JP3803535B2 - 液体ベント式外科手術用装置とカセット - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、白内障手術分野、より詳細には水晶体超音波吸引法による白内障除去を行なうためのハンドピース用吸引装置に関する。
【０００２】
人間の目はその単純な言葉の中に、角膜と呼ばれている透明な外膜を通して光を伝えることによる「見ること」という機能と、レンズによる網膜上に「像の焦点を合わせる」という機能とを果している。焦点の合った像の質は、目のサイズおよび目の形状と角膜およびレンズ各々の透明度とを含む多くの因子に依存している。
【０００３】
年をとるか病気が進行するとレンズの透明度が減り、網膜に伝えられる光の減少のために像の質が低下してしまう。目のレンズの欠陥は医学的には白内障として知られている。この状態において受け入れられる処置法は、外科手術によるレンズの除去および人工眼内レンズ（ＩＯＬ）によるレンズ機能の取り替えである。
【０００４】
【従来の技術】
米国において、白内障のレンズの大多数は、水晶体超音波吸引とよばれる外科手術により除去される。この手術中に、薄い水晶体超音波吸引の切断用チップが欠陥のあるレンズにそう入され、超音波で振動される。レンズが目の外に吸引できるように、振動された切断用チップがレンズを液状化または乳状化する。欠陥のあるレンズが、一旦取り除かれると、人工レンズに取り替えられる。
【０００５】
目の処置に適した典型的な超音波を用いた外科手術用装置は、超音波駆動ハンドピースと、付属の切断用チップと、洗浄用スリーブと、電子制御コンソールとから構成されている。ハンドピースアセンブリーは電気ケーブルとフレキシブルチューブとにより制御コンソールに接続されている。電気ケーブルを介して、制御コンソールがハンドピースにより、付属の切断用チップに送られる出力レベルを変化させ、フレキシブルチューブはハンドピースアセンブリーを介して、目に洗浄用流体を供給し、目から流体を吸引する。
【０００６】
ハンドピースにおいて手術用器具が中心に配置されていて、中空共振棒（ｈｏｌｌｏｗ ｒｅｓｏｎａｔｉｎｇ ｂａｒ）またはホーンが圧電水晶体（ｐｉｅｚｏｅｌｅｃｔｒｉｃ ｃｒｙｓｔａｌｓ）のセットに直接取り付けられている。水晶体は、ホーンと付属の切断用チップとの両方を駆動するのに必要な要求される超音波振動を供給していて、制御コンソールにより制御されている。水晶体／ホーンアセンブリーがハンドピースの中空本体またはシェルの中に、フレキシブルな取り付け具により吊り下げられている。ハンドピース本体は本体の端部で、直径が小さくなった部分または円錐形頭部で閉じている。円錐形頭部は洗浄用スリーブを接続するための外面ねじが切られている。同様に、ホーンの穴部分は、切断用チップの外面ねじに噛合するために、ホーン端部の内面にねじが切られている。また洗浄用スリーブが内面にねじの切られた穴を有していて、その穴は円錐形頭部の外面ネジに噛合される。切断用チップは、そのチップが洗浄用スリーブの開口端部を通って前もって決められた距離だけ突き出すように調節されている。超音波ハンドピースと超音波切断用チップとが、米国特許第３，５８９，３６３号；第４，２２３，６７６号；第４，２４６，９０２号；第４，４９３，６９４号；第４，５１５，５８３号；第４，５８９，４１５号；第４，６０９，３６８号；第４，８６９，７１５号；第４，９２２，９０２号；第４，９８９，５８３号；第５，１５４，６９４号および第５，３５９，９９６号により詳しく開示されていて、その開示内容をここに参考として提示いたします。
【０００７】
使用にあたっては、切断用チップと洗浄用スリーブとの端部が角膜または強膜または他の部分の前もって決められた巾の切り口にそう入される。切断用チップが、水晶体駆動の超音波ホーンにより、洗浄用スリーブの中で切断用チップの長手方向軸にそって超音波で振動されていて、それにより対象の組織をその場所で乳状化する。切断用チップの中空穴がホーンの穴と連絡していて、そのホーンの穴はまたハンドピースからコンソールへの吸引ラインに連絡している。コンソール内の減圧装置または真空装置が、切断用ピースの開口端部と、切断用チップおよびホーンの穴と、吸引ラインとを介して、目から乳状化された組織を吸い出すか吸引し収集装置の中に流し込む。乳状化された組織の吸引は洗浄用食塩水溶液または洗浄溶液により促進され、その溶液は洗浄用スリーブの内面と切断用チップとの間のせまい環状すき間を介して、外科手術対象部分に噴出される。
