JP3795103B2 - リンを含む酸化チタン膜の形成方法および太陽電池の製造装置 - Google Patents

リンを含む酸化チタン膜の形成方法および太陽電池の製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はリンを含む酸化チタン膜の形成方法に関する。また、リンを含む酸化チタン膜を反射防止膜として有する結晶シリコン太陽電池の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶系シリコン太陽電池の製造方法としては、図12に示すようなプロセスが知られている。まず、シリコン基板の表面に、数μm〜数十μmの高低差を持つ微小な凹凸あるいは溝を形成する(S101)。この凹凸や溝の形成方法としては、例えば、数パーセントNaOH水溶液とアルコールの混合液を用いてエッチングを行い、高さ数μmの微小ピラミッドを基板表面に形成するテクスチャエッチング、ダイシング装置あるいはレーザーを用いて、基板表面に深さ数十μmの溝を多数平行に形成する方法、ドライエッチングなどがある。これらの凹凸や溝(以下、単に「凹凸」という。)は、完成後の太陽電池の動作時に、表面反射を減らして短絡電流を向上させるためのものである。次に、約800〜1100℃に加熱した石英チューブ内に上記シリコン基板を入れた状態で、この石英チューブ内に、バブラー容器に入れたPOCl等の液体不純物源をNなどのキャリアガスによって導入する。このとき、基板表面にはリン酸化物層が形成される。同時に、このリン酸化物層が拡散源となってシリコン基板中にリンが拡散されて、基板表面側部分にpn接合が形成される(S102)。この拡散工程後、基板表面にはリンを主成分とする吸湿性を持つ酸化膜が残存するので、この膜をフッ酸で除去する(S103)。その後、更に表面反射を減らすために、基板表面に反射防止膜を形成する(S104)。このときの反射防止膜としては、常圧CVD(化学気相蒸着)法を用いて形成されるTiO膜、あるいはプラズマCVD法を用いて形成されるSiN膜等が用いられている。例えば、常圧CVD法によってTiO膜を形成する場合、チタンアルコキシド、水、それぞれの入ったバブラーに、Nなどのキャリアガスを送り込み、各原料をこれらのキャリアガスによって基板表面に運び、基板表面で加水分解反応を生じさせてTiO膜を堆積する。次に、基板の受光面側を耐酸性のテープあるいはレジストで保護し、上記拡散工程で基板裏面側に形成された不要な接合をHNO−HF混合液を用いて除去する(S105)。次に、基板裏面側にアルミペーストを印刷し、約700〜800℃で焼成して裏面電極とP層を形成する。その後、基板表面(受光面)側に銀ペーストを魚骨型に印刷し、焼成して受光面電極を形成する(S107)。
【0003】
なお、上記反射防止膜を形成することができる常圧CVD装置として、例えば図17に示すように、ワトキンス−ジョンソン社(Watkins−Johnson Co.)又はBTUインターナショナル社(BTU Intenational)製の連続式常圧CVD装置が実用化されている。このタイプの連続式常圧CVD装置は、基板を載置して移動させるための搬送用ベルト201と、ローラ202A,202Bを有するベルト駆動機構202と、搬送用ベルト201の水平部(ローラ202Aとローラ202Bとの間の部分)の下に沿って配置された基板加熱用ヒータプレート203と、ヒータプレート203および搬送用ベルト201の上方に配置されたヘッドアセンブリ208を有するディスパージョンヘッド206と、ヘッドアセンブリ208および搬送用ベルト201の水平部を覆うカバー205とを備えている。カバー205のうちヘッドアセンブリ208を覆う部分は、ヘッドアセンブリ208に対して隙間をもって凸状に形成されており、その上部に排気口207が設けられている。成膜を行う場合、ロード位置201aで搬送用ベルト201に基板を載置し、ベルト駆動機構202によって一定速度で基板を水平方向(図17において左方向)に移動させる。基板がヘッドアセンブリ208の下方を通るときには、ヒータプレート203によって基板は既に所定温度に加熱されている。そして、ヘッドアセンブリ208の下面に設けられた吹出口から原料ガスが基板の表面へ向けて吹き出され、基板の表面に所望の膜が形成される。残余のガス等はヘッドアセンブリ208とカバー205の凸部との隙間を通って、排気口207から外部へ排出される。その後、基板は搬送用ベルト201によってさらに左方向へ移動され、アンロード位置201bで回収される。基板を水平方向に往復させてロード位置201aで回収する場合もある。
【0004】
また、結晶系シリコン太陽電池の製造方法として、図13に示すように、pn接合を形成するために、上述のPOCl拡散に代えて、PSG(フォスフォシリケート・ガラス(Phosphosilicate Glass)。SiOにリンなどをドーピングしたもの。)を堆積し、これを不純物源とするプロセスも知られている。この場合、まず、図12のプロセスと同様に、シリコン基板の表面に微小な凹凸を形成する(S201)。次に、凹凸を形成した基板表面にPSG膜を形成する(S202)。続いて、基板を約800〜1100℃に加熱してPSGからリンをシリコン基板中に拡散させて、基板表面側部分にpn接合を形成する(S203)。この拡散工程後に基板表面に残るPSG膜は屈折率が約1.4〜1.5であるため反射防止膜としては適さない。そこで、このPSG膜をHFで除去した後(S204)、基板表面にTiOあるいはSiNなどの反射防止膜を形成する(S205)。この後、図12のプロセスと同様に、裏面電極及び受光面電極を形成する(S206,S207)。
【0005】
なお、代表的なPSG膜形成方法としては、
・有機ケイ素化合物と有機溶剤とリン化合物からなる塗布液を塗布する方法、
・SiHとPHとOまたはNOを用いたCVD法、
・SiHと有機リン化合物とOを用いたCVD法、
・Si(OC)と有機リン化合物とOを用いたCVD法、
・Si(OC)と有機リン化合物とOを用いたCVD法
が知られている。
【0006】
また、図12と図13に示した2つのプロセスを簡略化したプロセスとして、図14に示すように、塗布液を用いてpn接合と反射防止膜とを同時に形成するプロセスが知られている(例えば特開昭54−76629号公報)。この場合、まず、上記2つのプロセスと同様に、シリコン基板の表面(受光面側)に微小な凹凸を形成する(S301)。次に、凹凸を形成した基板表面に、基板とは導電型が異なる不純物を含むTiO膜を塗布液によって形成する(S302)。続いて、熱処理を行って、基板表面側部分にpn接合を形成すると同時に、上記不純物を含むTiO膜からなる反射防止膜を形成する(S303)。加熱後の不純物を含むTiO膜は、吸湿性が小さく、かつ、屈折率が約1.7〜2なのでそのまま反射防止膜として用いることができる。この後、図12、図13のプロセスと同様に、裏面電極及び受光面電極を形成する(S304,S305)。
