JP3793075B2 - セメント基材用樹脂配合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、セメント基材用樹脂配合物に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、セメント基材中に樹脂が導入されたポリマーセメントを製造するためのセメント基材用樹脂配合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セメント系建材物は、住宅等の外壁材、屋根材等の外装材として広く用いられており、表面に柄、目地等の凹凸模様、塗装等の施された多種多様の意匠を有するものが提供されている。これらのセメント系建材物は、通常、セメントを主成分とし、珪石粉、フライアッシュ等の無機充填剤と、パルプ、ロックウール等の補強繊維を添加してなるセメント基材を含有する原料スラリーを抄造により半硬化シートとし、プレス機で脱水成型して柄、目地等の凹凸模様を付与した後、得られるワークを養生、乾燥してなるセメント硬化体に塗装を施すことにより製造される。
【0003】
このようなセメント系建材物では、さらに防水性や耐薬品性などの耐久性を付与する方法として、セメント基材に樹脂成分を混合した、いわゆるポリマーセメントを用いる方法が知られている。このようなポリマーセメントでは、樹脂成分の分散性やセメント硬化体への樹脂成分の浸透性を考慮して、一般的には樹脂エマルジョン等の樹脂分散液が用いられている。
【0004】
しかし、樹脂成分を含有するセメント基材を用いてセメント系建材物を製造する場合には、このような樹脂エマルジョン等の粘性によって生じる問題がしばしば見られていた。具体的には、プレス成型時の半硬化シートの金型への付着が挙げられる。そのため、樹脂成分を含有するセメント基材を用いてセメント系建材物を製造する場合には、成型方法や製造条件が限定され、生産効率の低下が避けられなかったのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、養生工程における熱によって溶融し、冷却後硬化する粉体樹脂をセメント基材中に混合する方法が提案されている。しかし、粉体樹脂は樹脂エマルジョン等に比べて粒径が大きく、予め水やアルコール等の親水性溶媒により膨潤されていないため、原料スラリー中での分散性や相溶性が悪いという問題があった。そのため、粉体樹脂が加熱により溶融流動してもセメント成分と馴染まず、セメント硬化体の空隙が樹脂成分によって被覆されにくく、目的とする高い防水性や耐薬品性が得られないという問題があった。
【0006】
そこでこの出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、通常のセメント系建材物の製造方法を適用して得られるセメント系建材物において高い防水性を付与できるセメント基材用樹脂配合物を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、少なくともシリカを主成分とする無機粉体と熱溶融硬化性樹脂を混合して混練し、冷却固化して微粉砕して得られるセメント基材用樹脂配合物を提供する。
【0008】
この出願の発明は、第2には無機粉体のブレーン値が2000〜10000cm2/gの範囲であるセメント基材用樹脂配合物を、および第3には、無機粉体を30〜50重量%配合して得られるセメント基材用樹脂配合物を提供する。
【0009】
さらに、この出願の発明は、第4には、無機粉体がフライアッシュを含有するセメント基材用樹脂配合物を、第5には、無機粉体が珪石粉を含有するセメント基材用樹脂配合物を、第6には、無機粉体が多孔質粉体を含有するセメント基材用樹脂配合物を、そして、第7には、多孔質粉体が珪藻土であるセメント基材用樹脂配合物を提供する。
【0010】
この出願の発明は、さらに、第8には、無機粉体がシリカフュームを含有する前記いずれかのセメント基材用樹脂配合物をも提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物は、少なくともシリカを主成分とする無機粉体と熱溶融硬化性樹脂を混練、微粉砕して得られるものである。つまり、無機粉体と熱溶融硬化性樹脂の混練により無機粉体が樹脂で被覆されるが、それをさらに微粉砕することにより、シリカを主成分とする無機粉体の一部が表面に現れるのである。したがって、この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物は、無機粉体が少なくとも部分的に樹脂に被覆された微粉体状の無機粉体・樹脂複合体であるといえる。
