JP3787757B2 - 吸収式冷凍機の性能回復方法および同装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、臭化リチウム吸収式冷凍機が長時間の稼働によってノズルに詰まりを生じたために性能が低下した場合、上記ノズルに堆積した異物を除去して性能を回復させる方法および同装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3は、水を冷媒とするとともに、吸収媒体として臭化リチウムを用いた吸収式冷凍機の1例を示す模式的な系統図である。
本図3の右下方に凡例を示してあるように、ハッチングを付して示した冷媒液12は液状の水である。網目印を付して示した濃溶液13は臭化リチウムの濃厚な水溶液であって、水蒸気を吸収する力が非常に強い。斑点を付して示した稀溶液14は臭化リチウムの稀薄な水溶液であって、加熱されると水蒸気を発生して濃溶液13に変化する性質を有している。
高温再生器1および低温再生器2は加熱管を備えた熱交換器であって、臭化リチウム水溶液を加熱して水蒸気を発生させる。水蒸気を発生させた臭化リチウム水溶液は濃縮されて濃溶液13(網目印)となる。
再生器で発生した水蒸気は凝縮器3に導かれ、冷却水で冷されて液状の水(平行斜線で示す冷媒液12)となり、矢印aのように蒸発器4内へ送り込まれる。
蒸発器4は吸収器9に連通されていて、後述する理由によって真空に近い低圧に保たれているので、送り込まれた水(冷媒)は蒸発して気化潜熱を奪い、冷水を冷却させる。
【0003】
蒸発器4内で蒸発し切れなかった液状の水は、蒸発器の下方の冷媒タンク5に溜まり、冷媒スプレーポンプ6に吸入、吐出されてスプレーダクト8に送られ、スプレーノズル15から噴射される。図4は上記ノズル15付近の拡大断面図である。
上記蒸発器4に連通された吸収器9内には、再生器で濃縮された臭化リチウム濃溶液13が導かれ、蒸発器4で気化した水蒸気を吸収する。
吸収器9内で水蒸気を吸収した濃溶液13は稀溶液14(斑点を付して示す)となり、溶液ポンプ10によって、熱交換器11を経て高温再生器1に返送され、その後、以上の作用を繰り返して吸収サイクルを形成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
吸収式冷凍機が上述のように吸収サイクルを構成するため、機内を高真空に保持しなければならない。しかし、冷媒循環系統内に高温の濃厚な臭化リチウム水溶液が封入されているため、密閉循環系を構成している金属材料の腐食によって真空度を低下させる虞れが有る。
真空度の低下は冷凍性能を低下させるので、防食については種々の工夫が為されているが、腐食を完全に無くすことは、現段階では不可能である。
このため、微量ではあるが腐食生成物が発生して、冷媒循環系統内に蓄積されてゆく。このため、スプレーノズル15を含む散布系統(図3,図4を併せて参照)に異物が付着して体積する虞れが有る。
スプレーノズル15が目詰まりすると冷媒の散布量が少なくなり、冷凍能力が低下する。
【0005】
(図1参照)スプレーノズル15が半ば閉塞したとき、従来技術では密閉容器である蒸発器4を切り開いて該スプレーノズル15を清掃しなければならなかった。
蒸発器4を切断したり、再度溶接したりする作業には多大の時間,労力を要し、その間、冷凍機としての稼働を休止しなければならず、高額の修理費を必要とする。
さらに重大な問題は、密閉循環系を形成している蒸発器4を切開したとき、高真空に保持されていた冷媒循環系の中に空気が流入し、機内の腐食が一気に促進されることである。
本発明の目的とするところは、臭化リチウム吸収冷凍機のノズルが目詰まりして冷凍性能が低下したとき、該吸収冷凍機を構成している密閉容器を切開することなく、しかも、密閉循環系統の内周面を空気に触れさせることなく、迅速,容易、かつ低廉な費用で冷凍性能を回復せしめ得る方法、および同装置を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために創作した本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次のとおりである、すなわち、