【0007】
この図14のプロセスに用いられる塗布液は、テトラ−i−プロポキシチタンのようなチタンアルコキシド、リンあるいはホウ素等の不純物元素を含む化合物、カルボン酸及びアルコールから作られる。基板表面への被覆は、回転塗布法、浸漬法あるいはスプレー法により行われる。また、特開昭56−60075号公報には、このような塗布液から形成される反射防止膜中のB含有量を10重量%から50重量%まで変えたとき、反射防止膜の屈折率が約2.5から約2.0に変化すること、および、Bの含有量が30重量%以上であれば、同じ温度で熱処理したときキャリア濃度及び接合深さが飽和することが示されている。
【0008】
なお、pn接合と反射防止膜とを同時に形成するために、pn接合形成と反射防止膜をドープするための拡散源としてドープしたSiO,TiOxまたはTa(ドープ層)を薄く形成し、その上にSiO,TiOxまたはTa形成する方法が知られている(例えば、特開昭60−113915号公報)。この場合、ドープ層の形成は回転塗布、スプレー、浸漬、析出、印刷などによって行い、その上の反射防止層の形成は蒸着、気相からの化学的析出、印刷によって行う。この方法の目的は、化学研磨した表面に比べ平滑でない半導体表面にドープ層を均一に形成することが困難なので、ドープ層を薄く形成することにより、その上に形成される反射防止層への光学的影響を低減しようというものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図12あるいは図13のような、まずpn接合を形成し、基板表面の酸化膜を除去した後、反射防止膜を形成するプロセスと比較して、図14のような、不純物を含む酸化チタン膜を塗布液から形成し、この膜を不純物源としてpn接合を形成するとともに残った膜を反射防止膜として用いるプロセスは、工程数が少なく簡単であるという利点を有している。
【0010】
しかし、図15に示すように、基板表面に高低差数μm〜数十μmの微細な凹凸を形成したシリコン基板17に対して、図14のpn接合と反射防止膜を同時に得るプロセスを適用した場合、次のような問題が生じる。
【0011】
すなわち、回転塗布法、浸漬法により塗布液18を基板17に塗布した場合、基板表面の凹部17b上には塗布液18が溜まって厚くなる一方、凸部17a上では逆に薄くなる。スプレー法により塗布する場合も、スプレー粒子の大きさが約数百μmであるため、同様に、基板表面の凹部17b上には塗布液18が溜まって厚くなる一方、凸部17a上では逆に薄くなる。このため、この塗布液18から熱処理(S303)を経て形成される反射防止膜の膜厚が不均一になる。
【0012】
知られているように、太陽電池を取り巻く物質の屈折率をn(例えば空気ではn=1)、シリコンの屈折率をn、入射光の波長をλ、反射防止膜の屈折率をn、反射防止膜の厚さをdとした場合、n=n・nおよびd=λ/4nなる条件式を満たすように反射防止膜を形成すると、波長λでの表面反射率を最小にすることができる。しかし、上述のように反射防止膜の膜厚が不均一であれば、この条件式を満たすことができないため、表面反射を十分には減らすことができない。
【0013】
図16は、図12のプロセスに従ってpn接合形成後に反射防止膜(酸化チタン膜)をCVD法で形成して作製した太陽電池(従来例1)の表面反射率と、図14のプロセスに従って不純物を含む酸化チタン膜を塗布液を回転塗布して形成し、pn接合と反射防止膜とを同時に形成して作製した太陽電池(従来例2)の表面反射率を示している。従来例1では波長600nm付近に反射率の最小値が認められるが、従来例2では明確な反射率の最小値は見られない。これは、従来例2の反射防止膜の膜厚が不均一であることを示している。また、従来例1の太陽電池の受光面は反射防止膜の干渉効果により青色に見えるのに対し、従来例2の太陽電池の受光面はシリコン基板の地色(灰色)のままであり、干渉効果がないことが明らかである。
【0014】
この結果、塗布液を用いてpn接合と反射防止膜とを同時に得るプロセスで作製した太陽電池(従来例2)は、CVD法などを用いて均一な膜厚の反射防止膜を形成した太陽電池(従来例1)と比較して、短絡電流が低くなるという問題がある。
【0015】
なお、CVD法によれば、上述のような微小な凹凸を持つ基板表面に均一な膜厚のTiO膜およびPSG膜を形成することができる。しかし、上記凹凸を持つ基板表面に、pn接合を形成するのに十分な不純物を含み、かつ、拡散後に反射防止膜として用いることのできる膜、即ちリンをドーピングした酸化チタン膜を、均一な膜厚に形成する方法は未だ報告されていない。
【0016】
そこで、この発明の目的は、微小な凹凸を持つ基板表面にリンを含む酸化チタン膜を均一な膜厚に形成することができるような、リンを含む酸化チタン膜の形成方法を提供することにある。その形成方法は、工程数が少なく簡単なプロセスで、高い短絡電流を得ることができる太陽電池を作製できる太陽電池の製造方法を実現できる。
【0017】
また、上記結晶系シリコン太陽電池はいわゆるスーパーストレート型モジュールに組み込まれることが多い。このモジュールは、上記太陽電池と、その受光面を保護するためのガラスおよび充填材(一般にEVA(エチレンビニルアセテート)が用いられる)と、裏面材料と、周辺シール材と、周辺を取り囲む枠材によって構成される。このようなモジュールに組み込まれる場合、太陽電池の受光面上にガラスとEVAが設けられるため、太陽電池の受光面が直接空気に接している場合と異なる屈折率を持つ反射防止膜が必要になる。すなわち、反射防止膜の屈折率をn、シリコンの屈折率をn、反射防止膜上の物質の屈折率をnとすると、既に示した条件式から反射防止膜の最適屈折率はn=(n・n1/2となる。ここで、太陽電池の感度が高いλ=600〜1100nmの波長領域では、シリコンの屈折率nが3.5〜4程度であるから、太陽電池の受光面が直接空気に接している場合(n=1)は反射防止膜の最適屈折率が1.8〜2となるが、太陽電池の受光面上にガラスとEVAが存在する場合(n=1.4〜1.5)は反射防止膜の最適屈折率が2.2〜2.5となる。この分析結果から分かるように、図14のプロセスによって形成された酸化チタン膜(屈折率が約1.7〜2)は、上記モジュール用の太陽電池の反射防止膜としては屈折率がやや低く、表面反射を効果的に減らすことができないという問題がある。
【0018】
なお、図14のプロセスにおいて、塗布液を用いてpn接合と酸化チタン膜とを同時に形成した後、その上にCVD法等によってSi又はTiOなどの屈折率の高い膜を均一に堆積したとしても、下地の酸化チタン膜が均一な膜厚ではないため、干渉効果を示す良好な反射防止膜は得られなかった。
【0019】
