JP3791574B2 - 色再現域作成方法および色再現域作成装置、画像形成装置 - Google Patents

色再現域作成方法および色再現域作成装置、画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーディジタル複写機やカラープリンタ等において色変換を行う際に用いる色再現域に関する情報を取得するための画像処理装置及びその処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カラーディジタル複写機やカラープリンタ等では、入力された画像信号を、画像形成に用いる色材に依存した、装置依存の色空間に変換する処理を行っている。入力される画像信号の色空間としては、例えばRGB色空間や、この色空間を一般化したsRGB色空間などが用いられる。また、画像の形成には色材としてY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の4色を用いたものが多く、装置依存の色空間としてはYMCK色空間が用いられる。また、入力された画像信号に種々の画像処理を施すため、一旦、装置に依存しない、例えばCIE−L* * * 均等色空間などに変換し、画像処理の後にYMCK色空間に変換するといった処理も行われている。
【0003】
カラー画像を形成する場合、入力された画像信号が取りうる色範囲と、上述のようなY、M、C、Kの色材によって例えば紙面に再現可能な色範囲は、必ずしも一致しない。入力された画像信号の取りうる色範囲が再現可能な色範囲に包含されていれば、その画像は入力されたままの色で再現することが可能である。しかし、入力された画像信号に再現できない色が含まれている場合、その色について再現可能な色に変換する必要がある。このような処理を行うためには、まず、入力された画像信号の色が、再現可能な色なのか否かを判断する必要がある。この判断のためには、装置の色再現域を把握しておかなければならない。
【0004】
装置の色再現域を求めるには、まず色再現域と再現できない色領域との境界上の色を求める必要がある。上述の再現できない色を再現可能な色に変換する処理は、画像を形成する際の色空間であるYMCK色空間ではなく、例えば内部で用いるL* * * 均等色空間等において行っている。そのため、YMCK色空間における色再現域の境界の色を、例えばL* * * 均等色空間における色として表現しておく必要がある。しかし、YMCK色空間のような4次元の色空間と、L* * * 均等色空間のような3次元の色空間との対応づけは一意には決まらない。そのため、3次元色空間における色再現域の境界を求めにくいという問題がある。
【0005】
このような問題に対する施策としては、例えば特開平7−203235号公報に記載されているように、明らかに色再現域の境界上にある8色の飽和色R(赤)、G(緑)、B(青)、Y、M、C、K、W(白)を、L* * * 色空間の色に変換し、得られた8点から近隣の3点を三角形で結び、12面体で色再現域を近似する方法がある。しかし、実際の色再現域の境界面は12面体よりもさらに凹凸を有する立体であるので、単純な12面体による色再現域の近似は、色再現域のロス及びオーバーヒットが非常に大きいという問題がある。
【0006】
また、例えば特開平7−30774号公報に記載されている方法では、L* * * 色空間において色再現域をL* 軸に垂直なK個の平面で切断し、K個の断面の各々に対して、等色相間隔で360度をS分割し、K×S個の境界上の点を求め、K×S個の点から複数の三角形を生成し、色再現域を近似している。しかしこの方法では、飽和色を見付け、精度よく色再現域を生成するために多量の計算と数多くの境界信号を生成する必要があるため、効率が悪いという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、3次元色空間における色再現域の境界を簡単に、しかも精度よく得ることのできる色再現域作成方法および色再現域作成装置と、このような色再現域作成装置を組み込んだ画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、画像形成装置において画像を形成する第1の色空間における色再現域の境界を、第1の色空間よりも低次元の第2の色空間において求める際に、第1の色空間における1つの色成分を除く他の色成分により表現される色が色再現域の境界色である複数の色を決定し、該色から前記1つの色成分を変化させたときの第2の色空間における色の軌跡を取得し、該軌跡上の色を第2の色空間における色再現域の境界色として色再現域を作成するものである。例えば、第1の色空間がYMCK色空間である場合には、K成分を除くY,M,C成分により表現される色再現域の境界色を決定し、該決定した境界色からK成分を変化させて、第2の色空間、例えばL* * * 均等色空間における色の軌跡を取得して色再現域を作成することができる。このようにして、簡単な処理によって凹凸を有する色再現域の境界を得ることができる。
