JP3799629B2 - ピストンリング構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、往復型の空気圧縮機等に用いられるピストンリング構造に係り、特に、一定以上の摩耗を防止するようにしたピストンリング構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7および図8に、往復型の空気圧縮機に用いられるピストンリングaを示す。図示するように、このピストンリングaは、シリンダb内を往復動するピストンcのリング溝dに装着されるリング体が、周方向に大片eと小片fとに四分割されて構成されている。かかるピストンリングaは、その厚さgがリング溝dの溝幅hより薄く形成され、装着代iがリング溝dの溝深さjより小さく形成されている。
【0003】
この構成によれば、例えばピストンcが図8中矢印kで示すように上昇すると、ピストンc上方の圧縮室内のガスがリングaとリング溝dとの間を周り込んでリング溝dの奥に侵入し、そのガス圧が大片eおよび小片fの内周面mに作用して、ピストンリングaが拡径される。この結果、ピストンリングa(大片eおよび小片f)の外周面nがシリンダライナbに押し付けられ、ガス漏れのシールが達成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかるシールは、ピストンリング外周面nがシリンダライナbに押し付けられ摺接することによってなされるため、リング外周面nが摩耗することを意味する。この摩耗は、圧縮機の運転中は連続してなされるため、長期運転によってリング自身の径方向の厚さpが極端に薄くなり、切損することがある。
【0005】
特に、シリンダ内を潤滑油で潤滑しない無給油式の空気圧縮機においては、ピストンリングaの材質にカーボンやテフロン系の自己潤滑性材料を用いてはいるものの、潤滑油がないためリング外周面nの摩耗が進行しやすく、ピストンリングaの摩耗切損は深刻な問題となっている。
【0006】
一旦、ピストンリングaが切損すると、圧縮漏れが生じるばかりでなく、切損したピストンリングaの破片が他の部品(例えば吐出弁など)と干渉し、その機能を損なうことがあるため、圧縮機を緊急停止して分解修理を行わなければならない。従って、ピストンリングaの摩耗状況を頻繁にチェックする必要があり、圧縮機の定期メンテナンスの間隔が短くなっていた。
【0007】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、ピストンリングの一定以上の摩耗を防止してその切損を回避するピストンリング構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、シリンダ内を往復移動するピストンのリング溝に装着され、上記ピストンの上昇時に上記リング溝の下面に押し付けられると共に上記ピストンの上方で生じたガス圧を内周面に受けて拡径し、外周面が上記シリンダに押し付けられて摩耗するピストンリングのリング下面をフラットに形成し、該リング下面に、このピストンリングの外周面が所定量摩耗したときに内周面に受けるガス圧を上記ピストンの下方に逃がすべく、上記内周面から径方向外方へ向かって所定長さに形成されたガス圧リリーフ溝を設け、該ガス圧リリーフ溝の上記所定長さは、上記外周面が上記所定量摩耗する前は上記リング溝の下面で覆われ、上記外周面が上記所定量摩耗すると上記下面から露出する長さに設定されており、上記ピストンリングを周方向に複数に分割し、分割された各片同士の接合部を上記ピストンリングの外周面の接線に対して斜めに形成したものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、シリンダ内を往復移動するピストンのリング溝に装着され、上記ピストンの下降時に上記リング溝の上面に押し付けられると共に上記ピストンの下方で生じたガス圧を内周面に受けて拡径し、外周面が上記シリンダに押し付けられて摩耗するピストンリングのリング上面をフラットに形成し、該リング上面に、このピストンリングの外周面が所定量摩耗したときに内周面に受けるガス圧を上記ピストンの上方に逃がすべく、上記内周面から径方向外方へ向かって所定長さに形成されたガス圧リリーフ溝を設け、該ガス圧リリーフ溝の上記所定長さは、上記外周面が上記所定量摩耗する前は上記リング溝の上面で覆われ、上記外周面が上記所定量摩耗すると上記上面から露出する長さに設定されており、上記ピストンリングを周方向に複数に分割し、分割された各片同士の接合部を上記ピストンリングの外周面の接線に対して斜めに形成したものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記ピストンリングを周方向に複数に分割してなる各片の内周面に、上記ピストンに径方向移動可能に取り付けられたプッシュロッドが係合される凹部を形成したものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記プッシュロッドがコイルスプリングによって径方向外方に付勢され、その付勢力によって上記各片の外周面が上記シリンダに押し付けられるものである。