臭化リチウム吸収式冷凍機におけるスプレーノズルが目詰まりして、該冷凍機の性能が低下したとき、その性能を回復させる技術を提供するため、
蒸発器4の低部に溜まった冷媒液(水)を吸入・吐出してスプレーノズル15に送給する冷媒スプレーポンプ(図示省略)を取り外し、洗浄液循環タンク17を一時的に設置するとともに、該洗浄液循環タンク内の洗浄液を吸入・吐出する洗浄液循環ポンプ19を接続する。そして、吸収式冷凍機の冷媒循環系統内の高真空の空間内に不活性ガス(例えば窒素ガス)を注入して空気の流入を防止し、前記洗浄液をノズル15に供給して散布するとともに、蒸発器4の底部に溜まった洗浄液を洗浄液循環タンク17に導き、洗浄液循環ポンプ19に吸入させて循環させる。
【0007】
以上に説明した原理に基づいて請求項1に係る発明方法の構成は、水を冷媒とし、吸収媒体として臭化リチウムを用いる吸収式冷凍機について、
冷媒をスプレーするノズルや散布孔などの散布装置に異物が付着,堆積して性能が低下した場合、その性能を回復させる方法において、
冷媒の散布系統を、薬液によって化学的に洗浄して、堆積した異物を洗浄除去することを特徴とする。
以上に説明した請求項1の発明方法によると、蒸発器を切開して露出させなくても、冷凍機のケース外に設けた洗浄液循環タンクを用いて遠隔的にスプレーノズルを洗浄して異物を除去し、性能を回復させることができる。
【0008】
請求項2に係る発明方法の構成は、前記請求項1の発明方法の構成要件に加えて、前記の化学的洗浄に用いる薬液が、2種類以上の化学薬品から成る酸性水溶液であることを特徴とする。
以上に説明した請求項2の発明方法によると、複数種類の薬剤を調合した酸性溶液を用いることにより、鉄系腐食生成物および銅系腐食生成物の両方を含むスプレーノズル堆積物を効果的に溶解除去することができる。
【0009】
請求項3に係る発明方法の構成は、前記請求項2の発明方法の構成要件に加えて、前記の酸性水溶液が「塩酸,硫酸,硝酸、もしくはこれに類似する無機酸、および蓚酸,マロン酸,コハク酸もしくはこれに類似する有機酸」の内の少なくとも1種類を主成分とし、
かつ、「腐食抑制剤および電位抑制剤」の少なくとも何れか一方を含有していることを特徴とする。
以上に説明した請求項3の発明方法によると、散布装置に堆積した腐食生成物を能率的に溶解除去することができ、しかも、冷媒循環系統を構成している金属材料を腐食させるなどの不具合を生じる虞れが無い。
【0010】
請求項4に係る発明方法の構成は、前記請求項1の発明方法の構成要件に加えて、冷媒の散布系統を薬液で洗浄する際、該スプレー系統の内部表面に空気を接触させないことを特徴とする。
以上に説明した請求項4の発明方法によると、スプレー系統を構成している金属製容器や金属製管路の内側面を空気によって酸化腐食させる虞れが無い。
【0011】
請求項5に係る発明方法の構成は、散布系統の内面に空気を接触させないため、当該吸収式冷凍機の冷媒循環系統の内部空間に不活性ガスを充満させた状態で前記の洗浄を行なうことを特徴とする。
以上に説明した請求項5の発明方法によると、冷媒循環系統の内部空間が空気に接触することを、迅速容易、かつ完全に遮断することができる。
【0012】
請求項6に係る発明方法の構成は、前記請求項1の発明方法の構成要件に加えて、前記の薬液によってスプレー系統を洗浄する際、当該吸収式冷凍機の冷媒循環系統内から冷媒および吸収媒体溶液を予め冷媒循環系統外に回収して一時的に保管しておき、機内の薬液循環洗浄および薬液の水洗除去を終えてから洗浄液を機外に排出した後、
保管してあった冷媒および吸収媒体溶液を冷媒循環系統内に注入することを特徴とする。
以上に説明した請求項6の発明方法によると、冷媒および吸収溶液に、洗浄用薬剤を混入せしめる虞れ無くスプレーノズルや散布孔の堆積物を洗浄除去することができる。
【0013】
請求項7に係る発明方法の構成は、前記請求項2の発明方法の構成要件に加えて、前記の酸性水溶液によって散布系統を洗浄した後、
アルカリ性の中和剤溶液を循環させて、残存していた酸性水溶液を中和除去し、pHが6.0〜8.0のほぼ中性になったことを検知してから中和操作を終了することを特徴とする。
