JP3800289B2 - 光変調デバイス及び表示装置並びに光変調デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射ミラーの変形によって入射光を変調して表示を行うための光変調デバイス及び表示装置並びに光変調デバイスの駆動方法及び製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、光を変調して表示を行うための光変調デバイスとしては、例えば、基板上に設けた電極に電圧を印加し、その静電力等によってミラーを傾斜させて入射光を変調させるものや、圧電体層を一対の電極膜で挟持した圧電素子上にミラーを設け、圧電素子を変形させることによりこのミラーを傾斜させて入射光を変調させるもの等が知られている。
【0003】
また、圧電素子を利用したものとしては、特表平9−504387号公報に見られるように、片持ち梁状の圧電素子の表面に薄膜等からなるミラー膜を形成し、圧電素子を変形させることによりこのミラー膜を屈曲させて入射光の方向を変えるものも提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような圧電素子を利用した光変調デバイスは、何れにしても、圧電素子を駆動することによりミラー膜を屈曲させて入射光を一方向に集光させることにより変調しているため、変調効率が悪いという問題がある。
【0005】
また、より細かい映像を投影するために一画素毎に入射光を階調させる場合があるが、従来の光変調デバイスでは、一画素内の圧電素子が一つであるため、圧電素子に印加する電圧を変化すれば可能であるが、制御系が煩雑になるという問題がある。
【0006】
また、特開平8−23500号公報に見られるように、一画素内に複数のミラーを設けて入射光を階調するものも提案されているが、2対の静電吸着電極を用いて1つのミラーを傾斜させるいわゆる静電型の光変調デバイスであり、各ミラーの駆動にはそれぞれ2つのドライバが必要となり、高密度にミラーを配置することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、変調効率を高めると共に、一画素毎に比較的容易に階調することのできる光変調デバイス及び表示装置並びに光変調デバイスの駆動方法及び製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、圧電体層及びこれを挟持する第1及び第2の電極とからなる圧電素子を有すると共に光を反射するミラー膜構造を有するミラー要素と、該ミラー要素に対応して設けられた駆動素子とを有する光変調デバイスにおいて、前記ミラー要素が一画素内に複数個設けられると共に前記各圧電素子が一画素を構成する領域の周縁部分に対向する端部で支持部を介して基板上に片持ち梁状態で支持されていることを特徴とする光変調デバイスにある。
【0009】
かかる第1の態様では、各画素内の複数個のミラー要素によって、入射光を各画素の外側に向かって分散して偏向することができ、変調効率が向上する。また、一画素内の複数のミラー要素を個別に選択的に駆動することにより比較的容易に階調することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、一画素内に設けられた複数の前記ミラー要素は、前記圧電素子の前記支持部とは面方向に相対向する領域で相互に分割されるように設けられていることを特徴とする光変調デバイスにある。
【0011】
かかる第2の態様では、各画素に入射する入射光を2方向以上に分散して偏向することができ、より確実に変調効率が向上する。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記圧電素子は前記基板側の一方面側には弾性板を有すると共に他方面側には前記ミラー膜構造を有することを特徴とする光変調デバイスにある。
【0013】
かかる第3の態様では、圧電素子の一方側に設けられた弾性板の端部に支持部が設けられているので、この支持部に対応する部分を支点として圧電素子が変形し、他方面のミラー膜構造が変形する。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記支持部は少なくとも前記弾性板及び前記圧電素子の一方の電極からなることを特徴とする光変調デバイスにある。
【0015】
かかる第4の態様では、弾性板及び圧電素子の電極を圧電素子に対向する領域から連続的に形成することにより、支持部を比較的容易に形成される。
【0016】
本発明の第5の態様は、1〜4の何れかの態様において、前記圧電素子の前記ミラー膜構造は、前記支持部とは反対面側の電極又はこの上に設けられた反射膜から構成されることを特徴とする光変調デバイスにある。
【0017】
かかる第5の態様では、圧電素子の第2の電極又は反射膜が光を反射する。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記基板はC−MOSトランジスタが形成された基板であり、前記駆動素子がC−MOSトランジスタであることを特徴とする光変調デバイスにある。
