JP3791981B2 - ペプチド誘導体及び抗真菌剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なペプチド誘導体又はそれらの薬理学的に許容される塩類、及びそれらの用途に関するものである。更に詳しくは、本発明は、医薬品、特に抗真菌剤として使用し得る安全なペプチド誘導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
侵襲性カンジダ症等の重篤な深在性真菌症は、しばしば致死的疾患となり、その発生率は、わが国ばかりではなく、世界的に上昇の傾向にある。これは、本来カンジダ等の真菌に対する宿主生体側の主要な防御機構は、好中球による非特異免疫によると考えられているが、近年この生体の免疫機能の低下をもたらす悪性腫瘍(特に、急性白血病、悪性リンパ腫等の造血器系悪性腫瘍。)、AIDS等の基礎疾患の患者数の増加、一方では免疫力を低下させ、感染を容易にさせ得る制癌剤療法、免疫抑制剤療法等の医療処置の繁用等がその原因と考えられている。また、抗菌抗生物質、ステロイドホルモンの多用、長期にわたる中心静脈栄養、静脈カテーテルの使用等も深在性真菌症に罹患する危険因子とされている(例えば、臨床と微生物、第17巻、第265頁、1990年)。
【0003】
このような深在性真菌症の治療に最も有効な手段は抗真菌剤による化学療法であるが、現在、深在性真菌症治療薬として実用化されている薬剤は、抗菌剤と比較してはるかに少なく、わが国においては、アンホテリシン、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール、及びイトラコナゾールの5剤、欧米においても、これにケトコナゾールを加えた6剤にすぎない。
【0004】
これらの中でアンホテリシンは1960年代から臨床応用されているものであるが、真菌に対する感受性は非常に強いが、腎毒性等の強い副作用の問題があり、臨床応用上制約がある。また、フルシトシンは連用により早期に耐性化する等のため、現在では単独で使用されることは希である。その他の薬剤は、その構造的特徴から、いずれもアゾール系抗真菌剤と総称されるが、その真菌に対する感受性は、アンホテリシンのそれに比べて、一般に劣る傾向にあるが、有効性と安全性の兼ね合いから現在最も多用されている薬物群である(例えば、臨床と微生物、第21巻、第277頁、1994年)。
【0005】
抗真菌剤に対する耐性真菌の出現については、抗菌剤に対する耐性菌の出現頻度に比べれば、はるかに低く、従来フルシトシンを除き、ほとんど問題視されていなかった。しかしながら、最近アゾール系抗真菌剤を長期間投与されているAIDS患者から分離される真菌には薬物耐性を示すものが出現し始めていることが報告されている(例えば、感染症、第24巻、第61頁、1994年)。
【0006】
アゾール系抗真菌剤は、深在性真菌症に限らず、表在性真菌症の治療にも一般に広く使用されている薬物群であり、現在真菌症治療薬として新たに開発が進められている薬物の多くが、このアゾール系抗真菌剤に属する。これらアゾール系抗真菌剤は、吸収性、代謝安定性等の面で各々固有の特徴を有するが、抗真菌作用を発現する機序の面では同一であると考えられている。
【0007】
従って、抗真菌活性に優れ、安全で、かつ全く新しい機序に基づく新規な抗真菌剤の実用化の見込みがたたない現在、アゾール系抗真菌剤全般にわたって耐性を獲得し、既存の薬物では全く対処できない耐性菌の蔓延が憂慮されている(例えば、臨床と微生物、第22巻、第575頁、1995年)。
従来、種々の微生物に対して抗菌作用、抗真菌作用等を有するペプチド又はその誘導体については、多数の報告がなされており[例えば、ビオキミカ・エト・ビオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)、第1197巻、第109頁、1994年]、その中の1つにラクトフェリンがある。
【0008】
ラクトフェリンは、涙、唾液、末梢血、乳汁等に含まれている天然の鉄結合性蛋白質であり、大腸菌、カンジダ菌、クロストリジウム菌等の有害微生物に対して抗菌作用及び抗真菌作用を示すことが知られている[例えば、ジャーナル・オブ・ペディアトリクス(Journal of Pediatrics)、第94巻、第1頁、1979年、及びアーカイブズ・オブ・ディジーズ・イン・チャイルドフッド(Archives of Disease in Childhood)、第67巻、第657頁、1992年]。
【0009】
また、ラクトフェリンの分解物、ラクトフェリンに由来するペプチド類、これらとホモロジーを有するペプチド類にも抗菌作用、抗真菌作用等のあることが知られている。例えば、ラクトフェリン分解物を有効成分とする抗菌剤(特開平5−320068号公報)、少なくとも20個のアミノ酸残基からなる抗菌性ペプチド(特開平5−92994号公報)、5個のアミノ酸残基からなる抗菌性ペプチド(特開平5−148296号公報)、3〜6個のアミノ酸残基からなる抗菌性ペプチド(特開平5−148297号公報)、ラクトフェリン類の分解物、ラクトフェリン類の分解物から単離されるペプチド、ラクトフェリン類の分解物から単離されるペプチドと同一のアミノ酸配列を有する合成されたペプチドを有効成分とする抗酸化剤(特開平6−199687号公報)、ペプチド誘導体と、その用途(特開平8−176190号公報)等が知られている。
【0010】
また、ラクトフェリンに由来するペプチド類ではないが、抗菌作用又は抗真菌作用を有するオリゴペプチド混合物も知られている(国際公開第WO92/09300号公報)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記のとおり、深在性真菌症の治療に用いられる抗真菌剤開発の現状に鑑みて、本発明者らは、抗真菌活性に優れ、安全で、かつ全く新しい機序に基づく新規な抗真菌剤の創製を企図し、前記の発明に開示されているラクトフェリンに由来するペプチド類に着目し、より効力の大きい抗真菌作用を有するペプチド誘導体の創製を目指して鋭意研究を行った。
【0012】
本発明者らは、前記の発明に開示されているラクトフェリンに由来するペプチド類及びその誘導体の抗真菌作用について詳細に検討した結果、ウシラクトフェリンを構成するアミノ酸配列のうちの特定の6つのアミノ酸残基(Arg−Arg−Trp−Gln−Trp−Arg)と同一のアミノ酸配列を有し、C末端がアミド化された誘導体が、比較的強い抗真菌作用を有することを見い出した。
【0013】
更に、本発明者らは、この事実を基礎としてより強力な抗真菌活性を発現するペプチド誘導体を追及した結果、その配列の一部に、従来にない非天然型のアミノ酸残基を組み込むことにより、顕著な抗真菌活性を示す一連のペプチド誘導体の創製に成功した。
そこで、本発明は、実用化が充分可能であり、抗真菌活性に優れ、安全である新規な抗真菌性ペプチド誘導体を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第1の発明は、次の一般式1
【0015】
【化15】
【0016】
[ただし、式中Xaaは次の一般式2
【0017】
【化16】
【0018】
(ただし、式中Aは低級アルキレン基、又は酸素原子もしくは硫黄原子を結合する低級アルキル基を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されるD体又はL体のアミノ酸配列を有するペプチド誘導体又はそれらの薬理学的に許容される塩類を提供するものであり、次のa)〜e)を望ましい態様としてもいる。a)第1の態様は、前記第1の発明におけるXaaが、次の一般式3
【0019】
【化17】
【0020】
[(ただし、式中nは整数1〜5を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
b)第2の態様は、前記第1の発明におけるXaaが、次の一般式4
【0021】
【化18】
【0022】
[(ただし、式中mは整数0〜3を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
c)第3の態様は、前記第1の発明におけるXaaが、次の一般式5
【0023】
【化19】
【0024】
[(ただし、式中pは整数0〜2を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
d)第4の態様は、前記第1の発明におけるXaaが、次の一般式6
【0025】
【化20】
【0026】
[(ただし、式中mは整数0〜3を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
e)第5の態様は、前記第1の発明におけるXaaが、次の一般式7
【0027】
【化21】
【0028】
[(ただし、式中pは整数0〜2を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)]
で示されること。
前記課題を解決する本発明の第2の発明は、次の一般式1
【0029】
【化22】
【0030】
[ただし、式中Xaaは次の一般式2
【0031】
【化23】
【0032】
(ただし、式中Aは低級アルキレン基、又は酸素原子もしくは硫黄原子を結合する低級アルキレン基を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、またはニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]で示されるD体又はL体のアミノ酸配列を有するペプチド誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩類からなる群より選択される化合物の1種又は2種以上の混合物を有効成分として含有する抗真菌剤を提供するものであり、次のf)〜j)を望ましい態様としてもいる。
f)第1の態様は、前記第2の発明におけるXaaが、次の一般式3
【0033】
【化24】
【0034】
[(ただし、式中nは整数1〜5を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
g)第2の態様は、前記第2の発明におけるXaaが、次の一般式4
【0035】
【化25】
【0036】
[(ただし、式中mは整数0〜3を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
h)第3の態様は、前記第2の発明におけるXaaが、次の一般式5
【0037】
【化26】
【0038】
[(ただし、式中pは整数0〜2を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
i)第4の態様は、前記第2の発明におけるXaaが、次の一般式6
【0039】
【化27】
【0040】
[(ただし、式中mは整数0〜3を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
j)第5の態様は、前記第2の発明におけるXaaが、次の一般式7
【0041】
【化28】
【0042】
[(ただし、式中pは整数0〜2を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)で示されるアミノ酸残基を示す。]
で示されること。
【0043】
【発明の実施の形態】