【0012】
このとき、シリカを主成分とする無機粉体とは、セメント基材に無機充填剤として一般的に添加される種々の微粉体であればよく、その粒径はとくに限定されない。好ましくは、ブレーン値が2000〜10000cm2/gのものとする。ブレーン値が2000cm2/g未満の無機粉体は、粒径が大きいために、得られるセメント基材用樹脂配合物をセメント基材に添加した際に原料スラリーとの相溶性が悪くなりやすい。一方、ブレーン値が10000cm2/gよりも大きい場合には、無機粉体の粒径が小さいために凝集が起こり易くなり、樹脂成分と混練、微粉砕しても複合体が形成されにくくなる。
【0013】
また、この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物では、無機粉体の添加量は、30〜50重量%とすることが好ましい。無機粉体の添加量が30重量%未満では、得られるセメント基材用樹脂配合物が、無機粉体が樹脂成分によって部分的に被覆された無機粉体・樹脂複合体ではなく、樹脂成分のみを有するものとなり易く、反対に、50重量%より多い場合には、樹脂成分により被覆されない無機粉体のみのものを多く含むようになる。
【0014】
シリカを主成分とする無機粉体の種類としては、各種のものが例示されるが、中でも、フライアッシュ、珪砂、珪石粉、あるいは、多孔質粉体は、表面積が広く、樹脂成分と複合体を形成した後も容易にセメントと水和反応でき、とくに好ましい。多孔質粉体は、シリカを主成分とするものであればよく、珪藻土のような天然物でもあっても、多孔質珪酸塩のような合成多孔質粉体であってもよい。以上のとおりの無機粉体には、シリカフュームが含有されていることが好ましい。シリカフュームは、製鋼用脱酸剤のフェロシリコンや金属シリコンを製造する再に電気炉の中で炭酸ガスと共に発生する煙霧を回収して得られる、非晶性のガラス質微粒子である。無機粉体としてシリカフュームを含有させることにより、この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物を用いて得られるセメント基材の強度や耐久性が格段に向上する。シリカフュームの含有量はとくに限定されないが、無機粉体量に対して5〜10重量%程度含有させれば十分に効果が得られる。
【0015】
一方、この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物において、添加される熱溶融硬化性樹脂とは、加熱により溶融あるいは軟化し、冷却(室温程度)により固化あるいは硬化する性質を有する種々のものをいい、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0016】
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いる場合には、前記無機粉体と混合し、融点付近まで加熱、混練することにより、樹脂が溶融し、無機粉体が被覆される。冷却後、得られたバルク状の無機粉体・樹脂複合体を微粉砕することにより、この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物が得られる。このようなセメント基材用樹脂配合物をセメント系建材物の原料スラリーに添加すれば、プレス成型工程やオートクレーブ養生工程における加熱により抄造シートの脱水、水和反応によるセメントの硬化と同時に、樹脂の溶融、流動が進行し、セメント硬化体の空隙に樹脂成分が浸透し、完全に被覆されるのである。したがって、用いる熱可塑性樹脂は、プレス成型および/またはオートクレーブ養生工程の加熱温度に応じた融点を有するものを適宜選択すればよい。
【0017】
また、熱可塑性樹脂の中でも軟化点が低いポリエチレン等については、有機過酸化物を混合し、プレス成型および/またはオートクレーブ養生工程において架橋反応を進行させ、架橋ポリエチレンとすることにより連続使用可能温度を大幅に上昇させることもできる。
【0018】
一方、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いる場合には、熱可塑性樹脂と同様に、前記無機粉体と樹脂成分のみを混合し、樹脂の軟化点付近まで加熱、混練することにより、樹脂が軟化し、無機粉体が被覆される。冷却後、得られた無機粉体・樹脂複合体を微粉砕することにより、この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物が得られる。例えば、ビスフェノールA型固形樹脂(分子量約900)よりなるエポキシ樹脂は、68℃の軟化点を有するので、この温度付近で加熱、混練すればビスフェノールA型固形樹脂が軟化し、無機粉体との複合体が形成される。