【0019】
かかる第6の態様では、基板に形成されたC−MOSトランジスタを介して各ミラー要素の圧電素子が駆動される。
【0020】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様の光変調デバイスと、光源と、この光源からの光を前記光変調デバイスに入射すると共に当該光変調デバイスの前記圧電素子の駆動時又は非駆動時の何れか一方の反射光のみを出射する光学系とを具備することを特徴とする表示装置にある。
【0021】
かかる第7の態様では、変調効率を向上した光変調デバイスを用いることにより、より鮮明な映像を投影できるとともに小型、省スペース化を可能とした表示装置が実現できる。
【0022】
本発明の第8の態様は、圧電体層及びこれを挟持する第1及び第2の電極とからなる圧電素子を有すると共に光を反射するミラー膜構造を有するミラー要素と、該ミラー要素に対応して設けられた駆動素子とを有し、前記ミラー要素が一画素内に複数個設けられると共に前記各圧電素子が一画素を構成する領域の周縁部分に対向する端部で支持部を介して基板上に片持ち梁状態で支持された光変調デバイスの駆動方法であって、各画素内に設けられた複数の前記ミラー要素を構成する前記各圧電素子の少なくとも一つに選択的に電圧を印加することを特徴とする光変調デバイスの駆動方法にある。
【0023】
かかる第8の態様では、各画素に入射する入射光を比較的容易に階調できる。
【0024】
本発明の第9の態様は、第8の態様において、前記各画素内に設けられた複数の前記ミラー要素を構成する前記各圧電素子を個別に選択的に電圧を印加して駆動させることにより、各画素からの出射光をデジタル的に複数段階に階調することを特徴とする光変調デバイスの駆動方法にある。
【0025】
かかる第9の態様では、各圧電素子を個別に選択的にオン、オフするのみで、各画素からの出射光を容易に階調できる。
【0026】
本発明の第10の態様は、第8又は9の態様において、前記各画素内に設けられた複数の前記ミラー要素を構成する前記各圧電素子に印加する電圧を変化させて前記各ミラー要素の変形量を制御することにより、各画素からの出射光をアナログ的に階調させることを特徴とする光変調デバイスの駆動方法にある。
【0027】
かかる第10の態様では、各画素からの出射光を無段階で階調することができ、より鮮明な映像を投影できる。
【0028】
本発明の第11の態様は、圧電体層及びこれを挟持する第1及び第2の電極とからなる圧電素子を有すると共に光を反射するミラー膜構造を有するミラー要素と、該ミラー要素に対応して設けられた駆動素子とを有し、前記ミラー要素が一画素内に複数個設けられると共に前記各圧電素子が一画素を構成する領域の周縁部分に対向する端部で支持部を介して基板上に片持ち梁状態で支持された光変調デバイスの製造方法であって、前記基板上に絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜上に犠牲層を成膜すると共に各画素内の前記圧電素子毎にパターニングする工程と、前記犠牲層の表面に沿って弾性板を形成後前記各圧電素子に対向する領域にパターニングする工程と、前記弾性板上に前記第1の電極、前記圧電体層及び前記第2の電極を順次積層すると共にパターニングして前記圧電素子を形成する工程と、前記第1の電極、前記弾性板及び前記絶縁膜をパターニングして前記駆動素子を露出する接続孔を形成する工程と、前記接続孔を介して前記第2の電極と前記駆動素子とを接続する配線電極兼反射膜を層間絶縁膜を介してパターン形成する工程と、前記犠牲層を除去する工程とを有することを特徴とする光変調デバイスの製造方法にある。
【0029】
かかる第11の態様では、各画素内に複数のミラー要素を比較的容易に形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0031】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光変調デバイスの概略を示す斜視図であり、図2は、その一画素内のミラー要素を示す上面図及び断面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の光変調デバイス10は、例えば、厚さが500μmのシリコン(Si)基板等からなるミラー基板11と、このミラー基板11上に2次元アレイ状に設けられたミラー要素20とからなる。
【0033】
各ミラー要素20は、例えば、図2に示すように、弾性板31上に形成された下電極膜32、圧電体層33及び上電極膜34を有する圧電素子30と、この圧電素子30の上電極膜34上に略全面に亘って設けられた反射膜35とを有する。このミラー要素20の表面は略矩形を有し、その一方の端部には、その一辺全体に亘って支持部21が設けられている。すなわち、ミラー要素20はこの支持部21を介してミラー基板11との間に所定の空間を保持した状態でミラー基板11上に支持されている。また、このようなミラー要素20は、一画素内に複数個、本実施形態では、2個設けられており、それぞれ支持部21とは反対側の端面が相対向するように配置されている。
