JP3789151B2 - トンネル掘削機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネルを掘削するときに用いるシールド型のトンネル掘削機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、トンネルを掘削するために、シールドシェルを有したシールド型のトンネル掘削機が多用されている。
このようなトンネル掘削機は、その外殻をなす円筒状のシールドシェルと、地山を掘削するためのカッタを備えた円盤状のカッタヘッドと、カッタヘッドを回転駆動させるヘッド駆動機構と、掘削機を掘進させるための推進機構とが備えられた構成となっている。そして、ヘッド駆動機構でカッタヘッドを回転駆動させつつ、推進機構で掘削機を推進させることによって、地山を掘削してトンネルを掘進していくようになっている。
【0003】
従来、トンネル掘削機のカッタヘッドには、カッタをカッタヘッドの外側、すなわち切羽面に対向する側に取り付ける構造のものが一般的である。また、図7に示すように、カッタヘッド50にカッタ取付台座51、51、…が設けられ、カッタヘッド50の内側(図中右方)からローラカッタ等のカッタ52、52、…の交換を可能とした構造のものもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来のトンネル掘削機には、以下のような問題が存在する。
まず、カッタをカッタヘッドの外側に取り付けた構造のものでは、掘削途中に前方の地山の手当を行いたい場合に、カッタヘッド前面にほとんど開口がないために、カッタヘッドを迂回するかあるいはカッタヘッドに設けられたマンホールを通るかしなければカッタヘッド前方の切羽面側には到達することができない。しかも従来のマンホールは外方すなわち切羽面側に開くようになっているため、マンホールを開くためにトンネル掘削機を後退させなければならず、これによって切羽面の十分な山留め効果が得られないという問題も発生する。
【0005】
一方、図7に示した構造のものでは、地山の手当を行う場合には、カッタ52を取り外せばそこに開口部が形成されるため、この開口部から手当作業を行うことが考えられるが、言うまでもなくこの開口部は狭いため、作業の自由度が大幅に制限されてしまう。また、マンホールが備えられている場合には、このマンホールから手当作業を行うことができるが、この場合には、前記と同様、マンホールを開くためにトンネル掘削機を後退させなければならず、十分な切羽面の山留め効果が得られない。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので十分な切羽面の山留め効果を得た状態で地山の手当等の作業を行うことのできるトンネル掘削機を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、地山を掘削するカッタを備えたカッタヘッドと、該カッタヘッドの後方側に設けられてトンネル掘削機の外殻をなす円筒状のシールドシェルと、該シールドシェルの内方に備えられて前記カッタヘッドを回転駆動させるヘッド駆動機構と、該トンネル掘削機を推進させるための推進機構とを備えてなり、前記カッタヘッドがカッタを有する開閉部とその外周側に位置する外周部とから構成され、かつ前記開閉部が後方側に向けて開閉自在となるよう前記外周部にヒンジを介して連結され、前記カッタヘッドの外周部には、前記開閉部の後方に位置するガイド部が形成されてなり、前記ガイド部の前面と前記開閉部の後面との間にはブロック部材が着脱自在に介装されていることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るトンネル掘削機の実施の形態の一例を、図1ないし図6を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、トンネル掘削機1には、その前部にフロントボディ1aが備えられている。
フロントボディ1aは、その外殻が円筒状のシールドシェル2によって形成されており、その前方(図中左方)には、地山を掘削するための円盤状のカッタヘッド3が配設されている。
【0011】
シールドシェル2内には、カッタヘッド3側からの掘削土の流入を防ぐ円板状のバルクヘッド4が、該シールドシェル2の内周面に設けられた環状フレーム2aに取り付けられている。このバルクヘッド4には、軸受5が設けられており、カッタヘッド3がこの軸受5に回動自在に支持されている。また、カッタヘッド3を回転駆動させるためのヘッド駆動ユニット(ヘッド駆動機構)6がバルクヘッド4の後方側に設けられている。さらに、バルクヘッド4の前面側にはカッタチャンバ7が設けられている。
【0012】
