(波長685nm)を基準にして考えると、蛍光強度(F685)と、蛍光強度(F740)との、クロロフイルに由来し、光合成生理活動を反映している波長での強度比(F740/F685)は、水分ストレスが大きく、枯死状態にあるものは、明らかに1.0以下のレベルにある。一方、赤茶けた葉が点在している水分ストレス中程度の場合には、この強度比は、緑葉の場合と同様に約1.5のレベルにある。
【0051】
このことから、植物の生育においては、強度比(F740/F685)が、経時的に1.0に向って減少し、1.0を超えてさらに減少しようとしている場合には、明らかに生育に異変が起きており、生育条件を変更しない限り枯死状態になることが理解される。
【0052】
強度比(F740/F685)の1.0以下の減少は、ケヤキやポプラ等の落葉樹においては、通常の季節周期での落葉した冬期においても観測されるとともに、これら樹木をはじめ、各種の植物において、通常の季節周期以外での、病変による枯死(たとえば自動車排ガスによるもの、あるいは病害虫によるもの等として)でも明瞭に観測された。
【0053】
一方、図6からは、枯死する以前に530nm付近の相対強度が増加し、その後完全に枯死すると逆に減少している。
【0054】
図7は、水分ストレスを与えてからの経過日数とLIFスペクトルのピークの相対強度(530nm/685nm)の関係を示している。○、△、×はそれぞれ目視判断の結果を示したもので、順番に全てが緑葉、一部が赤茶けた葉が点在、完全に枯死を表している。水分ストレスの大きなものほど早期に枯死し始めているが、枯死に伴いLIFスペクトルの相対強度にも急激な増加がみられる。水分ストレスの少ない試料に注目するとストレス経過に伴いLIFスペクトルの相対強度が8付近まで徐々に増加し、その約40日後に目視で変化が確認された。
【0055】
図7のサザンカの場合だけでなく、各種植物を対象として、相対強度比(F530/F685)に注目すると、その最大値よりも1.5以上減少した場合には、観測時の目視による外観性にかかわらずに、病変あるいは枯死の状態、あるいはその状態への移行過程であることが、強度比を観測した後の目視変化によって確認された。
【0056】
そして、サザンカの場合には、図7にも示されているように、いずれの試料においても、蛍光強度比(F530/F685)が6を過ぎたことから病変が発生し、7を超えると枯死に移行し、枯死後は3程度の低い値になる。このことから、経時的にスペクトル変化を観測することで、その増加や減少の傾向、そして植物によって特有の強度比レベルが、植物の病変や枯死を示すことがわかる。
<実施例2>
図5に例示した遠隔観測システムを用いて、60m先に自生するイチョウ樹木(高さ5m、幅3m)に、パルスNd:YAGレーザーの第2高調波(532nm,10mJ,10s,10Hz)を、凹レンズを広げて照射した。蛍光は、ゲート機能とイメージインテンシファイアー付きCCDカメラを用いて画像として検出した。
【0057】
一方、クロロフィル濃度を液体クロマトグラフィーにより求め、蛍光強度比(F 740 /F685)との相関性を評価して、図8のとおりの検量線を作成し、この検量線と観測された強度比とを対応させて、クロロフィル濃度の分布画像を得た。
【0058】
これによって遠隔的にクロロフィル濃度の推定が行われた。
【0059】
そして、このようなクロロフィル濃度の推定において、各種の対象植物について検討したところ、検量線クロロフィル濃度の最大値(これは植物の種類によって異なる)の1/5以下のレベルであると観測により推定される場合には、いずれの場合も、植物は病変あるいは枯死の状態、もしくはこの状態への移行過程であることが確認された。
【0060】
実際、図8のイチョウの例においては、クロロフィル濃度の最大値である2.7μmol/gの1/5以下、すなわち、0.54μmol/g以下と推定されるいずれの場合も、病変もしくは枯死、あるいは枯死への移行途中にあった。
【0061】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、レーザー誘起蛍光を利用する場合の長所を生かし、化学薬品を一切使用することなしに、かつ、非破壊で、生きたままの植物の生育状況を、短時間で、しかも客観的な指標をもって的確に診断することができる。
【0062】
そして、この出願の発明は、農林業、造園業、バイオテクノロジー等、植物が絡む産業はもちろん、都市開発や屋内空間デザイン等における植物アメニティ機能維持へも利用できる。宇宙ステーションや他惑星における人類生存環境確保に関わる植物機能維持(食料生産、酸素発生・二酸化炭素消失等)のための基礎技術として、発展的で大きな効果も期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 レーザー誘起蛍光(LIF)スペクトルの月別の変化を例示した図である。
【図2】 LIFスペクトルの夏と冬とを対比して例示した図である。
【図3】 LIFスペクトルの長波長側ピークについて、Green LeafとYellow Leafの場合とを対比して例示した図である。
【図4】 観測装置システムを例示した図である。
【図5】 遠隔観測装置システムを例示した図である。
【図6】 実施例1におけるLIFスペクトルを例示した図である。
【図7】 図6に関し、強度比の経時変化を例示した図である。
【図8】 強度比とクロロフィル濃度の検量線を例示した図である。

Claims (8)

  1. レーザー光の照射によって植物生葉から放出されるレーザー誘起蛍光を観測することによる植物生育の診断方法であって、観測された685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、530nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 530 との比(F 530 /F685)が、最大値よりも1.5上減少したことをもって、病変あるいは枯死の状態、もしくはこれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴とする植物生育の診断方法。
  2. レーザー光の照射によって植物生葉から放出されるレーザー誘起蛍光を観測することによる植物生育の診断方法であって、観測された685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、530nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 530 との比(F 530 /F685)のレベルおよびその増加速度の少くともいずれかによって、植物ごとの、病変あるいは枯死の状態、もしくはそれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴とする植物生育の診断方法。
  3. 請求項1または2の方法において、観測された、685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 685 と、740nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 740 との比(F 740 /F 685 )が1.0以下の場合をもって、病変、老化、あるいは枯死の状態、もしくはこれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴とする植物生育の診断方法。
  4. 請求項1または2の方法において、観測された、685nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F685と、740nmもしくはその近傍の波長の蛍光強度:F 740 との比(F 740 /F685と比例関係にあるクロロフィル濃度との検量線に基づいて、観測された前記の蛍光強度比(F 740 /F 685 )から植物含有のクロロフィル量を推定することを特徴とする植物生育の診断方法。
  5. クロロフィル量が、観測による最大値の1/5以下と推定されたことをもって、病変、老化、あるいは枯死の状態、もしくはこれらいずれかの状態への移行過程にあると判別することを特徴とする請求項2の植物生育の診断方法。
  6. 蛍光強度F685は、680〜690nmの範囲の波長の強度であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの植物生育の診断方法。
  7. 蛍光強度F530は、520〜540nmの範囲の波長の強度であることを特徴とする請求項ないし6のいずれかの植物生育の診断方法。
  8. パルスレーザー光を照射して、ゲート機能付CCDによって蛍光を遠隔受信検出し、遠隔観測を可能とすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの植物生育の診断方法。
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