JP3801257B2 - 壁孔壁破壊結合木材を製造する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木造建築物大宗を占める梁、桁、柱、土台、間住等の主要構造部材において、特に、壁孔壁破壊木材を貼りあわせ接合した梁、桁、柱、土台、間住等の主要構造部材とする壁孔壁破壊結合木材に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材は、自然の生産物であり、その生育環境により年輪密度、生長応力、アテの強弱等が大きく異なり、建築部材として木材乾燥を行うと大きく、そりや割れが入り、特に、梁、桁等の大断面材は、これらのそりや割れが、長年にわたっても生じないものが求められている。
【0003】
特に、最近は、梁、桁等の大断面材は、国内産のマツ材がマツくい虫の大災害を受けて、枯渇状態にあり、輸入材に頼っており、このことが、世界各地からの木材輸入に拍車を掛け、これがため、地球規模的な自然環境破壊論議が叫ばれたいる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、国内の人工造林地は、1000万haこえる「スギ」、「ヒノキ」、「カラマツ」等が間伐期を過ぎて主伐期に入ろうとしており、特に、成長の早い「スギ」や「カラマツ」は、梁、桁等の部材の大きさには達しているが、木材乾燥が困難な上に、乾燥した場合にも、割れやそり、くるい等が著しく、強度むらが多いため、梁、桁等の大断面材としての利用が妨げられるている。
【0005】
すなわち、「スギ」や「カラマツ」等の、いわゆる心持材を大断面の構造材として利用するには、そのままの形量で乾燥を行うと心材部の水分がぬけにくいため、天然乾燥を行うとしても、3〜5ヵ月の長い期間を必要とし、また、長期間を要しない人工乾燥を行った場合には、乾燥を早めるために、大規模な乾燥設備を必要とし、コスト上昇をまねいている。
【0006】
また、「スギ」や「カラマツ」等の乾燥を早める一方法として、製材した部材において乾燥を早め、この乾燥した木材部材を結合してなる結合材として利用する方法もあるが、この結合材として利用する際には、特に、短辺が15cm以上、断面積が300cm 2 以上のものである構造用大断面結合材については、「ねじれ」や、「くるい」を除去するために、フィンガージョイント法(部材を縦継ぎする方法)がとられているが、この方法をとることにより、強度が約30%程度低下するばかりでなく、また、この強度を高めようとすれば、断面積を大幅に増加しなければならず、そのための、加工工程、接着剤の使用、歩止り等を勘案すると、輸入外材による結合材に比較して割高になり、実用上、困難であるという欠点があった。
【0007】
特に、近年、木造建築物の主要構造部材についても、耐震性を重視するようになり、製材品の品質性能は、JASにおいて、長期許容応力度をカラマツとヒノキが90(kgf/cm2)スギが75(kgf/cm2)としているが、上記結合材の品質性能において、果してその基準値を越えることができるかどうか、疑問とされていた。
【0008】
また、上記結合材においては、主として製造コスト上の問題から、比較的厚い板(4〜5cm)や心持平角(12×16cm)等を、充分に乾燥が行われていないにもかかわらず、結合接着することがあり、このような場合に、この接合面に剥離の危険があった。すなわち、大断面構造用結合木材を実用化するには、前述の課題を低コストで解決しなければならないという問題があった。
【0009】
本願発明は、上記諸問題点を解決するためになされたものであって、国内で容易に入手可能な「スギ」や「カラマツ」等の、いわゆる心持材を利用した結合材を、耐震強度に耐え、かつ、長年の使用においても、接合面が剥離するのことない結合材を低コストで製造することができるようにしたものである。
【0010】