そこで、この発明の別の目的は、工程数が少なく簡単なプロセスで、モジュール化に適した太陽電池を作製できる太陽電池の製造装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段および作用】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のリンを含む酸化チタン膜の形成方法は、所定温度に加熱された基板の表面に、チタン化合物とリン化合物とをガス状態で供給して、上記基板の表面に、上記チタン化合物とリン化合物との反応物からなるリンを含む酸化チタン膜を形成するようにしたことを特徴としている。
【0021】
上記請求項1のリンを含む酸化チタン膜の形成方法では、所定温度に加熱された基板の表面に、チタン化合物とリン化合物とをガス状態で供給する。供給された各化合物は、基板表面あるいはその近傍で熱分解する。チタン化合物は分解して酸化チタンに、リン化合物は分解してリン酸化物になる。この酸化チタンとリン酸化物とがネットワークを形成して、上記基板表面にリンを含む酸化チタン膜が形成される。この形成方法は、基板の表面にチタン化合物とリン化合物とをガス状態で供給するので、CVD法に属する。したがって、微小な凹凸を持つ基板表面であっても、上記リンを含む酸化チタン膜は均一な膜厚に形成される。
【0022】
また、請求項2に記載のリンを含む酸化チタン膜の形成方法は、請求項1に記載のリンを含む酸化チタン膜の形成方法において、液状態のチタン化合物、リン化合物にそれぞれキャリアガスを通し、上記チタン化合物、リン化合物を蒸気圧に応じて上記キャリアガスに含ませ、上記キャリアガスとともに上記基板の表面に供給することを特徴としている。
【0023】
上記請求項2のリンを含む酸化チタン膜の形成方法では、液状態のチタン化合物、リン化合物にそれぞれキャリアガスを通し、上記チタン化合物、リン化合物を蒸気圧に応じて上記キャリアガスに含ませ、上記キャリアガスとともに上記基板の表面に供給する。この場合、上記液状態の各化合物を収容したバブラー容器の設定温度による蒸気圧制御や、このバブラー容器に通す上記キャリアガスの流量を変えることにより、上記各化合物の供給量が精度良く制御される。この結果、上記リンを含む酸化チタン膜の膜厚均一性が高まり、リン濃度が確実に制御される。また、チタン化合物とリン化合物との混合割合を変えることにより、膜中のリン濃度が様々に設定される。膜形成中にチタン化合物とリン化合物との混合割合を変えることにより、膜厚方向に関してもリン濃度が変えられる。
【0024】
また、請求項1または2に記載の形成方法は、工程数が少なく簡単なプロセスで、高い短絡電流を得ることができる太陽電池を作製できる太陽電池の製造方法を実現できる。すなわち、一実施形態の太陽電池の製造方法は、p型シリコン結晶基板の表面に、所定の高低差の凹凸を形成する工程と、上記凹凸を形成した上記基板の表面に、請求項1または2に記載の形成方法によってリンを含む酸化チタン膜を形成する工程と、上記基板を所定の温度で熱処理して、上記基板の表面側部分に上記リンを含む酸化チタン膜からリンを拡散してpn接合を形成するとともに、上記リンを含む酸化チタン膜からなる反射防止膜を形成する工程と、上記基板の裏面側に裏面電極を形成する一方、上記基板の表面側に受光面電極を形成する工程を有することを特徴としている。
【0025】
上記一実施形態の太陽電池の製造方法では、基板の表面に、請求項1または2に記載の形成方法、すなわちCVD法によってリンを含む酸化チタン膜を形成するので、基板表面が微小な凹凸を持つ場合であっても、基板表面に上記リンを含む酸化チタン膜が均一な膜厚に形成され、したがって、熱処理後に均一な膜厚の反射防止膜が得られる。この結果、太陽電池の完成後に高い短絡電流が得られる。また、上記熱処理によってpn接合と反射防止膜とが同時に形成されるので、工程数が少なく簡単なプロセスで太陽電池が作製される。
【0026】
また、別の実施形態の太陽電池の製造方法は、p型シリコン結晶基板の表面に、所定の高低差の凹凸を形成する工程と、上記凹凸を形成した上記基板の表面に、請求項1または2に記載の形成方法によってリンを含む酸化チタン膜を形成する工程と、上記基板を所定の温度で熱処理して、上記基板の表面側部分に上記リンを含む酸化チタン膜からリンを拡散してpn接合を形成する工程と、上記リンを含む酸化チタン膜上に、この膜よりも屈折率が大きい屈折率2.2乃至2.5の膜を均一な膜厚に形成する工程と、上記基板の裏面側に裏面電極を形成する一方、上記基板の表面側に受光面電極を形成する工程を有することを特徴としている。
【0027】
上記実施形態の太陽電池の製造方法では、上記リンを含む酸化チタン膜上に、この膜よりも屈折率が大きい屈折率2.2乃至2.5の膜を均一な膜厚に形成しているので、反射防止膜として受光面上にガラスとEVAが存在する場合の最適屈折率2.2〜2.5を持つ膜が作製される。すなわち、モジュール化した場合に表面反射率を効果的に低減でき、モジュール化に適した太陽電池が作製される。この製造方法は、先に述べた一実施形態の製造方法に比して、上記屈折率2.2乃至2.5の膜を形成する工程が多いが、図12や図13のプロセスよりは依然として工程数が少なく簡単なプロセスである。
【0028】
なお、上記リンを含む酸化チタン膜と上記屈折率2.2乃至2.5の膜とはいずれも均一な膜厚に形成されるので、この2つの膜によって干渉効果を示す良好な反射防止膜が得られる。
【0029】
請求項に記載の太陽電池の製造装置は、膜が形成されるべき基板を載置できるように、水平に配置された水平部を有する搬送用ベルトと、この搬送用ベルトの水平部を水平方向に移動させることができるベルト駆動手段と、上記搬送用ベルトの水平部が上記ベルト駆動手段によって移動される移動経路のうち特定の領域に設けられ、上記水平部上に載置されて移動する基板を所定温度に加熱し、この基板の表面にチタン化合物とリン化合物とをガス状態で供給して、リンを含む酸化チタン膜を形成する第一製膜部と、上記移動経路のうち上記第一製膜部に続く領域に設けられ、上記基板を上記第一製膜部が加熱する温度よりも高い温度に保持する熱処理部と、上記移動経路のうち上記熱処理部に続く領域に設けられ、上記リンを含む酸化チタン膜上にこの膜より屈折率の大きい膜を形成する第二製膜部とを備えたことを特徴としている。
【0030】
上記請求項の太陽電池の製造装置によれば、第一製膜部、熱処理部および第二製膜部によって、上記実施形態の太陽電池の製造方法における、上記リンを含む酸化チタン膜を形成する工程と、上記基板を所定の温度で熱処理して上記pn接合を形成する工程と、上記リンを含む酸化チタン膜上に上記屈折率2.2乃至2.5の膜を形成する工程とが、ベルト搬送により自動的に連続して実行される。この結果、これら3つの工程の間で基板を冷却し、昇温するための時間が短縮される。すなわち、これらの工程をそれぞれ独立した装置で行う場合は、工場内で前の工程用の装置が設置されている場所から次の工程用の装置が設置されている場所まで基板を運ぶために、基板を一旦常温付近まで冷却する必要がある。これに対して、この製造装置によれば、上記3つの工程が連続して行われるので、基板を一旦常温付近まで冷却する必要がなく、前の工程用の温度から次の工程用の温度まで直接温度を変化させればよい。したがって、太陽電池の製造に要する時間が短縮される。また、この製造装置によれば、これら3つの工程をそれぞれ独立した装置で行う場合と異なり、基板を装置間で移載する作業が不要となる。したがって、太陽電池の製造コストを下げることが可能となる。