【0019】
このような熱硬化性樹脂を含有するセメント基材用樹脂配合物は、硬化剤とともに原料スラリーに添加すれば、プレス成型工程やオートクレーブ養生工程における加熱により抄造シートの脱水、水和反応によるセメントの硬化と同時に、樹脂の軟化、流動、架橋反応が進行し、セメント硬化体の空隙に樹脂成分が浸透し、空隙を完全に被覆することができる。架橋された樹脂は、さらなる加熱によって溶融しないため、このようなセメント基材用樹脂配合物を添加して得られるセメント系建材物は高い耐久性を有するものとなる。例えば、前記のビスフェノールA型固形樹脂(分子量約900)は、ハロゲン系酸無水物を添加することにより融点が280℃で難燃性の硬化体となる。また、ポリアミノアミド系硬化剤等のアミン系硬化剤を加えれば、不溶不融の硬化体が得られる。
【0020】
さらに、熱硬化性樹脂を用いる場合には、硬化剤をセメント基材用樹脂配合物の製造の際に予め混合し、無機粉体表面に架橋樹脂を形成させてもよい。この場合には、硬化剤を適宜選択することにより、プレス成型工程および/またはオートクレーブ養生工程における加熱温度に応じた軟化点を有する架橋体を得ることができる。例えば、エポキシ樹脂では、架橋前のビスフェノールA型固形樹脂(分子量約1600;軟化点約98℃)に芳香族酸無水物(例えば無水トリメリット酸等)を硬化剤として添加することにより、融点168℃のエポキシ樹脂硬化体が得られる。したがって、このようなセメント基材用樹脂配合物を用いる場合には、168℃付近で成型および/または養生することにより、高い防水性を有するセメント系建材物が得られるのである。
【0021】
以上のとおりの各種熱溶融硬化性樹脂の中でも、とくにエポキシ樹脂が好ましく用いられる。具体的には、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンより得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンより得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールAとエピクロルヒドリンからなる含ブロムエポキシ樹脂等が例示される。また、硬化剤としては、脂肪族ジアミン系、脂肪族ポリアミン系、脂肪族芳香族アミン系、脂環ポリアミン系、芳香族第一アミン系、芳香族第二、第三アミン系等のアミン系硬化剤、および脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、ハロゲン系酸無水物等の酸無水物系硬化剤から、前述のとおり、所望の樹脂特性を与えるものを選択できる。
【0022】
また、この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物においては、以上のとおりの無機粉体と熱溶融硬化性樹脂のみならず、顔料や充填剤等が配合されていてもよい。
【0023】
この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物は、以上のとおりの無機粉体と熱溶融硬化性樹脂を混合し、混練した後に微粉砕して得られる。無機粉体と熱溶融硬化性樹脂の混練においては、混練時に生じる摩擦熱によって前記の熱溶融硬化性樹脂が溶融し、無機粉体を被覆するものであってもよいし、混練前あるいは混練中に無機粉体と熱溶融硬化性樹脂を加熱し、熱溶融硬化性樹脂を溶融させてもよい。また、微粉砕の方法はとくに限定されず、ミル等を用いて行うことができる。セメント基材用樹脂配合物としての最終的な粒径はとくに限定されないが、原料スラリーへの分散性等を考慮すれば、10〜30μm程度とすることが好ましい。
【0024】
そして、この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物は、原料スラリー中に添加して、抄造、成型、養生、塗装等の通常の工程によるセメント系建材物の製造に用いることができる。また、このセメント基材用樹脂配合物は、通常の方法で製造された抄造シート(湿潤シート)の表面に、セメントを主成分とするスラリーとともに散布、あるいは塗布し、成型して化粧塗膜とすることができる。いずれの方法でも得られるセメント系建材物の表面には高い防水性が付与される。また、後者の方法で製造される化粧塗膜は、後から散布または塗布されるこの出願の発明のセメント基材用樹脂配合物が湿潤シートと水和反応し、同時に樹脂成分がセメント硬化体の空隙に浸透し、空隙を被覆するため、防水性だけでなく、密着性も高いものとなる。
