JP3792034B2 - 粒子分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は粒子分析装置に関し、さらに詳しくは、尿、血液等の試料に含まれる血球等の粒子数を測定する粒子分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
血球等の粒子を測定する方法として、フローサイトメトリー法、電気抵抗法が周知である。例えば、電気抵抗法では、検出器、すなわち電流を流した微細孔(オリフィスとしての機能を有する整流素子)に微量定量された血液試料を供給し、この微細孔を通過する際に発生する電気信号変化を検出して血球等の粒子数、粒度分布を得る。
このような測定法は、検出器に流す試料流体の流速を安定させ、その量が正確に定量されていなければ粒子数を正確に測定することができない。
【0003】
検出器に流す試料流体の量を定量するためには、
(i) 検出器に流す試料流体の液量を定量検知する検知部を流路に設ける定量方法であり、定量検知部として、水銀U字管や球を利用したマノメータ(実公昭62−22830号公報参照)が知られている。
(ii)試料流体を測定する時間を一定時間に設定する、すなわち測定時間を基準とした定量方法。
(iii) シリンジあるいは、しごきポンプ(ペリスタルラックポンプ)の定量供給手段で試料を加圧または吸引して検出器に流す試料流体の量を所定の量とする方法等が挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記(i) の手法では、流路に検知部を設けねばならず、血液試料等では汚れが生じやすく検知不良が起こりうる。水銀U字管は毒物である水銀を使用するので、取扱いが面倒であり、球を利用したマノメータは構造が複雑で球自体の動作不良が起こるという問題がある。
前記(ii)の手法では、流量を正確に一定にする必要がある。試料の液温が変われば、流量が変わるし、検出部に汚れが付着して微細孔が小さくなると、流量が少なくなり、定量精度が確保できないという問題がある。
前記(iii) の手法では、シリンジやしごきポンプを所定の量の試料流体を安定した流速にて流すためのステッピングモータ等の駆動部及び制御部を備えねばならず複雑で高価となり、又、パッキンやチューブを定期的に交換せねばならないという問題がある。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、正確に定量された量の試料流体を安定した流速で検出器に供給することができ、構成が簡単な粒子分析装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、定量された試料流体中の粒子数を測定する粒子分析装置において、一定量の試料流体を検出器に流すための定量供給手段として、膜体と、この膜体で仕切られる室とからなり、各室の内壁には流通口部が形成され、一方の室の流通口部が圧力源と連通され、他方の室の流通口部が検出器と連通されてなるポンプを備え、さらにこのポンプは、圧力源の切換えにより、膜体を一方の室の内壁に密着した状態から他方の室の内壁に密着した状態へと作動させ、両方の室の内容積量に対応する試料流体を検出器に流して試料流体中の粒子数を測定するよう構成されたことを特徴とする粒子分析装置を提供する。
【0007】
この発明におけるポンプとは、空気源や液体ポンプ等に広く用いられるもので膜体の作動により流体を吸引、吐出するダイアフラム式ポンプを意味し、具体的には膜体と、この膜体が両側に作動できるように支持する支持部と、膜体を作動させる圧力源とからなる。
【0008】
このようなポンプにより吸引排出される量は、膜の大きさや膜が作動できる大きさによって決められる。この量は充分な定量性を満たすものではないが、ある程度規定できるので、試料等を吸引排出する簡易手段として分析装置においてもいろいろと用いられている。例えば、吸引排出による試料攪拌(特開平5−40123号公報参照)、試料の充填(特開平5−232011号公報参照)、複数試料の混和、洗浄等がある。
【0009】
この発明では、試料を吸引・排出する量を陰圧もしくは陽圧によって膜体が片側に室に密着状態から圧を切り換え、膜体が逆側の室に密着されるまでとすることによって、両室の内容積の量を規定することができる。