【0031】
請求項に記載の太陽電池の製造装置は、請求項に記載の太陽電池の製造装置において、液状態のチタン化合物が充填されたバブラー容器と、液状態のリン化合物が充填されたバブラー容器と、上記各バブラー容器の温度を調整する温度調整部と、上記各バブラー容器内で蒸発した上記チタン化合物、リン化合物を上記第一製膜部へ輸送するための配管とを備え、上記第一製膜部は、上記配管を通して受けたガス状態のチタン化合物およびリン化合物を混合して上記基板の表面へ向けて吹き出すディスパージョンヘッドを有していることを特徴としている。
【0032】
上記請求項の太陽電池の製造装置によれば、上記液状態の各化合物を収容したバブラー容器の設定温度による蒸気圧制御や、このバブラー容器に通す上記キャリアガスの流量制御を行うことによって、上記各化合物の供給量が精度良く制御される。この結果、上記リンを含む酸化チタン膜の膜厚均一性が高まり、リン濃度が確実に制御される。また、チタン化合物とリン化合物との混合割合を変えることにより、膜中のリン濃度が様々に設定される。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0034】
図2は、リンを含む酸化チタン膜の形成方法を実施するためのCVD装置を示している。
【0035】
この装置は、成長室20内に、基板7を載置して加熱するためのヒータブロック8と、このヒータブロック8の上面に対向するガス分散ヘッド13を備えている。ガス分散ヘッド13にはこの成長室の壁面を貫通してガス供給管21が接続されている。ガス供給管21は、雰囲気ガス供給管14と、チタン化合物供給管15bと、リン化合物供給管16bとが合流したものである。
【0036】
チタン化合物供給管15bにはテトラ−i−プロポキシチタン9を入れたバブラー容器11が接続される一方、リン化合物供給管16bにはトリエトキシリン10を入れたバブラー容器12が接続されている。バブラー容器11,12にはそれぞれキャリアガス供給管15a,16aを通してキャリアガスが導入されるようになっている。導入されたキャリアガスにはそれぞれ上記テトラ−i−プロポキシチタン9、トリエトキシリン10が蒸気圧に応じた分圧まで含まれる。そして、キャリアガスとともにガス状態のテトラ−i−プロポキシチタン9、トリエトキシリン10は、チタン化合物供給管15b,リン化合物供給管16bを通してガス供給管21の雰囲気ガスと合流する。これらのガスはガス供給管21、ガス分散ヘッド13を通して、ヒータブロック8上の基板表面に供給される。
【0037】
また、二つのバブラー容器11,12には図示しないヒータと温度調節器が付いていて、各バブラー容器11,12内の液状態の原料を加熱して一定温度に保てるようになっている。バブラー容器11,12の出口からガス分散ヘッド13までの間の供給管は、原料ガスが管内で液化するのを防ぐために図示しないテープヒータで暖められている。
【0038】
リンを含む酸化チタン膜の形成は次のようにして行われる。
【0039】
まず、ヒータブロック8上に、比抵抗が1Ω・cmで片面ミラーのp型シリコン基板7を載置する。ヒータブロック8で基板を加熱し、基板温度が一定になった時点でガス供給管21を通して原料ガスの供給を開始する。
【0040】
すなわち、テトラ−i−プロポキシチタン9を入れたバブラー容器11の温度を約60℃(蒸気圧約1Torr)に保つ。キャリアガス供給管15aにNキャリアガスを流量0.5l/minで供給して、Nキャリアガスに上記テトラ−i−プロポキシチタン9を蒸気圧に応じた分圧まで含ませ、チタン化合物供給管15bを通してガス供給管21に供給する。一方、トリエトキシリン10を入れたバブラー容器12の温度を約50℃(蒸気圧約4Torr)に保つ。キャリアガス供給管16にNキャリアガスを流量0.25l/minで供給して、Nキャリアガスにトリエトキシリン10を蒸気圧に応じた分圧まで含ませ、リン化合物供給管16bを通してガス供給管21に供給する。また、雰囲気ガス供給管14に雰囲気ガスとしてNを流量2.5l/min,Oを流量0.5l/min供給する。これらすべてのガスはガス供給管21、ガス分散ヘッド13を通して、ヒータブロック8上の基板表面に供給される。
【0041】
基板表面に供給されたテトラ−i−プロポキシチタン9とトリエトキシリン10は、基板表面あるいはその近傍で熱分解する。テトラ−i−プロポキシチタン9は分解して酸化チタンに、トリエトキシリン10は分解してリン酸化物になる。この酸化チタンとリン酸化物とがネットワークを形成して、上記基板表面にリンを含む酸化チタン膜が形成される。
【0042】
このようにした場合、バブラー容器11,12の設定温度による蒸気圧制御や、このバブラー容器11,12に通すNキャリアガスの流量を変えることにより、上記各化合物9,10の供給量を精度良く制御できる。したがって、形成されるリンを含む酸化チタン膜の膜厚均一性を高め、リン濃度を確実に制御することができる。
【0043】
ここで、ヒータブロック8によって基板温度を約200℃〜500℃の間で変化させて、リンを含む酸化チタン膜の形成実験を行った。
【0044】
図3は、このようにして形成したリンを含む酸化チタン膜(実施例1)のIR吸収スペクトルを示している。また、図3中には、図2の装置でテトラ−i−プロポキシチタン9のみを供給して形成したノンドープのTiO膜(比較例1)のIR吸収スペクトルと、塗布液(テトラ−i−プロポキシチタン,P,カルボン酸,イソプロピルアルコール)を回転塗布し、約300℃で乾燥して形成したリンを含む酸化チタン膜(比較例2)のIR吸収スペクトルとを併せて示している。分かるように、比較例1のTiO膜のIR吸収スペクトルは約1000cm−1付近にピークを示さない。これに対して、実施例1のリンを含む酸化チタン膜のIR吸収スペクトルは約1000cm−1付近にピークがあり、比較例2の塗布液からの膜のIR吸収スペクトルとほぼ同様の特性を示している。このことから、実施例1の膜は、確かにリンを含む酸化チタン膜であることが解る。
【0045】
図4は、基板温度を変化させたときのリンを含む酸化チタン膜の屈折率を示している。屈折率はエリプソメータで測定した。基板温度が250℃から450℃に上昇するに応じて、屈折率が2.0から1.6に変化した。このことは温度上昇に応じて、膜中のリン濃度を高く設定できることを示唆している。
【0046】