【0012】
請求項1に係る発明によれば、ピストンリングの内周面にはピストンの上方で生じたガス圧が作用するためピストンリングが拡径されてシリンダに押し付けられるところ、ピストンがシリンダ内を往復動することでピストンリングの外周面が所定量摩耗すると、ピストンリングの内周面に作用する上記ガス圧がガス圧リリーフ溝を通ってピストンの下方に逃がされるため、リングがそれ以上拡径されなくなり、摩耗が止まる。また、ピストンリングを構成する各片同士の接合部が斜めに形成されているので、ピストンリング外周面の摩耗が進行しても、上記接合部にギャップが生じることはない。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1とは逆にピストンの下方にガス圧が生じるものが前提となり、ピストンリングの内周面にピストンの下方で生じたガス圧が作用するためピストンリングが拡径されてシリンダに押し付けられるところ、ピストンの往復動によってピストンリングの外周面が所定量摩耗すると、ピストンリングの内周面に作用する上記ガス圧がガス圧リリーフ溝を通ってピストンの上方に逃がされるため、リングがそれ以上拡径されなくなり、摩耗が止まる。また、ピストンリングを構成する各片同士の接合部が斜めに形成されているので、ピストンリング外周面の摩耗が進行しても、上記接合部にギャップが生じることはない。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、ピストンリングを構成する各片に形成した凹部にピストンに取り付けられたプッシュロッドが係合されることで、各片がバラバラになってリング溝内を移動することが防止される。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、プッシュロッドがコイルスプリングにより径方向外方に付勢されることで、上記各片の外周面がシリンダに押し付けられるので、上記プッシュロッドは、各片の位置を保持するリテーナ機能と各片をシリンダに押し付けるプッシャ機能とを発揮する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1および図2は、無給油式の往復動型空気圧縮機のピストンリング1を示すものである。図示するように、このピストンリング1は、シリンダ2内を往復動するピストン3のリング溝4に装着されるリング体を、周方向に大片1aと小片1bとに四分割して構成されている。これら大片1aおよび小片1bは、カーボンやテフロン系等の自己潤滑性材料から形成されており、図3に示すように、ピストン3の内部に設けられたプッシュロッド5およびコイルスプリング6によって、径方向外方に付勢されるようになっている。
【0018】
詳しくは、ピストン3のリング溝4の径方向内方には、図3に示すように周方向に等間隔を隔てて四個の収容孔7が形成されており、これら収容孔7にプッシュロッド5およびコイルスプリング6が収容されている。コイルスプリング6は、その一端がプッシュロッド5の先端部に形成された係合部8に係合され、他端が収容孔7の入口部に形成された拡径部9に係合されている。この構成によれば、プッシュロッド5を収容孔7内に挿入するとコイルスプリング6が引き伸ばされるため、その戻り力によって大片1aおよび小片1bがプッシュロッド5を介して拡径されることになる。
【0019】
プッシュロッド5には、上記大片1aおよび小片1bに形成された凹部10と係合し、これらの位置を保持する保持部11が設けられている。プッシュロッド5の保持部11が大片1aおよび小片1bの凹部10と係合することにより、大片1aおよび小片1bがバラバラになってリング溝4内を移動することが防止される。すなわち、上記プッシュロッド5は、ピストンリング1の大片1aおよび小片1bを拡径方向に付勢してシリンダライナ2に押し付けるプッシャとしての機能と、大片1aおよび小片1bの位置を保持するリテーナとしての機能とを備えている。
【0020】
大片1aおよび小片1bからなるピストンリング1は、図2(a) に示すようにピストン3のリング溝4に装着され、前述したプッシュロッド5によってシリンダライナ2に押し付けられると共に位置保持される。リング溝4は、図中では1個しか示していないが、実際にはピストン3の軸方向に多段に複数設けられており、各溝4に同様にしてピストンリング1が装着される。かかるピストンリング1は、その厚さ1xがリング溝4の溝幅4xより薄く形成され、装着代1yがリング溝4の溝深さ4yより小さく形成されている。