【0009】
このとき、得られた隣接する複数の境界色をブロックとし、このブロックによって色再現域の境界面を構成する。このブロックの複数の境界色と、色再現域内の一点によって形成される錐体の体積を算出し、算出したすべての錐体の体積の和と前回の色再現域の作成時に求めたすべての錐体の体積の和との差分が所定の値より大きい場合、あるいは算出した錐体の体積と前回の色再現域の作成時に求めた同じ色再現域の境界領域における錐体の体積との差分が所定の値より大きい場合、ブロック内の境界色間の距離が小さくなるように、境界色を取得して色再現域を再度作成する。これを繰り返すことによって所望の精度で色再現域の境界を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の画像形成装置の実施の一形態を示すブロック図である。図中、1は画像入力部、2は画像処理部、3は画像出力部、4は外部装置、11,13,17はインタフェース、12は色変換部、14は色再現域生成部、15は色再現域格納メモリ、16はパッチパターン生成部である。画像入力部1は、例えば被記録媒体上に形成されている画像や、被写体の画像を読み込む。なお、外部装置4から送られてきた画像を受け取る構成を有していてもよい。画像出力部3は、画像処理部2から送られてくる画像を被記録媒体上に形成する。このとき、例えばY、M、C、Kの各色材を用いて画像を形成するものとし、画像出力部3はYMCK色空間の画像を受け取るものとする。
【0011】
画像処理部2は、画像入力部1や外部装置4から送られてきた画像を処理し、画像出力部3に出力する。このとき、画像出力部3が受け取るYMCK色空間の画像への色変換を行うとともに、画像出力部3が再現可能な画像となるように、画像出力部3の色再現域外の色を色再現域内の色に変換する処理も行う。
【0012】
画像処理部2は、インタフェース11,13,17、色変換部12、色再現域生成部14,色再現域格納メモリ15,パッチパターン生成部16等を有している。画像入力部1で読み込まれた画像は、インタフェース11を介して色変換部12あるいは色再現域生成部14に入力される。また、外部装置4から送られてきた画像は、インタフェース17を介して色変換部12に入力される。
【0013】
色再現域生成部14は、後述するように、画像出力部3において形成する画像の色再現域の境界を生成し、内部の色再現域格納メモリ15に格納する。また、色再現域格納メモリ15に格納された色再現域の境界が、所望の精度で得られているか否かを示す判定結果をパッチパターン生成部16へ出力する。
【0014】
パッチパターン生成部16は、画像出力部3におけるYCMK色空間において、K=0として他のY,M,C成分により表現される色再現域の境界色である複数の色と、その色からK成分を変化させた色とを、それぞれ色パッチ領域に配置した色パッチ画像を生成して、インタフェース13を介して画像出力部3に色パッチ画像を形成させる。また、パッチパターン生成部16は色パッチを生成する色の間隔に関する情報を保持しており、色再現域生成部14からの判定結果の信号に基づいて、色パッチを生成する色の間隔を調節する。例えば、所望の精度で色再現域の境界が生成できていない場合には、細かい色間隔で色パッチを生成する。
【0015】
色変換部12は、少なくとも、画像入力部1で読み込んだ画像の色空間から、画像出力部3が受け取る画像の色空間への色空間の変換を行う。この例では、画像入力部1で読み込んだ画像の色空間から、一旦、機器に依存しない色空間、例えばL* * * 均等色空間に変換し、各種の処理を行った後、画像出力部3が受け取る画像の色空間、すなわちYMCK色空間へ変換する。色変換部12は、L* * * 均等色空間において、画像の取りうる色空間の範囲が画像出力部3における色再現域内となるように、色再現域格納メモリ15に格納されている色再現域の境界を用いて色変換処理を行う。
【0016】
なお、この例では画像処理部2には色変換部12しか示していないが、各種の画像処理を行う構成を付加することができる。また、ここでは画像入力部1および画像出力部3を、インタフェース11,13を介して接続しているが、一体的に構成する場合には、特別のインタフェースを用いずに構成してもよい。
【0017】
