JP3785956B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを噴射して、用紙などに所定の記録を行なうインクジェット記録装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、比較的構成が簡単で、高速印字、高品質印字が容易な記録装置として、インクジェット記録装置がよく知られている。このようなインクジェット記録装置には、通常、インクジェットヘッド内において発生する気泡を含む不良インクを吸引するためのパージ装置が設けられている。
【０００３】
このようなパージ装置は、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジの待機エリアと記録エリアの間において、インクジェットヘッドに対して進退自在に設けられており、たとえば、図４に示すように、インクジェットヘッド１におけるインクのノズル面２を覆う吸引キャップ３と、吸引キャップ３を保持するキャップホルダ４と、吸引キャップ３をキャップホルダ４を介して吸引管５および排気管６とそれぞれ接続するための２つのアダプタ７（以下、互いに区別する場合は、吸引側アダプタ７ａまたは排気側アダプタ７ｂとする。）とを備えている。
【０００４】
吸引キャップ３は、略矩形状のゴムなどの弾性部材からなり、その表面には、インクジェットヘッド１のノズル面２と当接する当接部１７と、そのノズル面２と当接部１７との間において密閉空間１８を形成する凹部８とが、また、その裏面には、２つのアダプタ７を挿入するための２つの挿入孔１６がそれぞれ形成されている。
【０００５】
また、キャップホルダ４は、周側壁９および底壁１０が一体的に形成される断面略Ｈ字状の樹脂部材からなり、吸引キャップ３における凹部８が形成されている表面側を開放する状態で、その吸引キャップ３における裏面を底壁１０に密着させるとともに、吸引キャップ３における周側面を周側壁９に密着させることにより、吸引キャップ３を弾接的に保持するようにしている。
【０００６】
また、２つのアダプタ７は、キャップホルダ４の底壁１０を貫通する管状をなし、その底壁１０の表面側から突出する表面側突出部１４と、その底壁１０の裏面側から突出する裏面側突出部１５とが、キャップホルダ４とともに一体的に形成されている。
そして、２つのアダプタ７は、各表面突出部１４が、吸引キャップ３に形成される各挿入孔１６にそれぞれ弾接的に挿入されることにより、吸引キャップ３とそれぞれシールされた状態で接続されている。
【０００７】
また、吸引管５は、吸引側アダプタ７ａの裏面側突出部１５に接続されるとともに、その他端部には、吸引ポンプ１１が接続されている。また、排気管６は、排気側アダプタ７ｂの裏面側突出部１５に接続されるとともに、その他端部が、大気に開放されている。また、排気管６の途中には、その排気管６をプランジャ１３の進退によって開閉するためのソレノイド１２が設けられている。
【０００８】
そして、パージ時には、インクジェットヘッド１のノズル面２を吸引キャップ３に対向配置させた状態で、吸引キャップ３の進出により、当接部１７をノズル面２に当接させ、凹部８とノズル面２の間で密閉空間１８を形成する。吸引キャップ３がノズル面２に当接するとき、圧縮空気がノズル内に侵入しないように、予め排気管６を大気に開放しておく。その後、ソレノイド１２のプランジャ１３を進出させて排気管６を閉鎖した状態で、吸引ポンプ１１を作動させることによって、吸引管５および吸引側アダプタ７ａを介して、吸引キャップ３からインクジェットヘッド１内の不良インクを吸引するようにしている。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、このようなパージ装置においては、２つのアダプタ７が、キャップホルダ４と一体的に形成されているため、吸引キャップ３と２つのアダプタ７との間を確実にシールするためには、２つのアダプタ７の表面側突出部１４の軸径および吸引キャップ３の２つの挿入孔１６の孔径を精度よく形成する必要があるのみならず、さらに、２つのアダプタ７の表面側突出部１４の間の軸間ピッチＸと、吸引キャップ３の２つの挿入孔１６の間の孔間ピッチＹとを、互いに一致するように精度よく形成する必要もある。