以上に説明した請求項7の発明方法によると、中和剤の廃液を河川に放流することができる。pH6.0の微酸性やpH8.0の微アルカリ性では、冷媒や吸収媒体溶液を注入して冷凍サイクルを再開することはできないが、この段階では、必ずしも完全中性にしなくても、その後の工程で水洗によって中和剤を洗い流すことができるので、中和操作の終了条件はpH6.0〜pH8.0が適当である。
【0014】
請求項8に係る発明方法の構成は、前記請求項7の発明方法の構成要件に加えて、冷媒スプレー系統内がpH6.0〜8.0になるまで中和操作を行った後、中和剤溶液を排出して上水を入れ、該上水を散布系統内で循環させた後、上記洗浄用上水の洗浄廃液を機外に排出し、
軟水を冷媒循環系統内に流動させて仕上げ水洗し、仕上げ水洗廃液を機外に排出することを特徴とする。
以上に説明した請求項8の発明方法によると、スプレーノズルや散布孔などの散布装置が設けられている蒸発室の内部、および、該蒸発室に連通していて洗浄液の一部(微量)が混入する虞れの有る箇所を、効率良く、かつ完全に中性に戻して、冷凍サイクルの再開に支障の無い状態にすることができる。
【0015】
請求項9に係る発明方法の構成は、前記請求項5の発明方法の構成要件に加えて、冷媒循環系統内に不活性ガスを充満させて洗浄液を循環させる際は、機内のガス圧をほぼ大気圧に等しからしめた状態で洗浄を行ない、
薬液洗浄、中和剤洗浄、および水洗を終えた後、前記のガス圧を大気圧よりも上昇させて、前記不活性ガスの圧力を機外に放出しつつ、この放出圧力によって前記水洗に用いた洗浄水の機内残留部分を機外に放出することを特徴とする。
以上に説明した請求項9の発明方法によると、機内圧と大気圧とをバランスさせた状態でスプレー系統内に洗浄液を循環せしめることができ、かつ、上記洗浄液を迅速,容易に機外へ排出することができる。
【0016】
請求項10に係る発明方法の構成は、前記請求項1の発明方法の構成要件に加えて、冷媒の散布系統を薬液で洗浄する際、
当該吸収式冷凍機の冷媒循環系路外に洗浄液循環タンク(17)を設けて、この中に洗浄液を入れておき、
上記洗浄液を洗浄循環ポンプ(19)で吸入,圧送して、当該吸収式温水機の蒸発器内に本来的に設けられているスプレーノズルまたは散布孔(15)から噴射させ、
上記ノズルから噴射されて蒸発器底部の冷媒タンク(5)に溜まった洗浄水を前記洗浄液循環タンク(17)に導いて、前記洗浄液循環ポンプ(19)によって吸入され得る状態ならしめ、
上述のようにして洗浄液を循環流動せしめつつスプレーノズルまたは散布孔(15)流動せしめることを特徴とする。
以上に説明した請求項10の発明方法によると、既設の吸収式冷凍機に対して大改造を加えることなく、かつ、大形構成機器である蒸発器を切開することなく、簡単な機器を用いてスプレーノズルを薬液洗浄することができる。
【0017】
請求項11に係る発明装置の構成は、冷媒として水を用い、吸収媒体として臭化リチウムを用いる吸収式冷凍機であって、その蒸発器(4)の中に冷媒を噴射するスプレーノズルまたは散布孔(15)が設けられるとともに、該スプレーノズルまたは散布孔から噴射されて蒸発器の底部に溜まった冷媒液を吸入して上記スプレーノズルに送給する冷媒スプレーポンプ(6)を備えているものにおいて、
上記冷媒スプレーポンプの吸入側管路と吐出側管路とのそれぞれに、冷媒循環締切弁(23a、23b)が介挿接続され、
かつ、上記吸入側管路に設けられた冷媒循環締切弁(23a)の上流側管路に分岐管が設けられて、その先端に洗浄回路接続用閉止弁(24a)が接続されるとともに、前記吐出側管路に設けられた冷媒循環締切弁(23b)の下流側管路に分岐管が設けられて、その先端に洗浄回路接続用閉止弁(24b)が接続されていることを特徴とする。
以上に説明した請求項11の発明装置によると、前記請求項1に係る発明方法を容易に実施して、その効果を充分に発揮せしめることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の1実施形態を示す系統図である。
