JP3799685B2 - 金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムおよびコンデンサー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルム、および特定の表面抵抗と光学濃度の関係を有した金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムおよびそれを用いたコンデンサーに関し、特に蒸着加工性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルム、セルフヒール性に優れ表面抵抗値の小さい金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムおよびそれを誘電体として用いた耐熱性、耐絶縁破壊特性に優れたコンデンサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、透明性、光沢性などの光学的特性に優れ、さらに水蒸気バリア性能や優れた電気特性などにより、包装用途、コンデンサー用途などに広範に用いられている。
【0003】
この二軸配向ポリプロピレンフィルムは、フィルムコンデンサーの誘電体として用いられる代表的な素材の一つであるが、もう一つの代表的素材であるポリエステルフィルムと比較して耐熱性が低いため、コンデンサーとしての最高使用温度が85℃程度に制限されていた。その理由は、使用温度が高温になると、フィルムの非晶部、異物の影響等から、本来ポリプロピレンフィルムの特長であるべき絶縁破壊強度が急激に低下してしまい、特に長期間の使用に耐えられなくなる場合があったからである。
【0004】
一方、電気装置の小型化に伴い、素子の密集化および高温化が進展し、従来のポリプロピレンフィルムコンデンサーの最高使用温度をさらに上昇させたいという要求が強くなってきている。このためには、従来のポリプロピレンフィルムコンデンサーの最高使用温度である85℃よりも高温でしかも長期に性能を維持する必要があった。
【0005】
またポリプロピレンフィルムコンデンサーは、一般にフィルムの一方の面に蒸着によりアルミや亜鉛あるいはこれらの合金からなる電極としての金属層が形成され(以下、金属化という)、この金属化フィルムを巻回あるは積層してコンデンサー素子とすることが行われている。
【0006】
従って上記工程を経た耐熱性に優れたコンデンサーを得るためには(1)高温でのフィルム電気特性が優れること、(2)蒸着による金属層が均一に形成され、セルフヒール性に優れ表面抵抗値が小さいことおよび(3)蒸着加工およびコンデンサー素子作成時の滑り性など耐加工性に優れることが求められていた。
【0007】
このような課題に対し、特開平6−236709号公報には灰分が低く、沸騰n−ヘプタン可溶分が1〜10重量%であることから加工性に優れ、室温から80℃までの電気絶縁性に優れた高分子絶縁材料が開示されており、沸騰n−ヘプタン不溶部のアイソタクチックペンタッド分率が90%以上のものが好ましいとの示唆がある。
【0008】
また、特開平7−25946号公報には同じく沸騰ヘプタン不溶分が80重量%以上、特に好ましくは96重量%以上であり、該沸騰ヘプタン不溶成分のアイソタクチックペンタッド分率が0.970〜0.995の範囲にあるプロピレン重合体およびこれを用いた成形体の開示がある。
【0009】
しかし、これらに開示されたように、単に沸騰n−ヘプタン不溶分のアイソタクチックペンタッド分率の高い二軸配向ポリプロピレンフィルムでは、本発明の目指す85℃を越える高温での耐絶縁破壊特性とこのフィルムを誘電体として用いたコンデンサー素子の長期耐熱性が不十分であった。すなわち、上記の従来の技術による立体規則性の高い二軸配向ポリプロピレンフィルムは、沸騰n−ヘプタン不溶部のアイソタクチックペンタッド分率がそこそこ高いものの、n−ヘプタン可溶分のアイソタクチックペンタッド分率が低いため、フィルムとしてのアイソタクチックペンタッド分率が結果として低く、立体規則性が不十分であった。またアイソタクチシティが極めて高い、いわゆる高結晶性の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、立体規則性が不十分であるが故に製膜性が極めて悪く、耐熱性と耐絶縁破壊特性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造するための工業的に有用な技術として確立されるには至っていなかった。
【0010】
これらの欠点を解消するため、特公平4−28727号公報にはアイソタクチックペンタッド分率が0.960〜0.990の範囲にあり、かつ沸騰n−ヘキサンおよび沸騰n−ヘプタンで逐次抽出した被抽出物の全量が3.0〜6.0%とすることで成形性に優れた結晶性ポリプロピレンフィルムが提案されている。しかし、このポリプロピレンフィルムはアイソタクチックペンタッド分率が十分ではなく、高温での耐絶縁破壊特性が不十分であった。
【0011】