【０００８】
手術の間、共振しているチップの中空部が閉塞することがある。閉塞している間、閉塞部分の下流の吸引ラインにおいて真空度が上昇する。結局は閉塞が破れて、この真空範囲が目にまで達して、真空度にもよるが目から多量の流体を吸引し、そのため関連するチャンバーの破裂する危険度が増加する。この点に着目して、現在の外科手術コンソールは通常運転時の限界を越える吸引ラインの真空度の上昇を検出し、それにより閉塞を予知している。この外科手術用コンソールは、吸引ポンプを停止または減速することか、外科医が適切な事前注意を出来るように警報を発することか、それらのどちらかが出来るようになっている。
【０００９】
現在の外科手術用コンソールに使われているカセットもまた、吸引ラインが大気か液体のどちらかにベントされるのを可能にしていて、閉塞が破れた際の真空によるサージングを減ずるか排除している。従来技術において、空気ベント式カセットはまわりの空気が吸引ラインに流れ込むことを可能にしているが、しかしながら吸引ラインに流れ込んだ空気は吸引装置における流体特性を変化させる。液体ベント式装置は洗浄液が吸引ラインに流れ込むことを可能にしていて、それにより吸引装置の流体特性に対する悪影響を減じている。液体ベント式カセットが、米国特許第４，８３２，６８５、第４，９３５，００５号（Ｈａｉｎｅｓ）、第４，７１３，０５１（ｓｔｅｐｐｅ外）により詳しく開示されていて、その開示内容をここに参考として提示いたします。より高い吸引真空度が使用されると、洗浄ラインに吸引ラインをベントしているカセットが、洗浄ラインに高圧のサージングを引き起こす。他の装置では吸引ラインをベントするために独立の洗浄流体装置を有しているが、二つの洗浄流体装置を必要とすることになり、コストが増加し装置が複雑になる。
【００１０】
それゆえ、洗浄ラインかまたは吸引ラインの下流部かにおいて圧力変動を招くことなく、吸引真空度の超過を急速にベントすることを可能にする単純な外科手術用装置の必要性がある。
【００１１】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、吸引物収集チャンバーと吸引物収集チャンバーから流体を吸い出す吸引ベントラインとを持つカセットを有する外科手術用装置を提供することにより従来技術を改善するものである。収集チャンバーの中の圧力はほぼ大気圧に維持されていて、吸引ベントラインが開かれると、収集チャンバーから吸引ラインに流体が流れる。そのような装置は、第二の洗浄流体装置を必要とせずに、洗浄流体ラインへの圧力サージングをできるだけ小さくしていて、さらに吸引装置の流体特性に悪影響を与えない。付け加えると、異なるベント圧力は吸引ラインに対するリザーバーの垂直位置を変更することにより実現することが出来る。
【００１２】
以上より、本発明における一つの目的は、吸引ベントラインを有する外科手術用装置を提供することである。
【００１３】
本発明におけるもう一つの目的は、吸引ラインにおける超過した真空度をベントすることを可能にするカセットを有する外科手術用装置を提供することである。
【００１４】
本発明におけるもう一つの目的は、吸引ラインを吸引物収集チャンバーにベントするカセットを有する外科手術用装置を提供することである。
【００１５】
本発明におけるもう一つの目的は、洗浄ラインにおいて圧力のサージングを招かずに吸引ラインをベントする外科手術用装置を提供することである。
【００１６】
本発明におけるもう一つの目的は、吸引装置の流体特性に悪影響を与えることなしに吸引ラインをベントする外科手術用装置を提供することである。
【００１７】
本発明におけるこれらおよび他の利点と目的とが、後述する詳細な記述および前述の特許請求の範囲により明らかとなる。
【００１８】
【課題を解決するための手段】