この実施形態は、前掲の図3に示した従来例の吸収式冷凍機のスプレーノズルまたは散布孔(以下単にスプレーノズルという)15に目詰まりを生じたため冷凍性能が実施したので、本発明を適用して該スプレーノズル15を洗浄して冷凍能力を回復させた1例である。(冷凍容量500冷凍トン・稼働年数20年)。
本図1において、蒸発器4を含まない右半部は、前掲の図3(従来例)と同様である。
図3(従来例)において、冷媒スプレーポンプ6の吸入側の管路、および、該冷媒スプレーポンプ6の吐出側管路を切り離し、冷媒スプレーポンプ6を取り外す。上記の切離しは、切断でも良く、取り外し(例えば管継手の)でも良い。
切離した2箇所の管路のそれぞれについて、
イ.蒸発器4下方の冷媒タンク5に連通している側の管路の切離し端は、図1に示すように開閉弁23を装着して閉止しておく。
ロ.スプレーノズル15を設けたスプレーダクト8に連通している側の管路の切離し端は、封止板20を装着して閉止するとともに、分岐管路を取り付けて、開閉弁25およびフレキシブルホース22を介して洗浄液循環ポンプ19の吐出口に接続する。
【0019】
前記開閉弁23に、フレキシブルホース21,開閉弁24、およびフレキシブルホース16を接続して、蒸発器4の底部の冷媒タンク5内の液体を排出できるように配管する。
本発明方法を適用して、蒸発器4内のスプレーノズル15を洗浄剤で循環洗浄するに先立って、吸収サイクルを形成している冷媒(水)や吸収媒体溶液(濃厚臭化リチウム水溶液13、および稀薄臭化リチウム水溶液14)を機外に回収しておかねばならない。しかし、冷媒循環系統内は高真空であるから、流出路を設けただけでは機内の流体が機外に流出しない(その反対に、勢よく空気を吸いこんでしまう)。
空気の流入は機器内を腐食させるので甚だ好ましくない。
そこで、適宜の手段(図示省略)を用いて、冷媒循環系統内に不活性ガス(本実施形態では窒素)を冷媒循環系統内に流入させながら冷媒および吸収媒体溶液を機外に回収する。
この際、配管内に残留している液体を機外へ流出させるため、窒素ガス圧を大気圧よりも若干高くして、該窒素ガスで残液を噴き出させるように操作すると好都合である。
回収した冷媒および吸収媒体溶液は、それぞれポリ容器に入れ、液面に接触している空間を窒素ガスで満たして一時的に保存しておく。
【0020】
洗浄液を入れた洗浄液循環タンク17を、当該吸収式冷凍機の傍らへ一時的に設置し、上記洗浄液を洗浄液循環ポンプ19で吸入、吐出してスプレーノズル15から散布し、蒸発器4の下方の冷媒タンク5に溜まった洗浄液は前記洗浄液循環タンク17に流下させ、以上のようにして循環流動させる。
上記洗浄液の組成について次に述べる。
吸収式冷凍機の冷媒循環系統の構成材料は、主として鉄系合金および銅系合金である。従って、ノズルに付着する異物はこれら金属材料の腐食生成物を主成分としている。このため、洗浄液に求められる条件は、(イ)これらの金属材料に対して激しく反応しないこと、および(ロ)これら金属材料の腐食生成物を溶解すること、である。
上記イ,ロの条件を両立させるものとして、「塩酸,硫酸,硝酸,もしくはこれに類似する無機酸」および「蓚酸,マロン酸,コハク酸,もしくはこれに類似する有機酸」が有り、以上各種の酸の複数種類を調合することもできる。
【0021】
上述の酸性薬剤は、冷媒循環系統を構成している金属材料に対する腐食性がゼロではないので、腐食抑制剤を添加することが望ましい。
鉄鋼材料および銅、並びに銅合金の腐食を抑制する薬剤としては、カルボン酸類、直鎖炭化水素化合物,アミン類,アゾール類などが有効である。これらの腐食抑制剤の複数種類を調合して用いることも可能である。
さらに、金属塩類を酸性水溶液で溶解する作業は電気化学的反応であるから、金属塩(付着異物)の溶解を促進し、および/または地金金属材料の腐食を抑制するためには、電位制御剤の併用が望ましい。これについては、公知の還元性電位制御剤を適用することができる。公知の還元性電位制御剤には無機系の薬剤と有機系の薬剤とが有るが、副作用(腐食促進)の虞れの少ない有機系電位制御剤の方が望ましい。
【0022】
本実施形態(図1)においては、硫酸と蓚酸とを主成分とし、市販のアミン系腐食抑制剤(インヒビター)および市販の還元性電位制御剤を調合した酸性(pH1)の水溶液を洗浄剤として、その200リットルを使用した。