次に本発明について詳記するが、先ず本発明の第1の発明について説明する。上記の第1の発明に係るペプチド誘導体は、固相法、液相法等の公知の方法によって合成することができる。
固相法による場合は、ペプチド合成用固相樹脂を用いて、各アミノ酸ブロックを順次縮合させ、ペプチド鎖を延長する。各アミノ酸ブロックはN末端及び側鎖の反応性基を適当な保護基で保護した該アミノ酸誘導体を用い、C末端側から縮合反応、N末端脱保護基反応を反復して目的のペプチド鎖を構築する。次いで、N末端及び側鎖の反応性基が保護されたままのペプチドを樹脂から切断して取出し、C末端のアミド化を行い、更に脱保護反応を行うことにより、目的とするペプチド誘導体を得ることができる。
【0044】
本発明のペプチド誘導体は、全てC末端がアミド化された誘導体であるので、通常の固相樹脂の代わりに、C末端アミドペプチド合成用固相樹脂を用いることもできる。この場合は、工程を簡略化できる上に、保護基の選び方によっては脱樹脂、脱保護を同時に行うこともできるので便利である。
以上の操作を機械化又は自動化した、いわゆるペプチド自動合成装置を利用することもできる。
【0045】
液相法による場合も、通常の公知のペプチド合成法により、基本的にはN末端、又はC末端及び側鎖の反応性基を適当な保護基で保護したアミノ酸誘導体を各アミノ酸ブロックとし、これを用いて縮合反応、N末端又はC末端の脱保護基反応を反復しながら、目的のペプチド鎖を構築することができる。
液相法においては、C末端側又はN末端側から順次ペプチド鎖の延長を行う逐次鎖長延長法に加えて、目的のペプチド鎖を適当なフラグメントに分けて、各々のフラグメント鎖を合成し、各々を縮合させて最終的なペプチド鎖を構築する、いわゆるフラグメント縮合法を適用することもできる。
【0046】
本発明のペプチド誘導体は、非天然型のアミノ酸残基を含むことを特徴としているが、このアミノ酸残基部分に相当するアミノ酸、又はその保護化された誘導体は、いずれも公知の方法により合成することができる。そのいくつかを例示すれば次のとおりである。
次の反応式のように、エタノール、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒中で、ナトリウムエトキサイド、水素化ナトリウム等の塩基の存在下に、アセトアミドマロン酸ジエチル(A)とフェニルアルキルハライド(B)とを反応させ、フェニルアルキルアセトアミドマロン酸ジエチル(C)を合成し、エステルの加水分解、脱炭酸、脱アセチル化を、塩酸中、臭化水素酸中等の酸性条件下で一挙に行うか、又は一旦水酸化ナトリウム等の塩基性条件下で、エステルの加水分解を行い、のち酸性条件下で脱炭酸、脱アセチル化を行うことにより、一般式(D)で示される型のアミノ酸を合成することができる。
【0047】
【化29】
【0048】
(ただし、式中nは整数1〜5を示し、R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)
また、ジオキサン等の有機溶媒中、ピペリジン等の有機塩基の触媒量存在下に、アセトアミドアクリル酸(E)にベンゼンチオール類(F)を共役付加させ、メルカプツル酸誘導体(G)を合成し、これを塩酸中で加熱するなどして脱アセチル化を行うことにより、次の反応式に沿って、一般式(H)で示される型のアミノ酸を合成することができる。
【0049】
【化30】
【0050】
(ただし、式中R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)
水−エタノール等の混合溶媒中で、水酸化ナトリウム等の塩基存在下に、システイン、ホモシステイン等のアミノ酸(I)に、フェニルアルキルハライド(B)を反応させ、次式に沿って、一般式(J)で表わされる型のアミノ酸を合成することができる。
【0051】
【化31】
【0052】
(ただし、式中m’は整数1又は2を示し、n’は整数1〜3を示し、R1 及びR2は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)
また、セリン、ホモセリン等のアミノ酸のN末保護体(K)に、フェニルアルキルハライド(B)を反応させ、次式に沿って、一般式(L)で表わされる型のアミノ酸のN末端保護体を合成することができる[式中N末端保護基としてt−ブトキシカルボニル基(以下、Bocと記載する。)の例を示す]。
【0053】
【化32】
【0054】
(ただし、式中m’は整数1又は2を示し、n’は整数1〜3を示し、R1 及びR2は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)
これらアミノ酸の側鎖に関しては通常のペプチド合成反応を行う上で障害となる反応性基は含まれず、特に保護する必要はない。また、N末端又はC末端保護体としてはBoc体、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル基)体、各種エステル誘導体等が考えられるが、これらへの変換は通常用いられている反応試材、反応条件により、問題無く達成される。
【0055】
本発明のペプチド誘導体は、液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の公知の方法により精製することができる。また、本発明のペプチド誘導体の製造に使用する合成中間体、合成原料等も同様の方法により精製することができる。
なお、以下の実施例等の説明においては、アミノ酸配列で、ホモシステイン及びホモセリンを、それぞれHcy及びHseと記載する。また、本発明のペプチド誘導体を構成する各アミノ酸残基は、L体のみならずD体を含むものである。即ち、後記の試験例で開示されているとおり、本発明のペプチド誘導体の抗真菌作用は、本発明のペプチド誘導体を構成するアミノ酸残基がL体であるか、又はD体であるかには影響されない。なお、後記の実施例では、ペプチド誘導体は、ペプチド合成機を用いて、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)を結合したアミノ酸を合成原料として合成しているが、個々のFmocアミノ酸は、合成目的に応じて、L体、D体、又はDL体のものを用いているので、アミノ酸残基の記号自体には、L体、D体等の区別は記載せず、これらの区別を明示する必要がある場合にはL、D、又はDLの記号をアミノ酸を示す記号の前に記載している。
【0056】
また、不斉中心が1つあるアミノ酸残基を、もう1個結合しているペプチド誘導体に、アミノ酸残基のDLとしての表示を使用するのは、本来適切ではないが、原料として用いた個々のFmocアミノ酸に対応して得られる実施例のペプチド誘導体について、これを特定表示する手段として、例えば、次の例に示すとおり表示する。
【0057】
【化33】
【0058】
この例の場合は、Xaa部分についてはDL体のFmocアミノ酸を、他の5つのアミノ酸残基相当部分についてはD体のFmocアミノ酸を用いて合成されたペプチド誘導体であることを示し、次に示す2つの本発明のペプチド誘導体の等量混合物である。
【0059】
【化34】
【0060】
本発明のペプチド誘導体は、非天然型のアミノ酸残基を含有することを特徴としているが、これらのアミノ酸残基は形式的にはアラニン、システイン、ホモシステイン、ホモセリン、セリン残基等の側鎖末端原子上の水素原子がフェニル基、ベンジル基、又はフェネチル基等(いずれもベンゼン環上に置換基を有している場合がある。)で置換されたものと考えることができるので、例えば、次の例に示すとおり略記法を用いて表示する。
【0061】
【化35】
【0062】
(ただし、式中R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)
また、これらの具体的な構造式を示せば次のとおりである。
【0063】
【化36】
【0064】
(ただし、式中R1 及びR2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はニトロ基を示す。)
なお、上記のアミノ酸残基の中で、左端の構造式のものであって、置換基R1 及びR2 がともに水素原子であるものは、天然に産するアミノ酸の1つであるフェニルアラニン残基であり、通常Pheで表示されるが、便宜上次のように表示する。
【0065】
【化37】
【0066】
本発明のペプチド誘導体の薬理学的に許容される塩類についてさらに説明すると、、無毒性の塩、例えば、酸付加塩又は金属錯体、例えば亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム又はアルミニウム等との錯体である。酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タンニン酸塩、シュウ酸塩、フマール酸塩、グルコン酸塩、アルギン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩等を例示することができる。更に、カルボン酸塩、例えばアルカリ金属とのナトリウム塩、カリウム塩等、アルカリ土類金属とのカルシウム塩、マグネシウム塩等、アンモニウム塩であってもよい。
【0067】
次に本発明の第2の発明について詳記する。
本発明の抗真菌剤は、前記本発明のペプチド誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩類からなる群より選択された任意の1種の化合物又は2種以上の混合物を有効成分として含有している。また、本発明の抗真菌剤は、前記の有効成分の他に、公知の抗真菌剤を含有していてもよい。
【0068】
本発明の抗真菌剤は、常法により例えば、軟膏、ゲル、ペースト、クリーム、噴霧剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、錠剤、糖剤、カプセル剤、粒剤、粉剤等として加工することもできる。
本発明のペプチド誘導体を有効成分とする抗真菌剤の投与量は、治療対象、症状、年齢等により異なるが、好適には通常1回につき、約0.1〜50mgを1日1〜3回程度投与する。表在性真菌症を対象とする場合には、0.01〜5%含有軟膏として1日1〜3回程度局所に塗布することもできる。
【0069】
なお、本発明の説明において、抗菌活性(抗菌剤)と、抗真菌活性(抗真菌剤)の意味を区別して用いている。
次に、試験例を示して本発明を更に詳記する。
試験例1
この試験は、本発明のペプチド誘導体の真菌に対する感受性及び本発明のペプチド誘導体に比較的類似のアミノ酸配列を有するペプチド誘導体のそれとを比較するために行った。
(1)試験方法
試験菌としてはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手したCandida albicans ATCC 90028 を用いた。
1)培地の調製
バクト・ペプトン(ディフコ社製)2g及びD−グルコース(和光純薬工業社製)4gを注射用蒸留水(大塚製薬工場社製)に溶解して全量を200mlに調整し、121℃で15分間オートクレーブ滅菌し、使用するまで4℃に保存した。
2)被検物質の調製
実施例1乃至実施例9、実施例12乃至実施例17、実施例21、実施例23、実施例26及び実施例28と同一の方法により製造した本発明のペプチド誘導体、及び比較例1乃至比較例6と同一の方法により製造した化合物は、全て注射用蒸留水(以下蒸留水と略記する)に溶解し、1mg/ml濃度の溶液を調製し、これを基準液とした。この基準液は、使用するまで−20℃以下で凍結して保存した。
