JP3806059B2 - ペプチド核酸およびオリゴペプチドからなる化合物、その製造法ならびにその用途 - Google Patents

ペプチド核酸およびオリゴペプチドからなる化合物、その製造法ならびにその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペプチド核酸(以下、PNAという)およびオリゴペプチドからなる生体膜透過性に優れた新規化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
PNAは、DNA類似構造を有する非天然の化合物である。その構造は、DNAやRNAとは異なり、ペプチド結合で骨格部分を形成し、側鎖がDNA構造を有する。PNAは、DNA、RNAまたは二本鎖DNAと強くハイブリダイズし、また、ヌクレアーゼなどの分解酵素の作用を受けないことから、従来のオリゴDNAより、強力なアンチセンス作用を有するものと期待されている(ベッツら、Science、第270巻、1838〜1841頁、1995年;コルテスら、Drug Discov. Today、第6巻、893〜904頁、2001年)。
【0003】
しかしながら、PNAは、溶解性および細胞膜透過性が低く、実際に細胞の中に導入し、アンチセンス・アンチジーンとして作用させることは困難であった(コルテスら、Drug Discov. Today、第6巻、893〜904頁、2001年)。実際にPNAを単独で投与する場合、非常に高濃度、たとえば10μM以上のPNAを使用することにより核内への導入は可能であったが、この濃度では細胞毒性が認められ、生体に使用できる濃度ではなかった。
【0004】
この問題点を改良するため、SV40のPNAに核移行シグナル(PKKKRKV(配列番号1:以下、NLSという))を付加し、さらにポリエチレンイミン(PEI)とインキュベーションすることにより正電荷を付加すると、細胞内とくに核への導入効率がよくなったとの報告がある(ブランデンら、Nature Biotechnology、第17巻、784〜787頁、1999年;カトロナら、Nature Biotechnology、第18巻、300〜303頁、2000年)。しかし、核移行シグナルを付加しただけでは、PNAを細胞膜透過させることは困難であるとの報告もある。またPEIは、その細胞毒性が指摘されており、そのうえ、この方法だと、細胞核内に導入するために2ステップ必要となり煩雑であるなどの欠点がある。さらに、この方法でPNAと核移行シグナルを連結するために使用された二価性架橋剤はPNAと核移行シグナルとを堅く固定してしまうため、PNAの標的配列へのハイブリダイズを核移行シグナル部位が妨害すると考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題点を解決し、複雑な合成経路なしに合成でき、細胞内、さらには核内に効率よく導入できるPNA含有化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、標的配列へのハイブリダイズが有効に達成できるPNA含有化合物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、PNAと特定の修飾核移行シグナルとを連結することにより、得られた化合物は核内に効率よく導入されることを見出した。さらに、特定の二価性架橋剤を用いることでPNAの標的配列へのハイブリダイズが有効に達成できることを見いだした。
【0007】
すなわち本発明は、PNA、および配列番号1に記載した核移行シグナルのN末端および/またはC末端にリジン残基および/またはアルギニン残基が両端合わせて2〜7個結合したペプチド配列からなるオリゴペプチドからなる化合物に関する。
【0008】
前記化合物において、PNAとオリゴペプチドとが、二価性架橋剤によって架橋されていることが好ましい。
【0009】
前記二価性架橋剤が、式:
【0010】
【化2】
Figure 0003806059
【0011】
(式中、n=3〜11)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0012】
前記化合物において、オリゴペプチドがRRPKKKRKVRR(配列番号2:以下、2R−NLS−2Rという)であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、(A)ペプチド核酸を合成し、脱保護したN末端に二価性架橋剤を連結させる工程、(B)末端にシステイン残基を導入したオリゴペプチドを合成する工程、および(C)(A)ペプチド核酸に連結した二価性架橋剤とオリゴペプチドのシステイン残基とを連結させる工程からなる前記化合物の製造方法に関する。