洗浄剤を本図1の矢印のように循環させる間、機内の窒素圧力はほぼ1気圧にしておく、これが高すぎると洗浄液を機内に送入する作業が容易ではなく、」また低すぎると機内へ空気を混入させる危険性が増えるからである。
本実施例においては、20年間の稼働によって目詰まりしたため、−100mmHgに低下していたスプレー圧力を、2時間の循環洗浄によって−400mmHg(新品と同レベル)に回復させることができた。
上述のように酸性の洗浄液を循環させた後は、この洗浄液を排出した後、残液を中和し、水洗しておかねばならない。
洗浄液の排出は、機内の窒素ガスを大気圧よりも高くして行ない、
洗浄液を循環させたのと同様ないし類似の操作によって、重量比3%の水酸化ナトリウム水溶液の200リットルを20分間循環させた後、リトマス試験紙によって循環液のpHが7.5になったことを確認して終了した。
その後、洗浄液循環タンク17に上水200リットルを入れ、洗浄時と同様の操作で、10分間循環させた後に排出し、
予め準備しておいた軟水200リットルを同様の操作で循環させて仕上げ水洗した。仕上げ水洗の残液は、窒素ガス圧を上げて完全に除去する。
【0023】
上述のようにして酸洗い循環,中和循環,上水循環,および軟水循環の4工程を終えた後、窒素ガスの注入を停止し、
吸収式冷凍機の付属機器である真空ポンプ(図示省略)を作動させて、冷媒循環系統内を−740mmHgの高真空ならしめて、
先に回収して一時的に保管してあった冷媒および吸収媒体溶液を再び機内に封入し、さらに前記真空ポンプを運転して機内圧が−740mmHgに到達したことを確認して試運転した。この試運転において、先に述べたように冷媒のスプレー圧が−400mmHgに回復したことが確認された。
【0024】
図1を参照して以上に説明した実施形態においては、臨時的な修理のため図1のように配管し、スプレーノズル洗浄後は修理前の配管に復元した。
しかし、次回のスプレーノズル洗浄を迅速容易ならしめるため、配管の1部を残しておくことも有意義である。
また、新機を製作した当初から、ノズル洗浄のための配管について、その接続部分だけを設けておくことも望ましい。
ノズル洗浄を迅速,容易に行なうことができれば、前述した例のように冷媒のスプレー圧が−100mmHgまで低下してしまうまで放置せず、定期整備の一環としてノズル洗浄を用ない、常に新品同様の冷凍性能で稼働させることができる。
図2は、上述のような考慮に基づいて創作したノズル洗浄装置(機能回復装置)の模式的な系統図である。
符号Wを付して示した部分は洗浄回路であって、定期整備のとき接続し、普段は取り外しておく。
符号Mを付して示した部分は冷媒回路であって、通常の稼働時に使用される。
この図2について、冷媒循環締切弁23a,23bを開くとともに、洗浄回路接続用閉止弁24a,24bを閉じた状態を考えると、図3に示した従来例の吸収式冷凍機と同様に機能することが理解される。
また、洗浄回路接続用閉止弁24a,24bを開いて、冷媒循環締切弁23a,23bを閉じた状態を考えると、図1に示したノズル洗浄装置(性能回復装置)と同様に機能することが理解される。
【0025】
本図2に示した装置を新品製造時に備えておく場合は、冷媒スプレーポンプ6の上流側(吸入側)と下流側(吐出側)とのそれぞれに冷媒循環締切弁23a,23bを介挿接続するとともに、
上記冷媒循環締切弁23aの上流側と下流側とのそれぞれに分岐管路を設けて、該分岐管路の先端に洗浄回路接続用24a,24bを装着して閉止しておくだけで良い。
このように構成された場合の実用的効果は次のごとくである。
本発明の出願人は、設置された吸収式冷凍機の整備管理を委託される技術サービス会社であり、本発明者はその従業員である。こうした立場から見れば、図3において鎖線で囲んで符号Wをタンクとポンプとホースとをサービスカーに積んで、客先であるユーザーを巡回すれば、迅速かつ容易にノズルを洗浄して、常に定格の冷凍性能を発揮させることができる。
この場合、1組のポンプとタンクとホースとによって、多数の吸収式冷凍機に対応できるため、省資源という社会的要請に関しても貢献することができる。
