JP3792193B2 - 線状光照射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被照射物に対して線状(一次元状)の光を照射する線状光照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、計測分野、切削加工分野などにおいて、被照射面に直線状の光束を照射する線状光照射装置が利用されている。線状光照射装置として、特許文献1に記載のものが従来から知られている。図8は、このようなレーザ照射装置の基本要素のみを抽出して描いた斜視図である。
【0003】
レーザ光源10から出射した光束径dのレーザ光束Lは円柱体状レンズ11の周面に入射し、円柱体状レンズ11を通過する際に屈折され、そのレンズ11の中心軸Cに直交する面内で扇状に広がりつつ進行する。このとき中心軸Cの延伸方向に光は広がらない。その結果、円柱体状レンズ11から所定距離離れた位置では、線幅dで長さがUであるような線状の光束L’が得られる。また、こうした線状光を得るために、レンズは円柱面を有しておればよく、特許文献2に記載のように円柱凹レンズを利用した構成とすることもできる。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−158003号公報
【特許文献2】
特開平07−120687号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような線状光照射装置は構成が簡単であるものの、レンズ11を通過した光が扇状に広がって線状光となるため、単位長(厳密には単位面積)当たりの光量はレーザ光源10からの光束Lの単位面積当たりの光量よりも遙かに低くなり、目的によっては充分な光強度(又は輝度)を確保することが難しくなる。線状光の単位面積当たりの光量を増すためにはレーザ光源10自体の発光光量を増加すればよいが、そのためには、より高出力のレーザ光源を用いる必要があり、コストが大幅に増加したり、或いは装置のサイズが大きくなったりするといった問題がある。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、簡単な構成であって且つ低廉なコストで、大きな光強度を有する線状光を照射することができる線状光照射装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係る線状光照射装置は、第1レーザ光源と、1以上の第2レーザ光源と、円柱レンズと、を備え、これらレーザ光源が前記レンズの中心軸に直交する同一面内に配置され、第1レーザ光源はその光軸が前記レンズの中心軸を通過するように配置される一方、第2レーザ光源はその光軸が前記レンズの中心軸を通る場合の前記レンズへの入射点よりも前記第1レーザ光源の光軸における入射点に近づく方向にずれた位置を通過するように配置されることにより、該レンズを通過する際に屈折されて線状に拡散しつつ出射した各出射光束による照射領域の少なくとも一部が、該レンズから所定距離離れた線状領域で重なるようになっていることを特徴としている。
【0008】
ここで言う「円柱レンズ」とは、入射面と出射面との少なくとも一方が円柱面(他方は同じく円柱面又は平面)となっているレンズであり、レンズ自体が円柱体形状であるレンズのみならず円柱凹レンズ等も含む。また、ここで言う「光源」とは必ずしもそれ自身が能動的に発光するものであるとは限らず、例えば他の場所に設けられた光源による出射光を案内する光導波路(光ファイバなど)の出射端面など、光を放出するもの全てを含む。なお、光源として各種のものを利用することができるが、レーザ光源を用いれば、光束径をできる限り絞った状態でレンズに入射することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態として、例えば図2に概略の光路構成を示すように、n個のレーザ光源として少なくとも第1、第2なる2個のレーザ光源10a、10bを有し、それら2個のレーザ光源10a、10bは円柱体であるレンズ11の中心軸Cに直交する同一面(図2では紙面)内に配置され、第1レーザ光源10aはその光束Laの光軸Saがレンズ11の中心軸Cを通過するように配置されている。一方、第2レーザ光源10bは、その入射光束Lbの光軸Sbがレンズ11の中心軸Cよりも手前方向にずれた位置を通過するように、つまりその光軸Sbがレンズ11の中心軸Cを通る場合の該レンズ11への入射点よりも第1レーザ光源10aの光軸Saにおける入射点Pに近づく方向にずれた位置を通過するように傾き、且つ第1レーザ光源11aとはずらして配置されている。