【００１０】
しかし、このような軸間ピッチＸおよび孔間ピッチＹを精度よく形成するには、非常に手間がかかり、部品コストの上昇を招くという不具合がある。
本発明は、上記した不具合を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、吸引キャップをキャップホルダを介して複数の導管に、簡易かつ確実に接続することができ、かつ、それらの間において確実なシール性を確保することのできるパージ装置を備える、インクジェット記録装置を提供することにある。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項１に記載の発明は、インクジェットヘッド内のインクを吸引するためのパージ装置を備えるインクジェット記録装置において、前記パージ装置は、前記インクジェットヘッドにおけるインクの噴射面を覆う吸引キャップと、前記吸引キャップを保持するキャップホルダと、前記吸引キャップを前記キャップホルダを介して複数の導管と接続するための複数の接続部材とを備えており、前記吸引キャップは、弾性部材からなり、前記複数の接続部材とそれぞれ対向する位置に挿入孔を有し、前記各接 続部材は、前記各挿入孔に弾接的に挿入され、前記吸引キャップとシールされた状態で接続される部分を有し、前記複数の接続部材の少なくとも１つは、前記吸引キャップおよび前記キャップホルダと別部材として形成され、外方に突出した鍔部を有し、前記吸引キャップと前記キャップホルダとの間で、前記鍔部により前記鍔部の突出方向と直交する方向に位置決めされ、かつ、前記鍔部の突出方向に遊動可能な状態で、前記キャップホルダに挿通支持されていることを特徴としている。
【００１２】
このような構成によると、吸引キャップをキャップホルダを介して複数の導管と接続するための複数の接続部材のうち、少なくとも１つの接続部材が、吸引キャップおよびキャップホルダと別部材として形成されているので、複数の接続部材の間のピッチと、複数の挿入孔の間のピッチとを、互いに一致するように精度よく形成しなくても、その別部材として形成される接続部材によって、各間のピッチを調節して、これら複数の接続部材と吸引キャップとを確実に接続することができる。
【００１３】
そのため、吸引キャップ、キャップホルダおよび接続部材を簡易に形成して、部品コストの低減化を図ることができながら、吸引キャップと複数の接続部材とをキャップホルダを介して確実に接続して、良好なシール性を確保することができる。
また、別部材として形成されている接続部材の遊嵌状態にある隙間において、各間のピッチを確実に調節することができる。そのため、簡易な構成によって、これら複数の接続部材と吸引キャップとを確実に接続することができる。
【００１４】
また、請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の発明において、前記複数の接続部材は、前記吸引キャップにおけるインクジェットヘッドと対向する対向領域の少なくとも両端部に配置されていることを特徴としている。
前記複数の導管の１つを吸引手段に接続し、他の１つを、インクジェットヘッドからのインク吸引の後、大気に開放する構成とし、吸引キャップ内に残留したインクを大気との連通状態で吸引する場合、上記のように接続部材が吸引キャップの両端に配置されていることで、吸引キャップ内のインクを残留させることなく吸引することができる。また、前記複数の導管を吸引手段に接続する場合には、インクジェットヘッドの全てのノズルから効率よく不良インクをパージすることができるとともに、吸引キャップ内のインクを残留させることなく吸引することができる。
【００１５】
また、請求項３に記載の発明は、請求項１または２に記載の発明において、前記複数の接続部材の残りの少なくとも１つは、前記キャップホルダと一体的に形成されていることを特徴としている。