さらに特開平5−217799号公報には、特定の熱変形温度とヤング率を有し、結晶化度が高く、立体規則性の良い高剛性ポリプロピレンフィルムに金属を蒸着した高剛性蒸着金属化フィルムを用いた蒸着フィルムコンデンサーが提案されている。しかし、ここでの立体規則性は高々90%程度であり、高温での絶縁破壊特性が不十分であった。
【0012】
さらに特開平7−50224号公報には、120℃における熱収縮率が長さ方向で4.0%以下、幅方向で0.8%以下である金属化ポリプロピレンフィルムが開示されている。しかし、このフィルムのアイソタクチシティおよび立体規則性は従来のレベルのものであり、今後の高度な要求に対応するための、本発明の目的である高温での耐絶縁破壊特性が必ずしも十分とは言えなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、ポリプロピレンフィルムのアイソタクチシティと立体規則性を高度に制御し、表面のぬれ張力を適正化し、金属化層の表面抵抗と光学濃度を制御することで、従来技術では達成し得なかった耐熱性、耐絶縁破壊特性に優れたコンデンサーを得ることができることを見い出し、本発明に至った。
【0014】
本発明の目的は、耐熱性に優れ、蒸着加工性に優れた二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、セルフヒール性に優れ表面抵抗値の小さい金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムおよびそれを用いた耐熱性、耐絶縁破壊特性に優れたコンデンサーを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムは、アイソタクチシティが98〜99.5%であり、アイソタクチックペンタッド分率が99%を越えた二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の面に金属層が形成され、その金属層の表面抵抗R(Ω/□)と光学濃度ODの関係が、10.8≦R・OD<15であることを特徴とするものであり、好ましくは、アイソタクチシティが98〜99.5%であり、アイソタクチックペンタッド分率が99%を越え、少なくとも一方の面のぬれ張力が35〜50mN/mである二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の面に、表面抵抗R(Ω/□)と光学濃度ODの関係が、10.8≦R・OD<15である金属層が形成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
さらに本発明のコンデンサーは、かかる金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムを巻回あるいは積層してなるものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、主としてポリプロピレンの単独重合体からなる二軸配向フィルムであるが、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有していてもよく、また他の重合体がブレントされていてもよい。共重合成分としては、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。共重合量は、蒸着加工性、耐絶縁破壊特性、耐熱性の点から1mol%未満、ブレンド物は1wt%未満が好ましい。
【0020】
本発明において、二軸配向ポリプロピレンフィルムのアイソタクチシティは、特に二軸延伸時の幅方向延伸性の点で99.5%以下である。ここでアイソタクチシティとは、フィルムを沸騰n−ヘプタンで抽出した場合の、抽出前フィルム重量に対する不溶分の重量の割合により定義される。アイソタクチシティが高すぎると、特開平6−236709号公報にあるように二軸延伸フィルムを製造する際、延伸性が悪く、製膜が著しく困難となる。また特に蒸着加工性、さらに詳しくはフィルム厚みが5μm未満となった場合の蒸着時の耐熱負け性の点でアイソタクチシティは98%以上である。このようにアイソタクチシティが98%以上、99.5%以下であれば、フィルム厚みが5μm未満のように非常に薄いフィルムの場合でも良好な延伸ができ、かつ、蒸着時の耐熱負け性において高レベルを維持することができ、薄いフィルムを使っての小型化を可能とし、従来にはない高性能なコンデンサーを実現できるのである。アイソタクチシティが小さすぎると耐熱性に劣り、蒸着時の熱負けによるシワが発生する場合がある。良好な製膜性と蒸着加工性、耐絶縁破壊特性のためにより好ましいアイソタクチシティは98.7〜99.5%であり、さらには98.7〜99.3%が好ましい。
【0021】
このようなアイソタクチシティを有する二軸配向ポリプロピレンフィルムとするには、原料であるポリプロピレン樹脂の沸騰n−ヘプタンに溶けやすい低分子量成分や、立体規則性の低い、いわゆるアタクチックの部分の割合が適度に低いものをのを選択するなどの方法を採用することができる。
