JP3784960B2 - 異環境分離装置及び異環境分離の制御方法 - Google Patents

異環境分離装置及び異環境分離の制御方法 Download PDF

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  • Control Of Temperature (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空間を空気によって分離し温度差のある2つの異環境を形成する異環境分離装置及び異環境分離の制御方法に係り、特に大空間に温度差が大きい2つの異環境を形成するのに好適な異環境分離装置及び異環境分離の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物内の空間を建築的な間仕切りなしで分離し温度差のある2つの異環境を形成する手法としては、従来、エアカーテン方式が知られている。エアカーテン方式は、分離境界線に沿った天井に吹出口、床面に吸込口をそれぞれ設け、天井から床面に向かって流れる空気の壁を形成し、空間を分離する方式である。
【0003】
そして、分離した各空間の温熱環境をそれぞれ独立の空調装置で制御し、温度差のある2つの異環境を形成する。空間の温熱環境を一定に保つ手法としては、居住域の気温、湿度、放射熱量や外気温、屋根表面温度等を計測して、居住域空調へフィードバックする方法が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、大空間を大きな温度差のある2つの異環境に分離する場合、例えばスピードスケート競技場が設けられる体育館において、大空間を観客席と競技リンクとに2分し、観客席は25℃程度の室温に維持し、競技リンクは氷が融けない程度の低温に維持する場合、建築的な間仕切りなしで実現することが望まれるが、従来のエアカーテン方式によって実現するのは困難である。
【0005】
また、そのような大空間を空気により分離し、2つの異環境に大きな温度差を与える場合には、そこでのエアバランスは、外気温、日射量、居住域負荷等に依存した微妙な関係で維持される状態となるので、上述した居住域空調へのフィードバックだけでは、変動する負荷に追従できず、大空間内のエアバランスが崩れてしまい、維持が困難となる。
【0006】
本発明の目的は、大空間を建築的な間仕切りなしで分離した大きな温度差のある2つの異環境を、熱効率が良く、かつ外部環境に追従して維持できる空気による異環境分離装置及び異環境分離の制御方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、上部に熱溜まり領域が形成されるようにな空間において、下方に温度差のある2つの異環境を空気により分離形成する異環境分離装置であって、前記2つの異環境の分離境界線に沿って設けられ、分離空気を分離境界面に沿って吹き上げる開口を有する吹出口と、前記2つの異環境の分離境界における分離高さ位置近傍での空気温度、風速、風向の少なくとも1つの制御パラメータを測定する測定手段と、前記分離高さ位置近傍での前記制御パラメータが一定となるように、前記吹出口から吹き出す分離空気の温度、風量、風速を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
即ち、請求項1に記載の発明では、2つの異環境の分離境界線に沿った床面や2つの異環境の分離境界線に沿って形成した例えば腰板の板面などに吹出口を設け、吹出口から分離空気を分離境界面に沿って吹き上げて熱溜まり領域の下方の空間を温度差のある2つの異環境に分離形成した場合において、2つの異環境それぞれの空調制御系とは別個独立に、測定手段が、2つの異環境の分離境界における分離高さ位置近傍での空気温度、風速、風向の少なくとも1つの制御パラメータを測定する。そして、制御手段が、学習しながら吹出口から吹き出す分離空気の温度、風量、風速を制御し、測定手段の測定した制御パラメータが一定となるようにする。これにより、所定の分離高さ位置において空気により分離形成した温度差のある2つの異環境を安定的に維持できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の異環境分離装置において、前記制御手段は、測定した制御パラメータに基づき分離空気の温度、風量、風速を制御することを特徴とする。
