JP3807780B2 - 圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法及びそれを適用した線形駆動回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、供給された電気的エネルギーを変位の機械的エネルギーに変換する圧電セラミックアクチュエータに関し、詳しくはその変位時に生じるヒステリシスを低減するための圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法及びそれを適用した線形駆動回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばX−Yテーブル等の精密な位置決め装置にはアクチュエータが使用されている。通常アクチュエータとしては、ボイスコイルモータやパルスモータ等を備えた電磁式アクチュエータが汎用的に使用されている。
【0003】
一方、近年では位置決め精度,応答速度,消費電流等の諸性能に関する改善の要求に応えるべく、電磁式アクチュエータよりも特性的に優れた圧電セラミックアクチュエータが採用されつつある。
【0004】
この圧電セラミックアクチュエータは、圧電性セラミックスの電界誘起歪みを利用したデバイスで、一般に電極とセラミックスとが積層された構造を有する。又、圧電セラミックスは圧電体のセラミック微分末を成形,焼結した後、分極処理することによって得られる多結晶体であるので、電圧の印加によって結晶軸の回転(分域回転とよばれる)が生じる。このため、圧電セラミックスにおいては大きな歪みが発生し、結晶軸の回転の影響で変位−電圧特性が非線形となり、大きなヒステリシスを示す。
【0005】
しかしながら、圧電セラミックアクチュエータはその微小変位特性により、特に高精度に位置決めを行う用途に関しては非常に適している。
【0006】
一般に圧電セラミックアクチュエータの場合、電圧で駆動するとヒステリシスの影響で精密な変位制御が困難である。そこで、位置決め装置に使用する際には位置検出センサを用いて現在位置を検出し、目標位置との間の偏差量を検出することによって、目標位置まで圧電セラミックアクチュエータを駆動している。この偏差量分の駆動には、フィードバック制御回路を使用する必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した圧電セラミックアクチュエータの場合、位置決め装置に適用すると偏差量分の駆動を行わせるために専用のフィードバック制御回路を要するため、圧電セラミックアクチュエータの駆動装置全体がコスト高になってしまうという問題がある。
【0008】
一方、ヒステリシスの無い圧電セラミックアクチュエータの駆動方法として、電荷量駆動方法を採用することが提案されている。この電荷量駆動方法の場合、パルスや交流による駆動に対しては有効であるが、直流駆動では安定した制御が得られないという問題がある。
【0009】
又、圧電材料としてLiNbO3 圧電単結晶を用いた場合には、分域回転を生じることなく、ヒステリシスの無い圧電アクチュエータを得ることができるが、この場合には圧電セラミックアクチュエータに較べてLiNbO3 圧電単結晶の圧電定数が一桁小さく、それ故、圧電アクチュエータとしての変位量が過小になってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、高価な手段を要すること無く直流線形駆動が可能であると共に、変位量−電圧特性のヒステリシスを低減し得る圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法及びそれを適用した線形駆動回路を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、圧電セラミックアクチュエータに直流入力電圧を印加して発生させた機械的エネルギーによって該圧電セラミックアクチュエータを変位させるための線形駆動方法であって、直流入力電圧とは別に圧電セラミックアクチュエータの変位により発生する非線形発生電圧を検出して検出信号を得る非線形発生電圧検出段階と、検出信号を比例増幅して増幅検出信号を得る増幅段階と、増幅検出信号を入力電圧に加算して加算信号を得る加算段階と、加算信号を所定の利得にしてゲイン電圧と成して圧電セラミックアクチュエータに印加する電圧印加段階とを有する圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法が得られる。
【0012】
この圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法において、非線形発生電圧検出段階では非線形発生電圧の検出に際してのバランス調整のためにゲイン電圧に基づいたゲイン調整を行うことは好ましい。
【0013】