【0034】
このような圧電素子30を支持する支持部21は、圧電素子30に対向する領域からミラー基板11上まで延設された弾性板31、下電極膜32及び後述する層間絶縁膜によって構成されている。また、ミラー基板11には、各圧電素子30を駆動するための、例えば、C−MOSトランジスタ等の駆動素子50が各圧電素子30に対応して設けられており、支持部21の各駆動素子50に対応する領域には、これら圧電素子30と駆動素子50とを接続するための接続孔22が形成されている。
【0035】
ここで、圧電素子30の上電極膜34は、各圧電素子30の個別の電極であり、各上電極膜34から延設された接続配線36と各駆動素子50とがこの接続孔22を介して電気的に接続されている。例えば、本実施形態では、反射膜35が上電極膜34と駆動素子50とを接続する接続配線36を兼ねており、この接続配線36が上電極膜34に対向する領域の反射膜35から所定幅で層間絶縁膜37を介して接続孔22まで延設されて駆動素子50と接続されている。
【0036】
一方、下電極膜32は、各圧電素子30の共通の電極であり、図示しないがミラー基板11上で各圧電素子30の下電極膜32と接続されている。なお、本実施形態では、下電極膜32を弾性板31上に形成するようにしたが、これに限定されず、下電極膜32が弾性板31を兼ねるようにしてもよい。
【0037】
また、このような本実施形態の光変調デバイス10の製造方法は、特に限定されないが、本実施形態では、以下の工程で製造した。なお、図3及び図4は、本実施形態の光変調デバイスの製造方法を示す断面図である。
【0038】
まず、図3(a)に示すように、ミラー基板11は、本実施形態では、C−MOSトランジスタからなる駆動素子50が設けられたシリコン単結晶基板であり、このミラー基板11上に絶縁膜12を形成する。この絶縁膜12は、後述する犠牲層60をエッチングする際に、そのエッチングを停止させるための膜であり、犠牲層60のエッチングを停止可能であればその材質は特に限定されず、例えば、本実施形態では、窒化シリコン(SiN)をCVD法によって約0.5μmの厚さで形成した。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、この絶縁膜12上に全面に亘って犠牲層60を、例えば、1〜3μm程度の厚さで形成後、一画素内の圧電素子30に対応する領域毎、すなわち、本実施形態では、2つの圧電素子30に対応する領域毎にパターニングする。
【0040】
犠牲層60の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリシリコン、リンドープ酸化シリコン(PSG)又はボロン・リンドープ酸化シリコン(BPSG)等を用いることが好ましく、本実施形態では、エッチングレートが比較的速いPSGを用いた。
【0041】
次に、図3(c)に示すように、犠牲層60上に沿って、弾性板31を、例えば、0.5〜2μm程度の厚さで形成後、各圧電素子30毎にパターニングする。また、同時に、各圧電素子30の駆動素子50に対向する領域の弾性板31に、絶縁膜12を露出する露出孔31aを形成する。この露出孔31aは、上電極膜34と駆動素子50とを電気的に接続するための接続孔22の一部を構成する。このような弾性板31の材料は、弾性変形可能で且つ所定の剛性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、ジルコニウム層を約1μmの厚さで形成後、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウムからなる弾性板31とした。
【0042】
次に、図3(d)に示すように、弾性板31及び犠牲層60上に亘って、200〜600nmの厚さ、例えば、本実施形態では、膜厚300nmで下電極膜32を形成すると共に各圧電素子30毎にパターニングする。また、同時に、弾性板31の露出孔31aに対向する領域の下電極膜32に、この露出孔31aに連通する第1の連通孔32aを形成する。この下電極膜32の材料としては、イリジウム又は白金等が好適である。これは、後述するように、スパッタリング法やゾル−ゲル法で圧電体層33を形成する際、成膜後に大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で600〜1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるからである。すなわち、下電極膜32の材料は、このような高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければならず、殊に、圧電体層33としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた場合には、酸化鉛(PbO)の拡散による導電性の変化が少ないことが望ましい。これらの理由から、本実施形態では、イリジウムをスパッタリング法により形成することにより下電極膜32とした。