また、図5は、シリコン基板7の表面に、基板温度を変えてリンを含む酸化チタン膜を形成し、さらにN雰囲気中で約900℃、30分間の熱処理を施したときのn層のシート抵抗値を示している。シート抵抗の測定は、リンを含む酸化チタン膜を熱濃硫酸で溶解した後、四探針法で測定した。基板温度が250℃か450℃に上昇するにつれて、シート抵抗値が5×10Ω/sq.から5×10Ω/sq.に変化した。このことは温度上昇に応じて、膜中のリン濃度を高く設定できることを示唆してる。この結果は、屈折率から得られた結果と対応している。
【0047】
なお、キャリアガスとしては上記Nだけでなく、He又はArなどの不活性ガスを用いることができる。
【0048】
チタン化合物としては上記テトラ−i−プロポキシチタン9だけでなく、常温で液体のチタンアルコキシド、例えば、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−i−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン等を用いることができる。
【0049】
リン化合物としては上記トリエトキシリン10だけでなく、常温で液体のリン酸エステルまたは亜リン酸エステル、例えばトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリ−n−プロポキシリン酸、トリ−i−プロポキシリン酸、トリメトキシリン等を用いることができる。
【0050】
図1は、この発明を具体化した太陽電池の製造プロセスを示している。
【0051】
i)まず、図1(a)に示すように、厚さ約400μm、比抵抗約1Ω・cmのp型単結晶シリコン基板1を洗浄する。続いて、NaOH水溶液とイソプロピルアルコールの混合液を用いて、液温約90℃でテクスチャエッチングを行う。これにより、基板1の表面1aに、高低差数μmのピラミッド状の微小な凹凸(凹部を22b、凸部を22aで示す)を形成する。
【0052】
ii 次に、図1(b)に示すように、基板1を図2に示したCVD装置のヒータブロック8上に載置し、基板1を約400℃に加熱し一定温度に保つ。テトラ−i−プロポキシチタン9を入れたバブラー容器11の温度を約60℃(蒸気圧約1Torr)、Nキャリアガス流量を0.5l/min、トリエトキシリン10を入れたバブラー容器12の温度を約50℃(蒸気圧約4Torr)、Nキャリアガス流量を0.25l/min、雰囲気ガスとしてのN流量を2.5l/min,O流量を0.5l/minに設定する。この条件で、基板表面1aに、膜厚約70〜90nmのリンを含む酸化チタン膜2を形成する。基板表面1aに原料をガス状態で供給するCVD法で形成するので、微小な凹凸を持つ基板表面1aであっても、上記リンを含む酸化チタン膜2を均一な膜厚に形成することができる。
【0053】
iii 次に、図1(c)に示すように、この基板1を石英チューブ炉に移し、N雰囲気中において約900℃で30分間の熱処理を行う。これにより、基板1の表面1aに、上記リンを含む酸化チタン膜2からリンを拡散してシート抵抗値が約60〜80Ω/sq.のn層3を形成する(基板1内部のp型部分とn層3とでpn接合が形成される。)。同時に、基板表面1a上に、上記リンを含む酸化チタン膜2からなる反射防止膜を形成する。工程ii でリンを含む酸化チタン膜2を均一な膜厚に形成しているので、均一な膜厚の反射防止膜を形成することができる。この反射防止膜は、吸湿性が小さく、屈折率が約1.6〜2.1なので、単独で用いられる太陽電池の反射防止膜として好適なものである。
【0054】
なお、上記熱処理の温度及び時間は、必要とするn層の表面濃度及び接合深さにより設定される。また、n層の表面濃度及び接合深さは酸化チタン膜中に含まれるリン濃度、熱処理温度、熱処理時間により制御できる。太陽電池に適したn層を得るには、熱処理温度は約800℃〜約1000℃の範囲内に設定するのが好ましい。
【0055】
iv 次に、図1(d)に示すように、基板裏面1bにアルミペーストをスクリーン印刷法により印刷し、約700℃で焼成して、アルミペーストからなる裏面電極4を形成するとともに、アルミペーストからアルミを基板裏面1bに拡散してp層5を形成する。
【0056】
v)最後に、図1(e)に示すように、受光面1aに、銀ペーストをスクリーン印刷法により櫛形あるいは魚骨形に印刷し、約700℃で焼成して受光面電極6を形成する。この時、受光面電極6は、銀ペースト中のガラスフリットなどの作用により、リンを含む酸化チタン膜2を貫通してn層3と接触する。
【0057】
受光面電極6のための焼成温度は約600℃〜約800℃の範囲内に設定するのが好ましい。なお、受光面電極6は、メッキあるいは蒸着によっても形成できる。
【0058】
このように、この形成方法によれば、CVD法によって上記リンを含む酸化チタン膜2を均一な膜厚に形成でき、したがって、熱処理後に均一な膜厚の反射防止膜を得ることができる。この結果、太陽電池の完成後に高い短絡電流を得ることができる。また、上記熱処理によってpn接合と反射防止膜とを同時に形成するので、工程数が少なく簡単なプロセスで太陽電池を作製することができる。
【0059】
図6は、このようにして作製した太陽電池(実施例3)の表面反射率を示している。また、図6中には、比較のために、図14に示したプロセスに従って、塗布液を用いてリンを含む酸化チタン膜を形成し、熱処理を行ってpn接合と反射防止膜を同時に形成した太陽電池(比較例3)の表面反射率を併せて示している。この比較例3の太陽電池は、テクスチャエッチングした基板表面にリンを含む酸化チタン塗布液を回転塗布し、約300℃、15分間の乾燥後、900℃、30分間の熱処理を行ってn層を形成した。その後のプロセス条件は実施例3と同様の条件とした。
【0060】
図6から明らかなように、CVD法によってリンを含む酸化チタン膜2を均一な膜厚に形成しているので、凹凸を持つ基板表面1aであっても、均一な膜厚の反射防止膜を形成でき、塗布液を用いた比較例3に比して表面反射率を低減することができた。この結果、比較例3に比して、短絡電流を向上させることができた。
【0061】
図8は、この発明を具体化した太陽電池の製造装置を示している。
【0062】
この装置は、ローラ116A,116B,…,116Gを含むベルト駆動手段116と、ローラ116A,116B,…,116Gに環状に取り巻く搬送用ベルト110を備えている。上記ローラ116A,116Bは図において右、左の位置に水平に配置され、ローラ116C,116Gはそれらの斜め下方の位置に水平に配置されている。この結果、搬送用ベルト110のローラ116Aと116Bとの間の部分は、膜が形成されるべき基板を載置するための水平部を構成している。なお、ローラ116D,116Fはローラ116C,116Gの間に比較的接近して配置され、ローラ116Eはローラ116D,116Fの間でそれらよりも下方に配置されている。搬送用ベルト110はローラ116D,116Fの内側、ローラ116Eの外側を通っており、このローラ116Eを巻回する部分はベルト洗浄部114で洗浄されるようになっている。
