JP3783849B2 - 光計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光計測装置に関し、生体の散乱吸収の内部分布を光により計測する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
被検体の散乱吸収の内部分布を光により計測し、この光計測によって生体成分の経時的変化を計測して組織の正常・異常を診断したり、脳内各部の血流経時変化や酸素供給の変化を計測して脳機能計測や循環器系診断を行う等、医療分野に使用される光計測装置が提案されている。
【0003】
このような光計測装置において、複数の送光部と受光部を有し複数のチャンネルを備えるマルチチャンネル光計測装置が知られており、マルチチャンネル型酸素モニタ等の製品も市販されている。
【0004】
このようなマルチチャンネル光計測装置は、受光した光を検出器によって電気信号として検出している。図10は、従来のマルチチャンネル光計測装置が備える検出器の一構成例を示している。
【0005】
検出器100は、被検体からの光を電気信号に変換する手段として光電子増倍管(ホトマル)101を使用している。この光電子増倍管101は、受光した光に応じて光電子を放出する光電面101a、光電子の個数を増加させる増幅器101b、及び増幅器101bに印加する負電圧を供給する負電圧部101cを備え、この増幅器101bは検出信号増倍機能を有している。光電子増倍管101より検出された計測信号(電流値)は、プリアンプ102で電圧に変換された後、アンプ(電圧増幅回路)103及び積分回路104を介してA/D変換器105に入力され、デジタル信号に変換された検出信号はデータ取得部120に出力される。データ取得部120は、検出信号の記録や表示を行う。なお、検出部100の制御は、光検出制御部110によって行われる。
また、異なる照射波長や異なる照射場所を計測する場合には、時系列に点灯及び非点灯を行うことによって、波長や場所を分離した信号を検出している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
マルチチャンネル型酸素モニタをはじめとする光生体計測装置では、送受光手段(送光ファイバ及び受光ファイバの一端)を被検体の測定部位に密着させて、その透過光強度や反射光強度あるいはその強度変化を計測する。この計測においては、光が透り易い人あるいは透り難い人等の被検体の個人差や、同じ被検体においても頭部や四肢部等の測定部位の他、送光ファイバ及び受光ファイバの端部間を例えば2cm離すか3cm離すか等の送受光距離、髪の毛が多いかあるいは少ないか等の設置状態、照射波長等に種々の測定条件によって、得られる光強度が大きく異なる。
【0007】
そこで、図10で示した検出器では、通常、本計測の前の予備計測において光強度を確認しておき、得られた強度に合わせて信号を増幅させ、データ取得を行っている。
ところで、複数の送光点及び複数の受光点を持つマルチチャンネル型酸素モニタでは、これら複数の送受光点の組み合わせて計測することを特徴としており、例えば、図11に示すように、同一の検出点(検出点1)において複数の送光点(送光部A,送光部B)からの光を分離し検出することになる。
【0008】
被検体が生体の場合、光が内部を伝播して再放出される光強度は送受光距離(送光点Aと受光部1の距離、あるいは送光点Bと受光部1の距離等)に対して指数関数的に減衰する。例えば、送受光距離が1cm拡がると光強度は約1/10に減衰する。そのため、図11に示すように、送光点Aと受光部1の距離に比べて送光点Bと受光部1の距離が長い配置では、送光点Bと受光部1の組み合わせで得られる光強度は送光点Aと受光部1で得られる光強度に比べてかなり弱いものになる。
【0009】
また、前述のように、検出される光強度は、上記した送受光距離だけでなくファイバの設置状態や照射波長によっても左右されるため、実際の光強度の差は送受光点の組み合わせによってかなり大きくなる。
【0010】
