JP3782887B2 - 水素化処理用触媒および該水素化処理用触媒を使用する炭化水素油の水素化処理方法 - Google Patents

水素化処理用触媒および該水素化処理用触媒を使用する炭化水素油の水素化処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素化処理用触媒および該水素化処理用触媒を使用する炭化水素油の水素化処理方法に関する。さらに詳しくは、ボリア−シリカ−アルミナからなり、特定の細孔構造を有する触媒担体に、水素化活性成分を担持させて構成される水素化処理用触媒、および該水素化処理用触媒を使用して炭化水素油を水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化脱芳香族、水素化精製などをするための炭化水素油の水素化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、石油製品の製造工程では、炭化水素油の水素化処理が行われてきた。このために、アルミナ、シリカ−アルミナ、マグネシア、ジルコニアなどの耐火性無機酸化物を担体とし、周期律表第6B族金属、同表第8族金属などを酸化物または硫化物として担持させた水素化処理用触媒が種々開発され、石油原油の常圧蒸留または減圧蒸留の留出油および残渣油の水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解および水素化脱芳香族、潤滑油留分の水素化精製、ワックス留分の水添異性化などに用いられてきた。
【0003】
一方、近年、環境保全の観点から、炭化水素油の一層の水素化処理が要求されてきた。しかし、従来の水素化処理用触媒は、脱硫活性の向上を主眼とし、比較的小さい細孔径の範囲でその平均細孔直径を制御した高比表面積の触媒の開発が重点的に行われてきた。これに対し、大気汚染の原因物質である窒素酸化物の発生源と目される燃料油中の窒素化合物を除去するための脱窒素活性は不十分であった。また、これらの窒素化合物を含有する炭化水素油は、石油精製工程において、接触分解または接触改質に供すると、窒素化合物が、分解触媒または改質触媒の活性を著しく低下させ、製品の収率低下を招くという問題があった。
【0004】
また、水素化処理活性を向上するために、比較的大きい細孔径の細孔容積を増加させると、比表面積が低減し、その結果、水素化活性成分を担体上に高度に分散担持できず、高い触媒活性を得ることができないという問題があった。このような開発状況のもとに、脱硫活性と共に脱窒素活性に優れた高比表面積の水素化処理用触媒の開発が切望されてきた。
【0005】
たとえば、特公平3−31496号公報には、特定の細孔容積を有し、ミクロポアとマクロポアの両領域に細孔が分布するように制御されたシリカ−アルミナ担体上に、水素化活性成分を担持させた水素化処理用触媒が記載されている。また、特開平8−89806号公報には、ボリア−シリカ−アルミナを基体とし、平均細孔直径が60〜90Åで、平均細孔直径±10Åの細孔直径を有する細孔容積が全細孔容積の60%以上である担体上に、水素化活性成分を担持させた水素化脱硫脱窒素用触媒が記載されている。しかし、これらの技術においても、水素化処理用触媒の活性およびその活性維持性能は不十分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記した従来の技術の問題点を改善し、高脱硫活性と共に、高脱窒素活性を併せ有する炭化水素油の水素化処理用触媒、および該水素化処理用触媒を使用する炭化水素油の水素化処理方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定量のボリアを含有するボリア−シリカ−アルミナ担体において、比較的小さい細孔直径領域で、高い細孔容積を維持すると共に、その細孔直径の分布を特定の範囲とした水素化処理用触媒が、炭化水素油中の硫黄化合物と窒素化合物を共に高度に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明により、ボリアとシリカとアルミナとからなる担体上に、周期律表第8族元素から選ばれる少なくとも1種の活性成分(A)と、周期律表第6B族元素から選ばれる少なくとも1種の第2の活性成分(B)を担持してなる水素化処理用触媒であって、該ボリアおよびシリカは、担体中で各々B23として0.1〜10重量%およびSiO2 として2〜40重量%含有し、かつ下記の関係式(1)〜(4)を満足することを特徴とする水素化処理用触媒が提供されるものである。
【0009】
【数2】
Figure 0003782887
さらに、このような水素化処理用触媒の存在下で、炭化水素油を水素と接触させて、高度に脱硫および脱窒素することを特徴とする炭化水素油の水素化処理方法が提供されるものである。
【0010】
本発明は、上記のような水素化処理用触媒および炭化水素油の水素化処理方法に係るものであるが、その好ましい実施の態様として、次のものを包含する。