一方、本発明によれば、圧電セラミックアクチュエータに直流入力電圧を印加して機械的エネルギーを発生させ、該機械的エネルギーによって該圧電セラミックアクチュエータを変位させる駆動回路において、圧電セラミックアクチュエータの変位により発生する非線形発生電圧を直流入力電圧とは別に検出して検出信号を出力する非線形発生電圧検出回路と、検出信号を比例増幅して増幅検出信号を出力する比例ゲイン回路と、増幅検出信号を直流入力電圧に加算して加算信号を出力する加算器と、加算信号を所定の利得にして得たゲイン電圧を圧電セラミックアクチュエータに印加する電圧印加回路とを有する圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路が得られる。
【0014】
又、本発明によれば、上記圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路において、非線形発生電圧の検出に際してのバランス調整用であって、ゲイン電圧に基づいたゲイン調整を行うゲイン調整回路を有する圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路が得られる。
【0015】
更に、本発明によれば、上記何れかの圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路において、非線形発生電圧検出回路は、圧電セラミックアクチュエータと接続されると共に、コンデンサを必備として抵抗器及び該コンデンサのうちの少なくとも一方を複数接続して成るブリッジ回路である圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路が得られる。
【0016】
加えて、本発明によれば、上記圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路において、ブリッジ回路は、コンデンサ及び抵抗器のうちの少なくとも一方を2個直列接続したものを該コンデンサを必備として2列並列接続して成る圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路が得られる。
【0017】
【作用】
一般に、圧電セラミックアクチュエータは直流入力電圧に対して非線形変位量を示し、これに伴って非線形電圧を発生する。そこで、本発明の線形駆動方法では、直流入力電圧とは別に非線形発生電圧を検出し、その検出信号を比例増幅したものを直流入力電圧に加算することにより得られる加算信号を所定の利得にしてゲイン電圧と成して圧電セラミックアクチュエータに印加している。これにより、直流入力電圧に対して電圧セラミックアクチュエータの変位量を線形又は擬線形にすることを可能にしている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げ、本発明の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法及びそれを適用した線形駆動回路について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
最初に、本発明の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法の概要を簡単に説明する。この線形駆動方法は、圧電セラミックアクチュエータに直流入力電圧を印加して発生させた機械的エネルギーによって圧電セラミックアクチュエータを変位させる際、直流入力電圧とは別に圧電セラミックアクチュエータの変位により発生する非線形発生電圧を検出して検出信号を得る非線形発生電圧検出段階と、検出信号を比例増幅して増幅検出信号を得る増幅段階と、増幅検出信号を入力電圧に加算して加算信号を得る加算段階と、加算信号を所定の利得にしてゲイン電圧と成して圧電セラミックアクチュエータに印加する電圧印加段階とを実行するものである。但し、非線形発生電圧検出段階では非線形発生電圧の検出に際してのバランス調整のためにゲイン電圧に基づいたゲイン調整を行うことが望ましい。
【0020】
こうした各段階を経ることより、直流入力電圧に対して電圧セラミックアクチュエータの変位量を線形又は擬線形にすることが可能になる。
【0021】
一方、このような線形駆動方法を適用した線形駆動回路は、圧電セラミックアクチュエータの変位により発生する非線形発生電圧を直流入力電圧とは別に検出して検出信号を出力する非線形発生電圧検出回路と、検出信号を比例増幅して増幅検出信号を出力する比例ゲイン回路と、増幅検出信号を直流入力電圧に加算して加算信号を出力する加算器と、加算信号を所定の利得にして得たゲイン電圧を圧電セラミックアクチュエータに印加する電圧印加回路と、非線形発生電圧の検出に際してのバランス調整用であって、ゲイン電圧に基づいたゲイン調整を行うゲイン調整回路とを有する構成となる。
【0022】
このうち、非線形発生電圧検出回路は、圧電セラミックアクチュエータと接続されると共に、コンデンサを必備として抵抗器及びコンデンサのうちの少なくとも一方を複数接続したブリッジ回路として構成することが好ましい。
【0023】
具体的に云えば、ブリッジ回路はコンデンサ及び抵抗器のうちの少なくとも一方を2個直列接続したものをコンデンサを必備として2列並列接続することにより、四端子回路として幾つか構成することができる。
【0024】
