JP3800390B2 - 電気二重層コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2次電池の代替として使用され大容量を特徴とする電気二重層コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電容量の大きなパワー用の電気二重層コンデンサは、一般に、円筒型(又は、巻回型)と呼ばれ、メモリのバックアップ電源として用いられるコイン型とは区別されている。円筒型の電気二重層コンデンサの基本的な形態は、箔巻円筒型アルミニウム電解コンデンサと類似した構造である。
【0003】
さらに詳しくは、図3及び図4に示すように、アルミニウム箔等の金属箔、パンチングメタルなどからなる集電体1の一方の面に、活性炭と結着剤と導電剤との混合物質からなる分極性電極層2を形成した1対の電極を用意し、いずれか一方を陽極電極3とし、他方を陰極電極4としている。これらの陽極電極3と陰極電極4を、それぞれの分極性電極層2が対向するように配置し、また、集電体1の他方の面である電極露出面5に、それぞれリード端子6A、6Bを取付け、分極性電極層2間及び電極露出面5間に、それぞれ絶縁体であって、電解液の含浸後に電流通路を有する不織布からなるセパレータ7、8を配置して渦巻状に巻回する。このようにして巻回された外周には、巻き解けがないように粘着テープ9を用いて固定してコンデンサ素子10を形成している。
このコンデンサ素子10を、有底円筒状の金属ケース11内に電解液とともに収納し、封口体12にて封口し、リード端子6A、6Bを封口体12の貫通孔から外に引き出して電気二重層コンデンサ13としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
セパレータ7、8は、通常、合成繊維系やパルプ原料である天然繊維系の多孔質の不織布が使用されており、分極性電極層2間のセパレータ7は、専ら電解液を保持して電解液中のイオンによる電子伝導が行われるような役割を有し、電極露出面5間のセパレータ8は、専ら電気絶縁の役割が課せられている。
しかるに、従来の電気二重層コンデンサでは、生産性の面から、分極性電極層2間のセパレータ7と電極露出面5間のセパレータ8がともに同一構成のものが用いられて、陽極電極3、陰極電極4とともに渦巻状に巻回される。
【0005】
電気二重層コンデンサのエネルギーの出し入れがスムーズであるためには、即ち、低抵抗化にして充放電を速やかにするためには、分極性電極層2間のセパレータ7をできるだけ薄く、かつ、低密度にする必要がある。また、電極露出面5間は、セパレータ8が薄すぎたり、低密度過ぎると、集電体1のカット時のとげによってセパレータ8に破損が生じて対向する電極露出面5間の短絡等による漏れ電流によって、蓄積されたエネルギーが放電してしまう。さらには、巻き込むときに伸びて破損して巻取れなくなるなどの問題があった。
【0006】
本発明は、エネルギーの出し入れがスムーズで、しかも、蓄積されたエネルギーの損失を可能な限り抑制するようにした電気二重層コンデンサを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気二重層コンデンサに求められる特性の1つである低抵抗化を成し遂げるために、陽極電極と陰極電極の分極性電極層間に挾持されるものとして薄い低密度のセパレータを用いる。また、電極露出面間に挾持されるものとして非多孔質で電解液の含浸後も電流通路のない絶縁フィルムを用いる。この絶縁フィルムは、多孔質ではないので、薄くても引っ張り強度が高く、巻取り時に分極性電極層間のセパレータへの負担が低減することから、同セパレータが破損しにくく、しかも、両方にセパレータを用いるよりも、より薄くて低密度のセパレータを用いることができ、より低抵抗の電気二重層コンデンサが得られる。しかも、セパレータと絶縁フィルムがともに薄くできるので、電気二重層コンデンサの全体の形状の小型化ができる。
さらには、絶縁フィルムは、集電体のバリによっても破損しにくく、その結果、電極露出面の短絡による漏れ電流もなくなる。
【0008】
セパレータに使用される材質は、少なくとも10重量%以上の叩解可能なセルロース繊維原料を使用して抄造されたものであり、溶剤紡糸レーヨンの単体又は溶剤紡糸レーヨンと天然繊維を原料として混抄された不織布がよい。
【0009】
また、これ以外でもマニラ麻、クラフト紙等の天然繊維系や、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維系、ガラス繊維等の鉱物繊維系等の単体又は混抄を使用することができる。以上のような物性値、材質、原料であることが望ましいが、これ以外のセパレータとして機能する素材と絶縁性を保つ素材との組み合わせであれば、本発明としての効果が期待できる。