【0022】
本発明において、二軸配向ポリプロピレンフィルムの立体規則性は、13C− NMRにより測定したメチル基の吸収ピークによるペンタッド分率により評価することができる。一般的に、ポリプロピレン分子鎖における5個の繰り返し単位(ペンタッド)の立体配座には、mmmm、mmmr、rmmr、・・、rrrr、mrrr、mrrm等がある。ここで、mはメソ(meso)、rはラセモ(rasemo)の立体配座を示す。
【0023】
二軸配向ポリプロピレンフィルムのペンタッド分率は、例えばT.Hayashiらの報告[Polymer、29、138〜143(1988)]等にあるように、上記各立体配座を有するセグメントの比率を13C−NMRから求める ことができる。これらのうち、全メチル基の吸収強度に対するmmmmの立体配座の割合、すなわちアイソタクチックペンタッド分率(以下mmmmと省略する場合がある)は、m(mmmm)m、m(mmmm)r、r(mmmm)rの3つのヘプタッド分率の和として定義される。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのアイソタクチックペンタッド分率mmmmは、99%を越える。このようなフィルムは、極めて長いアイソタクチックセグメントを持つ分子から構成されたポリプロピレンからなっているため、蒸着可能性に優れた、高結晶性、高耐熱性、高耐絶縁破壊特性のフィルムを与え得る。
【0024】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムのmmmmは、蒸着加工性、高耐熱性、高耐絶縁破壊特性の点で好ましくは99.1%以上であり、より好ましくは99.2%以上であり、さらに好ましくは99.3%以上である。
【0025】
このような立体規則性を付与するには、原料であるポリプロピレン樹脂の立体規則性を高度に制御することが有効である。このような原料を作成する方法としては、ポリプロピレンを重合する際の、触媒系(固体触媒、外部添加電子供与性化合物)やこれらの純度により達成される。原料のポリプロピレン樹脂のmmmmが高いものほど二軸配向ポリプロピレンフィルムのmmmmが高くなる傾向が認められるが、原料の押出系内での極度の熱劣化もmmmmを低下させるため、高温押出系での原料の長時間滞留を避けるなどの構造的工夫、押出条件が適宜選択される。
【0026】
また、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムにおいて、その少なくとも一方の表面のぬれ張力は35〜50mN/mである。ぬれ張力が小さすぎると電極として用いる金属層が均一に形成され難く、電極部分の電気抵抗が大きくなり、コンデンサー素子に加工した際、誘電損失が大きくなり、発熱によりさらに劣化が加速されコンデンサー素子としての寿命が短くなる場合がある。一方、ぬれ張力が大きすぎるとフィルムの滑り性が悪くなり、蒸着加工時シワが入るなどの欠陥になり、素子作成時不都合を生じ、素子の特性を悪化させる場合がある。ぬれ張力のさらに好ましい範囲は37〜48mN/mであり、最も好ましくは38〜45mN/mである。
【0027】
本発明において、表面のぬれ張力をこのような範囲とするためには、コロナ放電処理やプラズマ処理が好ましく適用でき、大気雰囲気中、窒素雰囲気中、炭酸ガス雰囲気中やこれらの混合雰囲気中でのコロナ放電処理が生産性の観点から適当であり、製膜工程、蒸着の前工程いずれで実施してもよい。処理強度は5〜50W・min/m2の範囲で採用されるが、処理雰囲気により処理効果が異なるため、本発明のぬれ張力とするために、適宜処理強度を調整することが必要である。
【0028】
本発明の実施態様において、二軸配向ポリプロピレンフィルムに金属層を形成して金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムに加工することは、コンデンサー素子の小型化のために好ましく採用される。この場合、金属層を構成する金属は特に限定されることはないが、アルミニウム、亜鉛、銅、錫、銀、ニッケル等を単独または併用で使用することが金属化層の耐久性、生産性の点で好ましく、経済性の点から特にアルミニウムや亜鉛などが好ましく用いられる。
【0029】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムに金属層を形成する方法は、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンビーム法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0030】
本発明において、金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムの好ましい表面抵抗値Rは、1〜20Ω/□の範囲であり、より好ましくは1.2〜15Ω/□である。膜抵抗値が小さすぎると、蒸着膜の厚みが厚く蒸着時に熱負けが生じアバタ状の表面欠点や4μm前後の薄いフィルムでは穴アキ等が発生することがある。また、膜抵抗値が大きすぎると表面抵抗値が大きくなり、コンデンサー素子としての誘電損失が大きくなり、素子の破壊に繋がり易い。膜抵抗値をこの範囲とするには、蒸着時の膜抵抗値のモニターにより制御する方法が好ましく採用される。
