JP3789554B2 - 残留気泡なしに予め注射液を充填した注射器を製造する方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、患者の健康にとって危険な量の残留気泡を含まない予め注射液を充填した注射器を製造する方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
インビボ診断用造影剤、特にＸ−線撮影やＭＲ撮影用の造影剤は、患者に対して、管理された速度と量で投与されねばならない。通常、この要求に対しては、診断用造影剤の予見される大容量（組成の２５０ｍｌまであるいはそれ以上）の正しい投与を可能にすることができる自動インジェクターを使用することによって、答えることができる。
【０００３】
このようなインジェクターの多く、特に高圧型のものは、経済的および安全性の問題から、好ましくはプラスチック製の注射器を用いている。
【０００４】
インジェクターは、使用する前に自動的に充填される空の注射器か、予め注射液を充填した注射器の何れかを具備することができ、この中では、より高い無菌性とより正確な投与量を付与するため、後者が好ましい。しかしながら、両方の場合とも、気泡が患者に注入され、それによって患者の生命が危険にさらされることを防ぐために、診断薬を投与する前に、注射器内に残留する空気または気体を完全に排除しなければならない。
【０００５】
残留気泡の排除に関する明快な操作手順が規定されそして試験されてきたと云う事実にも拘らず、かかる手順の不正確な或いは誤った適用によって、毎年、相当数の致命的事故が発生している。
【０００６】
このために、相当量でしかも危険な量の気泡を含まずに、予め注射液を充填した注射器を製造することが、大いに望まれていた。残念なことに、今日の技術は、この結果を達成するための実用的でしかも経済的なシステムを予見していない。
【０００７】
現在までに、予め注射液を充填した注射器の製造のための種々の方法が開示されてきた。例えば、米国特許第４，６２８，９６９号や同第４，７１８，４６３号（共にＭａｌｌｉｎｃｋｒｏｄｔ）には、注射器の末端開放部に注射液を充填し、一方、適当な取り外し可能なキャップを用いて、（針が取り付けられる）ノズルを封止する方法が開示されている。その後、封止プランジャーを挿入することによって、注射器を減圧下に組み立てる。明らかに、適用される減圧度は非常にささやかなものである。実際には減圧条件下では、注射器からの噴出を防止するために沸騰を避けねばならないので、減圧度は液体の蒸気圧によって制限される。実際のところ、技術的観点からは、この理論的制限を達成することができない。その結果、封止プランジャーを挿入した後、液体とプランジャーとの間の容量を大気圧まで圧縮すると、気泡が残る。該気泡のサイズは、注射器に充填される液体の量と、適用される減圧度と液体の蒸気圧との差に依存する。従って、気泡の存在は、不可避である。
【０００８】
米国特許第５，２０７，９８３号（Ｓｔｅｒｌｉｎｇ Ｗｉｎｔｈｒｏｐ）には、ノズルを通して液体を注射器に充填し、一方、ピストンプランジャーを用いて端部を予め封止する方法が開示されている。引き続き、適当な取り外し可能なキャップを用いて、該ノズルを封止する。もし、封止が（前記のように）減圧下に実施されるのであれば、残留気泡は無視し得る。しかしながら、注射器の先端の穴の縮小されたサイズは、非常に細い針の導入しか許容しない。従って、大容量の液体用の注射器を製造する時には特に、注射器の充填には長時間を要する。このことは、工業的には実行可能ではない。
【０００９】
この種の方法に関連するもう１つの問題点は、充填する間に泡の生成が考えられ、これによって、全体的な製造時間がより長くなってしまうことである。
【００１０】
国際出願ＷＯ９４／１３５４１号（Ｍａｌｌｉｎｃｋｒｏｄｔ）には、プランジャーと先端の取り外し可能なキャップの両方を用いて封止した空の注射器の充填方法が開示されている。この操作は、充填が終了した際に封止されるサイドアクセスを通して実施される。このシステムをもってしても、前記２つの欠点に関連する問題点、即ち、容認できない残留気泡の存在と長過ぎる充填時間、を解決することはできない。
【００１１】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記欠点を解消し、危険な残留気泡を含まない、予め注射液を充填した注射器を短時間で製造することのできる方法を提供することである。
【００１２】
【問題点を解決するための手段】
本発明の方法は下記の工程を特徴とする：
（ａ）適当な取り外し可能なキャップを用いて、注射器のノズルを一時的に封止する工程、
（ｂ）投与量の少なくとも８０容量％以上、好ましくは９５容量％以上の所望の注射液を、該注射器の反対側の開放端から充填し、その後、プランジャー−ピストンを減圧下に挿入する工程、
（ｃ）該注射器を回転し、該キャップを取り外し、そして残りの量の該注射液を、該ノズルを通して該注射器に完全に充填する工程、および
（ｄ）場合によっては、減圧下で該キャップを該注射器の先端に再挿入することによって該注射器を再封止する工程。
【００１３】
これらの操作の後、予め注射液を充填した注射器を滅菌し、梱包することができる。このようのして、残留気泡を含まないか、或いは最小限の残留気泡を含む製品が得られ、この製品は患者に対して危険ではない。
【００１４】
本発明の方法の低速度部分、即ち、注射器の先端を通して充填する部分が、充填液体の最小限部分にしか関係しないので、該方法の全製造時間は工業的に容認し得る。
【００１５】
２００〜３００ｍｌの注射器のように、大容量の注射液を含む注射器を製造する時、その利点はより明白である。
【００１６】
本発明の方法は、厳格に管理された投与量と投与速度の条件下にある自動インジェクターを通して投与される注射液を含むガラス製またはプラスチック製の予め注射液を充填した注射器の製造に、特に適している。
【００１７】
本発明の特に好ましい使用は、通常、高濃度で粘稠な溶液を大容量投与する診断処置用の造影剤溶液を予め充填したプラスチック製の注射器の製造である。

Claims (6)

1. 患者の健康に危険な量の残留気泡を含まない予め注射液を充填した注射器を製造する方法に於いて：
   （ａ）適当な取り外し可能なキャップを用いて、注射器のノズルを一時的に封止する工程、
   （ｂ）投与量の少なくとも８０容量％以上、好ましくは９５容量％以上の所望の注射液を、該注射器の反対側の開放端から充填し、その後、プランジャー−ピストンを減圧化に挿入する工程、
   （ｃ）該注射器を回転し、該キャップを取り外し、そして残りの量の該注射液を、該ノズルを通して該注射器に完全に充填する工程、および
   （ｄ）該キャップを該注射器の先端に再挿入することによって該注射器を再封止する工程、
   を特徴とする方法。
2. 該注射器の開放端を通して充填する注射液の量が、該注射液の全投与量の少なくとも９５％以上である、請求項１に記載の方法。
3. 該注射器が製薬注射液で満たされた、請求項１または２に記載の方法により予め注射液を充填した注射器。
4. 該注射器がインビボ診断処置用の造影撮影注射液で満たされた、請求項１または２に記載の方法により予め注射液を充填した注射器。
5. 該注射器がプラスチック製である、請求項１または２に記載の方法により予め注射液を充填した注射器。
6. 前記の注射器先端へのキャップの再挿入を減圧下で行うことを特徴とする請求項１に記載の方法。