また、吸収式冷凍機のユーザーの立場から見ると、吸収式冷凍機を設置した機械室に別段の機器を常備する必要が無く、しかも安い費用で冷凍機能を新品同様に維持して貰うことができる。
【0026】
【発明の効果】
以上に本発明の実施形態を挙げてその構成機能を説明したように、請求項1の発明方法によると、蒸発器を切開して露出させなくても、冷凍機のケース外に設けた洗浄液循環タンクや洗浄液循環タンクを用いて遠隔的にスプレーノズルを洗浄して異物を除去し、性能を回復させることができる。
請求項2の発明方法によると、複数種類の薬剤を調合した酸性溶液を用いることにより、鉄系腐食生成物および銅系腐食生成物の両方を含むスプレーノズル堆積物を効果的に溶解除去することができる。
請求項3の発明方法によると、スプレーノズルに堆積した腐食生成物を能率的に溶解除去することができ、しかも、冷媒循環系統を構成している金属材料を腐食させるなどの不具合を生じる虞れが無い。
請求項4の発明方法によると、スプレー系統を構成している金属製容器や金属製管路の内側面を空気によって酸化腐食させる虞れが無い。
請求項5の発明方法によると、冷媒循環系統の内部空間が空気に接触することを、迅速容易、かつ完全に遮断することができる。
請求項6の発明方法によると、冷媒および吸収媒体溶液に、洗浄用薬剤を混入せしめる虞れ無くスプレーノズルの堆積物を洗浄除去することができる。
請求項7の発明方法によると、中和剤の廃液を河川に放流することができる。すなわち、本発明を適用しても循環系統内にpH6の微酸性やpH8の微アルカリ性の中和剤廃液が残っていては、そのまま冷媒や吸収媒体溶液を注入して冷凍サイクルを再開することはできなので更に水洗するなどしなければならないが抜き取った中和剤廃液(pH6〜8)は河川に放流することができる。
請求項8の発明方法によると、蒸発器その他の構成機器の内部を効率良く、かつ完全に中性に戻して冷凍サイクル再開に支障の無い状態ならしめることができる。
請求項9の発明方法によると、機内圧と大気圧とをバランスさせた状態でスプレー系統内に洗浄液を循環せしめることができ、かつ、上記洗浄液を迅速,容易に機外へ排出することができる。
請求項10の発明方法によると、既設の吸収式冷凍機に対して大きい改造を加えることなく、かつ蒸発器を切開することなく、スプレーノズルを薬液洗浄することができる。
請求項11の発明装置によると、前記請求項1に係る発明方法を容易に実施して、その効果を充分に発揮せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態を示す模式的な系統図である。
【図2】上掲の図1と異なる実施形態における模式的な系統図である。
【図3】吸収式冷凍機の従来例を示す系統図である。
【図4】前掲の図3に示した従来例におけるスプレーノズル付近の拡大断面図である。
【符号の説明】
1…高温再生器、2…低温再生器、3…凝縮器、4…蒸発器、5…冷媒タンク、6…冷媒スプレーポンプ、8…スプレーダクト、9…吸収器、15…スプレーノズル、17…洗浄液循環タンク、19…洗浄液循環ポンプ、20…封止板、23a,23b…冷媒循環締切弁、24a,24b…洗浄回路接続用閉止弁、26…吸入管、27…フィルタ。
Claims (11)
- 水を冷媒とし、吸収媒体として臭化リチウムを用いる吸収式冷凍機について、
冷媒をスプレーする散布装置に異物が付着、堆積して性能が低下した場合、その性能を回復させる方法において、
冷媒の散布系統を、薬液によって化学的に洗浄して前記の異物を除去することを特徴とする吸収式冷凍機の性能回復方法。 - 前記の化学的洗浄に用いる薬液は、2種類以上の化学薬品からなる酸性水溶液であることを特徴とする請求項1に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。
- 前記の酸性水溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、もしくはこれに類似する無機酸、および蓚酸、マロン酸、コハク酸もしくはこれに類似する有機酸の内の少なくとも1種類を主成分とし、
