JP3805198B2 - ホットランナーユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂の成形法である射出成形法(特にガスアシスト成形法及びインジェクションプレス成形法)に用いられる金型におけるホットランナーユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂を原料とした射出成形法において、成形サイクルの短縮、材料費の低減を目的として用いられているホットランナーユニットは、様々な構造が提案され、様々なメーカーから市販されている。特に、ニードル弁構造をもったホットランナーユニットにはカナダのモールドマスターズ製のホットランナーユニットや、ハスキーコーポレーションのホットランナーユニット等がある。
【0003】
これらのホットランナーユニットは、いずれも溶融樹脂が金型キャビティ内に射出される段階で、後部に設けられている油圧または空圧によって作動するシリンダのロッドが後退することによってゲート部に設けられたニードル弁が開き、その間隙を介して溶融樹脂が金型キャビティ内に充填される。そして、充填完了後(保圧を使用する場合には保圧完了後)、ホットランナーユニット後部に設けられているシリンダのロッドが前進し、ゲート部に設けられたニードル弁機構が閉ざされホットランナーユニット内部へ溶融樹脂が逆流するのを防止している。即ち、溶融樹脂の樹脂圧は、ホットランナーユニット後部に設けられているシリンダを稼動させる油圧力または空圧力によって支えられている。
【0004】
ここで、射出成形法の一種であるガスアシスト成形法及びインジェクションプレス成形法について説明する。ガスアシスト成形法とは、金型キャビティに溶融樹脂が射出される途中、射出完了直後、射出完了後に金型キャビティ内の溶融樹脂が冷却固化を始めた後(冷却固化の途中)に成形機のノズル,ランナー,製品へ直接に、或いはホットランナーユニットから金型内の溶融樹脂の内部または外部(金型面と溶融樹脂の間)に高圧に圧縮されたガス(主に不活性ガス、例えば窒素ガス)を注入する成形方法である。この成形方法によれば、中空の射出成形品を容易に得ることができる。
【0005】
また、インジェクションプレス成形法とは、射出成形を行う前に予め金型の上型と下型を少し開いておいて(勿論開いておいても溶融樹脂は外へ漏れ出さない構造になっている。)、射出成形を行う。その後、樹脂が冷却固化する段階で油圧で金型を完全に閉じることによって射出成形された成形品にプレス圧をかけてさらに緻密強固なものにするという成形法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ガスアシスト成形法において、高圧ガスを金型キャビティ内に射出された溶融樹脂内に注入すると、高圧ガスは金型キャビティ内の圧力、溶融樹脂粘度が低い部分を選択して中空部を形成する。この際にホットランナーユニットのゲート廻りはホットランナーユニットに設けられたヒーターによって加熱され、しかもこの部分は射出が完了しているので圧力は低下している。
【0007】
このような状態で前記高圧ガスがホットランナーユニットのゲート近傍に達すると、ガス圧によってホットランナーユニットのニードル弁は押し上げられて間隙が生じ、この間隙から高圧ガスがホットランナーユニット内部、さらには成形機加熱筒内部にまで侵入し、成形機スクリューを最後尾まで押し上げ、場合によっては、加熱筒内部の溶融樹脂を成形機ホッパーを介して吹き上げるという事故も起こり得る。
【0008】
このようにホットランナーユニット内または成形機加熱筒内にまで金型キャビティ内に注入された高圧ガスが逆流した状態で、続けて射出成形加工を実施すると、成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良が発生してしまう。
【0009】
また、インジェクションプレス成形法或いはガスプレスインジェクション成形法においては、溶融樹脂の圧力によってニードル弁がガスアシスト成形法の場合と同様に押し上げられて間隙が生じ、その結果金型キャビティ内の溶融樹脂がホットランナーユニット内に逆流し、同様に成形不良の原因となるといった問題点があった。
【0010】
さらに、ホットランナーユニットの温度制御(溶融樹脂の温度制御)には一般に電気式ヒーターが用いられ、この際の温度制御は熱電対でなされ、温度が設定温度以上に上昇すると電気式ヒーターに流れる電流を切る機構となっている。しかし、温度の降下は自然冷却によっており、一般的にホットランナーユニットは金型内に深く埋め込まれているため、自然冷却による温度降下は極めて遅い。特にホットランナーユニットの先端は毎ショットごとに加熱溶融された樹脂と直接接しているのでさらに温度の降下は難しい。したがって、ホットランナーユニットの温度はすぐには下がらず、しばらくは余熱によってさらに上昇していく。このため、ホットランナーユニット内の溶融樹脂の温度は設定温度を大きく超えてしまう。
