JP3783943B2 - バレルめっき用ダミーボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品の表面に形成される外部電極等を、電解めっきで形成する際に用いられるバレルめっき用ダミーボールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話に代表される移動体通信等の高周波機器の発展と普及に伴い、誘電体セラミックを基体としたチップコンデンサやLCフィルタ等の電子部品が急激に普及するようになった。これらの電子部品はAg,Cu等の下地層を有する外部電極を具備している。
これらの下地層をそのまま外部電極として用いると、電子部品を回路基板に実装半田付けする際に、特にAgの下地層では溶融半田に溶解して外部電極が痩せて行く、いわゆる「半田食われ」という問題が生じる。そこで、ニッケル、ニッケル−P合金等をバリア層として前記下地層の表面に形成するのが一般である。Cuの下地層を有する外部電極についても、Agと比較すると溶融半田に対する溶解度は小さいものの、信頼性の観点から同様にニッケル等のバリア層を形成することが多い。
【0003】
これらのニッケル、ニッケル−P合金等は半田食われを抑制する為のバリア層としては有効であるものの、溶融半田をよく濡らすことが出来ず、必要な半田付け強度が得られない。そこで「半田濡れ性」を高めるために、バリア層、更にSn又はSn-Pbからなる半田をめっきして半田層を形成することが一般的に行われている。
【0004】
バリア層、半田層等の外部電極はめっき浴(バレル)を用いた電解めっきにより形成される場合が多い。この電解めっきを行う際、外部電極が形成される電子部品本体の表面は一般にセラミックで形成されていることが多く、セラミックは導通性が無いため、通常の電解めっきにより外部電極を形成することは困難である。そのため外部電極の電解めっきは、バレルめっきと呼ばれる方法により行われる。
この方法は、ダミーボールと呼ばれる金属球と電子部品とをめっき浴に混合装入して同時にめっき液に浸漬し、前記金属球を介在して外部電極に通電することによりめっきを行う。一般にバレルめっきに用いるダミーボールには、鉄系合金球やセラミック球にNi等のめっきを施したものが用いられている。
【0005】
鉄系合金球に施されるニッケルめっきは、鉄などの金属成分がめっき液中に溶け出すことを防止するものである。このようなダミーボールではニッケルめっき被膜のピンホールから、鉄などの金属がめっき液中に溶けだしてめっき液を汚染してしまい、この溶けだした金属がめっき皮膜中に共析して、外部電極への正常なめっき被膜の形成を妨げるという問題を生じることがある。
加えて、鉄系合金球のダミーボールではダミーボール同士の衝突や、バレルめっきの電極であり被めっき品およびダミーボールの支持材である網との衝突により、鉄の微粉が発生し、この鉄の微粉が半田めっき液を汚染する問題を生じる。
一方、セラミック球を用いた場合、めっき浴の汚染は改善されるが、値段が高価であり、かつセラミック球の成形自体も困難である。
【0006】
そこで、めっき液の汚染を生じ難く、安価なダミーボールとして特開平11−279800号公報では、Sn−Pb合金球がダミーボールとして用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
Sn-Pb合金球は電極等のめっきに用いられるNiなどと比べてイオン化傾向が小さいため、上述のようにめっき浴中での金属の溶け出し難く、めっき液の汚染を生じ難い。また、Snを主成分とする金属は一般に融点が200℃前後と低く、他の高融点の金属と比べ、溶解、凝固により球形に加工する際の取り扱いが容易である点で優れている。
しかしながらSn-Pb合金球は、Pb汚染の問題を生じる可能性があり、近年のPbについての環境問題に対応が困難である。
またSn-Pb合金球のダミーボールは硬度が低く、バレルめっきの際の、ダミーボール同士の衝突や、バレルめっきに用いる網等との衝突により変形しやすくなるという問題がある。ダミーボールが変形すると、ダミーボールと被めっき品のめっき部との接触頻度にバラツキを生じ、めっき後にめっき膜厚のバラツキを生じる原因となる。
【0008】
本発明の目的は浴の汚染が少なく、また近年のPbについての環境問題に対応したバレルめっき用ダミーボールを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、Pbを含有しないSnを主成分とする金属を用いることにより、上記問題を解決するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、Snを主成分としPbを含まない、Niよりイオン化傾向の小さい金属からなり、ビッカース硬度が 13Hv 以上であるバレルめっき用ダミーボールである。
上述のバレルめっき用ダミーボールはビッカース硬度が 17Hv以上であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のSnを主成分としPbを含まない金属からなるバレルめっき用ダミーボールの特徴について詳細に説明する。
【0012】
本発明ではダミーボールとしてSnを主成分とする金属を用いる。Snを主成分とする理由は、通常電極等のめっきに用いられるNiなどと比べ、イオン化傾向が小さく、めっき浴中での金属の溶け出し難いからである。また、Snを主成分とする金属は一般に融点が200℃前後と低く、他の高融点の金属と比べ、溶解、凝固により球形に加工する際の取り扱いが容易である。
【0013】
本発明で、Snを主成分とする金属はPbを含有しない為、ダミーボールからめっき液にPbが溶出して、このめっき液を廃棄する際に環境へのPbの放出が問題となることがない。
また、ダミーボールはバレルめっきに使用されることで、磨耗などにより徐々に劣化する為、定期的に交換することが必要である。従来のSn-Pb合金系のダミーボールでは劣化したダミーボールを処分する際にも環境へのPbの放出が問題となるが、本発明のダミーボールでは使用による劣化後の処分の際も環境へのPbの放出は問題とならない。