図2に示すように、シールドシェル2は、周方向に複数ユニットに分割できるようになっており、例えば、下部2Aと両側部2B、2Cと上部2Dとに四分割されてユニット化されている。そして、互いに隣接するユニットどうしは、ボルトナット等で着脱自在に連結されている。
【0013】
このシールドシェル2には、その上下および両側方にフロントグリッパ10が設けられている。各フロントグリッパ10は、断面円弧状のシュー10aが備えられ、このシュー10aを図示しないグリッパジャッキでシールドシェル2の径方向に進退させる構造とされている。
また、図1に示したように、シールドシェル2には、その下部に一対のフロントサポート11が設けられている。このフロントサポート11は、接地用シュー11aをジャッキ11bで下方に張り出させる構造となっている。
【0014】
シールドシェル2内には、該トンネル掘削機1を推進させるためのシールドジャッキ(推進機構)14、14、…が、円周方向に所定間隔ごとに配置されている。各シールドジャッキ14は、その前端が環状フレーム2aに固定されており、シールドシェル2の軸線方向に伸縮駆動されるようになっている。
【0015】
また、バルクヘッド4の後面側には、メインビーム15が一体に取り付けられている。このメインビーム15は、中空構造のシールドシェル2の軸線方向に沿って後方に延在し、後方にいくにしたがい漸次断面寸法が縮小するよう形成されている。このメインビーム15は、例えば前部15Aと、中間部15Bと、後部15Cとに分割可能な構成とされている。
そして、ベルトコンベヤ16が、カッタチャンバ7からバルクヘッド4の中央部に形成された開口部(図示なし)およびメインビーム15内を通って後方に延設されている。
【0016】
メインビーム15の前部15Aの後端部には、ライナー(反力部材)を組み立てるエレクタ17が、シールドシェル2の後方に露呈して設けられている。このエレクタ17は、メインビーム15の外周側に取り付けられた環状のガイドレール17aに沿って回転自在に設けられている。さらにエレクタ17には、地山手当用の吹付ノズル18が備えられている。
【0017】
メインビーム15の後部15Cには、メイングリッパ19のグリッパボディ19aが前後方向に摺動自在に配設されている。このグリッパボディ19aには、その両側に図示しないグリッパシューが備えられており、これらのグリッパシューは、側方に向けて進退させることによってトンネルTの坑壁に押しつけ可能な構成とされている。
【0018】
そして、前記メインビーム15の前部15Aの後端部と、グリッパボディ19aとの間には、スラストジャッキ(推進機構)20、20、…が配設されている。各スラストジャッキ20は、その前端部がメインビーム15の前部15Aに鉛直方向に延在する連結ピン21を介して枢支連結されており、これによってスラストジャッキ20の後端側がメインビーム15から離間する方向に回転可能な構成となっている。
さらに、メインビーム15の後部15Cの後端部には、リヤサポート22が設けられており、接地用シュー22aをジャッキ22bで鉛直下方に向けて進退させる構成となっている。
【0019】
図3に示すように、このような構成のトンネル掘削機1において、前記カッタヘッド3は、面板30と、面板30の所定箇所に取り付けられたローラカッタ(カッタ)31、31、…とから構成されている。面板30には、中心部から外周部に向けて放射状に延びるスリット32、32、…が形成されており、ここから掘削したズリを取り込むようになっている。
【0020】
面板30は、中央部に位置する略矩形の開閉部33と、該開閉部33の外周側に位置する外周部34とから構成されている。
図4に示すように、開閉部33は、その一端側が外周部34にヒンジ35を介して連結されており、後方すなわち切羽面から離間する方向に向けて開閉自在な構成とされている。
【0021】
図5に示すように、外周部34の内周縁部34aの相対向する二辺には、開閉部33の外周縁部の後面側に近接する位置に、面板30の中心部側に向けて突出するガイド部材(ガイド部)36が設けられている。そして、開閉部33を閉じた状態において、開閉部33の後面33aとガイド部材36の前面36aとの間には、クサビ部材(ブロック部材)37が図示しないボルト等によって着脱自在に介装されている。
これにより、掘削時に切羽面からカッタヘッド3に荷重がかかったときに、開閉部33にかかる荷重はクサビ部材37を介して外周部34のガイド部材36に伝達されるため、図4に示したヒンジ35に多大な荷重が作用するのを防ぐことができる。
【0022】
図6に示すように、前記カッタヘッド3の外周部34は、例えば上部34Aと下部34Bとに二分割可能な構成とされており、上部34Aと下部34Bとはボルト・ナット等によって着脱自在に連結されている。
【0023】
次に、上記構成からなるトンネル掘削機1でトンネルTを掘削する方法について説明する。