膜体が密着することができる室を設けることによって正確に定量できるポンプを定量供給手段として用いるため前記手法における複雑な機構も必要とせず、検知部の汚れという問題もない簡易な構成である。
【0010】
この発明における試料流体中の粒子とは、例えば、所定の希釈倍率に希釈された血液中の赤血球、血小板及び白血球、尿中の懸濁物質が挙げられる。
この発明における検出器には、例えば、血液試料中の血球を分析対象の粒子として、その粒子数、粒度分布を得るフローサイトメトリー法、電気抵抗法が挙げられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1〜6は、本発明の一つの実施形態による粒子分析装置としての血球分析装置10を示す。
図1により血球分析装置10の全体構成をその流体経路構成に基づいて説明する。なお、この血球分析装置10は、図1に示され、後述するように、血液試料を試料流体として扱い、赤血球及び血小板を赤血球検出系で、白血球を白血球検出系でそれぞれ検出するよう構成されている。血液中の血球の個数は大きく異なるため(通常赤血球400万/μl程度に対して白血球5000/μl程度)、赤血球検出系に供給される血液試料と白血球検出系に供給される血液試料は、希釈倍率が異なるとともに処理が異なる。以下の実施形態では、略同一構成の2つの検出系を備えているが、赤血球検出系では希釈液で25000倍に希釈された血液試料2mlが供給され、そのうちの250μlが測定に供される。また、白血球検出系では希釈液と溶血剤とで500倍に希釈溶血処理された血液試料3mlが供給され、そのうちの500μlが測定に供される。
【0012】
血球分析装置10は、定量供給手段としてのポンプ11、12及び陰・陽圧手段である陰圧チャンバ13、陽圧チャンバ14と、検出器としての検出チャンバ31、32と、試料希釈部5とから構成される。上記したように、ポンプ11及び検出チャンバ31は赤血球検出系に、ポンプ12及び検出チャンバ32は白血球検出系に、それぞれ供される。
【0013】
試料定量希釈部5は、試料採取用ピペット51と、希釈液供給チャンバ52と、試料容器S等から試料採取用ピペット51で採取した血液試料を希釈液供給チャンバ52から供給される希釈液で所定の希釈倍率に希釈する周知のサンプリングバルブを備えた試料定量機構56とから主に構成される。試料定量機構56からは、2種類の異なる希釈倍率で希釈された血液試料を供給するための管路54、55が延出する。
【0014】
管路54の他端には、試料定量希釈部5により希釈された血液試料を受け入れる赤血球検出用検出チャンバ31が配設され、管路55の他端には、試料定量希釈部5により希釈された血液試料を受け入れる白血球検出用検出チャンバ32が配設される。白血球検出用検出チャンバ32には、溶血剤を供給する溶血剤供給部4に接続され延出した管路41の他端が、検出チャンバ32内に溶血剤を供給可能に接続されている。
各検出チャンバ31、32には、検出器33、34がそれぞれ備えられている。検出器33、34は、周知の電気抵抗法により粒子としての血球についてその粒度分布、粒子数を検出するオリフィスであって、一対の電極間に電圧を印加して検出器33、34を血球が通過する際に発生するインピーダンス変化に基づく信号を分析する機能を有する。
【0015】
ポンプ11、12の片方の室21,27は検出チャンバ31、32に接続されている。
ポンプ11、12の上記とは逆側の室22、28には、バルブV7の切り換えにより陰圧及び陽圧を印加することができる陰圧チャンバ13及び陽圧チャンバ14が接続されている。
陰圧チャンバ13には、陰圧チャンバ13を前記した検出チャンバ31、32の排液チャンバとして機能させるべくバルブV3〜V6をそれぞれ介接した管路が接続されている。
【0016】
図2〜5は、本発明の一つの実施形態によるポンプ11(12は同一構成のため説明を省略する)を示す。
ポンプ11は、膜体1及びケース2からなり、膜体1はEPDM等のゴムを材料として成形された、液体及び気体不透過性膜である。
ケース2は、塩化ビニール等を材料とした合成樹脂の箱体であり、膜体1を挟持して室21を膜体1の両側に形成するよう、膜体1と平行に溶着してなる2つのケース片23、24からなる。