図2は、本発明の画像形成装置の実施の一形態における色再現域生成部の一例を示すブロック図である。図中、21は色パッチ読取部、22は入力色変換部、23はバッファ、24はブロック化部、25は体積計算部、26は遅延回路、27は体積格納メモリ、28は減算器、29は精度判定部、30は精度表示部である。なお、図2に示す構成は、本発明の色再現域作成装置および色再現域作成方法を実現する構成の実施の一形態も示すものである。
【0018】
色パッチ読取部21は、入力される色パッチ画像から、各パッチ領域の色を取得する。色パッチ画像は、例えば上述のようにパッチパターン生成部16で生成され、画像出力部3で被記録媒体上に形成され、さらにその被記録媒体上のパッチパターンを画像入力部1で読み取ったものである。
【0019】
色パッチ読取部21で取得した各パッチ領域の色は、入力色変換部22において例えばL* * * 均等色空間に色変換される。なお、色パッチ読取部21に入力された色パッチ画像の色空間がL* * * 均等色空間であれば、この入力色変換部22は必要ない。L* * * 均等色空間のパッチ領域の色はバッファ23に一時格納される。なお、このバッファ23も必要なければ設けなくてもよい。
【0020】
ブロック化部24は、バッファ23に格納されているL* * * 均等色空間に変換されたパッチ領域の色から、色再現域の境界色のデータを作成し、色再現域格納メモリ15に格納する。このとき、色再現域の境界のデータは、隣接する複数の境界色によってブロックを構成しておく。ここでは一例として、矩形状の4つの色再現域の境界色を1つのブロックとしてまとめるものとする。
【0021】
体積計算部25は、色再現域格納メモリ15に格納された色再現域の複数の境界色と、色再現域内のある1点の色とによって色空間中に形成される錐体の体積を計算する。ここでは一例として、ブロックを構成する4つの色再現域の境界色のうち3つを用い、またL* 軸上の1点とによって三角錐を形成し、この三角錐の体積を求めるものとする。さらに、この体積計算部25では、計算された三角錐の体積を用いた値も計算することができる。例えばすべての三角錐の和を求めて出力することができる。もちろん、三角錐の体積をそれぞれ出力してもよい。
【0022】
体積格納メモリ27は、色再現域の境界領域に対応づけて、体積計算部25において計算される錐体の体積に基づく値を体積保持変数として保持する。次回、同じ色再現域の境界領域における錐体の体積が体積計算部25で計算されたとき、保持している体積保持変数の値を減算器28へ出力し、その後、遅延回路26から新たに計算された錐体の体積に基づく値を体積保持変数として保持する。
【0023】
減算器28は、体積計算部25で計算された錐体の体積に基づく値と、体積格納メモリ27に体積保持変数として保持されている同じ色再現域の境界領域における前回計算された錐体の体積に基づく値との差分を計算して精度判定部29へ出力する。
【0024】
精度判定部29は、減算器28で計算された差分が、あらかじめ定められた閾値より小さくなったか否かを判定する。閾値は精度を決定するものであり、減算器28で計算された差分が大きいとき精度は荒く、差分が小さいとき精度が細かいことを示す。繰り返して色再現域の境界色を求めてゆく際の停止条件となる。この精度判定部29の判定結果は外部に出力することができ、例えば図1に示した構成においてパッチパターン生成部16に判定結果を入力し、所望の精度が得られていない場合にさらに細かい色パッチ画像を生成させることができる。
【0025】
精度表示部30は、精度判定部29における判定結果を表示する。もちろん、この精度表示部30を設けずに構成してもよい。
【0026】
次に、本発明の画像形成装置の実施の一形態における動作の一例について説明する。最初に、色再現域作成装置および色再現域作成方法の基本的な説明を行う。図3は、画像出力部に依存したYMC色空間において値が取りうる領域の説明図、図4は、K=0の場合の均等色空間における色再現域の一例を示す断面図、図5は、同じく見下ろし図である。画像出力部3においては、上述のようにカラー画像を形成するためにY,M,C,Kの各色材を用いる。画像出力部3に渡されるYMCK色空間の画像の画素値は、Y,M,C,Kの各色材の色材料を色値として有している。例えば各成分とも、0〜100%の値を取ることができる。ここで、K成分を用いずにY,M,C色成分のみで構成されるYMC色空間においては、画素値の取りうる範囲は図3に示すような立方体内の値となる。なお図3には、R,G,B,BK(黒),Wの各色についても示している。BKは、K色材を用いずにY,M,C色材のみで形成した黒色を示している。
【0027】
