JP3780065B2 - 超音波探触子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波のエコーを利用して生体内の断層を画像化する超音波診断装置に用いられる超音波探触子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、超音波探触子或いは超音波振動子から超音波を生体に照射し、生体における音響インピーダンスの変化部分で反射された反射超音波を受信して電気信号に変換し、画像化することにより、超音波断層像を得る超音波診断装置が広く用いられるようになった。
【0003】
従来の超音波探触子は、中心軸上に幾何学的焦点をもつように振動子の放射面を凹状もしくは凸状の球面としたものや振動子の中心軸上に幾何学的焦点をもつ集束型音響レンズを設けたものであった。
【0004】
しかし、このような超音波探触子においては、超音波ビームの焦点近傍ではビーム幅が細く絞られているが、焦点から外れた位置では超音波ビームは広がるため、広範囲にわたって分解能の高い画像を得ることができなかった。
【0005】
この問題点を解決するために、特開昭51−60491号公報において、「超音波探触子の前方又は後方にそれぞれ実効的、仮想的円環状音源を形成する」超音波探触子が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この仮想円環状音源を形成する超音波探触子は、広範囲にわたってビーム幅の細い主ビームを得る事ができるが、サイドローブが大きく、このサイドローブによるエコー信号のため超音波診断画像の画質を劣化させていた。
【0007】
図7(B)は特開昭51−60491号公報による「超音波振動子の前方又は後方にそれぞれ実効的、仮想的円環状音源を形成する」超音波探触子の音場の一例を示す。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、広範囲にわたってビーム幅の細いビームを形成し、かつサイドローブを抑えることができる超音波探触子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定の径を有する音響レンズであって、上記径より大きな径を有する仮想リング状の音源と等価な音場を形成する音響レンズと、所定の超音波振動を生成して前記音響レンズに向けて放射する超音波振動生成手段と、前記音響レンズの超音波放射面において放射される超音波振動の振幅に対して所定の重み付けをする重み付け手段と、を具備したことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は本発明の第1の実施の形態の超音波探触子の構造を示し、図2は両面の電極及び分極処理の分極電圧分布を示し(図2(A)は圧電素子の後面側の信号電極を示し、図2(B)はアース電極を示し、図2(C)は中央電極部及び周辺電極部を用いて圧電素子に対する分極処理の分極電圧分布を示し)、図3は音響レンズの他の形状例を示し、図4は音響レンズのさらに他の形状例を示し、図5は分極分布を連続的にした場合における超音波探触子の両面の形状を示し、図6は図5の超音波探触子の分極分布を形成する処理を行う装置を示し、図7(A)は図5の超音波探触子から送出された超音波ビームの強度分布を示す(図7(B)は比較のために従来例の超音波探触子から送出された超音波ビームの強度分布を示す)。
【0011】
本実施の形態の目的はサイドローブを抑え、焦域の長い細いビームを放射できる超音波探触子を提供することにある。
図1に示すように本発明の第1の実施の形態の超音波探触子(或いは超音波振動子)1は超音波変換素子として圧電特性を有する圧電素子2と、超音波を放射する或いは超音波を送受する超音波放射面或いは超音波送受面(単に、前面とも記す)に形成したアース電極4と、この圧電素子2の超音波放射面の反対側の面(後面と記す)に形成した信号電極としての中央電極部3A及び周辺電極部3Bと、圧電素子2の前面側にアース電極4を介して順次積層した整合層5及び音響レンズ6と、圧電素子2の後面側に中央電極部3A及び周辺電極部3Bを介して形成した図示しないバッキング材とから構成され、中央電極部3A及び周辺電極部3Bとアース電極4とにそれぞれ接続した信号線8、アース線9を介して図示しない観測装置の信号端子及びアース端子に接続される。
【0012】
圧電特性を有する圧電素子2は、円板形状で、その円形の両面には図2(A)に示すように、信号が印加される信号電極として中央側に円形に形成した中央電極部3Aと、この中央電極部3Aの周囲に同心状に分離(分割)して形成された円環形状の周辺電極部3Bとの2つの分割電極が形成されている。
また、図2(B)に示すように、圧電素子2の前面にはアース電極4が前面の全域に形成されている。
【0013】
そして、分割された信号電極とアース電極4との間には、図2(C)に示すように中央電極部3Aに印加される分極電圧VaがVa>Vb(Vbは周辺電極部3Bに印加される分極電圧)となる分極電圧で分極処理することにより、中央電極部3Aに対向する部分の圧電素子2の分極強度が周辺電極部3Bに対向する部分の圧電素子2の分極強度より大きくなるようにしている。つまり、送信信号が印加された場合に発生する超音波の振幅が中心側で大きく、周辺側では小さくなるように(圧電素子2自体の)超音波変換機能を設定している。
【0014】
つまり、図2(C)の分極処理により、図2(C)の分極電圧Va,Vbの分布にほぼ比例して圧電素子2には分極強度分布が形成される。なお、図2(C)の横軸は半径方向の位置を表している。
【0015】
そして、この圧電素子2に送信信号を印加した場合に分極強度が大きい中央部側での超音波強度(振幅、或いは音圧)を大きく、周辺部側では小さくなる振幅重み付け機能或いは手段を形成し、この振幅重み付け機能或いは手段を形成することにより、この機能或いは手段を形成しない場合よりもサイドローブを抑制するようにしていることが特徴となっている。
【0016】
また、本実施の形態では図2(A)に示すように信号電極の最外電極(ここでは、周辺電極部3B)の径を圧電素子2の外径より少し小さくすることにより、エッジ効果による振幅の乱れを抑制している。