【0010】
また、セパレータと絶縁フィルムの厚さは、同一である必要がなく、異なる厚さのものを用いることによってより効果が現われることがある。低密度のセパレータよりも絶縁フィルムの厚さを薄くすることで、性能上重要な低密度のセパレータに多くの電解液が保持され、寿命が改善される。絶縁フィルムをより薄くすることにより、金属ケース内部の陽極電極、陰極電極等の収納効率を増大させる効果がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1において、3は陽極電極、4は、陰極電極である。これら陽極電極3と陰極電極4は、集電体1の片面に分極性電極層2を積層してなるものである。
さらに詳しくは、前記分極性電極層2は、大面積を持った分極性の電極となるための物質、例えば、活性炭、カーボンブラックなどに導電性を増大させるために、金属体、炭素、カーボン材を添加し、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(以下PVDFと略す)を有機溶剤、例えばNメチルピロリドン(以下NMPと略す)と混練し、スラリー状にする。
【0012】
ただし、主成分である活性炭の代わりとして、大表面積をもつ金属体、金属酸化物、酸化ルテニウム、黒鉛、ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール、各種導電性ポリマーが使用可能である。
【0013】
前記集電体1は、アルミニウム、タンタル、チタン、ニオブ、ステンレススチール、ニッケル等の高耐食性金属の箔、多数の極細孔を有するパンチングメタル、薄板、導電性ゴム、導電性プラスチック等からなる。この集電体1は、活性炭等から集電する効果を持たせるために、表面を粗面化することが望ましい。通常、アルミ電解コンデンサで用いられるような電気化学的なエッチング処理をした5〜30μm厚程度のアルミニウム箔が用いられる。
この集電体1の片面に、前記分極性電極層2を構成するスラリーを、塗工装置(コーター)を用いて付着させた後、50〜300℃で乾燥する。
【0014】
このようにして形成された陽極電極3と陰極電極4のそれぞれの集電体1の電極露出面5側に、引き出し用のリード端子6A、6Bをそれぞれ電気的に接続する。このリード端子6A、6Bをそれぞれを接続した陽極電極3と陰極電極4とを、それぞれの分極性電極層2が向かい合うように配置し、この分極性電極層2間にセパレータ7を介在する。また、分極性電極層2の反対側の集電体1が向かい合う電極露出面5間には、非多孔質で電解液を含浸後も電流通路のない絶縁フィルム18を介在させる。
【0015】
前記セパレータ7には、前述のように、低抵抗化を成し遂げるために薄くて低密度(0.01〜0.8g/cm3)のもの、例えば、使用される材質は、低密度セパレータとして、少なくとも10重量%以上の叩解可能なセルロース繊維原料を使用して抄造されたもので、溶剤紡糸レーヨンの単体又は溶剤紡糸レーヨンと天然繊維を原料として混抄された不織布が用いられる。
【0016】
また、これ以外でもマニラ麻、クラフト紙等の天然繊維系や、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維系、ガラス繊維等の鉱物繊維系等の単体又は混抄を使用することができ、さらに、これ以外のセパレータ7として機能する素材と絶縁性を保つ素材との組み合わせであれば、本発明のセパレータ7として用いることができる。このセパレータ7の厚さは、10〜300μmの範囲で選択でき、強度の面から絶縁フィルム18と同等又は厚くすることが好ましい。
【0017】
前記絶縁フィルム18には、薄くても高引っ張り強度のものとして、例えば、ポリイミド、PPS(ポリフェニレンサルファイト)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、PVC(ポリ塩化ビニール)、フッ素樹脂、ガラス繊維、紙素材、アセテート布、ノーメックス布又は綿布の単体を用いてもよいが、ガラス繊維、紙素材、アセテート布、ノーメックス布又は綿布に、ポリイミド、PPS、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、PVC、フッ素樹脂等の絶縁性樹脂を含浸させたものを用いてもよい。