【0043】
次に、図4(a)に示すように、下電極膜32上に全面に亘って、例えば、厚さ0.4〜3μm、本実施形態では、1.5μmの圧電体層33及び例えば、厚さ30〜100nm、本実施形態では、50nmの上電極膜34を順次形成すると共に、これらを各圧電素子30毎、すなわち、犠牲層60上の下電極膜32に対向する領域にパターニングする。また、このとき弾性板31の露出孔31aに対向する領域の下電極膜32及び絶縁膜12を除去して駆動素子50を露出する接続孔22とする。なお、このパターニング方法は、特に限定されず、例えば、RIE(反応性イオンエッチング)又はイオンミリング等で行えばよい。
【0044】
ここで、圧電体層33の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料、チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸バリウムとチタン酸ストロンチウムの混晶[(Ba,Sr)TiO3(BST)]等が好ましく、本実施形態では、PZT系の材料を使用し、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層33を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて形成した。なお、この圧電体膜33の成膜方法は、特に限定されず、例えば、スパッタリング法又はMOD法(有機金属熱塗布分解法)等のスピンコート法により成膜してもよい。
【0045】
さらに、ゾル−ゲル法又はスパッタリング法もしくはMOD法等によりチタン酸ジルコン酸鉛の前駆体膜を形成後、アルカリ水溶液中での高圧処理法にて低温で結晶成長させる方法(ゾル−ゲル水熱法)を用いてもよい。
【0046】
何れにしても、このように成膜された圧電体層33は、バルクの圧電体とは異なり結晶が優先配向しており、且つ本実施形態では、圧電体層33は、結晶が柱状に形成されている。なお、優先配向とは、結晶の配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。また、結晶が柱状の薄膜とは、略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させた状態で面方向に亘って集合して薄膜を形成している状態をいう。勿論、優先配向した粒状の結晶で形成された薄膜であってもよい。なお、このように薄膜工程で製造された圧電体層の厚さは、一般的に0.5〜5μmである。
【0047】
上電極膜34の材料としては、導電性が高く、エレクトロマイグレーションの発生がほとんど無い、例えば、イリジウム,白金等の金属及びその酸化物が好ましい。本実施形態では、イリジウムをスパッタリング法により成膜して上電極膜34とした。
【0048】
次に、図4(b)に示すように、圧電素子30及び接続孔22の内面を覆って層間絶縁膜37を形成すると共にパターニングする。詳しくは、上電極膜34上の周縁部を残して上電極膜34が露出する上電極露出部34aを形成すると共に、接続孔22内に形成された層間絶縁膜37を少なくとも下電極膜32の端面が覆われるようにパターニングする。
【0049】
次に、図4(c)に示すように、圧電素子30に対向する領域及び層間絶縁膜37上に反射膜35を形成すると共にパターニングして、圧電素子30の上電極膜34と接続孔22を介して駆動素子50とを電気的に接続する接続配線36を形成する。
【0050】
本実施形態では、反射膜35が接続配線36を兼ねているため、反射膜35の材料としては、導電性の材料であり且つ光の反射率が高いことが好ましく、例えば、アルミニウム(Al)又は銀(Ag)等を用いることが好ましい。
【0051】
その後、犠牲層60をエッチングにより除去することにより、弾性板31、下電極膜32及び層間絶縁膜37によって支持部21が形成され、この支持部21を介して圧電素子30の一端部でミラー基板11とは空間を保持した状態で支持される本実施形態のミラー要素20となる。なお、本実施形態では、犠牲層60の材料として、PSGを用いているため、弗酸水溶液によってエッチングした。また、ポリシリコンを用いた場合には、弗酸及び硝酸の混合水溶液、あるいは水酸化カリウム水溶液によってエッチングすることができる。
【0052】
ここで、このように形成された本実施形態の光変調デバイスの動作について説明する。なお、図5は、本実施形態の光変調デバイス及び光変調デバイスに照射される光の光路を模式的に示した図である。
【0053】