また、圧電素子2の超音波放射面側には厚さλ/4(λは超音波の波長)の円板形状の整合層5が接着等で設けられ、その上に音響レンズ6を設けている。そして、この音響レンズ6により圧電素子2の円形面より放射される超音波を圧電素子2の中心軸(つまり超音波探触子1の中心軸OO′)に沿って細いビームで放射できるように超音波を集束する集束手段を形成している。
【0017】
この音響レンズ6は、凸状の円弧(曲率半径R)を円弧の中心cを通らない軸(図1では超音波探触子1の中心軸OO′)の回りで回転させた回転体の前面形状をしており、図1では前面形状は中心軸OO′上の位置で最も凹部となる凹面形状となっている。言い換えれば、円弧の中心cが超音波探触子1の後方で円環をなす円弧の回転体である。
【0018】
従って、圧電素子2の円板状の前面から放射される超音波ビームは円弧の中心cが円環を描くように回転させた回転体の音響レンズ6で集束させる構造にすることより、超音波探触子1の後方側に実効的或いは仮想的円環状音源を形成した超音波探触子1を構成している。
【0019】
そして、上述のように振幅重み付けの機能を設けた圧電素子2により放射される超音波をこの円環状の音響レンズ6で超音波探触子1の中心軸OO′方向に沿って集束するようにしている。この中心軸OO′は超音波の音軸である。
【0020】
但し、この前面形状は音響レンズ6での音速がこの音響レンズ6に接する音響媒体(図1では音響レンズ6の右側で、例えば水、生体組織等の音響媒体)より速い場合であって、シリコンゴム等で形成された場合のようにその音響レンズに接する音響媒体より音速が遅い物質で構成された音響レンズ6Aの場合には図3に示すように凹状の円弧(曲率半径R′)を円弧の中心cを通らない軸(中心軸OO′)の回りで回転させた前面形状となる。
【0021】
また、図1の音響レンズ6では1つの曲率半径Rのもので形成しているが、図4に示す音響レンズ6Bの様に、いくつかの部位にわけそれぞれ異なる曲率半径R1,R2の曲面を形成するようにしても良い(図3の音響レンズ6Aに対しても同様に適用できる)。
【0022】
このような形状の音響レンズ6、6A、6Bは、所望のレンズ形状に対応した凸型(もしくは凹型)のテフロン型と整合層5の間に音響レンズ用樹脂を注入し硬化させることにより、所望の形状に形成することができる。このような音響レンズ用樹脂としてはエポキシ樹脂、PMA、ポリスチレン等を用いることができる。
【0023】
上述の説明では分極重み付けを2分割としたが、3分割以上とし周囲にいくに従い分極強度を小さくすることによりサイドローブを更に低減することができる。
【0024】
また、図5(A)に示すように圧電素子2の中央から周囲に向かって連続的に減少させるような分極分布の分極Pが形成されるような分極分布による(超音波の放射の際の中心側の超音波の振幅を大きく、周辺側の超音波の振幅を小さくする)振幅重み付けを行うことによって、サイドローブを更に抑制することができる。
【0025】
このような振幅重み付けが中央から周囲に向かって連続的に減少するように分極方法を行う一例の装置を図6に示す。
図5(B)に示すように圧電素子2の片面の全域にアース電極4を設け、他方の面には電極が設けられていない片面電極付き圧電素子2Aを、シリコンオイル101がみたされた浴槽102の中に設置した分極用台103の上に、上記アース電極4と分極用台103に設けられた分極用端子104とが接するように置く。
【0026】
上記片面電極付き圧電素子2Aの電極が設けられていない面に、中央が薄く周辺側が厚くなる凹球面形状等の圧電素子2と同じ材質の分極蓋105を中心軸が同一となるように位置合わせして載せた後、その上方から押さえ治具106を置き、矢印で示す方向から押圧力を加える等して分極蓋105と圧電素子2Aを密着させる。
【0027】
圧電蓋105における圧電素子2Aと接する面に対向する凹球面状の上面には分極用電極107が設けられており、分極用電極107と分極用端子104は電線108を介して分極用電源109に接続する。
【0028】
分極用電源109は電線108を介して分極用端子104に接したアース電極4と分極用電極107の間に分極電圧を供給し、圧電素子2には分極蓋105の厚みに逆比例して小さくなる電界を形成するため、中心から周囲にむかって連続的に分極強度が減少する分極処理を施すことができ、例えば図5(A)に示すような強度分布の分極Pを形成できる。
【0029】
分極処理を終えた圧電素子2Aの電極が設けられていない面には蒸着等により信号電極3を図5(B)のように設けて、中心から周囲にむかって連続的に分極強度の減少した圧電素子2を得ることができる。
【0030】
分極強度の重み付けの形状は、従来から公知の分布関数を用いることができる。たとえばBessel関数、Gauss関数等を用いることができる。図7(A)は図5のように中心側が大きく、周辺側が小さくなるように連続的に分極処理した超音波探触子1により得られる超音波ビームの強度分布を示す。
【0031】
なお、図7(B)は比較のために従来例の超音波探触子99による超音波ビームの強度分布を示す。7(A),(B)で分極強度を矢印を持った線で示し、従来例では分極強度は一定であるのに対し、本実施の形態ではその分布は2点鎖線で示すように中心部が最も大きく、周辺側程小さくなっている。
【0032】
図7において、縦軸は超音波探触子1、99の振動子(圧電素子)面からの距離を示し、横軸は振動子の中心位置からの半径方向の距離を示す。
図7(A),(B)の比較から分かるように従来例はサイドローブが大きいのに対し、2点鎖線のような分極強度分布を有する超音波探触子1によれば、サイドローブを小さくでき、細く集束された超音波ビーム、つまり焦域の長い超音波ビームを送出でき、方位分解能を向上できることになる。
【0033】
本実施の形態における圧電素子2として、圧電セラミックスや複合圧電体や高分子圧電体を用いることもできる。複合圧電体は送波効率・受波効率とも比較的よいため総合的な感度が向上し好ましい。
【0034】