(1)前記構成要件を具備することを特徴とする水素化処理用触媒または水素化処理方法。
(2)前記第1の活性成分(A)が、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムまたは白金であることを特徴とする上記(1)に記載の水素化処理用触媒または水素化処理方法。
(3)前記第2の活性成分(B)が、モリブデンまたはタングステンであることを特徴とする上記(1)または上記(2)のいずれかに記載の水素化処理用触媒または水素化処理方法。
(4)前記ボリアは、担体中でB23として0.5〜7重量%含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の水素化処理用触媒または水素化処理方法。
(5)前記関係式(1)が、
PV(30-100)/PV(0-150)≧0.6〜0.8(窒素吸着法)
であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水素化処理用触媒または水素化処理方法。
(6)前記関係式(2)が、
PV(150-300)/PV(0-300)≦0.3(窒素吸着法)
であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水素化処理用触媒または水素化処理方法。
(7)前記関係式(3)が、
【0011】
【数3】
Figure 0003782887
であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の水素化処理用触媒または水素化処理方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
(水素化処理用触媒)
本発明の水素化処理用触媒は、特定量のボリアと、シリカと、アルミナとからなり、特定の細孔構造を有する触媒担体上に、周期律表第8族元素から選ばれる少なくとも1種の活性成分(A)と、周期律表第6B族元素から選ばれる少なくとも1種の第2の活性成分(B)とを担持したものである。
【0013】
本発明の水素化処理用触媒の担体は、シリカ−アルミナを基本とし、第3成分としてボリアを含有させたものである。すなわち、核としてのアルミナ上にシリカおよびボリアが分散され、ホウ素、珪素、アルミニウムのうちの少なくとも二つ以上の原子が酸素原子を介して結合した構造を含むものである。シリカの原料物質としては、珪素化合物、たとえば、アルカリ金属珪酸塩(Na2O:SiO2=1:2〜1:4が好ましい。)、テトラアルコキシシラン、四塩化珪素、オルソ珪酸エステルなどを用いることができる。また、アルミナの原料物質としては、アルミニウム化合物、たとえば、アルミニウムの硫酸塩、塩化物、硝酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩およびアルミニウムアルコキシドその他の無機塩または有機塩を使用することができる。これらのアルミニウム化合物および珪素化合物は、水溶液、およびゾル状またはゲル状水性混合物として使用することができ、その濃度は特に限定するものではなく適宜決定して差し支えがない。ボリアの原料物質としては、ホウ酸、ホウ酸アンモニウムなどの水溶性塩類が挙げられる。
【0014】
シリカ−アルミナ担体においては、アルミナにシリカが含有されることにより、担体に比較的強い酸点を賦与することができる。そして、担体の固体酸性度は、シリカの含有量によって制御することが好ましい。さらに、ボリア−シリカ−アルミナ担体においては、ボリア成分は、シリカ−アルミナ担体成分が有する強酸点を減少させると同時に弱酸点を増加させて、特定の酸強度(中・弱酸)を担体に賦与することができ、触媒の活性および選択性を向上させることができる。
【0015】
担体中のシリカ含有量は、担体の全重量基準で、2〜40重量%、好ましくは2〜20重量%である。シリカ含有量が、40重量%を超えると炭化水素油の分解を促進し、水素化処理油が軽質化するという問題が生ずる。また、ボリア含有量としては、担体の全重量基準で0.1〜10重量%の範囲である。好ましくは0.5〜7重量%である。ボリア含有量が、10重量%を超える場合には、水素化処理活性が低下するという問題がある。
【0016】
本発明の水素化処理用触媒は、特定の細孔構造を有することが肝要である。すなわち、本発明の水素化処理用触媒は、窒素吸着法により測定した直径30〜100Åの範囲の細孔が占める細孔容積と、直径100〜150Åの範囲の細孔が占める細孔容積を、バランスよく増加させたことにあり、細孔容積の比率(PV(30-100)/PV(0-150))をXとし、細孔容積の比率(PV(150-300)/PV(0-300))をYとすると、Xは、0.5以上、好ましくは0.6〜0.8であり、一方、Yは、0.4以下であり、好ましくは0.3以下である。ここで、PV(n-m)は、n〜mÅの細孔直径を有する細孔が占める細孔容積を意味する。たとえば、PV(30-100)は、30〜100Åの細孔直径を有する細孔が占める細孔容積である。Xが0.5未満、または、Yが0.4を超える場合は、脱硫活性および脱窒素活性が低下する。