【0021】
この構成によれば、例えばピストン3が図2(a) 中矢印12で示すように上昇すると、ピストン3上方の圧縮室内のガスがリング1とリング溝4との間を廻り込んでリング溝4の奥に侵入し、そのガス圧が大片1aおよび小片1bの内周面1wに作用して、大片1aおよび小片1bが径方向外方に移動され、ピストンリング1が拡径される。この結果、ピストンリング1すなわち大片1aおよび小片1bの外周面1zがシリンダライナ2に押し付けられ、ピストン3とシリンダライナ2との間のガス漏れシールが達成される。
【0022】
かかるシールにより大片1aおよび小片1bの外周面1zが図3に仮想線13で示すように摩耗しても、コイルスプリング6で付勢されたプッシュロッド5がその摩耗に応じて大片1aおよび小片1bを拡径するため、大片1aおよび小片1bはシリンダライナ2に対して常に適切な面圧が保たれる。よって、いつまでも高い効率を維持することができる。また、大片1aおよび小片1bは、その接合部14が斜めに形成されているため、摩耗が進行しても接合部14にギャップが生じることはない。
【0023】
本実施形態の特徴とするところは、図1および図2に示すように、ピストンリング1を構成する大片1aの上下面15,16に、その外周面1zが一定量摩耗したときに内周面1wに受けるガス圧を逃がすべく、内周面1wから径方向外方へ向かって所定長さLに形成されたガス圧リリーフ溝17,18を設けた点にある。このガス圧リリーフ溝17,18の溝長さLは、大片1aが図4に仮想線19で示すように限界まで摩耗したときに、図2(b) に示すように内周面1wに作用するガス圧を下方に逃がすことのできる長さに設定されている。
【0024】
すなわち、大片1aが図4に仮想線19で示す摩耗限界に至る以前は、図2(a) に示すように大片1aの下面16とリング溝4の下面20とはガス圧リリーフ溝18の延長部に位置するシール部21によってシールされるが、摩耗限界の直前にまで摩耗したときには、図2(b) に示すようにガス圧リリーフ溝18がピストン3の側面21より径方向外方へ突き出て、内周面1wに作用するガス圧が下方に逃がされるようになっているのである。
【0025】
以上、大片1aの下面16に設けられたガス圧リリーフ溝18について説明してきたが、大片1aの上面15にも同様のガス圧リリーフ溝17が設けられている。このガス圧リリーフ溝17は、ピストン3が下降するときにピストン3下方の圧縮室からリング溝4内に侵入したガス圧を、上方に逃がすために設けられる。すなわち、本実施形態に係る空気圧縮機は、ピストン3の上方と下方とに圧縮室を備えており、ピストン3上昇時には上述の如く上方の圧縮室のガス圧で大片1aおよび小片1bを拡径させ、ピストン3下降時には下方の圧縮室のガス圧で大片1aおよび小片1bを拡径させるようになっているのである。
【0026】
従って、ピストン3の上方のみに圧縮室を有するタイプの圧縮機においては、大片1aの上面15のガス圧リリーフ溝17は不要であり、大片1aの下面16のガス圧リリーフ溝18のみで十分である。下方から上方へ流れるガス圧が存在しない以上、大片1aの上面15にガス圧リリーフ溝17を設けても、ほとんど意味がないからである。よって、例えば本発明をディーゼル機関やガソリン機関に適用した場合には、ピストンリング1の下面16のみにガス圧リリーフ溝18を設ければよい。
【0027】
また、本実施形態においては、ガス圧リリーフ溝17,18が大片1aの上下面15,16に対になるように形成されているが、これに限らず例えば周方向にずらして上下面15,16に形成してもよい。また、本実施形態のようにガス圧リリーフ溝17,18を大片1aのみに設けるのではなく、さらに小片1bにも設けてよいことは勿論である。また、ガス圧リリーフ溝17,18の数は、本実施形態の数に限られず、それより多くあるいは少なくしてもよい。
【0028】
以上の構成からなる本実施形態の作用について述べる。
【0029】
ピストン3のリング溝4に装着された大片1aおよび小片1bは、図4に仮想線19で示す摩耗限界に至る以前は、図2(a) に示すようにリング溝4内に侵入したガス圧を内周面1wに受けることによって拡径され、外周面1zがシリンダライナ2に押し付けられてガス漏れのシールを行う。
【0030】
その後、大片1aおよび小片1bは、外周面1zが摩耗するにしたがって内周面1wに作用するガス圧に押されて図中左方へ移動される。そして、図4に仮想線19で示す摩耗限界の直前まで摩耗すると、図2(b) に示すようにガス圧リリーフ溝18がピストン3の側面21より径方向外方へ突き出て、大片1aの内周面1wに作用するガス圧が下方に逃がされる。
【0031】