【0011】
加えて、前記ニードル弁構造の間隙を介して成形機加熱筒乃至ホットランナーユニットに設けられた電気式ヒーターによって加熱溶融させた溶融樹脂が金型キャビティ内に射出される際、剪断発熱及び摩擦力によってさらに発熱し、その結果ホットランナーユニットの先端部は温度が上がり過ぎて、成形品にはゲート廻りに変形や焼け不良等の成形不良が現れる。
【0012】
また、ホットランナーユニットゲート部の温度制御が不十分であると、成形品の金型からの離型時に、ゲート部の冷却固化が十分に完了しないで離型することになり、成形品に糸引き不良等の現象が発生することがあった。
【0013】
そこで、本発明においては、ガスアシスト成形法及びインジェクションプレス成形法における、ホットランナーユニット内及び成形機加熱筒内へのガス及び溶融樹脂の侵入を防止することによって、成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良を防止するとともに安全に成形作業できるようにすることを課題とする。
【0014】
また、ホットランナーユニットにおける温度制御を十分に精密に行うことによって、樹脂の焼け・変形・糸引き等による成形不良を低減し、成形品の歩留まりを向上させることをも課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にかかるホットランナーユニットは、ゲートを介して金型キャビティに連絡するノズル部分に空洞を設け、該空洞にガスアシスト成形法におけるガス圧またはインジェクションプレス成形法における溶融樹脂の圧力によって上下に移動自在な球形のボールを収容してガス及び溶融樹脂の逆流を防止し、更に該空洞の内周壁には該ボールが下方にスライドして該空洞下端に位置するゲート部を塞いだ時に溶融樹脂の通路になる樹脂通路を形成した逆流防止弁を備えたものである。
【0016】
したがって、通常の成形時にはホットランナーユニット内の溶融樹脂はノズル部分を通過して金型キャビティ内に射出されるが、その後ガスアシスト成形法によるガス圧或いはインジェクションプレス成形法による溶融樹脂の圧力がかかって前記ノズル部分を通ってガスまたは溶融樹脂がホットランナーユニット内に侵入しようとすると、逆流防止弁が閉じてガス及び溶融樹脂の侵入を防止する。
【0017】
これによって、高圧ガスがホットランナーユニット内部から成形機加熱筒内部にまで侵入して、成形機スクリューを最後尾まで押し下げ、加熱筒内部の溶融樹脂を成形機ホッパーを介して吹き上げるという事故を未然に防ぐことができ、安全に成形作業をすることができる。また、ホットランナーユニット内部にガスや一度射出された溶融樹脂が入り込むことがないので、成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良も防ぐことができる。
【0018】
このようにして、ノズル内に逆流防止弁を設けたことによって、ガスアシスト成形法及びインジェクションプレス成形法における、ホットランナーユニット内及び成形機加熱筒内へのガス及び溶融樹脂の侵入を防止することができ、成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良を防止できるとともに安全に成形作業ができるようになる。
【0019】
前記逆流防止弁は、移動自在なボールによって前記ノズル部分の途中に設けられた空洞の入り口を塞ぐものである。このように、逆流防止弁としてボール弁構造を採用したことから、弁を支持してスライドさせる構造を設ける必要がなく、簡単な構造とすることができる。
【0020】
請求項2の発明にかかるホットランナーユニットは、請求項1の構成において、前記逆流防止弁のシール部分に1または2以上の環状の溝を設けたものである。これによって、この環状の溝にホットランナー内の溶融樹脂が入り込み、ガス圧または溶融樹脂圧がかかって逆流防止弁が働く際に環状の溝内の溶融樹脂がOリングの役目をしてより完全にシールされる。
【0021】
したがって、より確実にホットランナーユニット内及び成形機加熱筒内へのガス及び溶融樹脂の逆流を防止することができ、より確実に成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良を防止するとともに安全に成形作業ができるようになる。
【0022】
なお、このボール弁構造において溝を設ける場合には、ボールが空洞の入り口を塞ぐ際のボール受け部側のシール部分に溝を設けると、確実に溶融樹脂によるシール効果を得ることができる。
【0023】