3)陽性対照薬の調製
陽性対照薬として用いたアンホテリシンB(シグマ社製)、ミコナゾール (シグマ社製)、及びフルコナゾール(ファイザー社製。ジフルカンカプセルの内容物をエタノール抽出し、その減圧濃縮残渣を酢酸エチル−ヘキサンから再結晶して得た)は、ジメチルスルホキシド(シグマ社製。細胞培養用)に溶解し、10mg/ml濃度の溶液を調製し、これを保存液とした。この保存液は、使用するまで−20℃以下で凍結して保存し、使用時に蒸留水で10倍希釈(1mg/ml)し、これを基準液とした。
4)接種菌液の調製
▲1▼培養液中の菌数の算定
スラントからの一かきを前記培地(2ml)に接種し、35℃で19時間培養し、分光光度計を用いて、波長660nmのOD値を測定した。一方、培地の一部(50μl)を新しい前記培地(5ml)に植え継ぎ、35℃で6時間培養し、菌液のOD値と生菌数の測定を行った。生菌数の測定は、菌液を103 、104 、105 及び106 倍希釈し、各々の0.1mlをSD A寒天培地にぬりつけて培養し、翌日出現したコロニー数を測定し、OD値 /菌数濃度の検量線を求め、菌液1ml当たりの菌数を算出した。
【0070】
▲2▼接種菌液の調製
スラントからの一かきを前記培地(2ml)に接種し、35℃で19時間培養し、その一部を無菌的に採取し、分光光度計で波長660nmのOD値を測定した(OD値が約1.0で、菌数は約1×107 個/mlであった。)
。
【0071】
この菌液の1/100量の菌液を、新しい前記培地(10〜15ml)に接種し、35℃で6時間培養し、波長660nmのOD値を測定した結果、0.1〜0.2で、菌数が約1×106 個/mlと算定された。
この培養物を前記培地を用いて初め50倍希釈、次いで10倍希釈して接種菌液(2×103 個/ml)を調製した。調製後15分以内に使用できない場合は、4℃で保存し、2時間以内には使用した。
5)薬剤希釈液の調製
▲1▼培地を、96穴平底マイクロプレートにマルチピペットを用いて、1列目には160μlを、2列目から10列目までは100μlずつ分注した。11列目の上4段(発育対照)には100μlずつ、また下4段(陰性対照)には200μlずつ分注した。
【0072】
▲2▼前記2)及び3)で調製した被検物質及び対照薬物の希釈液(濃度:1mg/ml)40μlを1列目に添加して混合し、そのうち100μlを2列目に添加した。この操作を順次10列目まで行って2倍系列希釈した。尚、最後の10列目は100μlを分取して廃棄した。
6)菌接種と培養
前記4)において調製した接種菌液を1列目から10列目及び11列目上4段の全穴に100μlずつ分注し、35℃で2日間培養した。
7)判定
終末点は、マイクロプレートビュアーで肉眼的に発育が完全阻止されている濃度を最小生育阻止濃度(以下、MIC値と記載する。)とした。
(2)試験結果
この試験の結果は、表1に示すとおりである。表中各実施例と同一の方法により製造された試料は、本発明のペプチド誘導体であり、比較例と同一の方法により製造された試料は、比較的アミノ酸配列が本発明のペプチド誘導体のそれと類似しており、かつ抗菌作用又は抗真菌作用を有するペプチド誘導体として公知の化合物である。
【0073】
比較例1の化合物は、ウシラクトフェリンを構成するアミノ酸配列のうち、特定の6つのアミノ酸残基からなる配列を有し、C末端がアミド化されており、また、6つのアミノ酸残基はすべてL体のものからなっており、
LArg-LArg-LTrp-LGln-LTrp-LArg-NH2
で示される化合物である。
【0074】
比較例2の化合物は、前記比較例1の鏡像体であり、アミノ酸配列は比較例1と同一であるが、6つのアミノ酸残基がすべてD体のものからなっており、
DArg- DArg-DTrp-DGln-DTrp-DArg-NH2
で示される化合物である。これらのペプチド誘導体の抗真菌作用は、L体及びD体間での差は無く、いずれもMIC値が12.5μg/mlであった。
【0075】
比較例3〜比較例6の化合物は、抗菌作用又は抗真菌作用を有するペプチド誘導体として開示されており、各々次の化学式
比較例3:LArg-LArg-LTrp-LTrp-LCys-LArg-NH2
比較例4:Ac-LArg-LArg-LTrp-LTrp-LCys-LArg-NH2
比較例5:LArg-LArg-LTrp-LTrp-LArg-LArg-NH2
比較例6:Ac-LArg-LArg-LTrp-LTrp-LArg-LArg-NH2
で示される化合物である(国際公開第WO92/09300号公報)。
【0076】
ただし、該特許公報において該化合物及びその抗真菌作用が具体的に開示されているのは、このうちN末端がアセチル化されている比較例4及び比較例6のみである。
本発明者等は上記4化合物について、その抗真菌作用を測定し、各々比較例3が25μg/ml、比較例4が50μg/ml、比較例5が12.5μg/ml及び比較例6が12.5μg/mlのMIC値を得た。
【0077】
これらの結果に対して、表1から明らかなとおり、本発明のペプチド誘導体はいずれもMIC値が3.13〜6.25μg/mlの範囲内にあり、公知のペプチド類のそれに比べて2〜4倍強力な抗真菌作用が認められた。
また、本発明のペプチド誘導体の実施例の多くが、非天然型アミノ酸残基部分にDL体の原料を用いている。この場合は供試したペプチド誘導体は、例えば、次の化学式
DArg-DArg-DTrp-DXaa-DTrp-DArg-NH2
DArg-DArg-DTrp-LXaa-DTrp-DArg-NH2
で示される2つの立体異性体の等量混合物と考えられる。
【0078】
しかしながら、これら2つの立体異性体について、抗真菌作用に関して差がないことは、次の実施例14〜実施例16
実施例14:DArg-DArg-DTrp-DLXaa-DTrp-DArg-NH2
実施例15:DArg-DArg-DTrp-DXaa-DTrp-DArg-NH2
実施例16:DArg-DArg-DTrp-LXaa-DTrp-DArg-NH2
が、いずれもMIC値3.13μg/mlであり、同等の結果を示したことから明らかである。尚、他のペプチド誘導体についても同様の試験を行ったが、ほぼ同等の結果がえられた。
【0079】
【表1】
【0080】
試験例2
この試験は、本発明のペプチド誘導体の急性毒性を調べる目的で行った。
(1)試験方法
4週齢のddY系雄性マウス(日本SLCより購入)を1週間以上馴化し、のち4群(1群5匹)に分けて使用した。
(2)試験方法
実施例1と同一の方法により製造した本発明のペプチド誘導体を体重1kg当り100mg及び500mgの割合で、注射用水(大塚製薬社製)に溶解し、単回強制経口投与し、急性毒性を試験した。
(3)試験結果
100mg/kg体重、及び500mg/kg体重の割合で投与した群に、死亡例は認められなかった。従って、本発明のペプチド誘導体のLD50値は500mg/kg体重以上であり、毒性は極めて低いことが判明した。尚、他の本発明のペプチド誘導体についても同様の試験を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0081】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0082】
【実施例】
実施例1
ペプチド合成装置(パーキン・エルマー社アプライド・バイオシステムズ事業部製。433A型。以下、PE社製と略記する)を使用し、同装置の使用説明書及びシェパード等による固相ペプチド合成法[ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー・パーキンI(Journal of Chemical Society Perkin I)、第538頁、1981年]に基づいて次のようにして合成した。
【0083】
すなわち、まず、C末端アミドペプチド合成用固相樹脂であるFmocアミドレジン(PE社製)397mg(0.25mmol)を用いて、前記ペプチド合成装置の合成プログラムにより脱保護基反応及び縮合反応を反復してペプチド鎖を延長した。つまり、最初に20%(重量。以下、特に断りのない限り同じ。)ピペリジン含有N−メチルピロリドン(PE社製。以下N−メチルピロリドンをNMPと略記する)により、前記固相樹脂のアミノ基の保護基であるFmocを切断除去し、NMPで洗浄した。次いで、Fmocアミノ酸[Fmoc-D-Arg(Pmc)-OH(渡辺化学工業社製)]を、FastMoc (登録商標)リージェントキット(PE社製)を用いて縮合させ、NMPで洗浄した。以下、前記Fmoc基の切断からFmocアミノ酸の縮合洗浄までの操作を反復した。
【0084】
ただし、次工程以降、Fmocアミノ酸は工程順に、Fmoc-D-Trp(Boc)-OH(渡辺化学工業社製)、Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OH(後記の参考例2と同一の方法により合成)、Fmoc-D-Trp(Boc)-OH(渡辺化学工業社製)及びFmoc-D-Arg(Pmc)-OH(渡辺化学工業社製)を用いた。
いずれのFmocアミノ酸も1.0mmolに相当する量を専用カートリッジに詰めて使用した。縮合反応の条件及び脱保護条件は、同装置に付随するフィードバックモニタリングシステムにより自動的に制御させた。ペプチド鎖の伸長反応が全て終了した後、20%ピペリジン含有NMPによりN末端のFmoc基を切断し、NMP及びジクロロメタン(PE社製)で洗浄し、真空乾燥し、保護ペプチド樹脂758mg(収率94%)を得た。
【0085】
前記の保護ペプチド樹脂322mg(0.1mmol)にエタンジチオール(渡辺化学工業社製)1.2ml、メタクレゾール(渡辺化学工業社製)0.4ml及びチオアニソール(渡辺化学工業社製)2.4mlを、室温でアルゴン気流下15分間撹拌し、氷冷し、更に10分間撹拌した。これにトリフルオロ酢酸(渡辺化学工業社製)15mlを添加し、10分間撹拌し、トリメチルシリルブロミド(渡辺化学工業社製)2.7mlを添加して50分間撹拌した。のちグラスフィルターで樹脂をろ別し、ろ液を手早く減圧濃縮した。残渣にあらかじめ冷却した無水ジエチルエーテル(国産化学製)を添加し、ペプチドを白色粉末化した。
【0086】
次いで遠沈管に移し、遠心分離(2500rpm、10分間)し、上清を廃棄し、冷ジエチルエーテルを新たに添加し、充分撹拌して再び遠心分離する操作を4回反復した。のち、ペプチド沈殿物を真空乾燥し、水に溶解して凍結乾燥し、目的とするペプチド誘導体の粗体約26mgを得た。
前記粗ペプチド誘導体の全量を水に溶解し、遠心分離(15000rpm、5分間)し、上清を0. 45μmフィルターでろ過し、次の条件により高速液体クロマトグラフィーで精製した。カラムは、逆相系のLichrospher 100 RP−18(e)250×10mm(メルク社製)を用いた。溶離液は0. 1%TFA/水をA液、80%アセトニトリル/A液をB液として、A液からB液への濃度直線勾配により溶出した。クロマトグラムのピークは、アミノ酸ブロックとして一箇所のみDL体を用いたことに由来する2つの立体異性体の混合物であることを反映して、2つのピークから成っていたが、この2つを分離することは困難であったので、合わせて分取し、再度凍結乾燥し、次式
【0087】
【化38】