図1に示したトンネル掘削機1では、基本的には通常のシールド式のトンネル掘削機と同様、カッタヘッド3をヘッド駆動ユニット6で回転駆動させつつ、フロントボディ1aを推進させてトンネルTを掘進していく。
【0024】
このとき、掘削すべき地盤が例えば岩盤等の硬質地盤である場合には、フロントボディ1aを推進させる推進機構として、メイングリッパ19とスラストジャッキ20とを用いる。これには、メイングリッパ19のグリッパシュー(図示なし)を坑壁に押し当てることによってグリッパボディ19aをトンネルTの坑壁に固定した状態で、スラストジャッキ20を伸長させることによって、フロントボディ1aが推進するようになっている。このとき、メインビーム15は、グリッパボディ19aの内側を摺動する。
このようにしてフロントボディ1aを推進させつつカッタヘッド3で地山を掘削することによりトンネルTを所定距離掘進した後には、まず、フロントグリッパ10、10、…のグリッパシュー10aを坑壁に押し当ててフロントボディ1aを固定するとともに、リヤサポート22を伸長してメインビーム15の後端側を支持する。次いで、メイングリッパ19のグリッパシュー(図示なし)を引き込んだ後、スラストジャッキ20を収縮させてグリッパボディ19aをメインビーム15に沿って引き寄せて元の状態に戻す。この後は、上記動作を繰り返してトンネルTを掘進していくようにする。
【0025】
また、掘削すべき地盤が例えば軟弱地盤である場合には、フロントボディ1aを推進させる推進機構として、シールドジャッキ14を用いる。
これには、メイングリッパ19およびフロントグリッパ10を収縮して引き込んだ状態で、エレクタ17でトンネルTの坑壁の内面に沿ってライナー40等を組み立て、このライナー40等にシールドジャッキ14の後端を押し当てて伸長させることによって、このライナー40等に反力を得てフロントボディ1aを推進させる。
このようにして、カッタヘッド3で地山を掘削しつつその後方でライナー40を組み立て、シールドジャッキ14でフロントボディ1aを推進させることによって、トンネルTを掘進していくようにする。
このとき、シールドシェル2の長さが通常の掘削機よりも短いため、切羽の近傍でライナー40を組み立てて地山を覆工することができるので、地山の崩落をより効果的に防止することができる。
【0026】
このようにして地山を掘削していくときに、地山に手当する必要が生じた場合には、図5に示したカッタヘッド3の開閉部33と外周部34との間から、クサビ部材37を取り外した後、開閉部33を開いてここから地山の手当作業を行う。このとき、図4に示した開閉部33がトンネル掘削機1の後方側に開くようになっているので、カッタヘッド3の面板30と切羽面との間に空間の確保するためにトンネル掘削機1を後退させる必要がない。
【0027】
このようにして、図1に示したトンネル掘削機1でトンネルTを掘進していき、所定長のトンネルTが構築された後に、以下のようにしてトンネル掘削機1を回収・撤去する。
これにはまず、メインビーム15からスラストジャッキ20を取り外した後、メインビームの後部15C、中間部15B、前部15Aを順次取り外し、これらを掘削したトンネルTの後方から地上に搬出する。
【0028】
続いて、シールドシェル2の環状フレーム2aから、ヘッド駆動ユニット6が取り付けられているバルクヘッド4を取り外し、これを搬出する。
次に、図2に示したシールドシェル2の上部2Dを、内方に引き込むようにして取り外す。続いて、シールドシェル2の両側部2B、2C、下部2Aを順次取り外し、これらを搬出する。
【0029】
最後に、図3に示したカッタヘッド3を後方に引き込み、これを搬出する。このとき、このカッタヘッド3についても、開閉部33と、外周部34とを分割し、さらに図6に示したように外周部34を上部34Aと下部34Bとに分割して、解体搬出する。
【0030】
このようにして解体搬出したトンネル掘削機1は、他のトンネル掘削現場に搬送して再び組み立てることによって転用することができる。これにより、マシンコストを抑えてトンネル掘削費用全体の削減が可能となる。
【0031】
上述したトンネル掘削機1では、カッタヘッド3が、開閉部33と外周部34とから構成され、開閉部33が後方側に開閉自在となるよう外周部34にヒンジ35を介して連結された構成となっている。このようにカッタヘッド3に開閉部33を設けたので、開閉部33を開くことによってカッタヘッド3の前方に回り込むことなく地山の手当等の作業を行うことができる。この開閉部33にはローラカッタ31が設けられているので、開閉部33は掘削機能と開口部としての機能とを兼ね備えたものとなり、人の出入りのためだけに設けられていた従来のマンホールに比較して開口を大きく確保することができ、したがって作業を高い自由度で容易かつ円滑に行うことが可能となる。しかも、開閉部33が後方側に向けて開閉する構成となっているのでトンネル掘削機1を後退させる必要がなく、したがって外周部34によって切羽面の十分な山留め効果を確保した状態で地山の手当等の作業を行うことができる。