このような構成によると、吸引キャップとキャップホルダとの組み付けにおいては、キャップホルダと一体的に形成されている接続部材を、吸引キャップのキャップホルダに対する位置決めとして組み付けることができるので、簡易かつ精度のよい組み付けによって、より一層確実な吸引キャップと複数の接続部材との接続を達成することができる。
【００１６】
【発明の実施の形態】
図１は、本発明のインクジェット記録装置としてのカラーインクジェットプリンタの一実施形態を示す斜視図である。図１において、このカラーインクジェットプリンタ２１は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの４色のカラーインクがそれぞれ充填されるインクカートリッジ２２と、用紙２３に印字するための後に詳述するインクジェットヘッド２４と、これらインクカートリッジ２２およびインクジェットヘッド２４が搭載されるキャリッジ２６と、このキャリッジ２６を直線方向に往復移動させる駆動ユニット２７と、キャリッジ２６の往復移動方向に延び、インクジェットヘッド２４と対向配置されるプラテンローラ２８と、メンテナンスユニット３８と、廃インク受け部材３７とを備えている。
【００１７】
駆動ユニット２７は、キャリッジ２６の下端部に配置されプラテンローラ２８と平行に延びるキャリッジ軸３０と、キャリッジ２６の上端部に配置されキャリッジ軸３０と平行に延びるガイド板３１と、そのキャリッジ軸３０とガイド板３１との間であって、キャリッジ軸３０の両端部に配置される２つのプーリ３２および３３と、これらプーリ３２および３３の間に掛け渡されるエンドレスベルト３４とを備えている。
【００１８】
キャリッジ２６の下端部には、キャリッジ軸３０を挿通可能なキャリッジ軸支持部３５が設けられるとともに、キャリッジ２６の上端部には、ガイド板３１に当接可能なガイド板当接部３６が設けられている。また、キャリッジ２６の後側面には、エンドレスベルト３４が接合されている。
そして、一方のプーリ３２が、モータ３２Ａの駆動により正逆回転されると、そのプーリ３２の正逆回転に伴って、エンドレスベルト３４に接合されているキャリッジ２６が、キャリッジ軸３０およびガイド板３１に沿って、直線方向に往復移動される。これによって、キャリッジ２６は、インクジェットヘッド２４を搭載して、用紙２３と対向する記録エリアと、その両側に配置される、後述するメンテナンスエリアおよびフラッシングエリアとにわたって移動可能とされている。
【００１９】
用紙２３は、カラーインクジェットプリンタ２１の側方に設けられた図示しない給紙カセットから給紙され、インクジェットヘッド２４と、プラテンローラ２８との間に導入されて、インクジェットヘッド２４から噴射されるインクにより所定の印字がなされ、その後、排紙される。なお、図１においては、これらの用紙２３の給紙機構および排紙機構の図示を省略している。
【００２０】
インクカートリッジ２２は、図３に示すように、ヘッドホルダ８７に装着されており、次に述べるインクジェットヘッド２４にインクを供給するためのインク供給口８６がカートリッジ底壁７９に開口形成されている。
インク供給口８６の下側開口内周面には、リング状の弾性材料からなるシール部材９０が、フィルタ部材９２を介在させた状態で嵌め込まれており、そのシール部材９０に、次に述べるマニホールド８０と接続するためのアダプタ部材９１が嵌め込まれている。
【００２１】
ヘッドホルダ８７には、インク供給口８６の対向位置にホルダ孔８９が形成されおり、そのホルダ孔８９の内周面には、アダプタ部材９１が挿入されている。
また、インクジェットヘッド２４は、インクをノズル８２から液滴として噴射させるための複数の噴射チャンネル８１を備えるアクチュエータ８３と、このアクチュエータ８３に接合され、アクチュエータ８３の各噴射チャンネル８１にインクを供給するためのマニホールド８０とを備えている。
【００２２】
マニホールド８０は、樹脂からなり、インクカートリッジ２２からインクを導入するインク導入部８４と、アクチュエータ８３の各噴射チャンネル８１にインクを分配供給するインク供給部８５とが一体形成されている。