【0014】
本発明は、(A)オリゴペプチドを合成し、脱保護したN末端に二価性架橋剤を連結させる工程、(B)末端にシステイン残基を導入したペプチド核酸を合成する工程、および(C)(A)オリゴペプチドに連結した二価性架橋剤とペプチド核酸のシステイン残基とを連結させる工程からなる前記化合物の製造方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、前記化合物からなるDNA転写調節剤に関する。
【0016】
また本発明は、前記化合物からなる医薬化合物に関する。
【0017】
本発明は、前記化合物からなる抗癌剤に関する。
【0018】
また、本発明は、前記化合物をインビトロにて培養細胞に接触させることにより、該化合物を細胞の核内に導入する方法に関する。
【0019】
本発明は、前記化合物を培養細胞に導入し、該化合物中のペプチド核酸を標的配列にハイブリダイズさせ、該標的配列がコードするまたは該標的配列が転写調節する遺伝子の発現を抑制することからなる遺伝子の機能解析方法に関する。
【0020】
本発明は、プラスミドベクターDNAの配列とハイブリダイズする前記化合物を、該プラスミドベクターDNAと反応させたのち培養細胞に添加することからなる、外来遺伝子を細胞内に導入する方法に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のPNA、および配列番号1に記載した核移行シグナルのN末端および/またはC末端にリジン残基および/またはアルギニン残基が2〜7個結合したペプチド配列からなるオリゴペプチドからなる化合物(以下、ペプチドPNAという)を、以下詳細に説明する。
【0022】
本発明のペプチドPNAは、この構成により容易にPNAを核内へ導入することができる。
【0023】
本発明のペプチドPNAにおいてPNAとオリゴペプチドを連結させる方法としては、とくに限定されることなく、二化性架橋剤を用いる方法など、周知の方法を利用することができる。
【0024】
本発明に用いられる二価性架橋剤としては、PNAとオリゴペプチドとを連結できるものであればどのようなものを使用してもよく、それぞれ、PNAまたはオリゴペプチドの反応させようとする部位によって、それに応じた二価性架橋剤を選択することができる。また、得られるペプチドPNAに構造的自由度を付加し得るものが好ましい。
【0025】
たとえば、PNAまたはオリゴペプチドどちらかのアミノ基と、それ以外のPNAまたはオリゴペプチドに結合させたシステイン残基のスルフィド基とを連結する場合には、式:
【0026】
【化3】
Figure 0003806059
【0027】
(式中、n=3〜11)で表わされる構造を有するものが好ましい。nの数は4〜8がより好ましく、nの数が3より小さくなると得られるペプチドPNAの構造的自由度が減少する傾向があり、11より大きくなると自由度は増大するが、水溶液中での溶解度が減少する傾向がある。このような二価性架橋剤具体例としては、好ましくはN−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシニミド(GMCS)、EMCS、N−(8−マレイミドカプリルオキシ)スクシニミド(HMCS)、N−(11−マレイミドウンデカノイルオキシ)スクシニミド(KMUS)などがあげられ、EMCSが最も好ましい。
【0028】
このように二価性架橋剤として構造的自由度の高いスペーサーを有するものを使用すると、PNAとオリゴペプチドとの架橋が容易で、高収率で生成物を得られるのみならず、PNAが標的配列とハイブリダイズする際にも、オリゴヌクレオチド部分が該ハイブリダイズを妨害することなく、効率的に標的配列の発現を阻害することができる。
【0029】
本発明に用いるPNAは、合成可能なものであればどのようなものでも使用することができ、特定DNAまたはmRNAへのハイブリダイズの特異性およびDNAまたはmRNAへの親和性・結合性の点から塩基数6〜20が好ましく、7〜14がさらに好ましい。塩基数が6より少なくなると、目的のDNAまたはmRNAのみにハイブリダイズしなくなる傾向があり、20より多くなるとDNAまたはmRNAへの結合力が弱くなる傾向がある。
【0030】
本発明のオリゴペプチドは、配列番号1に記載した核移行シグナルNLSのN末端および/またはC末端にリジン残基および/またはアルギニン残基が両末端合わせて2〜7個結合したペプチド配列からなることが必要である。核移行シグナルに結合するリジン残基およびアルギニン残基の総数としては、2〜7個が好ましく、2〜4個が最も好ましい。核移行シグナルに結合するアルギニン残基およびリジン残基の総数は、2より少ないと細胞膜透過性が減少する傾向にあり、7以上になるとPNAの塩基GまたはCと水素結合し凝集することから、PNAのアンチセンス効果を阻害する傾向がある。