本発明に係る絶縁フィルム18は、電解液を吸収しないもの又は吸収しにくいものが好ましく、これによって、電解液をセパレータ7に保持させやすくなるので、電気二重層コンデンサの寿命も向上する。さらには、この絶縁フィルム18の厚さは、1〜250μmの範囲で選択することができ、収納効率からセパレータ7と同等又は薄くすることが好ましい。
【0018】
以上のように構成された陽極電極3、セパレータ7、陰極電極4、絶縁フィルム18を順次積層しつつ渦巻き状に巻き込み、最後に粘着テープ9で巻き解れのないように外周を固定してコンデンサ素子10を形成する。
また、前記絶縁フィルム18は、陽極電極3と陰極電極4との間に単に挟み込むだけでもよいが、円筒形に巻き込むときに巻き解れがないように、図1に示すように、両面に接着剤層18Aを塗布した粘着テープ形式のもの、陽極電極3又は陰極電極4の集電体1に熱融着、冷間圧延で予め一体化しておいたもの等を用いてもよい。
この絶縁フィルム18は、陽極電極3、陰極電極4よりも幅をやや広くしておき、縁部がわずかはみに出す程度にすると、陽極電極3と陰極電極4との間の絶縁性が向上するという望ましい効果が得られる。
【0019】
このようにして形成されたコンデンサ素子10は、50℃以上300℃以下の温度で乾燥した後、図4と同様に、有底円筒状の金属ケース11内に電解液とともに収納し、封口体12にて封口し、リード端子6A、6Bを封口体12の貫通孔から外に引き出して電気二重層コンデンサ13とする。
電解液は、例えば、4級オニウム塩又はリチウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩を溶解したプロピレンカーボネイト、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネイト、ブチレンカーボネイト、スルホラン又はその誘導体との混合体、アセトニトリル等からなる。
【0020】
図2は、図3に示す従来型のものと、図1に示す本発明によるものとの性能を比較したものである。なお、陽極電極3と陰極電極4は、30g/m2の分極性電極層2を塗布して形成したものを、幅15mm、長さ100mm用い、また、電解液として、テトラエチレンアンモニウムテトラフルオロボレイト1.0モル/リッターを、プロピレンカーボネイトに溶解させたもの200μl注入したものを用いた。
【0021】
図2において、従来例1は、陽極電極3と陰極電極4の分極性電極層2間と電極露出面5間にともに、厚さ50μmで密度0.6g/m3のマニラ麻からなるセパレータ7、8を介在したものであり、静電容量1.0F、内部抵抗300mΩ、ショート率0.5%である。
これに対し、本発明1は、陽極電極3と陰極電極4の分極性電極層2間にセパレータ7が従来例と同一のマニラ麻のものが用いられ、電極露出面5間に従来例1のセパレータ8より十分に薄いの厚さ30μmのポリイミドテープからなる非多孔質で、電解液含浸後も電流通路のない絶縁フィルム18を用いたものであり、静電容量が1.2Fに、内部抵抗が290mΩに、ショート率が0.1%にいずれの特性も向上している。
【0022】
従来例2は、分極性電極層2間と電極露出面5間にともに、クラフト紙のセパレータ12を用い、本発明2は、分極性電極層2間に従来例と同一のクラフト紙のセパレータ7が用いられ、電極露出面5間に従来例2のセパレータ8より十分に薄い厚さの30μmのポリイミドテープからなる非多孔質で、電解液含浸後も電流通路のない絶縁フィルム18を用いたものであり、本発明2は、いずれの特性も従来例2よりも向上している。
【0023】
従来例3、4と本発明3〜7とは、分極性電極層2間にレーヨン系のセパレータ12を用いたものであり、これらのうち、従来例3では、厚さ50μmのレーヨン系のセパレータ12を用いているが、本発明3〜7では、厚さ50μmのレーヨン系のセパレータ12を用いた例がないので、特性の比較はしなかった。
従来例4は、分極性電極層2間と電極露出面5間にともに、厚さ40μmのレーヨン系のセパレータ7を用い、本発明3は、分極性電極層2間に従来例と同一の厚さ40μmのレーヨン系のセパレータ7を用い、電極露出面5間に厚さがさらに薄い30μmのポリイミドテープからなる非多孔質で、電解液含浸後も電流通路のない絶縁フィルム18を用いたものであり、本発明3が従来例4よりもいずれの特性も向上している。
【0024】
本発明4は、本発明3よりも絶縁フィルム18の幅を1mmだけ広くしたものであるが、この結果、本発明3よりもショート率が向上している。