このようなY,M,Cの色材を用いて表現できる色の範囲は限られており、L* * * 均等色空間では図4,図5に示す範囲内となる。図4ではL* 軸を含む平面における断面を示しており、横軸をa* ,b* の値から計算可能な彩度軸c* として示している。図4においてハッチングを施して示した範囲が色再現域であり、その周囲が色再現域の境界である。
【0028】
図5では、L* 軸の上から見下ろしたときの色再現域を示している。中心がL* 軸であり、その頂点Wが白色を示している。また、Y,M,C,R,G,Bの各点もそれぞれの色を示している。点Y,M,Cはそれぞれの色材を100%とした時のL* * * 均等色空間における色であり、点RはY=M=100%、点GはY=C=100%、点BはM=C=100%としたときのL* * * 均等色空間における色である。
【0029】
ここで、W,C,B,Mで囲まれている曲面は、Y=0%としM,C成分のみを変化させることによって得られる色で構成されるL* * * 均等色空間における面であり、同様に、W,Y,G,Cで囲まれている曲面はM=0%、W,M,R,Yで囲まれている曲面はC=0%としたときに得られるL* * * 均等色空間における面である。これらの曲面上の色は、それぞれの色材の多少によって表現できる色である。これらの曲面は、色再現域の境界となる。
【0030】
上述の説明は、K=0とした場合である。次にK成分を変化させた場合について考察する。図6は、K成分を変化させた場合の均等色空間における色再現域の一例を示す断面図である。図4と同様に、横軸を彩度c* 軸として示している。K=0%の場合には図4に示すような色再現域となるが、K=20%とすると、全体的に明度および彩度が低くなり、図6において点線で示したような色再現域となる。さらにK成分を増加し、K=100%となると、下部に実線で示したような色再現域となる。このような色再現域の変化を考えるとき、K成分を含めた色再現域はK成分を変化させたときのそれぞれのK成分の値における色再現域の和集合となる。その和集合の外郭が色再現域の境界となる。
【0031】
このK成分を含めた色再現域の境界は、図6に破線で示すように、あるY,M,C成分を固定した色について、K成分を変化させたときの色の軌跡となる。Y,M,C成分を固定した色とは、実際には図5において外郭線で示した色である。すなわち、K成分を除くY,M,C成分で表される色再現域上の色を設定し、その色についてK成分を変化させたときの軌跡が、色再現域の境界となる。図7は、K成分を含めた場合の均等色空間における色再現域の一例を示す斜視図である。上述のような軌跡の集合によって、図7における点C,B,M,R,Y,(G)を結ぶ外郭線よりも下側(暗い側)の色再現域の境界を得ることができる。
【0032】
具体例として、図7に示すY−R外郭線より下側の色再現域の境界を得る場合について説明する。図8は、色再現域の境界を得るために用いるYMCK色空間における色値の具体例の説明図、図9は、これらの色値の均等色空間における概念図である。まず、Y−R外郭線上の色として、ここでは点Y、Rとともに、その間の点Y3を用いている。各点のYMCK色空間における値は、図8において1行目に示しているように、点R=(100,100,0,0)、点Y3=(100,60,0,0)、点Y=(100,0,0,0)とする。これらの点は、Kを含めた場合の色再現域においても境界となる色である。
【0033】
これらの色に対して、K成分を加えた色を用いる。例えば図8の2,3行目に示すように、点Rの色に対してK成分を加えた点R1=(100,100,0,40)と点R2=(100,100,0,100)、点Y3の色に対してK成分を加えた点Y4=(100,60,0,40)と点Y5=(100,60,0,100)、点Yの色に対してK成分を加えた点Y1=(100,0,0,40)と点Y2=(100,0,0,100)の色を用いる。これらの色は、図6に示したようなそれぞれ点R,Y3,YからK成分を変化させたときの軌跡上の色である。すなわち、これらの点は、K成分を含めた色再現域の境界の色である。これらの点のL* * * 均等色空間における位置関係は、図9に模式的に示したようになる。
【0034】
これら図8に示したYMCK色空間の色について、L* * * 均等色空間における色を求めることにより、色再現域の境界の一部を求めることができる。このような処理をY−R外郭線上に限らず、Y−G−C−B−M−Rの外郭線についても行うことによって、K成分を考慮したL* * * 均等色空間における外郭線よりも暗い側の色再現域の境界を求めることができる。なお、この外郭線よりも明るい側の色再現域の境界については、上述のように図5で示した各曲面上の色値を求めればよい。このようにして求めた色再現域の境界は、色再現域格納メモリ15に格納する。