本実施の形態では圧電素子2の分極強度の分布により振幅重み付けを行ったが、分極強度は同じで例えば図2(A)等のように複数の分割電極を形成して各々の信号電極部に振幅重み付けに対応した電圧の送信信号を印加する(つまり中央部側の信号電極部には大きい電圧値の送信信号を、周辺側の信号電極部にはより小さい電圧値の送信信号を印加する、換言すると、周辺部側程小さな電圧値の送信信号を印加する)構成の超音波探触子を形成することにより、同様にサイドローブを抑え、焦域の長い細いビームをもつ超音波探触子を実現することもできる。
【0035】
また、本実施の形態では音響レンズ6と圧電素子2との間に音響整合層5を設けたが、音響レンズ6を直接圧電素子2に張り合わせ、音響レンズ6中心部の厚みを動作周波数の波長λの1/4にしてもよい。
【0036】
本実施の形態では音響レンズ6として樹脂を用いたが、もちろんこれに限られるものではない。適当な成形方法により金属やセラミックス等で構成することができる。
なお、音響レンズ6等で実効的或いは仮想的な円環状音源を超音波探蝕子1の後方側に形成したが、超音波探蝕子1の前方側に形成しても良い。これは、他の実施の形態に対しても同様である。
【0037】
また、超音波探触子1の振幅(音圧)重み付け或いは超音波送信、受信時に重み付けを行う手段又は方法として以下の何れかを選ぶことができる。
(1)圧電素子2の信号電極を分割し、中央の電極から周囲の電極にいくに従い分極電圧強度を小さくすることにより分布をもたせ、同一の信号電圧が印可されても、中央の圧電素子部位は大きく振幅し周囲にいくに従い振幅は小さくなるように振幅重み付けをする。
【0038】
(2)圧電素子2の分極時に、分極用電極間の距離を中央から周囲にいくに従い大きくすることにより、連続的に中央から周囲に向かって減少する分極重み付けを行なうことができ、信号電圧印加時にその部位の分極強度に応じて圧電素子により励振される超音波の振幅の重み付けを行う。
【0039】
(3)圧電素子2の信号電極を分割し、それぞれ分割された複数の分割信号電極において、中央の分割信号電極が最も大きく周囲の分極信号電極にいくに従い小さい信号電圧を印加することにより、超音波の振幅を中央が最も大きく周囲にいくに従い小さくする。
【0040】
このような振幅(音圧)に重み付けを行って放射される超音波ビームを円弧の中心cが円環を描くように回転させた回転体の音響レンズ6等で集束させることにより、超音波探触子1の前方又は後方にそれぞれ実効的、仮想的円環状音源を形成する超音波探触子において振動子の振幅を中央から周囲に向かって減少するように重み付けした構成としているので、(図7(B)の従来例に対し、)図7(A)に示すようにサイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを得ることができる。
【0041】
従って、サイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成する超音波探触子1Aを実現でき、超音波診断装置の方位分解能を向上することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的は第1の実施の形態と同じである。
図8は本発明の第2の実施の形態の超音波探触子11を示す。
【0043】
この超音波探触子11を形成する圧電素子12は、従来例と同様に一様な分極が施され、その両面における超音波放射面側にはアース電極14が設けられ、他方の面側には信号電極13がそれぞれ形成されている。
【0044】
また、圧電素子12の超音波放射面側となるアース電極14には整合層15が接着で設けられ、この整合層15の上にさらに音響レンズ16が設けられている。
【0045】
この音響レンズ16は、第1の実施の形態と同様、凸状の円弧(曲率半径R)を円弧の中心を通らない軸(ここでは振動子の中心軸OO′)で回転させた前面形状をしている。言い換えれば、円弧の中心が圧電素子12の後方で円環をなす円弧の回転体である。
【0046】
また、圧電素子12の後面側の信号電極13には超音波を減衰させるバッキング層17が設けられている。
また、信号電極13及びアース電極14には信号線18及びアース線19が接続され、図示しない観測装置の送信回路の送信端子とアース端子とにそれぞれ接続される。
【0047】
本実施の形態では上記整合層15は、(圧電素子12と同様に)図9(B)に示す円板形状でその超音波伝達特性は図9(A)に示す様に中心から周囲にいくに従い超音波の減衰が大きくなるような材料で連続的な分布を有している。
【0048】
本実施の形態では、整合層15をその中心から周囲に向かっていくに従い超音波の減衰が連続的に増加する超音波減衰部材を設けているが、図10に示すように離散的或いは段階的にに超音波の減衰を大きくしてもよい。
【0049】
具体的には、図10(B)に示すように同心状の複数の部材15a,15b,15c,15dで整合層15を形成し、これらの部材15a,15b,15c,15dによる減衰特性を図10(A)に示すように中心側から周辺側の部材になるにつれその減衰量が大きくなるようにしても良い。
【0050】
また、図8では整合層15は厚みを中心側から周辺側まで均一な厚みにしているが、中心側と周辺側との厚み分布を変えて図9(A)のように連続的な減衰特性を持つようにしても良いし、図10(A)のように段階的な減衰特性を持つようにしても良い。
【0051】
次に本実施の形態の作用を説明する。
本実施の形態では圧電素子12からでた超音波は、中心から周囲に向かって超音波の減衰が大きい整合層15を通過することにより、中心から周囲にいくに従い超音波の振幅(音圧)は小さくなる。
【0052】
よって、このような圧電素子12と整合層15の組み合わせで得られるビームを、円弧の中心が円環を描くように回転させた回転体の音響レンズ16で集束させることにより、超音波探触子の前方又は後方にそれぞれ実効的、仮想的円環状音源を形成する超音波探触子において振幅を中央から周囲に向かって減少するように重み付けした構成としたので、サイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを得ることができる。