【0031】
本発明の金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムの光学濃度ODは、0.5〜3の範囲で選択されることが好ましい。さらに好ましくは光学濃度は0.8〜2の範囲である。本発明において光学濃度とは、可視域の特定波長における光線透過率の逆数の対数で定義される。光学濃度が大きすぎると蒸着時の熱負けの問題が生じることがある。光学濃度が小さすぎると表面抵抗値が大きくなる問題が生じる場合がある。
【0032】
本発明においては、表面抵抗値Rと光学濃度ODとが、10.8≦R・OD<15(Ω/□)の関係にあることが重要である。ODは蒸着金属の膜厚に比例して大きくなり、一般にそれに従ってRが小さくなるが、R・ODが大きすぎる、すなわち蒸着金属のRの割にODすなわち膜厚が大きい場合は、金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムのセルフヒール性が悪くなりコンデンサー素子としての特性に問題が生じる。
【0033】
R・ODが大きくなる原因として、蒸着金属と原反二軸配向ポリプロピレンフィルム表面の接着性が悪いために蒸着金属が均一に膜形成されないことが考えられる。このため、ある特定の膜抵抗値を得ようとした場合、膜厚が大きくなり、セルフヒールすなわちコンデンサー素子作成時に、原反フィルムの微少な絶縁欠陥を放電破壊によりその欠陥部分周辺の蒸着金属を蒸発させて不活性にする操作ができなくなる問題が生じる。また、セルフヒール性を向上させるために膜厚を小さくしようとした場合、蒸着金属の均一膜が形成されないために膜抵抗値が急激に上昇し、コンデンサー素子として誘電損失が大きくなり使用に耐えない場合がある。R・ODのより好ましい範囲は10.8Ω/□以上13Ω/□以下である。R・ODをこのような範囲にするには、原反表面のぬれ張力を適正に制御することと、金属蒸着時の真空度を良好に保つことが重要である。
【0034】
本発明において、二軸配向ポリプロピレンフィルムに金属層を形成する時に設けられるマージン(電気絶縁目的などにより金属層を形成する面に設けられる金属層のない部分)の仕様は、通常タイプ以外にヒューズ機構を設けた種々のものなど目的に応じて採用でき、特に限定されることはない。
【0035】
本発明のコンデンサーは上記金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムを巻回あるいは積層して作成されるものである。
【0036】
本発明のコンデンサーの形式は、乾式や、油浸式等が挙げられるが、特に限定されることはない。
【0037】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムおよび金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムの120℃5分間加熱時の機械方向と幅方向の熱収縮率の和は、1〜4%の範囲であることが好ましい。熱収縮率が大きすぎると、電極としての金属層形成時に寸法変化を起こしフィルムロールにシワが入ったり、コンデンサー素子作成時の熱による機械的変形が大きすぎるためにフィルム中および/あるいは外部電極との接触部にストレスが発生し、コンデンサーの容量低下が大きくなったり、素子の破壊に至る場合がある。逆に熱収縮率が低すぎる場合は、コンデンサー素子作成時の熱処理による巻締まりが不十分となり、形態保持性や容量変化率に悪影響を及ぼす。好ましい熱収縮率は上記の和が1.5〜3.5%であり、さらには1.8〜3%、さらには2〜2.8%の範囲が好ましい。熱収縮率をこのような範囲とするには、製膜時の条件が極めて重要である。
【0038】
従来のアイソタクチシティとmmmmを有する二軸配向ポリプロピレンフィルムは、特開平7−50224号公報に記載されているように85℃以上のキャスティングドラム温度でキャストされていたのに対し、本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは40〜85℃とより低いキャスティングドラム温度でキャストされることが好適である。キャスティングドラム温度が高すぎるとフィルムの結晶化が進行しすぎ、後の工程での延伸が困難になるか、熱収縮率が大きくなりすぎる。また従来の二軸配向ポリプロピレンフィルムは140℃以下の機械方向延伸温度と160℃以下の幅方向延伸温度が採用されるのが一般的であり、これら温度を越える延伸温度では配向が下がるために二軸配向ポリプロピレンフィルムとしての弾性率を保つのが困難であった。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムでは140〜150℃の機械方向延伸温度と160〜165℃の幅方向延伸温度が、二軸配向ポリプロピレンフィルムとしての弾性率を保ったまま目的とする熱収縮率を得るために好ましく採用される。これら延伸温度が低すぎると熱収縮率が大きくなりすぎる。さらに幅方向の緩和をさせながらの熱処理温度は150〜160℃とすることも有効である。熱処理温度が低すぎると熱収縮率が大きくなりすぎ、高すぎると熱収縮率が小さくなりすぎる。