【0035】
このようにして得られた色再現域の境界を色再現域格納メモリ15に格納する際には、例えば隣接する複数の色によってブロックを構成しておくことができる。ここでは色再現域の境界の4点をブロックとする。図9に示す例では、点R,R1,Y4,Y3が1つのブロックを構成し、同様に、点Y3,Y4,Y1,Yが1つのブロックを、点Y4,Y5,Y2,Y1が1つのブロックを、点R1,R2,Y5,Y4が1つのブロックを、それぞれ構成する。図10、図11は、ブロックを構成する色再現域の境界の各点のデータの概念図である。図10に示す例では、ブロックを構成する4点α、β、γ、δについて、それぞれ、YMCK色空間における値と、L* * * 均等色空間における値を組にして保持させる例を示している。また、図11に示す例では、ブロックを構成する4点α、β、γ、δについて、それぞれ、L* * * 均等色空間における値を保持している。
【0036】
このようにして得られた色再現域の境界をそのまま用いてもよいが、本発明では、このようにして得られた色再現域の境界が所望の精度で得られているか否かを判定し、所望の精度よりも荒い場合には、さらに細かく色再現域の境界を得るように処理を行う。そのために、まず現在得られている色再現域の境界が所望の精度で得られているか否かを判定する。
【0037】
図12は、ブロックから三角形を生成する処理の概念図、図13は、三角錐の生成の概念図である。図10や図11に示したように、ブロックを構成する色再現域の境界の4点を、図12に示すように半分に分割する。図12に示す例では、△αβγと△αγδの2つの三角形が形成される。もちろん、△αβδと△βγδに分割してもよい。
【0038】
このように分割された三角形を底面とし、L* 軸上の1点を頂点とする三角錐を考える。この三角錐は図13に示すようになる。頂点となるL* 軸上の点は任意に設定することができるが、色再現域の中心になるべく近い点とするとよい。そして、この三角錐の体積を求め、求めた体積あるいは求めた体積を用いて算出された値など、三角錐の体積に基づく値を体積保持変数として保存しておく。例えばすべての三角錐の体積の和を体積保持変数として保存してもよい。なお、この時点で、三角錐の体積に基づく値とあらかじめ定めておいた閾値と比較して、所望の精度で色再現域の境界が得られたか否かを判断してもよい。
【0039】
さらに細かく色再現域の境界を求めるように、上述の処理を再度行う。図14は、さらに細かく色再現域の境界を得るために用いるYMCK色空間における色値の具体例の説明図である。図8に示したような各色を用いて色再現域の境界を求めた後、例えば図14に示すように使用する色を増やして各色の間隔を狭くし、図8に示した各色から得られた色再現域の境界よりもさらに細かく、色再現域の境界を求める。そして、細かく求めた色再現域の境界から三角錐の体積を求める。
【0040】
このようにして細かい色再現域の境界から求めた三角錐の体積に基づく値と、前回の処理において荒い色再現域の境界から求めた三角錐の体積に基づく値である体積保持変数の値とを比較し、その差分があらかじめ定めておいた精度制御閾値より小さくなれば、所望の精度が得られたものと判断する。差分が精度制御閾値以上であれば、まだ所望の精度が得られていないものとして、今回の三角錐の体積を体積保持変数として保存し、さらに細かい色再現域の境界を求めるべく処理を繰り返す。上述のような処理によって、所望の精度で色再現域の境界を求めることができる。
【0041】
図15は、本発明の画像形成装置の実施の一形態における色再現域作成処理の動作の一例を示すフローチャートである。まずS41で、精度判定部29において所望の精度が得られたか否かを判定する際に用いる精度制御閾値の値を設定する。またS42で、体積格納メモリ27に保持される体積保持変数を初期化する。さらにS43で、画像出力部3の設定を行っておく。
【0042】
次に、色再現域の境界の初期値を計算する。ここではS44で画像出力部3に依存した色空間の所定の成分を定数化し、次元を下げる。例えばYMCK色空間においてK成分の値を0に固定し、YMC色空間として扱う。この場合、Y、M、Cの各成分は、図3に示した立方体の範囲内で値を取りうる。S45で、次元を下げた画像出力部3に依存した色空間を用いて、均等色空間における色再現域の境界を求める。この処理は、例えば図4および図5に示したように求めることができる。ここで、さらに図8に示したようにK成分を変化させた色も考慮し、図7に示すような色再現域の境界を求めてもよい。
【0043】