【0053】
従って、本実施の形態によれば、圧電素子12の分極に重み付けをすることなく、更に信号線を多く取り出す必要もなく、サイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成する超音波探触子11を提供でき、超音波診断装置の方位分解能を向上することができる。
【0054】
(第3の実施の形態)
次に本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的は第1の実施の形態と同じである。
図11は第3の実施の形態の超音波探触子21を示す。この超音波探触子21は圧電素子22と、その前面に形成したアース電極24と、この圧電素子22の後面に形成した信号電極23と、圧電素子22の前面側にアース電極24を介して順次積層した整合層25及び音響レンズ26と、圧電素子22の後面側の信号電極23に形成したバッキング材27とから構成され、信号電極23とアース電極24とにそれぞれ接続した信号線28、アース線29を介して図示しない観測装置の信号端子及びアース端子に接続される。
【0055】
本実施の形態の超音波探触子21はその音響レンズ26以外は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同じように構成できる。
図11では例えば圧電素子22として径方向に連続的に分極強度を変化させたものを使用している(図5(A)に示すような分極強度分布を有する)。
【0056】
本実施の形態の音響レンズ26は、図12に示すように、中心軸OO′近傍を除いては、前記第1或いは第2の実施の形態と同様に、例えば半径R4による凸状の円弧を円弧の中心を通らない軸(ここでは超音波探蝕子21の中心軸OO′)で回転させた前面形状をしている。そして、中心軸OO′近傍の前面は曲面で、例えば半径R3の凹球面となっている。
【0057】
また、シリコンゴム等で形成された場合のようにその音響レンズに接する音響媒体より音速が遅い物質で構成された音響レンズ26Aの場合には、図13に示すように、中心軸OO′近傍を除いては、例えば半径R6による凹状の円弧を円弧の中心を通らない軸(ここでは超音波探蝕子21の中心軸OO′)で回転させた前面形状をしている。そして、中心軸OO′近傍の曲面は、半径R5の凸球面としている。
【0058】
本実施の形態の作用は第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様である。
また、本実施の形態は第1又は第2の実施の形態と同様の効果を有する。
さらに、本実施の形態は、第1及び第2の実施の形態の音響レンズ中央部の鋭角な凸凹がなくなるので、製造が容易になるばかりでなく、中央部球面の曲率半径R3或いはR5を適当な値とすることによりサイドローブを抑制することができる効果がある。
【0059】
(第4の実施の形態)
次に本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的は第1の実施の形態と同じである。
図14は第4の実施の形態の超音波探触子31を示し、図14(A)はその斜視図、図14(B)は図14(A)のA−A′線断面図を示す。
【0060】
この超音波探触子31は、凸状の円弧(曲率半径R)をその円弧の中心を通らない軸(ここでは超音波探触子31の中心軸OO′)で回転させた前面形状を有するバッキング層37を用いている。
【0061】
そして、この前面に沿って、両面に電極33、34を設けた可撓性のある高分子圧電体又は複合圧電体32を張り合わせ、それぞれの電極33、34に信号線38とアース線39を接続した同軸ケーブル40を介して観測装置(図示せず)に接続されている。
【0062】
複合圧電体32は、分極強度がその中央部から周辺部にいくに従い小さくなっている。この分極強度分布を13(B)の複合圧電体32中に模式的に図示している。つまり、矢印が分極方向を示し、その長さが分極強度の大きさを表しており、中心部の分極強度が最も大きく、周辺部で最も小さくなっている。2点鎖線はその分布特性を示している。
【0063】
バッキング層37と複合圧電体32は、(図示しない)ケース内部に収められており、耐薬品性、耐水性のすぐれた保護層(整合層を兼ねても良い)としてパリレン(ポリパラキシリレン)膜36をCVD(化学的蒸着)装置によりケース外面の一部及び複合圧電体32の前面に設けた構造にしている。
【0064】
本実施の形態では第1の実施の形態における超音波を集束する集束手段としての音響レンズ6等を設けることなく、圧電素子32の形状を上述のような形状にすることによって中心軸OO′に沿って細く集束する集束手段の機能を有するようにしている。
【0065】
次に作用を説明する。
凸状の円弧を円弧の中心を通らない軸(ここでは超音波探触子31の中心軸OO′)で回転させた前面形状をもつバッキング層37の曲面に沿って複合圧電体32を配置することにより、超音波探触子31(複合圧電体32)の中央から放射される超音波より前面にあることから、仮想的に超音波探触子31(複合圧電体32)の後方に環状音源を形成することができ、超音波探触子31(複合圧電体32)は、中心の音圧(振幅)が大きく、周囲にいくに従い、小さくなるように放射する様に音圧(振幅)に分布を持たせているので、サイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成することができる。
【0066】
本実施の形態は以下の効果を有する。
音響レンズを用いることなく、サイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成する超音波探触子31を提供でき、超音波診断装置の方位分解能を向上することができる。
【0067】
(第5の実施の形態)
次に本発明の第5の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的は超音波探触子をアレイ状に配置した振動子で形成したアレイ振動子とし、その場合の振動子配列方向と直角方向において、放射する超音波を焦域の長い細いビームにして分解能を改善することである。