【0063】
上記搬送用ベルト110の水平部に沿って右から順に、リンを含む酸化チタン膜を形成する第一製膜部111と、熱処理部112と、上記リンを含む酸化チタン膜より屈折率の大きい膜を形成する第二製膜部113が設けられている。これらの第一製膜部111、熱処理部112、第二製膜部113には、それぞれ搬送用ベルト110の下に沿ってヒータプレート115A,115B,115Cが設けられている。また、第一製膜部111、熱処理部112および第二製膜部113は、断面略コの字状に一体に形成されたカバー124で覆われている。上記第一製膜部111、第二製膜部113には、それぞれヘッドアセンブリ130を有するディスパージョンヘッド125,128が設けられている。カバー124のうち第一製膜部111、第二製膜部113のヘッドアセンブリ130を覆う部分は、ヘッドアセンブリ130に対して隙間をもって凸状に形成されている。熱処理部112を覆う部分には、それぞれ第二製膜部113側に雰囲気ガス導入口127、第一製膜部111側に雰囲気ガス排出口126が設けられている。さらに、第一製膜部111と熱処理部112との間、熱処理部112と第二製膜部113との間は、それぞれカバー124と一体に形成された仕切板129A,129Bで仕切られている。
【0064】
上記ディスパージョンヘッド125,128は、詳しくは図9に示すように構成されている。すなわち、このヘッドアセンブリ130は、天板135と、この天板135の周縁から下方に延びる4枚の側板(左右の側板のみを図示する)134と、左右の側板134,134の間に一定の隙間をもって配置された多数の仕切板133を有している。奥の側板のうち天板135と仕切板133の上端との間に相当する箇所には2つのガス導入口131,132が設けられている。さらに、各側板134の外面には、冷媒として空気を流すための配管を内蔵した冷却板138が取り付けられている。動作時には、ガス導入口131,132を通してそれぞれ原料を含んだガスが天板135と仕切板133の上端との間の空間に導入され、そこで混合される。混合されたガスGは、仕切板133に沿って下方へ吹き出され、搬送用ベルト110に載ってヘッドアセンブリ130の下方を通る基板101の表面に供給される。このガスGが基板101の表面で分解して、基板101の表面に、上記原料の種類に応じた組成を持つ膜が形成される。残余のガス等はヘッドアセンブリ130とカバー凸部136との間の隙間139を通って、排気口137を通して外部へ排出される。ヘッドアセンブリ130の温度は、冷却板135内に空気を適当な流量で流すことによって、原料が結露しない温度(後述するバブラー容器の温度)以上で、かつ原料が分解する下限温度以下の温度に調節される。
【0065】
図10は、上記ディスパージョンヘッドのヘッドアセンブリ130に、原料を含むガスを供給するための配管系統を示している(第一製膜部111、第二製膜部113の各ヘッドアセンブリ130にそれぞれこの配管系統が接続されている)。ヘッドアセンブリ130のガス導入口132にはガス供給管150が接続される一方、ガス導入口131にはガス供給管151が接続されている。
【0066】
上記ガス供給管150は希釈用Nガス供給管146と第1原料ガス供給管145bとが合流したものであり、上記ガス供給管151は希釈用Nガス供給管147およびOガス供給管148と、第2原料ガス供給管149bとが合流したものである。第1原料ガス供給管145bには、温度調整部としての温度調整器付き恒温槽163に収容されたバブラー容器161が接続され、このバブラー容器161にはキャリアガス供給管145aが接続されている。一方、第2原料ガス供給管149bには、温度調整部としての温度調整器付き恒温槽164に収容されたバブラー容器162が接続され、このバブラー容器162にはキャリアガス供給管149aが接続されている。キャリアガス供給管145a,149aには流量コントローラ142A,142B、希釈用Nガス供給管146,147には流量コントローラ143A,143B、Oガス供給管148には流量コントローラ143Cがそれぞれ設けられ、各管路を通るガスの流量を調節できるようになっている(図示しない開閉弁によって各管路を遮断することもできる。)。なお、第1原料ガス供給管145b,第2原料ガス供給管149bおよびガス供給管150,151は、原料ガスが管内で液化するのを防ぐために、図示しないヒータで暖められるようになっている。
【0067】
動作時には、各バブラー容器161,162に液状態の第1原料159,第2原料160が充填され、所定温度に保持される。キャリアガス供給管145a,149aを通して各バブラー容器161,162に所定流量のキャリアガスが導入され、導入されたキャリアガスにそれぞれ第1原料159,第2原料160がその蒸気圧に応じた分圧まで含まれる。そして、キャリアガスとともにガス状態の第1原料,第2原料が第1原料ガス供給管145b,第2原料ガス供給管149bを通して流れ、それぞれガス供給管150,151で希釈NガスやOガスに合流し、ヘッドアセンブリ130に供給される。
【0068】
この製造装置によれば、上記液状態の第1原料159,第2原料160を収容したバブラー容器161,162の設定温度による蒸気圧制御や、このバブラー容器161,162に通すキャリアガスの流量制御を行うことによって、上記各原料の供給量を精度良く制御することができる。この結果、例えば第1原料159としてチタン化合物、第2原料160としてリン化合物を採用して、リンを含む酸化チタン膜を形成する場合に、形成される膜の膜厚均一性を高め、リン濃度を確実に制御することができる。また、上記チタン化合物とリン化合物との混合割合を変えることにより、膜中のリン濃度を様々に設定できる。
【0069】
図7は、上記太陽電池の製造装置を用いて実施する太陽電池の製造プロセスを示している。ここでは、屈折率2.2〜2.5の反射防止膜を持つ、スーパーストレート型モジュールに適した太陽電池を作製する。
【0070】
i)まず、図7(a)に示すように、厚さ約400μm、比抵抗約1Ω・cmのp型単結晶シリコン基板101を洗浄する。続いて、NaOH水溶液とイソプロピルアルコールの混合液を用いて、液温約90℃でテクスチャエッチングを行う。これにより、基板101の表面101aに、高低差数μmのピラミッド状の微小な凹凸(凹部を122b、凸部を122aで示す)を形成する。
なお、上記凹凸の高低差は数μm〜数十μmの範囲であるのが好ましい。
【0071】
ii 次に、図8に示した太陽電池の製造装置を用いて、図7(b)に示すリンを含む酸化チタン膜102Aと、図7(c)に示すn層(pn接合)103と、図7(d)に示す屈折率2.2乃至2.5の酸化チタン膜(リンを含まない)102Bとを、次のようにして連続的に形成する。
【0072】