本発明の外科手術用装置は、吸引ポンプ機構を含んでいる外科手術用コンソールと；吸引ポンプ機構がハンドピースを介して流体を吸い出せるように、第一の端部でハンドピースと、第二の端部で吸引ポンプ機構とに流体的に接続する吸引ラインと；カセットが流体リザーバーを含んでいて、外科手術用コンソールと共に手術に適用されているところのカセットと；吸引ポンプ機構によりハンドピースを介して引き出された流体が流体リザーバーの中へ流れ込むように、吸引ポンプ機構を流体リザーバーに流体的に接続する吸引排出ラインと；吸引ベントラインが流体リザーバーからかまたは流体リザーバーの底または底の近くから伸びていて、流体リザーバーをハンドピースと吸引ポンプ機構との間で吸引ラインに流体的に接続しているところの吸引ベントラインと；吸引ベントラインの中に配置されたベント弁と；を具備している。
また本発明のハンドピースから吸引ポンプ機構に伸びている吸引ラインのベント方法は：流体リザーバーを有する外科手術用カセットを準備する段階と；吸引ラインを吸引ポンプ機構を介して流体リザーバーに流体的に接続する段階と；流体リザーバーを、流体リザーバーからかまたはリザーバーの底部近くから、ハンドピースと吸引ポンプ機構との間でベント弁を介して吸引ラインに流体的に接続する段階と；流体リザーバーに入っている吸引物を、吸引ポンプ機構の上流の吸引ラインに流し込むことを可能にするためにベント弁を開く段階と；を具備している。
【００１９】
【発明の実施の形態】
本発明における装置１０は外科手術用コンソール１２とカセット１４とを含んでいる。コンソール１２は商業的に入手可能な外科手術用コンソールをどのように適切に変更してもよくて、外科手術用コンソールは登録商標“ＳＥＲＩＥＳ ＴＷＥＮＴＹ ＴＨＯＵＳＡＮＤ”とか、“ＬＥＧＡＣＹ”とか、“ＡＣＣＵＲＵＳ”とかの名称でAlcon Laboratories (Fort Worth, Texas.) から入手可能である。カセット１４は商業的に入手可能な外科手術用カセットをどのように適切に変更してもよくて、カセットとは米国特許番号第５，２６７，９５６号と第５，３６４，３４２号と第５，４９９，９６９（Beuchat 外）とさらに第５，８９９，６７４号（Jung外）とで開示されているもので、その開示内容をここに参考として提示します。カセット１４は、従来技術で公知の手段としてコンソール１２と共に手術に適用されている。
【００２０】
図に示されるように、コンソール１２は一般に吸引ポンプ機構１６を有していて、そのポンプ機構はポンプによるどのような適切な流体または真空であってもよくて、そのポンプは公知のものである。たとえば、ポンプ機構１６は吸引ライン２０と排気ライン３４とにより形成されたぜん動性ポンプチューブ（ｐｅｒｉｓｔａｌｔｉｃ ｐｕｍｐ ｔｕｂｅ）と相互に作用するぜん動性ポンプローラーヘッド（ｐｅｒｉｓｔａｌｔｉｃ ｐｕｍｐ ｒｏｌｌｅｒ ｈｅａｄ）でもよい。吸引ライン２０が一方の端部で外科手術用ハンドピース２２に接続されていて、ハンドピース２２に対向した吸引ライン２０の端部１８はポンプ機構１６と相互に作用して、ハンドピース２２からの流体を吸引する。吸引ライン２０がハンドピース２２と１８との間で、吸引ベントライン２４に交わっている。吸引ベントライン２４が圧力検出器２６と流体的に接続していて、その圧力検出器は従来技術において公知の侵襲型（ｉｎｖａｓｉｖｅ）または非侵襲型（ｎｏｎ−ｉｎｖａｓｉｖｅ）の圧力検出器の一種類でよい。
【００２１】
カセット１４は流体リザーバー２８を含んでいる。吸引ベントライン３２がリザーバー２８の底２９または底２９の近くから伸びていて、ベント弁３０を介して吸引ベントライン２４と流体的に接続している。ポンプ機構１６からの吸引または排出は吸引排出ライン３４を通して直接リザーバー２８に送り込まれる。リザーバー２８はまた、抗菌フィルター３８を備えたリザーバーベントライン３６を介して大気にベントしてもよい。
【００２２】
前述したように、好ましくは、ポンプ機構１６がぜん動性ポンプローラーヘッドで、吸引ライン２０と吸引排出ライン３４とは一つの連続した長さを形成しており、ポンプ機構１６と相互に作用するぜん動性ポンプチューブを形成している。然るに、当業者には以下のことが理解できる。吸引ライン２０と吸引排出ラインとは、独立した単品部品または複数の部品として形成されていてもよくてまたはカセット１４と一体に形成されていてもよく、さらに、ぜん動性ポンプローラーヘッド以外のポンプ機構１６たとえばリニアーぜん動性ポンプ（ｌｉｎｅａｒ