そして、マニホールド８０のインク導入部８４が、ホルダ孔８９を介してアダプタ部材９１内に挿入されることにより、そのアダプタ部材９１およびシール部材９０を介して、インクカートリッジ２２のインク供給口８６に接続されている。
【００２３】
なお、インク導入部８４は、ヘッドホルダ８７のホルダ孔８９に接着固定されており、これによって、インクジェットヘッド２４が、ヘッドホルダ８７に支持されている。
そして、インクカートリッジ２２内のインクは、そのインク供給口８６から、マニホールド８０のインク導入部８４を介してインク供給部８５に供給され、さらに、そのインク供給部８５から、アクチュエータ８３の各噴射チャンネル８１内に分配供給される。
【００２４】
アクチュエータ８３は、圧電セラミック材料などからなり、その下面が各噴射チャンネル８１に対応して開口形成されている複数のノズル８２を有する噴射面としてのノズル面９３とされており、アクチュエータ８３の各噴射チャンネル８１内に供給されたインクは、アクチュエータ８３の変形により、その容積減少時に、各ノズル８２から液滴として噴射され、一方、容積増大時には、インク供給部８５から再び噴射チャンネル８１内にインクが導入される。このような動作が繰り返されることにより、用紙などに所定の印字が形成される。
【００２５】
なお、ヘッドホルダ８７には、アクチュエータ８３のノズル面９３を露出させた状態で、インクジェットヘッド２４を覆うヘッドカバー８８が設けられている。
メンテナンスユニット３８は、図１に示すように、記録エリアに対して一方側に配置されるメンテナンスエリアに配置され、パージ装置３９、ワイピング装置４０および保存キャップ装置４１を備えている。
【００２６】
パージ装置３９は、インクジェットヘッド２４のノズル面９３を吸引する吸引部材４２と、この吸引部材４２を介して、インクジェットヘッド２４内のインクを吸引除去するポンプ４３と、後述する密閉空間５８を密閉または大気開放するソレノイド機構５３（図２参照）と、吸引部材４２をインクジェットヘッド２４の移動経路に対して進退させるカム４４と、不良インクを貯留するインク貯留部４５とを備えている。
【００２７】
吸引部材４２は、図２および図３に示すように、インクジェットヘッド２４におけるノズル面９３を覆う吸引キャップ５１と、吸引キャップ５１を保持するキャップホルダ５４と、吸引キャップ５１をキャップホルダ５４を介して吸引管５５と接続するための接続部材としての吸引アダプタ５７と、同じく吸引キャップ５１をキャップホルダ５４を介して排気管５６と接続するための接続部材としての排気アダプタ６８とを備えている。
【００２８】
吸引キャップ５１は、略矩形板状のゴムなどの弾性部材からなり、その表面には、インクジェットヘッド２４のノズル面９３と当接する略矩形状の当接部５２が突出形成されるとともに、当接部５２によって囲まれる内周側に、後述する密閉空間５８を形成するための凹部６７が形成されている。また、吸引キャップ５１の裏面には、吸引アダプタ５７および排気アダプタ６８を挿入するための２つの吸引挿入孔６６ａおよび排気挿入孔６６ｂが、ノズル面９３のノズル８２の配列方向における両端部に対向した位置、すなわち、吸引キャップ５１の凹部６７の両端部に連通するようにそれぞれ形成されている。
【００２９】
また、キャップホルダ５４は、周側壁５９および底壁６０が一体的に形成される断面略Ｈ字状の樹脂部材からなり、吸引キャップ５１における凹部６７が形成されている表面側を開放する状態で、その吸引キャップ５１における裏面を底壁６０に密着させるとともに、吸引キャップ５１における周側面を周側壁５９に密着させることにより、吸引キャップ５１を弾接的に保持するようにしている。
【００３０】
そして、この底壁６０には、吸引アダプタ５７が一体的に形成されているとともに、排気アダプタ６８を装着するための排気接続部７２が形成されている。
吸引アダプタ５７は、吸引挿入孔６６ａと対向する位置に設けられ、キャップホルダ５４の底壁６０を貫通する管状をなし、その底壁６０の表面側から突出する表面側突出部６４と、その底壁６０の裏面側から突出する裏面側突出部６５とが、キャップホルダ５４とともに一体的に形成されている。そして、吸引アダプタ５７は、表面突出部６４が、吸引キャップ５１に形成される吸引挿入孔６６ａに弾接的に挿入されることにより、吸引キャップ５１とシールされた状態で接続されている。
