JP3802604B2 - 高強度高靭性レールの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、寒冷地の貨車重量が重荷重である鉄道用鋼レールに要求される靭性の改善に関わる製造方法である。
【0002】
【従来技術】
近年、鉄道による輸送の効率化を目的として列車の高速化、貨車の重積載化が進められている。また、資源開発の拡大により、寒冷地での重荷重鉄道による資源輸送が発展しつつある。このようにレール使用環境が苛酷化するなかで、レール寿命を維持・改善するために微細パーライト組織による高強度化が図られてきた。
【0003】
このような鋼材の製造方法としては、例えば、特開昭58−221229号公報には「C:0.65〜0.85%、Mn:0.5〜2.5%を含有した高温Mn鋼レールをオーステナイト領域から急冷し、レールまたはレールヘッドの組織を微細なパーライトとして耐摩耗性を改善したレールの熱処理方法」が述べられており、また、特開昭59−133322号公報には「安定してパーライト組織が得られる特定成分の圧延レールをAr3 点以上の温度から特定温度の溶融塩浴中に浸漬して、レール頭頂部表面下約10mmまでHv>350の硬さを持つ微細なパーライト組織を呈するレールの熱処理方法」などが開示されている。
【0004】
しかしながら、パーライト鋼は、合金元素の添加によって所要の規格の強度が得られるが、靭性に関してはフェライト金属組織を主体にした低炭素鋼に比較して劣っており、例えば、パーライト金属組織を呈するレール鋼ではJIS3号Uノッチシャルピー試験での常温試験値で1〜2 kgf・m/cm2 程度である。靭性の低い鋼を繰り返し荷重や振動をかけると、微小な初期欠陥や疲労き裂から低応力脆性破壊を引き起こす懸念があるため、欠陥や疲労き裂の探査等の保線の頻度とレール交換頻度が多いという問題があった。
【0005】
一般に、パーライト鋼の靭性を向上させる方法として、パーライトブロックの微細化があり、このブロックを微細化する手段として、変態前のオーステナイト粒の細粒化やパーライトの粒内変態がある。このうち、粒内変態は制御が困難であり、靭性向上にはオーステナイト粒の細粒化が最適である。
【0006】
このような、パーライト鋼の高靭性化は、例えば、特開昭63−277721号公報には「制御圧延と加工熱処理を組み合わせた製造方法および圧延後の低温加熱処理方法として800℃以下で断面減少率が5%以上の圧延を行い、750〜900℃へ加熱し、1〜15℃/秒で加速冷却するレール鋼の製造方法」が述べられている。しかし、この方法では圧延後に再加熱をする必要があり、コスト高になるという問題があった。また、特開平7−173530号公報には「Cを0.6〜1.00%含む鋼をレールに圧延する際、仕上げ圧延において850〜1000℃の間で1パス当たりの断面減少率5〜30%の圧下でパス間時間が8秒以下の連続圧延を3パス以上行う、すなわち、タンデム圧延を行い、その後、放冷あるいは加速冷却し、高強度の高靭性レールを得る製造方法」が開示されている。この方法においても高強度の高靭性レールを得ることができるが、さらにレールの長手方向の硬さのばらつきを無くし、より高靭性化が要求されてきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、粗圧延後仕上げ圧延工程でオーステナイト粒を細粒化し、圧延終了後750〜950℃の温度域まで急冷し、冷却開始まで保定することでオーステナイト粒の粒成長を抑え、続けて加速冷却することで高強度高靭性レールを製造することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、パーライト組織で靭性が優れた鋼を製造するために、製造方法から多くの実験を試みた結果、仕上げ圧延によって細粒化したオーステナイト粒が圧延後の鋼材温度が高いために、圧延直後から粒成長する現象を見いだした。そこで、仕上げ圧延後950〜750℃まで急冷することで粒成長を抑制し、オーステナイト粒を細粒のまま維持できる知見を得た。
【0009】
本発明はこのような知見に基づいて構成したものであり、その要旨とするところは