【0025】
この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物では、シリカ分を含む無機粉体と樹脂成分が複合体を形成しており、無機粉体部位が原料スラリー中のセメント成分と水和反応するため、樹脂部位がセメント成分とよく馴染み、原料スラリー中での分散性や相溶性だけでなく、セメント硬化体中での樹脂成分の分散性や浸透性が高くなる。また、セメント系建材物の製造においては、加熱による樹脂の溶融、流動よりも水和反応によるセメントの硬化が早く起こるため、樹脂成分が凝集し、セメント硬化体中でセメント成分と相分離するようなこともない。樹脂成分は、セメント成分の硬化に伴い、加熱溶融(または軟化)され、セメント硬化体の空隙を埋めるように広がり、セメント硬化体に高い防水性を付与するのである。
【0026】
この出願の発明のセメント基材用樹脂配合物においては、また、選択される樹脂の種類によって、製造されるセメント系建材物に、防水性だけでなく、耐薬品性、難燃性等の耐久性が付与される。例えば、架橋ポリエチレンやフッ素系樹脂を用いたセメント基材用樹脂配合物を添加すれば、耐薬品性の高いセメント系建材物となり、エポキシ樹脂をポリアミノアミド系硬化剤で架橋させたセメント基材用樹脂配合物を添加すれば、防水効果も高く、難燃性のセメント系建材物が得られるのである。
【0027】
以下、実施例を示し、この出願の発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この出願の発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0028】
【実施例】
普通ポルトランドセメント45重量%、珪砂20重量%、珪石粉25重量%、パルプ10重量%として配合した固形分濃度45%の水性スラリーを抄造し、湿潤な抄造シートを作成した。
【0029】
この抄造シートを脱水し、含水率70重量%とした未硬化抄造シートとした。<実施例1〜4>
(a)まず、次の成分を珪石粉の含有量が30重量%または50重量%となるように混合し、80〜100℃で溶融混練した後、冷却し、得られた固形物を平均粒径20〜25μmまで微粉砕してセメント基材用樹脂配合物を得た。また、使用した珪石粉のブレーン値は、3000〜10000cm2/gとした。
【0030】
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1003;JER製)
・イミダゾール含有ビスフェノール系硬化剤(エピキュア171;JER製)
・カーボンブラック
・珪石粉
・シリカフューム
(b)前記(a)で得られたセメント基材用樹脂配合物にシリカ微粉末(アエロジル#380)を1重量%ドライミックスして混合粉体を得た。
(c)(b)の混合粉体を用いて次のとおりのセメントスラリーを調整した。
【0031】
・(b)の混合粉体 10重量%
・普通ポルトランドセメント 20重量%
・珪石粉 20重量%
・上水 50重量%
(d)(c)で得られたセメントスラリーを前記の未硬化抄造シートに散布し、プレス脱水成型した後、80℃において一次養生し、さらに170℃においてオートクレーブ養生して化粧セメント板を得た。
【0032】
以上の実施例1〜4について、(c)のセメントスラリーへのセメント基材用樹脂配合物の相溶性(馴染み、分散性)、化粧セメント板における樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、および化粧塗膜の耐久密着性を測定した。
【0033】
結果を表1に示した。
<比較例1〜4>
ブレーン値の異なる珪石粉を用いて前記(a)と同様にセメント基材用樹脂配合物を調製し、これを用いてセメントスラリーを調製し、さらに、前記実施例1〜4と同様に化粧セメント板を作成して、セメントスラリーへの相溶性、化粧セメント板における樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、および化粧塗膜の耐久密着性を測定した。
【0034】
結果を表1に示した。
<実施例5>