本願発明者は、既に、原木の木材を燻煙処理、遠赤外線処理を行う方法およびこの方法によって、木材を構成する細胞間の壁に存在する壁孔壁を破壊した木材について提案している(特願平5−308723号、特願平6−272954号、特願平6−272955号)。この方法は、スギ丸太を遠赤外線が増殖される炉において、2日間程度燻煙熱処理を施すことによって、被処理木材の壁孔壁が破壊され、それによって、その後に行われる自然乾燥(天然乾燥)においても、木材内の含水率が急速に低下させる方法を確立することができた。
そこで、この方法により得られた壁孔壁破壊木材を利用して、上記の欠点を解消した結合木材を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1に係る発明は、木質燃料によるガスで充満された処理炉内を60〜140℃前後に上昇、下降を繰り返し、このくりかえしを2〜3日間行い、約2日間徐冷製材後、天然乾燥又は人工乾燥することにより得られる壁孔壁破壊木材を接着剤により接合してなる壁孔壁破壊結合木材を製造する方法である。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1記載の壁孔壁破壊結合木材を製造する方法において、前記壁孔壁破壊結合木材は、壁孔壁が破壊した大径材を製材した心持角材を、所定の乾燥の後、接着剤で接合して製造されたものであることを特徴とする。
【0012】
本願請求項3に係る発明は、壁孔壁を破壊した中径材丸太から心持平角材を製材し、所定の乾燥後、これを張り合せて接合した請求項1に記載の壁孔壁破壊結合木材を製造する方法である。
本願請求項4に係る発明は、前記請求項1記載の壁孔壁破壊結合木材を製造する方法において、前記壁孔壁破壊結合木材は、壁孔壁を破壊した平割材を結合したものである。
本願請求項5に係る発明は、前記請求項1記載の壁孔壁破壊結合木材を製造する方法において、前記壁孔壁破壊結合木材は、壁孔壁を破壊した板材を接合したものである。
【0013】
【実施例】
〔壁孔壁破壊木材の生成〕
まず最初に、本発明に係る壁孔壁破壊木材について説明する。
このような壁孔壁破壊木材は、スギ材に、以下のような処理を施すことによって生成される。
【0014】
図8は、木材の細胞間の壁孔を破壊する処理炉の側断面図であり、図8中、符号101は、空気吸入口、102は、木質燃料、103は燃料投入口、104は、ロストル、105は、高密度溶岩等の材質からなる遠赤外線増殖用セラミックス材、106は、熱風を通す風道、107は、全体を風雨から守る屋根、108は、燃焼室側加熱室127の壁面、109は、炉壁体を構成するコンクリート製のボックスカルバート、110は、処理炉127内の熱を外に逃がさないようにするガラスウール断熱材、111は、処理炉127内の熱を遠赤外線に効率よく変換するセラミックスボード、112は、木材の間に熱の伝達をよくするために被処理木材116間に入れられる棧、113は、加熱室127内の温度を調節するための換気扇、114は、前記換気扇113の回転により、前記処理炉127の熱風を外部に排出する風道管、115は、被処理木材116を搬入、搬出する後部扉、116は、被処理木材である。また、117は、トロッコ台に設けられ、被処理木材116の荷崩れを防ぐ方立て、118は、同トロッコ用レール、119は、同トロッコ台である。
【0015】
さらに、120は、前記燃焼室側処理炉側面に開けられた熱風を通す風穴、121は、燃焼の火のこが、前記処理炉127内に入り込まないように設けられた白金網またはステンレス網である。また、122は遠赤外線増殖室であり、内部に高密度溶岩等の遠赤外線増殖用セラミック材123を充填して、高効率に遠赤外線が発生し、前記被処理木材116に効率よく幅射されるように構成される。124は、燃焼用ロストルであり、125は、耐火レンガ、127は、処理炉、128は、燃焼室である。
【0016】
次に、この炉装置を用いて、木材の壁孔壁を破壊する方法を説明する。