【0017】
さらに、本発明の水素化処理用触媒は、窒素吸着法により測定した直径0〜300Åの細孔の容積と、水銀圧入法により測定した直径40Å以上の細孔の容積の比、すなわち、
【0018】
【数4】
Figure 0003782887
は、0.7以上、好ましくは0.8以上である。0.7未満の場合は、脱硫活性および脱窒素活性が低下する。
【0019】
また、本発明の水素化処理用触媒の比表面積は、200m2/g以上である。比表面積が200m2/g未満であると、水素化活性成分を担体上に高度に分散して担持できず、高い触媒活性を得ることができない。
【0020】
本発明で使用するボリア−シリカ−アルミナ担体は、シリカ−アルミナ担体成分を製造した後、ホウ素化合物の水溶性塩類を添加して製造することができる。そして、シリカ−アルミナ担体成分は、通常、次のようにして製造することができる。すなわち、(1)シリカ水和物ゲルおよびアルミナ水和物ゲルを各々予め製造しておき両者を混合する方法、(2)水溶性アルミニウム化合物および水溶性珪素化合物の均一混合溶液に塩基性物質または酸性物質を添加し、両者を共沈させる方法、(3)シリカ水和物ゲルをアルミニウム化合物の溶液に浸漬した後に、塩基性物質または酸性物質を適当量添加してアルミナ水和物ゲルをシリカ水和物ゲル上に沈着させる方法、(4)アルミナ水和物ゲルを珪素化合物の溶液に浸漬した後に、塩基性物質または酸性物質を適当量添加してシリカ水和物ゲルをアルミナ水和物ゲル上に沈着させる方法などによって製造することができる。
【0021】
本発明で使用するボリア−シリカ−アルミナ担体の具体的な製造方法は、たとえば、次のとおりである。原料アルミニウム化合物の水溶液に、酸性またはアルカリ性水溶液を徐々に添加し、約5分〜約30分かけて混合液のpHを7〜11、好ましくは8〜10に調整し、アルミナ水和物ゲルを生成させる。得られたアルミナ水和物ゲルに対し、pHを上記設定値に維持しながら、沈殿したアルミナ水和物ゲルを70℃程度の温度下で0.2〜1.5時間熟成する。焼成後のボリア−シリカ−アルミナ担体中に、SiO2として2〜40重量%含有するように、珪素化合物水溶液を添加し、必要に応じて鉱酸溶液を加え、pHを約7〜11の範囲に調整し、約50〜約80℃の温度にて0.2時間以上保持して、核としてのアルミナ水和物ゲルにシリカ水和物ゲルを沈着させてシリカ層を形成させることにより、シリカ−アルミナ担体成分を調製する。
【0022】
次いで、前記のシリカ−アルミナ担体成分を含む沈殿を濾別し、炭酸アンモニウム溶液および水で洗浄して沈殿中の不純物イオンを除去し、ケーキ状のシリカ−アルミナ担体成分を調製する。このケーキに、焼成後のボリア−シリカ−アルミナ担体中に、B23として0.1〜10重量%含有するように、ホウ酸水溶液を添加して、混練後成型機により所望の形状に成形する。最後に、この成型物に乾燥および焼成などの処理を施す。乾燥は、酸素の存在下または非存在下において、常温〜約200℃に加熱することにより、また、焼成は、酸素の存在下において、約200〜約800℃、好ましくは約600〜約700℃の範囲に加熱することにより行う。ボリア−シリカ−アルミナ担体を、このような条件下で調製することにより、細孔分布を制御した担体を得ることができ、また、ボリア、アルミナおよびシリカ間の結合を良好にして形成することができる。
【0023】
本発明で使用するボリア−シリカ−アルミナ担体は、予め細孔分布を制御して調製したシリカ−アルミナ担体を調製した後、ホウ素化合物の水溶性塩類を添加して製造することもできる。
【0024】
本発明の水素化処理用触媒を構成する活性成分(A)は、周期律表第8族元素から選ばれる少なくとも1種の活性成分である。活性成分(A)としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)または白金(Pt)などを挙げることができる。好ましくはコバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムまたは白金である。これらの元素は、単独にまたは混合して使用することができる。
【0025】
また、本発明の水素化処理用触媒を構成する活性成分(B)は、周期律表第6B族元素から選ばれる少なくとも1種の活性成分である。活性成分(B)としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などを挙げることができる。好ましくはモリブデンまたはタングステンである。これらの元素は、単独にまたは混合して使用することができる。
【0026】