【0088】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約12.5mg(収率約12%)を得た。
実施例2
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例4と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(3Cl-Ph)-OH454mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0089】
【化39】
【0090】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約18.3mg(収率約17%)を得た。
実施例3
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例6と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(4Br-Ph)-OH498mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0091】
【化40】
【0092】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約23.2mg(収率約21%)を得た。
実施例4
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例8と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(3Br-Ph)-OH498mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0093】
【化41】
【0094】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約26.2mg(収率約23%)を得た。
実施例5
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例10と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(2,4Cl2-Ph)-OH 488mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0095】
【化42】
【0096】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約13.5mg(収率約12%)を得た。
実施例6
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例12と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(2,5Cl2-Ph)-OH 488mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0097】
【化43】
【0098】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約17.8mg(収率約16%)を得た。
実施例7
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例14と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(3,5Cl2-Ph)-OH 488mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0099】
【化44】
【0100】
で示される白色粉末の本発明のペプチド誘導体約15.5mg(収率約14%)を得た。
実施例8
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例16と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(4Me-Ph)-OH434mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0101】
【化45】
【0102】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約27.3mg(収率約26%)を得た。
実施例9
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例18と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(3,4Me2-Ph)-OH 448mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0103】
【化46】
【0104】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約26.9mg(収率約25%)を得た。
実施例10
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例20と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(3,5Me2-Ph)-OH 448mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0105】
【化47】
【0106】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約24.5mg(収率約23%)を得た。
実施例11
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例22と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(4OMe-Ph)-OH 450mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0107】
【化48】
【0108】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約54.1mg(収率約51%)を得た。
実施例12
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例24と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(4NO2-Ph)-OH 464mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0109】
【化49】
【0110】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約19.1mg(収率約18%)を得た。
実施例13
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例25と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(Ph)-OH420mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0111】
【化50】
【0112】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約25.3mg(収率約24%)を得た。
実施例14
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例27と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(4Cl-Bzl)-OH 468mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0113】
【化51】
【0114】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約24.1mg(収率約22%)を得た。
実施例15
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例45と同一の方法により製造したFmoc-D-Cys(4Cl-Bzl)-OH468mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0115】
【化52】
【0116】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約18.3mg(収率約17%)を得た。
実施例16
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例47と同一の方法により製造したFmoc-L-Cys(4Cl-Bzl)-OH468mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0117】
【化53】
【0118】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約19.7mg(収率約18%)を得た。
実施例17
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例29と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(4Br-Bzl)-OH 512mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0119】
【化54】
【0120】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約25.3mg(収率約22%)を得た。
実施例18
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例31と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(2,4Cl2-Bzl)-OH502mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0121】
【化55】
【0122】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約27.7mg(収率約25%)を得た。
実施例19
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例33と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(3,4Cl2-Bzl)-OH502mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0123】
【化56】
【0124】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約26.6mg(収率約24%)を得た。
実施例20