まず、装置の設定条件として、第一製膜部111では、ヒータープレート115Aによる基板101の加熱温度を400℃に設定するとともに、ヘッドアセンブリ温度を100〜120℃に設定する。第一製膜部111につながるバブラー容器161(図10)に、第1原料159としてテトラ−i−プロポキシチタンを充填し、このバブラー容器161を温度調整器によって温度85℃に保つ。キャリアガス供給管145aに流すキャリアガスとしてのNガス流量を1l/min、希釈用ガス供給管146に流す希釈用Nガス流量を4l/minに設定する。また、第一製膜部111につながるバブラー容器162に第2原料160としてトリエトキシリンを充填し、このバブラー容器162を温度調整器によって温度45℃に保つ。キャリアガス供給管149aに流すキャリアガスとしてのNガス流量を0.5l/min、希釈用Nガス供給管147に流す希釈N流量を5l/min、Oガス供給管148に流すO流量を7l/minに設定する。
【0073】
また、熱処理部112では、図8に示した雰囲気ガス導入口127を通して雰囲気ガスとしてのNガスをカバー内に導入し、雰囲気ガス排気口126を通して排気を行う。これとともに、ヒータープレート115Bによる基板101の加熱温度を950℃に設定する。なお、搬送用ベルト110による基板の移動速度が300mm/minである場合に、基板が温度950℃に10分間保持されるように設定する。
【0074】
また、第二製膜部113では、ヒータープレート115Cによる基板101の加熱温度を300℃に設定するとともに、ヘッドアセンブリ温度を100〜120℃に設定する。第二製膜部113につながるバブラー容器161(図10)に、第1原料159としてテトラ−i−プロポキシチタンを充填し、このバブラー容器161を温度調整器によって温度85℃に保つ。キャリアガス供給管145aに流すキャリアガスとしてのNガス流量を1.5l/min、希釈用ガス供給管146に流す希釈用Nガス流量を4l/minに設定する。また、第二製膜部113につながるバブラー容器162に第2原料160として水を充填し、このバブラー容器162を温度調整器によって温度40℃に保つ。キャリアガス供給管149aに流すキャリアガスとしてのNガス流量を0.2l/min、希釈用Nガス供給管147に流す希釈N流量を8l/minに設定する。
【0075】
このような設定条件の下で、図8中に示したロード位置110aで搬送用ベルト110に基板101を載置し、ベルト駆動機構116によって一定速度300mm/minで基板を左方向へ移動させる。これにより、図7(b)に示すように、第一製膜部111において、基板101の表面に、リンを含む酸化チタン膜102Aを形成する。これに連続して、図7(c)に示すように、熱処理部112において、最大温度950℃で10分間の熱処理を行って、上記リンを含む酸化チタン膜102Aから基板表面101aにリンを拡散してn層103を形成する(基板101内部のp型部分とn層103とでpn接合が形成される。)。これに連続して、図7(d)に示すように、上記リンを含む酸化チタン膜102Aの表面に、この膜よりも屈折率が大きい屈折率2.2乃至2.5の酸化チタン膜(リンを含まない)102Bを形成する。このように3つの工程をベルト搬送により自動的に連続して形成する。
【0076】
ここで、上記第一製膜部111では、基板表面101aに原料をガス状態で供給するCVD法で形成するので、微小な凹凸を持つ基板表面101aであっても、リンを含む酸化チタン膜102Aを均一な膜厚に形成することができる。熱処理後の上記リンを含む酸化チタン膜102Aの屈折率及び膜厚をエリプソメーターで測定したところ、屈折率は1.7〜1.8、膜厚は約30〜40nmであった。得られたn層103のシート抵抗値は約60〜80Ω/cmであった。なお、リンを含む酸化チタン膜は、太陽電池の表面が直接空気に接する用途の場合は、波長約600nm付近で表面反射率が最小になるように約100nmの膜厚で形成されるが、この例のようにモジュール化に適した太陽電池を作製する場合、不純物拡散源となり得る範囲で極力薄い膜厚とするのが好ましい。
【0077】
また、上記第二製膜部113では、第一製膜部111と同様に原料をガス状態で供給するCVD法で形成するので、酸化チタン膜を均一な膜厚に形成することができる。得られた酸化チタン膜102Bの屈折率及び膜厚をエリプソメーターで測定したところ、屈折率は2.2〜2.5、膜厚は約50〜60nmであった。これにより、良好な干渉効果を示す均一な膜厚の反射防止膜120A,102Bを作製することができた。なお、屈折率2.2乃至2.5の膜として酸化チタン膜102Bを採用した主な理由は、特開昭62−104081号公報に開示されているように、基板の加熱温度を150〜350℃の範囲で変えることにより屈折率を約1.8〜2.4と変えることができるからである。
【0078】
また、上記3つの工程をベルト搬送により自動的に連続して実行するので、これら3つの工程の間で基板101を冷却し、昇温するための時間を短縮することができる。すなわち、これらの工程をそれぞれ独立した装置で行う場合は、工場内で前の工程用の装置が設置されている場所から次の工程用の装置が設置されている場所まで基板101を運ぶために、基板101を一旦常温付近まで冷却する必要がある。これに対して、図8の製造装置によれば、上記3つの工程を連続して実行できるので、基板101を一旦常温付近まで冷却する必要がなく、前の工程用の温度から次の工程用の温度まで直接温度を変化させればよい。すなわち、図11に示すように、第一製膜部111の400℃から熱処理部112の950℃へ、また、熱処理部112の950℃から第二製膜部113の300℃へ直接温度を変化させれば良い。したがって、太陽電池の製造に要する時間を短縮できる。また、上記3つの工程をそれぞれ独立した装置で行う場合と異なり、基板101を装置間で移載する作業が不要となり、太陽電池の製造コストを下げることができる。
【0079】
なお、第一製膜部111における基板の加熱温度は350〜450℃、熱処理部112における基板の加熱温度は800℃〜1000℃、第二製膜部113における基板の加熱温度は200〜400℃の範囲内に設定するのが好ましい。
【0080】
iii 次に、図7(e)に示すように、基板裏面101bにアルミペーストをスクリーン印刷法により印刷し、約700℃で焼成して、アルミペーストからなる裏面電極104を形成するとともに、アルミペーストからアルミを基板裏面101bに拡散してp層105を形成する。
【0081】
iv 次に、図7(f)に示すように、受光面101aに、銀ペーストをスクリーン印刷法により櫛形あるいは魚骨形に印刷し、約700℃で焼成して受光面電極106を形成する。この時、受光面電極106は、銀ペースト中のガラスフリットなどの作用により、リンを含む酸化チタン膜102を貫通してn層103と接触する。
【0082】