前記処理炉127の後方部扉115を開けてトロッコ119に棧積みした木材116を収納して扉を閉め、換気扇113を回転させながら、木質燃料に着火し、ロストル104上にあるセラミックス等105を赤熱させる。遠赤外線を多く含んだ熱風は風道106を通って隣室の遠赤外線増殖室122の中におかれた、セラミックス等123の空隙を通り抜けながら、処理炉127の風穴120を通り抜けて、処理炉にたまり、木材を加熱する炉内に差し込んだ温度センサーを見ながら木質燃料の補給を空気吸入口101の開閉を行って、処理炉の温度を所望の温度範囲に調節を行う。
【0017】
この温度の調節に関しては、処理炉を遠赤外線増殖用のセラミック又は密度の高い溶岩等123に蓄熱させる構造のものを使用したので、木質燃料の燃焼による加熱むらを減少させることができる一方、夜間における燃料の補給をしなくても、処理炉内の温度を急俊に上昇せしめることが可能になった。また、これによって、処理室内の温度降下も低減することができ、したがって、夕方退社する際に丸太の切れ端等の火持ちのよい燃料を補給し、火が消えない程度に空気吸入口の開きを小さくして退社し、翌朝出社時には、60℃前後に処理炉内の温度になっている炉に対し、再び木質燃料を補給すると直ちに140℃前後に上昇し、日中は2時間おき位にセンサー温度を確認する程度ですむ。
【0018】
このように、処理炉内は、木質燃料によるガスで充満されると共に、処理炉内は、60〜140℃前後に上昇、下降を繰り返し、このくりかえしを2〜3日間行ってから、前記空気吸入口101を密閉し、約2日間位かけて徐冷して木材の内部温度が常温に近づいた時に、炉外に取り出し、必要に応じて小割り製材を行い、天然乾燥又は人工乾燥機に入れて乾燥させる。
図5(A)〜(D)は、上記の処理を行なった後、製材した、米マツ平角(12×30×400)3本、スギ心持角(13×16×400)1本、スギ二つ割平角(12.5×16×400)6本、スギ平割(4.8×12×400)33本を、野天にシートをかけて天然乾燥を行ない、24日間の含水率の変化を示したものである。
【0019】
図5(A)〜(D)から明らかなように、いずれも処理された製材品は、その含水率が、20%以下に下がっていることが知りうる。
この処理が行われたスギ中目材の製材により、処理のものと、未処理のものとを比較すると、未処理のものは、製材すると生長応力により外側に弓なりにそりが生じ乾燥させると更に曲りが大きく現れるが(図3(A))熱処理を行ったスギ中目材は殆ど曲りが生じない(図3(B))。
【0020】
すなわち、スギ心持角の未処理材を天然乾燥させると、生長応力と、乾燥応力とにより、乾燥の結果、20〜25%の含水率になると、ほとんどの部材に、干割れが生じるが(図4(A))、処理木材は、背割りを入れなくても、含水率が20〜25%に低下しても、干割れは、ほとんど発生せしないことが知りうる(図4(B))。このことは、この壁孔壁破壊木材を、貼りあわせて結合部材として、接着するには、誠に好都合である。
【0021】
また、図1は、上記処理が行われたスギ材の電子顕微鏡写真である。
この電子顕微鏡写真が示すように、スギ材を構成する細胞間の壁孔壁が、破壊され、壁孔が、完全に開いた状態になっていることが伺い知れる。したがって、後述するように、この処理スギ材に接着剤を適用すれば、使用する接着剤は、これらの開口した壁孔に沁み込んで、接着が完全になることは想像に難くない。
【0022】
〔結合木材の生成〕
そこで、上記のようにして得られた壁孔壁破壊木材(スギ中目材および米マツ)を用いて、上記の処理を行ない、辺材及び心材の壁孔壁を破壊させた後、木材乾燥を促進させ、それらの部材を用いて、レゾールシノール接着剤で結合木材を制作した。すなわち、上記のように、明らかに含水率の減少が見られる処理木材を用いて、これを貼りあわせて結合木材として、その強度を検証した。
【0023】