即ち、請求項2に記載の発明では、測定手段が測定する制御パラメータには、空気温度、風速、風向の何れか1つだけでなく、2以上を含めることができる。したがって、制御精度の向上を図ることが容易となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の異環境分離装置において、前記制御手段は、前記熱溜まり領域の温度、低温度領域の温度、日射計の測定値の少なくとも1つに基づき分離空気の温度、風量、風速を制御することを特徴とする。即ち、請求項3に記載の発明では、空気温度に基づき分離空気の温度、風量、風速を制御する場合には、分離高さ位置近傍での空気温度だけでなく、熱溜まり領域の温度、低温度領域の温度、日射計の測定値などの外的要因も対象とする。したがって、負荷の変動に追従した制御が可能となる。また、これらの外的要因は測定が容易であるので、構成の容易化が図れる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の異環境分離装置において、前記分離空気は、前記熱溜まり領域から取得した空気が用いられることを特徴とする。即ち、請求項4に記載の発明では、暖まっている熱溜まり領域の空気を利用するので、熱効率の良い制御が可能となる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の異環境分離装置において、前記制御手段は、制御結果が前記2つの異環境のそれぞれに与える影響度合いを予測し、予測結果を前記2つの異環境のそれぞれにおける空調制御系に出力することを特徴とする。
即ち、請求項5に記載の発明では、2つの異環境のそれぞれにおける空調制御系が、分離空気の制御に時間遅れなく追従して動作できるので、2つの異環境での温熱環境を応答性良く安定に維持できる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の異環境分離装置において、前記2つの異環境のそれぞれにおける空調制御系は、負荷変動に応答して制御する内容の分離空気に与える影響度合いを予測し、予測結果を前記制御手段に出力することを特徴とする。
即ち、請求項6に記載の発明では、2つの異環境のそれぞれにおいて負荷変動があった場合には、制御手段は、時間遅れなく分離空気の制御に反映できる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、上部に熱溜まり領域が形成されるような空間において、下方に温度差のある2つの異環境を空気により分離形成する異環境分離の制御方法であって、前記2つの異環境の分離境界における分離高さ位置近傍での空気温度、風速、風向の少なくとも1つの制御パラメータを測定する手順と、前記分離高さ位置近傍での前記制御パラメータが一定となるように、前記2つの異環境の分離境界線に沿って設けられた吹出口から吹き出す分離空気の温度、風量、風速を制御する手順とを備えることを特徴とする。
【0015】
即ち、請求項7に記載の発明では、温度差のある2つの異環境が所定の分離高さにおいて分離形成された後において、温度差のある2つの異環境の分離境界における分離高さ位置近傍での空気温度、風速、風向の少なくとも1つの制御パラメータを測定し、測定した制御パラメータが一定となるように、学習しながら吹出口から吹き出す分離空気の温度、風量、風速を制御する。これにより、所定の分離高さ位置において空気により分離形成した温度差のある2つの異環境を安定的に維持できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、請求項1乃至請求項7に対応する実施形態の構成概念図である。図1において、建物1は、内部に大空間を備える。この大空間の上部には、熱溜まり領域2が形成される。本実施形態では、この熱溜まり領域2の下方の居住域空間に大きな温度差のある2つの異環境(高温度領域3と低温度領域4)を空気によって分離形成する。そのために、吹出口5が高温度領域3と低温度領域4の分離境界線(図示例では、紙面の表裏方向に形成される直線または曲線)に沿って設けられる。この吹出口5は、分離境界線に沿って形成される細長い開口を有するもので、分離境界線に沿った床面や2つの異環境を分離境界線に沿って分離する壁の上面(例えば腰板の板面)に形成される。空間天頂部に吹出口5に対応した吸込口が存在しない分離方式であり、エアーカーテン方式と異なる。
【0017】