かつ、腐食抑制剤および電位制御剤の少なくとも何れか一方を含有していることを特徴とする、請求項2に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。 - 冷媒の散布系統を薬液で洗浄する際、該散布系統の内部表面に空気を接触させないことを特徴とする請求項1に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。
- 散布系統の内面に空気を接触させないため、当該吸収式冷凍機の冷媒循環系統の内部空間に不活性ガスを充満させた状態で前記の洗浄を行なうことを特徴とする請求項4に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。
- 前記の薬液によって散布系統を洗浄する際、当該吸収式冷凍機の冷媒循環系統内から冷媒および吸収媒体溶液を予め冷媒循環系統外に回収して一時的に保管しておき、機内の薬液循環洗浄および薬液の水洗除去を終えてから洗浄液を機外に排出した後、
保管してあった冷媒および吸収媒体溶液を冷媒循環系統内に注入することを特徴とする請求項1に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。 - 前記の酸性水溶液によって散布系統を洗浄した後、アルカリ性の中和剤溶液を循環させて、残存していた酸性水溶液を中和除去し、pHが6.0〜8.0のほぼ中性になったことを検知してから中和操作を終了することを特徴とする請求項2に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。
- 冷媒散布系統内がpH6.0〜8.0になるまで中和操作を行った後、中和剤溶液を排出して上水を入れ、該上水を散布系統内で循環させた後、上記洗浄用上水の洗浄廃液を機外に排出し、
軟水を冷媒循環系統内に流動させて仕上げ水洗し、仕上げ水洗廃液を機外に排出することを特徴とする、請求項7に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。 - 冷媒循環系統内に不活性ガスを充満させて洗浄液を循環させる際は、機内のガス圧をほぼ大気圧に等しからしめた状態で洗浄を行ない、
薬液洗浄、中和剤洗浄、および水洗を終えた後、前記のガス圧を大気圧よりも上昇させて、前記不活性ガスの圧力を機外に放出しつつ、この放出圧力によって前記水洗に用いた洗浄水の機内残留部分を機外に放出することを特徴とする請求項5に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。 - 冷媒の散布系統を薬液で洗浄する際、
当該吸収式冷凍機の冷媒循環系路外に洗浄液循環タンク(17)を設けて、この中に洗浄液を入れておき、
上記洗浄液を洗浄液循環ポンプ(19)で吸入,圧送して、当該吸収式冷温水機の蒸発器内に本来的に設けられている散布装置(15)から噴射させ、
上記散布装置から噴射されて蒸発器底部の冷媒タンク(5)に溜まった洗浄水を前記洗浄液循環タンク(17)に導いて、前記洗浄液循環ポンプ(19)によって吸入され得る状態ならしめ、
上述のようにして洗浄液を循環流動せしめつつ散布装置(15)流通せしめることを特徴とする、請求項1に記載した吸収式冷凍機の性能回復方法。 - 冷媒として水を用い、吸収媒体として臭化リチウムを用いる吸収式冷凍機であって、その蒸発器(4)の中に冷媒液を噴射する散布装置(15)が設けられるとともに、該散布装置から噴射されて蒸発器の底部に溜まった冷媒液を吸入して上記散布装置に送給する冷媒スプレーポンプ(6)を備えているものにおいて、
上記冷媒スプレーポンプの吸入側管路と吐出側管路とのそれぞれに、冷媒循環締切弁(23a,23b)が介挿接続され、
かつ、上記吸入側管路に設けられた冷媒循環締切弁(23a)の上流側管路に分岐管が設けられて、その先端に洗浄回路接続用閉止弁(24a)が接続されるとともに、前記吐出側管路に設けられた冷媒循環締切弁(23b)の下流側管路に分岐管が設けられて、その先端に洗浄回路接続用閉止弁(24b)が接続されていることを特徴とする吸収式冷凍機の性能回復装置。
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