【0068】
本発明の第5の実施の形態の超音波探触子としてのアレイ振動子41を図15(B)に示し、図15(A)はその音響カップリング材を示す。
【0069】
長方形の板状の圧電素子42の前面に整合層43、音響レンズ44、音響カップリング材45が形成され、圧電素子42の後面にはバッキング層46が形成されている。
【0070】
両面に電極を設けた圧電素子42の後面をバッキング層46に接着しアレイ状に切断してアレイ状振動子エレメント42a,42b,…,42nを形成した後、アレイ状振動子エレメントの配列方向と直角な方向(ここではスライス方向と呼ぶ)に、整合層43、音響レンズ44を積層して接着等で固着する。
【0071】
整合層43は圧電素子42と同じように長方形の板状であり、一方音響レンズ44は前面から見た形状は圧電素子42等と同様に長方形であるが、厚み方向に対してはスライス方向の断面が図1等で示した円環状の音響レンズ6における中心軸OO′を通る断面形状となるように形成している。
【0072】
つまり、本実施の形態では音響レンズ44はスライス方向の中心の音軸において、そのスライス方向に左右対称な形状或いは互いに鏡面対称となる形状で、図15の場合には中心側が凹部となる前面形状をしている(従って、本実施の形態では円環状レンズを形成していないので、実効的、仮想的音源は圧電素子42の後方側で音軸に関して直交する位置に対称に形成される)。
【0073】
また、この場合には各アレイ状振動子エレメント42a,42b,…,42nの音軸付近での超音波放射面或いは超音波送受面はスライス方向に対称な円筒面形状になっている。
【0074】
圧電素子42はスライス方向において中心部から周辺部に向かって振幅(又は音圧)が小さくなる様に分極分布等の重み付けしたものである。生体との接触を容易にするため、生体内に近い音速及び音響インピーダンスをもつポリエーテルブロックアミド等の音響カップリング材45(図15(A)参照)が超音波放射面の凹部に埋められている。
【0075】
また、圧電素子42の後面にはフレキシブル基板47が取り付けられ、このフレキシブル基板47に設けたリードパターン48はアレイ状振動子エレメント42j(j=a,b,…,n)の信号電極にそれぞれ導通する。他方のアース電極は図示しないアース線と導通する。
【0076】
なお、バッキング層46は支持台49に取り付けられている。
【0077】
次に作用を説明する。
アレイ振動子41のスライス方向において、振動子の後方に実効的、仮想的にアレイの中心面に対して対称な位置に複数の音源を形成し、圧電素子42による振幅が中心面から遠いほど小さくなるように圧電素子42による振幅(もしくは音圧)の重み付けがなされた構成とできるため、アレイ振動子41の配列方向と直角なスライス方向においてサイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成することができる。
【0078】
従って、アレイ振動子41の配列方向と直角な方向において、サイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成する超音波探触子を提供できるので、広範囲にわたって超音波診断像の分解能を向上させることができる効果がある。
【0079】
(第6の実施の形態)
次に本発明の第6の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的はアレイ振動子の振動子配列方向と直角方向において、放射する超音波を焦域の長い細いビームにして分解能を改善し、バッキング材が軟らかいことによる圧電素子のカッテング時の素子倒れ不良をなくした超音波プローブを提供することにある。
【0080】
図16(A)は本発明の第6の実施の形態の超音波探触子としてのアレイ振動子51を示し、図16(B)はソフトバッキング材を示す。
【0081】
図16(A)に示すようにアレイ振動子51は圧電素子52の前面に整合層53、音響レンズ54、後面にソフトバッキング材55、56、フェライト入りゴム等のバッキング材57で構成されている。
【0082】
第5の実施の形態と同様に圧電素子52をソフトバッキング材55等に接着しアレイ状に切断してアレイ状振動子エレメント52a,52b,…,52nが形成され、各アレイ状振動子エレメント52jはフレキシブル基板58に設けたリードパターン59により信号電極とそれぞれ導通している。
【0083】
ソフトバッキング材は圧電素子52とバッキング材57の間の中間層56及びスライス方向の中央部分55に形成されており、バッキング材57に比べ、音響インピーダンスが小さく硬度を大きくしたものである。
【0084】
圧電素子52は図15の圧電素子42と同様の形状で、またスライス方向において中心部から周辺部に向かって振幅(又は音圧)が小さくなる様に分極分布等の重み付けしたものである。また、整合層53、音響レンズ54も図15の場合と同様である。また、バッキング層57は支持台50に取り付けられている。
【0085】
従来では、圧電素子52をフェライト入りゴム等の軟らかいバッキング層57に接着しアレイ状に切断した時、カッティングピッチが小さくなるにつれ圧電素子片が倒れてしまう問題があった。
【0086】
本実施の形態ではソフトバッキング材を従来のフェライト入りゴムを粉にしたものに、エポキシ樹脂と混合して形成し、中間層56の厚みを超音波の動作周波数の波長/2の整数倍にする様にしたものである。
【0087】
ソフトバッキング材56は接着性をもち、硬度が大きいためカッティング時の圧電素子倒れの不良がない。また中央部のソフトバッキング材55の音響インピーダンスが周辺部57に比べ小さいため、超音波放射側(整合層53側)のスライス方向において、中央部から周辺部に向かって振幅(又は音圧)が小さくなる様な重み付けした効果を持ちスライス方向のサイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成することができる。
【0088】