吹出口5は、空調制御系6の出側と配管で接続される。空調制御系6の入り側は、建物1の天井に形成される熱溜まり領域2と配管で接続される。空調制御系6は、空調機と送風機を備え、熱溜まり領域2から取得した空気を制御装置7の制御下に調節して吹出口5に送る。その結果、吹出口5から分離空気が、高温度領域3と低温度領域4の分離境界面に沿って吹き上げられる。
【0018】
吹出口5真上の所定の分離高さは、低温度領域4の高さ位置を規定する所定値であり、予め定められる。制御パラメータ(空気温度、風速、風向)の測定位置8は、この所定の分離高さ位置の近傍である。
測定方法には、種々ある。例えば図2に示すスピーカ21と集音マイク22のセットとパーソナルコンピュータ(PC)23とからなる計測システムが利用できる。即ち、分離高さ位置近傍における建物1の対向する側壁にスピーカ21と集音マイク22を配置し、パーソナルコンピュータ(PC)23が、スピーカ21に発音させて集音マイク22の出力を取り込み、音波の到達時間を求め、分離高さ位置近傍の空気温度、風速、風向を推定する方法である。
【0019】
また、温度のみの測定であるが、分離境界付近に建物の支柱等があれば(配置できれば配置し)、その表面温度を赤外線温度計で測定する方法がある。更に、可能であれば、空間に熱電対や風速計などのセンサを配置し、直接分離高さでの温度、風速、風向を計測する方法もある。
なお、熱溜まり領域2や低温度領域4、高温度領域3に設けてある温度センサ9、10、12は、それぞれ熱電対など温度信号が取り出せる温度計である。温度センサ10、12は、低温度領域4、高温度領域3に元々備えられるものである。本実施形態では、それを有効に利用しようとするものである。
【0020】
制御装置7は、測定位置8での測定値(温度、風速、風向)が入力する他、温度センサ9が検出する熱溜まり領域2の温度情報、温度センサ10が検出する低温度領域4の温度情報、温度センサ12が検出する高温度領域3の温度情報、日射計11が検出する建物1の屋根表面温度の推定温度情報がそれぞれ入力する。また、制御装置7は、高温度領域3と低温度領域4それぞれに互いに独立に設けられる空調制御系13、14と接続される。空調制御系13、14は、それぞれ、空調機と送風機を備え、それぞれの領域の温熱特性を制御する。
【0021】
制御装置7の制御動作は、PID制御やニューラルネットワークを利用した制御方法によって実現される。ニューラルネットワークは、ある望ましい状態へと制御対象の出力を導くための制御入力を生成するフィードフォアードの制御系であり、任意の非線形写像関数を実現できること、学習則が比較的単純であること、多種多様なデータを並列的に活用できることから有用な実現手段である。
【0022】
以上の構成と請求項との対応関係は、次のようになっている。空間には、建物1内に形成される大空間が対応する。熱溜まり領域には、熱溜まり領域2が対応する。温度差のある2つの異環境には、高温度領域3と低温度領域4とが対応する。吹出口には、吹出口5が対応する。測定手段には、例えば図2に示す計測システムが対応する。制御手段には、空調制御系6と制御装置7が対応する。2つの異環境それぞれにおける空調制御系には、空調制御系13、14が対応する。
【0023】
次に、図1〜図3を参照して本実施形態の動作を説明する。なお、図3は、ニューラルネットワークを利用した制御系の動作フローチャートである。
建物1内の大空間の上部には、日射や照明器具等の熱で暖められた空気が滞留して熱溜まり領域2が形成される。熱溜まり領域2の空気温度は、夏場では高く冬場では下がる。したがって、熱溜まり領域2の高さ方向の幅は、季節によって変動し、夏場では厚くなり、下面が下がってくる一方、冬場では薄くなり、下面が上昇する。
【0024】
制御装置7は、このような熱溜まり領域2の下方に、まず、高温度領域3と低温度領域4という大きな温度差のある2つの異環境を分離形成する。即ち、制御装置7は、空調制御系6に吹出口5から分離空気を吹き出させるとともに、空調制御系13、14をそれぞれ起動し、空調制御系13には高温度領域3の温度制御を実行させ、空調制御系14には低温度領域4の温度制御を実行させる。
【0025】
この過程で制御装置7は、図3に示す手順で、分離高さ位置(測定位置8)での温度、風速、風向、熱溜まり領域2や低温度領域4の温度、日射計10の出力といった多入力を受けて学習しながら所定の分離高さを形成するのに必要な分離空気の温度、風量、風速の最適な制御値を決定し、制御値を空調制御系6に出力する。
【0026】