このようにして求められた色再現域の境界は、S46で例えば図10や図11に示したようにブロックを構成し、色再現域格納メモリ15に格納される。ここでは初期値の設定を行うための処理であるから、精度の判定処理を行わないが、装置構成上、精度判定を行ってももちろんよい。
【0044】
S47でブロックサイズの更新を行う。ブロックサイズは、例えば図10や図11に示したような4点による矩形のブロックを想定するとき、その矩形の色空間における大きさを示す。S47では、ブロックサイズを小さくする方向で更新する。そしてその更新後のブロックサイズに従い、S48で色再現域の境界となる色パッチをパッチパターン生成部16に生成させる。例えばブロックサイズ変更前において図8に示すような色値を用いていたとき、ブロックサイズ更新後は図14に示すように細分した色値を用いることができる。
【0045】
このような色値を用い、色パッチパターンを生成し、S49で画像出力部3に色パッチ画像を形成させる。そしてその色パッチ画像を画像入力部1によって読み取らせる。読み取った色パッチ画像は、色再現域生成部14の色パッチ読取部21に入力される。この色パッチ読取部21において、画像入力部1で読み取った画像中からパッチ領域を検出し、そのパッチ領域の色を取得する。
【0046】
色パッチ読取部21で取得したパッチ領域の色は、S50で入力色変換部22により画像入力部1の色空間から均等色空間に変換され、バッファ23に格納される。さらにS51で、バッファ23に格納されたパッチ領域の色からブロック化部24により色再現域の境界を生成し、その境界の色をブロック化して色再現域格納メモリ15に格納する。
【0047】
次にS52で色再現域格納メモリ15に格納されている色再現域の境界を構成するブロックから複数の三角形を定義し、その三角形を底面とし、色再現域内の1点を頂点とする三角錐を定義する。そしてS53で三角錐の体積を体積計算部25で計算する。そのまま三角錐の体積を用いてもよいが、ここでは一例として、S54において、すべての三角錐の体積の和を算出し、色再現域の体積を三角錐の体積に基づく値として計算する。計算した体積は減算器28に送られ、S55で体積格納メモリ27に格納されている体積保持変数との差分を減算器28で算出する。また、体積計算部25で計算された三角錐の体積に基づく値(ここでは色再現域の体積)は、遅延回路26を経て体積格納メモリ27に送られ、S56で体積格納メモリ27の体積保持変数を更新する。
【0048】
S57で精度判定部29は減算器28で算出した差分と精度制御閾値を比較する。差分が精度制御閾値以上であれば、S47へ戻って、さらに細かいブロックサイズを設定し、精度の高い色再現域の境界を求める。このようにブロックサイズの更新とそのブロックサイズにおける色再現域の境界の生成、および、精度の判定を繰り返し行う。
【0049】
S57で差分が精度制御閾値より小さいと判定された場合には、所望の精度で色再現域の境界が求められたものとして、S58でそのときの色再現域の境界を確定する。このようにして、所望の精度で色再現域の境界を生成することができる。
【0050】
図16は、本発明の画像形成装置の実施の一形態における画像形成時の動作の一例を示すフローチャートである。上述のようにして色再現域格納メモリ15に色再現域の境界が格納されることによって、画像形成が可能な状態となる。画像形成を行う際には、画像入力部1で読み取った画像や、外部装置4から送られてくる画像が入力される。色変換部12は、S61で画像入力部1や外部装置4に依存した色空間から、均等色空間に変換する。そしてS62で、色再現域格納メモリ15に格納されている色再現域の境界を用いて、入力された画像の各画素の色が色再現域に含まれるか否かを判断し、色再現域に含まれない色については色再現域内の色に変換する処理を行う。なお、このS62の処理の前後で各種の画像処理を行うことができる。そしてS63で、画像出力部3に依存した色空間への変換処理を行い、画像出力部3によって画像を被記録媒体上に形成する。形成された画像は、精度よく求めた色再現域の境界を用いて、色再現域外の色を色再現域内へ変換しているので、画像出力部3の色範囲を最大限利用し、また色再現域外の色の出力による変色などが防止され、良好に色再現された画像を得ることができる。
【0051】
図1に示した例では、画像形成装置内に色再現域生成部14を有している。そのため、例えば画像出力部3の環境変化や経時変化による色再現性の変動が発生した際には、その都度、色再現域の境界の生成処理を実行することができ、常に最適な色変換処理を行うことができるようにキャリブレーションを行うことができる。
【0052】