請求項3の発明にかかるホットランナーユニットは、請求項1または請求項2の構成において、前記ホットランナーユニットが加熱状態でなくなったときに前記ホットランナーユニットの一部または全部を冷却する冷却手段を備えたものである。即ち、請求項3のホットランナーユニットは、ガスアシスト成形法またはインジェクションプレス成形法におけるガスまたは溶融樹脂のホットランナーユニット内への侵入を防ぐ逆流防止弁を備えるとともに、ホットランナーユニットの温度制御を精密に行うための冷却手段をも備えたものである。
【0024】
かかる構成によれば、ガスまたは一度射出した溶融樹脂のホットランナーユニット内への逆流も防ぐことができ、ホットランナーユニット内の溶融樹脂の温度も適正な範囲に保つことができる。その結果、ガスまたは溶融樹脂の侵入による成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良を防止することができ、溶融樹脂の過熱による樹脂の焼け・変形・糸引き等による成形不良も低減することができて、成形不良を殆どなくすことができる。これによって、成形品の歩留まりを飛躍的に向上させることができる。
【0025】
具体的には、例えばホットランナーユニットが加熱状態でなくなったときに、複数のエア吹き出しノズルから圧縮空気を吹き付け、前記ホットランナーユニットの一部または全部を冷却する。前述の如く、ホットランナーユニットを加熱する電気式ヒーターは熱電対による測定温度が設定温度を超えると電流が切れるが、その後しばらくは余熱によってさらに溶融樹脂の温度が上がってしまう。そこで、ヒーターが切れたとき即ち加熱状態でなくなったときに、冷却手段によって直ちにホットランナーユニットの一部または全部(過熱状態になり易い部分)を冷却することによって、ホットランナーユニットの温度を強制的に下げて、内部の溶融樹脂の温度を短時間で設定温度内に戻してやる。これによって、射出成形時の溶融樹脂の温度が適切な範囲に保たれ、成形品にはゲート廻りの変形や焼け不良、糸引き不良等の成形不良が現れることはない。
【0026】
このようにホットランナーユニットにおける温度制御を十分に精密に行うことによって、樹脂の焼け・変形・糸引き等による成形不良を低減し、成形品の歩留まりを向上させることができる。
【0027】
前記冷却手段は、前記ホットランナーユニットの一部または全部に圧縮気体を吹き付けるものである。この構成によれば、ホットランナーユニットから離して冷却手段を設けることができるので、冷却手段の配置の自由度が増し、ホットランナーユニットの過熱し易い部分を重点的に冷却できる。また、圧縮気体を吹き付けることによって気体の断熱膨張が起きて温度が下がるので、冷却の効果が一層大きくなる。ここで、圧縮気体としては圧縮空気、圧縮窒素、圧縮アルゴン等の不活性気体を用いるのが安全の上から望ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
実施の形態1
本発明の実施の形態1について、図1を参照して説明する。図1(a)は本発明の実施の形態1にかかるホットランナーユニットのノズル部分を示す縦断面図、(b)は(a)のA−A断面を示した横断面図である。
【0030】
図1に示されるように、本実施の形態1のホットランナーユニット11のノズル部分12,13には、球形のボール15を弁とした逆流防止弁を用いている。ノズル本体12とノズル先端部13はねじによって着脱可能になっており、両者内に設けられた空洞14内にボール弁15を入れてからノズル本体12とノズル先端部13をねじ込み合体させる。空洞14は、想像線で示されるようにボール弁15の外径とほぼ同じ内径であるが、このままでは下端のゲート部18をボール弁15が塞いでしまって溶融樹脂の通る道がないので、4本の樹脂通路17をノズル本体12とノズル先端部13に彫り込んである。空洞14の上端は弁座16になっており、溶融樹脂を溜めてシール性を上げるための環状の2本の溝16aが彫り込まれている。
【0031】
射出成形機のスクリューが前進して成形機加熱筒内の溶融樹脂がホットランナーユニット11内に押し出されると、ボール弁15が下方にスライドして空洞14及び4本の樹脂通路17が溶融樹脂の通り道となって、溶融樹脂が金型キャビティ19内に充填される。その後、ガスアシスト成形法によるガス圧によって中空部分20が形成され、このガス圧が金型キャビティ19内の溶融樹脂を介してまたは溶融樹脂を突き破ってボール弁15にかかると、このガス圧によってボール弁15は上方にスライドして弁座16に密着し、ガスの侵入を防止する。ここで、2本の溝16aに溜まった溶融樹脂がOリングの役目をして、ボール弁15によるシールがより確実なものとなる。
【0032】
インジェクションプレス成形法の場合には、金型キャビティ19内の溶融樹脂の圧力によってボール弁15は上方にスライドして弁座16に密着し、溶融樹脂の逆流を防止する。