空調制御系6は、入力した制御値に基づき吹出口5から吹き出す分離空気の温度を調節する温度制御、送風機の回転数を制御する風量制御、吹出口5を調節して分離空気の吹き出し幅を制御する風速制御をそれぞれ行う。
【0027】
これにより、所定の分離高さにおいて高温度領域3と低温度領域4が分離形成される。2つの異環境が安定的に分離された状態では、所定の分離高さ位置は、図1に示すように、熱溜まり領域2の下面に届かない下方の位置となっている。分離空気は、熱溜まり領域2に向けて吹出口5から吹き出され、分離境界面に沿って上昇するが、先端は噴水のように広がり、熱溜まり領域2の下面に到達する以前に失速するような状況となる。
【0028】
しかし、このように大きな温度差のある2つの異環境を分離空気で分離しただけの状況下でのエアバランスは、外気温、日射量、居住域負荷等に依存した微妙な関係で維持された状態となっている。また、熱溜まり領域2の厚さは、季節・時間によって変動するので、その下面の高さ位置が、所定の分離高さ位置よりも低くなることも考えられる。
【0029】
したがって、制御装置7は、図1に示すように、熱溜まり領域2の下方に高温度領域3と低温度領域4が分離形成された後は、所定の分離高さにおいてこれら2つの異環境を安定的に維持する動作を繰り返し行うことになる。
具体的には、制御装置7は、図2に示す計測システムから一定間隔で測定した分離高さ位置(測定位置8)近傍での空気温度、風速、風向の各制御パラメータを取得し、また、温度センサ9、10、12や日射計11からの各種温度情報を取得する。そして、分離高さ位置(測定位置8)近傍での空気温度、風速、風向の少なくとも1つの制御パラメータが一定となるように、測定位置8で測定した制御パラメータや別途取得した各種温度情報に基づき学習しながら吹出口5から吹き出す分離空気の温度、風量、風速の制御値を決定し、空調制御系6に与えることを繰り返す。
【0030】
このとき、制御装置7は、分離空気の制御値を決定する際に高温度領域3と低温度領域4に与える影響を予測し、予測値を高温度領域3と低温度領域4それぞれの空調制御系13、14に各別に与え、それぞれの領域の空調制御に反映させる。更に、高温度領域3と低温度領域4それぞれの空調制御系13、14は、それぞれの領域での負荷変動に対し追従した制御を行うが、その際に分離空気の制御に与える影響を予測し、それぞれの予測値を制御装置7に与える。制御装置7は、それらの予測値を分離空気の制御に反映させ、高温度領域3と低温度領域4の安定的な維持を図る。
【0031】
図3は、制御装置が以上のように行う動作を示したものである。図3において制御装置7の動作は、入力取得過程と、中間過程と、出力過程とに分けて考えることができる。
入力取得過程では、一定の時間間隔で、分離高さ温度a、分離高さ風速b、分離高さ風向c、日射量(天井面温度)d、熱溜まり領域温度e、低温度領域温度f、高温度領域温度gをそれぞれ取得する。
【0032】
分離高さ温度aと分離高さ風速bと分離高さ風向cは、例えば図2示す計測システムによって取得する。勿論、分離高さ温度aと分離高さ風速bと分離高さ風向cの何れか1つのみを取得することでも良い。制御精度や取り付け得るセンサ等との関係から選択することになる。また、日射量(天井面温度)d、熱溜まり領域温度e、低温度領域温度f、高温度領域温度gは、それぞれ、日射計10、温度センサ9、温度センサ10、12から取得したものである。
【0033】
中間過程では、入出力の相関を学習により最適化することが行われる。即ち、入力過程で取得したa〜gの多入力から分離空気強さh、熱溜まり領域状況i、外界条件熱負荷j、低温度領域熱負荷k、高温度領域熱負荷mをそれぞれ推定する。熱溜まり領域状況iには、温度の他に、領域の厚さや空気の流れ等が含まれる。そして、推定した分離空気強さh、熱溜まり領域状況i、外界条件熱負荷j、低温度領域熱負荷k、高温度領域熱負荷mから分離空気吹出条件nと低温度領域吹出条件pと高温度領域吹出条件qとを求める。
【0034】
出力過程では、分離空気吹出条件nと低温度領域吹出条件pと高温度領域吹出条件qとから、風量に関する制御値(風量大r・風量小s)、風速に関する制御値(風速大t・風速小u)、温度に関する制御値(温度高v・温度低w)を求める。そして、分離空気吹出条件nから求めた制御値(r〜w)を空調制御系6に出力し、低温度領域吹出条件pから求めた制御値(r〜w)を空調制御系13に出力し、高温度領域吹出条件qから求めた制御値(r〜w)を空調制御系14に出力する。