【0039】
本発明において、二軸配向ポリプロピレンフィルムおよび金属化ポリプロピレンフィルムの厚みは、製膜性や機械特性、電気特性の点から2〜30μmの範囲が好ましく、より好ましくは2.5〜20μm、さらに好ましくは2.5〜10μmである。フィルムの厚みが小さすぎると、絶縁破壊強度や機械的強度に劣る場合があり、また金属化持に熱負けによるフィルムの損傷が発生する場合がある。フィルムの厚みが大きすぎると均一な厚みのフィルムを製膜することが困難になり、またコンデンサー用の誘電体として用いた場合、体積当たりの容量が小さくなるため好ましくない。
【0040】
本発明において、二軸配向ポリプロピレンフィルムに使用される立体規則性に優れたポリプロピレンの極限粘度は特に限定されないが、製膜性の点から1〜10dl/gの範囲のものが好ましい。また、230℃、2.16kg加重におけるメルトフローレートは製膜性の点から、2〜5g/10分のものが好ましい。極限粘度やメルトフローレートを上記の値にするには、平均分子量や分子量分布を制御する方法などが採用される。
【0041】
ポリプロピレンの重合過程においては、金属を含む化合物を触媒として用い、必要に応じ重合後にこの残磋を除去することが一般的であるが、この残磋は樹脂を完全に燃焼させた残りの金属酸化物の量を求めることで評価でき、これを灰分と呼ぶ。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの灰分は30ppm以下であることが好ましく、より好ましくは25ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。灰分が多すぎると、フィルムの耐絶縁破壊特性が低下し、これを用いたコンデンサーの絶縁破壊強度が低下する場合がある。灰分をこの範囲にするには、触媒残磋の少ない原料を用いることが重要であるが、製膜時の押出系からの汚染も極力低減するなどの方法、例えばブリード時間を1時間以上かけるなどの方法を採用することができる。
【0042】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムおよび金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面粗さは目的に応じて適宜選択されるが、中心線平均粗さで0.02〜0.2μmの範囲が好ましい。中心線平均粗さが大きすぎると、フィルムを積層した場合に層間に空気が入りコンデンサー素子の劣化に繋がる場合がある。逆に小さすぎるとフィルムの滑りが悪くなり、ハンドリング性に劣る場合がある。
【0043】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムおよび金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムには、公知の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有させてもよい。
【0044】
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は、長期耐熱性にとって重要である。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムおよび金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムに添加される酸化防止剤は立体障害性を有するフェノール性のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが溶融押し時の飛散防止のために好ましい。この具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)とともに1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えばチバガイギー社製Irganox1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ −t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばチバガイギー社製Irganox1010:分子量1177.7)等を併用することが好ましい 。これら酸化防止剤の総含有量は、ポリプロピレン全量に対して0.03〜1重量%(300〜10000ppm)の範囲が好ましい。総含有量が少ないと長期耐熱性に劣る場合があり、多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトによる高温下でのブロッキングにより、コンデンサー素子に悪影響を及ぼす場合がある。より好ましい含有量は0.1〜0.9重量%であり、さらに好ましくは0.2〜0.8重量%である。