【００３１】
排気接続部７２は、排気挿入孔６６ｂと対向する位置に設けられ、底壁６０の表面側において、後述する排気アダプタ６８の鍔部７１を受け入れる接続凹部７３と、その接続凹部７３の中央部において、後述する排気アダプタ６８の裏面側筒部７０が挿入される排気接続孔７７とがキャップホルダ５４とともに一体的に形成されている。
【００３２】
接続凹部７３は、後述する排気アダプタ６８の鍔部７１の周端部との間に所定の隙間が形成されるような、鍔部７１よりも大径の円板状に形成されており、鍔部７１を遊嵌状態で当接させて支持できるように形成されている。
また、排気接続孔７７は、排気接続部７２の中央部において、底壁６０を貫通するように形成されており、排気アダプタ６８の裏面側筒部７０よりも大径に形成されている。
【００３３】
排気アダプタ６８は、管状をなし、底壁６０の表面側から突出する表面側筒部６９と、底壁６０の裏面側から突出する裏面側筒部７０と、それら表面側筒部６９と裏面側筒部７０の間において、径方向外方に突出するリング状の鍔部７１とを一体的に備えている。
そして、排気アダプタ６８は、底壁６０の表面側から裏面側筒部７０を排気接続孔７７に遊挿し、鍔部７１を接続凹部７３に当接させることにより、上下方向が位置決めされ、かつ、水平方向に遊動可能な状態で排気接続部７２に挿通支持されており、かつ、そのように支持されている排気アダプタ６８の表面側筒部６９が吸引キャップ５１に形成される排気挿入孔６６ｂに弾接的に挿入されることにより、吸引キャップ５１とシールされた状態で接続されている。
【００３４】
また、吸引アダプタ５７の裏面側突出部６５には、吸引管５５の一端が接続されており、その吸引管５５の他端には、ポンプ４３が接続されている。これによって、ポンプ４３は吸引管５５を介して吸引アダプタ５７から凹部６７に対向するインクジェットヘッド２４内のインクを吸引できるように構成されている。
また、排気アダプタ６８の裏面側筒部７０には、排気管５６の一端が接続されており、その排気管５６の他端は、大気に開放されている。そして、排気管５６の途中には、その排気管５６を開閉するためのソレノイド機構５３が設けられている。
【００３５】
ソレノイド機構５３は、排気管５６を挿通支持する支持プレート７５と、その支持プレート７５の挿通孔７６に受け入れられる進退可能なプランジャ６３を備えるソレノイド６２とを備えている。なお、プランジャ６３には、支持プレート７５に当接して挿通孔７６内に進出するプランジャ６３の進出位置を位置決めする平板状のストッパ７４が設けられている。
【００３６】
そして、このソレノイド機構５３では、ソレノイド６２の励磁時には、ストッパ７４が支持プレート７５に当接するまでプランジャ６３が進出し、そのプランジャ６３の先端部が排気管５６を押圧することによって、排気管５６が閉鎖される。一方、ソレノイド６２の非励磁時にはプランジャ６３が退避して排気管５６が開放されている。
【００３７】
また、カム４４は、図１に示すように、ポンプ４３の下方に設けられ、後述するように吸引部材４２を、その吸引キャップ５１がインクジェットヘッド２４のノズル面９３を密閉状に被覆する進出位置と、そのノズル面９３から吸引キャップ５１を離間させる退避位置とに往復移動させるように構成されている。
また、インク貯留部４５は保存キャップ装置４１の下方に配置され、ポンプ４３によって吸引された不良インクを貯留できるように構成されている。
【００３８】
そして、このパージ装置３９では、後で詳述するが、インクジェットヘッド２４のパージ時には、まず、キャリッジ２６の移動によりインクジェットヘッド２４のノズル面９３を吸引キャップ５１に対向させた後、図示しない駆動源によってカム４４を駆動して、吸引部材４２を進出させることにより吸引キャップ５１によってノズル面９３を密着状に被覆し、次いで、ソレノイド６２の励磁によりプランジャ６３を進出させて排気管５６を閉鎖した後、ポンプ４３を駆動してインクジェットヘッド２４内の不良インク（気泡が発生したり増粘したインク）を吸引アダプタ５７を介して吸引管５５から吸引し、これによってインクジェットヘッド２４の回復を図るようにしている。なお、ポンプ４３により吸引された不良インクはインク貯留部４５に貯留される。