従って、従来の光計測装置では、受光部において一定の信号増幅率で信号増幅を行うため、
(1)検出光強度が強い組み合わせ(例えば、図10の送光点Aと受光部1の組み合わせ)に合わせて信号増幅率を設定すると、検出光強度が弱い組み合わせ(例えば、図11の送光点Bと受光部1との組み合わせ)で得られる増幅信号は弱くなり、図10におけるアンプ103,積分器104,A/D変換器105で重畳される雑音に対して極めて弱くなり、S/N比が低下する。
(2)検出光強度が弱い組み合わせに合わせて信号増幅率を設定すると、検出光強度が強い組み合わせで得られる増幅信号は受光部のダイナミックレンジを超えて飽和し、正確な計測が難しくなる。
といった、検出信号の信号強度レベルにおいて問題がある。
【0011】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、複数の送光点及び複数の受光点を持つ光計測装置において、送光部、受光部、あるいは送受光間等の送受光条件が異なる場合においても、最適な信号強度レベルを得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の受光部で計測された計測信号の増幅や、各受光部に入射される光強度の減衰を、送光部と受光部との組み合わせに応じて変化させることによって、送光部、受光部、あるいは送受光間等の送受光条件が異なる場合であっても最適な信号強度レベルを得る。なお、計測信号の増幅と各受光部に入射される光強度の減衰は、何れか一方のみとすることも、あるいは両方を組み合わせることもできる。
【0013】
本発明の光計測装置は、被検体に光を照射し、被検体中を透過及び/又は反射した後に外部に放出される光を計測する光計測装置であって、被検体に1つ又は複数の波長の光を照射する複数の送光部と被検体から放出される光を受光する複数の受光部とを備えた送受光手段と、各受光部で計測された計測信号を各々増幅する複数の増幅手段、及び/又は各受光部に入射される光強度を各々減衰する複数の減衰手段とを備える構成とし、計測中に増幅手段の各増幅率及び/又は減衰手段の各減衰率を変化させる。計測中に変化する送受光条件に応じて、増幅手段の各増幅率や減衰手段の各減衰率を変化させることによって、最適な信号強度レベルを得る。
【0014】
さらに、計測中に増幅手段の各増幅率及び/又は減衰手段の各減衰率を変化させる一態様として、送受光手段の送受光、及び前記増幅手段の増幅率又は前記減衰手段の減衰率を制御する制御手段を備え、制御手段は、照射波長及び/又は送受光を行う送光部と受光部の組み合わせ及び順序を定めた制御テーブルと、制御テーブルに設定された組み合わせに対応する増幅率を定めた増幅率テーブル及び/又は前記制御テーブルに設定された組み合わせに対応する減衰率を定めた減衰率テーブルとを備える。
【0015】
制御手段は、制御テーブルに定められた照射波長及び/又は送光部と受光部の組み合わせ及び順序に基づいて送受光制御を行うと共に、制御テーブルの制御に同期させて、増幅率テーブルに定められた増幅率を各増幅手段に設定する制御、あるいは減衰率テーブルに定められた減衰率を各減衰率手段に設定する制御を行う。また、その両方の制御を行うこともできる。
【0016】
この態様では、増幅率テーブル及び/又は減衰率テーブルは、制御テーブルが定める送光部と受光部の組み合わせ及び順序に対応するものであり、設定した送光部と受光部の組み合わせ及び順序に応じて予め設定しておき、計測中に変化する送光部と受光部の組み合わせに合わせて増幅率や減衰率を変化させる。
【0017】
また、計測中に増幅手段の各増幅率及び/又は減衰手段の各減衰率を変化させる他の態様として、送受光手段の送受光、及び前記増幅手段の増幅率及び/又は前記減衰手段の減衰率を制御する制御手段を備え、制御手段は、照射波長及び/又は送受光を行う送光部と受光部の組み合わせ及び順序を定めた制御テーブルと、各増幅手段の増幅率の組み合わせを少なくとも一つ定めた増幅率テーブル、及び/又は前記各減衰手段の減衰率の組み合わせを少なくとも一つ定めた減衰率テーブルとを備える。なお、増幅率テーブルや減衰率テーブルは制御テーブルに設定された組み合わせとの対応に制限されない。