【0033】
このように、ノズル12,13内に逆流防止弁15を設けたことによって、ガスアシスト成形法及びインジェクションプレス成形法における、ホットランナーユニット内及び成形機加熱筒内へのガス及び溶融樹脂の侵入を防止することができ、成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良を防止できるとともに安全に成形作業ができるようになる。
【0034】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、本発明の実施の形態2にかかるホットランナーユニットを示す説明図である。図3は、本発明の実施の形態2にかかるホットランナーユニットによる成形試験に用いた成形品の構造とゲート位置を示す部分破断斜視図である。図2に示されるように、本実施の形態2にかかるホットランナーユニット61は温度を精密に制御するための冷却手段100を備えている。
【0035】
射出成形機の加熱シリンダ62の真下には金型のスプルーブッシュ63が位置しており、スプルーブッシュ63にはホットランナーユニット61のマニホールド64が接続され、マニホールド64はノズル65につながっている。ノズル65には2個の電気式のバンドヒータ66が取付けられており、ホットランナーユニット61を加熱する。加熱の温度制御はノズル65に取付けられた図示しない熱電対によって行われ、熱電対によって測定される温度が設定温度を超えるとバンドヒータ66に流れていた電流が遮断され、加熱が停止される。熱電対によって測定される温度が設定温度以下になると、バンドヒータ66に電流が流れ、加熱が再開される。
【0036】
本実施の形態2における冷却手段100は、圧縮空気をホットランナーユニット61に吹き付けることによって冷却を行うものである。即ち、エアコンプレッサー101で圧縮された空気はエアタンク102に貯蔵され、電磁弁103が開くとステンレス管105に圧縮空気が流れて、ホットランナーユニット61のノズル65に近接して設けられたステンレス管105の複数のエア吹き出しノズル106からノズル65に向けて圧縮空気が吹き付けられ、ノズル65が冷却される。
【0037】
電磁弁103は、前記熱電対と連動しており、熱電対によって測定される温度が設定温度以下の間、即ちバンドヒータ66に電流が流れて加熱が行われている間は電磁弁103は閉じており、圧縮空気による冷却は行われない。熱電対によって測定される温度が設定温度を超えると(即ち、加熱状態でなくなると)、タイマー104で所定時間カウントした後に電磁弁103が開いて、圧縮空気がステンレス管105からノズル65に吹き付けられて冷却が行われる。圧縮空気による冷却によって熱電対によって測定される温度が設定温度以下になると、バンドヒータ66に電流が流れ、加熱が再開される。
【0038】
このように加熱と冷却が交互に繰り返されることによって、ノズル65の温度は設定温度近傍に保たれ、ホットランナーユニット61内の溶融樹脂の温度も適正に保たれる。このように、ホットランナーユニット61における温度制御を十分に精密に行うことによって、樹脂の焼け・変形・糸引き等による成形不良を低減し、成形品の歩留まりを向上させることができる。
【0039】
なお、本実施の形態2においては、ホットランナーユニット61のうちノズル65の近傍にステンレス管105を配置してノズル65のみを冷却しているが、使用する樹脂の種類や成形条件によってはマニホールド64の近傍にもステンレス管105を配置してマニホールド64をも冷却するようにすることもできる。
【0040】
実際の冷却効果を試験するために、ホットランナーユニット61を用いて、図3に示される成形品120の射出成形試験を行った。成形品120の大きさは長さ300mm、幅380mm、高さ50mm、平均肉厚3mmの箱形形状で、内部に縦2本、横2本のリブ124が設けられている。各コーナー部には溶融樹脂の流動を支援するため、C3の面取りが施されており、ゲート122の数は中央部に1点である。
【0041】
成形用樹脂としては、ガスアシスト用に開発されたHIPS樹脂である旭化成工業(株)のAGI02(商品名)を用い、350ton射出成形機を用いて溶融樹脂温度が215度で成形加工した。ホットランナーユニット61としては、モールドマスターズ製のバルブゲート式ホットランナーユニットの廻りにステンレス管105を配置し、ノズル65のみでなくマニホールド64をも冷却するようにした。バンドヒータ66に電流が流れて加熱が行われている間は電磁弁103は閉じており、圧縮空気による冷却は行われない。熱電対によって測定される温度が設定温度を超えると電磁弁103が開いて、0.8MPaの圧縮空気がステンレス管105のエア吹き出しノズル106から吹き出してホットランナーユニット61を冷却した。