【００３９】
ワイピング装置４０は、メンテナンスエリアにおけるパージ装置３９に対する記録エリア側に隣接配置され、ノズル面９３の表面に弾接可能なワイパーブレード４６を備えている。
このワイパーブレード４６は、ノズル面９３に弾接可能な薄い矩形板状をなし、エチレン・プロピレンゴムなどの弾性材料から形成されている。
【００４０】
そして、このワイピング装置４０は、パージ装置３９のカム４４によってインクジェットヘッド２４の移動経路に対して進退するように構成されており、記録エリアとメンテナンスエリアとの間を移動するインクジェットヘッド２４のノズル面９３に対して進出させてワイパーブレード４６を弾接させることにより、そのノズル面９３の表面を払拭するようにしている。なお、払拭によりワイパーブレード４６に付着したインクは、パージ装置３９により吸引されたインクと同様に、インク貯留部４５に貯留される。
【００４１】
保存キャップ装置４１は、メンテナンスエリアにおけるパージ装置３９に対する記録エリアの反対側に隣接配置され、各インクジェットヘッド２４に対応する４つの保存キャップ４７が、ケーシング４８上にそれぞれ並列状に設けられている。このケーシング４８は、保存キャップ４７の外側において係合凸部５０が形成されるとともに、キャリッジ２６の移動方向と平行に延びるガイドロッド部材４９に、スライド移動および回動が可能なように支承されている。そして、キャリッジ２６が記録エリアからメンテナンスエリア方向に移動するときは、移動するキャリッジ２６がケーシング４８に形成されている係合凸部５０と係合して、保存キャップ４７が、キャリッジ２６の移動に追従してスライド移動するとともに、図示しない傾斜カムにより、インクジェットヘッド２４に接近する方向へ回転し、インクジェットヘッド２４のノズル面９３を密着状に被覆する。これによって、印字を行なわない各インクジェットヘッド２４のノズル面９３は、各保存キャップ４７によって被覆されるので、インクの蒸発が防止され、ノズル面９３の乾燥が防止される。一方、再びキャリッジ２６が記録エリア方向に移動するときは、保存キャップ４７がインクジェットヘッド２４から、上記と逆の動作によって離間される。
【００４２】
また、廃インク受け部材３７は、記録エリアに対して他方側に配置されるフラッシングエリアに配置され、インクジェットヘッド２４のノズル８２の目詰まりを解消したり、ノズル８２内のインクに混入した気泡を除去するために、インクジェットヘッド２４による印字動作の直前に予備噴射したインクを受けるように構成されている。
【００４３】
次に、このカラーインクジェットプリンタ２１の一連の動作について説明する。
まず、このカラーインクジェットプリンタ２１では、印字動作開始前には、インクジェットヘッド２４は、保存キャップ４７が被覆された状態でメンテナンスエリアに配置されており、印字動作が開始されると、用紙２３が、プラテンローラ２８とインクジェットヘッド２４との間に給紙されるとともに、キャリッジ２６の移動により、保存キャップ４７がインクジェットヘッド２４から離間して、インクジェットヘッド２４が記録エリアに移動し、所定の記録データに基づいてインクを噴射しつつ往復移動することによって、用紙２３上に所定の記録が行なわれる。
【００４４】
なお、インクジェットヘッド２４の印字動作が終了すると、キャリッジ２６が記録エリアからメンテナンスエリアに移動し、各保存キャップ４７が各インクジェットヘッド２４のノズル面９３を再び被覆する。