本発明の水素化処理用触媒は、上記した活性成分(A)および活性成分(B)を担体に担持させてなるものであるが、特に、モリブデン−コバルト、モリブデン−ニッケル、タングステン−ニッケル、モリブデン−コバルト−ニッケル、タングステン−コバルト−ニッケルまたはモリブデン−タングステン−コバルト−ニッケルなどの組合せが好ましい。さらに、活性成分(A)および活性成分(B)の他に、本発明の水素化処理用触媒を性能を損なわない範囲で、周期律表第7族金属、たとえば、マンガン、および同表第4族金属、たとえば、錫、ゲルマニウムまたは鉛などを添加して使用することもできる。これら活性成分は、酸化物および/または硫化物として担持させることが好適であり、硫化物は後述のように触媒の予備硫化により調製することができる。
【0027】
上記した活性成分(A)の担持量は、酸化物として0.05〜15重量%である。好ましくは0.1〜10重量%である。担持量が、0.05重量%未満の場合は、十分な脱硫活性および脱窒素活性が得られず、また水素化脱芳香族、水素化精製などの水素化処理ができない。15重量%を超える場合には、担体と結合しない遊離の金属成分が増加し、第6B族金属(活性成分(B))と不活性の複合酸化物を生成し、その結果、第6B族金属の分散性を低下させ、触媒活性を低下させるという問題があり、やはり高い脱硫活性および脱窒素活性がえられず、また水素化脱芳香族、水素化精製などの水素化処理ができない。
【0028】
上記した活性成分(B)の担持量は、酸化物として10〜40重量%である。好ましくは12〜30重量%である。担持量が10重量%未満の場合は、活性点が少なくなることから、高い脱硫活性および脱窒素活性が得られず、また水素化脱芳香族、水素化精製などの水素化処理が十分にできない。40重量%を超える場合には、活性成分を担体上に高分散して保てなくなると同時に、第8族金属(活性成分(A))に対する助触媒効果が発揮されないことから活性点の減少をもたらし、やはり高い脱硫活性および脱窒素活性がえられず、また水素化脱芳香族、水素化精製などの水素化処理が十分にできない。
【0029】
本発明の活性成分(A)および活性成分(B)の担体上への担持方法は、特に限定するものではなく、公知の方法によって担持することができる。たとえば、次のようにして担持することができる。活性成分(A)および活性成分(B)の硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、アンモニウム塩、リン酸塩、酸化物などの化合物を、溶媒に溶解して含浸用溶液を調製し、この含浸用溶液に、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸などの有機酸を加え、さらにアンモニア水を用いてPH=9程度に調製する。PH=9程度に調整された含浸用溶液を撹拌しながら担体に滴下して含浸させる。
【0030】
溶媒としては、特に限定されず、種々のものを使用することができる。たとえば、水、アンモニア水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、芳香族類などを挙げることができる。好ましくは、水、アンモニア水、アセトン、メタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、ヘキサノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどであり、特に好ましくは水である。
【0031】
含浸用溶液における溶媒と両活性成分の配合割合、および担体への含浸用溶液の含浸量は、特に限定するものではないが、次におこなう含浸操作および乾燥焼成操作の容易性を考慮して、焼成後の触媒に対する両活性成分の担持量が、所望の値となるようにして選定することができる。
【0032】
活性成分の担持方法は、上記したとおりであるが、さらに詳細に説明すると、担体を前記活性成分の可溶性塩の溶液に浸漬し、該活性成分を担体中に導入する含浸法、または担体を製造する際に、活性成分を同時に沈殿させる共沈法などを採用することができ、その他いかなる方法を使用しても差し支えないが、操作上容易であり、触媒物性の安定化維持に好都合な含浸法によることが好ましい。
【0033】
含浸操作としては、担体を常温または常温以上で含浸溶液に浸漬して、所望とする活性成分が十分担体中に含浸する条件下で保持する。含浸溶液の量および温度は、所望量の活性成分が担持されるように適宜設定することができる。また、活性成分の所望担持量により、含浸溶液に浸漬する担体の量を決定することができる。さらに、所望に応じ、前記のような周期律表第4族および同表第7族の金属からなる第三の活性成分を添加することもできる
【0034】
二種以上の活性成分の担体への含浸は、(1)二種以上の活性成分を予め混合し、その混合溶液から同時に含浸(一液含浸法)、(2)二種以上の活性成分の溶液を別々に調製し、逐次含浸していく(二液含浸法)のいずれの方法も任意に採用することができるが、本発明の水素化処理用触媒は、前記のボリア−シリカ−アルミナ担体上に、先ず、活性成分(A)を担持させ(第一ステップ)、次いで、活性成分(B)を担持させる(第二ステップ)ことによって製造することができる。