パーライト組織を呈する成分を有するレール鋼片の熱間圧延において、レール頭部表面が1050〜900℃の温度範囲で1パスあたり20%以下の圧下率で1パスあるいは複数パスの仕上げ圧延を行った後、4℃/s以上の冷却速度で950〜700℃の間の温度まで冷却し、この950〜700℃の温度域で0.5〜10分間保定し、その後2〜15℃/sの冷却度で600℃以下の温度まで加速冷却することを特徴とするパーライト組織を呈するレールの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、高強度かつ高靭性レールを得るために、多くの実験を行ってきた。以下、図1に示した本発明について詳細に説明する。
レールの熱間圧延において、レール用鋼片は圧延のための再加熱後、粗圧延に続いて中間圧延し、更に仕上げ圧延へと送られる。仕上げ圧延ではオーステナイト粒の粒度調整のために圧延温度を変えている。このとき、仕上げ圧延温度が1050℃を超えると、オーステナイト粒の粒度番号が6番以上の細粒を得ることができず、900℃未満ではレールの寸法精度が著しく低下する。そこで、仕上げ圧延温度は1050〜900℃に限定した。また、仕上げ圧延は1パスあたり20%の圧下率を超えると、寸法精度が低下するので、この圧下率を20%以下に限定した。
【0011】
このように仕上げ圧延でオーステナイト粒が細粒化した鋼において、圧延後の粒成長抑制のための急冷は、4℃/s未満の冷却速度では粒成長が進行するため、仕上げ圧延後の冷却速度は4℃/s以上に限定した。また、仕上げ圧延後の急冷の冷却停止温度は、950℃を超えると保定時に粒成長が起きてしまい粒度番号6番以上のオーステナイト粒を得ることはできず、700℃未満の低温に冷却すると、A1 点以下の温度であるためパーライト変態が起き、レール頭部の硬さが低下する。そこで、仕上げ圧延後の冷却の停止温度および保定温度は950〜700℃に限定した。保定は、0.5分未満ではレール長手方向の温度差が生じるため硬さ分布にばらつきが生じ、10分を超えると保定のための加熱装置等が必要になり、工程が複雑になってくる。そこで、保定時間は0.5〜10分に限定した。
【0012】
保定後の加速冷却は、2℃/s未満の冷却速度では耐摩耗性を得るための必要硬さHB 341以上を得ることはできず、15℃/sを超えた冷却速度では組織中にパーライト以外の異組織(マルテンサイト、ベイナイト)が生成し、著しく靭性が低下する。そこで、保定後の冷却は2〜15℃/sの冷却速度に限定した。また、この2〜15℃/sの加速冷却は、600℃以下の温度でレール頭部の頭表下10mm以上の範囲がパーライト変態を開始し、レール頭頂部の硬さがHB 341以上になるため、加速冷却の停止温度は600℃以下と限定した。
上記のような本発明法によれば、パーライトブロックを微細にし靭性が優れ、かつ高強度であるレールを製造することができる。
【0013】
【実施例】
表1に金属組織がパーライトを呈する供試鋼の化学成分を示す。表2にレールの仕上げ圧延条件およびその後の熱処理条件、ならびに頭頂表面下2mmにおける硬さ(Hv)と同5mmにおけるγ粒度を測定し、JIS3号のシャルピー衝撃試験を行った結果について示す。これらの本発明実施例として挙げたものは高強度を有しつつ靭性が向上した。
【0014】
【表1】
Figure 0003802604
【0015】
【表2】
Figure 0003802604
【0016】
【表3】
Figure 0003802604
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の方法で製造されたレールは、頭頂部が高硬度でかつ靭性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】レール頭部の頭表下5mmにおける加工および熱処理履歴を示す図。

Claims (1)

  1. パーライト組織を呈する成分を有するレール鋼片の熱間圧延において、レール頭部表面が1050〜900℃の温度範囲で1パスあたり20%以下の圧下率で1パスあるいは複数パスの仕上げ圧延を行った後、4℃/s以上の冷却速度で950〜700℃の間の温度まで冷却し、この950〜700℃の温度域で0.5〜10分間保定し、その後2〜15℃/sの冷却度で600℃以下の温度まで加速冷却することを特徴とするパーライト組織を呈するレールの製造方法。
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