【0018】
制御手段は、制御テーブルに定められた照射波長及び/又は送光部と受光部の組み合わせ及び順序と、増幅率テーブルに定められた増幅率及び/又は減衰率テーブルに定められた減衰率の組み合わせとを組み合わせ、この制御テーブル及び増幅率テーブルの組み合わせ、及び/又は制御テーブル及び減衰率テーブルの組み合わせに基づいて、送受光制御を行うと共に、増幅率設定及び/又は減衰率設定を行う。
【0019】
この他の態様では、増幅率テーブル及び/又は減衰率テーブルは、制御テーブルが定める送光部と受光部の組み合わせ及び順序と独立して設定しておき、制御テーブルと増幅率テーブル及び/又は減衰率テーブルとを組み合わせることによって、計測中に変化する送光部と受光部の組み合わせに合わせて増幅率や減衰率を変化させる。
この制御テーブルと、増幅率テーブル及び/又は減衰率テーブルとの各組み合わせの切り換えは、同期して行うことも、非同期で行うことできる。
【0020】
上記各態様において、制御テーブルは送光テーブルや受光テーブルを備え、この制御テーブルと連動させて送受光点の組み合わせ毎に増幅率テーブルを用いて検出部の増幅率を変化させる。増幅率テーブルを用いることで、送受光状態に連動させて受光手段に備え付けられた増幅手段の増幅率を変化させる。例えば、送光点Bと受光部1の検出光強度が、送光点Aと受光部1の1/100である場合、受光部1の増幅率を送光点Aで照射されているときと送光点Bで照射されているときとで計測データあるいは光強度を100倍変化させることで、両組み合わせの信号をS/N良く計測する。
【0021】
なお、上記各手段によって時系列的に連続して得られた計測信号は、記録手段に記録したり、表示手段に表示することができる他、通信手段によって他の装置に送信することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の光計測装置の一構成例を説明するための概略構成図を示している。なお、図1に示す構成例は、増幅率テーブルを備える例を示している。
【0023】
図1において、光計測装置1は、被検体10に光を照射する送光部22a、被検体10からの光を受光する受光部22b、及び測定プローブを備える送受光部22と、送光部22aに光を送光する発光部21、受光部22bで受光した光を光検出する光検出部23と、光検出部23で検出した信号を増幅する増幅手段4と、発光部21,光検出部23,及び増幅手段4を制御する制御部3を備え、さらに、増幅手段4で信号増幅した計測信号を取得する信号取得手段5、記録手段6及び表示手段7を備える。
【0024】
制御部3は、発光部21を制御して送光部22aからの送光を制御する送光制御部31、光検出部23の受光制御、及び増幅手段4の増幅率の設定を行う光検出制御32を備え、さらに、送光制御部31及び光検出制御32の制御形態を定める制御テーブル33と、増幅手段4の増幅率を定める増幅率テーブル34を備える。
【0025】
制御テーブル33は、例えば送光を行う送光部の組み合わせと順序を定めた送光テーブル33a、及び受光部の組み合わせと順序を定めた受光テーブル33bを備える。なお、送光テーブル33a及び受光テーブル33bの個々のテーブルに代えて、送光部の組み合わせ及び順序と受光部の組み合わせ及び順序とを一テーブルで定める送受光テーブル(図示していない)を設けることもできる。
【0026】
制御テーブル33において、発光にかかわる制御に関しては、送受光部22に配列される複数の送光部22aの中から、送光を同時に行う送光部の組み合わせと動作順とを定め、光検出にかかわる制御に関しては、送受光部22に配列される複数の受光部22bで受光して得られる受光信号を有効データとする受光部の組み合わせと動作順とを定める。
【0027】
送光制御部31は、送光テーブル33aから受け取った送光部の組み合わせと動作順に基づいて発光部21の発光を制御する。また、受光制御部32は、受光テーブル33bから受け取った受光部の組み合わせと動作順に基づいて、受光部22bで受光し光検出部23で変換して得た受光信号を制御する。