【0017】
室21、22は、ケース片23、24が構成する中空部を膜体1で2分して区画形成されてなり、それぞれの内壁部21a、22aは、陰陽圧手段が駆動されて膜体1が変位したとき、内壁部21aもしくは22aの略全体が膜体1に略密着する形状を備える。内壁部21a、22aの略中心には、各室21及び22内に開口して流体を流通させる流通口部21b、22bが穿設される。ケース片23、24には、陰圧チャンバ13及び陽圧チャンバ14に接続可能な接続口部25が形成され、この接続口部25はケース片23に穿設された管路26を介して室21に連通する。
【0018】
室21、22の形状は、膜体1が密着し易いように形成される。
図7のような柱状の室のポンプでは、圧によって流通口部付近が先に密着して周辺部は密着しきらない場合がある。そうなると密着しきらなかった隅部の容積分だけ吸引もしくは排出する量が少なくなり、定量性が低下する。
【0019】
図7の形状のポンプを用いたときの、試料が検出器を通過する粒子数(信号数)を時間あたりで表したものが図9となる。これは室の内壁部において隅部に膜体1が密着しきらないために試料吸引の切れが悪く、検出器を通過する試料の流れが不安定に終わることになる。
そこで、図4のように流通口部に向かって収斂する円錐台形状もしくは角錐台形状にすれば、膜体の作動する距離も少なく、膜体と室内壁略全体が密着しやすく、容量も大きなものが形成できる。
このような形状の室のポンプを用いたときの、試料が検出器が検出器を通過する粒子数(信号数)を時間あたりで表したものが図8となる。これは膜体が室内壁に密着しやすいため、試料吸引の切れが良く検出器を通過する粒子数(信号数)が安定して終わる。
【0020】
膜体と室の内壁とが密着しても、その間に試料等の液体が排出されきらずに残ることもあり得る。そこで室の内壁に流通口部へ連通する細い溝を形成すると、排出されきらなかった液体が溝部を伝って排出することができる。
【0021】
この実施態様では、ポンプ内の試料を排出する際、流通口部21b、22bの開口周縁部には、膜体1の変位によりその流通口部21b、22bから排出される流体の残部、すなわち、内壁部21a、22aと膜体1との間に膜状に残った流体を流通口部21b、22bに導く細い溝部21c、22cがそれぞれ形成されている(図5)。これらの溝部21c、22cは、流通口部21b、22bの開口を中心として放射状に形成されている。
【0022】
なお、上述したように、赤血球検出系に用いられるポンプ11は、1回の作動で血液試料250μlを赤血球検出器33に吸引し、白血球検出系に用いられるポンプ12は、1回の作動で血液試料500μlを白血球検出器34に吸引するので、定量室21・22及び定量室27・28の総容積は前記吸引量と同容積にそれぞれ形成されている。
【0023】
図6のフローチャートに基づいて血球分析装置10の動作を説明する。
まず、ステップS0において各バルブの開閉が初期状態に設定され、陰圧チャンバ13、陽圧チャンバ14が駆動される。なお、バルブV7は陽圧チャンバ14側に切り換えられている。次にステップS1で試料定量機構56が作動され試料採取用ピペット51により試料容器Sから血液50μlが吸引採取される。
次に、ステップS2でバルブV5、V6を開く。これにより検出チャンバ31、32に収納されていた希釈液がそれぞれ陰圧チャンバ13に排出される。
【0024】
〔赤血球測定用試料調整〕
ステップS3では、ステップS2においてピペット51により吸引採取された血液が、希釈液供給チャンバ52から供給される希釈液により25000倍に希釈され検出チャンバ31に移送する。
〔白血球測定用試料調整〕
一方、ステップS4では、ステップS2においてピペット51により吸引採取された血液が、希釈液供給チャンバ52から供給される希釈液とともに検出チャンバ32に移送される。次に、ステップS5で溶血剤供給部4から白血球測定用溶血剤を検出チャンバ32に移送して希釈液と溶血剤とにより500倍に希釈処理される。
【0025】
ステップS6では、バルブV1〜4を開き、バルブV5、6を閉じる。これにより、希釈液供給チャンバ42から供給された希釈液の流れにて検出器33、34の各オリフィス付近の汚れや気泡等が除去される。
【0026】