構造用結合木材を製造する場合には、代表的には、▲1▼大径材から一般的な梁を作る場合(図6(A))、▲2▼中目材(末口径20〜24cm位)の丸太から厚さ12cm、幅15cmの心持材平角を製材し、乾燥後くるいを除去して、レゾールシノールで複数はり合せて作った場合(図6(B))、▲3▼末口径34〜36cm位の丸太から厚さ4cm、幅30cmの厚板を製材し、乾燥後くるいを除去してレゾールシノールで、二面接着して作った場合(図6(C))、▲4▼いわゆる中目材から所望の平割材を製材し、上、下表面には比較的目づみ材を配置して作る場合(図6(D))等があるが、本実施例においても、これらの代表的な結合材の製造に準じて、それぞれの大きさの結合材を作り、その強度を計った。
【0024】
すなわち、図6(A)は、大径材から厚さ12cm、幅30cm、長さ4mの一般的な梁を作る場合を示したもので、このようにして作られた結合木材は、大断面であるため、一般に乾燥がおそく、また、幅面に大きな干割れが入りやすいので、通常は、幅面を中央から製材し、乾燥が終わってから、多少のそりを削り落として、接着面(一面)にレゾールシノール樹脂を塗布し、10kg/cm2位の圧締を行なって常温で硬化させて作ることとされている。したがって、本実施例においても、このような状態において結合木材(A)を作り、その強度を検証した。
【0025】
また、図6(B)に示す、末口径20〜24cm位の丸太から厚さ12cm、幅15cmの心持材平角を製材し、乾燥後くるいを除去して、レゾールシノールで複数はり合せて作る場合には、乾燥が終わってから、多少のそりを削り落として、接着面(一面)にレゾールシノール樹脂を塗布し、10kg/cm2位の圧締を行なって常温で硬化させて作ることとされている。したがって、本実施例においても、そのような状態において結合木材(B)を作り、その強度を検証した。
【0026】
図6(C)は、末口径34〜36cm位の丸太から厚さ4cm、幅30cmの厚板を製材し、乾燥後くるいを除去してレゾールシノールで、二面接着して作ることとされている。したがって、本実施例においても、そのような状態で結合木材(C)を作り、その強度を検証した。
なお、本実施例における厚板からの結合木材(C)は、角材ではないため、部材の乾燥は非常に早く、この結合木材(C)が、所望の強度を獲得できれば、実用化において優れたものとなる。
【0027】
図6(D)は、いわゆる中目材から所望の平割材を製材し、上、下表面には比較的目づみ材を配置して結合木材(D)を作る場合を示したもので、このようにして作られた結合木材(D)を用いて、その強度を検証した。このようにして作られた結合木材(D)は、容易に入手できる平割材を活用して、その強度を人工的にあげることができるので、集成とは異なり、心材の厚さ等は不規則になってもよく、また、この製造方法によれば、部材の乾燥は最も早いものとすることができる。
【0028】
〔強度試験〕
このようにして得られた結合木材について、横架材としての、実大破壊試験を行なった。
試験条件は、以下のとおりである。
1.試験体
樹種:杉および米松
寸法:長さ3mおよび4m
数量:合計35本
2.試験機および計測機器
l)試験機
万能試験機(島津製作所)UEH 200A
容量200tf
ストローク300mm
2)計測機器
電気式変位形(共和電業)DT200A
ストローク200mm
データロガー(日本電気三栄)7V14
パーソナルコンピューター(NEC)PC−9801
【0029】
3.試験方法
l)試験方法
試験体の設置は、万能試験機のテーブル上に置かれた鋼製梁(長さ725cm、梁せい50cm、梁幅40cm、ウェブ厚1.2cm 2枚、フランジ厚4cm)上に、鋼製のピン、ローラーで支持させるというものである。
【0030】
試験は、日本農林規格の曲げA試験に従って、長さ3mの部材については試験体の支持点問距離(スパン)を270cm、荷重載加点を梁中央より30cmとし、長さ4mの部材については試験体の支持点間距離(スパン)を360cm、荷重載加点を梁中央より40cmとした。荷重振り分け用のH型鋼およびこのH型鋼の支点に用いた鋼製支承の重量は合はせて67.5kgfである。