従って、硬度が大きく接着性のあるソフトバッキング材を用いることでカッティング時の圧電素子倒れの問題が解決できるだけでなく、バッキング側における重み付けをすることができスライス方向においてサイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成する超音波プローブを提供できる。その為、アレイ振動子51の生産性が向上するだけでなく、超音波画像の分解能も改善することができる。
【0089】
(第7の実施の形態)
次に本発明の第7の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的は先端キャップに複数の異なる開口をもたせ、音響レンズ機能を具備したメカニカルスキャン型治療用単板振動子と仮想リング型レンズ付診断用振動子との組み合わせによる超音波探触子の提供することにある。
【0090】
本発明の第7実施の形態の超音波探触子60を有する超音波プローブの先端側を図17(A)、図17(B)に示す。本実施の形態は診断用振動子61と治療用の強力超音波用振動子66とを組み合わせたものである。
【0091】
従来の治療用メカニカルスキャン型(メカスキャン型と略記)超音波探触子などの先端キャップ内の超音波振動子において、通常、焦点が固定であるが、本実施の形態では、両振動子61、66を収納し、挿入部の周方向で回転可能にした手段を有する先端キャップ68をいくつかの異なる大きさの開口69a、69bを形成することにより、先端キャップ68に音響レンズ機能を具備させ、複数の焦点距離を選択できるようにしたものである。
【0092】
診断用振動子61を形成する圧電素子62はその分極が中心部から周辺部にむかって小さくなる様に重み付けされ、その圧電素子62の前面に仮想リング型レンズ63が形成され、後面にはバッキング層64が形成されている(例えば、図5で説明した超音波探触子と同様)。
【0093】
そして、圧電素子62の両面の各電極に接続されたケーブル65aを介して圧電素子62に送信信号を印加することにより、この診断用振動子61によって焦域の長い細い超音波ビームを生体へ放射し治療部位を見つけるのに使用できるようにしている。
【0094】
一方、強力超音波用振動子66は凹面形状の圧電素子67で形成され、その後面にはバッキング層が設けてある。そして、この凹面形状の圧電素子67の両面の各電極に接続されたケーブル65bを介して治療用の強力な駆動信号を印加することにより、強力超音波を照射し、その強力超音波を集束してその集束点付近に設定された治療部位を焼灼治療できるようにしている。
【0095】
先端キャップ68内には音響媒体70が充填されている。
なお、各開口69a、69bは薄い音響部材で音響媒体70が漏れないようにしている。
【0096】
本実施の形態では、図17(B)のように強力超音波用振動子66の凹面形状の圧電素子67に対向してその面積より小さい開口69aが臨むように設定された場合には開口69aの周辺の先端キャップ68の内側に吸音材69cを設けることで振動子の開口が実質的に小さくなり近距離にフォーカスするようにしている。
【0097】
治療部位が遠距離の場合は、キャップ68を回転して図17(A)に示すように大きい開口69bが治療部位側で凹面型振動子66に対向するように設定し、凹面型振動子66により強力超音波を照射し、その強力超音波は全て大きい開口69bを透過し、圧電素子67の凹面形状により設定された遠距離でフォーカスする遠距離フォーカスの位置に治療部位を設定して治療する。
【0098】
また、治療部位が近距離の場合は、先端キャップ68を回転して図17(B)に示すように小さい開口69aが治療部位側となるように設定し、凹面型振動子66により強力超音波を照射することにより、開口69aを通る超音波は遠方側で集束するように進行するが、そのキャップ68の内側の吸音材69cにより超音波ビーム全体としては近距離にフォーカスする近距離フォーカスを実現できる。
【0099】
本実施の形態は以下の効果を有する。
焦域の長い細いビームを形成できる振動子で高分解能の診断ができ、治療時には所望の焦点距離が選択できる強力超音波振動子が提供できる。
【0100】
(第8の実施の形態)
次に本発明の第8の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的は先端キャップ部に複数の異なる開口又は周波数をもつ振動子により焦点距離を可変にできるメカスキャン型治療用単板振動子と振動子配列方向と直角方向に音響レンズを形成した診断用電子スキャン型振動子との組み合わせによる超音波探触子を提供することにある。
【0101】
本発明の第8の実施の形態の超音波探触子71を図18(A)に示し、また診断用電子スキャン型振動子72を18(B)に示す。本実施の形態の超音波探触子71は診断用電子スキャン振動子72と治療用の強力超音波振動子73、74を組み合わせたものである。
【0102】
従来の治療用メカスキャン型超音波探触子では先端キャップ内の超音波振動子において、焦点が固定したが、本実施の形態においては、探触子挿入部の周方向で回転可能とする手段を設けた先端キャップ80をいくつかの異なる開口80a,80b又は周波数の振動子73、74で構成することで複数の焦点距離を選択できるようにしたものである。
【0103】
診断用凸状電子スキャン型振動子72は圧電素子75の分極が配列方向と直角方向(スライス方向)に沿って中心部から周辺部にむかって小さくなる様に重み付けして電子スキャン振動子エレメント75a,75b,…,75nが形成してあり、圧電素子75の上に、音響レンズ76が形成され、後面にはバッキング材77が形成されている(図17(B))。
【0104】
この音響レンズ76は、配列方向の円筒面等の凸面に沿って形成しているが、(この凸面を平面とした場合には)図15で説明したものとほぼ同様の形状となる。
【0105】
一方、治療用の強力超音波振動子73、74は凹面形状の圧電素子78,79で形成され、各後面にはバッキング材が設けてある。
【0106】
そして、診断用振動子72により治療部位を見つけ、その治療部位が遠距離の場合は、キャップ80を回転し図18(A)に示すように大きい開口80aを治療部位側に設定し、凹面型振動子73によりこの開口80aを経て治療部位に超音波を照射し、遠距離フォーカスで治療を行う。