【0035】
最後に、活性成分を含浸させた担体を、打状成型、押出成型、転動造粒などによって成型した後、風乾、熱風乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥などの方法で乾燥し、さらに焼成する。焼成は、温度400〜700℃で、1〜5時間行う。焼成温度が、高すぎると、担持した活性成分の酸化物の結晶が析出し、表面積、細孔容積が低下して触媒としての活性低下を引き起こし、焼成温度が低すぎると、担持した活性成分に含まれるアンモニアや酢酸イオンなどが脱離せず、触媒表面上の活性点が十分に露出しないために、やはり活性低下を引き起こす。焼成は除々に行うことが望ましい。
【0036】
本発明の水素化処理用触媒は、所望に応じて、他の水素化処理用触媒と混合して使用することができる。他の水素化処理用触媒としては、公知のものを使用することができる。
【0037】
(水素化処理方法)
次に、本発明の水素化処理用触媒を用いる炭化水素油の水素化処理法について説明する。水素化処理に供される炭化水素油は、特に限定されるものではなく、たとえば、石油原油の常圧蒸留留出油、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留留出油、分解軽油留分またはこれらの混合油などいずれも用いることができる。特に、脱硫および脱窒素を同時に行うことが困難な減圧軽油、分解軽油および直留軽油などが好適である。
【0038】
また、中東原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られる減圧軽油、残渣油をコーカーおよびビスブレーカーなどで熱分解して得られる約200℃以上の沸点を有する分解軽油、接触分解装置から得られるライトサイクルガスオイル(LCGO)およびヘビーサイクルガスオイル(HCGO)なども挙げることができる。
【0039】
また、減圧軽油は、常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られ、約370〜610℃の範囲の沸点を有する留出油であり、硫黄分、窒素分および金属分を相当量含有する。硫黄分としては、たとえば、4−メチルジベンゾチオフェン、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンなどの硫黄化合物が含有され、窒素分としては、ピサジン類、アミン類、アミド類などの塩基性窒素化合物や、ピロール類などの弱塩基性窒素化合物が含有され、金属分としては、ニッケル、バナジウム、鉄などが含有される。本発明の水素化処理方法によれば、このような減圧軽油の脱硫および脱窒素を最も効率よく行うことができる。
【0040】
水素化処理の反応条件は、特に限定されるものではないが、炭化水素油の種類、目標とする脱硫率および脱窒素率などにより選択することができる。すなわち、反応温度;200〜500℃、好ましくは280〜420℃、反応圧力;1〜200kg/cm2 、水素含有ガスレイト;100〜270L/L、および液空間速度;0.05〜5.0V/H/V、好ましくは0.5〜4V/H/Vを採用することができる。水素含有ガスとしては、水素濃度が60〜100%の範囲のものを用いることができる。本発明の水素化処理用触媒は、活性劣化が比較的早く過酷度の高い反応条件下、特に、低反応圧においても、高い脱硫率および脱窒素率を達成することができる。
【0041】
炭化水素油の水素化処理を行うにあたり、水素化処理用触媒は、固定床、流動床、沸騰床または移動床のいずれの形式でも使用することができるが、装置面または操作上から、通常、固定床を採用することが好ましい。また二基以上の複数基の反応塔を結合して水素化処理を行い、高度の脱硫率と脱窒素率を達成することができる。特に、炭化水素油が重質油である場合には、多段反応塔を使用するのが好ましい。
【0042】
また、本発明の水素化処理方法においては、炭化水素油の水素化処理に先立ち、水素化処理用触媒を予備硫化することが好ましい。予備硫化は、焼成した触媒を反応塔内に充填した後、含硫留出油を反応塔に供給し、温度;150〜400℃、圧力(全圧);20〜100kg/cm2、液空間速度;0.3〜2.0V/H/Vおよび水素含有ガスレイト;50〜1500L/Lの反応条件下で接触させ、活性成分の硫化処理を行い、その後、含硫留出油を炭化水素油に切り替え、炭化水素油の脱硫および脱窒素に対応した運転条件に設定し、水素化処理の運転を開始する。硫化処理の方法としては、前記の如き方法の他に、硫化水素その他の硫黄化合物を直接触媒と接触させるかまたは適当な炭化水素油に添加して、これを触媒と接触させる方法を採用することもできる。
【0043】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す性状を有する触媒Aを次のようにして製造した。