【0045】
本発明の金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムのセルフヒール性は、直流電圧を印加した場合の、部分的な放電破壊の様子で評価できる。部分的な放電破壊後の蒸着金属膜の蒸発領域が小さく、放電痕の周辺に蒸着金属が残存しない場合セルフヒール性は良好である。放電による放電痕の周辺に金属が残存し、フィルムが溶解した様子が観察されるものはセルフヒール性が悪く、コンデンサーに加工した場合、素子そのものの絶縁破壊に至る場合がある。特に105℃での課電時には絶縁破壊が加速される場合がある。
【0046】
本発明のコンデンサーの特性は、105℃で100時間の定格電圧の1.2〜1.3倍の交流電圧課電後の誘電損失大きさ、すなわちtanδで評価できる。tanδが大きすぎると素子の発熱が加速され短時間で破壊に至る場合がある。本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムおよびそれからなるコンデンサーの製造方法を以下に説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0047】
まず、ポリプロピレン原料を押出機に供給し、加熱溶融し、濾過フィルターを通させた後、220〜320℃の温度でスリット状口金から溶融押出し、40〜85℃の温度に保たれたキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめ、未延伸フィルムを作る。
【0048】
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸して二軸配向せしめる。延伸方法としては逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次延伸方法は、まず未延伸フィルムを120〜150℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続きそのシートを140℃〜150℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に2〜6倍に延伸し、ただちに室温に冷却する。ここで、本発明のmmmmが99%を越える二軸配向ポリプロピレンフィルムは、予熱温度130℃以下、延伸温度140℃以下では熱量が不足して延伸ムラを起こしたり破けて製膜できない場合があり、140℃を越える延伸温度を採用することが重要である。引き続きその延伸フィルムをテンターに導いて、160〜165℃の温度で幅方向に5〜10倍に延伸し、次いで幅方向に2〜20%の弛緩を与えつつ、150〜160℃の温度で熱固定して巻取る。本発明において、この熱固定の温度は重要であり熱固定温度が低すぎると熱収縮率が大きくなり、本発明の範囲を超える場合がある。
【0049】
その後、蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良好ならしめるために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行ないワインダーで巻取る。
【0050】
次に得られたフィルムを真空蒸着装置にセットし、目的に応じた金属を、所定の膜抵抗に蒸着する。この蒸着フィルムをスリットし、コンデンサー素子を作るための2リール一対の蒸着リールとする。この後、素子状に巻回し、熱プレスして扁平状に成形し、端部の金属溶射、リード取り出し、外装を経てコンデンサーとする。
【0051】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上記コンデンサー用途以外に、低い熱収縮率を生かして、蒸着、印刷、ラミネート、ヒートシールなどの加工時の熱による変形を抑えることができるため、種々の包装用途として、例えばこれにヒートシール層とラミネートして使用でき、また粘着テープやつや出しフィルム(プリントラミネート)などとしても好適に用いることができる。
【0052】
本発明における特性値の測定方法、並びに評価方法は次のとおりである。
【0053】
(1)アイソタクチシティ(アイソタクチックインデックス:II)
試料を60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレンへの添加物を除去する。その後130℃で2時間真空乾燥する。これから重量W(mg)の試料をとり、ソックスレー抽出器に入れ沸騰n−ヘプタンで12時間抽出する。次に、この試料を取り出しアセトンで十分洗浄した後、130℃で6時間真空乾燥しその後常温まで冷却し、重量W´(mg)を測定し、次式で求めた。
II=(W´/W)×100(%)