【0010】
この構成では、第1レーザ光源10aから出射された光束Laのうち、レンズ11の中心軸Cを通過する光線はレンズ11の直径に相当する光路を通り、該レンズ11への入射面での入射角及び出射面での出射角はいずれも0°となる。従って、中心軸Cを通過する光線は全く屈折せずに直進する。また、中心軸Cの左右で光軸Saに平行に進む光線はレンズ11の入射面及び出射面でそれぞれ屈折し、レンズ11を出射した後、扇状に広がるように進行する。一方、第2レーザ光源10bから出射された光束Lbの光軸Sbはレンズ11の中心軸Cよりも手前側を通過するように入射するため、その入射面では光軸Saに近づく方向に屈折し、更に出射面でも同方向に屈折する。そして、光束Lbは全体としてもレンズ11を通過することによって光軸Saに近づく方向に屈折し、扇状に広がりながら進行する。
【0011】
従って、第2レーザ光源10bの出射光の方向を適切に設定することにより、その第2レーザ光源10bからの光束Lbがレンズ11を通過した後の拡散光束Lb’が、第1レーザ光源10aに端を発する拡散光束La’をほぼカバーするようにすることができる。2つのレーザ光源10a、10bを同一波長としておけば、両拡散光束La’、Lb’が重なり合った範囲では、単一光源であるときよりも単位面積当たりの光強度又は光量を増加させることができる。更に同じ手法によってレーザ光源の数を増すことにより、線状領域での単位面積当たりの光強度又は光量を更に増加させることができる。
【0012】
また、2個(又はそれ以上の個数)のレーザ光源10a、10bを、それぞれ異なる波長とすることもできる。それによれば、例えば、異なる色の光による同時多重計測や、カラー光(又は白色光)などの照射等も行える。
【0013】
【発明の効果】
このように本発明に係る線状光照射装置によれば、1個のレーザ光源の出力は比較的小さくても、これを複数用いることで大きな光強度や光量を得ることができるので、安価な光源を利用することでコストを抑制することができる。また、こうした大きな光強度を得るために、複数の光源とレンズとの相対位置を適切に設定しさえすればよいので、構成も簡単である。
【0014】
【実施例】
本発明の一実施例による線状光照射装置について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施例による線状光照射装置の要部の概略構成を示す斜視図、図2は本装置の構成を上から見た状態を示す概略平面図である。なお、図1及び図2は、本装置の構成を概略的に示したものであって、各構成要素のサイズや相対的な位置関係を示す角度、離間距離などは正確ではない。また、光路についても概念を示したものであって正確ではなく、実際の光路については後述の説明で明らかになる。
【0015】
本実施例の線状光照射装置では、第1、第2、第3なる3個のレーザ光源10a、10b、10cが円柱体状のレンズ11に対し所定の位置に配置されている。具体的には、3個のレーザ光源10a、10b、10cはいずれもレンズ11の中心軸Cに直交する同一面内に配置され、且つそれらの出射光束La、Lb、Lcの光軸Sa、Sb、Scはその同一面内に含まれる。中央の第1レーザ光源10aは、その出射光束Laの光軸Saがレンズ11の中心軸Cを通るように配置されている。一方、第1レーザ光源10aを挟むように両側に配置された第2レーザ光源10b及び第3レーザ光源10cは、それぞれ出射光束Lb、Lcの光軸Sb、Scがレンズ11の中心軸Cよりも手前側、つまり、光軸Sa上の入射点Pに近づく方向にずれた位置を通過するように傾き、且つずらして配置されている。本装置の特徴は、これら3個のレーザ光源10a、10b、10cとレンズ11との相対的な配置にある。次に、その点について詳しく説明する。
【0016】
(I)入射光束の光軸がレンズの中心軸Cを通る場合
図3は、光軸Sがレンズ11の中心軸Cを通るように光束Lが入射したときの光路構成図である。中心軸Cを通る光軸Sに沿った光線はレンズ11の入射面(法面)に対して入射角0°で入射し、レンズ11の出射面から出射角0°で出射する。従って、そのいずれでも屈折することなく直進する。