そして、人為的にあるいは所定の期間ごとに、インクジェットヘッド２４に対するパージ動作が指示されると、キャリッジ２６は、パージ動作が指示された特定のインクジェットヘッド２４を、吸引キャップ５１と対向する位置まで移動させる。次いで、図示しない駆動源によりカム４４を駆動させ、吸引部材４２を進出させると、図３に示すように、インクジェットヘッド２４のノズル面９３に吸引キャップ５１の当接部５２が当接し、ノズル面９３の各ノズル８２が、ノズル面９３と当接部５２と凹部６７とによって形成される密閉空間５８によって覆われる。次いで、図２にも示すように、ソレノイド６２が励磁され、ストッパ７４が支持プレート７５に当接するまでプランジャ６３が進出することにより、排気管５６が閉鎖される。これによって、密閉空間５８が大気と遮断される。その後、ポンプ４３を駆動させて吸引管５５から吸引アダプタ５７を介してインクジェットヘッド２４内の不良インクを吸引させる。その後、ポンプ４３を停止し、密閉空間５８内の負圧が減少して、吸引される不良インクの流れがなくなるまで放置した後、ソレノイド６２の励磁を遮断して、プランジャ６３を退避させ、排気管５６を開放する。これによって、密閉空間５８が大気と連通される。そして、再び、ポンプ４３を駆動させ、ノズル面９３および凹部６７に付着しているインクを通気状態で吸引除去した後、ポンプ４３を停止し、その後、カム４４の駆動により吸引キャップ５１をインクジェットヘッド２４から離間させる。これによって、一連のパージ動作が終了する。
【００４５】
そして、パージ動作が終了すると、吸引部材４２の退避と同時に、ワイパーブレード４６を進出させ、キャリッジ２６を移動させて、パージが終了したインクジェットヘッド２４をワイパーブレード４６を横切る方向に移動させることにより、ワイパーブレード４６によってインクジェットヘッド２４のノズル面９３を払拭させる。
【００４６】
なお、このカラーインクジェットプリンタ２１では、印字動作において、ノズル８２からインクの噴射を繰り返すと、ノズル面９３に余剰インクが堆積して噴射不良を引き起こす場合があるので、一定の期間ごとに、ワイパーブレード４６を進出させるとともに、キャリッジ２６を、インクジェットヘッド２４がワイパーブレード４６を横切る方向に移動させ、ワイパーブレード４６によってインクジェットヘッド２４のノズル面９３を拭き払うようにしている。
【００４７】
そして、このカラーインクジェットプリンタ２１では、パージ装置３９の吸引部材４２において、吸引アダプタ５７がキャップホルダ５４と一体的に形成されている一方で、排気アダプタ６８は、キャップホルダ５４とは別部材として形成されているため、キャップホルダ５４および吸引キャップ５１の形成において、たとえ吸引アダプタ５７と、排気アダプタ６８を挿通支持する排気接続部７２との間の軸間ピッチＭと、吸引挿入孔６６ａと排気挿入孔６６ｂとの間の孔間ピッチＮとを、互いに一致するように精度よく形成せずとも、その排気接続部７２に遊挿支持される排気アダプタ６８の遊びによって、吸引キャップ５１の吸引挿入孔６６ａおよび排気挿入孔６６ｂに吸引アダプタ５７および排気接続部７２を調節しながら、簡易かつ確実に接続することができる。
【００４８】
そのため、吸引キャップ５１、キャップホルダ５４、吸引アダプタ５７および排気アダプタ６８を簡易に形成して、部品コストの低減化を図ることができながら、吸引キャップ５１と吸引アダプタ５７および排気アダプタ６８とを、キャップホルダ５４を介して確実に接続して、良好なシール性を確保することができる。
【００４９】
また、吸引アダプタ５７および排気アダプタ６８は、吸引キャップ５１におけるインクジェットヘッド２４のノズル面９３のノズル８２の配列方向における両端部と対向する位置にそれぞれ配置されているため、不良インクを吸引した後の通気状態での吸引除去においては、その一端部のノズル８２から他端部のノズル８２にわたって吸引される空気によって、ノズル面９３および凹部６７に付着しているインクをくまなく吸引除去することができる。そのため、不良インクを残留させることなく、良好なパージ動作を達成することができる。
【００５０】
さらに、吸引アダプタ５７は、キャップホルダ５４と一体的に形成されているため、吸引キャップ５１とキャップホルダ５４との組み付けにおいては、キャップホルダ５４と一体的に形成されている吸引アダプタ５７を、吸引キャップ５１のキャップホルダ５４に対する位置決めとして組み付けることができるので、簡易かつ精度のよい組み付けによって、より一層確実な吸引キャップ５１と吸引アダプタ５７および排気アダプタ６８との接続を達成することができる。