(2)アイソタクチックペンタッド分率試料をo−ジクロロベンゼンに溶解し、JEOL製JNM−GX270装置を用い、共鳴周波数67.93MHzで13C−NMRを測定した。得られたスペクトルの帰属およびペンタッド分率の計算については、T.Hayashiらが行った方法[Polymer,29,138〜143(1988)]に基づき、メチル基由来のスペクトルについて、mmmmピークを21.855ppmとして各ピークの帰属を行ない、ピーク面積を求めてメチル基由来全ピーク面積に対する比率を百分率で表示した。詳細な測定条件は以下のとおりである。
【0054】
測定溶媒 :o−ジクロロベンゼン(90wt%)/ベンゼン−D6(10wt%)
測定温度 :120〜130℃
共鳴周波数:67.93MHz
パルス幅 :10μsec(45゜パルス)
パルス繰り返し時間:7.091sec
データ点 :32K
積算回数 :8168
測定モード:ノイズデカップリング
(3)フィルム厚み
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS−B−7503)を用いて測定した。
【0055】
(4)ぬれ張力
JIS K−6788に従って測定した。
【0056】
(5)金属膜形成性
二軸配向ポリプロピレンフィルムの蒸着加工後の蒸着膜の膜形成性を目視で評価し以下の判定を行なった。
【0057】
○:金属膜にむらがなく金属膜が均一に形成されている。
【0058】
×:金属膜にむらがある。
【0059】
(6)蒸着加工性
二軸配向ポリプロピレンフィルムの蒸着加工後の巻上がりのロールの状態を目視で評価し以下の判定を行なった。
【0060】
○:ロールにシワが発生していない。
【0061】
×:ロールにシワが発生している。
【0062】
(7)光学濃度OD
光学濃度計(マクベス社製TR927)を用い、フィルターをVisualとしたときの透過濃度を測定し、金属化フィルムの光学濃度から原反フィルムの光学濃度を差し引いた値を金属層の光学濃度とした。
【0063】
(8)表面抵抗R
表面抵抗計(三菱油化Loresta−FP)を用い、4端子プローブを用いて測定した。
【0064】
(9)セルフヒール性
金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムの金属化を行なっていない面を平坦な黄銅製の電極板に接触させ、金属化面と黄銅製電極板の間に定格電圧(ポリプロピレンフィルムの場合は45〜50V/μm)の倍の直流電圧を印加し部分的な絶縁破壊を発生させた。絶縁破壊箇所の観察を行ない、以下のセルフヒール性の判定を行なった。
【0065】
○:絶縁破壊によりフィルムに形成された孔がの直径が1mm以下で孔の周辺に金属が認められない。
【0066】
×:孔の直径が3mm以上でフィルムの溶解の痕が認められる。
【0067】
△:上記の中間
(10)tanδ誘電損失
105℃に保持されたコンデンサー素子を、春日電気(株)製交流高圧安定化電源に接続し、60V/μmの電圧を印加し100時間後のtanδをシェーリングブリッジ法で電圧250Vで測定した。
【0068】
【実施例】
本発明を実施例、比較例に基づいて以下に詳細に説明する。
【0069】
(実施例1)
アイソタクチックインデックスIIが98.8%、アイソタクチックペンタッド分率mmmmが99.5%、灰分が19ppmのポリプロピレン原料に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)0.3%、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(Irganox1010)0.5%を添加したものを押出機に供給して280℃の温度で溶融し、T型口金からシート状に押出成形し、70℃の温度のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化した。次いで、このシートを135℃で予熱し、引き続き143℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5倍に延伸した。引き続きそのフィルムをテンターに導き、162℃の温度で幅方向に10倍延伸し、次いで幅方向に8%の弛緩を与えながら158℃で熱処理を行ない4μmの厚みの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。さらに30W・min/m2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行ない、ぬれ張力41mN/mとした。得られたフィルムの灰分およびペンタッド分率は、原料のそれらの値と差がなかった。このフィルムを真空蒸着機にセットし、コロナ処理面にアルミニウムを膜抵抗が6Ω/□になるように蒸着した。このフィルムの光学濃度は1.8であった。このフィルムをスリットし、全幅38mm、マージン幅1mmの金属化フィルムを得た。得られたフィルム一対2リールを用いて素子巻し、素子の端面に金属溶射し、ここからリード線を取り出して容量5μFのコンデンサー素子を作成した。
【0070】
(実施例2)