また、増幅率テーブル34には、各受光部における信号を増幅する増幅率が設定される。増幅率は、送光テーブル33a及び受光テーブル33bで定めた送光部及び受光部の組み合わせと動作順に応じて設定する形態とすることも、送光部及び受光部の組み合わせと独立して設定する形態とすることもできる。
【0028】
以下、図2に示す複数の送光点と受光点の組み合わせを用いて説明する。なお、各送光点において異なる波長で照射することができるが、ここでは簡略化して極めて単純な送受光配置のモデルを用いて説明する。
図2の送光点と受光点の組み合わせは、送光部A,B,C及び受光部1,2,3からなる計測例を示している。この組み合わせにおいて考えられる送受光の組み合わせは9通り(=3×3)であるが、この内7通り(図2中の矢印CH1〜CH7)の計測を行うものとする。また、各送受光の組み合わせで得られる受光部の光信号強度は矢印の太さで表しており、太い矢印はと細い矢印の光信号強度の比は、100:1であり、各受光部は増幅された信号強度を0〜100(信号強度に因らない雑音を±1とする)に合わせて計測を開始するとする。
【0029】
この例において、従来のように、受光部において一定の信号増幅率で信号増幅を行う場合には、以下の表1で示される送光テーブル、受光テーブル、及び増幅率を設定する。
【0030】
【表1】
【0031】
表1において、送光テーブルはステップ1〜3においてどの送光部を照射するかを示し、受光テーブルは同様に各ステップにおいて各受光部でデータを取得するか否かを示している。表1の例では、ステップ1では送光部1のみで照射(図中○印)し、ステップ2では送光部2のみ、ステップ3では送光部3のみで照射する。一方、受光部については、ステップ1で受光部1,2のデータを取得(図中○印)し、ステップ2では受光部1,2,3の全てで取得を行う。また、ステップS32は受光部2,3で取得する。なお、受光テーブルの括弧内に記載された数字は、各受光部が検出する光強度を示す。
【0032】
この送光テーブルと受光テーブルを用いて、例えば予備計測を行って各受光部が検出する光強度を調べることによって、各受光部に設定する増幅率を求めることができる。ただし、ステップ1〜3において全ての計測を上記計測範囲内で行う必要があるため、各受光部に設定する増幅率は各ステップで最大となる検出光強度で決定される。表の例では、受光部1についてはステップ1での検出光強度100が最大となるので設定する増幅率は1とし、受光部2,3については各々100,1の増幅率とする。
表1で決定された条件の下で計測した結果を表2に示す。なお、表2中の括弧内の数字は増幅されて得られる信号強度の大きさを示している。
【0033】
【表2】
【0034】
表2の結果から明らかなように、CH1やCH3〜CH5,CH7などは信号強度が100となりS/Nの良い計測となるが、CH2,6については雑音レベルと同等な信号しか得られず、極めてS/Nの悪い状態での計測になる。
【0035】
次に、本発明を適用した例について、図3及び表3,4を用いて説明する。
この例では、送光テーブルと受光テーブルの他に増幅率テーブルを各ステップ毎に設定する。表3は、この各テーブルを示している。
【0036】
【表3】
【0037】
増幅率テーブルの作成にあたっては、前述の従来技術の適用例と同様に、送光テーブルと受光テーブルを用いて、例えば予備計測を行って各受光部が検出する光強度を調べることで設定する増幅率を求める。
【0038】
また、これら送光テーブル、受光テーブル、増幅率テーブルを用いた計測では、行われるステップ毎に照射する送光部の選択や、データ取得する受光部の選択といった制御の他に、増幅率テーブルに従った増幅率の切替制御も合わせて行い、データの取得を行う。
表4は、これにより得られる計測結果を示す。また、図3は各ステップ1〜3における増幅率の設定状態と信号強度を示している。
【0039】
【表4】
【0040】
表4及び図3に示すように、どの送受光の組み合わせによる計測でもほぼ同等な信号強度が得られるようになる。