【0017】
これに対し、光軸Sに平行で且つ光束Lの一方の端部に位置する光線は、レンズ11に対して入射角θ1で以て入射する。すると、その光は入射面で所定の屈折角θ2で屈折した後、レンズ11内部を直進し、その反対側の境界面(出射面)に達する。そして、その出射面で再び屈折されて外部へ出る。そのときの入射角、屈折角、及び出射角を幾何学的に検討すると図3に示すようになり、レンズ11から出射した後の光線が光軸Sと成す角度θ3は、
θ3=2・(θ1−θ2) …(1)
となる。
【0018】
また、波長λの光に対する空気中の屈折率をn1、レンズ11を構成する材料の屈折率をn2とするとき、
n2・sinθ2=n1・sinθ1
となる。ここで、空気中の屈折率n1を1とし、レンズ11の材料である石英ガラスの屈折率n2を1.5とすると、θ1とθ2との間には、
sinθ1/sinθ2=1.5
なる関係が成り立つから、θ2は次の(2)式で算出できる。
θ2=sin-1[(sinθ1)/1.5] …(2)
【0019】
すなわち、図3に描出したように、光軸Sから左右にそれぞれθ1だけ開いた範囲でレンズ11に照射される光束Lは、レンズ11を通過した後、光軸Sから左右にそれぞれ2・(θ1−θ2)の開き角を以て広がるように拡散する拡散光束L’となる。厳密には、この拡散光束L’の出発点は図3ではレンズ11後方の収束点Fであるが、通常、レンズ11から拡散光束L’の照射対象までの距離はレンズ11の径に比べて遙かに大きいため(図3では、図面の制限上、拡散光束La’の投影面Bとレンズ11との離間距離を非常に短く描いているが、実際にはこの距離は格段に長いのが普通である)、拡散光束L’はレンズ11の中心軸Cから広がるものと看做しても構わない。
【0020】
具体的な例として、レンズ11の直径が5mm、レンズ11に入射する光束Lの光径はその直径の1/2の2.5mmであるとした場合の光路構成を図4に示す。このときには、入射角θ1は約30°となる。従って(2)式によりθ2を求めると、約20°と求まる。更に、レンズ11から出射する拡散光束L’ の光軸Sに対する開き角θ3は、(1)式より約20°と求まる。当然のことながら、この拡散光束L'はレンズ11から離れるに従い広がるから、レンズ11から充分に離れた位置においてレンズ11からの距離をTとすると、拡散光束L’により形成される線状光の長さは、2T・sin20(deg)である。例えば、T=100cmの位置では、線状光の長さは約68cmとなる。
【0021】
(II)入射光束の光軸がレンズの中心軸Cを通らない場合
さて次に、図4に示した状態から、レンズ11に当たる光束Lが左右に平行移動した場合について考えてみる。つまり、光束Lの光軸Sがレンズ11の中心軸Cを外れた場合である。図5は図4の状態から光束Lが右方向に0.5mm平行移動した状態を示す光路構成図、図6は図4の状態から光束Lが右方向に1mm平行移動した状態を示す光路構成図である。光束Lに含まれる、光軸Sに平行な各光線に対し、上記(I)と同様の手法を適用して、その光線に対する出射光線の開き角θ3を求めることができる。
【0022】
図5の場合には、光束Lの両端部に位置する光線の入射角θ1は、右側が約45°、左側が約17°であり、レンズ11を通過した後の拡散光束L’の開き角θ3は左側が約34°、右側が約11°となる。また、図6の場合には、光束Lの両端部に位置する光線の入射角θ1は、右側が約67°、左側が約5°であり、レンズ11を通過した後の拡散光束L’の開き角θ3は左側が約58°、右側が約3.5°となる。すなわち、光束Lを右方向に平行移動すると、レンズ11から出射する拡散光束L’は光は全体的に左側に屈折しつつ広がる。その結果、例えばレンズ11から所定距離だけ離れた位置の投影面B上に投影される線状光の像は、(I)のときに形成される投影像Aを外れ、左方向に長く延伸する。
【0023】
従って、上記のような入射光束Lと中心軸Cとの相対的な位置関係を維持したまま、光源10とレンズ11とを中心軸Cを中心にして左方向(反時計回り方向)に回転すれば、拡散光束L’を全体的に右方向に移動させることができ、(I)のときに形成される像Aを含んで重ねることができることが判る。図7は図6の状態から、光源10とレンズ11とを中心軸Cを中心にして左方向に約20°回転したときの光路構成を示す図である。このとき、投影面B上で拡散光束L’の照射範囲は線状の投影像Aを完全にカバーし、しかも、その拡散光束L’のほぼ中央付近が投影像Aに重なる。