加力は、電動式油圧ポンプにより、平均荷重速度を150kgf/cm2以下程度になるようにして行なった。
【0031】
2)測定方法
測定は、パソコンのキーを、l秒間にl回程度押す毎に、その時の荷重および載加点と梁中央の変位を取り込んだ。
4.試験日
1995年9月29、30日
5.試験結果
l)荷重変位関係荷重変位曲線を、図7に示す。
2)試験結果
最大荷重:実験結果から直接読みとった値に、荷重振り分け用のH型鋼と鋼製支承の重量67.5kgfを加えたものである。
曲げ強さ、曲げヤング係数:構造用大断面集成材の日本農林規格で規定されている曲げA試験による。ヤング係数については、3測点で得られた結果の平均値とした。
【0032】
試験結果を、表1に示す。
【表1】
図7(A)および表1に示す実大破壊試験の結果から、米マツの梁材(12×30×400cm)を熱処理したものは、現在では、住宅などで一般的に使用されている並材のJASの許容応力度は95kg/cm2であり、これは、最大応力度372kg/cm2の3分の1を十分にクリアーするものである。したがって、前述のスギ材からなる結合木材が、この米マツと比較して、実用に耐えうるものかどうかを検討した。
【0033】
スギの心持平角2本をレゾールシノールで結合した結合木材の(寸法:12×15×2×400cm)実大破壊試験結果は、図7(B)および表1のとおりである。スギのJASの許容応力度は75kg/cm2であり、最大応力度326kg/cm2の3分の1を十分にクリアーしている。
【0034】
スギの心割材をもとにもどして接着した結合木材(図6(A)の方法による梁材)であり(寸法:12×15×2×400cm)、その実大破壊試験結果は、図7(C)および表1のとおりである。スギのJASの許容応力度は75kg/cm2であり、最大応力度256kg/cm2の3分の1を十分にクリアーしている。
【0035】
スギの平割材を8枚レゾールシノールで結合させた結合木材(図6(D)の方法による梁材)であり(寸法:12×30×400cm)、その実大破壊試験結果は、図7(D)および表1のとおりである。スギのJASの許容応力度は75kg/cm2であり、最大応力度334kg/cm2の3分の1を十分にクリアーしている。この製造方法によると、上下表面部材を配慮すると更に強度を増加させることも可能である。
【0036】
米マツに近い強度が得られたのは、縦継ぎを行なわず結合できたことが大きな要因と考えられる。すなわち、この点に関し、処理前後の動的ヤング係数を検証した結果、上記の処理による力学的な変化は見い出し難いことが知りえた。
こ結果を表2に示す。
【表2】
【0037】
一般に、木材に対し、100℃以上の熱処理を行うと、木材の主要成分が変性し、熱処理材は、重量減少とともに曲げヤング係数、曲げ強さが低下すると報告されており、熱処理材は、梁、桁等の大断面材には不向きであるとされていたが、表2の結果からも明らかなように、上記の処理炉を用いて生成された木材にあっては、処理前後の動的ヤング係数には殆ど変化は見られず、処理による力学的な質的差異はないことが知りうる。
【0038】
したがって、この壁孔壁破壊木材を使用して、大断面構造用木材とし、または、これらの木材を結合して、大断面構造用結合木材として使用すれば、これまでの結合木材の使用に際してのように、ボールト締め等が必要でなくなり、また、心持角においても、背割れを入れずに、干割れ等が発生しない大断面構造用木材とすることができる。さらに、このような木材にあっては、曲りやそり等も少ないため、これを、大断面構造用結合木材として使用する場合にも、フィンガジョイント等は必要とせず、接着剤のみにより結合ができるようになり、この点において、加工コストを大幅に削減することができ、しかも、製品の含水率が平均化され、強度のばらつきが少なく、耐震構造に富む大断面構造用結合木材とすることができる。
【0039】