なお、実際の計測では検出光強度に無関係な雑音の他に光強度に依存した雑音がある。一般的には、光強度が弱くなるとS/Nは下がるため、送受光の任意の組み合わせによる計測においても同等なS/Nが得られるとは限らないが、本発明を適用することで検出光強度に無関係な雑音によるS/Nの劣化を避けることができる。
【0041】
次に、本発明を適用した他の例について、図4及び表5,6を用いて説明する。
この例では、送光テーブルと受光テーブルの他に、送光テーブル及び受光テーブルと独立して増幅率テーブルを設定し、送光テーブル及び受光テーブルと増幅率テーブルとを組み合わせ、増幅率テーブルに従って増幅率を切り替えることによって計測を行う例である。
【0042】
各受光部に対する増幅率の切替に時間がかかるようなシステムにおいては、各ステップ毎に増幅率切替を行うとこの切替時間が律速になり、ステップ1〜3を繰り返して連続計測を行う際のサンプリング間隔(ステップ1が行われた後、再度ステップ1が行われるまでの時間)が長くなり、計測時間が長時間化するという問題が生じる。例えば、光電子増倍管の負高圧を切替ることによって増幅率を変える場合には、負高圧を切替えてから増幅率が安定するまで時間を要する。
【0043】
本例は、このような増幅率の切替に伴う計測時間の長時間化を解消するものである。本例では、表5中の(a)に示すように、増幅率を送光テーブル及び受光テーブルのステップとは異なるサイクルで切替えるようなテーブルで制御を行う。
【0044】
【表5】
【0045】
表5中の(b)は、送光テーブル及び受光テーブルのステップと増幅率のサイクルとの関係を示している。ある増幅率の組み合わせでステップ1〜3の計測(例えば、サイクルa)を行い、その後、増幅率を切替えて同様にステップ1〜3の計測(例えば、サイクルb)を行う。
【0046】
表6は、得られる計測データを示している。また、図4は各ステップ1〜3における増幅率の設定状態と信号強度を示している。
【0047】
【表6】
【0048】
表6及び図4に示す結果によれば、送受光点の組み合わせ(CH1〜CH7)に対する計測データについて、適当なサイクル及び適当なステップにおけるデータを選択することで、前記した表4と同じ結果を得ることができる。
【0049】
なお、表6において、増幅して得た信号強度は100を基準とした選択を行い、信号強度が1のデータは雑音として棄却し、また、信号強度が1000のデータは飽和したものとして棄却する。表中では、受光テーブルに基づいて収集したデータにおいてこのように棄却したデータを△で示している。
【0050】
なお、前記した表3で示した、送光テーブル及び受光テーブルと組み合わせた増幅率テーブルを用いた実施例においても、表6で行った増幅率の切替に時間がかかるようなシステムに対応した同等な計測を行うことができる。この場合の「送光テーブル」,「受光テーブル」,「増幅率テーブル」を以下の表7に示す。
【0051】
【表7】
【0052】
上記の例によれば、例えば、表3で行っていた3回の増幅率切替を2回とすることができ、増幅率切替時間が律速になっているようなシステムにおいてはサンプリング間隔を短縮することができる。
【0053】
次に、本発明を適用した別の例について、表8を用いて説明する。
表5,6に示した例では、サイクルの切替とステップ1〜3の開始とを同期させているが、これらサイクルとステップが完全に同期していない場合でも同等な計測を行うことができる。
表8は、増幅率のサイクルと送受光のステップと切り替え状態を示している。
【0054】
【表8】
【0055】
この例では、増幅率を切替えるサイクル時間を送受光のステップ1〜3を行うのに必要な時間よりも長くすることで、表8中の太線枠で示すデータを抜き出すことによって表5の(b)と同等な結果を得ることができる。
【0056】
前記した各例は、検出器で電気信号に変換された検出光信号を増幅することで、適正な信号強度を得る構成例であるが、検出器に入射される光強度そのものを光減衰器で調整して適正な信号強度を得る構成とすることもできる。