なお、図1に示す構成において、画像入力装置1を設けずに外部装置4から送られてくる画像を形成するプリンタとして構成したり、あるいは外部装置4からの画像を受け取れない構成も可能である。また、図2に示した色再現域生成部14を別途設けることもでき、その場合には、画像形成装置として色再現域格納メモリ15を除く色再現域生成部14およびパッチパターン生成部16を設けずに構成することができる。この場合でも、色再現域格納メモリ15には、上述のようにして所望の精度で色再現域の境界が格納されているので、色再現域外の色を正確に判定し、色再現域内の色へ良好に変換することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、均等色空間の色再現域を簡単にしかも精度よく生成することができる。これによって、色再現域の中か外かを正確に判定し、色再現域外の色を色再現域内の色へ良好に変換することができるので、高品質の色再現を実現し、高画質の画像を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の画像形成装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】 本発明の画像形成装置の実施の一形態における色再現域生成部の一例を示すブロック図である。
【図3】 画像出力部に依存したYMC色空間において値が取りうる領域の説明図である。
【図4】 K=0の場合の均等色空間における色再現域の一例を示す断面図である。
【図5】 K=0の場合の均等色空間における色再現域の一例を示す見下ろし図である。
【図6】 K成分を変化させた場合の均等色空間における色再現域の一例を示す断面図である。
【図7】 K成分を含めた場合の均等色空間における色再現域の一例を示す斜視図である。
【図8】 色再現域の境界を得るために用いるYMCK色空間における色値の具体例の説明図である。
【図9】 図8に示した色値の均等色空間における概念図である。
【図10】 ブロックを構成する色再現域の境界の各点のデータの一例の概念図である。
【図11】 ブロックを構成する色再現域の境界の各点のデータの別の例の概念図である。
【図12】 ブロックから三角形を生成する処理の概念図である。
【図13】 三角錐の生成の概念図である。
【図14】 さらに細かく色再現域の境界を得るために用いるYMCK色空間における色値の具体例の説明図である。
【図15】 本発明の画像形成装置の実施の一形態における色再現域作成処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図16】 本発明の画像形成装置の実施の一形態における画像形成時の動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…画像入力部、2…画像処理部、3…画像出力部、4…外部装置、11,13,17…インタフェース、12…色変換部、14…色再現域生成部、15…色再現域格納メモリ、16…パッチパターン生成部、21…色パッチ読取部、22…入力色変換部、23…バッファ、24…ブロック化部、25…体積計算部、26…遅延回路、27…体積格納メモリ、28…減算器、29…精度判定部、30…精度表示部。

Claims (9)

  1. 画像形成装置において画像を形成する第1の色空間における色再現域の境界を該第1の色空間よりも低次元の第2の色空間において求める色再現域作成方法において、前記第1の色空間における1つの色成分を除く他の色成分により表現される色が色再現域の境界色である複数の色を決定し、該色から前記1つの色成分を変化させたときの第2の色空間における色の軌跡を取得し、該軌跡上の色を第2の色空間における色再現域の境界色として色再現域を作成することを特徴とする色再現域作成方法。
  2. 前記第1の色空間はYMCK色空間であり、K成分を除くY,M,C成分により表現される色再現域の境界色を決定し、該決定した境界色からK成分を変化させて、第2の色空間における色の軌跡を取得することを特徴とする請求項1に記載の色再現域作成方法。
  3. 第2の色空間における色再現域の複数の隣接する境界色をブロックとし、該ブロックの複数の境界色と色再現域内の一点によって形成される錐体の体積を算出し、算出したすべての錐体の体積の和と前回の色再現域の作成時に求めたすべての錐体の体積の和との差分が所定の値より大きい場合、ブロック内の境界色間の距離が小さくなるように、前記境界色を取得して色再現域を再度作成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色再現域作成方法。
