JP3805670B2 - マッチングオイルの除去方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信用光ファイバの製造に使用される光ファイバ用母材インゴット又はプリフォームの屈折率分布測定後、この表面に付着しているマッチングオイルの除去方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバの製造工程では、VAD法、OVD法、MCVD法などにより製造されたスート堆積体を、焼結し、透明ガラス化した後、さらにその表面を平滑に加工して母材インゴットとされる。この母材インゴットは、直胴部直径150〜210mmφと大きいため、このサイズのままでは線引き装置にセットして光ファイバに線引きすることが困難である。このため、加熱炉を備えた延伸装置により、直径が40〜100mmのプリフォームに一次延伸される。
【0003】
このようにして製造される光ファイバ用母材インゴット又はプリフォームは、プリフォームアナライザーで屈折率分布が測定され、この屈折率分布を基に、線引き後の光ファイバの光伝送特性が推定される。
この推定された特性と目標とする設計特性との間に差がある場合には、母材インゴット又はプリフォームの外径を削り取る等の加工処理がなされる。この加工後、表面の凹凸を除去したり、あるいは外径を設定値に精密に合わせるための仕上げ加工が施される。
【0004】
プリフォームアナライザーによる屈折率分布の測定は、装置の光学測定部に設置された透明なセル内に母材インゴット又はプリフォームをセットして行われるが、セルの内部は、これらの屈折率に近似した屈折率を有するマッチングオイルで満たされている。このため、屈折率分布測定後の母材インゴット又はプリフォームの表面には粘稠なマッチングオイルが付着しており、直ちに除去しないと、該測定に基づく加工処理や検査などの後工程の作業ができない。
【0005】
母材インゴット又はプリフォームの表面に付着している粘稠なマッチングオイルを除去するために、従来、溶剤が洗剤として使用されているが、揮発ガスが作業者の健康に悪影響を及ぼさないように、換気等作業環境に十分配慮しなければならず、さらに、引火しやすいため十分な防火対策を施さねばならない。また、フッ素系洗剤は、リサイクルが可能であるが、周囲の作業者及びオゾン層の破壊に代表される地球規模での影響を考慮する必要があり、装置及び周辺機器の構造が複雑となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光ファイバ用母材インゴットやプリフォームをプリフォームアナライザーで屈折率分布を測定した際に、表面に付着するマッチングオイルを、後工程への運搬及びその後の加工処理において支障をきたさないように、複雑な装置を必要とせず、環境にやさしい方法で処理することのできる、マッチングオイルの除去方法及びその装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のマッチングオイルの除去方法は、鉛直に保持されたワークを軸としてこれを取巻くように配設された2以上の蒸気噴出ノズルから蒸気を噴出させつつ、該蒸気噴出ノズル又はワークを軸方向に相対的に移動させることにより、ワークの表面に付着しているマッチングオイルを蒸気洗浄し除去することを特徴としている。
【0008】
前記2以上の蒸気噴出ノズルは、主ノズルとしてワークを軸とする同心円上に等間隔で配設されている。さらに、前記主ノズルから鉛直方向に離隔して、ワークを軸とする同心円上に等間隔で2以上の補助ノズルが、上方から見て、前記主ノズルとの間に交互に位置するように配設され、隣りあう主ノズル間に吹き寄せられたマッチングオイルを、補助ノズルによって蒸気洗浄し除去するように配設されている。
洗浄に際しては、ワークの一端から他端に向けての蒸気洗浄を複数回行い、その後、ワークが保有する余熱のみでワークに付着している水分を乾燥させることができる。
なお、本発明においてワークには、光ファイバ用母材インゴットやプリフォームが挙げられる。
【0009】
本発明のマッチングオイルの除去装置は、鉛直に保持されたワークに蒸気を噴射して、ワークの表面に付着しているマッチングオイルを蒸気洗浄し除去する装置であって、2以上の蒸気噴出ノズルがワークを軸とする同心円上に等間隔で配設された主ノズルを有し、該主ノズルから鉛直方向に離隔して、上方から見て、主ノズルとの間に交互に位置するように、ワークを軸とする同心円上に等間隔で2以上の補助ノズルが配設され、蒸気噴出ノズル又はワークを軸方向に相対的に移動させる移動機構を備えていることを特徴としている。
なお、主ノズルの蒸気噴流によって隣りあう主ノズル間に吹き寄せられたマッチングオイルを除去する前記補助ノズルは、主ノズルの上方に配設するのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のマッチングオイルの除去方法について、詳細に説明する。
図1は、マッチングオイル除去装置の一例を示す概略説明図である。
鉛直に保持されたワーク1の周囲、同心円上に等間隔で主ノズル2,3,4,5が配設されている。主ノズル2,3,4,5からワーク1に向けて、扇型の蒸気噴流6,7,8,9が噴出する。
【0011】
主ノズル2,3,4,5の上方には、上記同心円と同径の同心円上に等間隔で補助ノズル10,11,12,13が配設されており、各補助ノズルはワークに向けて、主ノズルと同様の蒸気噴流14,15,16,17を噴出する。なお、主ノズル2,3,4,5と補助ノズル10,11,12,13は、ワーク1の軸を中心として45°ずれて配設され、個々の主ノズルと補助ノズルは互いにそれぞれ中間の位置にある。
【0012】