【0057】
図5,6及び表9は、光減衰器を備える例を示している。
図5に示した概略構成図は、前記した図1の概略構成図とほぼ同様であり、増幅手段4に代えて、受光部22bと光検出部23との間に光減衰器等の減衰手段8を備え、制御手段3内に増幅率テーブルに代えて減衰率テーブル35を備える。減衰手段8は、減衰率テーブル35に設定された減衰率に基づいて各受光信号を減衰した後、光検出部23に送る。
【0058】
表9は、減衰率テーブルの一例を示し、図6は各ステップ1〜3における減衰率の設定状態と信号強度を示している。なお、表9中の減衰率テーブルは、送光テーブル及び受光テーブルの組み合わせに対応して設定しているが、前記した増幅率テーブルと同様に、送光テーブル及び受光テーブルと独立して設定し、減衰率のサイクルと送受光のステップとを同期あるいは非同期して行うこともできる。
【0059】
【表9】
【0060】
さらに、検出器で電気信号に変換された検出光信号を増幅することで適正な信号強度を得る構成と、検出器に入射される光強度そのものを光減衰器で調整して適正な信号強度を得る構成とを組み合わせた構成とすることもできる。
【0061】
図7,8及び表10は、増幅手段及び減衰手段を備える例を示している。図7に示す光計測装置の概略構成は、前記した図1が備える増幅手段と図5が備える減衰手段の両手段を備えると共に、制御手段3内に増幅率テーブル34及び減衰率テーブル35を備える。
減衰手段8は、減衰率テーブル35に設定された減衰率に基づいて各受光信号を減衰した後、光検出部23に送る。また、増幅手段4は、増幅率テーブル34に設定された増幅率に基づいて信号増幅を行う。
表10は、減衰率テーブル及び増幅率テーブルの一例を示し、図8は、一ステップにおける減衰率及び増幅率の設定状態と信号強度を示している。
【0062】
【表10】
【0063】
一般に、光強度自体を弱めることはS/Nを低下させる傾向があり、計測には不向きであるが、極端に光強度が強い信号については減衰させることによるS/Nの低下による影響は少ないと考えられるため、減衰率テーブルと増幅率テーブルとを組み合わせることによって、より有効な計測結果が望まれる。
【0064】
図9を用いて、本発明による光計測装置によるS/Nの向上例について説明する。図9は、例えば、6送光6受光による送受光配置モデルの例である。この送光点と受光点の配置で考えられる送受光の組み合わせは36通り(=6×6)である。この組み合わせにおいて、最近接した送受光の組み合わせ(図9(a)に示す16通り)や次近接した送受光の組み合わせ(図9(b)に示す16通り)では、検出光の強度差が大きいという問題があり、混在した状態でS/N良く計測することが難しい。
【0065】
本発明の光計測装置は、このような場合においても良好なS/Nで計測することができ、送受光点距離に比例して観測されると言われている深さ方向に関する情報についても、計測可能となる。例えば、図9(a),(b)は送受光距離が異なるため、計測される光信号が持つ深さの情報が異なる。
また、ほぼ等距離での計測においても、ファイバの設置状態や照射波長によって検出光強度が異なることによるS/Nの劣化改善の可能性がある。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光計測装置によれば、複数の送光点及び複数の受光点を持つ光計測装置において、送光部、受光部、あるいは送受光間等の送受光条件が異なる場合においても、最適な信号強度レベルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光計測装置の一構成例を説明するための概略構成図である。
【図2】複数の送光点と受光点の組み合わせを説明するための送受光配置のモデルである。
【図3】本発明の光計測装置による各ステップにおける増幅率の設定状態と信号強度を示す図である。
【図4】本発明の光計測装置による各ステップにおける増幅率の設定状態と信号強度を示す図である。
【図5】本発明の光計測装置の一構成例を説明するための概略構成図である。