すなわち、大片1aの下面16とリング溝4の下面20との間は、大片1aが摩耗限界に至る以前は図2(a) に示すようにガス圧リリーフ溝18の延長部に位置するシール部21によってシールされるが、摩耗限界の直前まで摩耗したときは図2(b) に示すようにガス圧リリーフ溝18によって開放されるのである。
【0032】
従って、以降、大片1aは、その内周面1wに作用するガス圧によりシリンダライナ2に押し付けられることなくフリーとなり、それ以上の摩耗が防止される。よって、本実施形態によれば、従来のようにピストンリング1が際限なくすなわち切損するまで摩耗してしまうことはなく、ピストンリング1の切損を確実に防止できる。従って、圧縮機の信頼性が向上する。
【0033】
また、このようにトップリング(ピストン3上面に一番近いリング)がフリーとなっても、図示しない次段のセカンドリングによって圧縮が保持されるため、効率の低下はほとんど生じない。そして、同様にセカンドリングがフリーとなってもサードリングによって圧縮が保持される。よって、圧縮機のトータルの寿命が延び、定期メンテナンスの間隔を延ばすことができる。
【0034】
なお、ガス圧リリーフ溝17,18が開放されてピストンリング1がフリーになっても、当該リング1は図3に示すコイルスプリング6およびプッシュロッド5によって拡径されてシリンダライナ2に押し付けられることになるが、この押付力は極めて弱いため、これによってピストンリング1が摩耗することはほとんどない。
【0035】
本発明の別の実施の形態を図5(a)(b)(C) に示す。
【0036】
図示するように、これら別の実施形態は、上記ガス圧リリーフ溝17,18の溝深さ17a,18aが、ピストンリング1の径方向外方に向かって徐々に浅くなるテーパ状に形成されている点を除き、前の実施形態と同様の構成となっている。詳しくは、これらガス圧リリーフ溝17,18の溝底面17b,18bは、図5(a) のものは直線状に傾斜されており、図5(b) のものは凹曲線状に傾斜されており、図5(C) のものは凸曲線状に傾斜されている。
【0037】
かかる構成によれば、ピストンリング1は、その外周面1zが摩耗するにしたがって内周面1wに作用するガス圧により図中左方へ移動され、ついにはガス圧リリーフ溝17,18が開放されて、内周面1wに作用するガス圧が逃がされることになるが、最初はガス圧リリーフ溝17,18の溝深さ17a,18aの浅い部分が開放されるためガスの逃げ量は少なく、その後摩耗が進行するにしたがって徐々にガスの逃げ量が多くなる。
【0038】
このようなピストンリング1によれば、リング溝4内に侵入したガス圧は、摩耗が少ないときには、一部がリリーフ溝17,18の溝深さ17a,18bの浅い部分から逃がされ、残りが内周面1wに作用してピストンリング1を拡径させる。そして、摩耗が多くなると、その割合が逆転するようになる。このように、ガス圧の一部を逃がし残りを拡径に用いることにより、ピストン3とシリンダライナ2とのシール性が向上する。また、最終的には、ガス圧リリーフ溝17,18の溝深さ17a,18aの深い部分が開放されるため、確実にピストンリング1をフリーにすることができる。
【0039】
さらに別の実施の形態を図6に示す。
【0040】
図示するように、この実施形態は、上記ガス圧リリーフ溝17,18の溝幅17c,18cが、ピストンリング1の径方向外方に向かって徐々に狭くなるテーパ状に形成されている点を除き、最初の実施形態と同様の構成となっている。
【0041】
この構成によれば、ガス圧リリーフ溝17,18の溝幅17c,18cをテーパ状に形成したので、この溝17,18を通ってリング内周面1wから逃げるガス量は、リング外周面1zの摩耗が少ないときには少量であり、摩耗が進行するにしたがって多くなる。従って、図5に示す実施形態と同様の作用効果を奏する。また、これら図5と図6の実施形態を組み合わせて、ガス圧リリーフ溝17,18の溝幅17c,18cおよび溝深さ17a,18aを共にテーパ状に形成してもよい。
【0042】
なお、本発明に関連する先行技術として、図9に示すものが知られている(特開平4-203370号公報など)。この技術は、リング溝50を形成するピストン51のランド部52にガス圧リリーフ穴53を形成し、ピストンリング54が一定量摩耗したならばリング内周面55に作用するガス圧を上記リリーフ穴53から逃がすようにしたものである。
【0043】
しかし、この技術ではピストン51にリリーフ穴53を設けているため、リリーフ時期を調整することができない。これに対し、本発明によれば、消耗品であるピストンリング1にリリーフ溝17,18を設けているため、長さの異なるリリーフ溝17,18を設けたピストンリング1を予め複数種類用意しておけば、圧縮機の定期的なメンテナンス時等にこれらを交換することによって、容易にリリーフ時期を変更できる。
【0044】