受光面電極106のための焼成温度は約600℃〜約800℃の範囲内に設定するのが好ましい。なお、受光面電極106は、メッキあるいは蒸着によっても形成できる。
【0083】
このようにして作製した太陽電池にハンダコートを行い、リード線でストリングする。この状態の太陽電池をEVAで挟み、上下からガラスと裏面保護シートを熱圧着することにより、スーパーストレート型モジュールを作製することができる。
【0084】
このモジュールでは、太陽電池の表面に、リンを含む酸化チタン膜102Aおよび屈折率2.2〜2.5のリンを含まない酸化チタン膜102Bを反射防止膜として有しているので、リンを含む酸化チタン膜のみからなる反射防止膜を有する場合に比して、太陽電池の表面反射率を低減でき、短絡電流を向上させることができる。
【0085】
ここで述べた太陽電池の製造プロセスは、図1の製造プロセスに比して、上記屈折率2.2乃至2.5の酸化チタン膜102Bを形成する工程が多いが、図12や図13のプロセスよりは依然として工程数が少なく簡単なプロセスである。しかも、上記リンを含む酸化チタン膜102Aと、n層(pn接合)103と、屈折率2.2乃至2.5の酸化チタン膜(リンを含まない)102Bとを1つの装置で連続的に形成しているので、図1のプロセスに比して、実際の作業量を減らすことができる。
【0086】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明のリンを含む酸化チタン膜の形成方法によれば、基板表面に、上記チタン化合物とリン化合物との反応物からなるリンを含む酸化チタン膜を形成することができる。この形成方法は、原料をガス状態で供給するCVD法であるから、微小な凹凸を持つ基板表面であっても、上記リンを含む酸化チタン膜を均一な膜厚に形成することができる。
【0087】
また、この発明の太陽電池の製造装置によれば、第一製膜部、熱処理部および第二製膜部によって、太陽電池の製造に要する時間を短縮することができる。また、この製造装置によれば、基板を装置間で移載する作業が不要となるので、太陽電池の製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態の太陽電池の製造工程を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態のリンを含む酸化チタン膜の形成方法を実施するためのCVD装置を示す図である。
【図3】 この発明を適用して形成したリンを含む酸化チタン膜のIR吸収スペクトルを比較例と併せて示す図である。
【図4】 上記リンを含む酸化チタン膜を形成するときの基板温度と、形成した膜の屈折率との関係を示す図である。
【図5】 上記リンを含む酸化チタン膜を形成するときの基板温度と、熱処理後の基板の面抵抗との関係を示した図である。
【図6】 上記太陽電池の製造工程によって作製した太陽電池の表面反射率を比較例と併せて示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態の太陽電池の製造工程を示す図である。
【図8】 この発明の実施の形態の太陽電池製造装置における第一製膜部、熱処理部および第二製膜部の構成を示す図である。
【図9】 上記第一製膜部、第二製膜部に設けられたディスパージョンヘッドの断面構造を示す図である。
【図10】 上記太陽電池製造装置の各ディスパージョンヘッドに接続された配管系統を示す図である。
【図11】 上記太陽電池製造装置における第一製膜部、熱処理部および第二製膜部の温度プロファイルを示す図である。
【図12】 従来の太陽電池の製造工程を示す図である。
【図13】 別の従来の太陽電池の製造工程を示す図である。
【図14】 別の従来の太陽電池の製造工程を示す図である。
【図15】 凹凸を持つ基板表面に、塗布液を用いて不純物を含む酸化チタン膜を形成したときの状態を示す図である。
【図16】 従来の太陽電池の表面反射率を示す図である。
【図17】 従来の常圧CVD装置のヘッド近傍の構成を示す図である。
【符号の説明】
1,101 p型シリコン基板
2,102A リンを含む酸化チタン膜
102B 酸化チタン膜
3,103 n
4,104 裏面電極
5,105 p
6,106 受光面電極
7,107 基板
8 ヒータブロック
9 テトラ−i−プロポキシチタン
10 トリエトキシリン
11,12,161,162 バブラー容器
13 ガス分散ヘッド
110 ベルト
116 ベルト駆動機構
115A,115B,115C ヒータ
111 第一製膜部
112 熱処理部
113 第二製膜部
114 ベルト洗浄部
125,128 ディスパージョンヘッド
130 ヘッドアセンブリ

Claims (4)

  1. 所定温度に加熱された基板の表面に、チタン化合物とリン化合物とをガス状態で供給して、
    上記基板の表面に、上記チタン化合物とリン化合物との反応物からなるリンを含む酸化チタン膜を形成するようにしたことを特徴とするリンを含む酸化チタン膜の形成方法。
  2. 請求項1に記載のリンを含む酸化チタン膜の形成方法において、
    液状態のチタン化合物、リン化合物にそれぞれキャリアガスを通し、上記チタン化合物、リン化合物を蒸気圧に応じて上記キャリアガスに含ませ、上記キャリアガスとともに上記基板の表面に供給することを特徴とするリンを含む酸化チタン膜の形成方法。
  3. 膜が形成されるべき基板を載置できるように、水平に配置された水平部を有する搬送用ベルトと、
    この搬送用ベルトの水平部を水平方向に移動させることができるベルト駆動手段と、
    上記搬送用ベルトの水平部が上記ベルト駆動手段によって移動される移動経路のうち特定の領域に設けられ、上記水平部上に載置されて移動する基板を所定温度に加熱し、この基板の表面にチタン化合物とリン化合物とをガス状態で供給して、リンを含む酸化チタン膜を形成する第一製膜部と、
    上記移動経路のうち上記第一製膜部に続く領域に設けられ、上記基板を上記第一製膜部が加熱する温度よりも高い温度に保持する熱処理部と、
    上記移動経路のうち上記熱処理部に続く領域に設けられ、上記リンを含む酸化チタン膜上にこの膜より屈折率の大きい膜を形成する第二製膜部とを備えたことを特徴とする太陽電池の製造装置。
  4. 請求項に記載の太陽電池の製造装置において、
    液状態のチタン化合物が充填されたバブラー容器と、
    液状態のリン化合物が充填されたバブラー容器と、
    上記各バブラー容器の温度を調整する温度調整部と、
    上記各バブラー容器内で蒸発した上記チタン化合物、リン化合物を上記第一製膜部へ輸送するための配管とを備え、
    上記第一製膜部は、上記配管を通して受けたガス状態のチタン化合物およびリン化合物を混合して上記基板の表面へ向けて吹き出すディスパージョンヘッドを有していることを特徴とする太陽電池の製造装置。
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