【図6】本発明の光計測装置による各ステップにおける減衰率の設定状態と信号強度を示す図である。
【図7】本発明の光計測装置の一構成例を説明するための概略構成図である。
【図8】本発明の光計測装置による減衰率及び増幅率の設定状態と信号強度を示す図である。
【図9】本発明による光計測装置によるS/Nの向上例を説明するための図である。
【図10】従来のマルチチャンネル光計測装置が備える検出器の一構成例を示し図である。
【図11】
送光点と受光点を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1…光計測装置、2…送受光手段、3…制御手段、4…増幅手段、5…信号取得手段、6…記録手段、7…表示手段、21…発光部、22…送受光部、22a…送光部、22b…受光部、23…光受光部、31…送光制御部、32…受光制御部、33…制御テーブル、33a…送光テーブル、33b…受光テーブル、34…増幅率テーブル、35…減衰率テーブル
Claims (2)
- 被検体に光を照射し、被検体中を透過及び/又は反射した後に外部に放出される光を計測する光計測装置において、
被検体に1つ又は複数の波長の光を照射する複数の送光部と被検体から放出される光を受光する複数の受光部とを備えた送受光手段と、
前記各受光部で計測された計測信号を各々増幅する複数の増幅手段、及び/又は前記受光部に入射される光強度を各々減衰する複数の減衰手段と、
前記送受光手段の送受光、及び前記増幅手段の増幅率又は前記減衰手段の減衰率を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、照射波長及び/又は送受光を行う送光部と受光部の組み合わせ及び順序を定めた制御テーブルと、前記制御テーブルに設定された組み合わせに対応する増幅率を定めた増幅率テーブル及び/又は前記制御テーブルに設定された組み合わせに対応する減衰率を定めた減衰率テーブルとを備え、
前記制御手段は、前記制御テーブルに定められた照射波長及び/又は送光部と受光部の組み合わせ及び順序に基づいて送受光制御を行うと共に、前記制御テーブルの制御に同期させて、前記増幅率テーブルに定められた増幅率を前記各増幅手段に設定、及び/又は前記減衰率テーブルに定められた減衰率を前記減衰手段に設定し、
計測中に前記増幅手段の各増幅率及び/又は前記減衰手段の各減衰率を変化させることを特徴とすることを特徴とする光計測装置。 - 被検体に光を照射し、被検体中を透過及び/又は反射した後に外部に放出される光を計測する光計測装置において、
被検体に1つ又は複数の波長の光を照射する複数の送光部と被検体から放出される光を受光する複数の受光部とを備えた送受光手段と、
前記各受光部で計測された計測信号を各々増幅する複数の増幅手段、及び/又は前記受光部に入射される光強度を各々減衰する複数の減衰手段と、
前記送受光手段の送受光、及び前記増幅手段の増幅率又は前記減衰手段の減衰率を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、照射波長及び/又は送受光を行う送光部と受光部の組み合わせ及び順序を定めた制御テーブルと、前記各増幅手段の増幅率の組み合わせを少なくとも一つ定めた増幅率を定めた増幅率テーブル及び/又は前記各減衰手段の減衰率の組み合わせを少なくとも一つ定めた減衰率テーブルとを備え、
前記制御手段は、前記制御テーブルに定められた照射波長及び/又は送光部と受光部の組み合わせ及び順序と、前記増幅率テーブルに定められた増幅率及び/又は前記減衰率テーブルに定められた減衰率の組み合わせとの組み合わせ、当該制御テーブル及び増幅率テーブルの組み合わせ、及び/又は制御テーブル及び減衰率テーブルとの組み合わせに基づいて、送受光制御、及び増幅率設定及び/又は減衰率設定を行い、
計測中に前記増幅手段の各増幅率及び/又は前記減衰手段の各減衰率を変化させることを特徴とすることを特徴とする光計測装置。
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