【0035】
次に、空気温度、風速、風向の変化に対する制御態様について若干の具体例を説明する。
A.測定対象が1つの場合
(1)空気温度が測定対象の場合。この場合には、分離高さ位置近傍の温度(測定位置8での計測値)、熱溜まり領域2の温度(温度センサ9の計測値)、低温度領域4の温度(温度センサ10の計測値)、建物1の屋根の表面温度(日射計11の測定値)が対象となる。
【0036】
▲1▼分離高さ位置(測定位置8)近傍での温度が低くなる場合には、低温度領域4の冷気が高温度領域3へ侵入していると考えられる。逆に、分離高さ位置(測定位置8)近傍での温度が高くなる場合には、熱溜まり領域2の下面が下がり、必要高さまでの分離が不完全であると考えられる。これらの場合には、分離空気の吹出風量を増やす、風速を上げる、温度を上げる等の分離空気を強める措置を採る。このとき、温度を上げる上限は、熱溜まり領域2の温度を考慮して定められる。
【0037】
▲2▼熱溜まり領域2の温度が低くなる場合、または、低温度領域4の温度が高くなる場合には、分離空気が強すぎ、熱溜まり領域2の空気を攪拌し大循環を生じさせていると考えられる。したがって、これらの場合には、分離空気の吹出風量を減らす、風速を下げる、温度を下げる等の分離空気を弱める措置を採る。
▲3▼日射が強くなった場合。例えば、雨が止んで日が射してきた場合である。この場合には、熱溜まり領域2の空気が直ぐに暖められる訳ではないが、屋根の表面温度が急速に上昇するので、やがて熱溜まり領域2が高温となり、熱溜まり領域2の下面が降りて来ることが予想される。したがって、この場合には、分離空気の吹出風量を増やす、風速を上げる、温度を上げる等の分離空気を強める措置を採る。そして、居住域の負荷も当然大きくなるので、高温度領域3と低温度領域4の空調制御系12、13も追従してそれぞれの領域の空調制御を行う。
【0038】
(2)垂直方向の風速が測定対象の場合。
▲1▼風速が速くなる場合には、分離空気が強すぎ、熱溜まり領域2の空気を攪拌し大循環を生じさせると考えられる。この場合には、分離空気の吹出風量を減らす、風速を下げる、温度を下げる等の分離空気を弱める措置を採る。
▲2▼風速が遅くなる場合には、熱溜まり領域2の下面が下がり、必要高さまでの分離が不完全であると考えられる。この場合には、分離空気の吹出風量を増やす、風速を上げる、温度を上げる等の分離空気を強める措置を採る。
【0039】
(3)風向が測定対象の場合。
▲1▼風向が下部から上部へ向かう方向となる場合には、分離空気が強すぎ、熱溜まり領域2の空気を攪拌し大循環が生じていると考えられる。この場合には、分離空気の吹出風量を減らす、風速を下げる、温度を下げる等の分離空気を弱める措置を採る。
【0040】
▲2▼風向が低温度領域4から高温度領域へ向かう方向となる場合には、低温度領域4の冷気が高温度領域3へ侵入していると考えられる。この場合には、分離空気の吹出風量を増やす、風速を上げる、温度を上げる等の分離空気を強める措置を採る。
B.測定対象が2つの場合
▲1▼分離高さ位置(測定位置8)近傍での温度が上昇し、かつ風速が減少した場合には、必要高さまでの分離が不完全であると考えられる。この場合には、分離空気の吹出風量を増やす、風速を上げる、温度を上げる等の分離空気を強める措置を採る。
【0041】
▲2▼分離高さ位置(測定位置8)近傍での温度が下降し、かつ風速が増加した場合には、分離空気が強すぎ、熱溜まり領域2の空気を攪拌し大循環を生じていると考えられる。この場合には、分離空気の吹出風量を減らす、風速を下げる、温度を下げる等の分離空気を弱める措置を採る。
▲3▼分離高さ位置(測定位置8)近傍での温度が下降し、かつ風向が低温度領域4から高温度領域3へと変化した場合には、低温度領域4の冷気が高温度領域3へ侵入していると考えられる。この場合には、分離空気の吹出風量を増やす、風速を上げる、温度を上げる等の分離空気を強める措置を採る。
【0042】
以上の措置により、微妙なエアバランスの下で維持される大きな温度差のある2つの異環境が安定的に維持される。
なお、本実施形態では、熱溜まり領域2の空気を分離空気に利用するので、空調制御系6の熱効率が向上する。勿論、空調制御系6は、建物1の外気を取り込み分離空気を生成することでも良い。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1、7に記載の発明では、2つの異環境の分離境界における分離高さ位置近傍での空気温度、風速、風向の少なくとも1つが一定となるように、分離空気の温度、風量、風速を制御する。これにより、所定の分離高さ位置において空気により分離形成した温度差のある2つの異環境を安定的に維持できる。