【0107】
また治療部位が近距離のときは振動子74を用い小さい開口80bを用いて近距離フォーカスで治療を行う。
【0108】
本実施の形態によれば、スライス方向が焦域の長い細いビームを形成できる電子スキャン型振動子72が高分解能の診断ができ、治療時には所望の焦点距離が選択できる強力超音波振動子を実現できる。
【0109】
(第9の実施の形態)
次に本発明の第9の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的はサイドローブを抑え、焦域の長い細いビームをもち且つ広帯域特性の振動子を提供することにある。
【0110】
第9の実施の形態の超音波探触子を図19(A),そのB−B′断面図を図19(B)に示す。本実施の形態の超音波探触子81は、分極に重み付けした圧電素子82、第1、第2整合層83、84、及び第3整合層兼仮想リング型レンズ85、バッキング層86等から構成されている。
【0111】
第1整合層83の厚さが動作周波数での波長λの1/10以下で、第2整合層84の厚みが波長λの1/10〜1/5にしたものである。
【0112】
従来は、1層の音響整合層を用いた場合は−6dB帯域は約40%程度である。1つの振動子で多くの周波数で送受信できる多周波機能を持たせる為に、2層整合層による広帯域化の方法がある。
【0113】
しかし、PZT系圧電材を用いた場合、2層整合層の特に、第1整合層の音響インピーダンスの最適解の理論値(約8.9×106[Kg/m2s])は求まるが、実際に入手できる材料はその値が大きいガラスなどであり、帯域特性を悪化する問題がある。
【0114】
本実施の形態では第2整合層84(ガラス、約11〜13×106[Kg/m2s])とPZT系圧電素子(約30×106[Kg/m2s])の間の接着層を第1整合層83(エポキシ、約3×106[Kg/m2s])としその厚みを波長λの1/10以下、第2整合層84(ガラス、約11〜13×106[Kg/m2s])の厚みを波長λの1/10〜1/5、第3整合層95(エポキシ、約3〜4×106[Kg/m2s])の厚みを波長λの約1/5〜1/2にしたものである。
【0115】
この様に、問題となる接着層を第1整合層83とした変形した3層整合層にすることで広帯域化(約60〜80%)が実現できるようにしている。そして、本実施の形態における周波数に対する感度特性を19(C)に示す。この図から分かるように3層整合層とすることにより、広帯域で感度を向上できる。
【0116】
従って、本実施の形態によれば、サイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成され高分解能の診断ができ且つ広帯域特性を実現できることから多周波化振動子の超音波プローブを提供できる。
【0117】
(第10の実施の形態)
次に本発明の第10の実施の形態を説明する。本実施の形態の目的はサイドローブを抑え、焦域の長い細いビームをもつ超音波探蝕子を提供することにある。第10の実施の形態の超音波探触子91を分解した図を図20(A)に、その断面図を図20(B)に示す。
【0118】
本実施の形態の超音波探触子91は、圧電素子92、第1整合層93、及び第2整合層兼仮想リング型音響レンズ(エポキシ樹脂)94、バッキング層(フェライト入りゴム)95等で構成されている。
本実施の形態では円板形状の圧電素子92は図20(B)に示すようにその厚み方向に一定の分極強度となるように分極処理されている。
【0119】
一方、第1整合層93は切削性の良いセラミックス(結晶化ガラスなど)、金属等の音響材料をある深さ又はその厚みまで周辺部へ行くに従い、細かくマトリックス状にダイスしそのカッテング溝にこの音響材料の減衰特性より大きな減衰特性のエポキシ等の高分子樹脂96を入れたものである。
【0120】
こうすることで第1整合層93の周辺部側では中央部より超音波が減衰されて小さくなり、圧電素子92による超音波の振幅(又は音圧)が中央から周辺部へ行くに従い小さくなるように重み付けされる。そして、仮想リング型レンズ94によりサイドローブを抑えた、焦域の長い細いビームが得られる。
【0121】
従って、本実施の形態によれば、サイドローブを抑えた焦域の長い細いビームを形成でき、高分解能の診断ができる。
【0122】
[付記]
1.前方又は後方にそれぞれ少なくとも1つの実効的・仮想的円環状音源を形成した超音波探触子において、
超音波探触子の振幅を音軸中心から周辺に行くに従い小さくしたことを特徴とする超音波探触子。
2.前方又は後方にそれぞれ少なくとも1つの実効的・仮想的円環状音源を形成した超音波探触子において、
超音波探触子から放射される超音波の音圧を音軸中心から周辺に行くに従い小さくしたことを特徴とする超音波探触子。
3.前記超音波探触子の超音波送受波面に、少なくとも1つの、中心が音軸上にない円弧を音軸で回転もしくは音軸面で鏡映させた面をもつ音響レンズを設けたことを特徴とする付記1項及び2項記載の超音波探触子。
【0123】
(付記1〜3、5〜8の効果)
前方又は後方にそれぞれ少なくとも1つの実効的・仮想的円環状音源を形成することを特徴とする超音波探触子において、超音波探触子の振幅もしくは超音波探触子から放射される超音波の音圧を、音軸中心から周辺に行くに従い小さくなるように重み付けを行うことにより、サイドローブの小さい、焦域の長い細いビームが得られる。
【0124】
4.前記超音波探触子を、中心が音軸上にない円弧を音軸で回転もしくは音軸面で鏡映させた面を少なくとも1つ以上もつように配置したことを特徴とする付記1項及び付記2項記載の超音波探触子。
(付記4の効果)
付記1〜3、5〜8の効果に加え、曲率を持った音響レンズやバッキング層の製作を容易にするとともに、中央部の挙栗を適当に選ぶことによりサイドローブを抑制することができる。
【0125】
5.前記超音波探触子の音軸付近の超音波送受波面を円筒面もしくは球面としたことを特徴とする付記1項、2項及び3項記載の超音波探触子。