光変調デバイス10は、ミラー要素20を変形させることにより光を変調させるものであり、本実施形態では、図5(a)に示すように、一画素内に2つのミラー要素20が相対向して設けられ、圧電素子30に電圧が印加されない状態ではそれぞれほぼ平坦となっている。そして、駆動素子50のスイッチングによって圧電素子30に電圧が印加されると、図5(b)に示すように、圧電素子30の圧電体層33が面内方向に収縮して、各ミラー要素20は支持部21に対向する部分を支点として、支持部21側を凸として変形する。すなわち、一画素内では、その略中央部から各圧電素子30がそれぞれ外側に向かって湾曲される。
【0054】
また、本実施形態の光変調デバイス10では、各画素となる領域の周囲を覆うように遮光マスク80が設けられている。例えば、この遮光マスク80は、図6に示すように、各画素に対向する領域に入射光が通過する貫通孔81を有する略井桁形状を有する。この遮光マスク80は、光吸収材料からなり、例えば、樹脂に分散されたカーボンブラック、黒色顔料、黒色染料等が挙げられる。
【0055】
このような構成では、図5(a)に示すように、圧電素子30に電圧が印加されていない状態では、入射光70が遮光マスク80の貫通孔81を介してミラー要素20の反射膜35に対して略直角に入射されるため、入射光70は入射光路と略同一光路で貫通孔81から出射される。一方、駆動素子50によって圧電素子30に電圧が印加された状態では、図5(b)に示すように、ミラー要素20が変形されて湾曲しているため、入射光70は反射面で各画素の周囲の遮光マスク80の方向に偏向される。すなわち、この偏向された光は、遮光マスク80に集光されて吸収されるため、貫通孔81から出射されることがない。
【0056】
ここで、入射光70は、反射面で偏向されると反射面に対する法線に対称的な方向に偏向される。すなわち、入射光70の入射方向と法線との角度がθであれば、入射光70は、その倍の角度2θだけ偏向される。そのため、ミラー要素20と遮光マスク80の距離は、ミラー要素20の変形量に応じて決定する必要がある。
【0057】
このような光変調デバイス10を表示装置等に用いた場合、一画素内の各圧電素子30に同時に電圧を印加する、しないによって、入射光70のON、OFFの制御を容易に行うことができる。なお、上述した例では、圧電素子30が変形しない場合がON、変形した場合がOFFとなるが、勿論、これと逆になるように設定することもできる。
【0058】
また、本発明の光変調デバイス10では、各画素内に複数の圧電素子30が設けられているため、比較的容易に階調することができる。例えば、本実施形態では、一画素内の一方の圧電素子30に電圧を印加して駆動することによって比較的明るさの弱い光と、両方の圧電素子30に電圧を印加しないことによって比較的明るさの強い光との2段階の光を出射させることができ、全体として比較的容易に階調することができる。すなわち、ミラー要素20を構成する圧電素子30に個別に選択的に電圧を印加することにより、圧電素子30のON、OFFのみで、各画素からの出射光をデジタル的に容易に階調することができる。
【0059】
また、各圧電素子30に印加する電圧を調整すれば、無段階、すなわちアナログ的にも階調することもできる。ただし、このようにアナログ的に階調する場合、制御系が煩雑になってしまうため、例えば、幾つかの所定の印加電圧に限定する等してもよい。また、上述のデジタル的に階調する駆動方法と組み合わせて用いてもよい。
【0060】
以上のような本実施形態の構成では、各画素内に入射される入射光を複数方向に分散して集光させることができるので、変調効率を向上することができる。また、一画素内に、複数のミラー要素20が設けられているため、印加電圧を変えることなくデジタル的に比較的容易に階調することができる。さらに、ミラー要素20は、圧電素子30の一端部が支持された片持ち梁状であるため、ミラー要素一つに対して駆動素子が一つで済むため、静電型のデバイスと比較してミラー要素を高密度に配置することができる。
【0061】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る光変調デバイスの断面図である。
【0062】
本実施形態は、図7に示すように、一画素内に4つのミラー要素を設けた例であり、各ミラー要素20Aの表面は三角形を有し、その一辺側の端部で支持部21を介してミラー基板11上に支持されている。また、これら4つの各ミラー要素20Aは、支持部21とは異なる二辺側の端面がそれぞれ相対向するように配置され、全体として表面形状が略正方形となっている以外、実施形態1と同様の構成である。
【0063】
このような構成では、実施形態1と同様に、一画素内の各圧電素子20Aがその中央部から外側に向かってそれぞれ異なる方向に変形されるため、入射光を4方向に分散して集光させることができ、さらに集光効率を向上することができる。また、これら4つのミラー要素20Aの圧電素子30に異なるタイミングで電圧を印加して駆動することにより、さらに多段階に階調することができる。