【0044】
請求項2に記載の発明では、空気温度、風速、風向の何れか1つだけでなく、2以上の制御パラメータを含めることができる。したがって、制御精度の向上を図ることが容易となる。
請求項3に記載の発明では、空気温度に基づき分離空気の温度、風量、風速を制御する場合には、分離高さ位置近傍での空気温度だけでなく、熱溜まり領域の温度、低温度領域の温度、日射計の測定値などの外的要因も対象とすることができ、負荷変動に追従した制御が可能となり、また構成の容易化が図れる。
【0045】
請求項4に記載の発明では、暖まっている熱溜まり領域の空気を利用するので、熱効率の良い制御が可能となる。
請求項5に記載の発明では、分離維持の制御動作を2つの異環境の空調制御に時間遅れなく反映させることができる。
請求項6に記載の発明では、分離維持の制御動作に2つの異環境の負荷変動を時間遅れなく反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1乃至請求項7に記載の発明に対応する実施形態の構成概念図である。
【図2】計測システムの構成例である。
【図3】ニューラルネットワークを利用した制御系の動作フローチャートである。
【符号の説明】
1 建物
2 熱溜まり領域
3 高温度領域
4 低温度領域
5 吹出口
6、13、14 空調制御系
7 制御装置
8 測定位置
9、10、12 温度センサ
11 日射計
21 スピーカ
22 集音マイク
23 パーソナルコンピュータ(PC)

Claims (7)

  1. 上部に熱溜まり領域が形成されるような空間において、下方に温度差のある2つの異環境を空気により分離形成する異環境分離装置であって、
    前記2つの異環境の分離境界線に沿って設けられ、分離空気を分離境界面に沿って吹き上げる開口を有する吹出口と、
    前記2つの異環境の分離境界における分離高さ位置近傍での空気温度、風速、風向の少なくとも1つの制御パラメータを測定する測定手段と、
    前記分離高さ位置近傍での前記制御パラメータが一定となるように、前記吹出口から吹き出す分離空気の温度、風量、風速を制御する制御手段と
    を備えることを特徴とする異環境分離装置。
  2. 請求項1に記載の異環境分離装置において、
    前記制御手段は、測定した制御パラメータに基づき分離空気の空気温度、風量、風速を制御する
    ことを特徴とする異環境分離装置。
  3. 請求項1に記載の異環境分離装置において、
    前記制御手段は、前記熱溜まり領域の温度、低温度領域の温度、日射計の測定値の少なくとも1つに基づき分離空気の空気温度、風量、風速を制御する
    ことを特徴とする異環境分離装置。
  4. 請求項1に記載の異環境分離装置において、
    前記分離空気は、前記熱溜まり領域から取得した空気が用いられる
    ことを特徴とする異環境分離装置。
  5. 請求項1に記載の異環境分離装置において、
    前記制御手段は、制御結果が前記2つの異環境のそれぞれに与える影響度合いを予測し、予測結果を前記2つの異環境のそれぞれにおける空調制御系に出力する
    ことを特徴とする異環境分離装置。
  6. 請求項1に記載の異環境分離装置において、
    前記2つの異環境のそれぞれにおける空調制御系は、負荷変動に応答して制御する内容の分離空気に与える影響度合いを予測し、予測結果を前記制御手段に出力する
    ことを特徴とする異環境分離装置。
  7. 上部に熱溜まり領域が形成されるような空間において、下方に温度差のある2つの異環境を空気により分離形成する異環境分離の制御方法であって、
    前記2つの異環境の分離境界における分離高さ位置近傍での空気温度、風速、風向の少なくとも1つの制御パラメータを測定する手順と、
    前記分離高さ位置近傍での前記制御パラメータが一定となるように、前記2つの異環境の分離境界線に沿って設けられた吹出口から吹き出す分離空気の温度、風量、風速を制御する手順と
    を備えることを特徴とする異環境分離の制御方法。
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