珪石粉の代わりにブレーン値が3500cm2/gのフライアッシュを30重量%用いて前記(a)と同様にセメント基材用樹脂配合物を調製し、これを用いてセメントスラリーを調製し、さらに、前記実施例1〜4と同様に、化粧セメント板を作成して、セメントスラリーへの相溶性、化粧セメント板における樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、および化粧塗膜の耐久密着性を測定した。
【0035】
結果を表1に示した。
<実施例6>
珪石粉の代わりにブレーン値が3500cm2/gの多孔質珪藻土を30重量%用いて前記(a)と同様にセメント基材用樹脂配合物を調製し、これを用いてセメントスラリーを調製し、さらに、前記実施例1〜4と同様に、化粧セメント板を作成して、セメントスラリーへの相溶性、化粧セメント板における樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、および化粧塗膜の耐久密着性を測定した。
【0036】
結果を表1に示した。
<比較例5〜6>
珪石粉の代わりにブレーン値が5000cm2/gまたは10000cm2/gのシリカ成分を含まない硫酸バリウムを30重量%用い、前記(a)と同様にセメント基材用樹脂配合物を調製した。これを用いてセメントスラリーを調製し、前記実施例1〜4と同様に化粧セメント板を作成した。セメントスラリーへの相溶性、化粧セメント板における樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、および化粧塗膜の耐久密着性を測定した。
【0037】
結果を表1に示した。
<実施例7〜9>
無機粉体としてシリカフューム(無機粉体中5重量%)を加えた珪石粉(ブレーン値=5000または10000cm2/g)を30または50重量%用いて(a)と同様にセメント基材用樹脂配合物を調製した。これを用いてセメントスラリーを調製し、前記実施例1〜4と同様に化粧セメント板を作成して、セメントスラリーへの相溶性、化粧セメント板における樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、および化粧塗膜の耐久密着性を測定した。
【0038】
結果を表1に示した。
<比較例7〜8>
実施例7〜9と同様にシリカフューム(無機粉体中5重量%)を加えた珪石粉(ブレーン値<1000cm2/gまたは>10000cm2/g)を30重量%用いて(a)と同様にセメント基材用樹脂配合物を調製し、これを用いてセメントスラリーを調製した。前記実施例1〜4と同様に、化粧セメント板を作成して、セメントスラリーへの相溶性、化粧セメント板における樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、および化粧塗膜の耐久密着性を測定した。
【0039】
結果を表1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1より、ブレーン値が2000〜10000cm2/gの珪石粉やフライアッシュ、あるいは珪藻土を無機粉体として30〜50重量%含有するセメント基材用樹脂配合物を用いて調製したセメントスラリーは相溶性が高く、均一なスラリーが得られた。また、このスラリーを未硬化抄造シートに塗布して作成した化粧セメント板では、化粧セメント板への樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、化粧塗膜の耐久密着性がいずれも高いことが示された。(実施例1〜6)
さらに、ブレーン値が5000〜10000cm2/gの珪石粉とともにシリカフュームを5重量%添加した無機粉体を30〜50重量%含有するセメント基材用樹脂配合物を用いて調製したセメントスラリーでも高い相溶性が見られた。そして、このようなスラリーを未硬化抄造シートに塗布して作成した化粧セメント板でも、化粧セメント板への樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、化粧塗膜の耐久密着性がいずれも高いことが示された。(実施例7〜9)
一方、シリカ分を多く含む珪石粉であっても、ブレーン値が1000cm2/g以下と低い場合には、粉砕粒度が大きくなり、セメント基材用樹脂配合物の製造が不可能となった。そのため、セメントスラリーを得ることができず、化粧セメント板も作成できなかった。(比較例1)
反対にブレーン値が10000cm2/gよりも大きな珪石粉を無機粉体として含有するセメント基材用樹脂配合物では、セメントスラリーへの相溶性は良好であったものの、化粧セメント板への樹脂の分散性や化粧塗膜の防水性、さらには化粧塗膜との耐久密着性が不十分なものとなった。(比較例2)