【0014】
本発明のSnを主成分としPbを含まない金属としては、鉛フリーであるSn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Bi系、Sn-Zn系、Sn-In系、これらの単純合金系への第3、第4元素を添加した系などを用いることが好ましい。
これらのうちから、めっき液中の金属とのイオン化傾向、及び各合金系の不動態皮膜の形成能等を考慮し、めっき浴を汚染することのない、めっき液に最適なボール組成を用いる。当然、それらの合金系のボールは、硬ければ硬い方が、ダミーボールの長寿命化と、端子めっき膜厚の安定化に有利であり好ましい。
【0015】
本発明のバレルメッキ用ダミーボールは、例えば図1、図2に一例を示す装置によりガス中凝固を行うことが出来る。図1において均一液滴発生部12により体積のそろった均一液滴が形成され、チャンバー8を落下する過程で表面張力により球形となった後、凝固し連続回収缶13上に堆積する。
図2に均一液滴発生部12を拡大した図を示す。溶湯1は伝達部材5及び加振ロッド6を介して振動子4により振動を付与された状態で、溶湯1にはチャンバー7に対して正の差圧が加えられ、この差圧が溶湯1を流れとしてオリフィス2を通して押出す。振動と、溶湯1の表面張力とにより、溶湯1がオリフィス2から流出するにつれて、溶湯1の流れは連続した滴下溶滴8から、破砕して均一な直径で真球度の高いの独立した溶滴9を形成する。その後、溶滴は、チャンバー内を移動し、ガス中で凝固する。
【0016】
上述の方法によれば、例えば油中凝固される場合と比較して凝固時の冷却速度が速い。その結果、ボールの金属組織が微細化し、加えて金属間化合物が微細に分散して硬度の高いダミーボールとなる。また、ボール表面の油等によるによる汚染が少ないダミーボールを得ることができる。
【0017】
またSn-Pb合金球は既に述べたように硬度が低いという問題を有するが、本発明者の検討によれば、バレルめっき用ダミーボールのビッカース硬度が13Hv未満の場合、めっき時におけるボール同士の衝突や、電極となる網との衝突により、ボールが変形しやすい。よってバレルめっき用ダミーボールのビッカース硬度は13Hv以上であることが好ましい。また、ダミーボール耐久性の点からビッカース硬度は17Hv以上であることがより好ましい。
【0018】
【実施例】
Snを主成分としPbを含まない表1に示す組成で、ボール直径が0.5mmのバレルめっき用ダミーボールを製造した。ダミーボールは図1、図2に示す装置を用いたガス中凝固、及び油中凝固により製造し、得られたダミーボールから無作為に20個を抽出してビッカース硬度を測定しこれらの平均値を求めた。また、バレルめっきによるダミーボールの変形量の評価を行った。
【0019】
変形量の評価はダミーボール4kgと被めっき部品2500個とをめっき用バレル容器に投入してめっき液中に浸漬し、5rpmの速度で100minの間回転させ、その前後でのダミーボールの真球度の差で評価した。
ダミーボールの真球度は、ボールの投影面積から円相当径を求め、これを最大径で除した値として定義している。この値を画像解析処理装置により測定し、1000個の平均値を求めた。結果を表1に併せて示す。
尚、バレルめっきによるダミーボールの変形、劣化に対するダミーボール硬度の影響のみを確認するため、本実施例ではめっきのための荷電を行っていない。
【0020】
いずれの組成でも硬度、形状ともバレルめっきに適するものが得られた。
比較としてSn-Pb合金を用い上述の方法でダミーボールを製造した。本発明のはんだボールでビッカース硬度が13Hv以上を達成しているのに対し、Sn-Pb合金を用いた比較例ではいずれの方法でもビッカース硬度が13Hv未満のボールしか得られなかった。
【0021】
また、いずれの組成においても、空中凝固されてなるバレルめっき用ダミーボールは、同組成の油中凝固されてなるダミーボールよりも高硬度を示しており、バレルめっきによる変形、劣化が抑制されている。これは図3にSn-0.7Cu組成のダミーボールの一例で示すように、ガス中凝固されてなるダミーボール(図3(a))は同組成の油中凝固したダミーボール(図3(b))と比べ、微細な組織となるためと考えられる。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、バレルめっきにおける浴の汚染が少なく、また近年のPbについての環境問題に対応したバレルめっき用ダミーボール提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のダミーボールを製造する装置の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のダミーボールを製造する装置の均一液滴発生部一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明例および比較例のダミーボール断面についての光学顕微鏡像の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 溶湯、2 オリフィス、3 るつぼ、4 振動子、5 伝達部材、6 加振ロッド、7 チャンバー、8 連続した溶滴、9 独立した溶滴、10 ダミーボール、11 高電圧プレート、12 均一液滴発生部、13 連続回収缶、14 冷却管
Claims (2)
- Snを主成分とし Pbを含まない、Niよりイオン化傾向の小さい金属からなり、ビッカース硬度が 13Hv 以上であることを特徴とするバレルめっき用ダミーボール。
- ビッカース硬度が17Hv以上であることを特徴とする請求項1に記載のバレルめっき用ダミーボール。
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