【0032】
また、外周部34にガイド部材36が設けられ、開閉部33が閉じたときには、この開閉部33の後面とガイド部材36の前面との間に、クサビ部材37が着脱自在に介装された構成となっている。これにより、カッタヘッド3で地山を掘削しているときに、切羽面側から開閉部33に作用する荷重は、クサビ部材37を介して外周部34のガイド部材36に伝達されるため、ヒンジ35に多大な荷重が作用して、これが損傷するのを防ぐことができる。
【0033】
さらに、上記トンネル掘削機1は、硬質地盤用の推進機構としてメイングリッパ19とスラストジャッキ20とを備え、軟弱地盤用の推進機構としてシールドジャッキ14を備えた構成とされている。このようにして二種類の推進機構を備えたトンネル掘削機1は硬質地盤にも軟弱地盤にも対応した汎用性の高いものとなり、様々な掘削現場に容易に転用することができる。
【0034】
なお、上記実施の形態において、トンネル掘削機1の全体構成については、上記のものに限定するものではなく、周知の各種シールド式トンネル掘削機においても、カッタヘッド3に、後方に向けて開閉する開閉部33を設けることによって、上記と同様の効果を奏することが可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係るトンネル掘削機によれば、カッタヘッドと、シールドシェルと、ヘッド駆動機構と、推進機構とを備えてなるトンネル掘削機のカッタヘッドを、カッタが設けられた開閉部と外周部とから構成し、かつ開閉部を後方側に向けて開閉自在となるよう外周部に連結する構成とした。このようにカッタヘッドに後方に開く開閉部を設けたので、地山の手当等を行うにあたって、開閉部を開けばカッタヘッドの前方に回り込むことなく作業を行うことができる。この開閉部は、通常時はカッタヘッドとして機能し、必要時のみ開くようになっているため、従来のマンホールよりも開口部を大きく形成することができ、したがって作業を高い自由度で容易かつ円滑に行うことが可能となる。しかも、開閉部が後方側に向けて開閉する構成となっているので、開閉部を開くためにトンネル掘削機を後退させる必要がなく、これによって外周部によって切羽面の十分な山留め効果を確保した状態で作業を行うことができる。
【0036】
また、カッタヘッドの外周部に、開閉部の後方に位置するようガイド部を形成し、該ガイド部の前面と開閉部の後面との間にブロック部材を着脱自在に介装させる構成とした。これにより、開閉部を閉じた状態でカッタヘッドで地山を掘削しているときに切羽面側から開閉部に作用する荷重は、ブロック部材を介して外周部のガイド部に伝達されるため、ヒンジに多大な荷重が作用して、これが損傷するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトンネル掘削機の一例を示す側断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】前記トンネル掘削機のカッタヘッドを示す図であって、(a)側断面図、(b)正面図である。
【図4】同カッタヘッドを構成する開閉部と外周部とを示す図であって、開閉部が開いた状態を示す平断面図である。
【図5】前記開閉部が閉じた状態での開閉部と外周部の一部を示す側断面図である。
【図6】前記カッタヘッドの外周部の分割構造の一例を示す正面図である。
【図7】従来のトンネル掘削機のカッタヘッドを示す側断面図および正面図である。
【符号の説明】
1 トンネル掘削機
2 シールドシェル
3 カッタヘッド
6 ヘッド駆動ユニット(ヘッド駆動機構)
14 シールドジャッキ(推進機構)
20 スラストジャッキ(推進機構)
31 ローラカッタ(カッタ)
33 開閉部
34 外周部
35 ヒンジ
36 ガイド部材(ガイド部)
37 クサビ部材(ブロック部材)
T トンネル

Claims (1)

  1. 地山を掘削するカッタを備えたカッタヘッドと、該カッタヘッドの後方側に設けられてトンネル掘削機の外殻をなす円筒状のシールドシェルと、該シールドシェルの内方に備えられて前記カッタヘッドを回転駆動させるヘッド駆動機構と、該トンネル掘削機を推進させるための推進機構とを備えてなり、前記カッタヘッドがカッタを有する開閉部とその外周側に位置する外周部とから構成され、かつ前記開閉部が後方側に向けて開閉自在となるよう前記外周部にヒンジを介して連結され、
    前記カッタヘッドの外周部には、前記開閉部の後方に位置するガイド部が形成されてなり、前記ガイド部の前面と前記開閉部の後面との間にはブロック部材が着脱自在に介装されていることを特徴とするトンネル掘削機。
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