これは粒度が細かいために無機粉体が凝集し、調製されたセメント基材用樹脂配合物において樹脂成分との複合体が形成されない部分が多くなり、化粧セメント板を作成した際に、セメントの水和反応により形成された空隙に樹脂成分が十分に広がらなかったためと考えられる。
【0042】
さらに、珪石粉のブレーン値が2000〜10000cm2/gの範囲であっても、その配合量が30重量%未満の場合には、セメントスラリーへのセメント基材用樹脂配合物の相溶性や化粧セメント板への樹脂の分散性は良好であったものの、化粧塗膜の防水性や化粧塗膜との耐久密着性が低下することが明らかになった。(比較例3)
これは、調製されたセメント基材用樹脂配合物における無機粉体の含有量が少ないために無機粉体・樹脂複合体が形成されない部分が多く、セメントの水和反応が十分に進行しなかったためと考えられる。
【0043】
また、珪石粉のブレーン値が2000〜10000cm2/gの範囲であっても、配合量が50重量%より大きい場合には、とくに化粧塗膜の防水性の低下が見られた。(比較例4)
これは、無機粉体に比較して樹脂の含有量が少ないために、セメントの空隙を樹脂成分が埋められなかったためと考えられる。
【0044】
一方、無機粉体としてシリカ分を含まない硫酸バリウムを用いた場合には、ブレーン値に関らず、セメント基材用樹脂配合物は原料スラリーに分散したが、化粧セメント板への樹脂の分散性、化粧塗膜の防水性、化粧塗膜との耐久密着性が低下した(比較例5、6)。
【0045】
これは、硫酸バリウムとセメント成分が水和反応しないため、樹脂成分のセメント成分への分散や密着が実現しなかったためと考えられる。
【0046】
さらに、珪石粉とともにシリカフュームを無機粉体として含有するセメント基材用樹脂配合物を用いた場合でも、珪石粉のブレーン値が1000cm2/g未満のときには、粒度が大きくなり、セメント基材用樹脂配合物の製造が不可能となった。そのため、セメントスラリーを得ることができず、化粧セメント板も作成できなかった。(比較例7)
一方、珪石粉のブレーン値が10000cm2/gより大きい場合には、セメント基材用樹脂配合物のセメントスラリーへの分散性は良好であったが、化粧セメント板における樹脂の分散性の低下が見られ、十分な化粧塗膜の防水性や化粧塗膜の耐久密着性が得られなかった。(比較例8)
これは粒度が細かいために無機粉体が凝集し、調製されたセメント基材用樹脂配合物において樹脂成分との複合体が形成されない部分が多くなり、化粧セメント板を作成した際に、セメントの水和反応により形成された空隙に樹脂成分が十分に広がらなかったためと考えられる。
【0047】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、セメントスラリー中での相溶性が高く、セメントの硬化にともなって樹脂も均一に分散するセメント基材用樹脂配合物が提供される。
【0048】
このようなセメント基材用樹脂配合物を用いることにより、セメント基材に樹脂エマルジョンを添加した場合のように成型方法や製造条件が限定されることがなく、また、セメント基材に樹脂粉体を添加した場合のようにセメント硬化体(化粧セメント板)の防水性が不十分となることがない。したがって、セメント硬化体(化粧セメント板)の空隙が完全に樹脂で被覆され、高い防水性が長期に渡り持続されるセメント系建材物が通常の製造条件で得られるようになる。
Claims (8)
- 少なくともシリカを主成分とする無機粉体と熱溶融硬化性樹脂を混練、微粉砕して得られるセメント基材用樹脂配合物。
- 無機粉体のブレーン値が2000〜10000cm2/gの範囲である請求項1のセメント基材用樹脂配合物。
- 無機粉体を30〜50重量%配合して得られる請求項1または2のいずれかのセメント基材用樹脂配合物。
- 無機粉体は、フライアッシュを含有する請求項1ないし3のいずれかのセメント基材用樹脂配合物。
- 無機粉体は、珪石粉を含有する請求項1ないし3のいずれかのセメント基材用樹脂配合物。
- 無機粉体は、多孔質粉体を含有する請求項1ないし3のいずれかのセメント基材用樹脂配合物。
- 多孔質粉体が珪藻土である請求項6のセメント基材用樹脂配合物。
- 無機粉体としてシリカフュームを含有する請求項1ないし7のいずれかのセメント基材用樹脂配合物。
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