【0031】
このようなオリゴヌクレオチドとしては、具体的には、2R−NLS−2R(配列番号2)、RRRPKKKRKV(配列番号3:以下、3R−NLSという)またはPKKKRKVRRR(配列表4:以下、NLS−3Rという)があげられ、細胞膜透過性と、PNAとの相互作用の点から2R−NLS−2Rが最も好ましい。
【0032】
本発明のペプチドPNAは、PNAのN末端とオリゴペプチドのC末端を連結する場合、(A)PNAを合成し、脱保護したN末端に二価性架橋剤を連結させる工程、(B)末端にシステイン残基を導入したオリゴペプチドを合成する工程、および(C)(A)で得られたPNAに連結した二価性架橋剤と(B)で得られたオリゴペプチドのシステイン残基とを連結させる工程から製造することができる。また、オリゴペプチドのN末端とPNAのC末端を連結する場合は、(A)オリゴペプチドを合成し、脱保護したN末端に二価性架橋剤を連結させる工程、(B)末端にシステイン残基を導入したPNAを合成する工程、および(C)(A)で得られたオリゴペプチドに連結した二価性架橋剤と(B)で得られたPNA二結合したシステイン残基とを連結させる工程から製造することができる。
【0033】
たとえば、本発明のペプチドPNAは、固相合成して樹脂に結合した状態のN末端にアミノ基を有するPNAに対し、溶媒中に溶解した二価性架橋剤を約1.5当量添加し室温にて約3時間撹拌し、これを前記溶媒にて数回洗浄し、未反応の二価性架橋剤を除去し、溶媒中に溶解したSH基を有するペプチドを約1.5当量添加し、室温にて約5時間撹拌し、得られた生成物を溶媒で数回洗浄し、未反応のペプチドを除去し、常法により側鎖の脱保護を行ない、さらに樹脂から切り出し、得られた生成物をエーテルで沈殿させHPLCで精製することから製造できる。
【0034】
本発明のペプチドPNAは、核に導入されると、核内の標的配列とハイブリダイズすることにより、DNAの転写調節をしたり、mRNAの翻訳を阻害したり、リボザイムの活性を阻害したりすることができる。
【0035】
本発明における「DNAの転写調節」とは、DNAの転写の促進または抑制を意味し、DNAの転写領域にハイブリダイズして転写を抑制することのみならず、DNAの転写調節領域にハイブリダイズして転写調節因子の機能を阻害することにより転写を促進または抑制することをも意味する。
【0036】
したがって、本発明のペプチドPNAは、用いるPNAを適宜選択することによって、遺伝子変異に起因して起こる疾患、または遺伝子もしくはタンパク質が異常に高発現して起こる疾患など様々な疾患の治療剤となり得る。具体的には、癌、アルツハイマー病、心肥大、高血圧症、動脈硬化症などがあげられる。
【0037】
本発明のDNA転写阻害剤および抗癌剤の投与経路としては、患部への直接投与、経口投与、経静脈的投与、直腸投与などが考えられる。患者への負担、副作用の点から、患部への直接投与、経口投与がより好ましい。
【0038】
本発明のDNA転写阻害剤および抗癌剤の剤形は投与方法によって適宜設定することができる。具体的には、水溶液、乳剤、懸濁液などの液剤、軟膏剤、錠剤、カプセル剤などがあげられる。患部への直接投与の場合、液剤または軟膏剤が好ましく、経口投与の場合、錠剤またはカプセル剤が好ましい。
【0039】
投与量は、投与方法、適用する患者の年齢、体重、病状などによって適宜設定することができるが、ペプチドPNAに換算して1日に0.1〜200mg/kgが好ましい。投与量が0.1mg/kgより少ないとペプチドPNAとしての効果が半減する傾向がある。投与量の下限は0.1mg/kgであるが1mg/kgがより好ましい。投与量の上限は200mg/kgであるが50mg/kgがより好ましい。投与は単回または複数回のどちらで行なっても良い。
【0040】
本発明の医薬化合物の製剤化には、その剤形に合わせて通常当業者により使用される様々な添加物を使用することができる。たとえば、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤などがあげられる。
【0041】
また、本発明のペプチドPNAは、培養細胞に適用し所望のPNAを細胞核内に効率的に導入することもできる。
【0042】
さらに、培養細胞において、標的配列のアンチセンスPNAからなるペプチドPNAを導入し、標的配列にハイブリダイズさせ、その標的配列がコードするまたは転写調節する遺伝子の発現を促進または抑制することにより、その遺伝子の機能を解析することができる。