主ノズルと補助ノズルは、このような位置関係で互いに固定され、ワーク1の表面に付着しているマッチングオイルの除去に際しては、ワーク1の軸方向に向けて蒸気を噴出しながら上から下に移動し、最低位置に至ると蒸気を止めて上昇し、再度蒸気を噴出させながら下降する。この作業をマッチングオイルが十分に除去されるまで繰り返す。
【0013】
ワーク1の表面に付着しているマッチングオイルの大部分は、主ノズル2,3,4,5の蒸気噴流6,7,8,9により洗い流されるが、その一部は隣りあう蒸気噴流6,7,8,9間に吹き寄せられ、吹き寄せられたマッチングオイルは、隣りあう蒸気噴流が互いに干渉するので、洗い流されずにその位置で留まる。各蒸気噴流6,7,8,9間に吹き寄せられたマッチングオイルは、補助ノズルの蒸気噴流がこれらのオイル帯の幅よりも広く噴出されるので、これらの蒸気噴流に包まれて洗い流される。なお、この蒸気に代えて、温湯を使用してもよく、本発明において蒸気とは、温湯を含むものとする。
このようにしてマッチングオイルは、蒸気噴流の勢いと粘度低下効果とによりワークの表面から効率よく洗い流される。
また、蒸気圧力、蒸気流量、ノズル移動速度及びノズルの往復回数は、運転条件として適宜設定される。
【0014】
ワークの表面に付着しているマッチングオイルは、主ノズル及び補助ノズルから吹き付けられた蒸気噴流が保有する熱により、その粘度が下げられ、洗い流される。この蒸気洗浄はワークの軸方向に沿って上から下へ数回行われる。洗浄終了後、ワークは蒸気から与えられた余熱で自然乾燥する。
本発明の除去方法は、現場に蒸気供給ラインが設けられている場合には、新たに蒸気発生装置を設ける必要がないため、特に有効な方法である。
【0015】
【実施例】
(実施例1)
プリフォームアナライザーによる屈折率分布の測定後、ワークの表面に付着したマッチングオイルの除去を行った。ワークは、直胴部の直径150〜210mmφ、直胴部の長さ2600mmの光ファイバ用母材インゴットであり、以下の条件で、蒸気洗浄を行ったところ、ワークの表面からは、マッチングオイルが十分に除去されていた。
【0016】
a.主ノズル個数;4個、補助ノズル個数;4個
b.各ノズルの設置方向;ワーク方向に、水平から15°下方に向けて設置
c.ワーク方向に相対するノズル間距離;500mm
d.主ノズルと補助ノズルとの鉛直方向への離隔距離;100mm
e.蒸気圧力;0.4 MPa
f.蒸気流量;(主ノズル)42kg/hr×4本=168kg/hr
(補助ノズル)42kg/hr×4本=168kg/hr
g.ノズル移動速度;2.7m/min
h.ノズル上下往復移動回数;10回
【0017】
【発明の効果】
上記構成としたことにより、蒸気で容易にマッチングオイルを除去することができ、除去装置の構造も、蒸気噴出ノズルをワークの周囲に配置するだけでよく、簡単な構造で小型化できる。また、蒸気の噴霧拡散範囲内であれば、ワークの直径の変動に対応できる。さらに、洗浄時にワークに与えられた蒸気の余熱で乾燥するので、乾燥装置が不要である。従って、マッチングオイル除去作業の自動化、無人化が容易である。
また、ワークに蒸気をかけるだけであるから、装置の排水、排気に十分な配慮を施しておけば、作業者や周囲の環境に悪影響を与えることはない。さらに、溶剤や炭化水素系、フッ素系などの洗剤を使用しないので環境にやさしい方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のマッチングオイル除去装置の一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・ワーク、
2,3,4,5・・・主ノズル、
6,7,8,9・・・蒸気噴流、
10,11,12,13・・・補助ノズル、
14,15,16,17・・・蒸気噴流。

Claims (6)

  1. 鉛直に保持された光ファイバ用母材インゴット又はプリフォーム(以下、ワークと称する)を軸としてこれを取巻くように配設された2以上の蒸気噴出ノズルから蒸気を噴出させつつ、該蒸気噴出ノズル又は前記ワークを軸方向に相対的に移動させることにより、ワークの表面に付着しているマッチングオイルを蒸気洗浄し除去することを特徴とするマッチングオイルの除去方法。
  2. 前記2以上の蒸気噴出ノズルが、主ノズルとしてワークを軸とする同心円上に等間隔で配設されている請求項1に記載のマッチングオイルの除去方法。
  3. 前記主ノズルから鉛直方向に離隔して、ワークを軸とする同心円上に等間隔で2以上の補助ノズルが、上方から見て、前記主ノズルとの間に交互に位置するように配設され、隣りあう主ノズル間に吹き寄せられたマッチングオイルを、補助ノズルによって蒸気洗浄し除去する請求項1又は2に記載のマッチングオイルの除去方法。
  4. ワークの一端から他端に向けての蒸気洗浄を複数回行い、その後、ワークが保有する余熱のみでワークに付着している水分を乾燥させる請求項1乃至3のいずれかに記載のマッチングオイルの除去方法。
  5. 鉛直に保持された光ファイバ用母材インゴット又はプリフォーム(以下、ワークと称する)に蒸気を噴射して、前記ワークの表面に付着しているマッチングオイルを蒸気洗浄し除去する装置であって、2以上の蒸気噴出ノズルがワークを軸とする同心円上に等間隔で配設された主ノズルを有し、該主ノズルから鉛直方向に離隔して、上方から見て、主ノズルとの間に交互に位置するように、ワークを軸とする同心円上に等間隔で2以上の補助ノズルが配設され、蒸気噴出ノズル又はワークを軸方向に相対的に移動させる移動機構を備えていることを特徴とするマッチングオイルの除去装置。
  6. 主ノズルの蒸気噴流によって隣りあう主ノズル間に吹き寄せられたマッチングオイルを除去する前記補助ノズルが、主ノズルの上方に配設されている請求項5に記載のマッチングオイルの除去装置。
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