【0024】
すなわち、図4に示した入射光束Lと図7に示した入射光束Lとを同時にレンズ11に照射することによって、レンズ11から或る程度以上離れた位置では、両者の拡散光束L’が重なる線状領域(この場合には、図4に示した拡散光束L’の全てが図7に示した拡散光束L’にカバーされる)が形成され、その線状領域では単一の入射光束を利用した場合よりも光強度を増加させることができる。レンズ11への入射光束つまりレーザ光源の数を更に増やすことにより、拡散光束を更に重畳させて光強度を一層増加させることができる。
【0025】
図1及び図2に示した本実施例の装置に戻り説明すると、この装置はレーザ光源を3個設けたものであって、第1レーザ光源10aが上記図4で説明した条件を満たすように配置されており、第2及び第3レーザ光源10b及び10cが上記図7で説明した条件を満たすように配置されている。従って、図示したように、両側の第2、第3レーザ光源10b、10cによる拡散光束Lb’、Lc’の一部を中央の第1レーザ光源10aによる拡散光束La’に重畳させ、その線状領域(例えば線状の照射領域12)で光強度を高めることができる。
【0026】
なお、複数設けられるレーザ光源の具体的な配置については、その光源から出射される光束の光径、レンズの直径などの基本的な光学的パラメータの他、光源のサイズやレンズから光源までの離間距離等の素子配置の制限条件などを考慮して、適宜定めることができる。また、上記実施例は3個のレーザ光源を使用しているが、それ以上の個数に増やすことも可能である。但し、上記説明で明らかなように、レンズ11での屈折が大きい場合には拡散光束の開き角が大きくなるため、線状光の単位面積当たりの光強度はそれだけ小さくなる。従って、上記のように光を重ねたときの光量の加算効果はそれだけ小さくなる。
【0027】
本実施例のような線状光照射装置は各種の装置に利用することができるが、例えば、ポリゴンミラー等を用いて線状レーザ光をそれに直交する方向に走査することにより、面状の領域に光を照射して、その領域内の3次元計測を行う計測装置などに利用することができる。
【0028】
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行うことができることは明らかである。例えば、上記実施例はレンズが円柱体状のレンズであるが、それ以外に、円柱凹レンズを用いた線状光照射装置にも本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による線状光照射装置の要部の構成を示す斜視図。
【図2】 本実施例の線状光照射装置の構成を上から見た状態を示す概略平面図。
【図3】 本発明に係る線状光照射装置の原理説明図。
【図4】 本発明に係る線状光照射装置の原理説明のための光路の一例を示す図。
【図5】 本発明に係る線状光照射装置の原理説明のための光路の一例を示す図。
【図6】 本発明に係る線状光照射装置の原理説明のための光路の一例を示す図。
【図7】 本発明に係る線状光照射装置の原理説明のための光路の一例を示す図。
【図8】 従来の線状光照射装置の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
10a、10b、10c…レーザ光源
11…円柱体状レンズ
Claims (1)
- 第1レーザ光源と、1以上の第2レーザ光源と、円柱レンズと、を備え、これらレーザ光源が前記レンズの中心軸に直交する同一面内に配置され、第1レーザ光源はその光軸が前記レンズの中心軸を通過するように配置される一方、第2レーザ光源はその光軸が前記レンズの中心軸を通る場合の前記レンズへの入射点よりも前記第1レーザ光源の光軸における入射点に近づく方向にずれた位置を通過するように配置されることにより、該レンズを通過する際に屈折されて線状に拡散しつつ出射した各出射光束による照射領域の少なくとも一部が、該レンズから所定距離離れた線状領域で重なるようになっていることを特徴とする線状光照射装置。
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