【0043】
本発明のペプチドPNAは、プラスミドベクターDNAの配列とハイブリダイズするPNAを用いることによって、該プラスミドベクターDNAとハイブリダイズさせたのち培養細胞に添加することにより、外来遺伝子を細胞内に導入することができる。
【0044】
培養細胞に適用する場合、本発明のペプチドPNAの添加量としては、細胞濃度5×104cells/mlの培養液に0.01〜500nmol/mlが好ましく、0.1〜100nmol/mlがより好ましい。添加量が0.01nmol/mlより少ないと、PNAの効果が半減する傾向があり、500nmol/mlより多いと細胞毒性を示す傾向がある。
【0045】
【実施例】
ここで、本発明を実施例にもとづいて、詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
以下の実施例中、固相合成用装置、PNAおよびオリゴペプチド合成用モノマーおよび樹脂はアップライド・バイオシステム社製を、EMCSは同人堂製を使用した。
【0047】
実施例1
転写因子の1つであるヒトp53遺伝子のアミノ酸6番〜10番に相当するアンチセンス鎖と同様の核酸配列(5′−GAC GCT AGG ATC TGA−3′(配列番号5))を有するPNAは、固相ペプチド合成法であるBoc法により、通常の方法で末端まで合成したのち、脱保護し、末端にフリーのアミノ基を露出させた。得られたPNA7.5μmolに二価性架橋剤EMCS(N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スクシニイミド)12μmolを添加し、3時間撹拌し、アミノ基とEMCSを連結した。さらに、ジクロロメタン/ジメチルホルムアミド(1:1)溶液1mlで洗浄し、未反応のEMCSを除去した。洗浄を2回繰り返したのち、C末端にシステイン残基を導入したオリゴペプチド2R−NLS−2R(配列番号2)(ペプチド研究所製)12μmolを添加し、10時間撹拌した。得られたペプチドPNAの側鎖を定法により脱保護し、樹脂より切り出した。これをエタノール沈澱により粗精製したのち、HPLCで精製した(収率25%)。すべての操作は、室温で、ジクロロメタン/ジメチルホルムアミド(1:1)溶液中で行なった。
【0048】
実施例2
転写因子の1つであるヒトp53遺伝子のアミノ酸6番〜10番に相当するアンチセンス鎖と同様の核酸配列(5′−GAC GCT AGG ATC TGA−3′)を有するPNAを、固相ペプチド合成法であるBoc法により合成した。C末端に架橋点としてのSH基を導入するために、システイン残基を1残基目に導入した。末端まで合成したのち、定法通りにN末端を脱保護し、樹脂から切り出した。
【0049】
オリゴペプチド2R−NLS−2R(配列番号2)も固相ペプチド合成法であるFmoc法により末端まで合成したのち、脱保護し、末端にフリーのアミド基を露出させた。得られたオリゴペプチド12μmolに二価性架橋剤EMCS12μmolを添加し、3時間撹拌し、アミド基とEMCSを連結した。さらに、ジクロロメタン/ジメチルホルムアミド(1:1)溶液1mlで洗浄し、未反応のEMCSを除去した。洗浄を2回繰り返したのち、システイン結合PNA7.5μmolを添加し、10時間撹拌した。得られたペプチドPNAを定法により側鎖を脱保護し、樹脂より切り出した。これをエタノール沈澱により粗精製したのち、HPLCで精製した(収率25%)。すべての操作は、室温で、ジクロロメタン/ジメチルホルムアミド(1:1)溶液中で行なった。
【0050】
実施例3
<NOS−1細胞の調製>
ヒト口腔癌由来の扁平上皮癌細胞でp53遺伝子に変異が認められるNOS−1細胞5×104を、ポリ−D−リシンでコーティングした直径10mmカバーガラス上にて、70%コンフルエントになるまで培養した。培養は、培地としてペニシリン(インビトロジェン株式会社製)およびストレプトマイシン(インビトロジェン株式会社製)を添加したGIT培地(日本製薬株式会社製)(ペニシリンの最終濃度100単位/ml、ストレプトマイシンの最終濃度100μg/ml)1mlを使用し、炭酸ガスインキュベーター(5%CO2、37℃)中で行なった。
【0051】
<ペプチドPNAへのFITCの接合>
N末端のアミノ基に架橋剤としてEMCSを用いてFITCを接合したオリゴペプチドを用いた以外は、実施例1と同様にしてペプチドPNAを合成し、樹脂から切り出しFITC接合ペプチドPNAを得た。
【0052】
<細胞内への導入>
得られたFITC接合ペプチドPNAを培地内に最終濃度が1μMとなるよう添加した。3時間後、培地を完全に除去し、細胞をPBS(pH7.4)で3回洗浄後、新鮮なペニシリン・ストレプトマイシンを添加したGIT培地を添加し、さらに4時間培養した。