本発明5、本発明6、本発明7は、それぞれ非多孔質で、電解液含浸後も電流通路のない絶縁フィルム18として厚さ40μmのPPSテープ、厚さ30μmのポリプロピレンテープ、厚さ20μmのアセテート布を用いた例であり、特に、本発明7の絶縁フィルム18として厚さ20μmのアセテート布を用いた例が、厚さを薄くしながら特性が最も向上している。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、陽極電極3と陰極電極4の分極性電極層2を、セパレータ12を介在して対向させ、電極露出面5間に非多孔質で、電解液含浸後も電流通路のない絶縁フィルム18を介在し、これらの陽極電極3、陰極電極4、セパレータ7、絶縁フィルム18を渦巻き状に巻回したので、集電体1のとげ等によって電極露出面5間の短絡による漏れ電流がほとんどなくなり、蓄積されたエネルギーの放電を防止でき、また、巻取り時に分極性電極層2間のセパレータ7の破損がなく、しかも、セパレータ7と絶縁フィルム18がともに薄くできるので、電気二重層コンデンサの全体の形状の小型化ができる。
【0026】
セパレータ7と絶縁フィルム18は、厚さの異なるもの、例えば、絶縁フィルム18の厚さをセパレータ7よりも薄くすることで、性能上重要な低密度のセパレータ7により多くの電解液が保持され、寿命がさらに改善される。絶縁フィルム18をより薄くすることにより、金属ケース11内部の陽極電極3、陰極電極4等の収納効率を増大させる効果がある。
【0027】
絶縁フィルム18は、陽極電極3、陰極電極4よりも幅をやや広くしておき、縁部がわずかはみ出す程度にすると、陽極電極3と陰極電極4との間の絶縁性が向上するという望ましい効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電気二重層コンデンサの主要な構成要素であるコンデンサ素子10の一実施例を示す分解拡大図である。
【図2】本発明品と従来品の特性の比較のための説明図である。
【図3】従来の電気二重層コンデンサの主要な構成要素であるコンデンサ素子10を示す分解拡大図である。
【図4】一般的な円筒型コンデンサの一部切り欠いた斜視図である。
【符号の説明】
1…集電体、2…分極性電極層、3…陽極電極、4…陰極電極、5…電極露出面、6A、6B…リード端子、7、8…セパレータ、9…粘着テープ、10…コンデンサ素子、11…金属ケース、12…封口体、13…電気二重層コンデンサ、18…絶縁フィルム、18A…接着剤層。
Claims (4)
- 一方の面に分極性電極層を形成し、他方の面を電極露出面とした1対の集電体を積層して渦巻き状に巻回し、これらの集電体のうちいずれか一方を陽極電極とし、他方を陰極電極とし、これら陽極電極と陰極電極のそれぞれの分極性電極層を対向させたその間と、陽極電極と陰極電極のそれぞれの電極露出面を対向させたその間とにそれぞれセパレータを介在してなる電気二重層コンデンサにおいて、前記分極性電極層間に、多孔質で含浸後の電解液を保持して電流通路の役割を果たすセパレータを介在し、前記電極露出面間に、非多孔質で電解液含浸後も電流通路のない絶縁フィルムを介在してなることを特徴とする電気二重層コンデンサ。
- セパレータは、密度が0.01〜0.8g/cm 3 の範囲内であり、少なくとも10重量%以上の叩解可能なセルロース繊維原料を使用して抄造されたものであり、溶剤紡糸レーヨンの単体や溶剤紡糸レーヨンと天然繊維を原料として混抄された不織布等のレーヨン系、マニラ麻やクラフト紙等の天然繊維系や、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維系、ガラス繊維等の鉱物繊維系などの単体又は混抄を使用してなり、絶縁フィルムは、ポリイミド、PPS(ポリフェニレンサルファイト)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、PVC(ポリ塩化ビニール)、フッ素樹脂、ガラス繊維、紙素材、アセテート布、ノーメックス布若しくは綿布の単体又はガラス繊維、紙素材、アセテート布、ノーメックス布若しくは綿布に、ポリイミド、PPS、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、PVC若しくはフッ素樹脂を含浸させたものからなることを特徴とする請求項1記載の電気二重層コンデンサ。
- 絶縁フィルムの厚さが1〜250μm、セパレータの厚さが10〜300μmであって、絶縁フィルムの厚さがセパレータの厚さよりも薄いものからなることを特徴とする請求項1又は2記載の電気二重層コンデンサ。
- 絶縁フィルムは、熱融着、冷間圧延又は接着剤にて陽極電極と陰極電極における集電体の電極露出面に貼着して陽極電極及び陰極電極と一体化してなることを特徴とする請求項1記載の電気二重層コンデンサ。
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