【００５１】
なお、上記の説明においては、吸引アダプタ５７とキャップホルダ５４とを一体的に形成する一方で、排気アダプタ６８を別部材として形成したが、これとは逆、すなわち、排気アダプタ６８をキャップホルダ５４と一体的に形成する一方で吸引アダプタ５７を別部材として形成してもよく、また、吸引アダプタ５７および排気アダプタ６８の両方を、キャップホルダ５４と別部材として形成してもよい。
【００５２】
さらに、上記の説明では、吸引アダプタ５７と排気アダプタ６８とをそれぞれ１つずつ設けたが、本発明においては、その個数および態様は何ら限定されず、たとえば、吸引アダプタ５７および／または排気アダプタ６８をそれぞれ複数設けてもよく、また、吸引アダプタ５７および排気アダプタ６８を区別することなく、両方に吸引管５５を接続して、２つの吸引管５５によって吸引するようにしてもよい。
【００５３】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項１に記載の発明によれば、吸引キャップ、キャップホルダおよび接続部材を簡易に形成して、部品コストの低減化を図ることができながら、簡易な構成によって、吸引キャップと複数の接続部材とをキャップホルダを介して確実に接続して、良好なシール性を確保することができる。
【００５４】
請求項２に記載の発明によれば、インクジェットヘッドに不良インクを残留させることなく、良好なパージ動作を達成することができる。
請求項３に記載の発明によれば、簡易かつ精度のよい組み付けによって、より一層確実な吸引キャップと複数の接続部材との接続を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明のインクジェット記録装置としてのカラーインクジェットプリンタの一実施形態を示す斜視図である。
【図２】 図１に示すカラーインクジェットプリンタのパージ装置の要部構成図である。
【図３】 図１に示すカラーインクジェットプリンタのインクジェットヘッドに吸引キャップが当接された状態の要部拡大図である。
【図４】 従来のカラーインクジェットプリンタのパージ装置の要部構成図である。
【符号の説明】
２１ カラーインクジェットプリンタ
２４ インクジェットヘッド
３９ パージ装置
５１ 吸引キャップ
５４ キャップホルダ
５５ 吸引管
５６ 排気管
５７ 吸引アダプタ
６８ 排気アダプタ
９３ ノズル面

Claims (3)

1. インクジェットヘッド内のインクを吸引するためのパージ装置を備えるインクジェット記録装置において、
   前記パージ装置は、前記インクジェットヘッドにおけるインクの噴射面を覆う吸引キャップと、前記吸引キャップを保持するキャップホルダと、前記吸引キャップを前記キャップホルダを介して複数の導管と接続するための複数の接続部材とを備えており、
   前記吸引キャップは、弾性部材からなり、前記複数の接続部材とそれぞれ対向する位置に挿入孔を有し、
   前記各接続部材は、前記各挿入孔に弾接的に挿入され、前記吸引キャップとシールされた状態で接続される部分を有し、
   前記複数の接続部材の少なくとも１つは、前記吸引キャップおよび前記キャップホルダと別部材として形成され、外方に突出した鍔部を有し、前記吸引キャップと前記キャップホルダとの間で、前記鍔部により前記鍔部の突出方向と直交する方向に位置決めされ、かつ、前記鍔部の突出方向に遊動可能な状態で、前記キャップホルダに挿通支持されていることを特徴とする、インクジェット記録装置。
2. 前記複数の接続部材は、前記吸引キャップにおける前記インクジェットヘッドと対向する対向領域の少なくとも両端部に接続されていることを特徴とする、請求項１に記載のインクジェット記録装置。
3. 前記複数の接続部材の残りの少なくとも１つは、前記キャップホルダと一体的に形成されていることを特徴とする、請求項１または２に記載のインクジェット記録装置。
   詳細な説明

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