ｐｅｒｉｓｔａｌｔｉｃ ｐｕｍｐ）が使用されてもよい。
【００２３】
つけ加えると、圧力検出器２６はコンソール１２の中に含まれるように図示されている。当業者には以下のことが理解できる。ダイアフラム圧力計（図示されていない）のような圧力検出器２６の一部分がカセット１４上またはカセットの中に含まれていてもよくて、さらにコンソール１２の中に含まれている圧力変換器または他の手段（図示されていない）と相互に作用していてもよい。
【００２４】
使用にあたって、カセット１４はコンソール１２の上またはコンソールの中に備えられていて、従来技術で公知の方法によりコンソール１２とともに手術に適用される。小量の流体がリザーバー２８に入るように装置１０はきれいな外科手術用の流体で初期注入されている。外科手術の間、ポンプ機構１６が吸引物をハンドピース２２から吸引しリザーバー２８に送り込む。もし吸引ライン２０の真空度が高くなりすぎてベントする必要がある場合、ベント弁３０が開かれ、吸引物はリザーバー２８（リザーバー２８は大気圧か、それに近い圧力）の底部１９から吸い出され、吸引ベントライン２４を通って吸引ライン２０（真空状態にある）に流し込まれることを可能にする。当業者には、以下のことは理解できていて、吸引ライン２０に対するリザーバー２８の垂直位置を変えることにより、異なるベント水頭圧を実現してもよい。
【００２５】
この記述は説明用のものである。変更および修正を前述の本発明の範囲と精神から離脱することなく実行できることは当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は本発明における装置とカセットとの概略図である。
【符号の説明】
１０…外科手術用装置
１２…外科手術用コンソール
１４…カセット
１６…吸引ポンプ機構
２０…吸引ライン
２２…ハンドピース
２４…吸引ベントライン
２９…流体リザーバー
３０…ベント弁
３４…吸引排出ライン

Claims (3)

1. 外科手術用装置が、
   ａ）吸引ポンプ機構を含んでいる外科手術用コンソールと；
   ｂ）該吸引ポンプ機構がハンドピースを介して流体を吸い出せるように、第一の端部で該ハンドピースと、第二の端部で該吸引ポンプ機構とに流体的に接続する吸引ラインと；
   ｃ）カセットが流体リザーバーを含んでいて、外科手術用コンソールに接続され手術に適用されているカセットと；
   ｄ）該吸引ポンプ機構により該ハンドピースを介して吸い出された流体が該流体リザーバーの中へ流れ込むように、該吸引ポンプ機構を該流体リザーバーに流体的に接続する吸引排出ラインと；
   ｅ）吸引ベントラインが該流体リザーバーの底または底の近くから伸びていて、流体が該流体リザーバーから該吸引ラインに流れるように、該流体リザーバーを該ハンドピースと該吸引ポンプ機構との間で該吸引ラインに流体的に接続している吸引ベントラインと；
   ｇ）該吸引ベントラインの中に配置されたベント弁と；
   を具備している外科手術用装置。
2. 該カセットが、該吸引ラインに対し該流体リザーバーの垂直位置により決まるベント水頭圧をさらに具備しているところの、請求項１に記載の外科手術用装置。
3. 外科手術用装置に使用するためのカセットであって、外科手術用装置が、ポンプ機構と吸引ラインとを含む外科手術用コンソールを有していて、該ポンプ機構は、ハンドピースを介して流体を吸い出すように、該吸引ラインを介して該ハンドピースに接続されている、外科手術用装置に使用されるカセットにおいて、該カセットが：
   ａ）吸引排出ラインを有している流体リザーバーであって、該ポンプ機構により該ハンドピースを介して吸い出された流体が該吸引排出ラインを介して該流体リザーバーに流れるように、該外科手術用コンソールに接続され手術に適用されている流体リザーバーと；
   ｂ）該流体リザーバーの底または底の近くから伸びていて、かつベント弁を含んでいる吸引ベントラインであって、該吸引ベントラインは、流体が該流体リザーバーから該吸引ラインに流れるように、該流体リザーバーを該ハンドピースと該吸引ポンプ機構との間で該吸引ラインに流体的に接続している吸引ベントラインと；
   を具備しているカセット。

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