図1は、ブリッジ回路の一例を示した回路図である。このブリッジ回路は、抵抗器Rを要部に用いており、具体的には直列接続されたコンデンサC2 及び抵抗器R2 と直列接続された圧電素子コンデンサ(圧電セラミックアクチュエータの静電容量)CP 及び抵抗器R1 とを並列接続して成っている。
【0025】
このブリッジ回路において、中点の電圧差をVS ,圧電セラミックアクチュエータの変形による発生電圧をVP とすると、R1 CP =R2 C2 を満足するとき、発生電圧VP をVP =VS /R1 CP なる関係(但し、VS =V1 −V2 )で求めることができる。
【0026】
図2は、ブリッジ回路の他例を示した回路図である。このブリッジ回路は、コンデンサCのみを用いており、具体的には直列接続されたコンデンサC2 及びC3 と直列接続された圧電素子コンデンサCP 及びC1 とを並列接続して成っている。
【0027】
このブリッジ回路では、C1 /CP =C3 /C2 を満足するとき、発生電圧VP をVP =VS (C1 +CP )/CP なる関係(但し、VS =V1 −V2 )で求めることができる。
【0028】
図3は、ブリッジ回路の別例を示した回路図である。このブリッジ回路は、抵抗器R及びコンデンサCを用いており、具体的には直列接続された抵抗器R2 及びR1 と直列接続された圧電素子コンデンサCP 及びC1 とを並列接続して成っている。
【0029】
このブリッジ回路では、C1 /CP =R2 /R1 を満足するとき、図1の回路の場合と同様に発生電圧VP をVP =VS (C1 +CP )/CP なる関係(但し、VS =V1 −V2 )で求めることができる。
【0030】
図4は、図3に示すブリッジ回路を用いた場合の線形駆動回路の概略構成を示したものである。
【0031】
この線形駆動回路においては、図示されないブリッジ回路で検出した検出信号VNLを比例ゲイン回路1のゲインHで比例増幅した上、加算器2で直流入力電圧VINに加算する。又、抵抗器R1 ,R2 には直接的に直流入力電圧VINが印加されているため、電圧印加回路3のゲインG1 は圧電素子コンデンサCP 及びコンデンサC1 にしかかっていない。そこで、ブリッジ回路のバランスを取るためにゲイン調整回路4の調整用ゲイン1/G1 が減算器5(ブリッジ回路を含むものとする)に加入されている。
【0032】
即ち、この線形駆動回路で圧電素子コンデンサCP 及びコンデンサC1 の間の電圧をy,フィードバックされる増幅検出信号の制御電圧をuとすると、R1 /(R1 +R2 )=CP /(C1 +CP )なる関係を満足する。又、ゲインHが十分に大きいとき、u=−(VP +VNL)/G1 なる関係と、y=R1 G1 VIN/(R1 +R2 )なる関係とが成立する。これにより、電圧yは直流入力電圧VINに比例することになり、その結果、電圧yは圧電セラミックアクチュエータの変位量と比例関係にあるため、変位量の線形制御が可能となる。因みに、図5は線形駆動回路の具体例を示した回路図であるが、ここに示した回路の各構成や各構成部分の数値はこれに限定されない。
【0033】
図6は、ここでの線形駆動回路を実際に積層型バイモルフアクチュエータに使用し、ゲインH=100として周波数fをパラメータする条件下で圧電セラミックアクチュエータの直流入力電圧VIN[V]と変位量λ[mm]との測定結果を示したもので、同図(a)は周波数fが2.0[Hz]の場合に関するもの,同図(b)は周波数fが5.0[Hz]の場合に関するもの,同図(c)は周波数fが10.0[Hz]の場合に関するもの,同図(d)は周波数fが20.0[Hz]の場合に関するものである。更に、図7は、比較のために従来の駆動と同じくフィードバック制御を行わないオープンループ駆動(ゲインH=0)時の圧電セラミックアクチュエータの直流入力電圧VIN[V]と変位量λ[mm]との測定結果を示したもので、同図(a)は周波数fが2.0[Hz]の場合に関するもの,同図(b)は周波数fが5.0[Hz]の場合に関するもの,同図(c)は周波数fが10.0[Hz]の場合に関するもの,同図(d)は周波数fが20.0[Hz]の場合に関するものである。
【0034】
図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)を比較すると、各周波数fの何れにおいてもフィードバック制御を行えば、フィードバック制御を行わない場合よりも格段にヒステリシスを低減化し得ることが判る。
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法及びそれを適用した線形駆動回路によれば、圧電セラミックアクチュエータの変位量−電圧特性のヒステリシスを低減化し得ると共に、高価な手段を要すること無く直流線形駆動が具現されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法を適用した線形駆動回路に用いられるブリッジ回路の一例を示した回路図である。
【図2】本発明の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法を適用した線形駆動回路に用いられるブリッジ回路の他例を示した回路図である。