【0064】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の光変調デバイスは上述した実施形態に限定されるものではない。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、各ミラー要素20の反射面を略同一の形状及び表面積としたが、これに限定されず、例えば、それぞれ異なる形状及び表面積としてもよい。これにより、駆動するミラー要素の組み合わせによって、より多段階に階調することができる。
【0066】
以上説明した各構成の本発明の光変調デバイスは、例えば、表示装置の一部として用いられる。
【0067】
図8及び図9には本発明の光変調デバイスを用いた表示装置の一例を示す。なお、図8及び図9は表示装置を構成する光学系の概略断面図であり、レンズ、光変調デバイス等は大幅に簡略化して描いてある。
【0068】
図8に示す表示装置は、光源であるメタルハライドランプ210及び放射面形状のリフレクタ211と、このメタルハライドランプ210からの光を光変調デバイス10に入射させるハーフミラー220と、光変調デバイス10からの出射光を結像する投影レンズ230と、投影レンズ230により結像された像を表示するスクリーン240とを具備する。
【0069】
かかる表示装置では、光源であるメタルハライドランプ210を有し、メタルハライドランプ210から出た光は、リフレクタ211で反射されて略平行な光となってハーフミラー220に入射し、ハーフミラー220で反射されて光変調デバイス10に入射される。なお、ハーフミラー220はキューブ型のハーフプリズムとしてもよい。
【0070】
光変調デバイス10を構成するミラー要素20のうちで、駆動素子50を介して駆動されて変形しているミラー要素20Bの反射面は曲面となっているため、この変形したミラー要素20Bに入射した光は反射されて遮光マスク80に向かって集光され、ハーフミラー220方向には戻らない。一方、変形していないミラー要素20に入射した光は反射されて、投影レンズ230によって像面であるスクリーン240上に結像される。
【0071】
以上のような光学系の構成によって、光変調デバイス10を構成する各ミラー要素20がスクリーン240上の画素に対応し、ミラー要素20のON,OFF、すなわち、変形していない、変形しているによってスクリーン240上の表示画像を変化させることができる。
【0072】
なお、スクリーン240としては反射型のスクリーンあるいは透過性型のスクリーンを用いることができる。
【0073】
また、図8で示した光学系では、光源210から放出された光のうち、ハーフミラー220でその約半分だけが光変調デバイス10を照明し、残りの半分はハーフミラー220を透過して無駄な光となる。さらに、光変調デバイス10で反射した光のうちその半分だけがハーフミラー220を透過して投影レンズ230へ向かう。すなわち、光源から出てスクリーン240に到達する光は、途中でのロスがないとして理想的に見積もっても光源210から出た光の1/4程度に減衰している。
【0074】
図9に示す表示装置では、ハーフミラー220の代わりに、3つの偏光ビームスプリッタ221、222及び224を用いることにより、光源から放射されるエネルギを原理的にロスなくスクリーン240に導くようにしている。
【0075】
図示するように、光源であるメタルハライドランプ210から出た光は、放物面形状のリフレクタ211で反射され略平行な光に変換され、第1の偏光ビームスプリッタ221に入射する。以下、偏光ビームスプリッタ221はP偏光は透過し、S偏光は反射するものとする。
【0076】
光源210からでた光は、その振動方向がランダムな方向を向いている自然光なので、そのうちのP偏光成分(図中pで示す)は第1の偏光ビームスプリッタ221を透過し、S偏光成分(図中sで参照)は反射される。この反射されたS偏光成分の光は隣接する第2の偏光ビームスプリッタ222に入射し、そこで反射されて第2の偏光ビームスプリッタ222をS偏光として出射する。一方、第1の偏光ビームスプリッタ221を透過したP偏光は、第1のビームスプリッタ221の出射面に設けられた1/2波長板223によってS偏光に変換される。したがって、第3の偏光ビームスプリッタ224に入射される光はS偏光に揃っている。
【0077】
S偏光として第3の偏光ビームスプリッタ224に入射された光は、全て光変調デバイス10の方向へ反射されるが、第3の偏光ビームスプリッタ224の光変調デバイス10側の面に設けられた1/4波長板225によって円偏光に変換されて光変調デバイス10に入射される。
【0078】
光変調デバイス10を構成する変形したミラー要素20Bの反射膜で反射した光は、入射光の円偏光とは反対方向に偏光する円偏光となり、1/4波長板225で今度はP偏光となって第3のビームスプリッタ224に入射される。このP偏光は第3のビームスプリッタ224で反射されることなく原理的には全て透過されて投影レンズ230に到達する。