実施例1と同様に作成した二軸配向ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理の処理強度を10W・min/m2として、38mN/mのぬれ張力とした。実施例1と同じく6Ω/□のアルミニウム蒸着を行ない、光学濃度が2.0の金属化フィルムを得た。これを用いて、実施例1と同様にコンデンサー素子を作成した。
【0071】
(実施例3)
実施例1の41mN/mのぬれ張力の二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いて、アルミニウムを蒸着し、光学濃度1.2の金属化フィルムを得た。また、表面抵抗は11Ω/□であった。これを用いて、実施例1と同様にコンデンサー素子を作成した。
【0072】
【表1】
上記実施例1〜3の二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムの特性とコンデンサー素子の特性を上記表1に示した。二軸配向ポリプロピレンフィルムの蒸着加工性、膜形成性はいずれも問題がなく、金属化ポリプロピレンフィルムをコンデンサー素子に加工した場合も、100時間後の課電後素子の破壊も認められず、tanδも小さなものであった。
【0073】
(比較例1)
IIが97.8%、mmmmが98%、灰分が19ppmで実施例1と同様の酸化防止剤処方としたポリプロピレン原料を用い、キャスティングドラム温度を85℃とした以外は実施例1と同様の方法で二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムおよびコンデンサー素子を得た。この特性を同じく表1に示した。IIおよびmmmmが本発明の範囲外であり、蒸着加工時に熱負けによるシワが発生し、コンデンサー素子は100時間後には破壊が発生していた。特性を表1に示した。
【0074】
(比較例2、3)
実施例1と同様に製膜した二軸配向ポリプロピレンフィルムにコロナ放電処理を施さず、ぬれ張力を32mN/mとしたものでアルミニウム蒸着で6Ω/□(比較例2)と22Ω/□(比較例3)の金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムとコンデンサー素子を得た。光学濃度はそれぞれ2.6と0.9であった。同じく特性を表1に示した。比較例2の二軸配向ポリプロピレンフィルムは膜形成性が悪く、金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムのセルフヒール性も劣ったものとなった。またコンデンサー素子も100時間を待たず破壊した。比較例3の二軸配向ポリプロピレンフィルムも膜形成性が悪く、金属化二軸配向ポリプロピレンの表面抵抗値が大きいためにR・ODが本発明の範囲を超え、コンデンサー素子とした場合のtanδも大きくなり、その後125時間で破壊した。
【0075】
(比較例4)
実施例1と同様に製膜した二軸配向ポリプロピレンフィルムに60W・min/m2のコロナ放電処理を施し、ぬれ張力を52mN/mとしたものでアルミニウム蒸着で6Ω/□の金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ようとしたが、滑り性が悪くシワが発生し、ブロッキングが発生したために蒸着を中断し、コンデンサー素子への加工は見合わせた。
【0076】
【発明の効果】
本発明による二軸配向ポリプロピレンフィルムは、蒸着による金属膜の形成性に優れ、シワの発生の懸念のない蒸着加工性に優れたものとすることができる。さらに本発明の金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムは、セルフヒール性に優れ、コンデンサー素子とした場合の誘電損失の小さい、高温での長期耐絶縁破壊特性に優れたコンデンサー素子を作成するために有用である。このことにより本発明によれば、ポリプロピレンフィルムコンデンサーの最高使用温度を従来の85℃よりも最高20℃向上させることができ、これにより電気装置の小型化、素子の密集化に対応することができる。
Claims (3)
- アイソタクチシティが98〜99.5%であり、アイソタクチックペンタッド分率が99%を越えた二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の面に金属層が形成され、該金属層の表面抵抗R(Ω/□)と光学濃度ODの関係が、
10.8≦R・OD<15
であることを特徴とする金属化二軸配向ポリプロピレンフィルム。 - 二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の面のぬれ張力が、35〜50mN/mであることを特徴とする請求項1記載の金属化二軸配向ポリプロピレンフィルム。
- 請求項1または2に記載の金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムを巻回あるいは積層してなることを特徴とするコンデンサー。
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