  4. 第2の色空間における色再現域の複数の隣接する境界色をブロックとし、該ブロックの複数の境界色と色再現域内の一点によって形成される錐体の体積を算出し、算出した錐体の体積と前回の色再現域の作成時に求めた同じ色再現域の境界領域における錐体の体積との差分が所定の値より大きい場合、ブロック内の境界色間の距離が小さくなるように、前記境界色を取得して色再現域を再度作成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の色再現域作成方法。
  5. 入力色空間において色パッチ領域から色を取得する色パッチ取得手段と、色パッチ取得手段で取得した色パッチ領域の色を入力色空間から装置に依存しない第2の色空間へ色変換する色変換手段と、第2の色空間へ色変換した前記色パッチ領域の色をもとに色再現域を作成する色再現域生成手段を有し、前記色パッチ取得手段は、前記第2の色空間よりも高次元の第1の色空間において画像を形成する画像形成装置で形成された、前記第1の色空間における1つの色成分を除く他の色成分により表現される色が色再現域の境界色である複数の色および該色から前記1つの色成分を変化させた色をそれぞれ色パッチ領域に配置した画像から、色パッチ領域の色を取得することを特徴とする色再現域作成装置。
  6. さらに、前記色再現域生成手段で作成した色再現域を形成する複数の隣接する色をブロックとし該ブロックの複数の色と色再現域内の一点によって形成される錐体の体積を算出する体積計算手段と、該体積計算手段で計算したすべての錐体の体積の和と前回の色再現域の作成時に求めたすべての錐体の体積の和との差分を計算して所定の値と比較する比較手段を有し、前記差分が所定の値より大きい場合、前記色パッチ取得手段がブロック内の境界色間の距離が小さくなるように前記境界色を取得して、各手段の処理を繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の色再現域作成装置。
  7. さらに、前記色再現域生成手段で作成した色再現域を形成する複数の隣接する色をブロックとし該ブロックの複数の色と色再現域内の一点によって形成される錐体の体積を算出する体積計算手段と、該体積計算手段で計算した錐体の体積と前回の色再現域の作成時に求めた同じ色再現域の境界領域における錐体の体積との差分を計算して所定の値と比較する比較手段を有し、前記差分が所定の値より大きい場合、前記色パッチ取得手段がブロック内の境界色間の距離が小さくなるように前記境界色を取得して、各手段の処理を繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の色再現域作成装置。
  8. 被記録媒体から画像を読み取る画像読取手段と、請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の色再現域作成装置と、前記色再現域作成装置で作成された色再現域を格納するメモリと、該メモリに格納されている色再現域に従って色変換を行う色変換手段と、パッチパターンを生成するパッチパターン生成手段と、被記録媒体上に画像を形成する画像形成手段を有し、前記パッチパターン生成手段は、前記第1の色空間における1つの色成分を除く他の色成分により表現される色が色再現域の境界色である複数の色および該色から前記1つの色成分を変化させた色をそれぞれ色パッチ領域に配置した画像を生成し、前記画像形成手段は、少なくとも前記パッチパターン生成手段で生成した画像を被記録媒体上に形成し、前記画像読取手段は、少なくとも被記録媒体上に形成された前記パッチパターン生成手段で生成した画像を読み取って前記色再現域作成装置の前記色パッチ読取手段に入力することを特徴とする画像形成装置。
  9. 被記録媒体から画像を読み取る画像読取手段と、請求項6または請求項7に記載の色再現域作成装置と、前記色再現域作成装置で作成された色再現域を格納するメモリと、該メモリに格納されている色再現域に従って色変換を行う色変換手段と、パッチパターンを生成するパッチパターン生成手段と、被記録媒体上に画像を形成する画像形成手段を有し、前記パッチパターン生成手段は、前記第1の色空間における1つの色成分を除く他の色成分により表現される色が色再現域の境界色である複数の色および該色から前記1つの色成分を前記色再現域作成装置の前記比較手段による比較結果に応じた間隔で変化させた色をそれぞれ色パッチ領域に配置した画像を生成し、前記画像形成手段は、少なくとも前記パッチパターン生成手段で生成した画像を被記録媒体上に形成し、前記画像読取手段は、少なくとも被記録媒体上に形成された前記パッチパターン生成手段で生成した画像を読み取って前記色再現域作成装置の前記色パッチ読取手段に入力することを特徴とする画像形成装置。
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