ステップS7〜9では、バルブV1〜6を閉じ、バルブV7を陰圧チャンバ13側に切り換える。これによりポンプ11、12のそれぞれの室22、28に陰圧が負荷される。ポンプ11、12の内部は、室21、27の各内壁部に密着した膜体1が、陰圧の負荷により室22、28の逆側の各内壁部に密着する。
ポンプ11の室21、22の内容積量250μlが吸引されて検出チャンバ31内の赤血球測定用に希釈処理された血液試料が検出器33を250μl通過することにより赤血球の測定が行われる。
ステップS11及び12では、ポンプ11の室27、28の内容積量500μlが吸引されて検出チャンバ32内の白血球測定用に希釈処理された血液試料が検出器34を500μl通過することにより白血球の測定が行われる。
【0027】
次に、バルブV3とV4を開き、バルブV7を陽圧チャンバ14側に切り換えると、ポンプ内へ吸引した試料が陰圧チャンバーへ排出される。次にバルブV3とV4を閉じ、バルブV5とV6を開くと、検出チャンバ31、32に残った各試料は陰圧チャンバ13に排出される(ステップS10及びS13)。次に、ステップS14では、バルブV5とV6を閉じ、バルブV1〜4を開いて希釈液供給チャンバ42から希釈液を供給して各検出器33、34及び各管路を洗浄する。そしてバルブV1〜4を閉じ、希釈液供給チャンバ52から定量希釈部5を通じて希釈液を充填する。
【0028】
【発明の効果】
本願発明による粒子分析装置では、ポンプによって正確に定量された量の試料流体を安定した流速で検出器に供給することができる。そして特にポンプを膜体とこの膜体で仕切られる室とで構成し、定量された試料流体を、圧力源の切換えによりポンプの膜体を一方の室の内壁に密着した状態から他方の室の内壁に密着した状態へと作動させて両方の室の内容積量から得ることができるので、構成が簡単で測定精度の高い粒子分析装置を提供できる。
【0029】
ポンプが、圧力源が駆動されて膜体が変位したとき、内壁の略全体が前記膜体に密着する形状を備え、膜体の変位により流通口部から排出される流体の残部が残らないように流体流通口部に導く細い溝部を備える、もしくは流通口部の形状を放射状にすることにより、高精度の定量が可能となり特に微量定量に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一つの実施態様による粒子分析装置としての血球分析装置の概略説明図。
【図2】図1のポンプの正面図。
【図3】図1のポンプの側面図。
【図4】図1のポンプのIV−IV線断面図。
【図5】図1のポンプのV−V線断面図。
【図6】図1の血球分析装置の動作を説明するフローチャート。
【図7】従来のポンプの内部形状を説明する、図4に対応する断面図。
【図8】図4のポンプの定量性能を説明するグラフ。
【図9】図7のポンプの定量性能を説明する、図8に対応するグラフ。
【符号の説明】
1 膜体
2 ケース
10 血球分析装置(粒子分析装置)
11、12 ポンプ(定量供給手段)
13 陰圧チャンバ(圧力源)
14 陽圧チャンバ(圧力源)
33、34 検出器
21、22 室
Claims (4)
- 定量された試料流体中の粒子数を測定する粒子分析装置において、
一定量の試料流体を検出器に流すための定量供給手段として、膜体と、この膜体で仕切られる室とからなり、各室の内壁には流通口部が形成され、一方の室の流通口部が圧力源と連通され、他方の室の流通口部が検出器と連通されてなるポンプを備え、
さらにこのポンプは、圧力源の切換えにより、膜体を一方の室の内壁に密着した状態から他方の室の内壁に密着した状態へと作動させ、両方の室の内容積量に対応する試料流体を検出器に流して試料流体中の粒子数を測定するよう構成されたことを特徴とする粒子分析装置。 - ポンプの室の形状が、流通口部に向かって収斂する円錐台形状であることを特徴とする請求項1に記載の粒子分析装置。
- ポンプの室の形状が、流通口部に向かって収斂する角錐台形状であることを特徴とする請求項1に記載の粒子分析装置。
- ポンプの内壁が、流通口部に連通し内壁中心部を横切る溝を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の粒子分析装置。
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