また、メンテナンス時にピストンリング1,54の材質や硬度が変更されてその限界摩耗量が変わった場合、先行技術ではピストン51側にリリーフ穴53を設けているため全く対応できないのに対し、本発明によればピストンリング1に設けられるリリーフ溝17,18の長さをその材質等に応じて変更することにより容易に対応できる。
【0045】
また、先行技術では、リリーフ穴53が開放されると、ガス圧がダイレクトに次段のピストンリング56に作用するため、次段のピストンリング56に悪影響を及ぼす傾向がある。これに対して、本発明によれば、図2(b) に示すようにリリーフ溝18が開放されると、ガス圧はピストンリング1を周り込みつつこの溝18を通って次段側へ流れる。このため、ラビリンス効果が発揮されて干渉された後、次段のピストンリングに作用することとなり、悪影響は生じない。
【0046】
また、先行技術では、ピストン51の凹凸に入り組んだランド部52にリリーフ穴53を形成する必要があるためその加工は極めて困難であるのに対し、本発明ではピストンリング1の表面にリリーフ溝17,18を形成すればよいので容易に加工できる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るピストンリング構造によれば、次のような効果を発揮できる。
【0048】
(1)ピストンリングの一定以上の摩耗を防止でき、その切損を未然に防止することができる。
【0049】
(2)よって、寿命が長くなり、信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すピストンリング構造の斜視図である。
【図2】上記ピストンリングの作用を示す図であり、(a) は摩耗限界前、(b) 摩耗限界直前の様子を表す。
【図3】上記ピストンリングが装着されたピストンの断面図である。
【図4】上記ピストンリングの摩耗限界を示す図である。
【図5】本発明の別の実施形態を示す図である。
【図6】さらに別の実施形態を示す図である。
【図7】従来例に係るピストンリング構造を示す斜視図である。
【図8】上記ピストンリングがガス圧によってシリンダライナに押し付けられる様子を示す図である。
【図9】関連技術を示すピストンの側断面図である。
【符号の説明】
1 ピストンリング
1w 内周面
1z 外周面
2 シリンダライナ
3 ピストン
4 リング溝
15 ピストンリング上面
16 ピストンリング下面
17 ガス圧リリーフ溝
17a 溝深さ
17c 溝幅
18 ガス圧リリーフ溝
18a 溝深さ
18c 溝幅
L 所定長さ
Claims (4)
- シリンダ内を往復移動するピストンのリング溝に装着され、上記ピストンの上昇時に上記リング溝の下面に押し付けられると共に上記ピストンの上方で生じたガス圧を内周面に受けて拡径し、外周面が上記シリンダに押し付けられて摩耗するピストンリングのリング下面をフラットに形成し、
該リング下面に、このピストンリングの外周面が所定量摩耗したときに内周面に受けるガス圧を上記ピストンの下方に逃がすべく、上記内周面から径方向外方へ向かって所定長さに形成されたガス圧リリーフ溝を設け、
該ガス圧リリーフ溝の上記所定長さは、上記外周面が上記所定量摩耗する前は上記リング溝の下面で覆われ、上記外周面が上記所定量摩耗すると上記下面から露出する長さに設定されており、
上記ピストンリングを周方向に複数に分割し、分割された各片同士の接合部を上記ピストンリングの外周面の接線に対して斜めに形成したことを特徴とするピストンリング構造。 - シリンダ内を往復移動するピストンのリング溝に装着され、上記ピストンの下降時に上記リング溝の上面に押し付けられると共に上記ピストンの下方で生じたガス圧を内周面に受けて拡径し、外周面が上記シリンダに押し付けられて摩耗するピストンリングのリング上面をフラットに形成し、
該リング上面に、このピストンリングの外周面が所定量摩耗したときに内周面に受けるガス圧を上記ピストンの上方に逃がすべく、上記内周面から径方向外方へ向かって所定長さに形成されたガス圧リリーフ溝を設け、
該ガス圧リリーフ溝の上記所定長さは、上記外周面が上記所定量摩耗する前は上記リング溝の上面で覆われ、上記外周面が上記所定量摩耗すると上記上面から露出する長さに設定されており、
上記ピストンリングを周方向に複数に分割し、分割された各片同士の接合部を上記ピストンリングの外周面の接線に対して斜めに形成したことを特徴とするピストンリング構造。 - 上記ピストンリングを周方向に複数に分割してなる各片の内周面に、上記ピストンに径方向移動可能に取り付けられたプッシュロッドが係合される凹部を形成した請求項1又は2記載のピストンリング構造。
- 上記プッシュロッドがコイルスプリングによって径方向外方に付勢され、その付勢力によって上記各片の外周面が上記シリンダに押し付けられる請求項3記載のピストンリング構造。
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