6.前記超音波探触子が、音軸から周囲にいくに従い分極強度を小さくしたことを特徴とする付記1項、2項、3項、4項、5項記載の超音波探触子。
7.前記超音波探触子の超音波送受波面に、音軸から周囲にいくに従い超音波の減衰が大きくなるような超音波減衰部材を設けたことを特徴とする付記1項、2項、3項、4項、5項の超音波探触子。
【0126】
8.前記超音波探触子の音響整合層が、音軸から周囲にいくに従い音響インピーダンスを小さくしたことを特徴とする付記1項、2項、3項、4項、5項記載の超音波探触子。
9.所定の超音波の音軸を有する超音波探触子において、
前記超音波の音軸中心の中心超音波送信強度に対して、前記音軸中心に対する周囲の周囲超音波送信強度を小さくして超音波放射可能にしたことを特徴とする超音波探触子。
【0127】
10.送信信号の印加により超音波を放射する共通の超音波変換素子を有し、所定の音軸に沿って超音波を放射するための超音波探触子において、
前記音軸中心側の中心超音波送信強度に対して、前記音軸中心の周囲の周囲超音波送信強度を小さくして超音波を放射する超音波送信重み付け手段を設けたことを特徴とする超音波探触子。
【0128】
11.前記超音波送信重み付け手段は前記共通の超音波変換素子自体における音軸の中心側の超音波変換機能を音軸の周辺側より大きくした付記10項記載の超音波探触子。
12.前記共通の超音波変換素子は圧電素子で、前記圧電素子自体の分極強度を音軸の周辺側より中心側大きくした付記10項記載の超音波探触子。
13.前記超音波送信重み付け手段は前記共通の超音波変換素子における音軸の中心側に印加される送信信号の振幅を音軸の周辺側より大きくした付記10項記載の超音波探触子。
【0129】
14.前記超音波送信重み付け手段は前記共通の超音波変換素子から放射される超音波をその放射面の前に配置した超音波減衰部材により音軸の中心側を透過した超音波の振幅を音軸の周辺側より大きくした付記10項記載の超音波探触子。
15.前記共通の超音波変換素子から放射される超音波を前記音軸に沿った方向に集束させる超音波ビームの集束手段を有する付記10項記載の超音波探触子。
16.前方又は後方に複数の実効的・仮想的音源を形成した超音波探触子において、
超音波探触子による超音波振幅を音軸の中心から周辺に行くに従い小さくしたことを特徴とする超音波探触子。
【0130】
17.前記複数の実効的・仮想的音源は円環状に形成された実効的・仮想的円環状音源である付記16項記載の超音波探触子。
18.前記複数の実効的・仮想的音源は、前記音軸に関して対称となる位置に形成される付記16項記載の超音波探触子。
19.前記超音波振幅を音軸の中心から周辺に行くに従い小さくした超音波振動子エレメンントを複数有する付記16項記載の超音波探触子。
【0131】
20.前記超音波探触子を形成する超音波変換素子は円板形状である付記16項記載の超音波探触子。
21.前記超音波探触子を形成する超音波変換素子は長方形の板形状である付記16項記載の超音波探触子。
22.前記超音波探触子を形成する超音波変換素子は中心が音軸上にない円弧を音軸で回転もしくは音軸面で鏡映させた面に設けた付記16項記載の超音波探触子。
【0133】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、送信信号の印加により超音波を放射する共通の超音波変換素子を有し、所定の音軸に沿って超音波を放射するための超音波探触子において、
前記音軸中心側の中心超音波送信強度に対して、前記音軸中心の周囲の周囲超音波送信強度を小さくして超音波を放射する超音波送信重み付け手段を設けているので、重み付け手段を設けていない場合に比べサイドローブを抑圧し、細い超音波ビームが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の超音波探触子の構造を示す断面図。
【図2】両面の電極及び分極処理の分極電圧分布等を示す図。
【図3】音響レンズの他の形状例を示す断面図。
【図4】音響レンズのさらに他の形状例を示す断面図。
【図5】分極分布を連続的にした場合における超音波探触子の両面の形状等を示す図。
【図6】図5の超音波探触子の分極分布を形成する装置を示す構成図。
【図7】本実施の形態の超音波探蝕子及び従来例から送出された超音波ビームの強度分布を示す特性図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の超音波探触子の構造を示す断面図。
【図9】整合層の減衰特性及び整合層の形状を示す図。
【図10】整合層の減衰特性及び整合層の形状を示す図。
【図11】本発明の第3の実施の形態の超音波探触子の構造を示す断面図。
【図12】音響レンズの形状例を示す図。
【図13】音響レンズの他の形状例を示す図。
【図14】本発明の第4の実施の形態の超音波探触子の構造を示す斜視図及び断面図。
【図15】本発明の第5の実施の形態の超音波探触子の構造等を示す斜視図。
【図16】本発明の第6の実施の形態の超音波探触子の構造等を示す斜視図。
【図17】本発明の第7の実施の形態の超音波探触子の構造等を示す図。
【図18】本発明の第8の実施の形態の超音波探触子の構造等を示す図。
【図19】本発明の第9の実施の形態の超音波探触子の構造等を示す図。
【図20】本発明の第10の実施の形態の超音波探触子の構造を示す図。
【符号の説明】
1…超音波探触子
2…圧電素子
3A…中央電極部
3B…周辺電極部
4…アース電極
5…整合層
6,6A,6B…音響レンズ
8…信号線
9…アース線
OO′…中心軸
R,R1,R2…曲率半径
Va,Vb…分極電圧
P…分極
Claims (1)
- 所定の径を有する音響レンズであって、上記径より大きな径を有する仮想リング状の音源と等価な音場を形成する音響レンズと、
所定の超音波振動を生成して前記音響レンズに向けて放射する超音波振動生成手段と、
前記音響レンズの超音波放射面において放射される超音波振動の振幅に対して所定の重み付けをする重み付け手段と、
を具備したことを特徴とする超音波探触子。
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