すなわち、この方法による結合木材は、小さい部材を接着により一体化して、大断面のムク材(一本物)と同等の強度を人工的に作ろうとするものであるということができ、低コストで一体化ができ、大径材と同じ用途に利用されることになり、比較的小径木であっても、新しい用途の拡大が期待される。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、スギ中目材や人工カラマツ等がくるいや、割れ、ねじれが少なく、乾燥も容易なため、これまでの結合材加工のような大規模な設備も必要なく、低コストでしかも原料は豊富にあるので、木造建築物の主要構造材として大量に新しい需要が見込めるようになった。
【0041】
また、熱処理を行なっていることと、複数の結合木材であるため、施工後のくるいが少なく、寸法が安定していて、強度計算が可能となり、在来工法とパネル工法を組み合わせた新規格住宅の工場生産も可能になる。
【0042】
マツの梁材に比べて、スギは比重が軽いため、取り扱いが楽であり、三階建等耐震設計上有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、スギの壁孔壁破壊木材の電子顕微鏡写真。
【図2】 図2は、スギ中目材(未口18cm×長さ3cm)を半分に切断し一方を遠赤外線燻煙熱処理をかけ、他方は無処理のまま、各々厚さ18×幅100×長さ150cmの小幅に製材し、室内(5〜15℃)で天然乾燥を行なった時の含水率の減少経過を示す図。
【図3】 図3(A)は、スギ中目の無処理材の生長応力によるそり、同(B)は、熱処理材はそりが見られないことを示す図。
【図4】 図4(A)は、スギの無処理心持角の干割れ、同(B)は、熱処理を行なったスギ心持角で含水率が25%位になっても干割れは殆ど見られないことを示す図。
【図5】 図5(A)は、マツの平角を熱処理して天然乾燥を行なった。同(B)は、スギ中目丸太を熱処理して13×16の心持角の天然乾燥の結果。同(C)は、スギ中目丸太厚さ13cmの盤に製材してから熱処理を行ない樹心から2つ割りにして天然乾燥を行なった。同(D)は、スギ大径木を厚さ13cmの盤に製材してから、加熱処理を行ない、平割りに製材して天然乾燥を行なった結果、含水率の低下を示す図。
【図6】 図6(A)〜(D)は、構造用結合木材の製造方法を示す図。
【図7】 図7(A)〜(D)は、実大実験における荷重変位曲線を示す図。
【図8】 図8は、壁孔壁破壊木材を生成する処理炉の概略を示す図。
【符号の説明】
101・・・空気吸入口、
105・・・セラミックス等、
106・・・風道、
113・・・換気扇、
115・・・後方部扉、
116・・・被処理木材、
116・・・木材、
119・・・トロッコ、
120・・・風穴、
122・・・遠赤外線増殖室、
123・・・セラミックス等、
123・・・遠赤外線増殖用セラミック材、
123・・・溶岩等、
127・・・処理炉、
127・・・燃焼室側加熱室、
Claims (5)
- 木質燃料によるガスで充満された処理炉内を60〜140℃前後に上昇、下降を繰り返し、このくりかえしを2〜3日間行い、約2日間徐冷製材後、天然乾燥又は人工乾燥することにより得られる壁孔壁破壊木材を接着剤により接合してなる壁孔壁破壊結合木材を製造する方法。
- 前記壁孔壁破壊結合木材は、壁孔壁が破壊した大径材を製材した心持角材を、所定の乾燥の後、接着剤で接合して製造されたものであることを特徴とする請求項1記載の壁孔壁破壊結合木材を製造する方法。
- 壁孔壁を破壊した中径材丸太から心持平角材を製材し、所定の乾燥後、これを張り合せて接合した請求項1に記載の壁孔壁破壊結合木材を製造する方法。
- 前記壁孔壁破壊結合木材は、壁孔壁を破壊した平割材を結合した請求項1記載の壁孔壁破壊結合木材を製造する方法。
- 前記壁孔壁破壊結合木材は、壁孔壁を破壊した板材を接合した請求項1記載の壁孔壁破壊結合木材を製造する方法。
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