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例35と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(3,5Br2-Bzl)-OH591mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0125】
【化57】
【0126】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約18.7mg(収率約15%)を得た。
実施例21
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例37と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(Phet)-OH448mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0127】
【化58】
【0128】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約23.0mg(収率約22%)を得た。
実施例22
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例39と同一の方法により製造したFmoc-DL-Cys(4Cl-Phet)-OH482mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0129】
【化59】
【0130】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約22.4mg(収率約20%)を得た。
実施例23
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例41と同一の方法により製造したFmoc-DL-Hcy(4Cl-Bzl)-OH 482mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0131】
【化60】
【0132】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約13.3mg(収率約12%)を得た。
実施例24
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、後記の参考例43と同一の方法により製造したFmoc-DL-Hcy(4Cl-Phet)-OH496mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0133】
【化61】
【0134】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約24.9mg(収率約22%)を得た。
実施例25
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、Fmoc-D-Phe-OH (渡辺化学工業社製)387mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0135】
【化62】
【0136】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約9.6mg(収率約9%)を得た。
実施例26
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、Fmoc-D-Phe(2Cl)-OH(渡辺化学工業社製)422mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0137】
【化63】
【0138】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約14.3mg(収率約14%)を得た。
実施例27
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、Fmoc-D-Phe(4Cl)-OH(渡辺化学工業社製)422mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0139】
【化64】
【0140】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約15.6mg(収率約15%)を得た。
実施例28
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、Fmoc-D-Phe(3,4Cl2)-OH (渡辺化学工業社製)456mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0141】
【化65】
【0142】
で示される白色粉末状の本発明のペプチド誘導体約28.2mg(収率約26%)を得た。
実施例29
実施例1と同一の方法により得たペプチド誘導体約10mgを、0.02mol/lの塩酸5mlに溶解させ、更に水で20mlに希釈し、そのまま凍結乾燥し、白色粉末状の実施例1の化合物の塩酸塩約10mgを得た。
実施例30
実施例14と同一の方法により得たペプチド誘導体約10mgを、0.02mol/lの塩酸5mlに溶解し、更に水で20mlに希釈し、そのまま凍結乾燥し、白色粉末状の実施例14の化合物の塩酸塩約10mgを得た。
実施例31
常法により、次の組成の錠剤を製造した。
【0143】
乳糖(和光純薬工業社製) 78.2(%)
実施例3と同一の方法により得たペプチド誘導体 1.2
ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業社製) 20.0
実施例32
常法により、次の組成の注射剤を製造した。実施例14と同一の方法により得たペプチド誘導体を生理食塩水(大塚製薬社製)に、6.0mg/mlの割合で溶解し、滅菌ろ過フィルターを通させ、注射剤を製造した。
実施例33
常法により、次の組成の軟膏を製造した。
【0144】
ワセリン 26.3(%)
パラフィン 5.3
セトステアリルアルコール 2.1
プロピレングリコール 10.5
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン
グリコールエーテル 3.2
実施例15と同一の方法により得たペプチド誘導体 0.5
精製水 52.1
実施例34
常法により、次の組成の皮膚外用剤を製造した。
【0145】
パラオキシ安息香酸エチル 0.1(%)
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
ラウロマクロゴール 0.5
セタノール 20.0
白色ワセリン 40.0
精製水 34.3
実施例2と同一の方法により得たペプチド誘導体 5.0
次に、本発明のペプチド誘導体と比較するための公知化合物の製造例を比較例として示す。
比較例1
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、Fmoc-L-Gln(Trt)-OH(PE社製)597mg(1.0mmol)を用いたこと及びその他のアミノ酸ブロックを全てD体のものの代わりに、L体のもの(全てPE社製)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0146】
【化66】
【0147】
で表わされる白色粉末状の化合物約43.2mg(収率約44%)を得た。
比較例2
Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、Fmoc-D-Gln(Trt)-OH(渡辺化学工業社製)597mg(1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0148】
【化67】
【0149】
で表わされる白色粉末状の化合物約49.0mg(収率約50%)を得た。
比較例3
Fmocアミノ酸として、C末端側から順にFmoc-L-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-L-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Arg(Pmc)-OH、及びFmoc-L-Arg(Pmc)-OH(全てPE社製各1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、保護ペプチド樹脂817mg(収率約98%)を得た。
【0150】
この保護ペプチド樹脂335mg(0.1mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法により、次式
【0151】
【化68】
【0152】
で表わされる白色粉末状の化合物約12.3mg(収率約13%)を得た。
比較例4
比較例3と同一の方法により製造した保護ペプチド樹脂335mg(0.1mmol)をグラスフィルター付ディスポカラムに移し、NMPで十分膨潤させた。10%無水酢酸/NMP(4ml)をカラムに入れ、10分撹拌してアセチル化を行なった。カイザーテストによりアセチル化が完了したことを確認し、樹脂をNMP、tert−ペンチルアルコール、酢酸、tert−ペンチルアルコール、NMP、ジエチルエーテルの順に充分洗浄し、真空乾燥し、アセチル保護ペプチド樹脂を得た。
【0153】
以後実施例1と同一の方法により、脱保護し、脱樹脂し、液体クロマトグラフィーにより精製し、次式
【0154】
【化69】
【0155】
で表わされる白色粉末状の化合物約23.5mg(収率約23%)を得た。
比較例5
Fmocアミノ酸として、C末端側から順にFmoc-L-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-L-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-L-Arg(Pmc)-OH(全てPE社製各1.0mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、保護ペプチド樹脂約856mg(収率約100%)を得た。
【0156】
この保護ペプチド樹脂343mg(0.1mmol)を用いたことを除き、実施例1と同一の方法により、次式
【0157】
【化70】
【0158】
で表わされる白色粉末状の化合物約14.0mg(収率約14%)を得た。
比較例6
比較例5と同一の方法により製造した保護ペプチド樹脂343mg(0.1mmol)を用いたこと以外は、比較例4と同一の方法により、脱保護・脱樹脂し、液体クロマトグラフィーで精製して、次式
【0159】
【化71】
【0160】
で表わされる白色粉末状の化合物約22.3mg(収率約21%)を得た。
次に、本発明のペプチド誘導体を製造するための中間体の製造例を参考例として示す。
参考例1(Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの製造)
2−アセトアミドアクリル酸(アルドリッチ社製)1.94g(15.0mmol)と、4−クロロベンゼンチオール(東京化成工業社製)2.39g(16.5mmol)とをジオキサン(和光純薬工業社製)25mlに懸濁させ、これにピペリジン(和光純薬工業社製)0.4mlを添加し、アルゴンガス雰囲気下で、110℃の油浴中で、4時間加熱還流した。空冷後、反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣の赤色油状物に重曹水を添加して溶解させ、エーテルで2回洗浄した。 水層を塩酸酸性とし、析出する結晶を集めて水で2回、次いでエーテルで2回洗浄し、乾燥し、次式