【0053】
細胞を4%パラフィルムアルデヒドにて固定後、1μg/mlローダミンを接合したファロイジン(Phalloidin)0.5mlと1時間インキュベーションした。4回PBSで洗浄したのちスライドグラスにマウントし、共焦点レーザー顕微鏡(Zweiss社製)にて、FITCシグナル(緑)とローダミンシグナル(赤)を観察した。ファロイジンはF−アクチンに特異的に結合するため、細胞骨格を判別することを可能にする化合物である。
【0054】
図1に示すようにペプチドPNAが核内に導入、局在できることが確認できた。
【0055】
比較例1
オリゴペプチドとして、RRRRRRRRRRRPKKKRKVRK(配列番号6:以下、11R−NLS−R−Kという)を用いた以外は、実施例3と同様にしてFITC接合ペプチドPNAを製造し、細胞内への導入を観察した。
【0056】
11R−NLS−R−Kを用いたペプチドPNAは、細胞内に導入されているが(緑のシグナル)、核の中に移行せず、細胞質に留まっている(図2(b))。一方、実施例3の2R−NLS−2Rを用いたペプチドPNAは、核内に移行している(緑のシグナル)(図2(a))。
【0057】
【発明の効果】
本発明によるペプチドPNAは、PNAを効率よく核内に導入することを可能とする。本発明によれば、低濃度のPNAでも充分に核内に移行され効果を発揮することができるため、高濃度のPNAによる細胞毒性および生体に対する毒性などの副作用を受けることなく使用できる。
【0058】
【配列表フリーテキスト】
配列番号2:2R−NLS−2Rのアミノ酸配列
配列番号3:3R−NLSのアミノ酸配列
配列番号4:NLS−3Rのアミノ酸配列
配列番号6:11R−NLS−R−Kのアミノ酸配列
【0059】
【配列表】
Figure 0003806059
Figure 0003806059
Figure 0003806059

【図面の簡単な説明】
【図1】オリゴペプチドとして、2R−NLS−2R(配列番号2)を用いた場合の、細胞および核内へのペプチドPNAの導入を示す蛍光顕微鏡写真のデータである。(a)は、ローダミンによるF−アクチンを示し、(b)はFITCによるペプチドを示し、(c)は(a)および(b)を重ね合わせデータである。
【図2】オリゴペプチドとして、2R−NLS−2R(配列番号2)を用いたペプチドPNA(a)と、オリゴペプチドとして11R−NLS−R−K(配列番号6)を用いたペプチドPNA(b)の細胞内への導入を示す蛍光顕微鏡写真のデータである。
【符号の説明】
1 細胞骨格
2 核
3 細胞質

Claims (10)

  1. ペプチド核酸、および配列番号1に記載した核移行シグナルのN末端およびC末端のそれぞれにアルギニン残基が2ずつ結合したペプチド配列からなるオリゴペプチドからなる化合物。
  2. 前記ペプチド核酸とオリゴペプチドとが、二価性架橋剤によって架橋されている請求項1記載の化合物。
  3. 前記二価性架橋剤が、式:
    Figure 0003806059
    (式中、n=3〜11)で表わされる化合物である請求項2記載の化合物。
  4. (A)ペプチド核酸を合成し、脱保護したN末端に二価性架橋剤を連結させる工程、
    (B)CまたはN末端にシステイン残基を導入したオリゴペプチドを合成する工程、および
    (C)(A)ペプチド核酸に連結した二価性架橋剤と(B)オリゴペプチドのシステイン残基とを連結させる工程
    からなる請求項2記載の化合物の製造方法。
  5. (A)オリゴペプチドを合成し、脱保護したN末端に二価性架橋剤を連結させる工程、
    (B)CまたはN末端にシステイン残基を導入したペプチド核酸を合成する工程、および
    (C)(A)オリゴペプチドに連結した二価性架橋剤と(A)ペプチド核酸のシステイン残基とを連結させる工程
    からなる請求項記載の化合物の製造方法。
  6. 請求項1、2または3記載の化合物からなるDNA転写調節剤。
  7. 請求項1、2または3記載の化合物からなる医薬化合物。
  8. 請求項1、2または3記載の化合物からなる抗癌剤。
  9. 請求項1、2または3記載の化合物を、インビトロにて培養細胞に接触させることにより、該化合物を細胞の核内に導入する方法。
  10. 請求項1、2または3記載の化合物を培養細胞に導入し、該化合物中のペプチド核酸を標的配列にハイブリダイズさせ、該標的配列がコードするまたは該標的配列が転写調節する遺伝子の発現を抑制することからなる遺伝子の機能解析方法。
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