【0042】
成形試験の結果は、冷却しない場合には、ゲート廻りに直径20mm程度の焼けが発生したが、冷却を実施した場合には、前記焼け不良の発生は確認されなかった。このように、冷却手段100を用いてホットランナーユニット61を冷却し、内部の溶融樹脂の温度を適正な範囲に保つことによって、成形不良を防止できることがわかった。
【0043】
本発明において実施可能な射出成形法は、射出成形機加熱筒内で加熱溶融された溶融樹脂を金型キャビティ内に射出し、必要に応じて保圧を掛け、金型キャビティ内で冷却固化された後、取り出す公知の成形法以外に、例えば発泡剤を用いた発泡成形法(NSF法、GCP法を含む)、2色成形法、2層成形法、サンドイッチ成形法、インジェクションブロー成形法、インジェクションプレス成形法、インモールド成形法等があり、これら成形法は単独での実施のみならず前記記載のガスアシスト成形法との併用も可能である。
【0044】
本発明において用いられる射出成形用樹脂としては、熱可塑性をしめす樹脂を主成分とする樹脂組成物ならば全て用いることができる。代表的なものを例示するとABS樹脂・HIPS樹脂・変性PPE樹脂に代表されるスチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂・ポリエチレン樹脂に代表されるオレフィン系樹脂、PET樹脂・PBT樹脂に代表されるエステル系樹脂、ナイロン−6・ナイロン−66等に代表されるアミド系樹脂、その他ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、及びこれらの樹脂のポリマーブレンド,ポリマーアロイ、さらにはガラス繊維(GF)等の樹脂強化材が添加された複合材等である。
【0045】
本発明にかかるホットランナーユニットのその他の部分の構造、材質、形状、大きさ、数量、接続関係等については、上記の各実施の形態に限定されるものではない。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明にかかるホットランナーユニットは、ノズル部分に、ガスアシスト成形法におけるガス圧またはインジェクションプレス成形法における溶融樹脂の圧力によって閉じ、ガス及び溶融樹脂の侵入を防止する逆流防止弁を備えたものである。
【0047】
したがって、通常の射出成形時にはホットランナーユニット内の溶融樹脂はノズル部分を通過して金型キャビティ内に射出されるが、その後ガスアシスト成形法によるガス圧或いはインジェクションプレス成形法による溶融樹脂の圧力がかかって前記ノズル部分を通ってガスまたは溶融樹脂がホットランナーユニット内に逆流しようとすると、逆流防止弁が閉じてガス及び溶融樹脂の侵入を防止する。
【0048】
これによって、高圧ガスがホットランナーユニット内部から成形機加熱筒内部にまで侵入して、成形機スクリューを最後尾まで押し上げ、加熱筒内部の溶融樹脂を成形機ホッパーを介して吹き上げるという事故を未然に防ぐことができ、安全に成形作業をすることができる。また、ホットランナーユニット内部にガスや一度射出された溶融樹脂が入り込むことがないので、成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良も防ぐことができる。
【0049】
このようにして、ノズル内に逆流防止弁を設けたことによって、ガスアシスト成形法及びインジェクションプレス成形法における、ホットランナーユニット内及び成形機加熱筒内へのガス及び溶融樹脂の逆流を防止することができ、成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良を防止するとともに安全に成形作業ができるようになる。
【0050】
前記逆流防止弁は、移動自在なボールによって前記ノズル部分の途中に設けられた空洞の入り口を塞ぐものである。このように、逆流防止弁としてボール弁構造を採用したことから、弁を支持してスライドさせる機構を設ける必要がなく、簡単な構造とすることができる。
【0051】
請求項2の発明にかかるホットランナーユニットは、請求項1の構成において、前記逆流防止弁のシール部分に1または2以上の環状の溝を設けたものである。これによって、請求項1に記載の効果に加えて、この環状の溝にホットランナー内の溶融樹脂が入り込み、ガス圧または溶融樹脂圧がかかって逆流防止弁が働く際に環状の溝内の溶融樹脂がOリングの役目をしてより完全にシールされる。したがって、より確実にホットランナーユニット内及び成形機加熱筒内へのガス及び溶融樹脂の逆流を防止することができ、より確実に成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良を防止するとともに安全に成形作業ができるようになる。
【0052】