【0079】
以上述べたように、光源から出た光の振動方向を揃えることによって、ハーフミラーを用いた場合のような光のロスがなく、光源から放射されるエネルギを原理的にロスなくスクリーンに導くことができる。すなわち、明るい表示が可能な表示装置を構成することができる。
【0080】
なお、以上の説明では表示装置としては一枚の光変調デバイスを用いた表示装置を説明したが、従来から知られているように、3枚の光変調デバイスを用い、それぞれの光変調デバイスが赤、緑、青それぞれの光を変調し、その変調光を色合成して投写するカラー表示装置としても本発明を用いることができることはいうまでもない。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では一画素内に片持ち梁状のミラー要素を複数個設けるようにしたので、入射光を2方向以上に分散して集光させることができ、集光効率を向上することができる。また、一画素内の圧電素子に異なるタイミングで電圧を印加して駆動することにより、印加電圧を変えることなく比較的容易に階調することができる。さらには、1つの圧電素子に対して1つの駆動素子で済むため、ミラー要素を高密度に配置することができ、光変調デバイスの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る光変調デバイスの概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る光変調デバイスの上面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る光変調デバイスの製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る光変調デバイスの製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る光変調デバイスの光学系の概略断面図である。
【図6】本発明の光変調デバイスに用いられる遮光マスクの概略図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る光変調デバイスの概略を示す上面図である。
【図8】本発明に係る光変調デバイスを用いた表示装置を構成する光学系の概略断面図である。
【図9】本発明に係る光変調デバイスを用いた表示装置を構成する光学系の概略断面図である。
【符号の説明】
10 光変調デバイス
11 ミラー基板
20 ミラー要素
21 支持部
30 圧電素子
31 弾性板
32 下電極膜
33 圧電体層
34 上電極膜
35 反射膜
50 駆動素子
Claims (3)
- 圧電体層及びこれを挟持する第1及び第2の電極とからなる圧電素子を有すると共に光を反射するミラー膜構造を有するミラー要素と、該ミラー要素に対応して設けられた駆動素子とを有する光変調デバイスにおいて、
前記ミラー要素が一画素内に複数個設けられると共に前記各圧電素子が一画素を構成する領域の周縁部分に対向する端部で支持部を介して基板上に片持ち梁状態で支持され、且つ一画素内に設けられた複数の前記ミラー要素は、前記圧電素子の前記支持部とは面方向に相対向する領域で相互に分割されるように設けられていることを特徴とする光変調デバイス。 - 請求項1に記載の光変調デバイスと、光源と、この光源からの光を前記光変調デバイスに入射すると共に当該光変調デバイスの前記圧電素子の駆動時又は非駆動時の何れか一方の反射光のみを出射する光学系とを具備することを特徴とする表示装置。
- 圧電体層及びこれを挟持する第1及び第2の電極とからなる圧電素子を有すると共に光を反射するミラー膜構造を有するミラー要素と、該ミラー要素に対応して設けられた駆動素子とを有し、前記ミラー要素が一画素内に複数個設けられると共に前記各圧電素子が一画素を構成する領域の周縁部分に対向する端部で支持部を介して基板上に片持ち梁状態で支持され、且つ一画素内に設けられた複数の前記ミラー要素は、前記圧電素子の前記支持部とは面方向に相対向する領域で相互に分割されるように設けられている光変調デバイスの製造方法であって、
前記基板上に絶縁膜を形成する工程と、該絶縁膜上に犠牲層を成膜すると共に各画素内の前記圧電素子毎にパターニングする工程と、前記犠牲層の表面に沿って弾性板を形成後前記各圧電素子に対向する領域にパターニングする工程と、前記弾性板上に前記第1の電極、前記圧電体層及び前記第2の電極を順次積層すると共にパターニングして前記圧電素子を形成する工程と、前記第1の電極、前記弾性板及び前記絶縁膜をパターニングして前記駆動素子を露出する接続孔を形成する工程と、前記接続孔を介して前記第2の電極と前記駆動素子とを接続する配線電極兼反射膜を層間絶縁膜を介してパターン形成する工程と、前記犠牲層を除去する工程とを有することを特徴とする光変調デバイスの製造方法。
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