【図3】本発明の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法を適用した線形駆動回路に用いられるブリッジ回路の別例を示した回路図である。
【図4】図3に示すブリッジ回路を用いた場合の線形駆動回路の概略構成を示したものである。
【図5】図4で説明した線形駆動回路の具体的な回路構成を示したものである。
【図6】図4並びに図5で説明した線形駆動回路を積層型バイモルフアクチュエータに使用してゲインを100として周波数をパラメータする条件下で圧電セラミックアクチュエータの直流入力電圧と変位量との測定結果を示したもので、(a)は周波数2.0[Hz]の場合に関するもの,(b)は周波数5.0[Hz]の場合に関するもの,(c)は周波数10.0[Hz]の場合に関するもの,(d)は周波数20.0[Hz]の場合に関するものである。
【図7】図4並びに図5で説明した線形駆動回路を積層型バイモルフアクチュエータに使用してゲインを零として周波数をパラメータする条件下で圧電セラミックアクチュエータの直流入力電圧と変位量との測定結果を示したもので、(a)は周波数2.0[Hz]の場合に関するもの,(b)は周波数5.0[Hz]の場合に関するもの,(c)は周波数10.0[Hz]の場合に関するもの,(d)は周波数20.0[Hz]の場合に関するものである。
【符号の説明】
1 比例ゲイン回路
2 加算器
3 電圧印加回路
4 ゲイン調整回路
5 減算器
C1 ,C2 ,C3 コンデンサ
CP 圧電素子コンデンサ(圧電セラミックアクチュエータの静電容量)
R1 .R2 抵抗器
Claims (6)
- 圧電セラミックアクチュエータに直流入力電圧を印加して発生させた機械的エネルギーによって該圧電セラミックアクチュエータを変位させるための線形駆動方法であって、前記直流入力電圧とは別に前記圧電セラミックアクチュエータの変位により発生する非線形発生電圧を検出して検出信号を得る非線形発生電圧検出段階と、前記検出信号を比例増幅して増幅検出信号を得る増幅段階と、前記増幅検出信号を入力電圧に加算して加算信号を得る加算段階と、前記加算信号を所定の利得にしてゲイン電圧と成して前記圧電セラミックアクチュエータに印加する電圧印加段階とを有することを特徴とする圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法。
- 請求項1記載の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法において、前記非線形発生電圧検出段階では前記非線形発生電圧の検出に際してのバランス調整のために前記ゲイン電圧に基づいたゲイン調整を行うことを特徴とする圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動方法。
- 圧電セラミックアクチュエータに直流入力電圧を印加して機械的エネルギーを発生させ、該機械的エネルギーによって該圧電セラミックアクチュエータを変位させる駆動回路において、前記圧電セラミックアクチュエータの変位により発生する非線形発生電圧を前記直流入力電圧とは別に検出して検出信号を出力する非線形発生電圧検出回路と、前記検出信号を比例増幅して増幅検出信号を出力する比例ゲイン回路と、前記増幅検出信号を前記直流入力電圧に加算して加算信号を出力する加算器と、前記加算信号を所定の利得にして得たゲイン電圧を前記圧電セラミックアクチュエータに印加する電圧印加回路とを有することを特徴とする圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路。
- 請求項3記載の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路において、前記非線形発生電圧の検出に際してのバランス調整用であって、前記ゲイン電圧に基づいたゲイン調整を行うゲイン調整回路を有することを特徴とする圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路。
- 請求項3又は4記載の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路において、前記非線形発生電圧検出回路は、前記圧電セラミックアクチュエータと接続されると共に、コンデンサを必備として抵抗器及び該コンデンサのうちの少なくとも一方を複数接続して成るブリッジ回路であることを特徴とする圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路。
- 請求項5記載の圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路において、前記ブリッジ回路は、前記コンデンサ及び前記抵抗器のうちの少なくとも一方を2個直列接続したものを該コンデンサを必備として2列並列接続して成ることを特徴とする圧電セラミックアクチュエータ用線形駆動回路。
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