【0161】
【化72】
【0162】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OH約2.36g(収率約57.4%)を得た。
参考例2(Fmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの製造)
参考例1のAc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OH1095mg(4.0mmol)に、10%塩酸30mlを添加し、アルゴンガス雰囲気下で、110℃の油浴中で、3時間加熱還流し、得られた反応液を綿栓ろ過し、ろ液を減圧下に濃縮乾固した。残渣の結晶を水に溶解させ、発泡に注意しながら炭酸ナトリウムの粉末を少しずつ添加して中和し、更に10%炭酸ナトリウム水溶液30mlを添加して溶解し、室温で撹拌しながら、N−(9−フルオレニルメトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド(以下、FmocONSuと略記する。渡辺化学工業社製)2.02g(6.0mmol)のジメトキシエタン(東京化成工業社製)30ml溶液を滴下した。滴下完了後、室温下で一夜撹拌した。反応混合物に水を添加して希釈し、すばやくエーテルで2回洗浄した。水層(水の量によっては目的物のナトリウム塩が油状物として下層に析出する場合がある)に、撹拌下で濃塩酸を添加して酸性となし、析出した油状物が結晶化するまで激しく撹拌した。
【0163】
析出した結晶をろ取し、水でよく洗浄し、乾燥し、次式
【0164】
【化73】
【0165】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(4Cl-Ph)-OH約1.69g(収率約93.0%)を得た。
参考例3[Ac-DL-Cys(3Cl-Ph)-OHの製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、3−クロロベンゼンチオール(アルドリッチ社製)2.39g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0166】
【化74】
【0167】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(3Cl-Ph)-OH約2.73g(収率約66.5%)を得た。
参考例4[Fmoc-DL-Cys(3Cl-Ph)-OHの製造]
Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに参考例3で得たAc-DL-Cys(3Cl-Ph)-OH1095mg(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例2と同一の方法により、次式
【0168】
【化75】
【0169】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(3Cl-Ph)-OH約995mg(収率約54.8%)を得た。
参考例5[Ac-DL-Cys(4Br-Ph)-OHの製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、4−ブロモベンゼンチオール(アルドリッチ社製)3.12g(16.5mmol)を用いたこと、及び反応条件として3時間加熱還流したことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0170】
【化76】
【0171】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(4Br-Ph)-OH約3.20g(収率約67.0%)を得た。
参考例6[Fmoc-DL-Cys(4Br-Ph)-OHの製造]
Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、参考例5と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(4Br-Ph)-OH1273mg(4.0mmol)を用いたこと、及び10%塩酸50mlを用いたことを除き、参考例2と同一の方法により、次式
【0172】
【化77】
【0173】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(4Br-Ph)-OH約1433mg(収率約71.9%)を得た。
参考例7[Ac-DL-Cys(3Br-Ph)-OHの製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、3−ブロモベンゼンチオール(アルドリッチ社製)3.12g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0174】
【化78】
【0175】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(3Br-Ph)-OH約2.54g(収率約53.2%)を得た。
参考例8[Fmoc-DL-Cys(3Br-Ph)-OHの製造]
Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、参考例7と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(3Br-Ph)-OH1273mg(4.0mmol)を用いたこと、及び反応条件として2時間加熱還流したことを除き、参考例2と同一の方法により、次式
【0176】
【化79】
【0177】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(3Br-Ph)-OH約1567mg(収率約78.6%)を得た。
参考例9[Ac-DL-Cys(2,4Cl2-Ph)-OH の製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、2、4−ジクロロベンゼンチオール(ランカスター社製)2.95g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0178】
【化80】
【0179】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(2,4Cl2-Ph)-OH 約3.10g(収率約67.1%)を得た。
参考例10[Fmoc-DL-Cys(2,4Cl2-Ph)-OH の製造]
Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、参考例9と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(2,4Cl2-Ph)-OH 1233mg(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例2と同一の方法により、次式
【0180】
【化81】
【0181】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(2,4Cl2-Ph)-OH 約1.68g(収率約86.1%)を得た。
参考例11[Ac-DL-Cys(2,5Cl2-Ph)-OH の製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、2、5−ジクロロベンゼンチオール(ランカスター社製)2.95g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0182】
【化82】
【0183】
で表わされるレンガ色結晶のAc-DL-Cys(2,5Cl2-Ph)-OH 約1.95g(収率約42.2%)を得た。
参考例12[Fmoc-DL-Cys(2,5Cl2-Ph)-OH の製造]
Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、参考例11と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(2,5Cl2-Ph)-OH 1233mg(4.0mmol)を用いたこと、10%塩酸90mlを用いたこと、及び反応条件として5時間加熱還流したことを除き、参考例2と同一の方法により、次式
【0184】
【化83】
【0185】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(2,5Cl2-Ph)-OH 約1.79g(収率約91.8%)を得た。
参考例13[Ac-DL-Cys(3,5Cl2-Ph)-OH の製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、3、5−ジクロロベンゼンチオール(ランカスター社製)2.95g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0186】
【化84】
【0187】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(3,5Cl2-Ph)-OH 約3.47g(収率約75.1%)を得た。
参考例14[Fmoc-DL-Cys(3,5Cl2-Ph)-OH の製造]
Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、参考例13と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(3,5Cl2-Ph)-OH 1233mg(4.0mmol)を用いたこと、及び10%塩酸60mlを用いたことを除き、参考例2と同一の方法により、次式
【0188】
【化85】
【0189】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(3,5Cl2-Ph)-OH 約1.36g(収率約69.5%)を得た。
参考例15[Ac-DL-Cys(4Me-Ph)-OHの製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、4−メチルベンゼンチオール(東京化成工業社製)2.05g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0190】
【化86】
【0191】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(4Me-Ph)-OH約1.61g(収率約42.4%)を得た。
参考例16(Fmoc-DL-Cys(4Me-Ph)-OHの製造)
Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、参考例15と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(4Me-Ph)-OH1013mg(4.0mmol)を用いたこと、10%塩酸40mlを用いたこと、及び反応条件として2.5時間加熱還流したことを除き、参考例2と同一の方法により、次式
【0192】