純水3リットルを70℃に加熱し、これにアルミン酸ナトリウム205gを溶解させて、pH約12のアルミン酸ナトリウム水溶液を調製した。次に、このアルミン酸ナトリウム水溶液に、硝酸溶液を添加しながら、約15分間かけて混合溶液を所定のpH=8.8〜9.2に調整した。引き続き、70℃で0.5時間熟成し、アルミナ水和物ゲルの沈殿を含む水溶液を調製した。
【0044】
得られた水溶液に、3号水ガラス32gを純水200gに溶解させて調製した珪酸ナトリウム水溶液を添加し、必要に応じて硝酸溶液を添加してpHを約9とし、温度70℃で0.5時間熟成した。これにより、アルミナ水和物の沈殿(ゲル)の表面にシリカ水和物の沈殿(ゲル)が沈着した沈殿粒子を含むスラリー液を調製した。このスラリー液を濾過し、濾別したケーキを濾過後の濾液のナトリウム濃度が5ppm以下となるまで炭酸アンモニウム水溶液で洗浄した。
【0045】
このケーキに、B23として1重量%になるように、ホウ酸水溶液を添加し、80℃の混練機中で成型可能な含水量になるまで、乾燥しながら混練し、押出成型機により、1.5mmφの円筒状のペレットに成型した。成型されたペレットは、120℃で16時間乾燥し、さらに700℃で3時間焼成し担体とした。
【0046】
この担体に、CoO量として4重量%、およびNiO量として1重量%になるように、硝酸コバルトおよび硝酸ニッケルを溶解した水溶液を含浸させ、120℃で乾燥し、450℃で焼成した。次に、MoO3量として14.8重量%となるようにパラモリブデン酸アンモニウム水溶液(モリブデン液)を含浸させ、120℃で乾燥した後、500℃で焼成し触媒Aを得た。
【0047】
上記のようにして調製した触媒Aを用いて、試験油の水素化処理を行い、触媒Aの脱硫活性および脱窒素活性を測定した。触媒Aの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0003782887
【0049】
水素化処理用触媒の細孔容積は、窒素吸着法および水銀圧入法によって測定した。窒素吸着法および水銀圧入法は、P.H.エメット他著「キャタリシス」第1巻、第123頁(ラインホールド・パブリッシング・カンパニー発行)(1959年)[P.H.Emmett,et.al.“Catalysis”,Vol.1,p123(1959)(Reinhold Publishing Co.)]、および触媒工学講座、第4巻、第69頁〜第78頁(地人書館発行)(昭和39年)に記載の方法に準拠して測定した。そして、水素化処理用触媒の比表面積は、窒素ガス吸着法(BET)により測定した。
【0050】
また、窒素吸着法は、多分子層吸着に基づく補正の方法が種々提案されており、その中でもBJH法[E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.P.Halenda,“J.of Amer.Chem.Soc.”,73,373(1951)]およびCI法[R.W.Cranston and F.A.Inkley,“Advances in Catalysis”IX,143(1957)(New York Academic Press)]が一般に用いられている。本発明における細孔容積に係るデータは、吸着等温線の吸着側を使用しBJH法によって計算した。水銀圧入法は、触媒に対する水銀の接触角を130°、表面張力を485ダイン/cmとし、すべての細孔は円筒形であるとして測定した。
【0051】
試験油および水素化処理方法は、次のとおりである。
(i)試験油
試験油は、中東原油から得られた減圧軽油を用いた。試験油の性状を表2に示す。
(ii)水素化処理試験方法
水素化処理試験は、固定床式流通式反応装置を用いた。先ず、触媒を反応管に充填し、試験油に二硫化炭素(CS2)を3容量%含有させて調製した予備硫化油を、40時間通油して触媒の予備硫化を行った。次いで、試験油を約24時間流通させて、反応平衡状態の生成油を採取した。そして、試験油中の硫黄分および窒素分と、生成油中の硫黄分および窒素分の各測定結果から、触媒の脱硫活性および脱窒素活性を求めた。反応条件を表2に示す。併せて、実施例1〜4と比較例1〜5で調製した触媒を用いた水素化処理試験で得られた生成油の硫黄分および窒素分(範囲)を示す。
【0052】
【表2】
Figure 0003782887
【0053】
(実施例2)
実施例1において、ホウ酸水溶液の添加量を調整して、ボリア含有量がB23として3重量%になるようしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Bを調製し、試験油の水素化処理試験を行った。触媒Bの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表1に示す。
【0054】
(実施例3)