請求項3の発明にかかるホットランナーユニットは、請求項1または請求項2の構成において、前記ホットランナーユニットが加熱状態でなくなったときに前記ホットランナーユニットの一部または全部を冷却する冷却手段を備えたものである。即ち、請求項3のホットランナーユニットは、ガスアシスト成形法またはインジェクションプレス成形法におけるガスまたは溶融樹脂のホットランナーユニット内への侵入を防ぐ逆流防止弁を備えるとともに、ホットランナーユニットの温度制御を精密に行うための冷却手段をも備えたものである。
【0053】
かかる構成によれば、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、ガスまたは一度射出した溶融樹脂のホットランナーユニット内への逆流も防ぐことができ、ホットランナーユニット内の溶融樹脂の温度も適正な範囲に保つことができる。その結果、ガスまたは溶融樹脂の侵入による成形品の焼け、ショートモールド、シルバーストリーク等といった成形不良を防止することができ、溶融樹脂の過熱による樹脂の焼け・変形・糸引き等による成形不良も低減することができて、成形不良を殆どなくすことができる。これによって、成形品の歩留まりを飛躍的に向上させることができる。
【0054】
具体的には、例えばホットランナーユニットは、ホットランナーユニットが加熱状態でなくなったときに、複数のエア吹き出しノズルから圧縮空気をを吹き付け、前記ホットランナーユニットの一部または全部を冷却する。前述の如く、ホットランナーユニットを加熱する電気式ヒーターは熱電対による測定温度が設定温度を超えると電流が切れるが、その後しばらくは余熱によってさらに溶融樹脂の温度が上がってしまう。そこで、ヒーターが切れたとき即ち加熱状態でなくなったときに、冷却手段によって直ちにホットランナーユニットの一部または全部(過熱状態になり易い部分)を冷却することによって、ホットランナーユニットの温度を強制的に下げて、内部の溶融樹脂の温度を短時間で設定温度内に戻してやる。これによって、射出成形時の溶融樹脂の温度が適切な範囲に保たれ、成形品にはゲート廻りの変形や焼け不良、糸引き不良等の成形不良が現れることはない。
【0055】
このようにホットランナーユニットにおける温度制御を十分に精密に行うことによって、樹脂の焼け・変形・糸引き等による成形不良を低減し、成形品の歩留まりを向上させることができる。
【0056】
前記冷却手段は、前記ホットランナーユニットの一部または全部に圧縮気体を吹き付けるものである。この構成によれば、ホットランナーユニットから離して冷却手段を設けることができるので、冷却手段の配置の自由度が増し、ホットランナーユニットの過熱し易い部分を重点的に冷却できる。また、圧縮気体を吹き付けることによって気体の断熱膨張が起きて温度が下がるので、冷却の効果が一層大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施の形態2にかかるホットランナーユニットのノズル部分を示す縦断面図、(b)は(a)のA−A断面を示した横断面図である。
【図2】本発明の実施の形態6にかかるホットランナーユニットを示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態6にかかるホットランナーユニットによる成形試験に用いた成形品の構造とゲート位置を示す部分破断斜視図である。
【符号の説明】
11 ホットランナーユニット
12,13 ノズル部分
15 逆流防止弁
16a 環状の溝
14 空洞
15 ボール
100 冷却手段
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂の射出成形に用いられる金型のホットランナーユニットにおいて、
ゲートを介して金型キャビティに連絡するノズル部分に空洞を設け、該空洞にガスアシスト成形法におけるガス圧またはインジェクションプレス成形法における溶融樹脂の圧力によって上下に移動自在な球形のボールを収容してガス及び溶融樹脂の逆流を防止し、更に該空洞の内周壁には該ボールが下方にスライドして該空洞下端に位置するゲート部を塞いだ時に溶融樹脂の通路になる樹脂通路を形成した逆流防止弁を具備することを特徴とするホットランナーユニット。 - 前記逆流防止弁の空洞の上端は弁座となっており、該弁座には1または2以上の環状の溝が設けられている請求項1に記載のホットランナーユニット。
- 更に、前記ホットランナーユニットが加熱状態でなくなったときに前記ホットランナーユニットの一部または全部を冷却して前記ホットランナーユニットの温度制御を行なう冷却手段を備えた請求項1または2に記載のホットランナーユニット。
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