【化87】
【0193】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(4Me-Ph)-OH約1.43g(収率約82.5%)を得た。
参考例17[Ac-DL-Cys(3,4Me2-Ph)-OH の製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、3、4−ジメチルベンゼンチオール(アルドリッチ社製)2.28g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0194】
【化88】
【0195】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(3,4Me2-Ph)-OH 約820mg(収率約20.4%)を得た。
参考例18[Fmoc-DL-Cys(3,4Me2-Ph)-OH の製造]
参考例17と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(3,4Me2-Ph)-OH 722mg(2.7mmol)に、10%塩酸30mlを添加し、アルゴンガス雰囲気下で、110℃の油浴中において、4時間加熱還流した。得られた反応液を綿栓でろ過し、ろ液を減圧下に濃縮乾固した。残渣の結晶を水に溶解させ、発泡に注意しながら炭酸ナトリウムの粉末を少しずつ添加して中和した。更に、これに10%炭酸ナトリウム水溶液25mlを添加して溶解し、室温において撹拌下で、FmocONSu(渡辺化学工業社製)1.36g(4.1mmol)のジメトキシエタン(東京化成工業社製)25ml溶液を滴下し、滴下完了後、室温下で一夜撹拌した。
【0196】
反応混合物に水を添加して希釈し、すばやくエーテルで2回洗浄し、水層(水の量によっては目的物のナトリウム塩が油状物として下層に析出する場合がある)に、撹拌下で濃塩酸を添加して酸性となし、析出した油状物が結晶化するまで激しく撹拌した。
析出した結晶をろ取し、水でよく洗浄し、乾燥し、次式
【0197】
【化89】
【0198】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(3,4Me2-Ph)-OH 約1.06g(収率約87.7%)を得た。
参考例19[Ac-DL-Cys(3,5Me2-Ph)-OH の製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、3、5−ジメチルベンゼンチオール(アルドリッチ社製)2.28g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0199】
【化90】
【0200】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(3,5Me2-Ph)-OH 約838mg(収率約20.9%)を得た。
参考例20[Fmoc-DL-Cys(3,5Me2-Ph)-OH の製造]
Ac-DL-Cys(3,4Me2-Ph)-OH の代わりに、参考例19と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(3,5Me2-Ph)-OH 722mg(2.7mmol)を用いたことを除き、参考例18と同一の方法により、次式
【0201】
【化91】
【0202】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys (3,5Me2-Ph)-OH約1.20g(収率約99.2%)を得た。
参考例21[Ac-DL-Cys(4OMe-Ph)-OH の製造]
4−クロロベンゼンチオールの代わりに、4−メトキシベンゼンチオール(アルドリッチ社製)2.31g(16.5mmol)を用いたことを除き、参考例1と同一の方法により、次式
【0203】
【化92】
【0204】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(4OMe-Ph)-OH 約923mg(収率約22.8%)を得た。
参考例22[Fmoc-DL-Cys(4OMe-Ph)-OH の製造]
参考例21と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(4OMe-Ph)-OH 808mg(3.0mmol)に、10%塩酸30mlを添加し、アルゴンガス雰囲気下で、110℃の油浴において、3時間加熱還流した。得られた反応液を綿栓でろ別し、ろ液を減圧下に濃縮乾固した。残渣の結晶を水に溶解させ、発泡に注意しながら炭酸ナトリウムの粉末を少しずつ添加してて中和した。更に、これに10%炭酸ナトリウム水溶液25mlを加えて溶解し、室温にて撹拌下に、FmocONSu(渡辺化学工業社製)1.52g(4.5mmol)のジメトキシエタン(東京化成工業社製)25ml溶液を滴下し、滴下完了後、室温下で一夜撹拌した。
【0205】
反応混合物に水を添加して希釈し、すばやくエーテルで2回洗浄し、水層(水の量によっては目的物のナトリウム塩が油状物として下層に析出する場合がある)に、撹拌下で濃塩酸を添加して酸性となし、析出した油状物が結晶化するまで激しく撹拌した。析出した結晶をろ取し、水で十分洗浄し、乾燥し、次式
【0206】
【化93】
【0207】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(4OMe-Ph)-OH 約1.03g(収率約76.4%)を得た。
参考例23[Ac-DL-Cys(4NO2-Ph)-OH の製造]
2−アセトアミドアクリル酸(アルドリッチ社製)1.29g(10.0mmol)と、4−ニトロベンゼンチオール(東京化成工業社製)1.71g(11.0mmol)とをジオキサン(和光純薬工業社製)20mlに懸濁させ、これにピペリジン(和光純薬工業社製)0.25mlを添加し、アルゴンガス雰囲気下に、110℃の油浴中で、30分間加熱還流した。空冷後、反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣の赤色粘稠物に重曹水を添加して溶解させ、酢酸エチルで2回洗浄した。水層を塩酸酸性となし、析出する結晶を集めて水で2回、次いでエーテルで2回洗浄し、乾燥し、次式
【0208】
【化94】
【0209】
で表わされる淡黄色結晶のAc-DL-Cys(4NO2-Ph)-OH 約2.21g(収率約77.8%)を得た。
参考例24[Fmoc-DL-Cys(4NO2-Ph)-OH の製造]
参考例23と同一の方法により製造したAc-DL-Cys(4NO2-Ph)-OH 1137mg(4.0mmol)に、10%塩酸35mlを添加し、アルゴンガス雰囲気下に、110℃の油浴中で、3時間加熱還流した。得られた反応液を綿栓ろ別し、ろ液を減圧下に濃縮乾固した。残渣の結晶を水に溶解させ、発泡に注意しながら炭酸ナトリウムの粉末を少しずつ添加して中和した。更に、これに10%炭酸ナトリウム水溶液30mlを添加して溶解し、室温において撹拌下で、FmocONSu(渡辺化学工業社製)2.02g(6.0mmol)のジメトキシエタン(東京化成工業社製)30ml溶液を滴下し、滴下完了後、室温下で一夜撹拌した。
【0210】
反応混合物に水を添加して希釈し、すばやくエーテルで2回洗浄した。撹拌下で濃塩酸を添加して水層を酸性とし、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒留去し、黄色アモルファス状物質を得た。これをエーテル−ヘキサンで処理して結晶化させ、エーテル、次いでヘキサンで洗浄し、乾燥し、次式
【0211】
【化95】
【0212】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(4NO2-Ph)-OH 約1.30g(収率約70.2%)を得た。
参考例25[Fmoc-DL-Cys(Ph)-OHの製造]
Ac-DL-Cys(4Cl-Ph)-OHの代わりに、市販のDL−フェニルメルカプツル酸[Ac-DL-Cys(Ph)-OH](東京化成工業社製)957mg(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例2と同一の方法により、次式
【0213】
【化96】
【0214】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(Ph)-OH約1.58g(収率約94.3%)を得た。
参考例26[DL-Cys(4Cl-Bzl) の製造]
塩酸DL−システイン・一水和物(東京化成工業社製)1.76g(10.0mmol)を2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液10mlに溶解させ、更にエタノール6mlを添加し、この溶液に4−クロロベンジルクロリド(アルドリッチ社製)1.77g(11.0mmol)を添加し、更にエタノール6mlを添加した。そのまま室温で1.5時間撹拌し、析出した結晶をろ取し、水で十分洗浄し、エタノールで2回、次いでエーテルで2回、最後にヘキサンで洗浄後、乾燥し、次式
【0215】
【化97】
【0216】
で表わされる白色結晶のDL-Cys(4Cl-Bzl) 約1.95g(収率約79.3%)を得た。
参考例27[Fmoc-DL-Cys(4Cl-Bzl)-OH の製造]
参考例26と同一の方法により製造したDL-Cys(4Cl-Bzl) 983mg(4.0mmol)に、10%炭酸ナトリウム水溶液30mlを添加して溶解し、室温において撹拌下で、FmocONSu(渡辺化学工業社製)2.02g(6.0mmol)のジメトキシエタン(東京化成工業社製)30ml溶液を滴下し、滴下完了後、室温下で一夜撹拌した。
【0217】
反応混合物に水を添加して希釈し、すばやくエーテルで2回洗浄し、水層(水の量によっては目的物のナトリウム塩が油状物として下層に析出する場合がある)に、撹拌下で濃塩酸を添加して酸性となし、析出した油状物が結晶化するまで激しく撹拌した。析出した結晶をろ取し、水で十分洗浄し、乾燥し、次式
【0218】
【化98】
【0219】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(4Cl-Bzl)-OH 約1.32g(収率約70.6%)を得た。
参考例28[DL-Cys(4Br-Bzl) の製造]
4−クロロベンジルクロリドの代わりに、4−ブロモベンジルブロミド(東京化成工業社製)2.75g(11.0mmol)を用いたことを除き、参考例26と同一の方法により、次式
【0220】
【化99】
【0221】
で表わされる白色結晶のDL-Cys(4Br-Bzl) 約2.46g(収率約84.9%)を得た。
参考例29[Fmoc-DL-Cys(4Br-Bzl)-OH の製造]
DL-Cys(4Cl-Bzl)-OHの代わりに、参考例28と同一の方法により製造したDL-Cys(4Br-Bzl)-OH1161mg(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例27と同一の方法により、次式
【0222】
【化100】
【0223】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(4Cl-Bzl)-OH 約1.75g(収率約85.6%)を得た。
参考例30[DL-Cys(2,4Cl2-Bzl)の製造]