実施例1において、ホウ酸水溶液の添加量を調整して、ボリアの含有量がB23として7重量%になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Cを調製し、試験油の水素化処理試験を行った。触媒Cの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表1に示す。
【0055】
(実施例4)
実施例1において、3号水ガラス65gを純水200gに溶解させて調製したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Dを調製し、試験油の水素化処理試験を行った。触媒Dの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表1に示す。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、ホウ酸を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Eを調製し、試験油の水素化処理試験を行った。触媒Eの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
Figure 0003782887
【0058】
(比較例2)
実施例4において、ホウ酸を使用しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、触媒Fを調製し、試験油の水素化処理試験を行った。触媒Fの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表3に示す。
【0059】
(比較例3)
実施例1において、ホウ酸水溶液の添加量を調整して、ボリアの含有量がB23として15重量%になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Gを調製し、試験油の水素化処理試験を行った。触媒Gの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表3に示す。
【0060】
(比較例4)
実施例1において、アルミナ水和物の沈殿(ゲル)を含む水溶液を調製する際に、アルミン酸ナトリウム水溶液に硝酸溶液を添加してpHを調整するまでの時間を約2分間以内とし、また、pHを9.6〜9.8に設定したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Hを調製し、試験油の水素化処理試験を行った。触媒Hの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表3に示す。
【0061】
(比較例5)
実施例1において、アルミナ水和物の沈殿(ゲル)を含む水溶液を調製する際に、アルミン酸ナトリウム水溶液に硝酸溶液を添加してpHを調整するまでの時間を約1分間以内とし、また、pHを10.0〜10.4に設定したこと以外は、実施例1と同様にして、触媒Iを調製し、試験油の水素化処理試験を行った。触媒Iの細孔構造および化学組成、および水素化処理試験の結果を表3に示す。
【0062】
表1および表3から、明らかなように、触媒A、B、CおよびDを用いた実施例1〜4は、触媒E,F、G、HおよびIを用いた比較例1〜5に較べ、優れた脱硫活性および脱窒素活性を示した。
【0063】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的に説明したように、本発明によれば、ボリアをB23として0.1〜10重量%含有するボリア−シリカ−アルミナ担体上に、周期律表第8族元素から選ばれる少なくとも1種の活性成分(A)と、周期律表第6B族元素から選ばれる少なくとも1種の第2の活性成分(B)を担持してなり、かつ特定の細孔構造を有することを特徴とする水素化処理用触媒、および該水素化処理用触媒を使用する炭化水素油の水素化処理方法を提供することができた。このような水素化処理用触媒により、減圧軽油、分解軽油などの炭化水素油を、高い脱硫率と同時に高い脱窒素率で水素化処理することができ、さらに水素化分解、水素化脱芳香族、水素化精製などの処理を高度に行うことが可能である。

Claims (2)

  1. ボリアとシリカとアルミナとからなる担体上に、周期律表第8族元素から選ばれる少なくとも1種の活性成分(A)と、周期律表第6B族元素から選ばれる少なくとも1種の第2の活性成分(B)を担持してなる水素化処理用触媒であって、該ボリアおよびシリカは、担体中で各々B23として0.1〜10重量%およびSiO2 として2〜40重量%含有し、かつ下記の関係式(1)〜(4)を満足することを特徴とする水素化処理用触媒。
    Figure 0003782887
  2. 請求項1に記載の水素化処理用触媒の存在下で、炭化水素油を水素と接触させて、高度に脱硫および脱窒素することを特徴とする炭化水素油の水素化処理方法。
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