4−クロロベンジルクロリドの代わりに、2、4−ジクロロベンジルクロリド(東京化成工業社製)2.15g(11.0mmol)を用いたことを除き、参考例26と同一の方法により、次式
【0224】
【化101】
【0225】
で表わされる白色結晶のDL-Cys(2,4Cl2-Bzl)約2.34g(収率約83.6%)を得た。
参考例31[Fmoc-DL-Cys(2,4Cl2-Bzl)-OHの製造]
DL-Cys(4Cl-Bzl) の代わりに、参考例30と同一の方法により製造したDL-Cys(2,4Cl2-Bzl)1.12g(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例27と同一の方法により、次式
【0226】
【化102】
【0227】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(2,4Cl2-Bzl)-OH約1.31g(収率約65.2%)を得た。
参考例32[DL-Cys(3,4Cl2-Bzl)の製造]
4−クロロベンジルクロリドの代わりに、3、4−ジクロロベンジルクロリド(東京化成工業社製)2.15g(11.0mmol)を用いたことを除き、参考例26と同一の方法により、次式
【0228】
【化103】
【0229】
で表わされる白色結晶のDL-Cys(3,4Cl2-Bzl)約2.31g(収率約82.5%)を得た。
参考例33[Fmoc-DL-Cys(3,4Cl2-Bzl)-OHの製造]
DL-Cys(4Cl-Bzl) の代わりに、参考例32と同一の方法により製造したDL-Cys(3,4Cl2-Bzl)1.12g(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例27と同一の方法により、次式
【0230】
【化104】
【0231】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(3,4Cl2-Bzl)-OH約1.82g(収率約90.5%)を得た。
参考例34[DL-Cys(3,5Br2-Bzl)の製造]
4−クロロベンジルクロリドの代わりに、3、5−ジブロモベンジルブロミド(アボガド社製)3.62g(11.0mmol)を用いたこと、及び一夜撹拌したことを除き、参考例26と同一の方法により、次式
【0232】
【化105】
【0233】
で表わされる白色結晶のDL-Cys(3,5Br2-Bzl)約2.31g(収率約82.5%)を得た。
参考例35[Fmoc-DL-Cys(3,5Br2-Bzl)-OHの製造]
DL-Cys(4Cl-Bzl) の代わりに、参考例34と同一の方法により製造したDL-Cys(3,5Br2-Bzl)1.48g(4.0mmol)を用いたこと、及び反応溶媒として更に水を30ml追加したことを除き、参考例27と同一の方法により、次式
【0234】
【化106】
【0235】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(3,5Br2-Bzl)-OH約2.19g(収率約92.6%)を得た。
参考例36[DL-Cys(Phet)の製造]
4−クロロベンジルクロリドの代わりに、2−フェニルエチルブロミド(東京化成工業社製)2.04g(11.0mmol)を用いたこと、及び一夜撹拌したことを除き、参考例26と同一の方法により、次式
【0236】
【化107】
【0237】
で表わされる白色結晶のDL-Cys(Phet)約1.52g(収率約67.6%)を得た。
参考例37[Fmoc-DL-Cys(Phet)-OHの製造]
参考例36と同一の方法により製造したDL-Cys(Phet)901mg(4.0mmol)に、10%炭酸ナトリウム水溶液30mlを添加して溶解し、室温において撹拌下で、FmocONSu(渡辺化学工業社製)2.02g(6.0mmol)のジメトキシエタン(東京化成工業社製)30ml溶液を滴下し、滴下完了後、室温下で一夜撹拌した。
【0238】
反応混合物に水を添加して希釈し、すばやくエーテルで2回洗浄し、水層(水の量によっては目的物のナトリウム塩が油状物として下層に析出する場合がある)に、撹拌下で濃塩酸を添加して酸性とした。析出した油状物を酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒留去し、得られた残渣をエーテル−ヘキサンで処理して結晶化させた。粉砕した結晶をヘキサンで洗浄後、乾燥し、次式
【0239】
【化108】
【0240】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(Phet)-OH約1.42g(収率約79.3%)を得た。
参考例38[DL-Cys(4Cl-Phet)の製造]
4−クロロベンジルクロリドの代わりに、2−(4−クロロフェニル)エチルブロミド(参考例48参照)2.63g(12.0mmol)を用いたこと、及び一夜撹拌したことを除き、参考例26と同一の方法により、次式
【0241】
【化109】
【0242】
で表わされる白色結晶のDL-Cys(4Cl-Phet)約2.04g(収率約78.5%)を得た。
参考例39[Fmoc-DL-Cys(4Cl-Phet)-OHの製造]
DL-Cys(Phet)の代わりに、参考例38と同一の方法により製造したDL-Cys(4Cl-Phet)1.04g(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例37と同一の方法により、次式
【0243】
【化110】
【0244】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Cys(4Cl-Phet)-OH約1.64g(収率約85.0%)を得た。
参考例40[DL-Hcy(4Cl-Bzl) の製造]
DL−ホモシステイン(東京化成工業社製)1.35g(10.0mmol)を1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液10mlに溶解させ、更にエタノール6mlを添加し、この溶液に4−クロロベンジルクロリド(アルドリッチ社製)1.77g(11.0mmol)を添加し、更にエタノール6mlを添加した。そのまま室温で1.5時間撹拌し、析出した結晶をろ取し、水でよく洗浄し、エタノールで2回、次いでエーテルで2回、最後にヘキサンで洗浄し、乾燥し、次式
【0245】
【化111】
【0246】
で表わされる白色結晶のDL-Hcy(4Cl-Bzl) 約1.86g(収率約71.5%)を得た。
参考例41[Fmoc-DL-Hcy(4Cl-Bzl)-OH の製造]
DL-Cys(4Cl-Bzl) の代わりに、参考例40と同一の方法により製造したDL-Hcy(4Cl-Bzl) 1.04g(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例27と同一の方法により、次式
【0247】
【化112】
【0248】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Hcy(4Cl-Bzl)-OH 約1.47g(収率約76.2%)を得た。
参考例42[DL-Hcy(4Cl-Phet)の製造]
4−クロロベンジルクロリドの代わりに、2−(4−クロロフェニル)エチルブロミド(参考例48参照)2.63g(12.0mmol)を用いたこと、及び一夜撹拌したことを除き、参考例40と同一の方法により、次式
【0249】
【化113】
【0250】
で表わされる白色結晶のDL-Hcy(4Cl-Phet)約1.52g(収率約55.5%)を得た。
参考例43[Fmoc-DL-Hcy(4Cl-Phet)-OHの製造]
DL-Cys(4Cl-Bzl) の代わりに、参考例42と同一の方法により製造したDL-Hcy(4Cl-Phet)1.10g(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例27と同一の方法により、次式
【0251】
【化114】
【0252】
で表わされる白色結晶のFmoc-DL-Hcy(4Cl-Phet)-OH約1.87g(収率約94.3%)を得た。
参考例44[D-Cys(4Cl-Bzl)の製造]
塩酸DL−システイン・一水和物の代わりに、塩酸D−システイン・一水和物(東京化成工業社製)1.76g(10.0mmol)を用いたことを除き、参考例26と同一の方法により、次式
【0253】
【化115】
【0254】
で表わされる白色結晶のD-Cys(4Cl-Bzl)約2.08g(収率約84.7%)を得た。
参考例45[Fmoc-D-Cys(4Cl-Bzl)-OHの製造]
DL-Cys(4Cl-Bzl) の代わりに、参考例44と同一の方法により製造したD-Cys(4Cl-Bzl)1161mg(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例27と同一の方法により、次式
【0255】
【化116】
【0256】
で表わされる白色結晶のFmoc-D-Cys(4Cl-Bzl)-OH約1.85g(収率約95.9%)を得た。
参考例46[L-Cys(4Cl-Bzl)の製造]
塩酸DL−システイン・一水和物の代わりに、塩酸L−システイン・一水和物(東京化成工業社製)1.76g(10.0mmol)を用いたことを除き、参考例26と同一の方法により、次式
【0257】
【化117】
【0258】
で表わされる白色結晶のL-Cys(4Cl-Bzl)約2.12g(収率約86.2%)を得た。
参考例47[Fmoc-L-Cys(4Cl-Bzl)-OHの製造]
DL-Cys(4Cl-Bzl) の代わりに、参考例46と同一の方法により製造したL-Cys(4Cl-Bzl)1161mg(4.0mmol)を用いたことを除き、参考例27と同一の方法により、次式
【0259】
【化118】
【0260】
で表わされる白色結晶のFmoc-L-Cys(4Cl-Bzl)-OH約1.71g(収率約91.4%)を得た。
参考例48[2−(4−クロロフェニル)エチルブロミドの製造]
2−(4−クロロフェニル)エタノール(アルドリッチ社製)9.40g(60.0mmol)の乾燥塩化メチレン(アルドリッチ社製)60ml溶液を食塩−氷浴中、反応容器の内温が−10℃になるまで冷却した。撹拌下に1.0mol/lの三臭化リン−塩化メチレン溶液(アルドリッチ社製)60mlを内温が0℃以下に保たれる速度で滴下した。滴下完了後、そのまま撹拌を継続し、徐々に昇温させて内温が10℃まで上がったところで氷浴を除去し、そのまま一夜撹拌した。反応混合物を分液ロートに移し、水で1回、重曹水で2回、更に飽和食塩水で1回洗浄し、のち無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒留去し、淡黄色油状の2−(4−クロロフェニル)エチルブロミドの粗体約9.45g(収率約72%)を得た。得られた化合物は、更に精製することなく次反応に供した。
【0261】
【発明の効果】
以上記載したとおり、本発明は、新規なペプチド誘導体及び抗真菌剤に関するものであり、本発明によって、実用化が可能な、抗真菌活性に優れ、しかも安全である新規ペプチド誘導体と、これを有効活性成分とする抗真菌剤が提供される。
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